松くい虫燻蒸駆除の施工方法
【課題】燻蒸シートを容易に運搬することができ、該燻蒸シートの取り扱い性に優れた燻蒸シート用運搬用具を用いて、簡便な作業で松くい虫の燻蒸駆除を行うことができる施工方法を目的とする。
【解決手段】燻蒸シート用運搬用具1を用いて松くい虫を燻蒸駆除する方法であって、松くい虫燻蒸シートを燻蒸シート用運搬用具1に収納して運搬する工程と、前記松くい虫燻蒸シートを燻蒸シート用運搬用具1から引き出し、伐倒材を覆う工程と、前記松くい虫燻蒸シート内で前記伐倒材を薬剤により燻蒸処理する工程とを含む施工方法。
【解決手段】燻蒸シート用運搬用具1を用いて松くい虫を燻蒸駆除する方法であって、松くい虫燻蒸シートを燻蒸シート用運搬用具1に収納して運搬する工程と、前記松くい虫燻蒸シートを燻蒸シート用運搬用具1から引き出し、伐倒材を覆う工程と、前記松くい虫燻蒸シート内で前記伐倒材を薬剤により燻蒸処理する工程とを含む施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、松くい虫燻蒸駆除の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、松くい虫による松の集団枯死が全国的に広がっており、大きな被害をもたらしている。この松くい虫による松の枯死は、実際にはマツノザイセンチュウという線虫により引き起こされ、このマツノザイセンチュウがマツノマダラカミキリにより運ばれることで別の松へと次々に伝播していく。
【0003】
このような松の集団枯死の被害を防ぐ方法としては、枯死した松を伐倒した後、それら伐倒材を松くい虫燻蒸シート(以下、「燻蒸シート」という。)で覆い、その場で薬剤により燻蒸し、それらの松に残っているマツノザイセンチュウやマツノダラカミキリの幼虫を駆除する方法が知られている(例えば特許文献1、2)。この松くい虫の燻蒸駆除に用いられる燻蒸シートとしては、薬剤の拡散を防ぐ高いガスバリア性を有するシートや、燻蒸駆除の後に撤去作業を必要としない生分解性のシート等が示されている(例えば、特許文献3〜5等)。
【0004】
松くい虫の燻蒸駆除は、通常、大きなサイズ(例えば、幅4m×長さ30m程度)の燻蒸シートを松の伐倒現場まで運び、該燻蒸シートを燻蒸駆除に必要な大きさごと(4m程度の正方形)に切り取って伐倒材を覆った後、薬剤を注入することにより行なわれる。そのため、運搬の際の燻蒸シートは非常に大きく、従来は短手方向(幅2m)に半折りしたものを紙管に巻き回した状態で肩に担いで運んでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−25347号公報
【特許文献2】特開2003−23947号公報
【特許文献3】特開2005−103872号公報
【特許文献4】特開2005−154456号公報
【特許文献5】特開2006−246786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような方法では、紙管に巻き回した状態の燻蒸シートが15kg程度と重いことから、運搬時及び燻蒸処理時における燻蒸シートの取り扱い性が悪かった。また、それらを積み上げることが困難であるため、保管が困難である上、保管スペースも大きくなっていた。
また、燻蒸シートの運搬方法としては、燻蒸シートを小さく折り畳んだものを紙袋等に収納して持ち運ぶことが考えられる。しかし、紙袋等に収納しただけでは運搬し難く、また燻蒸処理後に燻蒸シートの未使用の部分を折り畳んで再度梱包する作業は煩雑である。例えば、通常開梱する際には袋の口止めテープは雑に扱われるため、その口止めテープを再利用することは不可能である。
以上のような理由から、燻蒸シートを容易に運搬し、燻蒸処理時において煩雑な作業を必要とせずに松くい虫の燻蒸駆除が行なえる施工方法が望まれている。
【0007】
そこで本発明は、燻蒸シートを容易に運搬することができ、該燻蒸シートの取り扱い性に優れた燻蒸シート用運搬用具を用いて、簡便な作業で松くい虫の燻蒸駆除を行うことができる施工方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の松くい虫燻蒸駆除の施工方法は、松くい虫燻蒸シートを収納する収納本体を具備する燻蒸シート用運搬用具を用いて松くい虫を燻蒸駆除する方法であって、
松くい虫燻蒸シートを燻蒸シート用運搬用具に収納して運搬する工程(1’)と、
前記松くい虫燻蒸シートを収納本体から引き出し、伐倒材を覆う工程(2’)と、
前記松くい虫燻蒸シートで覆われた前記伐倒材を薬剤により燻蒸処理する工程(4’)とを含む方法である。
【0009】
また、本発明の松くい虫燻蒸駆除の施工方法は、前記燻蒸シート用運搬用具が、前記松くい虫燻蒸シートを収納する収納本体と、該収納本体に設けられた肩掛けベルトとを具備していることが好ましい。
また、前記工程(1’)においては、前記松くい虫燻蒸シートを、その長手方向に沿ってガゼット折りした後、さらに長手方向に蛇腹状に折り畳み、その折り畳んだ松くい虫燻蒸シートを前記燻蒸シート用運搬用具に収納することが好ましい。
【0010】
また、本発明の松くい虫燻蒸駆除の施工方法は、松くい虫燻蒸シートを収納する収納本体を具備する燻蒸シート用運搬用具を用いて松くい虫を燻蒸駆除する方法であって、
松くい虫燻蒸シートを折り畳んで燻蒸シート用運搬用具に収納して運搬する工程(1)と、
前記松くい虫燻蒸シートを収納本体から引き出し、伐倒材を覆うのに必要な大きさに切断して該伐倒材を覆う工程(2)と、
前記収納本体から引き出した前記松くい虫燻蒸シートの未使用部分を前記燻蒸シート用運搬用具に再収納する工程(3)と、
前記松くい虫燻蒸シートで覆われた前記伐倒材を薬剤により燻蒸処理する工程(4)とを含む方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の松くい虫燻蒸駆除の施工方法によれば、燻蒸シートを容易に運搬でき、かつ該燻蒸シートの取り扱い性に優れた燻蒸シート用運搬用具を用いることで、簡便な作業で松くい虫の燻蒸駆除を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の燻蒸シート用運搬用具の実施形態の一例を示した斜視図である。
【図2】図1の燻蒸シート用運搬用具の開かれている様子を示した斜視図である。
【図3】図2の燻蒸シート用運搬用具にシートが収納された様子を示した斜視図である。
【図4】本発明の燻蒸シート用運搬用具からシートを取り出す様子を示した斜視図である。
【図5】本発明の燻蒸シート用運搬用具の収納本体を半折りにしている様子を示した斜視図である。
【図6】本発明の燻蒸シート用運搬用具の他の実施形態例を示した斜視図である。
【図7】本発明の松くい虫燻蒸駆除の施工方法を示した模式図である。
【図8】本発明の松くい虫燻蒸駆除の施工方法を示した模式図である。
【図9】本発明の松くい虫燻蒸駆除の施工方法を示した模式図である。
【図10】本発明の松くい虫燻蒸駆除の施工方法を示した模式図である。
【図11】本発明における松くい虫燻蒸シートを折り畳んだ様子を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<燻蒸シート用運搬用具>
以下、本発明の施工方法に用いる燻蒸シート用運搬用具の実施形態の一例について説明する。
燻蒸シート用運搬用具1(以下、「運搬用具1」という。)は、図1及び2に示すように、松くい虫燻蒸シート100(以下、「燻蒸シート100」という。)を収納する収納本体10と、収納本体10に設けられた一対の肩掛けベルト12とを具備している。
収納本体10や肩掛けベルト12の材質は、リュックサック等に通常用いられるものを使用することができ、例えば、ナイロン等が挙げられる。
【0014】
収納本体10は、図2に示すように、背面部14と、背面部14の幅方向の両側からそれぞれ内側に向かって開口18を形成するように設けられた幅規制部16とを有している。
幅規制部16は、背面部14の幅方向の両端14a、14aからそれぞれ内側に向かって設けられており、その長さ方向の端部16a、16bは背面部14と連結されている。また、背面部14の両端14a、14aから延びるそれぞれの幅規制部16により、燻蒸シート100を出し入れする開口18が形成されている。このように、背面部14及び幅規制部16により燻蒸シート100を収納する収納空間が形成される。
