説明

杭打機

【課題】 リーダの機体左右方向の無理な傾き操作を防止した杭打機を提供すること。
【解決手段】 ベースマシン2,3に対して機体前後方向に揺動自在に軸支されたリーダ7を、機体後方からステーシリンダ9を備えた伸縮可能な2本のバックステー8によって起立させ、ステーシリンダ9の伸縮作動によってリーダ7を機体前後方向と機体左右方向にも傾き調節が可能なものであって、ステーシリンダ9のストロークを計測するストロークセンサ31と、リーダ7の機体左右方向の傾きに対応した警報値を設定し、ストロークセンサから得られる計測値に基づいて算出した値が当該警報値を超えた場合に警報を発し、又は警報手段を動作させる警報装置32とを有する杭打機1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースマシンの前部に軸支したリーダを立設し、そのリーダに沿って昇降可能な作業装置を装着して所定の作業を行う杭打機に関し、特にベースマシンの機体左右方向に傾くリーダの角度を検出し、リーダの軸支部分の破損を防止するようにした杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打機を用いた施工では、ベースマシンの機体前部に起立したリーダに対しオーガなどの作業装置が昇降可能に装着され、その作業装置に掘削ロッドや鋼管杭などを連結して縦穴掘削や場所打ち杭施工あるいは既設杭の埋設等が行われる。杭打機は、そのリーダが長尺になると、後方から2本のバックステーによって支持する構成がとられる。そして、リーダは、そうしたバックステーシリンダの伸縮によって機体前後方向や機体左右方向の角度について調整が行われる。杭などを垂直に施工するためにはリーダの姿勢を制御する必要があるからである。そこで従来から、リーダには前後および左右方向の傾斜角を検出する角度計が取付けられ、垂線に対するリーダの角度が検出されている。
【0003】
図9(A),(B)は、それぞれ杭打機を簡略化して示す側面図、正面図である。杭打機100は、ベースマシーン101の前部のリーダブラケット102にリーダ103がピン104を介して軸支され、図9(A)に示すように、機体前後方向に揺動自在に取付けられている。また、リーダ103は、例えば長穴を通してピン104が軸支しているため、図9(B)に示すように、機体左右方向にも所定角度だけ振れることができるようになっている。こうしたリーダ103は、ベースマシーン101との間に取付けた左右2本のバックステー105によって支持されている。バックステー105は、油圧シリンダからなるステーシリンダ110が一体に形成され、その伸縮によってバックステー105の長さが変えられるようになっている。
【0004】
従って、左右のバックステー105のステーシリンダ110が同時に同じだけ伸縮した場合には、リーダ103は図9(A)に示すように機体前後方向に振れ、左右のステーシリンダ110について伸縮をそれぞれ調整した場合には、リーダ103は図9(B)に示すように機体左右方向に振れることになる。従って、こうした杭打機100において一般の垂直杭打作業を行う場合には、ステーシリンダ110の伸縮によりリーダ4の前後左右の傾斜が調整され、不図示の角度計によってリーダ103の傾きが計測され、リーダ103が垂直姿勢になるように操作が行われる。例えば、運転室内にいるオペレータは、リーダ傾斜角表示器に表示された値を見て前後左右の傾斜角がゼロとなるように左右のステーシリンダ110の伸縮操作を行えばよい。
【特許文献1】特開平8−170333号公報(第3−4頁、図1)
【特許文献2】特開平10−1949号公報(第2−3頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の杭打機は、前述したように角度計の値からリーダの角度を検出して姿勢を垂直にする操作を行う他、その角度計は、所定の角度以上にリーダが傾いた場合には転倒の危険があるため、危険角度を検出して警報を発する安全装置にも利用されている。しかしながら、従来の杭打機は、施工場所が平地であれば問題ないものの、地面が傾斜した場所ではリーダの垂直出しの際に機体左右方向の振れ角が大きくなってしまい、ある限界を超えてしまってリーダの軸支部分やバックステーを破損するおそれがあった。
【0006】
