説明

板状センサ素子

【課題】ハウジング等に固定して使用する際に、充填材を使用しなくても、容易に固定部分を封止することが可能であり、更に、ハウジング等に固定する際の位置決めを容易に行うことが可能な板状センサ素子を提供する。
【解決手段】板状のセラミック基材を有する板状のセンサ素子本体3と、センサ素子本体3の一部を取り囲むように配設されたリング状の封止部4とを備え、センサ素子本体3が、封止部4が配設された位置から一方の端部6までの間にセンサ部5を有し、封止部4の材質がセラミックであり、センサ素子本体3と封止部4とが一体的に形成された板状センサ素子1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状センサ素子に関し、更に詳しくは、ハウジング等に固定して使用する際に、充填材を使用しなくても、容易に固定部分を封止することが可能であり、更に、ハウジング等に固定する際の位置決めを容易に行うことが可能な板状センサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排ガスや廃棄物の焼却時に発生する焼却排ガス等に含有される、塵やその他の粒子状物質を検出するため、上記排ガス中のNO、CO及びHC等を検出するため、更には、その他種々のガス中のO等の物質を検出するため、各種センサが用いられている。
【0003】
これらのセンサは、通常、センサ素子をケーシング、ハウジング等に装着し、上記ケーシング等を用いて配管等に取り付ける構造を有するものである(例えば、特許文献1,2参照)。また、センサ素子としては、板状のセラミック基材内にセンサ用の電極等が埋設された簡単な構造のセンサ素子が開示されている(例えば、特許文献3参照)。このような板状のセンサ素子は、センサ素子自体が機械的強度、耐熱性、耐熱衝撃性、耐食性等に優れるものである。
【0004】
上記板状のセンサ素子は、ハウジング等に直接差し込んで、所定の位置まで挿入した状態で固定して使用されるが、位置決めの際、正確な位置に固定するため治具等を用いる必要があり、煩雑な操作を要するという問題があった。更に、板状のセンサ素子を固定する際には、被測定ガス雰囲気と大気とを隔絶するため、板状のセンサ素子をハウジング等に固定する部分(固定部分)をガラス、タルク等の充填材を用いて封止する必要があり、煩雑な操作を要するという問題があった。
【特許文献1】特開2000−121599号公報
【特許文献2】特開2000−314715号公報
【特許文献3】特開昭57−22546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラスを充填材として用いた場合は、板状のセンサ素子(板状センサ素子)、ガラス、及びその他固定に用いる部材の熱膨張率が大きく異なる場合、割れ等の問題が生じることがあった。また、タルクを充填材として用いた場合は、タルクのコスト高、及び、タルク仮焼、組立て等の工数増という問題があった。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、ハウジング等に固定して使用する際に、充填材を使用しなくても、容易に固定部分を封止することが可能であり、更に、ハウジング等に固定する際の位置決めを容易に行うことが可能な板状センサ素子を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明によって以下の板状センサ素子が提供される。
【0008】
[1] 板状のセラミック基材を有する板状のセンサ素子本体と、前記センサ素子本体の一部を取り囲むように配設されたリング状の封止部とを備え、前記センサ素子本体が、前記封止部が配設された位置から一方の端部までの間にセンサ部を有し、前記封止部の材質がセラミックであり、前記センサ素子本体と前記封止部とが一体的に形成された板状センサ素子。
【0009】
[2] 前記セラミック基材の材質が、コージェライト、アルミナ、ジルコニア、チタニア、窒化珪素、炭化珪素及びフェライトから選択される少なくとも一種であり、前記封止部の材質が、コージェライト、アルミナ、ジルコニア、チタニア、窒化珪素、スピネル、シリカ及び、ムライトから選択される少なくとも一種である[1]に記載の板状センサ素子。
【0010】
[3] 複数のテープ状のセラミックグリーンシートを有するグリーンシート積層体が焼成されて形成された[1]又は[2]に記載の板状センサ素子。
【0011】