【0015】
また、運搬用具1は、燻蒸シート100を収納した収納本体10を半折りにした状態で運搬するものである。収納本体10は、幅規制部16を内包するように長さ方向に半折りされ、その半折りされた収納本体10の背面部14の一方の外側面が背負い面20とされる(図1)。また、背負い面20には、半折りにした収納本体10の折り返し部22が上側になるように一対の肩掛けベルト12が設けられる。
【0016】
背面部14の形状は、正方形、矩形等が挙げられる。すなわち、背面部14の長さaと幅bは同じ長さであってもよく、長さaが幅bより長くてもよく、幅bが長さaより長くてもよい。特に、大きなサイズの燻蒸シート100を折り畳んで収納して運搬する場合、背面部14の形状は、運搬の容易性及び燻蒸シート100の出し入れ等の取り扱い性に優れる点から、長さaが幅bよりも長い矩形状であることが好ましい。
【0017】
背面部14の長さaは、運搬する燻蒸シート100の大きさによっても異なるが、50〜150cmであることが好ましい。背面部14の長さaが50cm以上であれば、より大きなサイズの燻蒸シート100を容易に運搬することができる。また、背面部14の長さaが150cm以下であれば、燻蒸シート100の運搬が容易になり、かつ燻蒸シート100の取り扱い性も向上する。
【0018】
背面部14の幅bについても、長さaと同様に運搬する燻蒸シート100の大きさによっても異なるが、40〜80cmであることが好ましい。背面部14の幅bが40cm以上であれば、より大きなサイズの燻蒸シート100を容易に運搬することができる。また、背面部14の幅bが80cm以下であれば、燻蒸シート100の運搬が容易になり、かつ燻蒸シート100の取り扱い性も向上する。
【0019】
幅規制部16は、収納した燻蒸シート100の、収納本体10の幅方向へのずれを規制する役割を果たす。燻蒸シート100を収納した運搬用具1を背負って運搬する際には、運搬中に運搬用具1が上下左右に揺れるが、幅規制部16により、収納本体10に収納されている燻蒸シート100が収納本体10の幅方向にずれることを抑制することができる。
また、幅規制部16の長さ方向の端部16a、16bが背面部14と連結されているため、収納されている燻蒸シート100が収納本体10から出てしまうことが防止される。
【0020】
幅規制部16の幅c1、c2は、開口18を形成し、かつ燻蒸シート100を収納してその収納本体10の幅方向へのずれを規制できる長さであればよい。また、各々の幅規制部16の幅c1、c2は、開口18の形成、及び燻蒸シート100の収納本体10の幅方向へのずれの抑制が可能な範囲であれば、それぞれ異なる長さであってもよい。ただし、収納された燻蒸シート100が収納本体10の幅方向にずれることを抑制しやすい点、燻蒸シート100の出し入れが容易で取り扱い性が向上する点から、幅c1及び幅c2を同じ長さとして、収納本体10の幅方向の中央に開口18が形成されるようにすることが好ましい。
【0021】
幅規制部16の幅c1(c2についても同じ。)は、背面部14の幅bとの比(c1/b)が0.1〜0.45となるようにすることが好ましい。前記比(c1/b)が0.1以上であれば、燻蒸シート100をしっかりと収納してその収納本体10の幅方向へのずれを抑制することが容易になる。また、前記比(c1/b)が0.45以下であれば、開口18の幅d(背面部14の幅bから幅規制部16の幅c1及びc2の合計を差し引いた長さ)を充分に大きくすることができ、燻蒸シート100の出し入れ等の取り扱い性がより向上する。
【0022】
また、各々の幅規制部16の長さ方向の端部16bは、それらが互いに連結されていることが好ましい。これにより、収納本体10への燻蒸シート100の収納が安定になり、また運搬時や燻蒸シート100の出し入れ時に土等が収納本体10内に入って燻蒸シート100が汚れることを抑制しやすい。また、各々の幅規制部16の端部16aについても、端部16bと同様に連結されていることが好ましい。
【0023】
また、前述の収納の安定性の向上、土等による燻蒸シート100の汚れの防止の観点から、開口18の長さ方向の端部16b側には、開口縁部18aが設けられていてもよい。開口縁部18aは、前述の効果が得られ、かつ開口18からの燻蒸シート100の出し入れ等の取り扱い性を悪化させすぎないように設けることが好ましい。
また、開口18の長さ方向の端部16a側についても、同様の開口端部が設けられていてもよい。ただし、挟板24を設けている場合には、該挟板24により、土等で燻蒸シート100が汚れることを防止する効果を得ることができる。
【0024】
運搬用具1における背負い面20は、幅規制部16を内包するように長さ方向に半折りされた収納本体10における背面部14の一方の外側面である。すなわち、背負い面20は、背面部14の外側面であって、それを長さ方向に二等分した領域のうちの一方の面である。燻蒸シート用運搬用具は、背面部14の外側面の二等分された領域のうち、どちらが背負い面となっても構わない。
【0025】
背負い面20には、その背負い面20の形状を維持する背板20a(図1)が設けられていることが好ましい。これにより、運搬時の収納本体10の形状、すなわち収納されている燻蒸シート100の形状が一定に保たれやすく、大きなサイズの燻蒸シート100であっても収納されている該燻蒸シート100の形状を崩さずに運搬することが容易になる。収納されている燻蒸シート100が運搬により型崩れしなければ、その後燻蒸シート100を運搬用具1から取り出す際に作業がスムーズに行なえる。
【0026】
背負い面20に設ける背板20aは、背負い面20に内装されていてもよく、背負い面20上に直接設けられていてもよいが、背負い面20に内装されていることが好ましい。
また、背板20aの形状は、背負い面20の形状を維持できるものであれば特に限定されず、背負い面20と同形状の1枚の板片であってもよく、複数の骨格を組み合わせてなるものであってもよい。
【0027】
収納本体10の背負い面20には、半折りした収納本体10の折り返し部22が背負ったときに上側になるように、シート用運搬用具1を背負うための肩掛けベルト12が設けられている。
肩掛けベルト12の形態は、収納本体10を背負えるものであれば特に限定されず、リュックサック等に通常用いられる肩掛けベルトを用いることができる。
また、この例の運搬用具1は、両肩用に一対の肩掛けベルト12が設けられているがこれには限定されず、肩掛けベルト12が片肩用に一つのみ設けられたものであってもよい。
【0028】
また、本発明の燻蒸シート用運搬用具は、半折りにした収納本体10の間に挟むことによって、収納本体10に収納された燻蒸シート100の位置を規制する挟板24が設けられていることが好ましい。
この例では、挟板24は、収納本体10の背負い面20側の長さ方向の端部に形成されており、半折りにした収納本体10に挟んだときにその一端24aが収納本体10の折り返し部22に接触する(図1)。
【0029】
挟板24を設けていない場合、運搬の際に、収納されている燻蒸シート100の折り返し部22近傍にある部分が重力や運搬による振動等により収納本体10内で若干下がり、このとき該燻蒸シート100が半折りされている収納本体10内でどちらか一方に偏ると、運搬による振動によりその偏りがより激しくなっていくことで、収納本体10内での燻蒸シート100の形状が崩れてしまうおそれがある。しかし、挟板24を用いることにより、収納本体10に収納された燻蒸シート100が折り返し部22の部分で挟板24の一端24aに掛けられた状態になって支えられる。そのため、大きな振動が加えられた場合であっても、燻蒸シート100の折り返し部22近傍の部分が下がって、半折りされた収納本体10内で偏りを生じることを抑制することができる。
【0030】
また、背負い面20に前記背板20aが設けられている場合には、その背板20aと挟板24により、収納本体10の背負い面20側にある燻蒸シート100を挟み込むことができるため、収納本体10内で燻蒸シート100をより安定に固定することができる。そのため、運搬による燻蒸シート100の型崩れを抑制する効果がさらに高くなる。
【0031】