すなわち、杭打機100は、図9に示すように、リーダ103がリーダブラケット102に対してピン結合され、機体左右方向にはピン穴のガタ分だけ振れが許容されているだけなので、その許容分を超えるとピン穴とピンがこじってしまったり、またはリーダ103がリーダブラケット104に当たってリーダ軸支部分が破損してしまうことがある。更には、リーダ軸支部分が破損しない場合でも、無理にステーシリンダ110を伸ばしてしまいバックステー105を変形させてしまうことがある。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、リーダの機体左右方向の無理な傾き操作を防止した杭打機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の杭打機は、ベースマシンに対して機体前後方向に揺動自在に軸支されたリーダを、機体後方からステーシリンダを備えた伸縮可能な2本のバックステーによって起立させ、ステーシリンダの伸縮作動によってリーダを機体前後方向と機体左右方向にも傾き調節が可能なものであって、前記ステーシリンダのストロークを計測するストロークセンサと、前記リーダの機体左右方向の傾きに対応した警報値を設定し、ストロークセンサから得られる計測値に基づいて算出した値が当該警報値を超えた場合に警報を発し、又は警報手段を動作させる警報装置とを有するものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の杭打機は、前記ストロークセンサが、ワイヤを巻き取るワイヤリールと、そのワイヤリールによるワイヤの巻き取り量を電気信号に変換する信号変換器とを有し、前記ステーシリンダの可動部にワイヤを連結し、伸縮する前記ステーシリンダのストロークをワイヤリールの回転数から信号変換によって計測するようにしたものであることが好ましい。
また、本発明の杭打機は、前記警報装置が、前記ステーシリンダのストローク差によって前記警報値を設定し、前記ストロークセンサの計測値から前記ステーシリンダのストロークの差をとった値が警報値を超えた場合に警報を発し、又は警報手段を動作させる警報装置とを有するものであることが好ましい。
また、本発明の杭打機は、前記ストロークセンサから得られる計測値に基づいて算出した値が前記警報値を超えた場合にリーダの傾動を停止させる自動停止装置を有するものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明の杭打機は、前記ストロークセンサが、シーブとともにセンサブラケットに取り付けられ、ワイヤリールから送りだされたワイヤがシーブを介して前記ステーシリンダに沿って張り渡されるようにしたものであることが好ましい。
また、本発明の杭打機は、前記ストロークセンサが、そのワイヤ先端を前記ステーシリンダの可動部に設けられたフックに引っ掛けて連結するようにしたものであることが好ましい。
また、本発明の杭打機は、前記ストロークセンサから得られる左右のストローク差からベースマシーンに対する相対角度を算出し、その値を表示する表示手段を有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の杭打機では、リーダを機体左右方向に傾けて調整を行う場合、一方のステーシリンダが伸張作動して他方のステーシリンダが収縮作動するが、その際、それぞれのステーシリンダに設けられたストロークセンサによってストロークが計測される。例えばワイヤ式のストロークセンサでは、一方はステーシリンダの伸張によってワイヤが引き出され、他方はステーシリンダの収縮によって緩められたワイヤがワイヤリールに巻き取られる。そして、ワイヤが引き出され或いは巻き取られてワイヤリールが回転すると、その回転数がポテンションメータなどの信号変換器によって電圧値(計測値)として警報装置へと送られる。警報装置では、ストロークセンサの計測値によって、例えばストローク差をとって警報値との比較を行い、リーダがある値以上に傾いている場合にはブザーなどの警報が発せられ、或いは別途設けられた警報手段の動作が実行される。
【0012】
よって、本発明の杭打機によれば、ベースマシンに対するリーダの相対的な傾斜角が所定の値以上になった場合にオペレータに警報を発するため、リーダを機体左右方向に傾き可能な許容量を超えて傾けてしまい、リーダ軸支部分などを破損させてしまうことを回避できる。
また、本発明の杭打機では、ワイヤ式のストロークセンサを使用し、そのワイヤをステーシリンダに引っ掛けるだけの簡単な構成で前記効果を達成できる。しかも、杭打機は施工現場への搬送に伴ってリーダやバックステーをベースマシンに対して分解・組立する必要があるが、その際ワイヤをステーシリンダの可動部に設けられたフックに引っ掛けたり、外したりするだけの簡単な組み付けでよい。
