説明

杭打機

【課題】 単一の振止め装置を用いて外径寸法が異なる複数種類の杭の芯振れを抑える。
【解決手段】振止め装置21を、杭16を左,右方向から挟込む左,右のアーム部材22,24と、左アーム部材22に支持された左前レバー27及び左後レバー29と、右アーム部材24に支持された右前レバー36及び右後レバー38と、左,右のレバーシリンダ34,43とにより構成し、これら各レバーシリンダ34,43により、左前レバー27、左後レバー29、右前レバー36、右後レバー38を、杭16の軸中心Oに向けて接近、離間する方向に無段階に回動させる。これにより、左前レバー27、左後レバー29、右前レバー36、右後レバー38を、外径寸法が異なる杭16または杭16′の外周面に確実に当接させることができ、単一の振止め装置21を用いて外径寸法が異なる複数種類の杭の芯振れを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建設工事等において地中に杭を打込む作業に好適に用いられる杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高層建築物の建設工事現場においては、地盤の基礎を固めるために地中に杭を打込む作業を行う。そして、この杭打ち作業に用いられる杭打機は、通常、自走可能な車体と、該車体に支持され上,下方向に延びるリーダと、該リーダに沿って昇降可能に設けられたオーガあるいはドロップハンマ等の作業装置とにより大略構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−242181号公報
【0004】
ここで、従来技術による杭打機は、オーガによって杭を回転させながら地中に押込むときに、この杭が前,後方向、左,右方向に芯振れするのを抑えるための振止め装置を備えている。そして、この振止め装置は、杭を挟んで左,右両側に開,閉可能に配置された左,右のガイド部材を有し、これら左,右のガイド部材には杭の外周面に対応する半円弧状のガイド面が設けられている。
【0005】
そして、左,右のガイド部材を閉じて杭を挟込み、各ガイド部材のガイド面を杭の外周面に摺動可能に嵌合させることにより、杭の芯振れを抑えて杭打ち作業を円滑に行うことができる構成となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来技術による振止め装置は、左,右のガイド部材に設けられたガイド面を杭の外周面に嵌合させて芯振れを抑える構成となっている。このため、ガイド面の円弧形状(曲率)に対応した外径寸法を有する杭の芯振れを抑えることはできるものの、例えばガイド面の円弧形状に合わない小さな外径寸法を有する杭を用いた場合には、この小径な杭の外周面とガイド面との間に大きな隙間が形成されてしまい、その芯振れを抑えることができない。
【0007】
これに対し、例えば小径な杭の外周面に嵌合する円弧状のガイド面をもったアタッチメントを予め用意し、この杭の外径寸法に対応したアタッチメントを左,右のガイド部材に取付けることにより、小径な杭の芯振れを抑えることが考えられる。
【0008】
しかし、例えば外径寸法が異なる複数種類の杭を用いて杭打ち作業を行う場合には、杭の種類が変わるたびに当該杭の外径寸法に対応したアタッチメントに交換する作業が必要となり、このアタッチメントの交換作業を行うことにより、杭打ち作業全体の作業性が低下してしまうという問題がある。また、外径寸法が異なる杭の種類と等しい種類のアタッチメントを用意することにより、部品点数の増大、部品管理の煩雑化を招くという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、単一の振止め装置を用いて外径寸法が異なる複数種類の杭の芯振れを抑えることができるようにした杭打機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため本発明は、上,下方向に延びるリーダと、該リーダに沿って昇降可能に設けられ杭を地中に打込む作業装置と、該作業装置によって打込まれる杭の芯振れを抑える振止め装置とを備えてなる杭打機に適用される。
【0011】
そして、請求項1の発明の特徴は、振止め装置は、基端側がリーダに回動可能に支持され先端側が自由端となって杭を左,右方向から挟込む左,右のアーム部材と、これら左,右のアーム部材にそれぞれ回動可能に支持された左,右のレバーと、杭の径寸法に応じて左,右のレバーを杭に対して接近、離間する方向に無段階に回動させる左,右のアクチュエータとにより構成したことにある。
【0012】
請求項2の発明は、左レバーは左アーム部材に複数個設け、右レバーは右アーム部材に複数個設ける構成としたことにある。
【0013】