[4] 前記封止部が、前記センサ部側を向くと共にセンサ素子本体の外周面に接する封止面を有し、前記封止面と、前記封止面に接する前記センサ素子本体の外周面との間の角度が90〜135°である[1]〜[3]のいずれかに記載の板状センサ素子。
【0012】
[5] 前記封止面の幅が、全周に亘って1〜10mmである[4]に記載の板状センサ素子。
【発明の効果】
【0013】
本発明の板状センサ素子によれば、封止部の材質がセラミックであり、機械的強度等に優れた材質である。これにより、板状センサ素子をハウジング等に固定する際に、封止部をハウジング等に封止リング等を介して強く押し付けても、封止部は破損しないため、センサ素子本体には余計な圧力を加えずに、封止部のみを強く押圧することによりガスが流通する隙間を無くすことができ、充填材を使用せずに固定部分を容易に封止することができる。更に、センサ素子本体と封止部とが一体的に形成されているため、封止部を強く押圧して固定すればセンサ素子本体も固定され、封止部とセンサ素子本体とが、ずれたり、外れたりすることがない。また、センサ素子本体と封止部とが一体的に形成されているため、ハウジング等に固定する際の位置決めを容易に行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0015】
(1)板状センサ素子:
図1は、本発明の板状センサ素子の一実施形態を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態の板状センサ素子1は、板状のセラミック基材2を有する板状のセンサ素子本体3と、センサ素子本体3の一部を取り囲むように配設されたリング状の封止部4とを備え、センサ素子本体3が、封止部4が配設された位置から一方の端部6までの間にセンサ部5を有し、封止部4の材質がセラミックであり、センサ素子本体3と封止部4とが一体的に形成されたものである。センサ素子本体3の中の上記封止部4が配設された位置から一方の端部6までのセンサ部5を有する部分が、ハウジング等に挿入される部分である。
【0016】
本実施形態の板状センサ素子1を構成するセンサ素子本体3は、板状のセラミック基材2を有し、封止部4から一方の端部6までの間にセンサ部5を有するものである。板状のセラミック基材2は、材質がセラミックであり、耐熱性、耐熱衝撃性、耐食性、電気絶縁性、機械的強度等に優れたコージェライト、アルミナ、ジルコニア、チタニア、窒化珪素、炭化珪素及びフェライトから選択される少なくとも一種であることが好ましく、これらの中でも、機械的強度及び電気絶縁性に優れる点で、コージェライトであることが更に好ましい。セラミック基材2が、このような材質であることより、板状センサ素子のセンサ部を有する部分をハウジング等に挿入して板状センサ素子をハウジング等に固定し、板状センサ素子を固定したハウジング等を、排ガスの配管等に形成されたハウジング等を挿入するための孔に挿入して、板状センサ素子を使用する際に、板状センサ素子を直接高温の排ガスと接触させても、破損したり腐食したりすることを防止することができる。
【0017】
センサ素子本体3の大きさは、特に限定されないが、50mm×5mm×1mm〜100mm×10mm×3mm(長さ×幅×厚さ)程度の大きさが好ましい。また、封止部4から一方の端部6までの長さLは、20〜40mm程度が好ましい。
【0018】
センサ素子本体3に形成されるセンサ部5は、対象物質を検知する部分であり、例えば、排ガス中の粒子状物質、O、NO等を検知する部分である。センサ部5の構成としては、特に限定されず、目的とする物質を検出可能な公知の構成を採用することができる。例えば、粒子状物質を検出する場合、センサ部5に空洞が形成され、空洞内及びセラミック基材2の内部に電極が配設され、電極に粒子状物質を付着させてその流量を算出するもの等が挙げられる。電極には、適宜、外部の装置と接続するための、センサ素子本体内を通る電気配線が接続されることが好ましい。
【0019】
