説明

杭体の施工方法およびそれに用いられるケーシングパイプとそれによって施工された基礎構造体

【課題】地盤への杭体の圧入反力を効率的に得ることができ、杭体の施工装置の小型化や施工時の振動及び騒音の低減を図ることが可能となる、杭体の新規な施工方法を提供すること。
【解決手段】外周面に反力羽根32を設けたケーシングパイプ26を正方向回転させて地盤22に貫入させた後、該ケーシングパイプ26の外周面に対して地盤22から及ぼされる反力を利用して、ケーシングパイプ26に差し入れてケーシングパイプから下方に突出させて圧入する杭体50に圧入力を及ぼす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築や土木の構造物を地盤に支持等させるために地中に打設される杭体の施工関連技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築や土木の構造物を地盤に支持等させるために、支持杭や摩擦杭、土留め用親杭などの各種杭体が施工されている。
【0003】
ところで、杭体を地盤に打設するには、原始的に「衝撃方式」と「圧入方式」がある。
【0004】
しかしながら、これらの杭打方式は、現状において、何れも、現場での施工や環境に関する問題を有していたのである。即ち、前者の衝撃方式としては、ドロップハンマやジーゼルハンマ、スチームハンマが用いられていたが、騒音や振動の公害問題が避けられないという不具合があった。一方、後者の圧入方式では、大きな圧入荷重を得るために載荷重として大型重機が必要になり、狭小な敷地での施工が難しいという問題があった。
【0005】
なお、近年では、特公平7−51786号公報(特許文献1)に記載されているように、油圧シリンダによって杭体を地中に圧入しつつ、振動や油圧衝撃を杭体に加えて圧入力を補助する方式も提案されている。ところが、このような油圧機構を利用した杭打工法でも、振動や衝撃による騒音や振動の問題は回避され得ず、また大型で複雑な油圧機構が必要となるという新たな問題が発生することから、未だ満足できるものではなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−51786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、近隣への騒音や振動の問題を可及的に回避し得ると共に、大型装置も必要とすることなく狭小な土地においても良好に施工することのできる新規な杭体施工方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明は、かかる杭体の施工方法に用いられるケーシングパイプと、かかる杭体の施工方法によって施工された基礎構造体を提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、杭体の施工方法に関する本発明の第一の態様は、地盤に対する杭体の施工方法であって、(i)外周面に反力羽根を設けたケーシングパイプを用い、該ケーシングパイプを中心軸回りに正方向回転させて前記地盤に貫入させるケーシングパイプ貫入工程と、(ii)該ケーシングパイプに差し入れた前記杭体に対して、該ケーシングパイプの外周面に対して該地盤から及ぼされる反力を利用して圧入力を及ぼし、該ケーシングパイプの下端開口部から該杭体を突出させて該地盤に圧入させる杭体圧入工程と、(iii)該地盤に圧入させた該杭体を残して、該ケーシングパイプを逆方向回転させつつ該地盤から抜き取るケーシングパイプ抜去工程とを、有する杭体の施工方法にある。
【0010】
本発明の第一の態様に係る杭体の施工方法に従えば、ケーシングパイプの外周面に設けた反力羽根の作用により、地盤に貫入させたケーシングパイプには、引抜反力が大きく且つ効果的に作用し得る。それ故、このケーシングパイプの引抜反力を利用して杭体に有効な圧入力を及ぼすことが可能となる。その結果、施工機の自重を杭体の圧入力に利用していた従来技術に比して、施工機を小型化することが出来、狭い敷地でも杭体の施工を容易に行うことが可能となる。
【0011】
しかも、かかるケーシングパイプは、杭体と略同一中心軸上に貫入施工されることから、ケーシングパイプの貫入のために特別なスペースが必要とされることも殆ど無い。そればかりか、ケーシングパイプの内孔を利用して杭体を圧入施工することが出来ることから、杭体の圧入施工に際しての貫入抵抗の軽減が図られる等の効果が発揮されて、施工が一層容易とされ得る。
【0012】
杭体の施工方法に関する本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された杭体の施工方法であって、前記ケーシングパイプの前記反力羽根が一定のリード角で形成されており、前記ケーシングパイプ貫入工程において、該ケーシングパイプの一回転毎に該反力羽根のリードに相当する深さずつ前記地盤に対して該ケーシングパイプを貫入させるものである。
【0013】
第二の態様に従えば、ケーシングパイプの貫入時に、反力羽根の外周縁部において地盤が縁切りされたり攪拌されてしまうことを軽減乃至は回避することが出来る。その結果、反力羽根から地盤に及ぼされる周辺摩擦力や、反力羽根の外周から安息角内に存在する土重量が、ケーシングパイプの抜反力として一層効果的に且つ安定して作用せしめられ得る。
【0014】
なお、本態様において、反力羽根はケーシングパイプの全長に亘って形成されている必要はなく、例えばケーシングパイプの下端から所定長さの領域だけに反力羽根が形成されていても良いし、ケーシングパイプの軸方向で相互に分断されて複数箇所に反力羽根が形成されていても良い。また、反力羽根の大きさ(例えばケーシングパイプの外周面からの突出寸法等)は、部位によって異なっていても良い。
