説明

杭芯位置設定装置

【課題】基礎造成にかかる既製杭の建て込みに関し、杭芯位置からの逃げ芯位置の設定と、逃げ芯位置からの杭芯位置の設定、並びに既製杭建て込み穴を掘削する際のオーガースクリューの杭芯位置ズレ防止、そして既製杭建て込み穴に既製杭を建て込む際の杭芯位置ズレ防止に使用する、杭芯位置設定装置を提供する。
【解決手段】連結ロッド2で連結された、上端部で回動自在に結合された2本の棹体1を、該棹体1に設けられた水準器設置ブラケット3に安全、確実に取り付けられた水準器4に従い、棹体1に設けられたアジャスタロッド5の上下動調整を行い、地盤上に水平に一定の高さでセットして、杭芯位置の確認を行うと共に、棹体1の上端部の先端とオーガースクリューや基礎杭との位置関係を確認することにより、既製杭の建て込みにおける杭芯位置ズレ防止とその調整を容易に行うことができる極めて簡便な杭芯位置設定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木建築分野における基礎造成に際しての既製杭の建て込み工事技術に関する。
詳しくは、既製杭を建て込む際の杭芯位置を正確、且つ容易に設定できるとともに、オーガースクリューの掘削ヘッドで既製杭建て込み穴を掘削する際の杭芯位置ズレ防止、並びに建て込み中の既製杭の杭芯位置ズレ防止を正確、容易に行うことができる杭芯位置設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土木建築分野では、建造物の基礎を造成する際、既製杭を建て込む。この既製杭の建て込みは、まず、設計図に従い、建て込みの位置、つまり杭芯位置の設定を行う。
そして、この杭芯位置から、互いに略90度の角度をもって2箇所の逃げ芯位置の設定を行う。
杭芯位置からそれぞれの逃げ芯位置までの長さを測定しておくことで、作業等で杭芯位置が消えても、逆に、2箇所の逃げ芯位置から杭芯位置を特定できる。
【0003】
このように、まず杭芯位置から一定の距離を持って2箇所の逃げ芯位置を設定しておき、杭芯位置の確保をしておく。次に設定された杭芯位置にオーガースクリューの掘削ヘッドを設置し、既製杭建て込み穴を掘削する。
この掘削の際、オーガースクリューの鉛直維持と杭芯位置ズレ防止が極めて重要となる。そして、掘削が終了した後、既製杭建て込み穴からオーガースクリューを引き抜き、既製杭を建て込む。
この建て込みにおいても既製杭の鉛直維持、並びに杭芯位置ズレ防止が重要となる。
この内、オーガースクリューの鉛直維持や既製杭建て込み時の既製杭の鉛直維持についてはトランシット等を用いた維持調整技術が確立されているが、杭芯位置の設定や杭芯位置ズレ防止については、作業者によって2箇所の逃げ芯位置からの距離測定により、杭芯位置の設定や、既製杭建て込み穴の掘削時の杭芯位置ズレ防止作業、既製杭建て込み時の杭芯位置ズレ防止作業が行われる。
【0004】
ところが、上記のような2箇所の逃げ芯位置からメジャーを用いて杭芯位置ズレ防止のためにその距離を測定する一連の現場作業においては、危険性や不確実性に加えて人手がかかる等の問題が存在していた。
そこで、これらの問題を解消するために幾種の測定装置や測定方法が提案されてきた。例えば、特許文献1では、杭芯管理治具と管理方法について提案がなされている。
【0005】
つまり、この発明の杭芯管理治具によれば、開閉可能に枢着した一対の棒状体を略直角位置で固定可能に設け、その角部に杭芯棒穴を形成するとともに、その端部に2つの逃げ芯棒穴を形成して、この逃げ芯棒穴に逃げ芯棒を挿入して地盤に打ち込むことで杭芯位置を容易に確認することができる。
そして併せて、円形の杭芯位置確認板と該杭芯位置確認板が嵌合する掘削用穴部を形成した敷き板とを備えていて、杭芯位置に打ち込まれた杭芯棒に杭芯位置確認板をはめ込み、この杭芯位置確認板に合わせて敷き板を敷いた後、杭芯位置確認板を取り除き、敷き板の掘削用穴部にオーガースクリューの掘削ヘッドをセットし削孔するものである。