本実施形態の板状センサ素子1を構成する封止部4は、センサ素子本体3の一部を取り囲むように配設された、リング状に形成された部分である。「センサ素子本体3の一部を取り囲むように配設する」とは、図1に示すように、一の端面(一方の端部6の端面)7aと、一の端面に対して反対側に位置する端面7bとを除いた4つの外周面に沿って、4つの外周面が繋がる方向に一周する帯状の部分(外周面の一部)に、リング状に配設することであり、センサ素子本体3に鍔状に封止部4を形成することである。上記一方の端部6と、一方の端部6に対して反対側に位置する端部(他方の端部8)とを結ぶ方向が、センサ素子本体3の長手方向であることが好ましい。そして、封止部4は、センサ素子本体3と一体的に形成されている。そのため、封止部4をセンサ素子本体3の所望の位置に形成し、封止部3が配設された位置から一方の端部6までの長さLを所望の長さとすることにより、板状センサ素子を、ハウジング等に固定して使用する際に、センサ素子本体3の位置決め(挿入深さの決定)を封止部3により容易に行うことができ、所望の長さだけセンサ素子本体3をハウジング等から突き出すことが可能となる。
【0020】
図1に示すように、封止部4は、センサ部5側を向くと共にセンサ素子本体3の外周面に接する封止面4aを有することが好ましい。「封止面がセンサ部側を向く」というときは、センサ素子本体を封止部の部分を境界にして二つに分けたときに、二つに分けたセンサ素子本体の一方が封止面が向く側となり、他方が封止面が向かない側(封止部の、封止面に対して反対側の面が向く側)となり、これらの中で、センサ素子本体の封止面が向く側にセンサ部があることを意味する。封止部4において、封止面4aは、板状センサ素子1をハウジング等に固定する際に、ハウジング等に形成された封止部4を当接させる面(封止部当接面16(図5参照))に、封止リング11(図5参照)を介して当接し、板状センサ素子1と配管等との間を封止する部分である。図1に示す、封止面4aと、封止面4aに接するセンサ素子本体3の外周面との間の角度θは、90〜135°であることが好ましく、90〜120°であることが更に好ましく、90°であることが特に好ましい。角度θをこのような範囲とすることより、封止部4をハウジング等に形成された封止部4を当接させる面により強く、効果的に押圧することができ、より効果的に板状センサ素子とハウジング等との間を封止することが可能である。角度θを90°未満又は135°超にすると、封止部4をハウジング等に形成された封止部4を当接させる面により強く、効果的に押圧できないことがある。また、封止面4aは、その幅(封止面の幅)Wが、全周に亘って3〜10mmであることが好ましく、4〜7mmであることが更に好ましい。ここで、「全周に亘って」とは、「リング状の封止部4のリング形状に沿った全周におけるいずれの部分においても」という意味である。そして、封止面の幅Wは、センサ素子本体の各外周面(4つの外周面)から、対応する(各外周面と接する)封止面の外周部分までの距離(封止面の外周部分から、当該封止面が接するセンサ素子本体の外周面に垂線を下ろしたときの、当該垂線の長さ)である。封止面の幅Wが、このような範囲であることより、封止部4をハウジング等に形成された封止部4を当接させる面に、より強く、効果的に押圧することができ、より効果的に板状センサ素子とハウジング等との間を封止することが可能である。封止面の幅Wが、3mmより小さいと、封止面が小さくなるため、封止部4を、ハウジング等に形成された封止部4を当接させる面に、強く、効果的に押圧することができないことがある。また、封止面の幅Wが、10mmより大きいと、封止面が不必要に大きくなり、ハウジング等に形成された封止部4を当接させる面や、その周辺の構造等を不必要に大きくしなければならないことがある。
【0021】
封止部4は、封止面4aに対して反対側に、封止部背面4bを有することが好ましい。封止部背面4bと、封止部背面4bに接するセンサ素子本体3の外周面との間の角度は、90〜135°であることが好ましく、90〜120°であることが更に好ましく、90°であることが特に好ましい。角度θをこのような範囲とすることより、板状センサ素子を、ハウジング等に固定するときに、封止面4aと封止部背面4bとに所定の部材を押し当てて、封止部4を、当該部材により挟むようにして押圧することにより効果的に固定することができ、より効果的に板状センサ素子と配管等との間を封止することが可能である。ここで、上記「所定の部材」とは、例えば、図5に示す、封止リング11、固定部材14等である。角度θを90°未満又は135°超にすると、封止部4を配管等に形成された封止部4を当接させる面により強く、効果的に押圧できないことがある。また、封止部背面4bは、その幅(封止部背面の幅)が、全周に亘って3〜10mmであることが好ましく、4〜7mmであることが更に好ましい。封止部背面の幅が、3mmより小さいと、封止部背面側からの押圧力を大きくし難くなるため、封止部4を、ハウジング等に形成された封止部4を当接させる面に、強く、効果的に押圧することができないことがある。また、封止部背面の幅が、10mmより大きいと、封止部が不必要に大きくなり、ハウジング等に形成された、封止部4を固定するための構造等を不必要に大きくしなければならないことがある。