【0015】
杭体の施工方法に関する本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された杭体の施工方法であって、前記ケーシングパイプ貫入工程において、該ケーシングパイプの下端開口部を閉鎖させて内部への土の侵入を制限させつつ中心軸回りに正方向回転させて、該ケーシングパイプを前記地盤に貫入させるものである。
【0016】
第三の態様に従えば、地盤に貫入したケーシングパイプの内孔を利用することで、地盤に対して杭体をある程度の深さまで土の抵抗力を受けることなく容易に挿し入れることが可能となる。その結果、杭体の圧入の作業効率の向上が図られる。また、杭体の施工において、削孔貫入時の孔壁崩落がケーシングパイプで防止され得ることから、杭体の貫入抵抗が軽減されて容易に圧入することが可能となる。
【0017】
杭体の施工方法に関する本発明の第四の態様は、第三の態様に記載された杭体の施工方法であって、前記ケーシングパイプ貫入工程において、該ケーシングパイプにオーガースクリュを内挿位置せしめ、該オーガースクリュと該ケーシングパイプを同一中心軸上で同一方向に正方向回転させることにより、該オーガースクリュの下端部分で該ケーシングパイプの下端開口部を閉鎖させて内部への土の侵入を制限させつつ地盤に貫入させるものである。
【0018】
第四の態様に従えば、オーガースクリュを利用して、ケーシングパイプの貫入工程におけるケーシングパイプ内への土の侵入を制限することが出来る。また、オーガースクリュとケーシングパイプは、同一中心軸上で正方向回転させれば良いから、共通の回転駆動装置を用いて施工することも可能となり、装置の小型化や構造簡略化も図られ得る。
【0019】
杭体の施工方法に関する本発明の第五の態様は、第四の態様に記載された杭体の施工方法であって、前記ケーシングパイプ貫入工程によって該ケーシングパイプを前記地盤に対して貫入させた後、該ケーシングパイプを固定すると共に、前記オーガースクリュを正方向回転させることにより、該ケーシングパイプの下端開口部よりも下方まで杭孔を穿孔する穿孔工程を行うものである。
【0020】
第五の態様に従えば、ケーシングパイプの貫入位置よりも深い位置に支持層があるような場合にも、ケーシングパイプの長さ位置を超えてオーガースクリュだけを先行掘削させることで、当該支持層にまで至る杭体の圧入用の下穴を簡易に穿つことが可能となる。
【0021】
杭体の施工方法に関する本発明の第六の態様は、第三の態様に記載された杭体の施工方法であって、前記ケーシングパイプの下端開口部に対して開閉可能な蓋部材を装着せしめ、前記ケーシングパイプ貫入工程において、該蓋部材で該ケーシングパイプの下端開口部を閉鎖させた状態で該ケーシングパイプを前記地盤に貫入させる一方、前記杭体圧入工程において、該蓋部材を開放させた該ケーシングパイプの下端開口部から前記杭体を突出させて該地盤に該杭体を圧入させるものである。
【0022】
第六の態様に従えば、ケーシングパイプの下端開口部を開閉する蓋部材を採用することにより、例えば請求項4に記載のオーガースクリュを内挿しなくても、ケーシングパイプの地盤への貫入と同時に、該ケーシングパイプによって杭の下穴を良好に形成することが可能となる。なお、本態様において、蓋体は、ケーシングパイプの下端開口部を開閉可能とするものであれば良く、例えばケーシングパイプの下端開口部に対して着脱可能な掘削ヘッドを装着することで蓋体とすることも出来る。蓋体としてかかる掘削ヘッドを採用すれば、その閉鎖状態でケーシングパイプを地盤に対して一層容易に削入することが可能となる。
【0023】
杭体の施工方法に関する本発明の第七の態様は、第一〜六の何れか一の態様に記載された杭体の施工方法であって、前記ケーシングパイプ抜去工程において、前記ケーシングパイプにおける前記反力羽根の回転作用により前記杭体の周囲において土を下方へ押し込んで圧密させるものである。
【0024】
第七の態様に従えば、ケーシングパイプの抜去と同時に、圧入施工後の杭体の周囲に対して土を圧密状態で埋め戻すことが可能となる。その結果、杭体の周辺摩擦力が大きく確保でき、特別な別途の施工を必要とすることなく、杭体の支持力の向上が図られ得る。
【0025】
杭体の施工方法に関する本発明の第八の態様は、第七の態様に記載された杭体の施工方法であって、前記ケーシングパイプ抜去工程において、前記ケーシングパイプに対して前記地盤への押込方向の荷重を及ぼしつつ該ケーシングパイプを逆方向回転させることにより前記杭体の周囲において土を圧密させるものである。
【0026】
第八の態様に従えば、ケーシングパイプに押込方向荷重を積極的に及ぼすことで、ケーシングパイプの逆方向回転による圧密効果の向上が図られ得る。例えば、ケーシングパイプの回転駆動等で周囲の地盤を乱して土の縁切りを行ってから、ケーシングパイプに施工装置の自重をかけて逆方向回転させつつ土を供給することで杭体の周囲に圧密効果を及ぼすことが出来る。より具体的には、ケーシングパイプを逆方向回転させて引き抜いてから、再び正方向回転で周囲の土の縁切りを行いつつケーシングパイプを貫入させ、その後に、例えば、表土に近い位置にケーシングパイプを位置固定した状態で逆方向回転させて掘削表土を下方に押し下げて杭と孔壁(ケーシングパイプを引き上げた後の孔の周壁)の空隙を埋める方法や、オーガースクリュを適当な引き上げ位置に位置固定した状態で逆方向回転させて圧密用土を下方から順次に強制圧密する方法などが採用され、それによって、杭体の周面摩擦の向上が図られ得る。
【0027】
上述の如き本発明に従う杭体の施工方法において好適に用いられる杭体施工用のケーシングパイプに関する発明の特徴とするところは、中空構造の管体の外周面上に所定のリード角を有する反力羽根が形成されている杭体施工用のケーシングパイプにある。このような本発明に従う構造とされたケーシングパイプを用いることにより、本発明方法が有利に実施可能となる。