また、収納本体10には、図1及び2に示すように、背面部14の折り返し部22の外側面から延びるカバー26が設けられていることが好ましい。カバー26は、運搬時に背面部14の背負い面20と逆側の面28上に垂らすことにより、接触等による収納本体10の損傷を抑制することができる。
また、燻蒸シート100を運搬用具1に出し入れする際には、カバー26を背負い面20の下に敷いた状態で収納本体10を開くことにより、背負い面20及び肩掛けベルト12が土等で汚れることを防ぐことができる(図4)。
【0032】
運搬用具1の色は、特に限定されないが、虫が寄ってきたり、日光により運搬用具1が高温になったりすることを避ける点から黒を避けることが好ましく、コストの点から、赤が特に好ましい。
【0033】
また、収納本体10には、半折りした収納本体10を固定するベルト固定具30が設けられていることが好ましい(図1及び図5)。これにより、半折りした収納本体10をより安定に固定することができ、運搬中の燻蒸シート100の型崩れを抑制しやすくなる。
ベルト固定具30は、特に限定されないが、土等の付着による固定性能の低下を防ぐ点から、ファスナーやマジックテープ(登録商標)よりも、図5に示すような、雄部30aと雌部30bとを装着することにより固定する簡便な固定具であることが好ましい。
ベルト固定具30の数は特に限定されないが、装着の際の混乱及び煩雑な作業を避ける点から、収納本体10を半折りにした状態で安定に固定できる範囲内でできるだけ少なくすることが好ましい。
【0034】
尚、本発明におけるシート用運搬用具は、図1〜5に例示した運搬用具1には限定されない。例えば、挟板24は収納本体10の面28側の長さ方向の端部に設けられていてもよい。
また、挟板24が収納本体10の幅方向の端部に設けられているシート用運搬用具2(図6)であってもよい。シート用運搬用具2における挟板24は、一端24bが収納本体10の折り返し部22に接触するように設けられており、運搬時に燻蒸シート100を収納した収納本体10が挟板24に掛けられた状態にとなる。ただし、運搬時や燻蒸シートの出し入れの際にシート用運搬用具を置いたときに、開口18の長さ方向の端の部分から収納本体内に土等が入って燻蒸シートが汚れることを防ぎ易い点から、挟板24は収納本体10の長さ方向の端部に設けられていることが好ましい。
【0035】
<松くい虫燻蒸駆除の施工方法>
本発明の施工方法は、例えば、前述した燻蒸シート用運搬用具を用いて松くい虫の燻蒸駆除を行なう方法である。本発明の施工方法は、例えば、前述の燻蒸シート用運搬用具を用いる方法であって、下記工程(1)〜(4)を含む方法である。
工程(1):松くい虫燻蒸シートを折り畳んで燻蒸シート用運搬用具に収納して運搬する工程。
工程(2):前記松くい虫燻蒸シートを収納本体から引き出し、伐倒材を覆うのに必要な大きさに切断して該伐倒材を覆う工程。
工程(3):収納本体から引き出した前記松くい虫燻蒸シートの未使用部分を前記燻蒸シート用運搬用具に再収納する工程。
工程(4):前記松くい虫燻蒸シートで覆われた前記伐倒材を薬剤により燻蒸処理する工程。
【0036】
以下、本発明の施工方法の一実施形態例として、前述の運搬用具1を用いた施工方法について説明する。
松くい虫の燻蒸駆除に用いられる燻蒸シート100は、通常、長尺で帯状のシートであり、例えば、幅4m×長さ30m程度のものが挙げられる。これを伐倒現場まで運搬し、該伐倒現場で随時必要な分だけ切断して使用する。
燻蒸シート100は、松くい虫の燻蒸駆除に通常用いられるシートを用いることができ、燻蒸処理後に燻蒸シートを回収する必要がなく環境面に優れる点から、生分解性の燻蒸シートであることが好ましい。生分解性の燻蒸シートとしては、例えば、特開2003−231820号公報、特開2003−284478号公報、特開2003−292641号公報、特開2003−320620号公報、特開2004−10693号公報、特開2005−73581号公報、特開2005−103872号公報、特開2005−154456号公報、特開2005−287458号公報、特開2006−213830号公報、特開2006−246786号公報等に記載の燻蒸シートが挙げられる。
【0037】
工程(1)は、松くい虫燻蒸シート(燻蒸シート100)を運搬用具1に収納して運搬する工程である。
燻蒸シート100は、図2に示すように、まず、その長手方向に沿ってガゼット折りにし、さらにそれを長手方向に蛇腹状に折り畳む(以下、折り畳まれた燻蒸シート100を特に「折畳シート100」ということがある。)ことが好ましい。ここで、前記ガゼット折りでは、燻蒸シート100の短手方向の両方の端縁101が、燻蒸シート100を短手方向に二等分する中央部分102に向かってそれぞれ折り返されて揃えられ、かつ前記両方の端縁101と前記中央部分102の中間に位置する中間部分103(折り返されて形成された山折部分)が内部側に折り返されて前記中央部分102で揃えられる。
【0038】
このように折り畳まれた折畳シート100は、その長手方向が収納本体10の幅方向に沿うように収納される(図3)。次いで、収納本体10を、幅規制部16を内包するように、かつ挟板24を挟みこんで半折りにし(図5)、ベルト固定具30で固定する。このように、収納本体10が長さ方向に半折りされると、収納本体10内で折畳シート100が中央部分102に沿って半折りされる。
その後、カバー26を面28側へと垂らし(図1)、肩掛けベルト12により背負うことにより燻蒸シート100を運搬する。
【0039】
運搬時の折畳シート100は、幅規制部16により収納本体10の幅方向へのずれが規制されている。
また、収納本体10を半折りして折畳シート100が半折りにされていることで、半折りしていない場合に比べて収納本体10の長さ方向へのずれが抑制されている。つまり、燻蒸シートを半折りせずに背負う運搬用具の場合、運搬用具を背負ったときの力は、収納されているシートの底の部分で運搬用具から燻蒸シートに伝わる。そのため、燻蒸シートの重心部分には直接力が加わっておらず、重力及び運搬における振動等により該燻蒸シートが底の方にずれて偏ってしまい、燻蒸シートが型崩れしてしまう。
【0040】
これに対し、折畳シート100を半折りにした状態で背負う本発明の燻蒸シート用運搬具では、幅規制部16により、折畳シート100を背負う力が折畳シート100の折り返し部分(収納本体10の折り返し部22に位置する部分)にも加わる。折畳シート100の重心は半折りした折り返し部分にあり、運搬用具1ではその折畳シート100の重心部分に力を加えることができることから、型崩れをより抑制して運搬することができる。
【0041】
さらに、挟板24を用い、収納本体10の折り返し部22に一端24aを接触させ、折畳シート100が挟板24に掛けられた状態とすることで、該挟板24により折畳シート100の重心により的確に上向きの力を加えることができる。これにより、折畳シート100が収納本体10内でバランスが取れた状態でより安定に固定されるため、型崩れさせずに運搬することがより容易になる。
また、ガゼット折りにした折畳シート100は、端縁101及び中間部分103が揃えられた中央部分102が他の部分よりも薄くなっているために、中央部分102に沿って半折りにしやすい。また、その中央部分102に沿って挟板24の一端24aを接触させることができるため、運搬時の収納本体10内の折畳シート100がより安定に固定される。
【0042】
工程(2)は、燻蒸シート100を松の伐倒現場まで運搬した後に、燻蒸シート100を収納本体10から引き出し、伐倒材を覆うのに必要な大きさに切断して該伐倒材を覆う工程である。
運搬後、カバー26を背負い面20の下に敷いた状態にして伐倒現場(山の斜面)に運搬用具1を置き、収納本体10を開く(図7)。運搬用具1は、収納本体10の長さ方向が伐倒材Wの軸方向と並行するように設置する。このとき、伐倒材Wの設置方向によっては、収納本体10の幅方向が斜面方向を向くように設置されることがある。しかし、本発明の施工方法では幅規制部16を有する運搬用具1を用いているため、収納本体10内に収納された折畳シート100が斜面を滑り落ちて崩れることを防止できる。
【0043】
次いで、燻蒸シート100を収納本体10から幅方向に引き出し、伐倒材Wの軸方向の中央付近に被せる(図8)。収納本体10には、蛇腹状に折り畳まれた折畳シート100が、その長手方向が収納本体10の幅方向に沿うように収納されているため、幅方向に容易に引き出すことができる。
【0044】