【0022】
封止部4の、「センサ素子本体3の一方の端部6と、一方の端部6に対して反対側の端部(他方の端部)8とを結ぶ方向」に垂直な断面の外周形状は、特に限定されないが、図1に示すように長方形であることが好ましく、また、図2に示すように円形であることも好ましい。更に、三角形、五角形等の多角形、楕円形等の形状であってもよい。図2は、本発明の板状センサ素子の他の実施形態を示す斜視図である。図2においては、板状センサ素子101が、センサ素子本体103に封止部104が配設されて形成されている。また、封止部は、図3に示す板状センサ素子201のように、センサ素子本体203の一方の端部206に対して反対側の端部からセンサ素子本体203の所定の位置までを取り囲むように封止部204が配設されていてもよい。図3は、本発明の板状センサ素子の更に他の実施形態を示す斜視図である。
【0023】
また、封止部4の、「センサ素子本体3の一方の端部6と他方の端部8とを結ぶ方向」における長さは、特に限定されないが、50〜100mmが好ましく、60〜80mmが更に好ましく、60〜70mmが特に好ましい。50mmより短いと(薄いと)、強度が低くなることがあり、100mmより長いと(厚いと)、封止部4からセンサ部5までの距離を十分にとれなくなり、板状センサ素子を配管等に固定した際に、センサ部5を配管等内の最適な位置に配置し難いことがある。
【0024】
封止部4の材質は、セラミックであり、耐熱性、耐熱衝撃性、耐食性、機械的強度等に優れたコージェライト、アルミナ、ジルコニア、チタニア、窒化珪素、スピネル、シリカ及び、ムライトから選択される少なくとも一種であることが好ましく、これらの中でも、耐熱衝撃性及び電気絶縁性に優れる点で、コージェライトであることが更に好ましい。また、封止部4とセンサ素子本体3とは、類似する材質であることが好ましく、封止部4とセンサ素子本体3とが同じ材質であることが更に好ましい。ここで、「材質が類似する」とは、一方の熱膨張係数が他方の熱膨張係数に対して、0〜5%の範囲であることをいう。封止部4の材質とセンサ素子本体3の材質とが同じであることより、封止部4とセンサ素子本体3の熱膨張係数が同じになり、熱衝撃による破損を防止することができる。
【0025】
本実施形態の板状センサ素子は、図4に示すような複数のテープ状のセラミックグリーンシート22を有するグリーンシート積層体21が、焼成されて形成されたものであることが好ましい。図4は、本実施形態の板状センサ素子の製造過程で形成されるグリーンシート積層体を示す斜視図である。グリーンシート積層体21においては、セラミックグリーンシート22に粒子状物質等検知用の電極や配線が印刷されていることが好ましい。
【0026】
(2)板状センサ素子の製造方法:
次に、本発明の板状センサ素子の製造方法について説明する。
【0027】
本発明の板状センサ素子の一実施形態の製造方法は、複数のセラミックグリーンシートを作製し、所定のセラミックグリーンシートの所定の位置に粒子状物質等検知用の電極や配線を配設し、電極や配線が配設されたセラミックグリーンシートを含む上記複数のセラミックグリーンシートを積層して図4に示すようなグリーンシート積層体21を作製し、得られたグリーンシート積層体を焼成して板状センサ素子とする方法が好ましい。この製造方法によれば、テープ状のセラミックグリーンシートを積層し、封止部とセンサ素子本体とを一体焼成して板状センサ素子を作製するため、簡易な方法で効率的に簡易な構造の、センサ素子本体と封止部とが一体的に形成された板状センサ素子を製造することができる。
【0028】
テープ状のセラミックグリーンシートは、セラミック原料とバインダー、可塑剤、分散剤、分散媒等とを混合し、スラリー状の成形原料とし、これをドクターブレード法等によりテープ状のグリーンシートに成形したものである。セラミック原料としては、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、チタニア、窒化珪素、炭化珪素及び各種フェライト等を挙げることができる。また、セラミックグリーンシートの中で、封止部に相当する部分を構成するものの原料としては、コージェライト、アルミナ、ジルコニア、チタニア、窒化珪素、スピネル、シリカ、ムライト等を挙げることができる。また、テープ状のグリーンシートの厚さは、10〜500μmであることが好ましく、60〜300μmであることが更に好ましい。テープ状のグリーンシートの厚さを、このような範囲とすることにより、ハンドリング性向上という利点がある。