更に、本発明の杭打機では、ステーシリンダのストローク差から警報値を求めるようにしたため演算処理が簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明に係る杭打機の一実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態の杭打機を示した側面図である。杭打機1は、下部走行体2と上部旋回体3によってベースマシーンが構成されている。下部走行体2は、クローラによって走行が可能なものであり、上部旋回体3は、その下部走行部2に対して旋回部を介して搭載されている。上部旋回体3には、メインフレーム上に操縦室5と油圧ポンプなどを備える動力部6とが配置され、その機体前部において図示するように垂直に起立するリーダ7が設けられている。
【0014】
この杭打機1は、リーダ7の長さが比較的長い大型のものであって、そのリーダ7が2本のバックステー8によって機体後方から支持されている。リーダ7は、上部旋回体3の前部中央位置に設けられたリーダブラケット11に軸着され、この軸を支点として機体前後方向(図面横方向)に揺動可能に取り付けられている。そして、このリーダ7を機体後方から支持するバックステー8は、それぞれ下端側にステーシリンダ(油圧シリンダ)9が設けられ、その伸縮によってリーダ7を機体前後方向に揺動させ、また機体左右方向にも傾きを調節することができるように構成されている。
【0015】
ここで、図2及び図3は、リーダ7を軸支したリーダ支持部を示した図であって、図2はリーダ支持部の一部断面の平面を示し、図3はリーダ支持部の側面を示している。上部旋回体3の前部には、前方に張り出すようにして一対のリーダブラケット11が突設され、その間を掛け渡すようにしてリーダ7を軸支する支持ピン12が、機体横方向に水平に固定されている。一方、リーダ7は、最下端の基本リーダ7Aと、その上に複数の上部リーダ7Bとが連結され一体に構成されている。リーダ7は、その基本リーダ7Aがリーダブラケット11の間に配置され、リーダブラケット11に固定された支持ピン12によって径方向に貫通されている。
【0016】
基本リーダ7Aは、図4に示すように筒状のリーダ本体部21と作業装置がリーダ7に沿って摺動するようにガイドパイプ22とを有しており、こうした点は上部リーダ7Bについても同様の構成である。ただし、基本リーダ7Aには、支持ピン12が貫通するピン穴が形成されている。図2に示すような円筒体のリーダ本体部21は、ピン穴ブロック23が一体に形成され、そのピン穴ブロック23には基本リーダ7Aの軸方向に(縦に)長い長穴形状のピン穴24が形成されている。従って、リーダ7は、この支持ピン12を中心に機体前後方向に揺動自在に設けられ、更に、支持ピン12とピン穴24との間には上下方向に隙間が空いているため、そのガタ分だけ機体左右方向への傾きが許容されている。その許容量は、垂直線から機体左右方向に見てそれぞれ1.5°程度である。
【0017】
リーダ7は、2本のバックステー8におけるステーシリンダ9の伸縮操作によって前後方向と左右方向との傾きが調節できるが、この杭打機1にも従来の杭打機と同様にリーダ7の傾きを検出する不図示の角度計が設けられ、垂直出しなどの角度調節や、傾け過ぎによる転倒防止の確認に使用されている。そして、本実施形態の杭打機1では、従来からある角度計の他に、ステーシリンダ9の伸縮を検出するストロークセンサが設けられている。このストロークセンサは、リーダ7を機体左右方向の許容量を超えて傾けてしまうことにより、リーダ軸支部分などの破損を防止するためのステーストローク検出装置を構成するものである。図5は、杭打機に設けられたステーストローク検出装置30を示した図である。
【0018】
ステーストローク検出装置30は、ステーシリンダ9のストロークを計測するストロークセンサ31と、杭打機1の操縦室5内に設置された警報手段を備えたアングルボックス32とから構成されている。アングルボックス32は、ストロークセンサ31からの計測値を受けて、ステーシリンダ9のストロークを表示したり、警報値を超えてリーダ7が傾けられた場合に警報を発するようにしたものである。
ここで、図6及び図7は、ステーストローク検出装置30のストロークセンサ31を取り付けたストローク検出部を示した図であって、特に図6はストローク検出部の平面を示し、図7はストローク検出部の側面を示している。
【0019】