【0028】
また、かかるケーシングパイプにあっては、前記管体に内挿されるオーガースクリュと、該オーガースクリュを該管体と同一中心軸上で一体的に回転させる一体的回転手段とを、備えた構成が、好適に採用され得る。このようなケーシングパイプを用いることにより、杭体の施工方法に関する前記第四又は第五の態様が容易に実施可能とされる。
【0029】
或いはまた、かかるケーシングパイプにあっては、前記管体の下端開口部を開閉可能とする蓋部材を備えた構成が、好適に採用され得る。このようなケーシングパイプを用いることにより、オーガースクリュを用いなくともケーシングパイプ内への土の先端からの侵入を阻止しつつケーシングパイプを地盤に貫入させると共に、杭体の挿入孔を形成することが可能となる。
【0030】
さらに、かかるケーシングパイプは、前記管体の下端部分に掘削用爪が設けられていることが望ましい。このようなケーシングパイプを用いることにより、ケーシングパイプ貫入工程におけるケーシングパイプの地盤への貫入を一層効率的に行うことが可能となる。
【0031】
また、本発明に係るケーシングパイプにあっては、前記管体の上端部分において、施工機に対して係止されて引抜反力を取り出すチャック装置が設けられていることが、好適である。このようなチャック装置を設けることにより、地盤に貫入させたケーシングパイプの上端に対して施工機を連結して、ケーシングパイプによる杭体の圧入反力を効率的に且つ簡単に取り出すことが可能となり、作業の迅速化等も図られ得る。
【0032】
さらに、本発明は、前述の如き本発明に従う杭体の施工方法により施工された杭体を有する基礎構造体も、特徴とする。なお、かかる杭体は、支持杭や摩擦杭、土留め用親杭などの各種杭体が含まれるものであり、基礎構造体には、建築構造物の他、土留壁等の土木構造物も含まれる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、地盤に貫入させたケーシングパイプの引抜反力を利用して杭体に大きな圧入力を及ぼすことで、施工機を大型化したり杭体をハンマリングしたり等することなく、杭体を地盤に対して圧入施工することが可能となる。それ故、杭体の施工を、騒音や振動の問題を殆ど生ずることなく、小型の施工機を用いて狭い敷地でも効率的に行うことが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に従う杭体の施工方法の実施に用いられる施工装置の一具体例を例示的に示す概略説明図。
【図2】図1に示された施工装置に採用されるケーシングパイプの一具体例を示す要部正面図。
【図3】図1に示された施工装置に採用されるオーガースクリュの一具体例を示す要部正面図。
【図4】図2に示されたケーシングパイプを地盤に貫入させた状態下で地盤からの反力を取り出すための一具体的構造を示す要部正面図。
【図5】図1〜4に示された施工装置を用いて本発明方法に従って杭体施工を行う工程説明図。
【図6】図5に続く杭体施工の工程説明図。
【図7】図6に続く杭体施工の工程説明図。
【図8】本発明において採用され得るケーシングパイプの別の具体例を示す要部正面図。
【図9】図8に示されたケーシングパイプを用いて本発明方法に従う杭体施工を行う工程説明図。
【図10】図9に続く杭体施工の工程説明図。
【図11】図10に続く杭体施工の工程説明図。
【図12】図2に示されたケーシングパイプを分割構造とする場合に採用され得る連結部構造の一具体例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0036】
図1には、本発明方法に実施に用いられる施工装置の一例の概略図が示されている。この施工装置10は、自走するクローラ式のクレーン型杭打装置であり、クローラ部分12に対して旋回可能な本体部分14を備えている。本体部分14には、リーダー16が、下部支承部18とバックステー20とによって地盤22に対して鉛直に支持されるようになっている。なお、リーダー16は、本体部分14に対して、油圧シリンダ機構等により傾動および倒伏可能とされている。
【0037】
また、リーダー16には、長さ方向に延びるガイドレールが設けられており、このガイドレールで案内されて上下移動可能に中貫減速機24が装着されている。この中貫減速機24は、オーガー駆動装置と杭圧入装置とを兼ねている。具体的には、オーガーや杭の上端を保持するチャッキング装置を備えていると共に、図示しない油圧シリンダ機構や油圧モータ等の駆動手段を備えている。そして、オーガーや杭の上端を保持せしめつつ、オーガーに対して正方向及び逆方向の回転駆動力を及ぼし得ると共に、オーガーや杭に対して圧入方向及び引抜方向の軸方向駆動力を及ぼし得るようになっている。
【0038】
なお、このような施工装置が備える基本構造は、従来の杭体の施工装置においても公知であるから、詳細な説明を省略する。換言すれば、従来の各種公知の杭体施工装置が、本発明方法の実施に際して採用可能であり、例えばクローラに代えて車輪を備えた自走構造を備えたものや、リーダー16として一軸リーダー又は二本構式リーダーを備えたもの、杭打専用機の他にクレーンやショベルカー等を用いた杭施工機等が何れも採用可能である。
【0039】
さらに、本発明方法の実施に際して施工装置と共にそれぞれ用いられるケーシングパイプ26とオーガー28の各一例が図2及び図3に示されている。
【0040】