【0006】
また、特許文献2では、検尺棒を2本の逃げ芯で水平に支える構成のものを2体、一定の角度をもって設置し、2本の検尺棒の端部をそれぞれ杭或いは掘削ロッドに当てて杭芯位置の確認を行うことを骨子とした杭芯位置の確認方法が提案されている。
【0007】
しかし、特許文献1における杭芯管理治具と管理方法においては、作業者が杭芯管理治具を一定の高さに保持して作業を行う必要があり作業者の負担となることに加えて、杭芯位置確認板のセット、取り外し、敷き板の敷設、移動などの手順が煩雑で、作業をできるだけ迅速に行う必要がある現場には不向きな点があり問題があった。
【0008】
また、特許文献2における杭芯位置の確認方法においては、検尺棒を2本の逃げ芯で水平に支える構成であるので、2本の逃げ芯を地盤に打ち込み、この2本の逃げ芯に支持部材により検尺棒を取り付ける作業がかなり煩雑で、しかも、これを2体設置する必要があり簡便な方法とは言えないものであった。
加えて、2本の逃げ芯が地盤に打ち込まれて検尺棒が固定される手段を採用しているので、掘削ロッドがぶれた場合、検尺棒が逃げ芯ごと後方に押されて逃げ芯が地盤から抜けてしまう状況が発生し、その復旧に多くの労力を必要とする問題があった。
【0009】
以上のように、杭芯位置ズレ防止のために提案された従来の装置、方法には、その現場における簡便性の点において、十分な機能を発揮しているとは言い難い問題があり、悪い現場環境下においても、確実に、しかも簡便に作業が遂行し得る、杭芯位置ズレ防止のための装置、方法が求められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−348592号公報
【特許文献2】特開2009−174124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は以上のような諸事情を背景になされたものである。
すなわち本発明の目的は、基礎造成にかかる既製杭の建て込みに関し、杭芯位置からの逃げ芯位置の設定と、逃げ芯位置からの杭芯位置の設定、並びに既製杭建て込み穴を掘削する際のオーガースクリューの杭芯位置ズレ防止、そして既製杭建て込み穴に既製杭を建て込む際の杭芯位置ズレ防止に使用する、劣悪な地盤状況にも十分対応可能で、しかも簡便で作業性の良い、極めて優れた杭芯位置設定装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、連結ロッド2で連結された、上端部6で回動自在に結合された2本の棹体1を、該棹体1に設けられた水準器設置ブラケット3に安全、確実に取り付けられた水準器4に従い、棹体1に設けられたアジャスタロッド5の上下動調整を行い、地盤上に水平に一定の高さでセットして、杭芯位置の確認を行うと共に、棹体1の上端部6の先端とオーガースクリューや基礎杭との位置関係を確認することにより、既製杭の建て込みにおける杭芯位置ズレ防止とその調整を容易に行うことができる極めて簡便な杭芯位置設定装置Mを提供する本発明の完成に至った。
【0013】
即ち、本発明は、(1)、それぞれの上端部で回動自在に結合された2本の棹体と、該上端部から同距離位置で2本の棹体を連結する中折れ可能な連結ロッドとよりなり、棹体の複数箇所に上下動可能なアジャスタロッドが設けられ、且つ棹体には水準器設置ブラケットを介して水準器が設けられている杭芯位置設定装置に存する。
【0014】
即ち、本発明は、(2)、断面L字型の棹体と断面L字型の水準器設置ブラケットとの間の空間に水準器が設けられている上記(1)記載の杭芯位置設定装置に存する。
【0015】
即ち、本発明は、(3)、アジャスタロッドの上下動機構がネジ構造である上記(1)記載の杭芯位置設定装置に存する。
【0016】
即ち、本発明は、(4)、連結ロッドが伸縮対応機構である上記(1)記載の杭芯位置設定装置に存する。