このストローク検出部は、上部旋回体3に連結されたバックステー8の下端側連結部分に設けられている。バックステー8は、図1に示すように下方のステーシリンダ9と上方のステー部とが同軸に連結され、そのステーシリンダ9は、ロッド側が下向きになって設けられている。ステーシリンダ9のロッド19先端には球状部19aが形成され、上部旋回体3に設けられた受部15にその球状部19aが嵌り込んで保持されている。従って、バックステー8は、この受け部15を支点に前後左右のいずれの方向にも自由に振れるように構成されている。こうして取り付けられたステーシリンダ9は、その伸縮作動によってシリンダチューブ18側が軸方向に移動するようになっている。
【0020】
ステーストローク検出装置30を構成するストロークセンサ31は、ワイヤ式のストロークセンサであって、ワイヤ33を巻き取るワイヤリールを有し、その巻き取り量を計測するようにしたものである。すなわち、ワイヤリールによるワイヤ33の巻き取り量は、電気信号に変換する信号変換器(たとえばポテンションメータ)によって計測するように構成されている。
【0021】
そして、こうしたストロークセンサ31は、上部旋回体3に固定されたセンサブラケット35に取り付けられている。そのセンサブラケット35には、ストロークセンサ31の他にシーブ36が軸支され、ストロークセンサ31から送り出されたワイヤ33がシーブ36を介してステーシリンダ9に連結されている。すなわち、ストロークセンサ31からほぼ水平に送り出されたワイヤ33は、シーブ36によって方向が変えられ、ステーシリンダ9のロッド19に沿って張り渡される。そして、ワイヤ33シーブ36が外れないようにシーブ36に近接して受けパイプ37が固定されている。
【0022】
ストロークセンサ31から送り出されたワイヤ33の先端は、ステーシリンダ9の可動側であるシリンダチューブ18に連結される。そこで、シリンダチューブ18にはそのロッド側端部に連結台38が固定され、その連結台38に形成されたフック39にワイヤ33先端のリング34が引っ掛けられるようになっている。ストロークセンサ31から送り出されてフック39に引っ掛けられたワイヤ33は、ワイヤリールによって常に巻き取り方向に引っ張られているため、緩まないように常にテンションがかかった状態になっている。
【0023】
ストロークセンサ31の巻き取り量を計測するポテンションメータ41は、コネクタを介して接続されたケーブル42によってアングルボックス32へと接続され、ステーシリンダ9の伸縮に伴うポテンションメータからの計測信号が送られるようになっている。なお、ケーブル43は不図示の電源に接続されている。
アングルボックス32は、マイクロプロッセッサを搭載した中央処理装置や、警報処理プログラムが格納されたROMおよび入力されたデータや処理データを記憶するRAMからなる主記憶装置、更に警報ブザーといった警報手段などが内蔵されている。そして、アングルボックス32にはタッチパネル式の表示画面が設けられ、ストローク表示や警報表示が行われる他、ストロークのアナログ表示とデジタル表示の切り替えや警報値の入力あるいはベースマシンに対する相対角度の算出・表示などが行えるようになっている。なお、警報手段は、アングルボックス32に接続可能な外付けの警告灯などであってもよい。また、警報手段とともに、ステーシリンダ9の伸縮を自動停止させる自動停止装置を取り付けてもよい。
【0024】
続いて本実施形態の杭打機1は、次のようにしてリーダ7の垂直出しが行われ、その際、ステーストローク検出装置30では、アングルボックス32のROMに格納された警報処理プログラムによって、リーダ7の機体左右方向の無理な傾き操作を防止するためのストローク検出が行われる。
リーダ7は、作業に当たって図1に示すように、ベースマシーンの前部にてリーダブラケット11に軸支され、バックステー8によって支えられて起立している。そして、掘削ロッドや鋼管杭などを使用した縦穴掘削や場所打ち杭施工あるいは既設杭の埋設等では、リーダ7の姿勢を垂直にしなければならので、左右のステーシリンダ9を伸縮させた調整が行われる。
【0025】
リーダ7が垂直線に対して機体前後方向に傾いている場合には、左右両方のステーシリンダ9を同時に同じストロークだけ伸縮させる。これによってリーダ7は、下端の基本リーダ7Aを軸支した支持ピン12を支点に揺動し、機体前後方向の傾きが調整される。リーダ7のこうした傾きは、不図示の角度計によって計測され、操縦席にあるアングルボックス32とは別のモニタに表示され、オペレータはこの値を確認しながらステーシリンダ9の伸縮操作を行うことになる。
【0026】
一方、リーダ7が垂直線に対して機体の左右方向に傾いている場合には、左右のステーシリンダ9を所定量のストロークだけそれぞれ伸縮させる。ここで、図8は、機体左右方向の傾き調整を行う場合のリーダ軸支部分を示した断面図であり、図8(A)は支持ピン12に対してリーダ7が直交する中立状態を示し、図8(B)はリーダ7を直交方向から傾けた傾斜状態を示した図である。