ケーシングパイプ26は、ストレートな管体である円筒部30の外周面に対して螺旋状の反力羽根32が設けられている。かかる反力羽根32は、ケーシングパイプ26の軸方向の全長に亘って連続して、一定の形状及びリード角で形成されている。尤も、要求される杭体の圧入反力や地盤性状等を考慮して、反力羽根32の大きさやリード角等を適宜に設定することが出来るだけでなく、反力羽根32をケーシングパイプ26の軸方向において部分的に形成することも可能である。具体的には、例えばケーシングパイプ26の中間位置よりも先端側だけに反力羽根32を形成したり、リボンスクリューやスリットスクリュー等を反力羽根32として採用することも可能である。
【0041】
また、ケーシングパイプ26の下端部分には、下方に突出する複数のビット(掘削用爪)34が突設されている。なお、ケーシングパイプ26は、反力羽根32やビット34を含めて剛性の大きい金属材で形成されるが、その軸方向の長さ寸法は、施工条件等に応じて適宜に選択可能とされるのが望ましい。かかる軸方向長さの選択方法としては、複数種類のケーシングパイプ26を予め準備して、それらの中から選択することも可能であるが、軸方向で相互に連結することで長さを調節可能としたケーシングパイプ26が一層好適に用いられる。そこにおいて、解除可能な軸方向での連結構造は、ピンやボルト等による連結の他、各種の係止構造が何れも採用可能である。
【0042】
一方、オーガー28は、図3に示されているように、オーガースクリュであって、軸管36の外周面を螺旋状に一定のリード角で延びるスクリュ羽根38が設けられていると共に、軸管36及びスクリュ羽根38の各先端部分には複数のビット(掘進用爪)40が突設されている。なお、オーガー28としては、従来から公知の各種構造のオーガースクリュを採用可能であり、例えば、本実施形態では軸管36の周囲に二重螺旋状(二条螺旋状)に延びる一対のスクリュ羽根38,38が形成されているが、単一(一条)のスクリュ羽根38でも良い。また、オーガー28は、ビット40が形成された先端部分と中間部分とが着脱可能な別体構造とされていても良いし、軸方向で相互に着脱可能に連結されることによりオーガー28の長さ寸法を適宜に変更可能とすることも可能である。更にまた、オーガー28のスクリュ羽根38も、軸管36の全長に亘って形成する他、例えば軸管36の下端から所定長さに亘る下側部分だけにスクリュ羽根38を形成する等しても良い。
【0043】
また、かかるオーガー28は、そのスクリュ羽根38の外径寸法がケーシングパイプ26の内径寸法よりも小さくされており、且つオーガー28の軸方向長さがケーシングパイプ26よりも大きくされている。そして、図1に示されているように、ケーシングパイプ26に対してオーガー28が挿し入れられるようになっている。
【0044】
更にまた、ケーシングパイプ26には、そこに挿通されたオーガー28を連結する連結手段42が設けられている。かかる連結手段42は、オーガー28とケーシングパイプ26を軸方向および周方向で相対変位不能に連結させて一体的回転手段を構成するものであって、且つ必要に応じて連結状態を解除可能なものであれば良い。具体的には、例えば、ケーシングパイプ26の上端の周壁部分に対して径方向対向位置に貫通孔を形成すると共に、オーガー28の軸管36にも径方向貫通孔を形成し、互いに位置合わせした両者の貫通孔に跨がって、連結ロッドを挿通せしめた構造等によって、連結手段42が構成され得る。
【0045】
また一方、オーガー28は、その上端部が中貫減速機24に対して貫通された状態で把持固定されることで、施工装置によって鉛直状態で吊り下げ支持されるようになっている。また、このオーガー28に外挿されたケーシングパイプ26は、その上端部において連結手段42でオーガー28に連結されることにより、図1に示されているように、オーガー28と共に、施工装置によって鉛直状態で吊り下げ支持され得るようになっている。
【0046】
そして、このように相互に連結されて吊り下げ支持されたオーガー28とケーシングパイプ26は、中貫減速機24によってオーガー28に回転駆動力が及ぼされることにより、一体的に中心軸回りで回転駆動されるようになっている。また、中貫減速機24がリーダー16に沿って駆動変位されることにより、オーガー28およびケーシングパイプ26に軸方向駆動力が及ぼされて一体的に中心軸方向で変位駆動され得るようになっている。
【0047】
なお、オーガー28は、ケーシングパイプ26に挿通されて連結手段42で連結された、図1に示す状態において、その上端部がケーシングパイプ26から上方に突出して中貫減速機24で把持されるようになっている一方、その下端部がケーシングパイプ26の下端開口部付近に位置せしめられている。これにより、ケーシングパイプ26の下端開口部がオーガー28の先端部分で開口面積を制限されて略塞がれた状態とされている。なお、本実施形態では、連結手段42で連結された状態下、ケーシングパイプ26の下端開口部から、オーガー28の下端部が僅かに突出せしめられている。
【0048】
さらに、施工装置には、リーダー16の下端部分に位置してチャック装置44が設けられている。このチャック装置44は、ケーシングパイプ26に係止されることによりリーダー16をケーシングパイプ26に対して軸方向で相対変位不能に連結させるものである。具体的には、図4に示されているように、リーダー16の下端から前方に向かって突出する係止爪46が設けられている一方、ケーシングパイプ26には、その上端部分の外周面において、周方向に延びる係止溝48が形成されている。
【0049】
なお、かかる係止爪46は、平面視においてU字又は半円或いはコ字状とされており、ケーシングパイプ26の係止溝48に対して側方から嵌め入れられることにより、係止溝48に対して周方向で所定長さに亘って或いは周方向で複数箇所において嵌合係止されるようになっていることが望ましい。また、係止爪46は、リーダー16に対して水平方向に変位可能とされることで、施工装置を位置決めしたままで係止爪46の係止溝48への係合と離脱を行うことが出来るようになっていることが好適である。