請求項3の発明は、左アーム部材に設けられた各左レバー間にはこれらを同期して回動させるための左リンクを設け、右アーム部材に設けられた各右レバー間にはこれらを同期して回動させるための右リンクを設ける構成としたことにある。
【0014】
請求項4の発明は、左,右のアーム部材の先端側には、これら左,右のアーム部材を杭を挟込んだ状態に固定する固定ピンを着脱可能に設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、作業装置によって地中に打込まれる杭を左アーム部材と右アーム部材とによって左,右方向から挟込み、左アーム部材に支持された左レバーをアクチュエータによって回動させると共に右アーム部材に支持された右レバーをアクチュエータによって回動させると、これら左,右のレバーは、杭に対して接近、離間する方向に無段階に回動することにより、当該杭の外周面に当接してその芯振れを抑える。この場合、左,右のレバーは、杭に対して接近、離間する方向に無段階に回動することにより、杭の外径寸法に係わらず当該杭の外周面に確実に当接するので、単一の振止め装置を用いて、外径寸法が異なる複数種類の杭の芯振れを抑えることができる。従って、複数種類の杭を連続的に地中に打込む場合に、例えば杭の外径寸法に対応したアタッチメント等を取付ける作業を不要にでき、杭打ち作業全体の作業性を高めることができる。また、例えば外径寸法が異なる複数種類の杭に応じた複数種類のアタッチメント等を用意する場合に比較して、部品点数の削減、部品管理の簡略化を図ることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、左アーム部材に設けた複数の左レバーと、右アーム部材に設けた複数の右レバーとによって杭を外周側から取囲むことができる。従って、各左レバーを回動させて杭に当接させると共に、各右レバーを回動させて杭に当接させることにより、杭が前,後方向、左,右方向に芯振れするのを各レバーによって確実に抑えることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、左アーム部材に設けられた各左レバーを左リンクによって同期して回動させると共に、右アーム部材に設けられた各右レバーを右リンクによって同期して回動させることにより、これら各左レバーと各右レバーとを確実に杭の外周面に当接させることができる。従って、杭の外周面を複数のレバーによって保持することができ、当該杭の芯振れを抑えることができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、左,右のアーム部材の先端側から固定ピンを取外し、これら各アーム部材の先端側を離間させることにより、左,右のアーム部材間に容易に杭を配置することができる。そして、左,右のアーム部材によって杭を挟込んだ状態で、これら各アーム部材の先端側に固定ピンを取付けることにより、左,右のアーム部材によって杭を確実に挟込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る杭打機の実施の形態について、図1ないし図8を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
図中、1は杭打機を示し、この杭打機1は、例えば地盤の基礎を固めるために地中に杭を打込む作業を行うものである。そして、杭打機1は、後述の車体2、リーダ10、オーガ15、振止め装置21等により構成されている。
【0021】
2は自走可能な車体で、該車体2は、クローラ式の下部走行体3と、該下部走行体3上に旋回可能に搭載された上部旋回体4とにより大略構成されている。そして、上部旋回体4は、強固な支持構造体をなす旋回フレーム5と、該旋回フレーム5の前部左側に設けられ運転室を画成するキャブ6と、旋回フレーム5の後端側に設けられたカウンタウエイト7と、キャブ6とカウンタウエイト7との間に設けられ内部にエンジン等(図示せず)を収容した建屋カバー8とにより大略構成されている。また、上部旋回体4の前部側には、後述するリーダ10の下端側を支持するリーダブラケット9が設けられている。
【0022】
10は上部旋回体4の前部側に設けられ上,下方向に延びたリーダで、該リーダ10は、例えば鋼管等を用いて形成され、上部旋回体4のリーダブラケット9に下端側が支持された状態で上,下方向に延びている。また、リーダ10の長さ方向の中間部位と上部旋回体4との間には、リーダ10を地面に対して垂直な姿勢に保持する油圧シリンダ11が設けられている。ここで、リーダ10の外周側には、その長さ方向に沿って左,右一対のガイドレール10A(左側のみ図示)が設けられ、該ガイドレール10Aには、後述するオーガ15のガイドギブ15Aが摺動可能に係合する構成となっている。
【0023】