【0029】
バインダーとしては、特に限定されるものではないが、水系バインダー、非水系バインダーのどちらでもよく、水系バインダーとしてはメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等を好適に使用でき、非水系バインダーとしてはポリビニルブチラール、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等を好適に使用することができる。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。
【0030】
バインダーの添加量は、セラミック原料100質量部に対して、3〜20質量部であることが好ましく、6〜17質量部であることが更に好ましい。このようなバインダー含有量とすることにより、スラリー状の成形原料を成形してグリーンシートを成形したとき、及び、乾燥、焼成したときに、クラック等の発生を防止することが可能となる。
【0031】
可塑剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジブチルフタレート、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル等を使用することができる。
【0032】
可塑剤の添加量は、バインダー添加量100質量部に対して、30〜70質量部であることが好ましく、45〜55質量部であることが更に好ましい。70質量部より多いと、グリーンシートが柔らかくなりすぎ、シートを加工する工程において変形しやすくなることがあり、30質量部より少ないと、グリーンシートが硬くなりすぎ、曲げただけでクラックが入るなどハンドリング性が悪くなることがある。
【0033】
分散剤としては、水系ではアニオン系界面活性剤、ワックスエマルジョン、ピリジン等を使用することが出来、非水系では脂肪酸、リン酸エステル、合成界面活性剤等を使用することができる。
【0034】
分散剤は、セラミック原料100質量部に対して、0.5〜3質量部であることが好ましく、1〜2質量部であることが更に好ましい。0.5質量部より少ないと、セラミック原料の分散性が低下することがあり、グリーンシートにクラック等が生じることがある。3質量部より多いと、セラミック原料の分散性は変わらずに焼成時の不純物を増やすことになる。
【0035】
分散媒としては、水、有機溶剤等を用いることができる。分散媒は、セラミック原料100質量部に対して、50〜200質量部であることが好ましく、75〜150質量部であることが更に好ましい。
【0036】
スラリー状の成形原料は、成形の前に、減圧下で撹拌して脱泡し、さらに所定の粘度となるように調製することが好ましい。成形原料の調製において得られるスラリー状の成形原料の粘度は、2.0〜6.0Pa・sであることが好ましく、3.0〜5.0Pa・sであることが更に好ましく、3.5〜4.5Pa・sであることが特に好ましい。粘度範囲をこのように調整すると、スラリーをシート状(テープ状)に成形し易くなるため好ましい。スラリー粘度は、高過ぎても低過ぎても成形し難くなることがある。尚、スラリーの粘度は、B型粘度計で測定した値である。
【0037】
スラリー状の成形原料を成形して得られたテープ状のセラミックグリーンシートの形状は、図4に示すように、センサ素子本体に相当する部分23及び封止部に相当する部分24を形成するように形成されることが好ましい。その大きさは特に限定されず、所望の板状センサ素子を製造するのに適した大きさとすることができる。
【0038】
所定の位置に粒子状物質等検知用の電極や配線を配設したセラミックグリーンシートは、上記方法により、例えば、平面形状が長方形のテープ状のセラミックグリーンシートを形成した後に、電極や配線を印刷することにより作製することが好ましい。例えば、電極としては、Ptジルコニア(印刷用に白金とジルコニアとを混合させたもの)を用いることが好ましい。また、配線としてはタングステンもしくはタングステンとセラミック材料の混合体を用いることが好ましい。
【0039】
