説明

杭施工機

【課題】杭を施工するときの施工コストを低減することができるとともに、狭い施工現場における作業性を高めることができる杭施工機を提供することを課題とする。
【解決手段】ベースマシン2のアーム2aに取り付けられる杭施工機1Aであって、アーム2aの先端部に支持されるオーガ駆動装置10と、オーガ駆動装置10から下方に突出した駆動軸12に取り付けられたケーシング20(掘削部材)と、オーガ駆動装置10の側面に取り付けられたウィンチ30と、を備え、ウィンチ30に巻架された吊りワイヤ32が、オーガ駆動装置10の側方に吊り下げられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤から杭を引き抜いたり、地盤に杭を埋設したりするための杭施工機に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤から杭を引き抜くための杭施工機(杭抜機)としては、ベースマシンのアームの先端部に支持されるオーガ駆動装置と、このオーガ駆動装置から下方に突出した駆動軸に取り付けられた円筒状のケーシングと、を備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来の杭施工機では、ケーシングを軸回りに回転させ、地盤に埋設された杭がケーシング内に挿入されるように、ケーシングを地盤内に進行させることで、杭の周囲を掘削することができる。その後、施工現場に別途設置したクレーンの吊りワイヤを杭の上部に取り付け、吊りワイヤを巻き上げることで、杭を地盤から引き上げている。
【0004】
また、従来の杭施工機において、オーガ駆動装置にケーシングを取り付けるときには、地面に倒された状態のケーシングの端部に、クレーンの吊りワイヤを取り付け、この吊りワイヤを巻き上げることで、ケーシングを引き起こしている。さらに、オーガ駆動装置からケーシングを取り外すときは、ケーシングの上端部にクレーンの吊りワイヤを取り付け、この吊りワイヤを繰り出すことで、ケーシングの上端部を支持しながら、ケーシングを傾倒させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−155747号公報(段落0023〜0025、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した従来の杭施工機では、杭を吊り上げたり、ケーシングを着脱させたりするときに、ベースマシン以外にクレーンを別途設置するため、施工コストが高くなるとともに、狭い施工現場ではクレーンの設置が困難であるため、作業性が低いという問題がある。
【0007】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、杭を施工するときの施工コストを低減するとともに、狭い施工現場における作業性を高めることができる杭施工機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、ベースマシンのアームに取り付けられる杭施工機であって、前記アームの先端部に支持されるオーガ駆動装置と、前記オーガ駆動装置から下方に突出した駆動軸に取り付けられた掘削部材と、前記オーガ駆動装置の側面に取り付けられたウィンチと、を備え、前記ウィンチに巻架されたワイヤが、前記オーガ駆動装置の側方に吊り下げられていることを特徴としている。
【0009】
この構成では、オーガ駆動装置の側面に取り付けられたウィンチによって、ケーシングなどの掘削部材や杭を吊り上げることができる。したがって、本発明の杭施工機では、ベースマシン以外にクレーンを別途設置する必要がないため、杭を施工するときの施工コストを低減するとともに、狭い施工現場における作業性を高めることができる。
また、ウィンチとオーガ駆動装置とが一体化されており、ベースマシンにウィンチを単体で取り付ける必要がないため、既存の作業機械を簡単にベースマシンに転用することができる。
また、ウィンチとオーガ駆動装置とを一体化した状態で、ベースマシンに着脱することができるため、杭施工機をベースマシンに対して簡単に着脱させることができる。
【0010】
前記した杭施工機において、前記オーガ駆動装置の上部は、前記アームの先端部に設けられた連結ピンに支持されており、前記連結ピンは、軸方向が横方向に配置され、前記ウィンチは、前記オーガ駆動装置において、前記連結ピンの軸端部側の側面に取り付けることができる。