そして、リーダ10は、ガイドレール10Aにオーガ15のガイドギブ15Aを係合させることにより、オーガ15を上,下方向に円滑に移動(昇降)するように案内するものである。また、リーダ10の下端側にはモータ用ブラケット10Bが設けられ、該モータ用ブラケット10Bには、後述の昇降モータ12が取付けられる構成となっている。
【0024】
12はリーダ10のモータ用ブラケット10Bに取付けられた昇降モータ、13はリーダ10の上端側に回転可能に設けられたスプロケットで、昇降モータ12の出力軸とスプロケット13との間にはチェーン14が巻装され、該チェーン14の途中部位はオーガ15に接続されている。従って、昇降モータ12を作動させ、この昇降モータ12の出力軸とスプロケット13との間でチェーン14が周回することにより、チェーン14に接続されたオーガ15が、リーダ10のガイドレール10Aに沿って上,下方向に昇降する構成となっている。
【0025】
15はリーダ10に沿って昇降可能に設けられた作業装置としてのオーガで、該オーガ15は、杭16を回転させながら地中に打込むものである。ここで、オーガ15には、リーダ10のガイドレール10Aに摺動可能に係合する複数のガイドギブ15Aが設けられている。
【0026】
そして、オーガ15は、杭16の上端側を把持して回転させながら、昇降モータ12の作動によりリーダ10のガイドレール10Aに沿って下降することにより、杭16を徐々に地中に打込む(押込む)ものである。なお、図1ないし図4中に示す杭16は、オーガ15によって地中に打込まれる杭のうち外径寸法が最も大きな杭を示し、図5中に示す杭16′は、オーガ15によって地中に打込まれる杭のうち外径寸法が最も小さな杭を示している。
【0027】
17,17はリーダ10のモータ用ブラケット10Bに設けられた上,下の振止め用ブラケットで、図2ないし図5に示すように、各振止め用ブラケット17は後述の振止め装置21を支持するものである。ここで、各振止め用ブラケット17は、鋼板材等を用いてほぼ台形な平板状に形成され、その基端側はモータ用ブラケット10Bに溶接等の手段を用いて固着されている。そして、振止め用ブラケット17の先端側は、モータ用ブラケット10Bから左,右方向に突出した左,右の支持部17A,17Bとなっている。
【0028】
21はリーダ10の下端側に位置して振止め用ブラケット17に支持された振止め装置で、該振止め装置21は、オーガ15によって地中に打込まれる杭16が、前,後方向または左,右方向に芯振れするのを抑えるものである。ここで、振止め装置21は、図2ないし図5に示すように、後述する左,右のアーム部材22,24、左,右のレバー27,29,36,38、左,右のレバーシリンダ34,43等により構成されている。
【0029】
22は振止め用ブラケット17の左側の支持部17Aに回動可能に支持された左アーム部材で、該左アーム部材22は、後述する右アーム部材24との間で杭16を左,右方向から挟込むものである。そして、左アーム部材22は、杭16の外径寸法よりも大きな内径寸法をもって形成された円弧部22Aを有し、上方からみてほぼJ型に形成されている。
【0030】
ここで、左アーム部材22の基端部22Bは、振止め用ブラケット17の支持部17Aにピン23を用いて左,右方向に回動可能にピン結合され、自由端となった左アーム部材22の先端部22Cには、後述の固定ピン26が挿通されるピン挿通孔22Dが穿設されている。また、基端部22Bの近傍部位には、後述の左レバーシリンダ34を取付けるためのシリンダブラケット22Eが固着されている。そして、左アーム部材22の円弧部22Aには、後述の左前レバー27、左後レバー29が回動可能にピン結合される構成となっている。
【0031】
24は振止め用ブラケット17の右側の支持部17Bに回動可能に支持された右アーム部材で、該右アーム部材24は、杭16の外径寸法よりも大きな内径寸法をもって形成された円弧部24Aを有し、上方からみてほぼC型に形成されている。
【0032】
ここで、右アーム部材24の基端部24Bは、振止め用ブラケット17の支持部17Bにピン25を用いて左,右方向に回動可能にピン結合され、自由端となった右アーム部材24の先端部24Cには、後述の固定ピン26が挿通されるピン挿通孔24Dが穿設されている。また、基端部24Bの近傍部位には、後述の右レバーシリンダ43を取付けるためのシリンダブラケット24Eが固着されている。そして、右アーム部材24の円弧部24Aには、後述の右前レバー36、右後レバー38が回動可能にピン結合される構成となっている。
【0033】
従って、左アーム部材22がピン23を中心として左,右方向に回動し、右アーム部材24がピン25を中心として左,右方向に回動することにより、これら左,右のアーム部材22,24は、図3に示すように杭16を外周側から取囲む閉位置と、図4に示すように杭16を開放する開位置との間で開,閉する構成となっている。