上記テープ状のセラミックグリーンシートを積層してグリーンシート積層体を形成するときには、テープ状のセラミックグリーンシートを重ね合わせて加圧により接着したりすることが好ましい。加圧には一軸加圧、静水圧加圧等が利用できる。加圧中にテープ状のセラミックグリーンシートを加熱することにより、熱圧着することも好ましい。シート間に接着層を形成し加圧接着することは更に好ましい。
【0040】
上記方法により得られたグリーンシート積層体を一体焼成するときには、1000〜1800℃で1〜100時間加熱することが好ましい。これにより、本発明の板状センサ素子を得ることができる。焼成装置としては、燃焼炉、電気炉等を使用することが好ましい。
【0041】
(3)板状センサ素子の固定方法:
次に、本実施形態の板状センサ素子をハウジング等に固定し、板状センサ素子を固定したハウジングを配管等に固定する方法について説明する。
【0042】
図5は、本実施形態の板状センサ素子1をハウジング20に挿入して固定し、板状センサ素子1が固定されたハウジング20を、配管13の孔13aに挿入しながら配管13に固定した状態を示す、板状センサ素子1の中心軸と流体の流通方向fとを含む平面で切断した断面図である。流通方向fは、配管13の内部を流れる流体の流通方向を示す。ハウジング20は、貫通孔17が形成された筒状のハウジング本体20aと、ハウジング本体20aの筒の内側に配置された封止リング11,12及び固定部材14とを有するものである。ハウジング本体20aは、中心軸方向の一方の端部側を配管等の孔に挿入するように形成されている。本実施形態においては、図5に示すように、ハウジング本体20aは、配管等に挿入する部分にネジが切られ、ネジ部20bを有することが好ましく、更に、配管等から外側に出る部分は、ハウジング20を工具等により回転させてネジ部20bにより配管等に固定するために、中心軸方向に直交する断面が六角形の六角部20cを有することが好ましい。六角部20cを有することにより、スパナ、モンキー等の工具等を六角部に嵌合させ、ハウジング20を回転させることができる。六角部に相当する部分の形状は、六角形には限定されず、工具等をその部分に嵌合させ、又は工具等によりその部分を把持等してハウジング20を回転させることができればよい。また、ハウジング20の配管への固定方法は、ネジ部を利用する方法に限定されず、フランジ式、バネ式等のいずれの方法でもよい。
【0043】
ハウジング本体20aの貫通孔17の内壁には、板状センサ素子1の封止部の封止面と、封止リング11を介して当接する封止部当接面16が形成されることが好ましい。封止部当接面16は、図5に示すように、ハウジング本体20aのネジ部20bが形成されている側の端部付近に形成された、ハウジング本体20aの中心軸に直交する平面であることが好ましい。ここで、「端部付近」とは、ハウジング本体20aの端部から3〜10mmの範囲である。ハウジング本体20aのネジ部20bが形成されている側の端面における貫通孔17の開口部の大きさは、センサ素子本体の幅の130〜150%に相当する大きさであることが好ましい。ハウジング本体20aの六角部20cが形成されている側の端部には、板状センサ素子の封止部をかしめて固定するための「かしめ用爪部15」が形成されることが好ましい。そして、かしめ用爪部15を内側に倒し込むことにより、板状センサ素子1の封止部を、ハウジング20の貫通孔17内部で押圧することにより、板状センサ素子1とハウジング20との隙間を封止することが好ましい。これにより、充填材を使用しなくても、容易に固定部分を封止することが可能である。
【0044】
板状センサ素子1をハウジング20内に固定するときには、図5に示すように、ハウジング本体20aの封止部当接面16上に封止リング11を配置し、封止リング11の上に、封止面4aが封止リング11に当接するように板状センサ素子1を配置し、板状センサ素子1の上から封止部4に被せるように固定部材14を配置し、更に、固定部材14の上から封止リング12を配置することが好ましい。そして、かしめ用爪部15を、封止リング12の上から押圧するように倒し込むことにより、固定部分を封止し、板状センサ素子1をハウジング20内に固定することが好ましい。板状センサ素子1をハウジング20内に配置するときは、センサ部が形成される側の端部をハウジング20の貫通孔に挿入するようにして、板状センサ素子1をハウジング20内に配置することが好ましい。板状センサ素子を安定的に固定するため、固定部材を用いることが好ましいが、固定部材を用いずに、かしめ用爪部等により封止部を押圧して板状センサ素子を固定してもよい。尚、図5は、かしめ用爪部15により、かしめる前の状態を示している。ここで、固定部分とは、ハウジング等に形成された貫通孔に、板状センサ素子を挿入して固定したときの、貫通孔、板状センサ素子及びそのた固定に用いられる部材を含む部分のことをいい、固定部分を封止するとは、ハウジング等に形成された貫通孔と板状センサ素子との隙間を埋めて貫通孔を通じてガスが流通しないようにすることである。また、センサ素子本体3の所定の位置に封止部4が一体的に配設されているため、板状センサ素子の位置決めを容易に行うことができる。