次いで、収納本体10から引き出した燻蒸シート100を鉈やカッター等で切断することにより、伐倒材Wを覆うのに必要な部分に切り取る(図9)。そして、切り取った部分が伐倒材Wに被せられた状態で、折り畳まれている燻蒸シート100を短手方向に広げることにより、燻蒸シート100により伐倒材Wを覆う(図10)。
【0045】
また、工程(2)では、収納本体10から引き出した燻蒸シート100を必要な部分に切り取った後に伐倒材Wに被せて、短手方向に広げることにより伐倒材Wを覆ってもよい。ただし、計測等を行なわずに燻蒸処理に必要な分だけ燻蒸シート100を切り取ることが容易である点から、前述のように伐倒材Wに被せた後に燻蒸シート100を切断する方が好ましい。
【0046】
工程(3)は、収納本体10から引き出した燻蒸シート100のうち、未使用の部分を運搬用具1内に再収納する工程である。
本発明の施工方法では、収納本体10から燻蒸シート100を過剰に引き出す必要がなく、また未使用部分については蛇腹折りが崩れているだけである(ガゼット折りは維持されている)ため、引き出した未使用部分を蛇腹状に再度折り畳んで収納するだけでよく、再収納作業を容易に行うことができる。
【0047】
工程(3)は、燻蒸シート100で覆われた伐倒材Wを薬剤で燻蒸処理する工程である。
燻蒸処理に用いる薬剤としては、松くい虫の燻蒸処理に通常用いられる薬剤を用いることができ、例えば、NCS(商品名、ヤシマ産業(株)製)等が挙げられる。
薬剤を伐倒材Wに付与する方法は、燻蒸駆除が充分に行なえるものであれば特に限定されないが、薬剤が拡散することを防ぎやすい点から、伐倒材Wを覆った燻蒸シート100をめくり上げて伐倒材Wの上部に撒いた後、直ぐに燻蒸シート100で該伐倒材Wを密封する方法が好ましい。
【0048】
伐倒材Wの密封方法は特に限定されず、伐倒材Wを覆った燻蒸シート100の裾の部分に土等を被せることにより行うことができる。
その後、2週間程度放置することにより燻蒸駆除を行なうことができる。また、燻蒸シート100として生分解性の燻蒸シートを用いている場合には、燻蒸シートの回収等の後処理は必要ない。
【0049】
また、工程(3)については、工程(2)で燻蒸シート100の必要な部分を切り取った後に行えばよく、工程(4)を行なう前に行なってもよく、工程(4)で薬剤を付与して伐倒材Wを密封した後に行ってもよい。
【0050】
尚、本発明において収納する燻蒸シートを折り畳む方法は、図2で例示したものには限定されない。例えば、収納する折畳シートは、図11(a)に示すように、燻蒸シートの短手方向の両方の端縁201を、該燻蒸シートを短手方向に二等分する中央部分202に向かってそれぞれ折り返して揃え、かつ前記両方の端縁201と前記中央部分202との間を三等分する中間部分203a、203bをそれぞれ内部側に折り返して前記中央部分202で揃えるように折ったものを、その長手方向に沿って蛇腹状に折り畳んだ折畳シート200であってもよい。
また、図11(b)に示すように、燻蒸シートの短手方向の両方の端縁301を、該燻蒸シートを短手方向に三等分するようにそれぞれ中央方向に折り返し、それを長手方向に蛇腹状に折り畳んだ折畳シート300であってもよい。
また、図11(c)に示すように、燻蒸シートの短手方向の両方の端縁401を、該燻蒸シートを短手方向に二等分する中央部分402に向かって折り返して揃え、それを長手方向に蛇腹状に折り畳んだ折畳シート400であってもよい。
【0051】
本発明の施工方法では、収納本体10に収納した後に該収納本体10を半折りにする場合には、収納本体10内で容易に半折りされ、運搬時に収納本体10内でより安定に保持されやすい点から、折畳シート100、折畳シート200、折畳シート400のような中央部分に沿って半折りすることが容易なものがより好ましい。
また、同じ大きさの燻蒸シートを折り畳む場合には、折畳シート400のように折り畳むよりも折畳シート100のように折り畳む方が折り畳んだシートの面積(収納本体の面積)をより小さくすることができ、折畳シート200のように折り畳むよりも折畳シート100のように折り畳む方が折り畳んだシートの厚みをより小さくできる。松くい虫の燻蒸駆除に用いられる燻蒸シートが通常幅4m×30m程度の大きさであることを考慮すると、運搬がより容易に行なえ、かつ燻蒸シートの取り扱い性により優れることから、折畳シート100が特に好ましい。
【0052】
従来の松くい虫の燻蒸駆除では、燻蒸シートを紙管に巻き回した状態で運搬していたことから、運搬時の燻蒸シートが2m程度と長くなるために運搬が困難であり、周辺の木等と接触して燻蒸シートに損傷が生じることがあった。また運搬時に紙管に巻き回した燻蒸シートが軸方向に滑って型崩れすることもあった。更に、運搬後に燻蒸処理を行う際には、紙管に巻き回した状態の燻蒸シートが斜面を転がり落ちないよう考慮する必要もあり、取り扱い性が悪かった。
【0053】
一方、本発明の施工方法では、例えば、燻蒸シートを折り畳んで収納し、半折りにして運搬する運搬用具を用いることで、運搬を容易に行うことができる。また、例えば、運搬用具に幅規制部を設けることで、運搬用具を斜面上に置いて作業を行なっても、収納されている燻蒸シートが斜面を滑り落ち、型崩れすること防ぐことができる。
また、例えば、燻蒸シートを、その両端を長手方向に沿って折り返した後にさらに蛇腹状に折り畳んで収納本体に収納することにより、燻蒸処理に必要な分だけ燻蒸シートを引き出して使用することができ、また未使用部分については蛇腹状に折り畳み直すのみで再収納を行うことができるため、簡便な作業で燻蒸駆除を行なうことができる。
以上のように、本発明の施工方法によれば、燻蒸シートの運搬、及びその取り扱い性に優れていることから、松くい虫の燻蒸駆除の作業性を飛躍的に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の施工方法は、燻蒸シートを容易に運搬でき、かつ該燻蒸シートの取り扱い性に優れた燻蒸シート用運搬用具を用いることで、簡便な作業で松くい虫の燻蒸駆除を行なうことができるために非常に有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 燻蒸シート用運搬用具
2 燻蒸シート用運搬用具
10 収納本体
12 肩掛けベルト
14 背面部
14a 背面部の幅方向の両端
16 幅規制部
16a、16b 幅規制部の長さ方向の端部
20 背負い面
22 折り返し部
24 挟板
100 松くい虫燻蒸シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、松くい虫燻蒸駆除の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、松くい虫による松の集団枯死が全国的に広がっており、大きな被害をもたらしている。この松くい虫による松の枯死は、実際にはマツノザイセンチュウという線虫により引き起こされ、このマツノザイセンチュウがマツノマダラカミキリにより運ばれることで別の松へと次々に伝播していく。
【0003】
このような松の集団枯死の被害を防ぐ方法としては、枯死した松を伐倒した後、それら伐倒材を松くい虫燻蒸シート(以下、「燻蒸シート」という。)で覆い、その場で薬剤により燻蒸し、それらの松に残っているマツノザイセンチュウやマツノダラカミキリの幼虫を駆除する方法が知られている(例えば特許文献1、2)。この松くい虫の燻蒸駆除に用いられる燻蒸シートとしては、薬剤の拡散を防ぐ高いガスバリア性を有するシートや、燻蒸駆除の後に撤去作業を必要としない生分解性のシート等が示されている(例えば、特許文献3〜5等)。
【0004】
松くい虫の燻蒸駆除は、通常、大きなサイズ(例えば、幅4m×長さ30m程度)の燻蒸シートを松の伐倒現場まで運び、該燻蒸シートを燻蒸駆除に必要な大きさごと(4m程度の正方形)に切り取って伐倒材を覆った後、薬剤を注入することにより行なわれる。そのため、運搬の際の燻蒸シートは非常に大きく、従来は短手方向(幅2m)に半折りしたものを紙管に巻き回した状態で肩に担いで運んでいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−25347号公報
【特許文献2】特開2003−23947号公報
【特許文献3】特開2005−103872号公報