【0050】
次に、上述の如き施工装置を用いての本発明に従う杭体の施工方法の一実施形態が、図5〜7において順次の工程として示されている。なお、これらの工程図では、施工装置の図示を省略する。
【0051】
すなわち、杭体施工に際しては、先ず、図1に示されていたように、ケーシングパイプ26に挿通して一体的に連結せしめたオーガー28の上端部分を施工装置のリーダー16に装着した中貫減速機24で支持せしめて、図5(A)に示されているように、それらオーガー28とケーシングパイプ26を鉛直となる状態で地盤22上で吊り下げ、地盤22における杭施工位置に位置決めする。
【0052】
位置決め後、中貫減速機24を作動させて回転駆動力をオーガー28に及ぼすことにより、連結手段42で一体化されたオーガー28とケーシングパイプ26を同一中心軸上で同一方向に一体回転させる。その際、リーダー16で上下方向に案内される中貫減速機24に対して、貫入方向(鉛直下方向)への荷重(圧入力)を及ぼすことも可能であるが、好適には、中貫減速機24の上下方向への移動を略フリーとする等して、ケーシングパイプ26の一回転で反力羽根32のリード又はピッチに相当する距離だけ貫入するようにされる。
【0053】
これにより、図5(B)に示されているように、オーガー28のビット40やケーシングパイプ26のビット34と反力羽根32による掘進作用に基づいて、オーガー28とケーシングパイプ26が中心軸回りに一体的に地盤22の中へ正方向に回転貫入されるケーシングパイプ貫入工程が行われる。その際、オーガー28及びケーシングパイプ26に圧入力を及ぼさないことで、ケーシングパイプ26の反力羽根32の外周縁部による地盤22の縁切りが軽減乃至は回避されて、地盤22の乱れが防止される。また、オーガー28とケーシングパイプ26を中心軸回りに正方向に一体回転させることにより、ケーシングパイプ26の下端開口部に対するオーガー28の先端部分による覆蓋作用が効果的に発揮され、掘削土のケーシングパイプ26内への侵入が防止され得る。
【0054】
そして、図5(C)に示されているように、オーガー28とケーシングパイプ26を目的とする深さまで地盤22に貫入させて、ケーシングパイプ貫入工程が完了したら、連結手段42を解除して、ケーシングパイプ26に対するオーガー28の相対的な回転及び軸方向の移動を許容する。その後、オーガー28に対して、中貫減速機24による回転駆動力と必要に応じて圧入力とを及ぼすことにより、図5(D)に示されているように、ケーシングパイプ26を残置したまま、オーガー28だけを更に地盤22に対して、オーガー28の中心軸回りに正方向回転させて、掘進させることで、ケーシングパイプ26の下端開口部よりも下方まで杭孔を穿孔する穿孔工程を行う。そして、予め実施した地盤調査の結果から求められた杭体の先端支持層の深さを考慮して、目的とする先行掘削深に達するまで、オーガー28による掘削を行う。
【0055】
目的とする深さまで先行掘削を行い穿孔工程が完了したら、図5(E)に示されているように、連結手段42を解除したままで、中貫減速機24によりオーガー28を引き上げる。なお、このオーガー28の引き上げは、オーガー28を無回転で、或いは正回転させたままで行うことが望ましく、それによって、オーガー28による掘削土をオーガー28のスクリュ羽根38上に載せたままで、オーガー28と同時に掘削土も地上に回収するのが良い。
【0056】
このようにオーガー28を回収することにより、地盤22には、ケーシングパイプ26だけが所定深さの貫入状態で残置されることとなる。そして、図6(A)に示されているように、施工装置を用いて或いは別のクレーン装置等を用いて、施工する杭体50を吊り込んで、かかる杭体50をケーシングパイプ26内に挿し入れる。なお、杭体50は、要求される性能等に応じてコンクリート杭や鋼管杭などの各種が採用可能である。
【0057】
その際、ケーシングパイプ26内は、オーガー28が掘削土と共に引き抜かれたことで実質的に中空状態とされており、この中空のパイプ内をオーガー28の先堀孔として杭体50を地盤22に挿し入れる。その後、図6(B)に示すように、施工装置の自重を利用して、圧入シャフト兼用のオーガー28により杭体50に圧入力を及ぼすことで、杭体50を、ある程度の深さまで地盤22に対して圧入する。なお、杭体50への圧入力の作用に際しては、オーガー28とは別体の圧入シャフトを用いても良い。
【0058】
さらに、施工装置10において、リーダー16の下端に設けられたチャック装置44の係止爪46を、地盤に貫入されたケーシングパイプ26の上端部の係止溝48に差し入れて係止させることにより、ケーシングパイプ26をリーダー16に対して鉛直方向に連結固定する。かかる状態下で、リーダー16で支持せしめた中貫減速機24による圧入力を、オーガー28を介して、杭体50に及ぼす。
【0059】
これにより、図6(C)に示されているように、ケーシングパイプ26の外周面に対して及ぼされる地盤22の引抜反力(引抜抵抗力)となる主動的な土圧を、杭体50の地盤22中への圧入の反力として活用して、ケーシングパイプ26の下端開口部から杭体50を突出させて地盤に圧入する杭体圧入工程を行う。この時、ケーシングパイプ26の上端部分において、施工装置に係止されたチャック装置44によって、引抜反力が取り出される。なお、中貫減速機24は、リーダー16に対して圧入方向に駆動されて、オーガー28から杭体50に圧入力を及ぼすことから、中貫減速機24からリーダー16に及ぼされる圧入反力が、ケーシングパイプ26を通じて地盤22に伝達されて、地盤22で負担され得るのである。
【0060】