【0034】
26は左アーム部材22の先端部22Cと右アーム部材24の先端部24Cとに着脱可能に取付けられる固定ピンで、該固定ピン26は、左アーム部材22のピン挿通孔22Dと右アーム部材24のピン挿通孔24Dとに挿通されるものである。そして、固定ピン26は、左,右のアーム部材22,24の先端部22C,24Cに取付けられることにより、左,右のアーム部材22,24を図3に示す閉位置に固定し、左,右のアーム部材22,24の先端部22C,24Cから取外されることにより、左,右のアーム部材22,24が図4に示す開位置へと移動するのを許すものである。
【0035】
27は左アーム部材22の円弧部22Aに支持ピン28を用いて回動可能に支持された左前レバーで、該左前レバー27は、図6に示す如く長さ方向の中間部位が屈曲した長板状に形成され、この左前レバー27の長さ方向の中間部位は、支持ピン28を用いて左アーム部材22に回動可能に支持される円筒状の支持部27Aとなっている。また、左前レバー27の長さ方向の一端側は、後述の左リンク31が連結されるリンク連結部27Bとなり、長さ方向の他端側は、杭16の外周面に当接する杭当接部27Cとなっている。
【0036】
29は左アーム部材22の円弧部22Aに支持ピン30を用いて回動可能に支持された左後レバーで、該左後レバー29は、図7に示す如く長さ方向の中間部位が屈曲した長板状に形成され、この左後レバー29の長さ方向の中間部位は、支持ピン30を用いて左アーム部材22に回動可能に支持される円筒状の支持部29Aとなっている。また、左後レバー29の長さ方向の一端側は、後述する左レバーシリンダ34のロッド34Bが連結されるシリンダ連結部29Bとなり、該シリンダ連結部29Bと支持部29Aとの間は、後述の左リンク31が連結されるリンク連結部29Cとなっている。さらに、左後レバー29の長さ方向の他端側は、杭16の外周面に当接する杭当接部29Dとなっている。
【0037】
31は左前レバー27と左後レバー29との間を連結する左リンクで、該左リンク31は、図3等に示す如く杭16の軸中心Oとほぼ同心状の円弧状の板体として形成され、左アーム部材22を構成する円弧部22Aの外周側に配置されている。ここで、左リンク31の一端側は、ピン32を用いて左前レバー27のリンク連結部27Bに連結され、左リンク31の他端側は、ピン33を用いて左後レバー29のリンク連結部29Cに連結されている。そして、左リンク31は、左前レバー27と左後レバー29とを左アーム部材22に対して同期して回動させるものである。
【0038】
34は左アーム部材22に設けられたアクチュエータとしての左レバーシリンダで、該左レバーシリンダ34は、左前レバー27と左後レバー29とを、杭16に対して接近、離間する方向に無段階に回動させるものである。ここで、左レバーシリンダ34は、左アーム部材22のシリンダブラケット22Eに揺動可能に取付けられたチューブ34Aと、該チューブ34A内に摺動可能に設けられたピストンと、基端側がピストンに固定され先端側がチューブ34Aから突出したロッド34Bとにより構成されている。そして、ロッド34Bの先端部はピン35を用いて左後レバー29のシリンダ連結部29Bに連結されている。
【0039】
従って、左レバーシリンダ34のロッド34Bをチューブ34Aから伸長させたときには、左前レバー27と左後レバー29とは、杭当接部27C,29Dが杭16の軸中心Oから離間する方向に回動する。一方、左レバーシリンダ34のロッド34Bをチューブ34A内に縮小させたときには、左前レバー27と左後レバー29とは、杭当接部27C,29Dが杭16の軸中心Oに接近する方向に回動する。
【0040】
このように、左レバーシリンダ34のロッド34Bを伸縮させ、左前レバー27の杭当接部27Cと左後レバー29の杭当接部29Dとを、杭16の軸中心Oに向けて接近、離間する方向に無段階に回動させることにより、図3及び図5に示すように、左前レバー27の杭当接部27Cと左後レバー29の杭当接部29Dとを、径寸法が異なる杭16(16′)の外周面に確実に当接させることができる構成となっている。
【0041】
36は右アーム部材24の円弧部24Aに支持ピン37を用いて回動可能に支持された右前レバーで、該右前レバー36は、上述した左後レバー29と同一形状を有している。従って、右前レバー36は、図7に示すように長さ方向の中間部位が屈曲した長板状に形成され、この長さ方向の中間部位は、支持ピン37を用いて右アーム部材24に回動可能に支持される円筒状の支持部36Aとなっている。また、右前レバー36の長さ方向の一端側は、後述する右レバーシリンダ43のロッド43Bが連結されるシリンダ連結部36Bとなり、該シリンダ連結部36Bと支持部36Aとの間は、後述の右リンク40が連結されるリンク連結部36Cとなっている。さらに、右前レバー36の長さ方向の他端側は、杭16の外周面に当接する杭当接部36Dとなっている。