【特許文献4】特開2005−154456号公報
【特許文献5】特開2006−246786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような方法では、紙管に巻き回した状態の燻蒸シートが15kg程度と重いことから、運搬時及び燻蒸処理時における燻蒸シートの取り扱い性が悪かった。また、それらを積み上げることが困難であるため、保管が困難である上、保管スペースも大きくなっていた。
また、燻蒸シートの運搬方法としては、燻蒸シートを小さく折り畳んだものを紙袋等に収納して持ち運ぶことが考えられる。しかし、紙袋等に収納しただけでは運搬し難く、また燻蒸処理後に燻蒸シートの未使用の部分を折り畳んで再度梱包する作業は煩雑である。例えば、通常開梱する際には袋の口止めテープは雑に扱われるため、その口止めテープを再利用することは不可能である。
以上のような理由から、燻蒸シートを容易に運搬し、燻蒸処理時において煩雑な作業を必要とせずに松くい虫の燻蒸駆除が行なえる施工方法が望まれている。
【0007】
そこで本発明は、燻蒸シートを容易に運搬することができ、該燻蒸シートの取り扱い性に優れた燻蒸シート用運搬用具を用いて、簡便な作業で松くい虫の燻蒸駆除を行うことができる施工方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の松くい虫燻蒸駆除の施工方法は、松くい虫燻蒸シートを収納する収納本体を具備する燻蒸シート用運搬用具を用いて松くい虫を燻蒸駆除する方法であって、
松くい虫燻蒸シートを燻蒸シート用運搬用具に収納して運搬する工程(1’)と、
前記松くい虫燻蒸シートを収納本体から引き出し、伐倒材を覆う工程(2’)と、
前記松くい虫燻蒸シートで覆われた前記伐倒材を薬剤により燻蒸処理する工程(4’)とを含む方法である。
【0009】
また、本発明の松くい虫燻蒸駆除の施工方法は、前記燻蒸シート用運搬用具が、前記松くい虫燻蒸シートを収納する収納本体と、該収納本体に設けられた肩掛けベルトとを具備していることが好ましい。
また、前記工程(1’)においては、前記松くい虫燻蒸シートを、その長手方向に沿ってガゼット折りした後、さらに長手方向に蛇腹状に折り畳み、その折り畳んだ松くい虫燻蒸シートを前記燻蒸シート用運搬用具に収納することが好ましい。
【0010】
また、本発明の松くい虫燻蒸駆除の施工方法は、松くい虫燻蒸シートを収納する収納本体を具備する燻蒸シート用運搬用具を用いて松くい虫を燻蒸駆除する方法であって、
松くい虫燻蒸シートを折り畳んで燻蒸シート用運搬用具に収納して運搬する工程(1)と、
前記松くい虫燻蒸シートを収納本体から引き出し、伐倒材を覆うのに必要な大きさに切断して該伐倒材を覆う工程(2)と、
前記収納本体から引き出した前記松くい虫燻蒸シートの未使用部分を前記燻蒸シート用運搬用具に再収納する工程(3)と、
前記松くい虫燻蒸シートで覆われた前記伐倒材を薬剤により燻蒸処理する工程(4)とを含む方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の松くい虫燻蒸駆除の施工方法によれば、燻蒸シートを容易に運搬でき、かつ該燻蒸シートの取り扱い性に優れた燻蒸シート用運搬用具を用いることで、簡便な作業で松くい虫の燻蒸駆除を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の燻蒸シート用運搬用具の実施形態の一例を示した斜視図である。
【図2】図1の燻蒸シート用運搬用具の開かれている様子を示した斜視図である。
【図3】図2の燻蒸シート用運搬用具にシートが収納された様子を示した斜視図である。
【図4】本発明の燻蒸シート用運搬用具からシートを取り出す様子を示した斜視図である。
【図5】本発明の燻蒸シート用運搬用具の収納本体を半折りにしている様子を示した斜視図である。
【図6】本発明の燻蒸シート用運搬用具の他の実施形態例を示した斜視図である。
【図7】本発明の松くい虫燻蒸駆除の施工方法を示した模式図である。
【図8】本発明の松くい虫燻蒸駆除の施工方法を示した模式図である。
【図9】本発明の松くい虫燻蒸駆除の施工方法を示した模式図である。
【図10】本発明の松くい虫燻蒸駆除の施工方法を示した模式図である。
【図11】本発明における松くい虫燻蒸シートを折り畳んだ様子を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<燻蒸シート用運搬用具>
以下、本発明の施工方法に用いる燻蒸シート用運搬用具の実施形態の一例について説明する。
燻蒸シート用運搬用具1(以下、「運搬用具1」という。)は、図1及び2に示すように、松くい虫燻蒸シート100(以下、「燻蒸シート100」という。)を収納する収納本体10と、収納本体10に設けられた一対の肩掛けベルト12とを具備している。
収納本体10や肩掛けベルト12の材質は、リュックサック等に通常用いられるものを使用することができ、例えば、ナイロン等が挙げられる。
【0014】
収納本体10は、図2に示すように、背面部14と、背面部14の幅方向の両側からそれぞれ内側に向かって開口18を形成するように設けられた幅規制部16とを有している。
幅規制部16は、背面部14の幅方向の両端14a、14aからそれぞれ内側に向かって設けられており、その長さ方向の端部16a、16bは背面部14と連結されている。また、背面部14の両端14a、14aから延びるそれぞれの幅規制部16により、燻蒸シート100を出し入れする開口18が形成されている。このように、背面部14及び幅規制部16により燻蒸シート100を収納する収納空間が形成される。
【0015】
また、運搬用具1は、燻蒸シート100を収納した収納本体10を半折りにした状態で運搬するものである。収納本体10は、幅規制部16を内包するように長さ方向に半折りされ、その半折りされた収納本体10の背面部14の一方の外側面が背負い面20とされる(図1)。また、背負い面20には、半折りにした収納本体10の折り返し部22が上側になるように一対の肩掛けベルト12が設けられる。
【0016】
背面部14の形状は、正方形、矩形等が挙げられる。すなわち、背面部14の長さaと幅bは同じ長さであってもよく、長さaが幅bより長くてもよく、幅bが長さaより長くてもよい。特に、大きなサイズの燻蒸シート100を折り畳んで収納して運搬する場合、背面部14の形状は、運搬の容易性及び燻蒸シート100の出し入れ等の取り扱い性に優れる点から、長さaが幅bよりも長い矩形状であることが好ましい。
【0017】
背面部14の長さaは、運搬する燻蒸シート100の大きさによっても異なるが、50〜150cmであることが好ましい。背面部14の長さaが50cm以上であれば、より大きなサイズの燻蒸シート100を容易に運搬することができる。また、背面部14の長さaが150cm以下であれば、燻蒸シート100の運搬が容易になり、かつ燻蒸シート100の取り扱い性も向上する。
【0018】
背面部14の幅bについても、長さaと同様に運搬する燻蒸シート100の大きさによっても異なるが、40〜80cmであることが好ましい。背面部14の幅bが40cm以上であれば、より大きなサイズの燻蒸シート100を容易に運搬することができる。また、背面部14の幅bが80cm以下であれば、燻蒸シート100の運搬が容易になり、かつ燻蒸シート100の取り扱い性も向上する。
【0019】
幅規制部16は、収納した燻蒸シート100の、収納本体10の幅方向へのずれを規制する役割を果たす。燻蒸シート100を収納した運搬用具1を背負って運搬する際には、運搬中に運搬用具1が上下左右に揺れるが、幅規制部16により、収納本体10に収納されている燻蒸シート100が収納本体10の幅方向にずれることを抑制することができる。
また、幅規制部16の長さ方向の端部16a、16bが背面部14と連結されているため、収納されている燻蒸シート100が収納本体10から出てしまうことが防止される。
【0020】
幅規制部16の幅c1、c2は、開口18を形成し、かつ燻蒸シート100を収納してその収納本体10の幅方向へのずれを規制できる長さであればよい。また、各々の幅規制部16の幅c1、c2は、開口18の形成、及び燻蒸シート100の収納本体10の幅方向へのずれの抑制が可能な範囲であれば、それぞれ異なる長さであってもよい。ただし、収納された燻蒸シート100が収納本体10の幅方向にずれることを抑制しやすい点、燻蒸シート100の出し入れが容易で取り扱い性が向上する点から、幅c1及び幅c2を同じ長さとして、収納本体10の幅方向の中央に開口18が形成されるようにすることが好ましい。