【0011】
この構成では、連結ピンの軸端部側にウィンチが配置されるため、ウィンチに杭や掘削部材の重量による引張力が作用したときに、連結ピンには軸方向に曲げモーメントが作用することになる。したがって、連結ピンの軸回りにモーメントが作用しないため、杭施工機が連結ピンの軸回りに回動するのを防ぐことができ、杭や掘削部材を安定して吊り上げることができる。
【0012】
前記課題を解決するため、本発明の他の構成としては、ベースマシンのアームに取り付けられる杭施工機であって、前記アームの先端部に支持され、内部に収容空間が形成された連結部材と、前記連結部材の下部に取り付けられたオーガ駆動装置と、前記オーガ駆動装置から下方に突出した駆動軸に取り付けられた掘削部材と、前記連結部材の前記収容空間内に取り付けられたウィンチと、を備え、前記ウィンチに巻架されたワイヤは、前記連結部材の側面に設けられたガイド用滑車に掛け回されて、前記オーガ駆動装置の側方に吊り下げられていることを特徴としている。
【0013】
この構成では、連結部材に取り付けられたウィンチによって、ケーシングなどの掘削部材や杭を吊り上げることができる。したがって、本発明の杭施工機では、ベースマシン以外にクレーンを別途設置する必要がないため、杭を施工するときの施工コストを低減するとともに、狭い施工現場における作業性を高めることができる。
また、ウィンチは連結部材を介してオーガ駆動装置に一体化されており、ベースマシンにウィンチを単体で取り付ける必要がないため、既存の作業機械を簡単にベースマシンに転用することができる。
また、ウィンチは連結部材を介してオーガ駆動装置に一体化した状態で、ベースマシンに着脱することができるため、杭施工機をベースマシンに対して簡単に着脱させることができる。
【0014】
前記した杭施工機において、前記連結部材の上部は、前記アームの先端部に設けられた連結ピンに支持されており、前記連結ピンは、軸方向が横方向に配置され、前記ガイド用滑車は、前記連結部材において、前記連結ピンの軸端部側の側面に取り付けることができる。
【0015】
この構成では、連結ピンの軸端部側にガイド用滑車が配置されるため、ガイド用滑車に掛け回された吊りワイヤに杭や掘削部材の重量による引張力が作用したときに、連結ピンには軸方向に曲げモーメントが作用することになる。したがって、連結ピンの軸回りにモーメントが作用しないため、杭施工機が連結ピンの軸回りに回動するのを防ぐことができ、杭や掘削部材を安定して吊り上げることができる。
【0016】
前記した杭施工機において、前記連結部材の上部は、上部ブラケットを介して、前記アームの先端部に設けられた連結ピンに支持されており、前記連結部材は、前記上部ブラケットに対して、上下方向の軸回りに回動可能な状態で取り付けることができる。
【0017】
この構成では、連結部材を上部ブラケットに対して回動させることで、連結部材の向きを変化させ、吊りワイヤが吊り下げられる位置を変化させることができるため、杭を施工するときの作業性を高めることができる。
【0018】
前記した杭施工機において、前記オーガ駆動装置には、前記ベースマシンの油圧経路を、前記オーガ駆動装置の油圧経路又は前記ウィンチの油圧経路のいずれか一方に対して切り換え自在に接続する切換バルブを設けることができる。
【0019】
この構成では、切換バルブを操作することで、ベースマシンの油圧経路を、オーガ駆動装置の油圧経路又はウィンチの油圧経路のいずれかに接続して、オーガ駆動装置又はウィンチを適宜に駆動させることができる。したがって、一系統の油圧経路のみがアームに設けられた既存の作業機械を簡単にベースマシンに転用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の杭施工機によれば、杭を施工するときの施工コストを低減するとともに、狭い施工現場における作業性を高めることができる。また、既存の作業機械を簡単にベースマシンに転用することができるとともに、杭施工機をベースマシンに対して簡単に着脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一実施形態の杭施工機をベースマシンに取り付けた状態を示した図で、(a)は側面図、(b)は(a)のI−I断面図である。
【図2】第一実施形態の杭施工機を示した図で、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図3】第一実施形態の杭施工機の油圧経路を示した構成図である。
