説明

板状処理物冷却装置。

【課題】大型の板状処理物であっても温度のバラツキを抑制しながら一度に多数枚の板状処理物を効率良く冷却できる板状処理物冷却装置を提供する。
【解決手段】中央付近に多数の吹出し孔2aを備え且つ側辺に取込み口2bを備えた中空の棚板2であって、その上面に板状処理物Pを支える支持部材3を配設した棚板2を、冷却室1の内部に一定間隔をあけて上下に複数段設置し、取込み口2bに冷却用エアーを送る送気ファン5を設置すると共に、棚板中央付近の吹出し孔2aから棚板周辺に向かって流れる冷却用エアーを室外へ排出する換気ファン7を設置した構成の板状処理物冷却装置とする。棚板2の中央付近の吹出し孔2aから冷却用エアーを周辺に向かって流すことにより、板状処理物Pの温度のバラツキを抑制して変形、反り、破損等を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばLCD用大型ガラス基板のような大型の板状処理物を冷却するのに適した冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、加熱処理した液晶表示用ガラス基板等の板状処理物を冷却する場合は、風冷式の冷却装置の内部に板状処理物を一定間隔をあけて上下多段に積み重ね、その片側からフィルターファンユニットでクリーンな冷却用エアーを反対側に向かって流しながら冷却するのが一般的である。
【0003】
上記のように片側から反対側に冷却用エアーを流すタイプの冷却装置は、板状処理物が小型であれば問題なく冷却することができる。けれども一辺が1.5mを越えるような大型の板状処理物になると、風上側(片側)と風下側(反対側)で板状処理物に大きな温度のバラツキが発生するため、これが原因で板状処理物に変形、反り、破損等が生じるという問題があった。
【0004】
また、液晶表示用ガラス基板等の基板の熱処理装置として、炉内に保持された基板と下部炉壁との間に、上面に放射状の通気溝が形成された可動介挿板を配設し、熱処理後に基板を冷却するときに可動介挿板を基板に近接させて、可動介挿板の中央のガス供給管から冷却用ガスを通気溝に通して基板の周囲へ流すことにより、基板を均一に冷却できるようにした熱処理装置が提案されている(特許文献1)。
【0005】
けれども、上記の熱処理装置は、基板を一枚ずつ熱処理して冷却するものであり、一度に多数枚の基板を熱処理して冷却することができないため、処理効率が悪いという問題があった。かといって、この問題を解決するため、基板を多段に積み上げて熱処理および冷却を行えるように改良しようとしても、上記のように中央にガス供給管を有する可動介挿板を内蔵した熱処理装置は,その構造上、一度に多数の基板の処理を行えるように改良することが困難であった。
【特許文献1】特開2003−45817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題に対処すべくなされたもので、大型の板状処理物であっても温度のバラツキを抑制しながら一度に多数枚の板状処理物を効率良く冷却できる板状処理物冷却装置を提供することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る板状処理物冷却装置は、中央付近に多数の吹出し孔を備え且つ側辺に取込み口を備えた中空の棚板であって、その上面に板状処理物を支える支持部材を配設した上記棚板を、冷却室の内部に一定間隔をあけて上下に複数段設置し、棚板側辺の取込み口に冷却用エアーを送る送気ファンを設置すると共に、棚板中央付近の吹出し孔から棚板周辺に向かって流れる冷却用エアーを室外へ排出する換気ファンを設置したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の板状処理物冷却装置においては、換気ファンを冷却室の四隅付近に設置することが望ましい。そして、送気ファンから冷却用エアーを送り込むダクトを棚板の側辺に隣接して設け、このダクトに各棚板の側辺の取込み口を全て接続することが望ましい。
また、取込み口を棚板の相対向する二側辺に設け、棚板の一方の側辺の取込み口に冷却用エアーを送る一方の送気ファンと、棚板の他方の側辺の取込み口に冷却用エアーを送る他方の送気ファンを設置することが望ましい。そして、一方の送気ファンから冷却用エアーを送り込む一方のダクトを棚板の一方の側辺に隣接して設けると共に、他方の送気ファンから冷却用エアーを送り込む他方のダクトを棚板の他方の側辺に隣接して設け、一方のダクトに各棚板の一方の側辺の取込み口を全て接続すると共に、他方のダクトに各棚板の他方の側辺の取込み口を全て接続することが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の板状処理物冷却装置を用いて、各段の棚板上面の支持部材の上に熱処理された板状処理物を載置し、送気ファンから冷却用エアーを各棚板の取込み口に送ると、冷却用エアーは中空の棚板の内部を通って中央付近の多数の吹出し孔から吹出される。そして、吹出された冷却用エアーは板状処理物の中央部表面に当たり、板状処理物と棚板との空間を通って板状処理物を冷却しながら棚板周辺に向かって流れ、換気ファンにより室外へ排出される。このように冷却用エアーが各棚板の中央付近から吹出されて周辺に向かって流れると、従来の冷却装置のように片側から反対側へ流れる場合に比べて、冷却用エアーの流れる距離が短縮されるため、冷却効率が向上することに加えて、大型の板状処理物であっても温度のバラツキが抑制される。従って、温度のバラツキによる板状処理物の変形、反り、破損等を防止することが可能となり、一度に多数枚の大型の板状処理物を効率よく冷却することができる。
また、各棚板が断熱板の役目も兼ねるため、例えば、加熱処理された板状処理物を一定のタクト時間ごとに冷却室に順次投入して各棚板の支持部材の上に載置していく場合でも、ひとつ前に投入されて冷却し始めた板状処理物が、次に投入される板状処理物の熱で暖められることにより冷却時間が長くなるといった不都合をなくすこともできる。
【0010】
本発明の板状処理物冷却装置において、換気ファンを冷却室の四隅付近に設置したものは、冷却用エアーが換気ファンに引かれて各棚板の中央付近から四隅に向かって流れるので、板状処理物の四隅部まで均等に冷却することができる。そして、棚板の側辺にダクトを隣接して設け、このダクトに各棚板の取込み口を全て接続した冷却装置は、各棚板に冷却用エアーを均等に送り込んで各板状処理物を均等に冷却することができる。
【0011】
また、本発明の板状処理物冷却装置において、取込み口を棚板の相対向する二側辺に設け、棚板の一方の側辺の取込み口に冷却用エアーを送る一方の送気ファンと、棚板の他方の側辺の取込み口に冷却用エアーを送る他方の送気ファンを設置したものは、冷却用エアーの供給量を増加して冷却時間の短縮を図ることができる。そして、一方の送気ファンから冷却用エアーを送り込む一方のダクトを棚板の一方の側辺に隣接して設けると共に、他方の送気ファンから冷却用エアーを送り込む他方のダクトを棚板の他方の側辺に隣接して設け、一方のダクトに各棚板の一方の側辺の取込み口を全て接続すると共に、他方のダクトに各棚板の他方の側辺の取込み口を全て接続した冷却装置は、各棚板の二側辺の取込み口から冷却用エアーを均等に送り込んで各板状処理物を均等に冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明に係る板状処理物冷却装置の一実施例をその冷却室の天井を省略して示した概略平面図、図2は図1のA−A線に沿った概略断面図である。
【0014】
この板状処理物冷却装置は、図2に示すように、冷却室1の内部に多数の棚板2が一定間隔を開けて上下に複数段設置されており、各棚板2の上面には、熱処理された液晶表示用ガラス基板など板状処理物Pを支える複数のレール状の支持部材3が平行に配設されている。この支持部材2には、冷却用エアーの流れを妨げないように多数の通気孔が形成されている。
【0015】
棚板2は、図2示すような中空の板であり、図1に示すように、棚板2の上面の中央付近には冷却用エアーを吹出す多数の吹出し口2aが形成されている。そして、棚板2の相対向する二側辺(図1,図2では左右の側辺)には、冷却用エアーを取込む取込み口2bが二つずつ形成されている。
【0016】