【0021】
幅規制部16の幅c1(c2についても同じ。)は、背面部14の幅bとの比(c1/b)が0.1〜0.45となるようにすることが好ましい。前記比(c1/b)が0.1以上であれば、燻蒸シート100をしっかりと収納してその収納本体10の幅方向へのずれを抑制することが容易になる。また、前記比(c1/b)が0.45以下であれば、開口18の幅d(背面部14の幅bから幅規制部16の幅c1及びc2の合計を差し引いた長さ)を充分に大きくすることができ、燻蒸シート100の出し入れ等の取り扱い性がより向上する。
【0022】
また、各々の幅規制部16の長さ方向の端部16bは、それらが互いに連結されていることが好ましい。これにより、収納本体10への燻蒸シート100の収納が安定になり、また運搬時や燻蒸シート100の出し入れ時に土等が収納本体10内に入って燻蒸シート100が汚れることを抑制しやすい。また、各々の幅規制部16の端部16aについても、端部16bと同様に連結されていることが好ましい。
【0023】
また、前述の収納の安定性の向上、土等による燻蒸シート100の汚れの防止の観点から、開口18の長さ方向の端部16b側には、開口縁部18aが設けられていてもよい。開口縁部18aは、前述の効果が得られ、かつ開口18からの燻蒸シート100の出し入れ等の取り扱い性を悪化させすぎないように設けることが好ましい。
また、開口18の長さ方向の端部16a側についても、同様の開口端部が設けられていてもよい。ただし、挟板24を設けている場合には、該挟板24により、土等で燻蒸シート100が汚れることを防止する効果を得ることができる。
【0024】
運搬用具1における背負い面20は、幅規制部16を内包するように長さ方向に半折りされた収納本体10における背面部14の一方の外側面である。すなわち、背負い面20は、背面部14の外側面であって、それを長さ方向に二等分した領域のうちの一方の面である。燻蒸シート用運搬用具は、背面部14の外側面の二等分された領域のうち、どちらが背負い面となっても構わない。
【0025】
背負い面20には、その背負い面20の形状を維持する背板20a(図1)が設けられていることが好ましい。これにより、運搬時の収納本体10の形状、すなわち収納されている燻蒸シート100の形状が一定に保たれやすく、大きなサイズの燻蒸シート100であっても収納されている該燻蒸シート100の形状を崩さずに運搬することが容易になる。収納されている燻蒸シート100が運搬により型崩れしなければ、その後燻蒸シート100を運搬用具1から取り出す際に作業がスムーズに行なえる。
【0026】
背負い面20に設ける背板20aは、背負い面20に内装されていてもよく、背負い面20上に直接設けられていてもよいが、背負い面20に内装されていることが好ましい。
また、背板20aの形状は、背負い面20の形状を維持できるものであれば特に限定されず、背負い面20と同形状の1枚の板片であってもよく、複数の骨格を組み合わせてなるものであってもよい。
【0027】
収納本体10の背負い面20には、半折りした収納本体10の折り返し部22が背負ったときに上側になるように、シート用運搬用具1を背負うための肩掛けベルト12が設けられている。
肩掛けベルト12の形態は、収納本体10を背負えるものであれば特に限定されず、リュックサック等に通常用いられる肩掛けベルトを用いることができる。
また、この例の運搬用具1は、両肩用に一対の肩掛けベルト12が設けられているがこれには限定されず、肩掛けベルト12が片肩用に一つのみ設けられたものであってもよい。
【0028】
また、本発明の燻蒸シート用運搬用具は、半折りにした収納本体10の間に挟むことによって、収納本体10に収納された燻蒸シート100の位置を規制する挟板24が設けられていることが好ましい。
この例では、挟板24は、収納本体10の背負い面20側の長さ方向の端部に形成されており、半折りにした収納本体10に挟んだときにその一端24aが収納本体10の折り返し部22に接触する(図1)。
【0029】
挟板24を設けていない場合、運搬の際に、収納されている燻蒸シート100の折り返し部22近傍にある部分が重力や運搬による振動等により収納本体10内で若干下がり、このとき該燻蒸シート100が半折りされている収納本体10内でどちらか一方に偏ると、運搬による振動によりその偏りがより激しくなっていくことで、収納本体10内での燻蒸シート100の形状が崩れてしまうおそれがある。しかし、挟板24を用いることにより、収納本体10に収納された燻蒸シート100が折り返し部22の部分で挟板24の一端24aに掛けられた状態になって支えられる。そのため、大きな振動が加えられた場合であっても、燻蒸シート100の折り返し部22近傍の部分が下がって、半折りされた収納本体10内で偏りを生じることを抑制することができる。
【0030】
また、背負い面20に前記背板20aが設けられている場合には、その背板20aと挟板24により、収納本体10の背負い面20側にある燻蒸シート100を挟み込むことができるため、収納本体10内で燻蒸シート100をより安定に固定することができる。そのため、運搬による燻蒸シート100の型崩れを抑制する効果がさらに高くなる。
【0031】
また、収納本体10には、図1及び2に示すように、背面部14の折り返し部22の外側面から延びるカバー26が設けられていることが好ましい。カバー26は、運搬時に背面部14の背負い面20と逆側の面28上に垂らすことにより、接触等による収納本体10の損傷を抑制することができる。
また、燻蒸シート100を運搬用具1に出し入れする際には、カバー26を背負い面20の下に敷いた状態で収納本体10を開くことにより、背負い面20及び肩掛けベルト12が土等で汚れることを防ぐことができる(図4)。
【0032】
運搬用具1の色は、特に限定されないが、虫が寄ってきたり、日光により運搬用具1が高温になったりすることを避ける点から黒を避けることが好ましく、コストの点から、赤が特に好ましい。
【0033】
また、収納本体10には、半折りした収納本体10を固定するベルト固定具30が設けられていることが好ましい(図1及び図5)。これにより、半折りした収納本体10をより安定に固定することができ、運搬中の燻蒸シート100の型崩れを抑制しやすくなる。
ベルト固定具30は、特に限定されないが、土等の付着による固定性能の低下を防ぐ点から、ファスナーやマジックテープ(登録商標)よりも、図5に示すような、雄部30aと雌部30bとを装着することにより固定する簡便な固定具であることが好ましい。
ベルト固定具30の数は特に限定されないが、装着の際の混乱及び煩雑な作業を避ける点から、収納本体10を半折りにした状態で安定に固定できる範囲内でできるだけ少なくすることが好ましい。
【0034】
尚、本発明におけるシート用運搬用具は、図1〜5に例示した運搬用具1には限定されない。例えば、挟板24は収納本体10の面28側の長さ方向の端部に設けられていてもよい。
また、挟板24が収納本体10の幅方向の端部に設けられているシート用運搬用具2(図6)であってもよい。シート用運搬用具2における挟板24は、一端24bが収納本体10の折り返し部22に接触するように設けられており、運搬時に燻蒸シート100を収納した収納本体10が挟板24に掛けられた状態にとなる。ただし、運搬時や燻蒸シートの出し入れの際にシート用運搬用具を置いたときに、開口18の長さ方向の端の部分から収納本体内に土等が入って燻蒸シートが汚れることを防ぎ易い点から、挟板24は収納本体10の長さ方向の端部に設けられていることが好ましい。
【0035】
<松くい虫燻蒸駆除の施工方法>
本発明の施工方法は、例えば、前述した燻蒸シート用運搬用具を用いて松くい虫の燻蒸駆除を行なう方法である。本発明の施工方法は、例えば、前述の燻蒸シート用運搬用具を用いる方法であって、下記工程(1)〜(4)を含む方法である。
工程(1):松くい虫燻蒸シートを折り畳んで燻蒸シート用運搬用具に収納して運搬する工程。
工程(2):前記松くい虫燻蒸シートを収納本体から引き出し、伐倒材を覆うのに必要な大きさに切断して該伐倒材を覆う工程。