そこで先ず、左右のステーシリンダ9が同じストロークの場合には、リーダ7は機体左右方向に傾きはなく、支持ピン12は、図8(A)に示すように長穴形状をしたピン穴24の上端に当たっている。
【0027】
そして、施工場所の地面が傾斜しているような場合にリーダ7を垂直にするため機体左右方向への傾け操作が行われる。そこで、左右一方(図8(B)における左側)のステーシリンダ9を伸張作動させ、逆に反対側のステーシリンダ9を収縮作動させると、リーダ7が図面左側から右側に傾きを生じる。この場合、図8(B)に示すように、図面右側のピン穴24を支点にして図面左側のピン穴24に形成されているガタ分だけリーダ7の図面左側が持ち上げられて傾く。従って、本実施形態の杭打機1では、片方のピン穴24の下端が支持ピン12に当たるまでリーダ7をベースマシーンに対して相対的に傾けることができる。よって、これ以上にステーシリンダ9を伸縮させるとリーダ軸支部分やバックステー8に無理な荷重がかかって破損につながる。
【0028】
リーダ7を機体左右方向に傾けることができる傾きの許容量は、前述したように垂直線からほぼ左右1.5°ずつである。そのため、本実施形態では左右のストローク差からベースマシンに対する相対角度を算出・表示し、機体左右方向の各1.5°以内に警報値を設定し、警報処理プログラムでは、この警報値を超えた場合にアングルボックス32からブザーがなり、タッチパネルには警告を表示するようにしている。また、警告を表示するとともに自動停止装置によってリーダ7の傾動を自動停止させてもよい。
ところで、傾斜角で警報値を設定すると、本実施形態のステーストローク検出装置30ではストロークセンサ31でステーシリンダ9のストロークを計測しているため、この値からリーダ7の左右傾斜角度を求めたのでは演算が煩雑になる。その点、リーダ7の機体左右方向の傾斜角と左右のステーシリンダ9のストローク差とを対応させることができるため、本実施形態ではストローク差に基づいて警報値を設定することとした。その際、リーダが21〜45mまでの各長さでストローク差をとったところ、12〜13cmの範囲内に収まった。そこで本実施形態では、余裕をとって10cmのストローク差を警報値として設定した。
【0029】
そこで、前述したようにリーダ7を機体左右方向に傾けた調整を行うと、一方のステーシリンダ9が伸張作動し、シリンダチューブ18が押し上げられてストロークセンサ31からのワイヤ33が引き出される。逆に、他方のステーシリンダ9は収縮作動し、シリンダチューブ18が下がり、緩められたワイヤ33がストロークセンサ31のワイヤリールに巻き取られる。こうしてワイヤ33が引き出され或いは巻き取られてワイヤリールが回転し、その回転数がポテンションメータによって検出された電圧値としてアングルボックス32へと送られる。そして、アングルボックス32では、この電圧値からストローク差が算出され、その値が所定値を超える場合にはブザーがなり、タッチパネルの画面に所定の警報表示が出される。
【0030】
よって、本実施形態の杭打機1によれば、ステーストローク検出装置30を設けてオペレータに警告を行うようにしたため、機体左右方向に傾き可能な許容量を超えてリーダ7を傾けてしまい、リーダ軸支部分などを破損させてしまうことが回避できるようなった。
また、本実施形態では、ステーシリンダ9のストローク差から警報値を求めるようにしたため、簡単な構成によってリーダ7の機体左右方向の無理な傾き操作を防止することができるようになった。つまり、従来の杭打機では、リーダとベースマシンに設けられた各角度計の値からリーダのベースマシンに対する相対的な角度を求める必要があったが、それに比べて極めて本実施形態では簡単な演算処理で済むようにできた。
【0031】
また、本実施形態の杭打機1では、ワイヤ式のストロークシリンダ31を使用し、そのワイヤ33をステーシリンダ9に引っ掛けるだけの簡単な構成で前記効果を達成できる。しかも、杭打機1は施工現場への搬送に伴ってリーダ7やバックステー9を上部旋回体3に対して分解・組立する必要があるが、その際ワイヤ3をステーシリンダ9に設けたフック39に引っ掛けたり、外したりするだけの簡単な組み付けでよい。
【0032】
以上、本発明に係る杭打機の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態の杭打機では、そのステーストローク検出装置30を構成するストロークセンサ31にワイヤ式センサを使用したが、それ以外にもラックギヤ方式のストロークセンサや光学式または電磁式の非接触型のストロークセンサを使用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】杭打機の一実施形態を示した側面図である。
【図2】実施形態のリーダ支持部を示した平面図である。
【図3】実施形態のリーダ支持部を一部断面で示した側面図である。
【図4】リーダ下端部分を構成する基本リーダの側面図である。
【図5】実施形態の杭打機に設けられたステーストローク検出装置を示した図である。
【図6】ステーストローク検出装置のストロークセンサを取り付けたストローク検出部を示した平面図である。
【図7】ステーストローク検出装置のストロークセンサを取り付けたストローク検出部を示した側面図である。
【図8】機体左右方向の傾き調整を行う場合のリーダ軸支部分を示した断面図であり、図(A)には支持ピンに対してリーダが直交する中立状態を示し、図(B)にはリーダを直交方向から傾けた傾斜状態を示している。
【図9】杭打機を簡略化して示す側面図と正面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 杭打機
2 下部走行体
3 上部旋回体
7 リーダ
7A 基本リーダ
7B 上部リーダ
8 バックステー
9 ステーシリンダ
11 リーダブラケット
12 支持ピン
24 ピン穴
30 ステーストローク検出装置
31 ストロークセンサ
32 アングルボックス
33 ワイヤ
41 ポテンションメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンに対して機体前後方向に揺動自在に軸支されたリーダを、機体後方からステーシリンダを備えた伸縮可能な2本のバックステーによって起立させ、ステーシリンダの伸縮作動によってリーダを機体前後方向と機体左右方向にも傾き調節が可能な杭打機において、
前記ステーシリンダのストロークを計測するストロークセンサと、
前記リーダの機体左右方向の傾きに対応した警報値を設定し、ストロークセンサから得られる計測値に基づいて算出した値が当該警報値を超えた場合に警報を発し、又は警報手段を動作させる警報装置とを有するものであることを特徴とする杭打機。
【請求項2】
請求項1に記載する杭打機において、
前記ストロークセンサは、ワイヤを巻き取るワイヤリールと、そのワイヤリールによるワイヤの巻き取り量を電気信号に変換する信号変換器とを有し、前記ステーシリンダの可動部にワイヤを連結し、伸縮する前記ステーシリンダのストロークをワイヤリールの回転数から信号変換によって計測するようにしたものであることを特徴とする杭打機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する杭打機において、
前記警報装置は、前記ステーシリンダのストローク差によって前記警報値を設定し、前記ストロークセンサの計測値から前記ステーシリンダのストロークの差をとった値が警報値を超えた場合に警報を発し、又は警報手段を動作させる警報装置とを有するものであることを特徴とする杭打機。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する杭打機において、
前記ストロークセンサから得られる計測値に基づいて算出した値が前記警報値を超えた場合にリーダの傾動を停止させる自動停止装置を有するものであることを特徴とする杭打機。
【請求項5】
請求項3に記載する杭打機において、
前記ストロークセンサは、シーブとともにセンサブラケットに取り付けられ、ワイヤリールから送りだされたワイヤがシーブを介して前記ステーシリンダに沿って張り渡されるようにしたものであることを特徴とする杭打機。
【請求項6】
請求項5に記載する杭打機において、
前記ストロークセンサは、そのワイヤ先端を前記ステーシリンダの可動部に設けられたフックに引っ掛けて連結するようにしたものであることを特徴とする杭打機。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載する杭打機において、
前記ストロークセンサから得られる左右のストローク差からベースマシーンに対する相対角度を算出し、その値を表示する表示手段を有するものであることを特徴とする杭打機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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