【0017】
即ち、本発明は、(5)、上端部に杭芯位置確認用ロッドが設けられている上記(1)記載の杭芯位置設定装置に存する。
【0018】
即ち、本発明は、(6)、2本の棹体の下端に、それぞれ逃げ芯ロッドの案内用切り欠き部が設けられている上記(1)記載の杭芯位置設定装置に存する。
【0019】
即ち、本発明は、(7)、2本の棹体のそれぞれの下端に、下端に逃げ芯ロッドの案内用切り欠き部を有する下端伸縮部が設けられている上記(1)記載の杭芯位置設定装置に存する。
【0020】
即ち、本発明は、(8)、2本の棹体の上端に、上端部が結合されている上端伸縮部が設けられている上記(1)記載の杭芯位置設定装置に存する。
【0021】
即ち、本発明は、(9)上端部の結合が取り外し可能となっている上端伸縮部が設けられている上記(8)記載の杭芯位置設定装置に存する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の杭芯位置設定装置は、連結ロッドで連結された開閉自在の2本の棹体と、水準器をセットする水準器設置ブラケットと、棹体を一定の高さに水平に調整維持するアジャスタロッドとを主要素として構成されているので、既製杭の建て込み作業現場において、地盤がいかなる劣悪な状態であっても、複数箇所のアジャスタロッドが足となって棹体が地盤に触れないので泥まみれになることがなく作業性が良い。
そして、地盤が凸凹の状態であってもアジャスタロッドの上下動により棹体を水平に保つことができると共に地盤上に載置するのみで良く、正確な杭芯位置ズレ防止調整が可能となる。
更に、棹体の水平維持調整に使用する水準器は、水準器設置ブラケットで安全確実に挟持、保護されているので、落下や衝突による損傷を受けることがなく、常に正確な水平計測が可能となる。
【0023】
そして、アジャスタロッドの上下動機構がネジ構造であるので、アジャスタロッドを右回し、左回しすることで、上下移動調整が簡単、しかも正確にできる。
【0024】
そして、棹体の上端部に杭芯位置確認用ロッドが設けられている場合には、2箇所の逃げ芯位置から杭芯位置を確認、設定する際、地盤上の杭芯位置に杭芯位置確認用ロッドの先端が近接し、より正確に杭芯位置の確認、設定ができる利点がある。
【0025】
そして、2本の棹体の下端に、それぞれ逃げ芯ロッドの案内用切り欠き部が設けられている場合には、逃げ芯ロッドに案内用切り欠き部を当てがうだけ杭芯位置設定装置の設置ができ、逃げ芯ロッド用の孔が設けられていて、その孔に逃げ芯ロッドが挿入されている従来のものに比較して杭芯位置設定装置を逃げ芯ロッドからはずす面倒がなく作業性が一段と向上する。
そして、作業中、掘削ヘッドのぶれにより杭芯位置設定装置への強い衝撃があった場合、逃げ芯ロッドが案内用切り欠き部から簡単にはずれ、杭芯位置設定装置自体の損傷を防ぐことができる効果がある。
【0026】
そして、2本の棹体の上端に上端伸縮部が設けられている場合、並びに、2本の棹体のそれぞれの下端に下端伸縮部が設けられて、これらの作用により上端部を後方に移動可能とした場合には、逃げ芯ロッドに案内用切り欠き部を当てがったまま、上、下端伸縮部を引き下げ、引き上げすることで、杭芯位置からオーガースクリューや既製杭の半径分を後方に下げた位置に杭芯位置設定装置の上端部の先端をセットすることでき、杭芯位置ズレ防止作業を迅速に開始できる利点がある。
【0027】
そして、連結ロッドが伸縮対応機構となっているので、上、下端伸縮部の作用により棹体を短くして開脚体の開脚角度を大きくし、結果的に結合部を後方に引き下げることが自由にできる。
【0028】