特に、ケーシングパイプ26は、その外周面に反力羽根32を備えており、且つ圧入力を実質的に及ぼされない状態で地盤22に回転貫入されていることにより、地盤22の土圧が引抜抵抗力として一層効果的に及ぼされ得るのである。具体的には、例えば図6(C)に記載の土圧作用領域52の総土重量やその周辺摩擦力を考慮して、地盤22の安息角や比重等に応じて引抜抵抗力の有効値が求められることとなる。
【0061】
それ故、施工装置の自重を遥かに超えた大きな圧入力を、杭体50に及ぼすことが可能となるのであり、その結果、施工装置の小型化や油圧シリンダ機構等の駆動装置の小型化が達成されると共に、大きな振動や騒音を伴うことなく、杭体50を大きな圧入力で貫入施工することが可能となり、施工に伴う周辺環境への悪影響が飛躍的に改善され得る。
【0062】
また、かかる杭体50の圧入に際しては、ケーシングパイプ26の内孔だけでなく、予め更に掘削されたオーガー28による先行掘削孔の存在により、一層優れた施工作業性が実現され得るのである。
【0063】
なお、杭体の頭部(上端部)を地盤22の表面から所定深さ以上にまで埋入する場合には、図6(D)に示されているように、従来公知のヤットコ54等を適宜に使用して施工することも可能である。
【0064】
そして、杭体50を目的とする支持層まで圧入施工した後、かかる杭体50を残して、ケーシングパイプ26を地盤22から引き上げて取り除く。その際、チャック装置44を解除し、ケーシングパイプ26をリーダー16に対して軸方向に相対変位可能で且つ軸回りに回転可能とすると共に、連結手段42により、ケーシングパイプ26を、再び、オーガー28に連結せしめて、ケーシングパイプ26をオーガー28に対して軸方向および周方向で一体化する。なお、かかる連結手段42は、ケーシングパイプ26の上端部分を、オーガー28の下側部分に対して連結するようにされる。
【0065】
かかる状態下、中貫減速機24によりオーガー28を逆回転させつつ鉛直上方(引抜方向)に変位させることにより、ケーシングパイプ26を逆回転させつつ地盤22から引き上げて抜き取る、ケーシングパイプ抜去工程を行う。その際、圧入施工した杭体50の上端部がケーシングパイプ26の上端開口部から突出している等の理由で、ケーシングパイプ26の上端部へのオーガー28の下側部分の連結固定が困難な場合には、図7(A)に示されているように、例えば下端がケーシングパイプ26に固定されると共に上端がオーガー28に固定される中空筒体構造のパイプキャップ(ケーシングガイド)56等を用いて、ケーシングパイプ26にオーガー28を連結することが有効である。
【0066】
また、ケーシングパイプ26の引き上げに際しては、ケーシングパイプ26の一回転で反力羽根32のリード(ピッチ)に相当する距離だけ軸方向に引き上げられるように、引き上げ力を調節したりフリーにすることも出来る。しかし、反対に、ケーシングパイプ26の反力羽根32による土の送り作用を利用して、杭体50の周囲の土に対して圧密作用を施すことも可能である。
【0067】
具体的には、例えば、図7(B)に示されているように、ケーシングパイプ26の引き上げに際して、中貫減速機24による逆回転駆動力を、オーガー28を介して、ケーシングパイプ26に及ぼすことにより、ケーシングパイプ26の反力羽根32による土の送り作用に基づいて、ケーシングパイプ26が引き抜かれた後の杭体50の周囲領域に対して、土を下方に強制的に送り込んで圧密状態とする逆転圧密工程を行うことが可能となる。
【0068】
かかる作業は、具体的には、例えばケーシングパイプ26の引き上げに際して、ケーシングパイプ26を逆方向に回転駆動させつつ、その一回転毎の引き上げ量が一回転での反力羽根32のリード(ピッチ)に満たない引き上げ量となるように下方への圧入方向力(地盤への押込方向の荷重)乃至は引抜制限力を及ぼすことも可能である。しかし、より好適には、ケーシングパイプ26を所定長さだけ引き上げる毎に、ケーシングパイプ26の軸方向位置を固定せしめつつ(要するに、引上方向へのケーシングパイプ26の変位を阻止乃至は制限しつつ)、ケーシングパイプ26を逆方向に回転駆動させることによって実現され得る。
【0069】
また、ケーシングパイプ26の逆転作動による土の圧密施工に際しては、地盤22上で、ケーシングパイプ26の周囲に対して、掘削土58を埋め戻して空隙を積極的に埋める作業を行うことが望ましい。このようにして、杭体50の周囲に土を圧密することにより、杭体50に対する地盤22の周辺摩擦力の向上が図られて、杭体50の支持力の更なる向上が達成され得る。
【0070】
このようにして、ケーシングパイプ26の引抜きと、ケーシングパイプ26の引抜後の掘削孔への土の埋め戻しおよび圧密の施工を行うことにより、図7(C)に示されているように、杭体50の打設施工を完了することが出来るのである。そして、かかる杭体50の打設を必要数だけ繰り返すことにより、適当数の杭体50によって支持力を得る基礎構造体が構成される。
【0071】
ところで、上述の実施形態は本発明の一例であって、本発明はかかる実施形態の記載によって限定されるものでない。
【0072】
具体的には、例えば図8に示されているように、ケーシングパイプ60において円筒部30の下端開口部を開閉可能とする蓋部材として、先細形状の杭先端部を形成するキャップ部62を採用することも可能である。このキャップ部62は、円筒部30の下端開口部に対して着脱可能とされていても良いが、図8に示されているものは、逆円錐形状乃至は漏斗形状とされており、母線方向に延びる分割線64によって周上で複数(例えば2つ、或いは3つ以上)に分割構造とされている。そして、キャップ部62の上端大径側の外周縁部に対して、各分割片66の上端がヒンジ連結されており、それによってキャップ部62が開閉可能とされている。