【0042】
38は右アーム部材24の円弧部24Aに支持ピン39を用いて回動可能に支持された右後レバーで、該右後レバー38は、上述した左前レバー27と同一形状を有している。従って、右後レバー38は、図6に示すように長さ方向の中間部位が屈曲した長板状に形成され、この長さ方向の中間部位は、支持ピン39を用いて右アーム部材24に回動可能に支持される円筒状の支持部38Aとなっている。また、右後レバー38の長さ方向の一端側は、後述の右リンク40が連結されるリンク連結部38Bとなり、長さ方向の他端側は、杭16の外周面に当接する杭当接部38Cとなっている。
【0043】
40は右前レバー36と右後レバー38との間を連結する右リンクで、該右リンク40は、図3等に示す如く杭16の軸中心Oとほぼ同心状の円弧状の板体として形成され、右アーム部材24を構成する円弧部24Aの外周側に配置されている。ここで、右リンク40の一端側は、ピン41を用いて右前レバー36のリンク連結部36Cに連結され、右リンク40の他端側は、ピン42を用いて右後レバー38のリンク連結部38Bに連結されている。そして、右リンク40は、右前レバー36と右後レバー38とを右アーム部材24に対して同期して回動させるものである。
【0044】
43は右アーム部材24に設けられたアクチュエータとしての右レバーシリンダで、該右レバーシリンダ43は、右前レバー36と右後レバー38とを、杭16に対して接近、離間する方向に無段階に回動させるものである。ここで、右レバーシリンダ43は、右アーム部材24のシリンダブラケット24Eに揺動可能に取付けられたチューブ43Aと、該チューブ43A内に摺動可能に設けられたピストンと、基端側がピストンに固定され先端側がチューブ43Aから突出したロッド43Bとにより構成されている。そして、ロッド43Bの先端部はピン44を用いて右前レバー36のシリンダ連結部36Bに連結されている。
【0045】
従って、右レバーシリンダ43のロッド43Bをチューブ43A内に縮小させたときには、右前レバー36と右後レバー38とは、杭当接部36D,38Cが杭16の軸中心Oから離間する方向に回動する。一方、右レバーシリンダ43のロッド43Bをチューブ43Aから伸長させたときには、右前レバー36と右後レバー38とは、杭当接部36D,38Cが杭16の軸中心Oに接近する方向に回動する。
【0046】
このように、右レバーシリンダ43のロッド43Bを伸縮させ、右前レバー36の杭当接部36Dと右後レバー38の杭当接部38Cとを、杭16の軸中心Oに向けて接近、離間する方向に回動させることにより、図3及び図5に示すように、右前レバー36の杭当接部36Dと右後レバー38の杭当接部38Cとを、径寸法が異なる杭16(16′)の外周面に確実に当接させることができる構成となっている。
【0047】
次に、図8は左,右のレバーシリンダ34,43を駆動するための油圧回路を示し、45は油圧ポンプ、46は油圧ポンプ45と共に油圧源を構成するタンクで、左,右のレバーシリンダ34,43は、それぞれポンプ管路47を介して油圧ポンプ45に接続され、戻り管路48を介してタンク46に接続されている。
【0048】
49は左レバーシリンダ34と油圧源との間に位置してポンプ管路47及び戻り管路48の途中に設けられた方向制御弁で、該方向制御弁49は4ポート3位置の電磁弁からなり、管路47Aを介して左レバーシリンダ34のボトム側油室に接続されると共に、管路48Aを介して左レバーシリンダ34のロッド側油室に接続されている。そして、方向制御弁49は、例えばキャブ6内に設けられた操作機器(図示せず)を操作することにより中立位置(イ)から切換位置(ロ)または(ハ)に切換えられる。
【0049】
ここで、方向制御弁49が切換位置(ロ)に切換えられたときには、油圧ポンプ45からの圧油が左レバーシリンダ34のボトム側油室に供給され、左レバーシリンダ34のロッド34Bがチューブ34Aから伸長する。これにより、左アーム部材22に支持された左前レバー27の杭当接部27Cと左後レバー29の杭当接部29Dとは、杭16の軸中心Oから離間する方向に回動する構成となっている。
【0050】
一方、方向制御弁49が切換位置(ハ)に切換えられたときには、油圧ポンプ45からの圧油が左レバーシリンダ34のロッド側油室に供給され、左レバーシリンダ34のロッド34Bがチューブ34A内に縮小することにより、左アーム部材22に支持された左前レバー27の杭当接部27Cと左後レバー29の杭当接部29Dとは、杭16の軸中心Oに接近する方向に回動する構成となっている。
【0051】