そして、上端伸縮部の上端部の結合が取り外し可能となっている場合には該上端部の結合を取り外し、それぞれの上端伸縮部の先端をオーガースクリューや既製杭の半径分だけ縮めてオーガースクリューや既製杭に当てがうことで、オーガースクリューや既製杭の杭芯位置ズレ防止を横方向、縦方向の2方向から計測でき、正確な杭芯位置ズレ防止調整が可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1(A)】図1(A)は、第1の実施の形態における杭芯位置設定装置の開脚状態を示す概略図である。
【図1(B)】図1(B)は、第1の実施の形態における杭芯位置設定装置の開脚状態から少し閉じた状態を示す概略図である。
【図2】図2は、水準器設置ブラケットに挟持されている水準器の部分拡大概略図である。
【図3】図3は、第1の実施の形態における杭芯位置設定装置の上端部の部分拡大概略図である。
【図4】図4は、第2の実施の形態における杭芯位置設定装置の概略図である。
【図5】図5は、第2の実施の形態における杭芯位置設定装置の下端伸縮部の部分拡大概略図である。
【図6】図6は、連結長孔を有する連結ロッドの部分拡大概略図である。
【図7】図7は、第3の実施の形態における杭芯位置設定装置の概略図である。
【図8】図8は、第3の実施の形態における杭芯位置設定装置の上端伸縮部の部分拡大概略図である。
【図9】図9は、第4の実施の形態における杭芯位置設定装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0031】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態を示す概略図である。
図1(A)開脚状態を示し、また 図1(B)はその開脚状態から少し閉じた状態を示す。
本実施の形態における杭芯位置設定装置Mは、上端部が回動自在に結合されている断面L字型の2本の棹体1と、2本の棹体1を、上端部から同距離位置の中間部近傍で互いに連結する連結ロッド2とで構成される。
そして、2本の棹体1のそれぞれの底壁には、図2の部分拡大概略図(一部省略)に示すように断面L字型の水準器設置ブラケット3(詳しくは水準器設置ブラケット3の底壁)が取り付けられている。
そして断面L字型の棹体1と断面L字型の水準器設置ブラケット3の間の空間に水準器4を設けた。
そのため水準器4の両側が棹体1と水準器設置ブラケットの立壁で囲まれることとなり確実に保護されるため、作業中、他の障害物との衝突が回避される。
【0032】
そして、それぞれ2本の棹体1の上方近傍と下方近傍に、上下動可能なアジャスタロッド5が取り付けられている。
このアジャスタロッド5の上下動機構は、ネジ構造となっていて、棹体1に取り付けられたナットにボルト形状のアジャスタロッドが貫通ねじ込まれている(図示しない)。
2本の棹体1に取り付けられた4本のアジャスタロッド5は杭芯位置設定装置Mの足の役割を果たす。
具体的には、杭芯位置設定装置Mを設置する地盤の凹凸に併せて、水準器4に従い、それぞれのアジャスタロッド5を上下動させて調整すれば、棹体1を水平に、そして一定の高さに保つことができる。
【0033】
そして、断面L字型の2本の棹体1は互いに向き合う形で対称的に組まれる。2本の棹体1は、図3の部分拡大概略図(一部省略)に示すように、その上端部6で回動自在に結合されるが、互いの回動を阻害しない形に形成されている。
上端部6には結合用孔7が設けられ、この結合用孔7に、アジャスタロッド5と同様の構造形態の杭芯位置確認用ロッド8(図1参照)が挿入、取り付けられている。
次に、2本の棹体1のそれぞれの下端には、逃げ芯ロッド(図示しない)を案内するための案内用切り欠き部9が設けられている。
この案内用切り欠き部9は逃げ芯ロッドを上方から地面に打ち込む場合の案内になるとともに、作業において杭芯位置設定装置Mを逃げ芯ロッドに当てがう際にも有効なものである。
【0034】
そして、2本の棹体1を連結する連結ロッド2は、それぞれの棹体1の略中間部に取り付けられる。
連結ロッド2は、2本の連結部材21、22で構成されていて互いに回動自在に結合され、中折れ可能となっている。
連結ロッド2の連結部材21、22は、2本の棹体1が略90度一杯に開脚された際、略一直線状になるようにする。
【0035】
このように構成された杭芯位置設定装置Mについて、その使用法を示す。まず2本の棹体1を開く。
そして地盤に設定されている杭芯位置に、略90度一杯に開脚された杭芯位置設定装置Mの杭芯位置確認用ロッド8の先端を合わせる。
この状態で水準器4に従い、杭芯位置設定装置Mが一定の高さで水平になるよう4本のアジャスタロッド5を上下動調整する。
水準器4は2本の棹体1にそれぞれ設けられているので正確に水平出しができる。
このような作業においても断面L字型の棹体と断面L字型の水準器設置ブラケットとの間の空間に水準器が設けられているため、他の障害物との衝突が確実に回避される。
【0036】
このように設定された状態で、案内用切り欠き部9に合わせて逃げ芯ロッドを垂直に地盤に打ち込み、逃げ芯位置を設定する。こうすることで、作業中に杭芯位置が消失しても、杭芯位置設定装置Mを逃げ芯ロッドに合わせて地盤に設置すれば、正確な杭芯位置を設定できる。
逃げ芯ロッドが打ち込まれた後、杭芯位置設定装置Mを逃げ芯ロッドからはずし、オーガースクリュー軸径の半径分だけ後方にさげて再度、設置する。
そして、本杭芯位置設定装置Mの上端部6の先端とオーガースクリュー軸側面との間隔を注視しながら、既製杭建て込み穴の杭芯位置ズレ防止作業を行う。
この作業は、既製杭の建て込み時にも同様に行われ、杭芯位置ズレ防止を図る。
【0037】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態を示す概略図である。
本実施の形態における杭芯位置設定装置Mは、2本の棹体1の下端が伸縮自在の下端伸縮部10を有している。
図5の部分拡大概略図(一部省略)に示すように具体的には、下端伸縮部10は断面L字型の短辺部材で形成され、その短辺部材に横方向に設けられた下端伸縮長孔11を介して、棹体1の下端に2個の下端締め付けボルト12、12で固定される。
下端伸縮部10は、下端伸縮長孔11の長さの範囲内で横摺動する。下端伸縮部10の下端には逃げ芯ロッドの案内用切り欠き部9が設けられている。
【0038】
2本の棹体1を連結する連結ロッド2は、構造としては第1の実施の形態と同様に構成されるが、2本の棹体1を略90度に開脚した際にも図4に示すように一直線にはならず、角度が残る長さに構成されている。
このように連結ロッド2を伸縮対応機構とすることで2本の棹体1を90度以上に拡げることが可能となる。
また、本杭芯位置設定装置Mにおいては、連結ロッド2を構成する2本の連結部材21、22の結合は、回動自在とはするものの、一定以上の力が働いた時に回動するように、抵抗感、いわゆる節度感のある結合がなされている。
このように節度感のある結合を行うことで、その都度、連結結合部23を締め付ける必要が無く、簡単に所定の開脚角度を維持することが可能となる。
【0039】
以上のように構成された本杭芯位置設定装置Mは以下のように使用される。
2本の棹体1は、略90度に開脚されて設置され、逃げ芯ロッドが打ち込まれるところまでは第1の実施の形態と同様である。
この後、杭芯位置設定装置Mの上端部6をオーガースクリュー軸の半径分を後方に下げる際、第1の実施の形態のように杭芯位置設定装置M全体を下げるのではなく、下端伸縮部10を上方に引き上げて棹体1を短くすることで行うことができる。
【0040】
下端伸縮部10を引き上げた場合、2本の棹体1の開脚角度は大きくなり連結ロッド2が引き延ばされることとなるが、上記したように連結ロッド2が角度が残る長さに構成されているので問題がない。
棹体1自体を短くすることで杭芯位置設定装置Mを逃げ芯ロッドに当てがった状態で杭芯位置ズレ防止の調整が可能となるので、作業中に杭芯位置設定装置Mの設置位置がずれても、即、逃げ芯ロッドに当て戻すことで作業が再開できる利点がある。
【0041】
連結ロッド2の長さの変動については、本実施の形態においては、連結ロッド2の折り角度を変える伸縮対応機構で対処しているが、図6の部分拡大概略図(一部省略)に示すように連結ロッド2を構成する2本の連結ロッド21,22の内、一方の連結ロッド21に連結長孔24を形成し、その連結長孔24を介して、連結締め付けネジ25により他方の連結ロッド22に摺動自在にネジ止めした伸縮対応機構とすることで、連結ロッド2の長さの変動に対処できる。
第2の実施の形態においても、この長孔構造の連結ロッド2を採用することが可能である。
【0042】
(第3の実施の形態)
図7は、本発明の第3の実施の形態を示す概略図である。
本実施の形態における杭芯位置設定装置Mは、2本の棹体1のそれぞれの上方に上端伸縮部13が設けられている。
具体的には、図8の部分拡大概略図(一部省略)に示すように、上端伸縮部13は、断面L字型の短辺部材で形成されていて、その短辺部材に横方向に設けられた上端伸縮長孔14を介して、棹体1の上端に2箇のボルト15で固定される。
ボルト15を緩めて長さ調整を行い、棹体1の長さを設定することができる。
そして、上端伸縮部13の上端部には、第1の実施の形態の場合と同様、結合用孔7が形成されていてこの孔をもって結合される。
連結ロッド2等の他の構成は第2の実施の形態の杭芯位置設定装置Mと同様である。
【0043】
本杭芯位置設定装置Mの使用に際しては、第2の実施の形態の杭芯位置設定装置Mにおける上端部6の後方への移動が棹体1の下端に設けられた下端伸縮部10を上方に引き上げて行ったのに対し、本杭芯位置設定装置Mにおいては、棹体1の上端伸縮部13を下方に引き下げて行う。
この際の連結ロッド2の長さの変動については、第2の実施の形態で説明した同様の構造で対処できる。
【0044】
(第4の実施の形態)
図9は、本発明の第4の実施の形態を示す概略図である。本実施の形態における杭芯位置設定装置Mは、第3の実施の形態で示した杭芯位置設定装置Mと同構成である。
つまり、図8の部分拡大概略図(一部省略)に示されるように、2本の棹体1のそれぞれの上方に、上端部6が結合された上端伸縮部13が設けられているが、その上端部6の結合が取り外し可能となっている。
要するに、上端部6が取り外しできる構造となっている他は、第3の実施の形態の杭芯位置設定装置Mの構造と全く同様である。
まず、2本の棹体1を結合した状態で、第3の実施の形態の杭芯位置設定装置Mと同様に逃げ芯位置の設定や逃げ芯ロッドの打ち込み、更には逃げ芯位置からの杭芯位置の設定を行う。
この後、オーガースクリューや既製杭の杭芯位置ズレ防止に使用する段階において、杭芯位置設定装置Mの設置位置はそのままにして、上端伸縮部13の上端部6の結合が取り外され、それぞれの上端伸縮部13をオーガースクリューの軸径、或いは既製杭の直径の半分の長さだけ下げる。
そして、上端伸縮部13の先端をオーガースクリューや既製杭の側面に当てがう。
こうしてオーガースクリューや既製杭の杭芯位置ズレ防止を行うが、本杭芯位置設定装置Mの特徴は、オーガースクリューや既製杭の杭芯位置ズレ防止を略90度分、異なる角度の2方向から行うことであり、上記、第1、2、3の実施の形態における杭芯位置設定装置Mに比較して、更に正確な杭芯位置ズレ防止が可能となる。
【0045】
以上、本発明をその実施の形態を例に説明したが、本発明は要旨の変更のない限り、実施の形態のみに限定されるものではなく多様な変形例が可能である。
例えば、棹体1の部材形状は断面L字型に拘らず、扁平なものや断面四角形のようなものであっても構わない。
また、アジャスタロッド5の本数は4本に限定されるものではなく、時には3本であったり、4本以上であっても良い。
更には、水準器設置ブラケット3に関しても断面L字型の部材にこだわるものではなく、確実に水準器4を挟持して、保護し得る形状であれば、その形状にこだわるものではない。