【0073】
このようなキャップ部62を備えたケーシングパイプ60を用いることにより、前記実施形態に比して、例えばオーガー28を用いることなく杭体施工を行うことも可能となる。また、併せて、図8に示されている如き駆動用の延長ロッド68を用いることにより、ケーシングパイプ60の軸方向長を超えて、先行掘削孔を穿つことも可能となる。この延長ロッド68は、ケーシングパイプ60に内挿可能な長手ロッド形状を有しており、外周面には適当な軸方向間隔で連結用孔70が設けられている。一方、ケーシングパイプ60の円筒部30にも、連結用孔72が形成されており、ケーシングパイプ60の連結用孔72から延長スリーブ68の連結用孔70に対して連結ピンが差し入れられることにより、ケーシングパイプ60に対して延長スリーブ68を所定長さだけ挿し入れた位置で両者が相互に一体的に連結固定されるようになっている。
【0074】
かくの如きケーシングパイプ60と延長スリーブ68を用いた杭体施工の一具体例が、図9〜11に示されている。先ず、図9(A)〜(C)に示されているように、ケーシングパイプ60の上端開口部から延長スリーブ68を挿し入れ、両者の連結用孔70,72を連結ピン74で連結せしめた状態で、延長スリーブ68の上端を、チャック部材76を介して、施工装置の中貫減速機(図示省略)で把持せしめて地盤22上に吊り下げ支持し、前記実施形態と同様に正方向に回転駆動させつつ地盤22に貫入させるケーシングパイプ貫入工程を行う。また、貫入の進行に伴って、必要になった都度、連結ピン74による連結位置を変更することで、ケーシングパイプ60と延長スリーブ68からなるケーシングパイプ60の実質的な掘削可能長を次第に増大させる。
【0075】
なお、かかる掘削進行に際しては、ケーシングパイプ60のキャップ部62に対して、閉じる方向に先端土圧が作用することから、複数の分割片66は閉じた状態に保持され得る。尤も、これら複数の分割片66を閉じた状態に保持する解除可能な係止部材等の保持手段を設けても良い。
【0076】
そして、目的とする貫入深さまで達したら、図9(D)の如く、ケーシングパイプ60と延長スリーブ68を逆方向に回転させつつ所定距離だけ引き抜いて、ケーシングパイプ60のキャップ部62の先端に作用している土圧を解除させ、キャップ部62を開放可能にする。なお、かかる引抜作動に際しては、ケーシングパイプ60の周囲の地盤を乱して縁切りしないように、ケーシングパイプ60に無理な引抜力を作用させることなく、ケーシングパイプ60の反力羽根32の逆回転に対応した距離だけケーシングパイプ60が引抜方向に移動するようなフリー状態で行うことが有効である。
【0077】
併せて、図10(A)の如く、延長スリーブ68の上端からチャック部材76を外して、開放された上端開口部から杭体50を吊り込み、延長スリーブ68およびケーシングパイプ60に挿し入れる。挿し入れた杭体50は、その自重により、ケーシングパイプ60の先端まで達し、ケーシングパイプ60のキャップ部62を押し開いてケーシングパイプ60の先端開口部から更に下方に突出せしめられる。
【0078】
その後、杭体50に対して、地盤22への圧入力を及ぼすことで、杭体50を更に地盤に圧入する杭体圧入工程において、その先端部を地盤22の支持層78に達するまで圧入させる。その際、杭体50の圧入力として施工装置の自重を利用するだけでなく、図10(B)に示されているように、延長スリーブ68の上端に係止リング80を取り付けて、この係止リング80に係止させた引張ワイヤ82を施工装置のリーダー等に連結することにより、かかる引張ワイヤ82を介して作用するケーシングパイプ60の地盤22への固定力を反力として利用して、中貫減速機24による杭体50の圧入力を得ることが可能である。
【0079】
さらに、図10(C)および図11(A)〜(C)に示されているとおり、前述の実施形態と同様に、ケーシングパイプ60を逆回転させつつ地盤22から引き抜くことにより、杭体50を残置して施工を完了することが出来る。また、ケーシングパイプ60の引抜工程では、ケーシングパイプ60の逆転作動による土の圧密作用を利用して、杭体50の周囲の地盤を圧密させて摩擦支持力の向上を図ることも可能である。
【0080】
また、前記実施形態や図9〜11の形態において用いられているケーシングパイプ26,60として、それが軸方向で相互に着脱可能な複数本の分割構造とされていても良いことは前述のとおりであり、かかる連結構造としては何等限定されることなく各種構造が採用可能であることも、前述のとおりであるが、図12に、その一具体例を示す。
【0081】
図12は、ケーシングパイプを協働して構成する上側ケーシング84と下側ケーシング86が、連結ケーシング88によって、離脱可能に連結され得る構造とされている。連結ケーシング88は、上下のケーシング84,86の各円筒部30,30よりも一回り大径とされており、連結ケーシング88に対して、上側ケーシング84と下側ケーシング86の各円筒部30,30が、上下から嵌め入れられるようになっている。特に、本実施形態では、かかる連結ケーシング88が、上側ケーシング84への外嵌状態で、上側ケーシング84に対して固着されて一体化されている。
【0082】
連結ケーシング88に嵌め入れられる上側ケーシング84の下端縁部には、下方に向かって突出する鉤型の係止片90が形成されている。一方、連結ケーシング88に嵌め入れられる下側ケーシング86の上端縁部には、上方に向かって開口する鉤型の係止溝92が形成されている。そして、連結ケーシング88の内部において、上側ケーシング84の係止片90が下側ケーシング86の係止溝92に対して軸方向(上下方向)に差し入れられ、更に周方向で上下ケーシング84,86が相対回転されることで係止片90が係止溝92に対して各鉤部が相互に嵌まり合って軸方向での相対的な引抜変位を阻止し得るようになっている。