50は左レバーシリンダ34のロッド側油室と方向制御弁49との間を接続する管路48Aの途中に接続されたリリーフ弁で、該リリーフ弁50は、方向制御弁49が切換位置(ハ)に切換えられたときに、油圧ポンプ45から左レバーシリンダ34のロッド側油室に供給される圧油の圧力を設定するものである。
【0052】
51は右レバーシリンダ43と油圧源との間に位置してポンプ管路47及び戻り管路48の途中に設けられた方向制御弁で、該方向制御弁51は4ポート3位置の電磁弁からなり、管路47Bを介して右レバーシリンダ43のロッド側油室に接続されると共に、管路48Bを介して右レバーシリンダ43のボトム側油室に接続されている。そして、方向制御弁51は、例えばキャブ6内に設けられた操作機器(図示せず)を操作することにより中立位置(イ)から切換位置(ロ)または(ハ)に切換えられる。
【0053】
ここで、方向制御弁51が切換位置(ロ)に切換えられたときには、油圧ポンプ45からの圧油が右レバーシリンダ43のロッド側油室に供給され、右レバーシリンダ43のロッド43Bがチューブ43A内に縮小する。これにより、右アーム部材24に支持された右前レバー36の杭当接部36Dと右後レバー38の杭当接部38Cとは、杭16の軸中心Oから離間する方向に回動する構成となっている。
【0054】
一方、方向制御弁51が切換位置(ハ)に切換えられたときには、油圧ポンプ45からの圧油が右レバーシリンダ43のボトム側油室に供給され、右レバーシリンダ43のロッド43Bがチューブ43Aから伸長することにより、右アーム部材24に支持された右前レバー36の杭当接部36Dと右後レバー38の杭当接部38Cとは、杭16の軸中心Oに接近する方向に回動する構成となっている。
【0055】
52は右レバーシリンダ43のボトム側油室と方向制御弁51との間を接続する管路48Bの途中に接続されたリリーフ弁で、該リリーフ弁52は、方向制御弁51が切換位置(ハ)に切換えられたときに、油圧ポンプ45から右レバーシリンダ43のボトム側油室に供給される圧油の圧力を設定するものである。
【0056】
ここで、左アーム部材22に支持された左前レバー27及び左後レバー29と、右アーム部材24に支持された右前レバー36及び右後レバー38とを、杭16の軸中心Oに接近する方向に回動させて当該杭16の外周面に当接させる場合には、方向制御弁49,51を同時に切換位置(ハ)に切換えることにより、左レバーシリンダ34のロッド34Bをチューブ34A内に縮小させると共に、右レバーシリンダ43のロッド43Bをチューブ43Aから伸長させる必要がある。
【0057】
このとき、左レバーシリンダ34のロッド側油室におけるピストンの受圧面積は、右レバーシリンダ43のボトム側油室におけるピストンの受圧面積よりも小さいため、リリーフ弁52によって設定される右レバーシリンダ43のボトム側油室に供給される圧油の圧力は、リリーフ弁50によって設定される左レバーシリンダ34のロッド側油室に供給される圧油の圧力よりも低く設定されている。これにより、左レバーシリンダ34のロッド34Bが縮小するときの力(左アーム部材22に支持された左前レバー27と左後レバー29とを回動させる力)と、右レバーシリンダ43のロッド43Bが伸長するときの力(右アーム部材24に支持された右前レバー36と右後レバー38とを回動させる力)とを等しくすることができる構成となっている。
【0058】
本実施の形態による杭打機1は上述の如き構成を有するもので、以下、この杭打機1を用いて地中に杭を打込む杭打作業について説明する。
【0059】
まず、図1に示すように、リーダ10を地面に対してほぼ垂直な姿勢に保持し、昇降モータ12によってオーガ15をリーダ10の上端側まで上昇させる。そして、図4に示すように、振止め装置21の左アーム部材22をピン23を中心として左方向に回動させると共に、右アーム部材24をピン25を中心として右方向に回動させることにより、左アーム部材22と右アーム部材24とを開位置とする。
【0060】
次に、リーダ10の近傍位置で杭16を地面上に起立させ、この杭16の上端側をオーガ15によって把持すると共に、杭16の下端側を振止め装置21の左,右のアーム部材22,24間に配置する(図4参照)。
【0061】
この場合、左レバーシリンダ34は、ロッド34Bをチューブ34Aから伸長させることにより、左アーム部材22に支持された左前レバー27の杭当接部27Cと左後レバー29の杭当接部29Dとを、予め杭16の軸中心Oから離間させる。一方、右レバーシリンダ43は、ロッド43Bをチューブ43A内に縮小させることにより、右アーム部材24に支持された右前レバー36の杭当接部36Dと右後レバー38の杭当接部38Cとを、予め杭16の軸中心Oから離間させる。
【0062】