【0045】
板状センサ素子1を固定したハウジング20を、配管に固定するときには、図5に示すように、配管13に、外壁面19側から内壁面18側まで貫通する孔(配管の孔)13aを形成し、配管の孔13aの内壁面にハウジング20のネジ部20bに対応するネジ部を形成し、配管の孔13aに形成されたネジ部に、ハウジング20のネジ部20bをねじ込むことにより固定することが好ましい。ハウジング20を配管13等に、ネジにより固定することにより、ハウジング20と配管13等との間を、隙間なく封止することができる。
【0046】
封止リング11,12の材質は、特に限定されないが、ニッケル等を用いることができる。固定部材14の材質は、特に限定されないが、ステンレス等を用いることができる。封止リング11の形状は特に限定されないが、封止部当接面16上に配置でき、板状センサ素子1の封止面4aとの間を良好に封止できる形状であることが好ましい。固定部材14の形状は、特に限定されないが、封止部4の封止面4aに対して反対側の面上に載るリング状であることが好ましい。また、固定部材14の外周形状は、封止部4の封止面4aに対して反対側の面の外周形状と同様であることが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
(成形原料の調製)
ジルコニアをセラミック原料として使用し、バインダーとしてポリビニールブチラール、可塑剤としてジブチルフタレート、分散剤としてポリノを使用し、分散媒としての有機溶剤と共にアルミナ製ポットに入れて混合し、グリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を作製した。各原料の使用量は、アルミナ100質量部に対して、バインダー7.6質量部、可塑剤4質量部、分散剤0.75質量部、分散媒72質量部とした。
【0049】
次に、得られたグリーンシート製作用のスラリー状の成形原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、粘度4Pa・sとなるように調製した。スラリーの粘度は、B型粘度計で測定した。
【0050】
(成形加工)
次に、上記方法により得られたスラリー状の成形原料をドクターブレード法を用いてシート状に成形加工し、複数のセラミックグリーンシートを得た。このとき、図4に示すような形状のグリーンシート積層体が得られるような複数のセラミックグリーンシートを形成した。セラミックグリーンシートの厚さは、250μmとした。
【0051】
得られたセラミックグリーンシートの表面に、NOセンサを形成するための、各電極及び配線を形成した。配設する各電極及び配線を形成する導体ペーストを、セラミックグリーンシートの表面にスクリーン印刷を用いて印刷して、所定の形状の電極及び配線を形成した。
【0052】
次に、セラミックグリーンシートを加熱可能な一軸プレス機を用いて加圧積層し、セラミックグリーンシートが積層された図4に示すグリーンシート積層体を得た。
【0053】
(焼成)
得られた、グリーンシート積層体を120℃で乾燥し、1500℃で焼成して板状センサ素子を作製した。得られた板状センサ素子は、センサ素子本体が、6.8cm×0.45cm×0.15cmの直方体であり、封止部が配設されている位置から一方の端部までの長さL(図1参照)が、1.5cmであり、封止面の幅W(図1参照)が0.2cmであり、封止部の長さX(図1参照)が0.4cmであった。封止面の幅Wは、図1に示すように、全周に亘って同じ値であった。また、封止面と、封止面に接するセンサ素子本体の外周面との間の角度θ(図1参照)が、90°であり、封止部背面と、封止部背面に接するセンサ素子本体の外周面との間の角度が、90°であった。また、封止部の断面の外周形状は長方形であった。
【0054】
(封止状態評価)