工程(3):収納本体から引き出した前記松くい虫燻蒸シートの未使用部分を前記燻蒸シート用運搬用具に再収納する工程。
工程(4):前記松くい虫燻蒸シートで覆われた前記伐倒材を薬剤により燻蒸処理する工程。
【0036】
以下、本発明の施工方法の一実施形態例として、前述の運搬用具1を用いた施工方法について説明する。
松くい虫の燻蒸駆除に用いられる燻蒸シート100は、通常、長尺で帯状のシートであり、例えば、幅4m×長さ30m程度のものが挙げられる。これを伐倒現場まで運搬し、該伐倒現場で随時必要な分だけ切断して使用する。
燻蒸シート100は、松くい虫の燻蒸駆除に通常用いられるシートを用いることができ、燻蒸処理後に燻蒸シートを回収する必要がなく環境面に優れる点から、生分解性の燻蒸シートであることが好ましい。生分解性の燻蒸シートとしては、例えば、特開2003−231820号公報、特開2003−284478号公報、特開2003−292641号公報、特開2003−320620号公報、特開2004−10693号公報、特開2005−73581号公報、特開2005−103872号公報、特開2005−154456号公報、特開2005−287458号公報、特開2006−213830号公報、特開2006−246786号公報等に記載の燻蒸シートが挙げられる。
【0037】
工程(1)は、松くい虫燻蒸シート(燻蒸シート100)を運搬用具1に収納して運搬する工程である。
燻蒸シート100は、図2に示すように、まず、その長手方向に沿ってガゼット折りにし、さらにそれを長手方向に蛇腹状に折り畳む(以下、折り畳まれた燻蒸シート100を特に「折畳シート100」ということがある。)ことが好ましい。ここで、前記ガゼット折りでは、燻蒸シート100の短手方向の両方の端縁101が、燻蒸シート100を短手方向に二等分する中央部分102に向かってそれぞれ折り返されて揃えられ、かつ前記両方の端縁101と前記中央部分102の中間に位置する中間部分103(折り返されて形成された山折部分)が内部側に折り返されて前記中央部分102で揃えられる。
【0038】
このように折り畳まれた折畳シート100は、その長手方向が収納本体10の幅方向に沿うように収納される(図3)。次いで、収納本体10を、幅規制部16を内包するように、かつ挟板24を挟みこんで半折りにし(図5)、ベルト固定具30で固定する。このように、収納本体10が長さ方向に半折りされると、収納本体10内で折畳シート100が中央部分102に沿って半折りされる。
その後、カバー26を面28側へと垂らし(図1)、肩掛けベルト12により背負うことにより燻蒸シート100を運搬する。
【0039】
運搬時の折畳シート100は、幅規制部16により収納本体10の幅方向へのずれが規制されている。
また、収納本体10を半折りして折畳シート100が半折りにされていることで、半折りしていない場合に比べて収納本体10の長さ方向へのずれが抑制されている。つまり、燻蒸シートを半折りせずに背負う運搬用具の場合、運搬用具を背負ったときの力は、収納されているシートの底の部分で運搬用具から燻蒸シートに伝わる。そのため、燻蒸シートの重心部分には直接力が加わっておらず、重力及び運搬における振動等により該燻蒸シートが底の方にずれて偏ってしまい、燻蒸シートが型崩れしてしまう。
【0040】
これに対し、折畳シート100を半折りにした状態で背負う本発明の燻蒸シート用運搬具では、幅規制部16により、折畳シート100を背負う力が折畳シート100の折り返し部分(収納本体10の折り返し部22に位置する部分)にも加わる。折畳シート100の重心は半折りした折り返し部分にあり、運搬用具1ではその折畳シート100の重心部分に力を加えることができることから、型崩れをより抑制して運搬することができる。
【0041】
さらに、挟板24を用い、収納本体10の折り返し部22に一端24aを接触させ、折畳シート100が挟板24に掛けられた状態とすることで、該挟板24により折畳シート100の重心により的確に上向きの力を加えることができる。これにより、折畳シート100が収納本体10内でバランスが取れた状態でより安定に固定されるため、型崩れさせずに運搬することがより容易になる。
また、ガゼット折りにした折畳シート100は、端縁101及び中間部分103が揃えられた中央部分102が他の部分よりも薄くなっているために、中央部分102に沿って半折りにしやすい。また、その中央部分102に沿って挟板24の一端24aを接触させることができるため、運搬時の収納本体10内の折畳シート100がより安定に固定される。
【0042】
工程(2)は、燻蒸シート100を松の伐倒現場まで運搬した後に、燻蒸シート100を収納本体10から引き出し、伐倒材を覆うのに必要な大きさに切断して該伐倒材を覆う工程である。
運搬後、カバー26を背負い面20の下に敷いた状態にして伐倒現場(山の斜面)に運搬用具1を置き、収納本体10を開く(図7)。運搬用具1は、収納本体10の長さ方向が伐倒材Wの軸方向と並行するように設置する。このとき、伐倒材Wの設置方向によっては、収納本体10の幅方向が斜面方向を向くように設置されることがある。しかし、本発明の施工方法では幅規制部16を有する運搬用具1を用いているため、収納本体10内に収納された折畳シート100が斜面を滑り落ちて崩れることを防止できる。
【0043】
次いで、燻蒸シート100を収納本体10から幅方向に引き出し、伐倒材Wの軸方向の中央付近に被せる(図8)。収納本体10には、蛇腹状に折り畳まれた折畳シート100が、その長手方向が収納本体10の幅方向に沿うように収納されているため、幅方向に容易に引き出すことができる。
【0044】
次いで、収納本体10から引き出した燻蒸シート100を鉈やカッター等で切断することにより、伐倒材Wを覆うのに必要な部分に切り取る(図9)。そして、切り取った部分が伐倒材Wに被せられた状態で、折り畳まれている燻蒸シート100を短手方向に広げることにより、燻蒸シート100により伐倒材Wを覆う(図10)。
【0045】
また、工程(2)では、収納本体10から引き出した燻蒸シート100を必要な部分に切り取った後に伐倒材Wに被せて、短手方向に広げることにより伐倒材Wを覆ってもよい。ただし、計測等を行なわずに燻蒸処理に必要な分だけ燻蒸シート100を切り取ることが容易である点から、前述のように伐倒材Wに被せた後に燻蒸シート100を切断する方が好ましい。
【0046】
工程(3)は、収納本体10から引き出した燻蒸シート100のうち、未使用の部分を運搬用具1内に再収納する工程である。
本発明の施工方法では、収納本体10から燻蒸シート100を過剰に引き出す必要がなく、また未使用部分については蛇腹折りが崩れているだけである(ガゼット折りは維持されている)ため、引き出した未使用部分を蛇腹状に再度折り畳んで収納するだけでよく、再収納作業を容易に行うことができる。
【0047】
工程(3)は、燻蒸シート100で覆われた伐倒材Wを薬剤で燻蒸処理する工程である。
燻蒸処理に用いる薬剤としては、松くい虫の燻蒸処理に通常用いられる薬剤を用いることができ、例えば、NCS(商品名、ヤシマ産業(株)製)等が挙げられる。
薬剤を伐倒材Wに付与する方法は、燻蒸駆除が充分に行なえるものであれば特に限定されないが、薬剤が拡散することを防ぎやすい点から、伐倒材Wを覆った燻蒸シート100をめくり上げて伐倒材Wの上部に撒いた後、直ぐに燻蒸シート100で該伐倒材Wを密封する方法が好ましい。
【0048】
伐倒材Wの密封方法は特に限定されず、伐倒材Wを覆った燻蒸シート100の裾の部分に土等を被せることにより行うことができる。
その後、2週間程度放置することにより燻蒸駆除を行なうことができる。また、燻蒸シート100として生分解性の燻蒸シートを用いている場合には、燻蒸シートの回収等の後処理は必要ない。
【0049】
また、工程(3)については、工程(2)で燻蒸シート100の必要な部分を切り取った後に行えばよく、工程(4)を行なう前に行なってもよく、工程(4)で薬剤を付与して伐倒材Wを密封した後に行ってもよい。
【0050】
尚、本発明において収納する燻蒸シートを折り畳む方法は、図2で例示したものには限定されない。例えば、収納する折畳シートは、図11(a)に示すように、燻蒸シートの短手方向の両方の端縁201を、該燻蒸シートを短手方向に二等分する中央部分202に向かってそれぞれ折り返して揃え、かつ前記両方の端縁201と前記中央部分202との間を三等分する中間部分203a、203bをそれぞれ内部側に折り返して前記中央部分202で揃えるように折ったものを、その長手方向に沿って蛇腹状に折り畳んだ折畳シート200であってもよい。