次に、図3に示すように、左アーム部材22と右アーム部材24とを閉位置に移動させ、杭16を左,右方向から挟込んだ状態で、左アーム部材22の先端部22Cと右アーム部材24の先端部24Cとに固定ピン26を挿通する。これにより、左アーム部材22と右アーム部材24とが閉位置に固定され、左,右のアーム部材22,24によって杭16を外周側から取囲むことができる。
【0063】
そして、キャブ6等に設けられた操作機器(図示せず)を操作することにより、図8に示す方向制御弁49,51を同時に切換位置(ハ)に切換える。これにより、左レバーシリンダ34のロッド34Bがチューブ34A内に縮小すると共に、右レバーシリンダ43のロッド43Bがチューブ43Aから伸長する。この結果、左アーム部材22に支持された左前レバー27の杭当接部27C及び左後レバー29の杭当接部29Dと、右アーム部材24に支持された右前レバー36の杭当接部36D及び右後レバー38の杭当接部38Cとが、同時に杭16の外周面に当接する。
【0064】
この状態で、オーガ15は、杭16の上端側を把持してこれを回転させながら、リーダ10のガイドレール10Aに沿って徐々に下降していく。これにより、オーガ15は、杭16を回転させつつ徐々に地中に打込む(押込む)ことができる。
【0065】
このとき、図3に示すように、杭16の外周面には、左前レバー27の杭当接部27C、左後レバー29の杭当接部29D、右前レバー36の杭当接部36D、右後レバー38の杭当接部38Cが当接している。そして、これら4個の杭当接部27C,29D,36D,38Cは、それぞれ均等な力で杭16の外周面を軸中心Oに向けて押圧することにより、回転する杭16が前,後方向、左,右方向に芯振れするのを抑える。
【0066】
このようにして、オーガ15が杭16を回転させながら地中に打込む間、杭16の芯振れを振止め装置21によって抑え、当該杭16を地面に対して垂直な姿勢に保持することができる。これにより、杭打機1を用いた杭16の杭打作業を迅速かつ効率良く行うことができる。
【0067】
次に、上述の杭16よりも外径寸法が小さい杭16′を打込む場合には、図5に示すように、左アーム部材22と右アーム部材24とを閉位置とすることにより、これら左,右のアーム部材22,24によって杭16′を左,右方向から挟込む。
【0068】
この状態で、キャブ6等に設けられた操作機器(図示せず)を操作することにより、図8に示す方向制御弁49,51を同時に切換位置(ハ)に切換え、左レバーシリンダ34のロッド34Bをチューブ34A内に縮小させると共に、右レバーシリンダ43のロッド43Bをチューブ43Aから伸長させる。
【0069】
これにより、左アーム部材22に支持された左前レバー27の杭当接部27C及び左後レバー29の杭当接部29Dと、右アーム部材24に支持された右前レバー36の杭当接部36D及び右後レバー38の杭当接部38Cとが、杭16′の軸中心Oに接近する方向に回動し、杭16′の外周面に当接する。そして、これら4個の杭当接部27C,29D,36D,38Cは、それぞれ均等な力で杭16′の外周面を軸中心Oに向けて押圧することにより、杭16′の芯振れを抑える。
【0070】
このように、外径寸法が小さい杭16′を回転させながら地中に打込む場合でも、当該杭16′の芯振れを振止め装置21によって確実に抑えることができ、杭打機1を用いた杭16′の杭打作業を迅速かつ効率良く行うことができる。
【0071】
また、本実施の形態では、図5等に示すように、左アーム部材22の外周側に配置される左リンク31を、杭16′の軸中心Oとほぼ同心状の円弧状に形成し、また、右アーム部材24の外周側に配置される右リンク40を、杭16′の軸中心Oとほぼ同心状の円弧状に形成することにより、振止め装置21全体をコンパクトに構成している。
【0072】
これにより、図5に示すように、杭16′の軸中心Oを通って前,後方向に延びる直線を直線Aとし、直線Aと45°の角度θをもって交わり左リンク31の外周に接する直線を直線Bとし、直線Aと45°の角度θをもって交わり右前レバー36のシリンダ連結部36Bの外周に接する直線を直線Cとしたときに、直線Bと杭16′の軸中心Oとの間の距離Lを可及的に小さくすることができる。
【0073】
この結果、図5中の直線Bと直線Cとの交点を敷地の角隅部Dとした場合に、振止め装置21を、直線B,Cから食み出さない範囲で敷地の角隅部Dにできるだけ接近させることができる。これにより、杭打機1を用いて杭16′を敷地の角隅部Dの近傍に打込むことができる。
【0074】
かくして、本実施の形態によれば、振止め装置21を、杭16を左,右方向から挟込む左,右のアーム部材22,24と、左アーム部材22に支持された左前レバー27及び左後レバー29と、右アーム部材24に支持された右前レバー36及び右後レバー38と、左,右のレバーシリンダ34,43とにより構成し、これら左,右のレバーシリンダ34,43により、左前レバー27、左後レバー29、右前レバー36、右後レバー38を、杭16の軸中心Oに向けて接近、離間する方向に無段階に回動させる構成としている。