【0083】
また、連結ケーシング88には、内周面に沿って滑動可能なロック片94が設けられており、このロック片94が、連結ケーシング88に形成されたガイド孔96に係合した係合突部98で案内されて位置決めされるようになっている。そして、ロック片94が上端の控え位置に配された状態下では、上下ケーシング84,86の相対回転による係止片90と係止溝92との係止及び解除の操作が許容されるようになっている。一方、係止片90を係止溝92に係止させた状態下で、ロック片94を下方に変位させて係止溝92に入り込ませて位置させることにより、上下ケーシング84,86の相対回転が阻止されて、上下ケーシング84,86が、係止片90と係止溝92との係止作用による連結状態に保持され得るようになっている。
【0084】
その他、一々列挙はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良を加えた態様で実施可能であり、且つ、それら実施態様が本発明を趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0085】
22:地盤、26,60:ケーシングパイプ、28:オーガー、32:反力羽根、44:チャック装置、50:杭体、84:上側ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に対する杭体の施工方法であって、
外周面に反力羽根を設けたケーシングパイプを用い、該ケーシングパイプを中心軸回りに正方向回転させて前記地盤に貫入させるケーシングパイプ貫入工程と、
該ケーシングパイプに差し入れた前記杭体に対して、該ケーシングパイプの外周面に対して該地盤から及ぼされる反力を利用して圧入力を及ぼし、該ケーシングパイプの下端開口部から該杭体を突出させて該地盤に圧入させる杭体圧入工程と、
該地盤に圧入させた該杭体を残して、該ケーシングパイプを逆方向回転させつつ該地盤から抜き取るケーシングパイプ抜去工程と
を、有することを特徴とする杭体の施工方法。
【請求項2】
前記ケーシングパイプの前記反力羽根が一定のリード角で形成されており、前記ケーシングパイプ貫入工程において、該ケーシングパイプの一回転毎に該反力羽根のリードに相当する深さずつ前記地盤に対して該ケーシングパイプを貫入させる請求項1に記載の杭体の施工方法。
【請求項3】
前記ケーシングパイプ貫入工程において、該ケーシングパイプの下端開口部を閉鎖させて内部への土の侵入を制限させつつ中心軸回りに正方向回転させて、該ケーシングパイプを前記地盤に貫入させる請求項1又は2に記載の杭体の施工方法。
【請求項4】
前記ケーシングパイプ貫入工程において、該ケーシングパイプにオーガースクリュを内挿位置せしめ、該オーガースクリュと該ケーシングパイプを同一中心軸上で同一方向に正方向回転させることにより、該オーガースクリュの下端部分で該ケーシングパイプの下端開口部を閉鎖させて内部への土の侵入を制限させつつ地盤に貫入させる請求項3に記載の杭体の施工方法。
【請求項5】
前記ケーシングパイプ貫入工程によって該ケーシングパイプを前記地盤に対して貫入させた後、該ケーシングパイプを固定すると共に、前記オーガースクリュを正方向回転させることにより、該ケーシングパイプの下端開口部よりも下方まで杭孔を穿孔する穿孔工程を行う請求項4に記載の杭体の施工方法。
【請求項6】
前記ケーシングパイプの下端開口部に対して開閉可能な蓋部材を装着せしめ、前記ケーシングパイプ貫入工程において、該蓋部材で該ケーシングパイプの下端開口部を閉鎖させた状態で該ケーシングパイプを前記地盤に貫入させる一方、前記杭体圧入工程において、該蓋部材を開放させた該ケーシングパイプの下端開口部から前記杭体を突出させて該地盤に該杭体を圧入させる請求項3に記載の杭体の施工方法。
【請求項7】
前記ケーシングパイプ抜去工程において、前記ケーシングパイプにおける前記反力羽根の回転作用により前記杭体の周囲において土を下方へ押し込んで圧密させる請求項1〜6の何れか1項に記載の杭体の施工方法。
【請求項8】
前記ケーシングパイプ抜去工程において、前記ケーシングパイプに対して前記地盤への押込方向の荷重を及ぼしつつ該ケーシングパイプを逆方向回転させることにより前記杭体の周囲において土を圧密させる請求項7に記載の杭体の施工方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の杭体の施工方法に用いられるケーシングパイプであって、
中空構造の管体の外周面上に所定のリード角を有する反力羽根が形成されていることを特徴とする杭体施工用のケーシングパイプ。
【請求項10】
前記管体に内挿されるオーガースクリュと、該オーガースクリュを該管体と同一中心軸上で一体的に回転させる一体的回転手段とを、備えている請求項9に記載のケーシングパイプ。
【請求項11】
前記管体の下端開口部を開閉可能とする蓋部材を備えている請求項9に記載のケーシングパイプ。
【請求項12】
前記管体の下端部分に掘削用爪が設けられている請求項9〜11の何れか1項に記載のケーシングパイプ。
【請求項13】
前記管体の上端部分において、施工機に対して係止されて引抜反力を取り出すチャック装置が設けられている請求項9〜12の何れか1項に記載のケーシングパイプ。
【請求項14】
請求項1〜8の何れか1項に記載の杭体の施工方法により施工された杭体を有することを特徴とする基礎構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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