【図4】第一実施形態の杭施工機による杭抜きの手順を示した図で、(a)はケーシングを取り付けるときの側面図、(b)は杭を引き上げるときの側面図である。
【図5】第一実施形態の杭施工機において、オーガ駆動装置に引張力が作用したときの説明図である。
【図6】第二実施形態の杭施工機を示した図で、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図7】第二実施形態の杭施工機の他の構成を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
以下の実施形態では、地盤に埋設された杭を引き抜くための杭施工機に本発明を適用した場合を例として説明する。
なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。また、以下の説明において、前後左右方向とは、各図に示した前後左右方向に対応している。
【0023】
[第一実施形態]
第一実施形態の杭施工機1Aは、図1(a)に示すように、ベースマシン2のアーム2aの先端部に支持されるオーガ駆動装置10と、このオーガ駆動装置10に取り付けられたケーシング20(掘削部材)と、オーガ駆動装置10の側面に取り付けられたウィンチ30と、を備えている。
【0024】
ベースマシン2は、既存の油圧ショベルのアーム2aからバケットを取り外したものであり、履帯によって走行可能な下部走行体2bと、運転席が設けられた上部旋回体2cと、を備えている。このベースマシン2のアーム2aには、バケットを駆動させるための油圧経路2e(図3参照)が設けられている。
【0025】
上部旋回体2cは、下部走行体2bに対して水平方向に旋回自在となっており、上部旋回体2cの前部には、アーム2aの基端部が回動自在に軸支されている。アーム2aには複数の回動箇所が設けられており、アーム2aの各部は、各回動箇所において屈曲するように構成されている。
【0026】
オーガ駆動装置10は、図2(a)に示すように、既存の油圧モータである本体部11からなり、本体部11の下面から下方に駆動軸12が突出している。このオーガ駆動装置10は、本体部11の油圧経路10a(図3参照)に作動油が供給されることで、駆動軸12が軸回りに回転する。
【0027】
図2(b)に示すように、本体部11の上面には、二体の板状の支持部材13,13が左右方向に所定間隔を離して立設されており、二体の支持部材13,13の間には、ベースマシン2のアーム2aの先端部が配置されている。
そして、二体の支持部材13,13及びアーム2aの先端部に設けられた取付孔に、軸方向が左右横方向に配置された連結ピン14が挿通されることで、オーガ駆動装置10の上部がアーム2aの先端部に連結されている。
【0028】
ケーシング20は、図1(a)に示すように、円筒状の掘削部材であり、軸方向が上下方向に配置されている。ケーシング20の外周形状は、図1(b)に示すように、地盤に埋設された杭Pの外周形状よりも大きく形成されており、ケーシング20の中空部内に杭Pを挿入することができる。
【0029】
ケーシング20の上面の中心部には、図2(a)に示すように、オーガ駆動装置10の駆動軸12を着脱自在に取り付けることができる取付部が設けられている。したがって、ケーシング20を駆動軸12に取り付けた状態で、駆動軸12を軸回りに回転させると、ケーシング20も軸回りに回転する。
【0030】
図1(a)に示すように、ケーシング20の下側の開口縁部には、複数の掘削刃21・・・が設けられている。そして、ケーシング20を軸回りに回転させながら、ケーシング20の各掘削刃21・・・を地盤に当接させ、地盤に埋設された杭Pがケーシング20内に挿入されるように、ケーシング20を地盤内に進行させることで、杭Pの周囲を掘削することができる(図1(b)参照)。
【0031】
ウィンチ30は、図2(b)に示すように、オーガ駆動装置10の本体部11の右側面に取り付けられた既存の巻上装置であり、図2(a)に示すように、軸方向が前後方向に配置された回転ドラム31を備えている。
【0032】
回転ドラム31には、吊りワイヤ32が巻架されており、吊りワイヤ32の先端側は回転ドラム31から引き出されている。回転ドラム31は、ウィンチ30の内部に設けられた油圧経路30a(図3参照)に作動油が供給されることで軸回りに回転し、吊りワイヤ32が繰り出し又は巻き取られる。なお、吊りワイヤ32の先端部(下端部)には、フック34が取り付けられている。
【0033】
図2(b)に示すように、本体部11の右側面に立設された二体の支持部材33a,33a(図2(a)参照)には、前後方向の軸回りに回転自在なガイド用滑車33が支持されている。
そして、回転ドラム31から引き出された吊りワイヤ32は、ガイド用滑車33に掛け回されており、吊りワイヤ32は、ガイド用滑車32に案内されて、オーガ駆動装置10の側方に吊り下げられている。
【0034】
ガイド用滑車33のワイヤ溝の軸線は、図2(a)の側面視で連結ピン14の軸断面の中心位置を通過している。したがって、ガイド用滑車33に案内されてオーガ駆動装置10の側方に吊り下げられた吊りワイヤ32の軸線は、図2(a)の側面視で連結ピン14の軸断面の中心位置を通過している。
【0035】
次に、オーガ駆動装置10に設けられた切換バルブ40について説明する。
図3に示すように、オーガ駆動装置10の本体部11には、ベースマシン2の油圧経路2eを、オーガ駆動装置10の油圧経路10a、又はウィンチ30の油圧経路30aのいずれか一方に対して切り替え自在に接続する切換バルブ40が設けられている。
切換バルブ40は、既存のバルブ機構を用いており、ベースマシン2の運転室内に設けられた操作盤によって切り替え操作を行うことができる。
【0036】
切換バルブ40を操作して、ベースマシン2に設けられた油圧ポンプ2dからベースマシン2の油圧経路2eに供給された作動油を、オーガ駆動装置10の油圧経路10a、又はウィンチ30の油圧経路30aのいずれか一方に供給することで、オーガ駆動装置10の駆動部10b、又はウィンチ30の駆動部30bのいずれかを適宜に駆動させることができる。
【0037】
次に、前記第一実施形態の杭施工機1Aを用いて、地盤に埋設された杭Pを引き抜く手順について説明する。
まず、図4(a)に示すように、アーム2aの先端部に杭施工機1Aを取り付けた状態で、ベースマシン2を施工現場に設置する。
続いて、施工現場の地面に倒された状態のケーシング20の端部に、支持ワイヤ32aの一端を巻着させる。さらに、支持ワイヤ32aの他端を、オーガ駆動装置10の側方に吊り下げられた吊りワイヤ32のフック34に取り付ける。
そして、ウィンチ30によって吊りワイヤ32を巻き取ることで、ケーシング20の端部を上昇させて、ケーシング20全体を引き起し、図2(a)に示すように、ケーシング20の上端部をオーガ駆動装置10の駆動軸12に取り付け、地盤に埋設された杭P(図1(a)参照)の上方にケーシング20を配置する。
【0038】
また、図3に示す切換バルブ40を操作して、ベースマシン2の油圧経路2eをオーガ駆動装置10の油圧経路10aに接続し、ベースマシン2から供給された作動油によって、オーガ駆動装置10の駆動部10bを駆動させて、ケーシング20(図2(a)参照)を軸回りに回転させる。
【0039】
図1(a)に示すように、ケーシング20を軸回りに回転させながら、ケーシング20の各掘削刃21・・・を地盤に当接させ、杭Pがケーシング20内に挿入されるように、ケーシング20を地盤内に進行させて、杭Pの周囲を掘削する。
そして、ケーシング20の下端部を杭Pの下端部まで進行させて、杭Pを地盤から縁切りさせた後に、杭施工機1Aを上昇させて、ケーシング20を地盤内から引き上げる。
【0040】
地盤内から引き上げられたケーシング20の上端部に、支持ワイヤ32a(図4(a)参照)の一端を巻着させ、支持ワイヤ32aの他端を吊りワイヤ32のフック34に取り付ける。
そして、オーガ駆動装置10の駆動軸12(図2(a)参照)からケーシング20の上端部を取り外した後に、ウィンチ30から吊りワイヤ32を繰り出すことで、ケーシング20の上端部を下降させ、吊りワイヤ32によってケーシング20の上端部を支持しながら、ケーシング20を傾倒させる。
【0041】
また、ケーシング20を地面に載置した後に、図4(b)に示すように、杭Pの上端部に支持ワイヤ32aの一端を巻着させ、支持ワイヤ32aの他端を吊りワイヤ32のフック34に取り付ける。
そして、ウィンチ30によって吊りワイヤ32を巻き取ることで、杭Pを吊り上げて地盤から引き上げる。このとき、杭Pは地盤から縁切りされているため、杭Pの引き抜き力は大幅に低減されている。
【0042】
以上のような第一実施形態の杭施工機1Aによれば、図4(a)及び(b)に示すように、オーガ駆動装置10の側面に取り付けられたウィンチ30によって、ケーシング20や杭Pを吊り上げることができる。したがって、ベースマシン2以外にクレーンを別途設置する必要がないため、杭Pを施工するときの施工コストを低減するとともに、狭い施工現場における作業性を高めることができる。
【0043】
また、ウィンチ30とオーガ駆動装置10とが一体化されており、ベースマシン2にウィンチ30を単体で取り付ける必要がないため、既存の作業機械を簡単にベースマシンに転用することができる。
【0044】
また、ウィンチ30とオーガ駆動装置10とを一体化した状態で、ベースマシン2に着脱することができるため、杭施工機1Aをベースマシン2に対して簡単に着脱させることができる。
【0045】
また、図5に示すように、連結ピン14の軸端部側にウィンチ30が配置されるため、ウィンチ30に杭Pやケーシング20(図4(a)参照)の重量による引張力が作用したときに、連結ピン14には軸方向に曲げモーメントが作用することになる。したがって、連結ピン14の軸回りにモーメントが作用しないため、杭施工機1Aが連結ピン14の軸回りに回動するのを防ぐことができ、杭Pやケーシング20を安定して吊り上げることができる。
【0046】
また、図3に示す切換バルブ40を操作することで、ベースマシン2の油圧経路2eを、オーガ駆動装置10の油圧経路10a又はウィンチ30の油圧経路30aのいずれかに接続して、オーガ駆動装置10又はウィンチ30を適宜に駆動させることができる。したがって、一系統の油圧経路2eのみがアーム2a(図1(a)参照)に設けられた既存の作業機械を簡単にベースマシン2に転用することができる。
【0047】
以上、本発明の第一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。
例えば、第一実施形態では、図4(b)に示すように、地盤に埋設された杭Pを引き抜くための杭抜機として杭施工機1Aを利用しているが、オーガ駆動装置10の駆動軸12(図2(a)参照)に、地盤を掘削するオーガスクリュを取り付けることで、杭Pを埋設するための杭打機として利用することもできる。この構成では、オーガスクリュによって地盤に掘削溝を構築した後に、ウィンチ30の吊りワイヤ32によって吊り上げた杭Pを掘削溝内に挿入することで、地盤に杭Pを埋設することができる。
【0048】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態の杭施工機について説明する。
図6(a)及び(b)に示す第二実施形態の杭施工機1Bは、オーガ駆動装置10に対するウィンチ30の取り付け位置が異なる以外は、前記第一実施形態の杭施工機1A(図1(a)参照)と同様な構成であるため、ウィンチ30の取り付け構造について詳細に説明し、その他の構成については説明を省略する。
【0049】
第二実施形態の杭施工機1Bは、図6(b)に示すように、ベースマシン2のアーム2aの先端部に支持され、内部に収容空間50aが形成された連結部材50と、この連結部材50の下部に取り付けられたオーガ駆動装置10と、このオーガ駆動装置10から下方に突出した駆動軸12に取り付けられたケーシング20と、連結部材50の収容空間50a内に取り付けられたウィンチ30と、を備えている。
【0050】
連結部材50は、上板51と下板52との間に左右の側板53,53が設けられた箱状の部材であり、その内部にはウィンチ30を収容するための収容空間50aが形成されている。
連結部材50の上面は、上部ブラケット54を介して、アーム2aの先端部に支持されており、連結部材50の下面は、下部ブラケット56を介して、オーガ駆動装置10を支持している。
【0051】
上部ブラケット54は、連結部材50の上板51の上面に複数のボルトによって着脱自在に取り付けられた基板54aと、この基板54aの上面に左右方向に所定間隔を離して立設された二体の板状の支持部材54b,54bと、を備えており、二体の支持部材54b,54bの間には、アーム2aの先端部が配置されている。
そして、二体の支持部材54b,54b及びアーム2aの先端部に設けられた取付孔に、軸方向が左右横方向に配置された連結ピン55を挿通することで、連結部材50の上面は、上部ブラケット54を介して、アーム2aの先端部に連結されている。
【0052】
下部ブラケット56は、図6(a)に示すように、連結部材50の下板52の下面に複数のボルトによって着脱自在に取り付けられた基板56aと、この基板56aの下面に前後方向に所定間隔を離して立設された二体の板状の支持部材56b,56bとを備えており、二体の支持部材56b,56bは、オーガ駆動装置10の上面に立設された二体の支持部材13,13の間に配置されている。