【0075】
これにより、外径寸法が異なる杭16または杭16′を用いた場合でも、左前レバー27、左後レバー29、右前レバー36、右後レバー38の杭当接部27C,29D,36D,38Cを、これら杭16または杭16′の外周面に確実に当接させてその芯振れを抑えることができる。
【0076】
このように、単一の振止め装置21を用いて、外径寸法が異なる複数種類の杭16(16′)の芯振れを抑えることができるので、複数種類の杭を連続的に地中に打込む場合に、例えば杭の外径寸法に対応したアタッチメント等を取付ける作業を不要にでき、杭打ち作業全体の作業性を高めることができる。また、外径寸法が異なる複数種類の杭に応じた複数種類のアタッチメント等を用意する場合に比較して、部品点数の削減、部品管理の簡略化を図ることができる。
【0077】
なお、上述した実施の形態では、左,右のアーム部材22,24を図3に示す閉位置と図4に示す開位置との間で開,閉する操作を、手動操作によって行う場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば油圧シリンダ等のアクチュエータを用いて左,右のアーム部材22,24を自動的に開,閉する構成としてもよい。
【0078】
また、上述した実施の形態では、左アーム部材22に2個のレバー27,29を設けると共に、右アーム部材24に2個のレバー36,38を設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば左,右のアーム部材22,24にそれぞれ3個以上のレバーを設ける構成としてもよい。
【0079】
さらに、上述した実施の形態では、作業装置としてオーガ15を用いた場合を例示したが、本発明はこれに限らず、例えば建設用基礎機械のロッドやケリーバの振止めにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態による杭打機を示す正面図である。
【図2】図1中の杭、振止め装置等を拡大して示す要部拡大の正面図である。
【図3】振止め装置によって大径な杭の芯振れを抑えた状態を、図2中の矢示III−III方向からみた断面図である。
【図4】図3中の左,右のアーム部材が開位置に移動した状態を示す断面図である。
【図5】振止め装置によって小径な杭の芯振れを抑えた状態を示す図3と同様な断面図である。
【図6】左前レバーを単体で示す斜視図である。
【図7】左後レバーを単体で示す斜視図である。
【図8】振止め装置の左,右のレバーシリンダを駆動するための油圧回路図である。
【符号の説明】
【0081】
1 杭打機
2 車体
10 リーダ
15 オーガ(作業装置)
16,16′ 杭
21 振止め装置
22 左アーム部材
24 右アーム部材
26 固定ピン
27 左前レバー
29 左後レバー
31 左リンク
34 左レバーシリンダ(アクチュエータ)
36 右前レバー
38 右後レバー
40 右リンク
43 右レバーシリンダ(アクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上,下方向に延びるリーダと、該リーダに沿って昇降可能に設けられ杭を地中に打込む作業装置と、該作業装置によって打込まれる前記杭の芯振れを抑える振止め装置とを備えてなる杭打機において、
前記振止め装置は、基端側が前記リーダに回動可能に支持され先端側が自由端となって前記杭を左,右方向から挟込む左,右のアーム部材と、これら左,右のアーム部材にそれぞれ回動可能に支持された左,右のレバーと、前記杭の径寸法に応じて前記左,右のレバーを前記杭に対して接近、離間する方向に無段階に回動させる左,右のアクチュエータとにより構成したことを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記左レバーは前記左アーム部材に複数個設け、前記右レバーは前記右アーム部材に複数個設ける構成としてなる請求項1に記載の杭打機。
【請求項3】
前記左アーム部材に設けられた前記各左レバー間にはこれらを同期して回動させるための左リンクを設け、前記右アーム部材に設けられた前記各右レバー間にはこれらを同期して回動させるための右リンクを設ける構成としてなる請求項2に記載の杭打機。
【請求項4】
前記左,右のアーム部材の先端側には、これら左,右のアーム部材を前記杭を挟込んだ状態に固定する固定ピンを着脱可能に設ける構成としてなる請求項1,2または3に記載の杭打機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate