説明

杭頭部と基礎の接合部構造

【課題】杭頭部をコンクリート造の基礎中に挿入させた状態で両者を剛に接合した杭頭部と基礎の接合部において、杭頭部の周囲に配筋される補強筋(アンカー筋)が負担すべき引張力を軽減しながら、杭天端から基礎との間で圧縮力を負担するコンクリートとその周囲のコンクリートとの一体性を確保する。
【解決手段】杭頭部2の外周に杭本体20の断面からその杭本体20の外周側へ、基礎1のコンクリート11、12との間で支圧力を伝達し得る端部材3を突出させ、基礎1中の、杭頭部2の外周面から距離を置いた位置に、杭頭部2からの支圧力を周囲のコンクリート11、12に伝達する補強筋4を杭頭部2の周方向に配列させる。
補強筋4に少なくとも下端部にU字形の形状をした部分を与え、立面上、全体としても補強筋4を少なくともU字形の形状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は杭頭部に作用する曲げモーメントを基礎に伝達させるために、杭頭部をコンクリート造の基礎中に挿入させた状態で両者を剛に接合した杭頭部と基礎の接合部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
杭頭部をコンクリート造の基礎に剛に接合し、杭頭部に作用する曲げモーメントを基礎に伝達するための接合の仕方には図5−(a)〜(e)に示す例が挙げられる。(a)は中空の杭頭部内にコンクリートを充填すると共に、杭頭部のコンクリートと基礎との間に跨って補強筋を配筋し、主として補強筋とコンクリートとの間の付着力によって杭頭部と基礎との間での曲げモーメントを伝達させる方法、(b)は杭頭部を杭径分程度、基礎中に埋め込み、杭頭部の側面に作用する支圧力によって杭頭部と基礎との間での曲げモーメントを伝達させる方法である。
【0003】
図5−(c)、(d)は図5−(a)に示す補強筋の具体的な配筋例であり、(c)は補強筋を杭天端に溶接やねじ込みによって接続する場合、(d)は杭本体を構成する鋼管に補強筋を直接、溶接する場合である。図5−(e)は図5−(b)に示す杭頭部の基礎内部での様子を示している。このように基礎中に杭頭部を挿入する場合は、基礎中での補強筋との干渉を考慮することが必要になる。
【0004】
図5の例は基礎中に、杭頭部周囲のコンクリートを補強するための鉄筋(補強筋)を配筋することを前提としているため、基礎中での鉄筋混在の問題に直面する。この図5の例に対し、基礎中での鉄筋の混在を解消する目的で、杭本体の頭部に杭本体の断面を増すための拡径部材を接合することで、杭本体の径より大きい径を持つ杭頭部としての曲げモーメントの伝達能力を確保する方法がある(特許文献1参照)。
【0005】
この他、杭天端の外周に凸部を突設する一方、基礎中に凸部と対になるプレートを配置し、凸部とプレートとの間に圧縮ストラットを形成させることにより杭頭部からの曲げモーメントを基礎に伝達する方法がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4209314号公報(請求項1、段落0012、0022〜0031、図1)
【特許文献2】特開2008−144471号公報(請求項1、段落0008、0010、0017、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では杭本体の頭部に複数枚の鋼板とコンクリートからなる拡径部材を突設した上で、拡径部材を構成する杭天端側のダイヤフラムに周方向にアンカー部材を溶接する必要があるため、杭の製作が煩雑化する難点がある。
【0008】
特許文献2では杭頭部の天端外周に突設された凸部と基礎中に埋設されるプレートとの間に圧縮ストラットを形成させることから、杭天端の凸部からプレートまでの間に存在するコンクリートを通じて支圧力を伝達させることになる。
【0009】
このときの圧縮力は凸部からプレートまでにかけてコーン状に拡径しながら、伝達されると考えられる。また凸部とプレートとの間に存在するアンカー筋は杭頭部の周囲に存在するコンクリート中に圧縮力が伝達されるときに、圧縮力が伝達されるコンクリートとその部分の回りに存在するコンクリートとの間に跨っていることで、両コンクリートが分離しないよう、一体性を確保する働きをすると考えられる。
【0010】
但し、特許文献2のアンカー筋は基礎中に定着されるプレートに連結されていることから、プレートが受ける圧縮力により引張力を負担するが、プレートは面で圧縮力を受けるため、アンカー筋が負担する引張力が過大になる可能性がある。この関係で、プレートが負担する圧縮力に抵抗させるために、プレートに連結されるアンカー筋の本数を多くする必要が生じ、杭頭部周囲への鉄筋量が増加し、鉄筋の混在を招くことも想定される。
【0011】
本発明は上記背景より、特許文献2におけるアンカー筋が負担すべき引張力を軽減しながら、杭天端から基礎との間で圧縮力を負担するコンクリートとその周囲のコンクリートとの一体性を確保する杭頭部と基礎の接合部構造を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明の杭頭部と基礎の接合部構造は、コンクリート造の基礎中に杭頭部を挿入させた状態で、杭頭部を基礎に接合した接合部において、
前記杭頭部の外周に杭本体の断面(水平断面)からその杭本体の外周側へ、前記基礎のコンクリートとの間で支圧力を伝達し得る端部材が突出し、前記基礎中の、前記杭頭部の外周面から距離を置いた位置に、前記杭頭部からの支圧力を周囲のコンクリートに伝達する補強筋が前記杭頭部の周方向に配列しており、
前記補強筋は少なくとも下端部にU字形の形状をした部分を有し、立面上、全体としても少なくともU字形の形状をしていることを構成要件とする。
【0013】
端部材は杭頭部の天端等、杭本体の断面(水平断面)から杭本体の外周側へ、杭頭部外周面の周方向に連続して(連続的に)、または断続的に張り出す。連続して張り出す場合、端部材は円環状等、環状の形状をし、断続的に張り出す場合は環状の部材が周方向に分割された形状をする。端部材の形状(平面形状)は杭頭部の断面形状によって決まり、杭頭部が円形断面の場合には円環状の形状をし、多角形断面の場合はそれに対応した形状をする。端部材は基本的には板状であるが、必ずしもその必要はなく、ブロック状、あるいは棒状の場合もある。
【0014】
端部材には杭本体との一体化の便宜より鋼材の使用が適するが、必ずしもその必要はない。コンクリートから受ける支圧力に抵抗可能な素材であればよく、プラスチック等も使用される。鋼材が使用される場合、端部材は杭頭部の端部である天端に、杭本体を構成する鋼管、もしくはコンクリートに定着されることにより固定された端板に溶接、もしくはボルト、アンカーボルト等によって固定される。プラスチック等の場合は融着、接着等の手段によって固定される。端部材は図4−(c)に示すように端板が兼ねることもある。
【0015】
杭頭部に曲げモーメントが作用し、杭頭部から基礎に例えば下向きの圧縮力が作用しようとするとき、圧縮力は図1−(a)に示すように端部材から基礎のコンクリートに支圧力として伝達され、端部材はコンクリートから反力を受ける。この支圧力は端部材の下面からコーン状に拡大(拡径)してコンクリート中に伝達し、コンクリートにはコンクリートをコーン破壊(引張破壊)させようとする力として作用する。このときの破壊線を図1−(a)に破線で示す。
【0016】
図1−(a)では基礎1の、杭頭部2との接合部に杭頭部2が挿入される成の高い成高部1aを有する場合を示しているが、この場合に、杭頭部2の基礎(コンクリート)中への挿入深さが浅い場合には、破壊線が成高部1aの底面を通る位置に形成されることが想定される。破壊線が成高部1aの底面を通る位置に形成されれば、コーン破壊に抵抗しようとするコンクリート部分の高さが小さくなるため、コンクリートが破壊する可能性を持つ。コーン破壊に抵抗しようとするコンクリート部分の高さが小さくなることは、基礎1が成高部1aを有しない場合に生じ易い。
【0017】
これに対し、図1−(a)に示すようにコンクリートが成高部1aを有する場合には、杭頭部2の基礎(コンクリート)中への挿入深さを調整する(挿入深さを大きく取る)ことで、破壊線を成高部1aとそれ以外の部分との境界を通る位置に形成させることができるため、コンクリートのコーン破壊が生じにくい形態に基礎1を形成することが可能になっている。コンクリートが成高部1aを有する場合にも、杭頭部2の基礎中への挿入深さが小さければ(不十分であれば)、破壊線が成高部1aの底面を通る位置に形成されることもある。
【0018】
図1−(a)に破線で示す破壊線は基礎1のコンクリートを破壊線の下側に存在するコンクリート11とその上側に存在するコンクリート12に区分し、支圧力は破壊線の下側に存在するコンクリート11を上側に存在するコンクリート12から分断させようとする力として作用する。これに対し、縦断面上、破壊線の線上に補強筋4が配筋され、補強筋4がこの破壊線を跨るように配筋されていることで、補強筋4は破壊線で区分されるコンクリート11、12の一体性を確保する働きをすることになる。
【0019】
ここで、補強筋4が通常の鉄筋のように1本棒の形状をしているとすれば、コンクリート11、12にコーン破壊を生じさせようとしている支圧力に対し、抵抗力不足、あるいは付着力不足から破壊線に関していずれか一方側に存在するコンクリート11、12から抜け出そうとする可能性がある。
【0020】
これに対し、本発明の補強筋4は図2−(a)に示すように少なくとも下端部にU字形の形状をした部分(U字状部分:湾曲部4a)を有し、立面上、全体としても少なくともU字形の形状をしていることで、U字状に湾曲、あるいは屈曲している部分(湾曲部4a)に発生する、コンクリート中を伝達される圧縮力に対する反力の支圧力が補強筋4の上端部からその部分が定着される上側のコンクリート12に伝達されることになる。この結果、補強筋4は上側のコンクリート12からの抜け出しに対する抵抗力が増大し、破壊線を挟んだ両コンクリート11、12の一体性を確保する能力が高まる。
【0021】
特に補強筋4は全体としても少なくともU字形の形状をしていることで、下端部のU字状部分(湾曲部4a)で受けたコンクリート11からの支圧力を少なくとも2本の棒状の鉄筋を通じて上端部から上側のコンクリート12に伝達することができるため、図2−(c)に示す形状の補強筋より下端部で受けたコンクリート11からの力の、上端部を通じてのコンクリート12への伝達能力が高い。
【0022】
「少なくとも下端部にU字形の形状をした部分(U字状部分:湾曲部4a)を有する」とは、図2−(b)に示すように下端部に加え、上端部にもU字状部分(湾曲部4a)を有する場合を含むことを言う。「立面上、全体としても少なくともU字形の形状をする」とは、補強筋4自身が、U字形の形状が図2−(b)、図3に示すように杭頭部2の周方向に連続的に繰り返された形状をする場合があることを意味する。
【0023】
補強筋4は少なくとも下端部にU字状部分(湾曲部4a)を有し、立面上、全体としても少なくともU字形の形状をしていることで、破壊線で区分される下側のコンクリート11と上側のコンクリート12に跨って配筋され、下端部のU字状部分(湾曲部4a)において下側のコンクリート11に定着され、上端部分において上側のコンクリート12に定着される。
【0024】
また少なくとも下側のコンクリート11中に定着される部分がU字状の形状をする(湾曲部4aを有する)ことで、上記のようにコンクリート11から伝達される圧縮力に対し、支圧力の反力を生ずるため、少なくとも下側コンクリート11との間では支圧力によって力を伝達し合うことになる。
【0025】
補強筋4はU字状部分(湾曲部4a)を少なくとも1箇所持ち、1箇所の場合が図2−(a)に示す形状であり、複数箇所の場合が図2−(b)に示す形状である。複数の湾曲部4aを有する場合、補強筋4は図3に示すように杭頭部2の周方向に連続して周回することもある。
【0026】
補強筋4は少なくとも下端部にU字状部分(湾曲部4a)を有すればよいから、上端部分にも逆向きのU字状部分(湾曲部4a)が形成されることもある。例えば図2−(b)、図3に示すように全体としてU字状部分(湾曲部4a)が補強筋4の下端部と上端部に交互に形成され、補強筋4が杭頭部2の周方向に連続する場合には、上端部のU字状部分(湾曲部4a)においても支圧力によって破壊線の上側のコンクリート12との間で力の伝達が行われる。この場合、上端部のU字状部分からは下向きに支圧力がコンクリート12に作用することになる。
【0027】
その場合、補強筋4は立面上、U字形の形状をした部分が一往復以上、連続した形状をしていることになる(請求項2)。この場合、補強筋4は上記のように下端部(のU字状部分(湾曲部4a))において下側のコンクリート11からの反力を支圧力として受け、その力を上端部(のU字状部分(湾曲部4a))において上側のコンクリート12に対して支圧力によって伝達することになるため、破壊線を挟んだ両側のコンクリート11、12の一体化の効果が一層強まる。
【0028】
補強筋が従来の形態である図2−(c)に示すように下端部にU字状の湾曲部を持ちながらも、全体としてU字形の形状をせず、全体的に上部が破壊線の上側のコンクリートに跨がらないような場合には、下端部のU字状部分(湾曲部)が仮に支圧力を受けることができたとしても、その支圧力を破壊線の上側のコンクリートに十分に伝達することができないため、破壊線を挟んだ両側のコンクリートの一体性を確保する補強筋としての機能を持ち得ないことになる。
【0029】
また特許文献2のように補強筋の下端にプレートが連結されている場合には、プレートが受ける支圧力によって補強筋が受ける引張力が過大になり、補強筋が破断する可能性があるが、本発明では補強筋が受ける引張力はU字状部分に作用する支圧力であるため、引張力が過大になることはなく、支圧力を負担することによって補強筋が破断する状況に至ることは回避される。
【発明の効果】
【0030】
補強筋が少なくとも下端部にU字形の形状をした部分を有し、立面上、全体としても少なくともU字形の形状をしていることで、U字状部分(湾曲部)に発生する、コンクリート中を伝達される圧縮力に対する反力の支圧力を補強筋の上端部からその部分が定着される上側のコンクリートに伝達することができる。この結果、補強筋の上側のコンクリートからの抜け出しに対する抵抗力が増大し、破壊線を挟んだ両コンクリートの一体化の効果が高まる。
【0031】
また補強筋が受ける引張力はU字状部分に作用する支圧力であるため、引張力が過大になることはなく、支圧力を負担することによって補強筋が破断する状況に至ることは回避される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)は基礎中に挿入されている杭頭部とその周囲に配筋される補強筋の関係を示した縦断面図、(b)は(a)のx−x線の断面図である。
【図2】(a)はU字状部分を1箇所有する補強筋の例を示した立面図、(b)は複数箇所のU字状部分を有する補強筋の例を示した立面図、(c)はU字状部分を有しながら、定着部のみを有する従来の補強筋を示した立面図である。
【図3】図2−(b)に示す補強筋が平面上、環状に閉じた形状に形成された場合の杭頭部回りへの配筋状態を示した平面図である。
【図4】(a)は端部材を杭頭部の天端に固定した場合の例を示した立面図、(b)は2枚(個)以上の端部材を杭頭部の側面に固定した場合の例を示した立面図、(c)は杭頭部天端の端板が端部材を兼ねる場合の例を示した立面図である。
【図5】(a)〜(e)は従来の杭頭部と基礎の接合例を示した縦断面図であり、(c)、(d)は(a)の具体例を、(e)は(b)の具体例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0034】
図1−(a)はコンクリート造の基礎1中に杭頭部2を挿入させた状態で、杭頭部2を基礎1に接合した接合部の具体例を示す。(b)は(a)のx−x線の断面を示す。前記のように図1−(a)では基礎1の、杭頭部2との接合部に成高部1aを形成しているが、成高部1aは必ずしも形成される必要はない。
【0035】
図面では杭頭部2を含む杭本体20が鋼管の内周側に遠心力によってコンクリートを一体化させた鋼管コンクリート製(遠心力鉄筋コンクリート杭(SC杭))である場合の例を示しているが、杭本体20の構造は特定されず、鋼管杭、コンクリート杭、PHC杭、合成杭等の既製杭の他、現場造成杭も使用される。
【0036】
杭頭部2の外周には杭本体20の断面からその杭本体20の外周側へ、基礎1のコンクリート11、12との間で支圧力を伝達し得る端部材3が突出する。基礎1中の、杭頭部2の外周面から距離を置いた位置には図1−(b)に示すように杭頭部2からの支圧力を周囲のコンクリート11、12に伝達する補強筋4が杭頭部2の周方向に配列する。補強筋4は図2−(a)、(b)に示すように少なくとも下端部にU字形の形状をした部分である湾曲部4aを有し、立面上、全体としても少なくともU字形の形状をしている。
【0037】
杭頭部2の天端には杭本体20の端部において杭本体20を構成するコンクリートの型枠となる端板21が固定されており、端部材3はこの端板21に溶接、ねじ込み(螺合)等の手段によって固定される。端部材3は杭頭部2の周方向に連続する場合は円環状等、環状のプレートが使用され、周方向に断続的に配置される場合はプレート(フラットバー)、形鋼、鉄筋、あるいはこれらを適度な長さで切断した板等が使用される。端板21は杭本体20の端部(天端)、もしくは杭本体20の頭部の周囲に、杭本体20を構成する鋼管への溶接、あるいはコンクリートへの定着等によって固定されている。
【0038】
端部材3は図1−(a)に示すように端板21から杭本体20の外周側へ突出した状態で端板21に固定される。端部材3の端板21からの突出量は端部材3の下面からコンクリート11、12に支圧力が作用し得るように設定される一方、過剰な支圧力が作用しないように調整される。図1−(a)では端部材3から作用する支圧力の反力がコンクリート11、12から端部材3に作用している様子を示している。図1−(a)中、破線は端部材3からコンクリート11、12に作用する支圧力によってコンクリート11、12に生じさせようとするコーン破壊の破壊線を示している。
【0039】
基礎1のコンクリート11、12は図1−(a)に破線で示す破壊線の上側と下側に区分され、コンクリート11、12はこの破壊線を境界として端部材3に作用する支圧力の伝達によって分断され(ひび割れし)ようとするが、補強筋4が縦断面上、この破壊線と交わる範囲に、すなわち両側のコンクリート11、12に跨って配筋されることで、区分されるコンクリート11、12の一体性が確保されている。図1−(a)では破壊線の下側のコンクリートを11で、上側のコンクリートを12で示している。
【0040】
端部材3からの支圧力はその位置(杭本体20の水平断面上の中心)から遠ざかる程、拡散(分散)していくから、補強筋4の配筋による両コンクリート11、12の一体化の効果は端部材3に近い程、高いと言える。一方、補強筋4が端部材3に接触している状態では、双方の接触面でのコンクリート11、12との間の付着力が期待されなくなるため、補強筋4は端部材3から少しでも離れている方がよい。
【0041】
端部材3から破壊線の下側のコンクリート11中を伝達される支圧力は図2−(a)に示すように補強筋4の下端部のU字状部分である湾曲部4aに支圧力として伝達され、補強筋4には引張力として負担される。補強筋4が負担する引張力は補強筋4を通じて破壊線の上側のコンクリート12に伝達され、コンクリート12で負担される。破壊線の下側のコンクリート11からの支圧力が上側のコンクリート12に伝達されることで、破壊線で区分されるコンクリート11、12の一体性が確保される。
【0042】
補強筋4は立面上、図2−(a)、(b)のような形状に形成される。(c)は対比のための従来の補強筋の形成例を示している。従来の補強筋は定着用のフックを下端部に有するのみで、全体としてはU字形の形状をしていない関係で、フック部分で支圧力を受けたとしても、上端部が定着されるコンクリートにまで伝達されることがない。
【0043】
これに対し、本発明で使用される補強筋4は全長(全高)に亘って(全体的に)U字状の形状をし、(c)に示す従来の補強筋を2本、束ねた形状をしていることで、2本の棒状部分を通じて上端部が定着されるコンクリート12に伝達されるため、下端部のU字状部分(湾曲部4a)で受けた支圧力を損失させることなく、上端部が定着されるコンクリート12に伝達することが可能になっている。図2−(a)、(b)の場合、下半分が破壊線の下側のコンクリート11中に定着される部分であり、上半分が破壊線の上側のコンクリート12中に定着される部分になる。
【0044】
特に図2−(b)に示す補強筋4のように上端部にもU字状部分(湾曲部4a)を有する形状をしている場合には、下側のコンクリート11から補強筋4を通じて伝達される引張力が上端部の湾曲部4aにおいても下向きの支圧力によってコンクリート12に圧縮力として伝達されるため、補強筋4による応力の伝達効果が高まり、それだけ両側のコンクリート11、12の一体性を強めることができる。(b)に示す補強筋4は(a)に示すU字形状が4往復半した形状をしている。
【0045】
図2−(a)に示す補強筋4を本発明で使用される補強筋4の基本形とすれば、上端部にも湾曲部4aを形成する上では、この(a)に示す補強筋4が一個以上、杭頭部2の周方向に連続した形状であればよいことになる。(b)に示すような形状の補強筋4は図3に示すように平面上、環状に湾曲した形状になった状態で基礎1中に配筋される。
【0046】
図3は杭頭部2の周方向に閉じた(周回する)形状の補強筋4を周方向に連続させて配筋した様子を示している。図3中、実線部分は破壊線に関して上側に存在するコンクリート12中に定着される補強筋4の上端部の湾曲部4aを示し、破線部分は下側に存在するコンクリート11中に定着される下端部の湾曲4aを示している。
【0047】
また図3中、2点鎖線は平面形状が環状である補強筋4を側面から見たときの様子を便宜的に、連続的に示している。2点鎖線の内、杭頭部2の断面上の中心から遠い範囲にある区間は上側のコンクリート12中に定着される部分を、中心に近い範囲にある区間は下側のコンクリート11中に定着される部分を示している。
【0048】
図4−(a)〜(c)は杭頭部2への端部材3の固定例を示している。図4−(a)は杭頭部(杭本体20)の天端に端部材3を固定した場合であり、端板21に溶接等によって固定した場合である。(b)は杭頭部2の側面(周面)、すなわち杭本体20を構成する鋼管の側面(周面)に杭本体20の軸方向に2段、配列させ、溶接等により固定した場合である。(a)、(b)は端部材3として円板、もしくは円環状の板、あるいはフラットバー等を使用した場合の例を示しているが、これらの場合、端部材3は杭本体20の製作後に固定される。
【0049】
図4−(c)は端板21が端部材3を兼ねている場合の固定例を示している。この例では端部材3である端板21は杭本体20の製作時に鋼管への溶接、あるいはコンクリートへの定着等によって固定される。
【符号の説明】
【0050】
1……基礎、1a……成高部、
11……下側のコンクリート、12……上側のコンクリート、
2……杭頭部、20……杭本体、21……端板、
3……端部材、
4……補強筋、4a……湾曲部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート造の基礎中に杭頭部を挿入させた状態で、杭頭部を基礎に接合した接合部において、
前記杭頭部の外周に杭本体の断面からその杭本体の外周側へ、前記基礎のコンクリートとの間で支圧力を伝達し得る端部材が突出し、前記基礎中の、前記杭頭部の外周面から距離を置いた位置に、前記杭頭部からの支圧力を周囲のコンクリートに伝達する補強筋が前記杭頭部の周方向に配列しており、
前記補強筋は少なくとも下端部にU字形の形状をした部分を有し、立面上、全体としても少なくともU字形の形状をしていることを特徴とする杭頭部と基礎の接合部構造。
【請求項2】
前記補強筋は立面上、前記U字形の形状をした部分が一往復以上、連続した形状をしていることを特徴とする請求項1に記載の杭頭部と基礎の接合部構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−236612(P2011−236612A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108105(P2010−108105)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(597058664)株式会社トーヨーアサノ (24)
【Fターム(参考)】