そして、連結部材50の各支持部材56b,56b、及びオーガ駆動装置10の各支持部材13,13に設けられた取付孔に、軸方向が前後横方向に配置された連結ピン57を挿通することで、連結部材50の下面には、下部ブラケット56を介して、オーガ駆動装置10が連結されている。
【0053】
また、図6(b)に示すように、連結部材50の収容空間50a内には、軸方向が前後方向に配置された回転ドラム31を備えたウィンチ30が収容されており、ウィンチ30は下板52の上面に取り付けられている。
【0054】
連結部材50の右側の側板53の右側面に立設された二体のブラケット58a,58a(図6(a)参照)には、前後方向の軸回りに回転自在なガイド用滑車58が支持されている。
そして、回転ドラム31から引き出された吊りワイヤ32は、ガイド用滑車58に掛け回されており、吊りワイヤ32は、ガイド用滑車58に案内されて、オーガ駆動装置10の側方に吊り下げられている。
【0055】
また、ガイド用滑車58のワイヤ溝の軸線は、図6(a)の側面視で、連結部材50とアーム2aとを連結する連結ピン55の軸断面の中心位置を通過している。したがって、ガイド用滑車58に案内されてオーガ駆動装置10の側方に吊り下げられた吊りワイヤ32の軸線は、図6(a)の側面視で連結ピン55の軸断面の中心位置を通過している。
【0056】
また、連結部材50の上面及び下面は、上部ブラケット54及び下部ブラケット56に対して、複数のボルトによって着脱自在に取り付けられている。したがって、連結部材50を上部ブラケット54及び下部ブラケット56から取り外し、連結部材50を上下方向の軸回りに回動させた後に、再度、連結部材50を上部ブラケット54及び下部ブラケット56に取り付けることで、上部ブラケット54及び下部ブラケット56に対して連結部材50の向きを変化させることができる。ちなみに、第二実施形態では、連結部材50を90度間隔で回動させることができる。
【0057】
以上のような第二実施形態の杭施工機1Bによれば、図6(a)及び(b)に示すように、連結部材50を介してオーガ駆動装置10に取り付けられたウィンチ30によって、ケーシングや杭を吊り上げることができる。したがって、ベースマシン2以外にクレーンを別途設置する必要がないため、杭を施工するときの施工コストを低減することができるとともに、狭い施工現場における作業性を高めることができる。
【0058】
また、ウィンチ30は連結部材50を介してオーガ駆動装置10に一体化されており、ベースマシン2にウィンチ30を単体で取り付ける必要がないため、既存の作業機械を簡単にベースマシンに転用することができる。
【0059】
また、ウィンチ30は連結部材50を介してオーガ駆動装置10に一体化した状態で、ベースマシン2に着脱することができるため、杭施工機1Bをベースマシン2に対して簡単に着脱させることができる。
【0060】
また、連結部材50とアーム2aとを連結する連結ピン55の軸端部側に、吊りワイヤ32が掛け回されたガイド用滑車58が配置されるため、吊りワイヤ32に杭やケーシングの重量による引張力が作用したときに、連結ピン55には、軸方向に曲げモーメントが作用することになる。したがって、連結ピン55の軸回りにモーメントが作用しないため、杭施工機1Bが連結ピン55の軸回りに回動するのを防ぐことができ、杭やケーシングを安定して吊り上げることができる。
【0061】
なお、第二実施形態の杭施工機1Bには、前記第一実施形態の杭施工機1A(図1(a)参照)と同様に、ベースマシン2の油圧経路を、オーガ駆動装置10の油圧経路、又はウィンチ30の油圧経路のいずれか一方に対して切り替え自在に接続する切換バルブ40が設けられている。そして、切換バルブ40を操作することで、ベースマシン2の油圧経路を、オーガ駆動装置10の油圧経路又はウィンチ30の油圧経路のいずれかに接続して、オーガ駆動装置10又はウィンチ30を適宜に駆動させることができる。したがって、一系統の油圧経路2eのみをアーム2aに備えた既存の作業機械を簡単にベースマシン2に転用することができる。
【0062】
以上、本発明の第二実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。