また、アジャスタロッド5の上下動機構に関してもネジ構造以外に、例えばラッチ構造等であっても良いことは言うまでもない。
そして棹体1の上端伸縮部13や下端伸縮部10における伸縮機構や連結ロッド2の伸縮機構についても長孔によるもの以外であっても当然良い。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の杭芯位置設定装置Mは、杭芯位置を基準として逃げ芯位置の設定を行い、その逃げ芯位置から逆に杭芯位置の確保を行うことを基準としているので、基礎造成における既製杭の建て込み以外に、宅地の地境杭に関して仮杭から永久杭に打ち直す場合や、道路工事などで一旦、地境杭を取りはずす必要が生じた場合、地境杭を元の位置に正確に復旧する場合など多方面に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
M…杭芯位置設定装置
1…棹体
2…連結ロッド
21…連結部材
22…連結部材
23…連結結合部
24…連結用長孔
25…連結締め付けネジ
3…水準器設置ブラケット
4…水準器
5…アジャスタロッド
6…上端部
7…結合用孔
8…杭芯位置確認用ロッド
9…案内用切り欠き部
10…下端伸縮部
11…下端伸縮長孔
12…下端締め付けボルト
13…上端伸縮部
14…上端伸縮長孔
15…上端締め付けボルト



【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの上端部で回動自在に結合された2本の棹体と、該上端部から同距離位置で2本の棹体を連結する中折れ可能な連結ロッドとよりなり、棹体の複数箇所に上下動可能なアジャスタロッドが設けられ、且つ棹体には水準器設置ブラケットを介して水準器が設けられていることを特徴とする杭芯位置設定装置。
【請求項2】
断面L字型の棹体と断面L字型の水準器設置ブラケットとの間の空間に水準器が設けられていることを特徴とする請求項1記載の杭芯位置設定装置。
【請求項3】
アジャスタロッドの上下動機構がネジ構造であることを特徴とする請求項1記載の杭芯位置設定装置。
【請求項4】
連結ロッドが伸縮対応機構である請求項1記載の杭芯位置設定装置。
【請求項5】
上端部に杭芯位置確認用ロッドが設けられていることを特徴とする請求項1記載の杭芯位置設定装置。
【請求項6】
2本の棹体の下端に、それぞれ逃げ芯ロッドの案内用切り欠き部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の杭芯位置設定装置。
【請求項7】
2本の棹体のそれぞれの下端に、下端に逃げ芯ロッドの案内用切り欠き部を有する下端伸縮部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の杭芯位置設定装置。
【請求項8】
2本の棹体の上端に、上端部が結合されている上端伸縮部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の杭芯位置設定装置。
【請求項9】
上端部の結合が取り外し可能となっている上端伸縮部が設けられていることを特徴とする請求項8記載の杭芯位置設定装置。



【図1(A)】
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【図1(B)】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−26124(P2012−26124A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164280(P2010−164280)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】