板状センサ素子を、3〜5Nmのトルクにて図5に示すようなハウジング20に取り付ける。そして、ハウジング20を、貫通孔が形成されたステンレス製の板にネジ込み、板状センサ素子のセンサ部(ガス検知部)側に0.4MPaのエアーを吹き付けて、ハウジング20のセンサ部が突き出している側を加圧し、リード側(板状センサ素子のセンサ部が形成されていない端部が突き出している側)へのエアーリーク量を測定する。リーク量の確認は、ガラス管等の内側へ石鹸膜を作り、リークしたエアーをガラス管内へ導き、エアーにより石鹸膜が移動した距離を測定することにより行う。あらかじめ、石鹸膜の移動距離に対する、リークしたエアーの量(体積)を求めておく。リーク量が、0.1cm/分以下の場合を合格とした。
【0055】
実施例1の板状センサ素子について、上記封止状態の評価をした結果、0.08cm/分であり、良好に封止されていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の板状センサ素子は、自動車の排ガスや廃棄物の焼却時に発生する焼却排ガス等に含有される、塵やその他の粒子状物質を検出するため、上記排ガス中のNO、CO及びHC等を検出するため、更には、その他種々のガス中のO等の物質を検出するために利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の板状センサ素子の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の板状センサ素子の他の実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明の板状センサ素子の更に他の実施形態を示す斜視図である。
【図4】本実施形態の板状センサ素子の製造過程で形成されるグリーンシート積層体を示す斜視図である。
【図5】本実施形態の板状センサ素子をハウジングに挿入して固定し、板状センサ素子が固定されたハウジングを、配管の孔に挿入しながら配管に固定した状態を示す、板状センサ素子の中心軸と流体の流通方向とを含む平面で切断した断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1,101,201:板状センサ素子、2:セラミック基材、3,103,203:センサ素子本体、4,104,204:封止部、4a:封止面、4b:封止部背面、5:センサ部、6,206:一方の端部、7a:一の端面、7b:反対側に位置する端面、8:他方の端部、11:封止リング、12:封止リング、13:配管、13a:配管の孔、14:固定部材、15:かしめ用爪部、16:封止部当接面、17:貫通孔、18:内壁面、20:ハウジング、20a:ハウジング本体、20b:ネジ部、20c:六角部、19:外壁面、21:グリーンシート積層体、22:セラミックグリーンシート、23:センサ素子本体に相当する部分、24:封止部に相当する部分、W:封止面の幅、X:長さ、L:封止部から一方の端部までの長さ、f:流体の流通方向、θ:角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のセラミック基材を有する板状のセンサ素子本体と、
前記センサ素子本体の一部を取り囲むように配設されたリング状の封止部とを備え、
前記センサ素子本体が、前記封止部が配設された位置から一方の端部までの間にセンサ部を有し、
前記封止部の材質がセラミックであり、前記センサ素子本体と前記封止部とが一体的に形成された板状センサ素子。
【請求項2】
前記セラミック基材の材質が、コージェライト、アルミナ、ジルコニア、チタニア、窒化珪素、炭化珪素及びフェライトから選択される少なくとも一種であり、
前記封止部の材質が、コージェライト、アルミナ、ジルコニア、チタニア、窒化珪素、スピネル、シリカ及び、ムライトから選択される少なくとも一種である請求項1に記載の板状センサ素子。
【請求項3】
複数のテープ状のセラミックグリーンシートを有するグリーンシート積層体が焼成されて形成された請求項1又は2に記載の板状センサ素子。
【請求項4】
前記封止部が、前記センサ部側を向くと共にセンサ素子本体の外周面に接する封止面を有し、
前記封止面と、前記封止面に接する前記センサ素子本体の外周面との間の角度が90〜135°である請求項1〜3のいずれかに記載の板状センサ素子。
【請求項5】
前記封止面の幅が、全周に亘って1〜10mmである請求項4に記載の板状センサ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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