また、図11(b)に示すように、燻蒸シートの短手方向の両方の端縁301を、該燻蒸シートを短手方向に三等分するようにそれぞれ中央方向に折り返し、それを長手方向に蛇腹状に折り畳んだ折畳シート300であってもよい。
また、図11(c)に示すように、燻蒸シートの短手方向の両方の端縁401を、該燻蒸シートを短手方向に二等分する中央部分402に向かって折り返して揃え、それを長手方向に蛇腹状に折り畳んだ折畳シート400であってもよい。
【0051】
本発明の施工方法では、収納本体10に収納した後に該収納本体10を半折りにする場合には、収納本体10内で容易に半折りされ、運搬時に収納本体10内でより安定に保持されやすい点から、折畳シート100、折畳シート200、折畳シート400のような中央部分に沿って半折りすることが容易なものがより好ましい。
また、同じ大きさの燻蒸シートを折り畳む場合には、折畳シート400のように折り畳むよりも折畳シート100のように折り畳む方が折り畳んだシートの面積(収納本体の面積)をより小さくすることができ、折畳シート200のように折り畳むよりも折畳シート100のように折り畳む方が折り畳んだシートの厚みをより小さくできる。松くい虫の燻蒸駆除に用いられる燻蒸シートが通常幅4m×30m程度の大きさであることを考慮すると、運搬がより容易に行なえ、かつ燻蒸シートの取り扱い性により優れることから、折畳シート100が特に好ましい。
【0052】
従来の松くい虫の燻蒸駆除では、燻蒸シートを紙管に巻き回した状態で運搬していたことから、運搬時の燻蒸シートが2m程度と長くなるために運搬が困難であり、周辺の木等と接触して燻蒸シートに損傷が生じることがあった。また運搬時に紙管に巻き回した燻蒸シートが軸方向に滑って型崩れすることもあった。更に、運搬後に燻蒸処理を行う際には、紙管に巻き回した状態の燻蒸シートが斜面を転がり落ちないよう考慮する必要もあり、取り扱い性が悪かった。
【0053】
一方、本発明の施工方法では、例えば、燻蒸シートを折り畳んで収納し、半折りにして運搬する運搬用具を用いることで、運搬を容易に行うことができる。また、例えば、運搬用具に幅規制部を設けることで、運搬用具を斜面上に置いて作業を行なっても、収納されている燻蒸シートが斜面を滑り落ち、型崩れすること防ぐことができる。
また、例えば、燻蒸シートを、その両端を長手方向に沿って折り返した後にさらに蛇腹状に折り畳んで収納本体に収納することにより、燻蒸処理に必要な分だけ燻蒸シートを引き出して使用することができ、また未使用部分については蛇腹状に折り畳み直すのみで再収納を行うことができるため、簡便な作業で燻蒸駆除を行なうことができる。
以上のように、本発明の施工方法によれば、燻蒸シートの運搬、及びその取り扱い性に優れていることから、松くい虫の燻蒸駆除の作業性を飛躍的に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の施工方法は、燻蒸シートを容易に運搬でき、かつ該燻蒸シートの取り扱い性に優れた燻蒸シート用運搬用具を用いることで、簡便な作業で松くい虫の燻蒸駆除を行なうことができるために非常に有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 燻蒸シート用運搬用具
2 燻蒸シート用運搬用具
10 収納本体
12 肩掛けベルト
14 背面部
14a 背面部の幅方向の両端
16 幅規制部
16a、16b 幅規制部の長さ方向の端部
20 背負い面
22 折り返し部
24 挟板
100 松くい虫燻蒸シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
松くい虫燻蒸シートを収納する収納本体を具備する燻蒸シート用運搬用具を用いて松くい虫を燻蒸駆除する方法であって、
松くい虫燻蒸シートを燻蒸シート用運搬用具に収納して運搬する工程(1’)と、
前記松くい虫燻蒸シートを収納本体から引き出し、伐倒材を覆う工程(2’)と、
前記松くい虫燻蒸シートで覆われた前記伐倒材を薬剤により燻蒸処理する工程(4’)とを含む、松くい虫燻蒸駆除の施工方法。
【請求項2】
前記燻蒸シート用運搬用具が、前記松くい虫燻蒸シートを収納する収納本体と、該収納本体に設けられた肩掛けベルトとを具備している、請求項1に記載の松くい虫燻蒸駆除の施工方法。
【請求項3】
前記工程(1’)において、前記松くい虫燻蒸シートを、その長手方向に沿ってガゼット折りした後、さらに長手方向に蛇腹状に折り畳み、その折り畳んだ松くい虫燻蒸シートを前記燻蒸シート用運搬用具に収納する、請求項1又は2に記載の松くい虫燻蒸駆除の施工方法。
【請求項4】
松くい虫燻蒸シートを収納する収納本体を具備する燻蒸シート用運搬用具を用いて松くい虫を燻蒸駆除する方法であって、
松くい虫燻蒸シートを折り畳んで燻蒸シート用運搬用具に収納して運搬する工程(1)と、
前記松くい虫燻蒸シートを収納本体から引き出し、伐倒材を覆うのに必要な大きさに切断して該伐倒材を覆う工程(2)と、
前記収納本体から引き出した前記松くい虫燻蒸シートの未使用部分を前記燻蒸シート用運搬用具に再収納する工程(3)と、
前記松くい虫燻蒸シートで覆われた前記伐倒材を薬剤により燻蒸処理する工程(4)とを含む、松くい虫燻蒸駆除の施工方法。
【請求項1】
松くい虫燻蒸シートを収納する収納本体を具備する燻蒸シート用運搬用具を用いて松くい虫を燻蒸駆除する方法であって、
松くい虫燻蒸シートを燻蒸シート用運搬用具に収納して運搬する工程(1’)と、
前記松くい虫燻蒸シートを収納本体から引き出し、伐倒材を覆う工程(2’)と、
前記松くい虫燻蒸シートで覆われた前記伐倒材を薬剤により燻蒸処理する工程(4’)とを含む、松くい虫燻蒸駆除の施工方法。
【請求項2】
前記燻蒸シート用運搬用具が、前記松くい虫燻蒸シートを収納する収納本体と、該収納本体に設けられた肩掛けベルトとを具備している、請求項1に記載の松くい虫燻蒸駆除の施工方法。
【請求項3】
前記工程(1’)において、前記松くい虫燻蒸シートを、その長手方向に沿ってガゼット折りした後、さらに長手方向に蛇腹状に折り畳み、その折り畳んだ松くい虫燻蒸シートを前記燻蒸シート用運搬用具に収納する、請求項1又は2に記載の松くい虫燻蒸駆除の施工方法。
【請求項4】
松くい虫燻蒸シートを収納する収納本体を具備する燻蒸シート用運搬用具を用いて松くい虫を燻蒸駆除する方法であって、
松くい虫燻蒸シートを折り畳んで燻蒸シート用運搬用具に収納して運搬する工程(1)と、
前記松くい虫燻蒸シートを収納本体から引き出し、伐倒材を覆うのに必要な大きさに切断して該伐倒材を覆う工程(2)と、
前記収納本体から引き出した前記松くい虫燻蒸シートの未使用部分を前記燻蒸シート用運搬用具に再収納する工程(3)と、
前記松くい虫燻蒸シートで覆われた前記伐倒材を薬剤により燻蒸処理する工程(4)とを含む、松くい虫燻蒸駆除の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−34485(P2013−34485A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−230775(P2012−230775)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【分割の表示】特願2008−188940(P2008−188940)の分割
【原出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(504002300)信越ファインテック株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【分割の表示】特願2008−188940(P2008−188940)の分割
【原出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(504002300)信越ファインテック株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
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