例えば、第二実施形態では、図6(a)及び(b)に示すように、連結部材50と上部ブラケット54及び下部ブラケット56とを複数のボルトで連結されているが、図7に示すように、連結部材50と上部ブラケット54とを軸方向が上下方向に配置された上部回転軸59aによって連結し、連結部材50と下部ブラケット56とを軸方向が上下方向に配置された下部回転軸59bによって連結することができる。
【0063】
この構成では、連結部材50は上部ブラケット54に対して、上部回転軸59aの軸回りに回転可能に連結されるとともに、連結部材50は下部ブラケット56に対して、下部回転軸59bの軸回りに回転自在に連結されている。
したがって、連結部材50を上部ブラケット54及び下部ブラケット56から取り外すことなく、連結部材50の向きを簡単に変化させることができる。
なお、連結部材50の向きを設定した後は、連結部材50と上部ブラケット54及び下部ブラケット56とを固定ピンによってそれぞれ連結することで、連結部材50を所定の向きに位置決めする。
【符号の説明】
【0064】
1A 杭施工機(第一実施形態)
1B 杭施工機(第二実施形態)
2 ベースマシン
2a アーム
2e ベースマシンの油圧経路
10 オーガ駆動装置
10a オーガ駆動装置の油圧経路
11 本体部
12 駆動軸
14 連結ピン(第一実施形態)
20 ケーシング
30 ウィンチ
30a ウィンチの油圧経路
32 吊りワイヤ
33 ガイド用滑車(第一実施形態)
34 フック
40 切換バルブ
50 連結部材
50a 収容空間
54 上部ブラケット
55 連結ピン(第二実施形態)
56 下部ブラケット
57 連結ピン(第二実施形態)
58 ガイド用滑車(第二実施形態)
P 杭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンのアームに取り付けられる杭施工機であって、
前記アームの先端部に支持されるオーガ駆動装置と、
前記オーガ駆動装置から下方に突出した駆動軸に取り付けられた掘削部材と、
前記オーガ駆動装置の側面に取り付けられたウィンチと、を備え、
前記ウィンチに巻架されたワイヤが、前記オーガ駆動装置の側方に吊り下げられていることを特徴とする杭施工機。
【請求項2】
前記オーガ駆動装置の上部は、前記アームの先端部に設けられた連結ピンに支持されており、
前記連結ピンは、軸方向が横方向に配置され、
前記ウィンチは、前記オーガ駆動装置において、前記連結ピンの軸端部側の側面に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の杭施工機。
【請求項3】
ベースマシンのアームに取り付けられる杭施工機であって、
前記アームの先端部に支持され、内部に収容空間が形成された連結部材と、
前記連結部材の下部に取り付けられたオーガ駆動装置と、
前記オーガ駆動装置から下方に突出した駆動軸に取り付けられた掘削部材と、
前記連結部材の前記収容空間内に取り付けられたウィンチと、を備え、
前記ウィンチに巻架されたワイヤは、前記連結部材の側面に設けられたガイド用滑車に掛け回されて、前記オーガ駆動装置の側方に吊り下げられていることを特徴とする杭施工機。
【請求項4】
前記連結部材の上部は、前記アームの先端部に設けられた連結ピンに支持されており、
前記連結ピンは、軸方向が横方向に配置され、
前記ガイド用滑車は、前記連結部材において、前記連結ピンの軸端部側の側面に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の杭施工機。
【請求項5】
前記連結部材の上部は、上部ブラケットを介して、前記アームの先端部に設けられた連結ピンに支持されており、
前記連結部材は、前記上部ブラケットに対して、上下方向の軸回りに回動可能な状態で取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の杭施工機。
【請求項6】
前記オーガ駆動装置には、
前記ベースマシンの油圧経路を、前記オーガ駆動装置の油圧経路又は前記ウィンチの油圧経路のいずれか一方に対して切り換え自在に接続する切換バルブが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の杭施工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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