図2に示すように、各棚板2の一方の側辺(左側辺)に形成された取込み口2bは、この一方の側辺に沿って設けられたダクト4に全て接続されており、同様に、各棚板2の他方の側辺(右側辺)に形成された取込み口2bも、この他方の側辺に沿って設けられたダクト4(図1参照)に全て接続されている。そして、これらのダクト4,4を介して各棚板2の二側辺の取込み口2b,2bにそれぞれ冷却用エアーを送る送気ファン5,5が冷却室1の左右の側壁に上下二機ずつ取付けられている。これらの送気ファン5はいずれも、その前面にエアーフィルター5aを取付けてフィルターファンユニットとしたものであり、クリーンな冷却用エアーを供給できるようになっている。
【0017】
また、冷却室1の四隅付近には、各棚板2と板状処理物Pとの空間を流れてくる冷却用エアーの排出用通路部6が設けられており、この排出用通路部6の底には、冷却用エアーを室外に放出する換気ファン7が3機ずつ取付けられている。
尚、8,8は開閉自在な冷却室の扉である。
【0018】
上記構成の板状処理物冷却装置を用いて、熱処理後の板状処理物Pを冷却する場合は、冷却室1の扉8,8を開いて板状処理物Pを各段の棚板2上面の支持部材3の上にそれぞれ載置し、扉8,8を閉めて両側壁のエアーフィルター5a付きの送気ファン5,5からクリーンな冷却用エアーを両側のダクト4,4を通して各棚板2の二側辺の取込み口2,2に均等に送り込む。そうすると、冷却用エアーは中空の各棚板2の内部を通って中央付近の多数の吹出し孔2aから吹出され、この吹出された冷却用エアーは各板状処理物Pの中央部分の表面に当たり、各板状処理物Pと各棚板2との空間を通って板状処理物Pを冷却しながら棚板2の四隅付近に向かって流れ、排出用通路部6を通って換気ファン7により室外に排出される。
【0019】
このように冷却用エアーが各棚板2の中央付近から四隅付近に向かって流れると、既述したように、片側から反対側へ冷却用エアーが流れる従来の冷却装置に比べて、冷却用エアーの流れる距離が短縮されるため、冷却効率が向上することに加えて、板状処理物Pが大型のものでも温度のバラツキが抑制される。従って温度のバラツキによる板状処理物Pの変形、反り、破損等を防止することが可能となり、一度に多数枚の大型の板状処理物Pを効率良く最小限のスペースで冷却することができる。特に、この冷却装置は、各棚板2の対向する二側辺の取込み口2b,2bから大量の冷却用エアーを取込み、中央付近の吹出し口2aから吹出して板状処理物Pと接触させるため、冷却効率が高く、冷却時間の短縮を図ることができる。
【0020】
また、この板状処理物冷却装置は、加熱処理された板状処理物Pを一定のタクト時間ごとに冷却室1の各棚板ごとに扉を開閉可能とし、これらの各棚板に順次投入して各棚板2の支持部材3の上で冷却を行う場合、各棚板2が断熱板の役目も兼ねるため、ひとつ前に投入されて冷却し始めた板状処理物Pが、次に投入される板状処理物Pの熱で暖められて、冷却時間が長くなるといった不都合を生じることもない。
【0021】
以上、代表的な実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこの実施例にのみ限定されるものではなく、例えば、換気ファン7の取付け場所や取付け個数を変更するなど、種々の変更態様を許容し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る板状処理物冷却装置の一実施例をその冷却室の天井を省略して示した概略平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った概略断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 冷却室
2 中空の棚板
2a 吹出し口
2b 取込み口
3 支持部材
4 ダクト
5 送気ファン
5a エアーフィルター
7 換気ファン
P 板状処理物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央付近に多数の吹出し孔を備え且つ側辺に取込み口を備えた中空の棚板であって、その上面に板状処理物を支える支持部材を配設した上記棚板を、冷却室の内部に一定間隔をあけて上下に複数段設置し、棚板側辺の取込み口に冷却用エアーを送る送気ファンを設置すると共に、棚板中央付近の吹出し孔から棚板周辺に向かって流れる冷却用エアーを室外へ排出する換気ファンを設置したことを特徴とする板状処理物冷却装置。
【請求項2】
換気ファンを冷却室の四隅付近に設置したことを特徴とする請求項1に記載の板状処理物冷却装置。
【請求項3】
送気ファンから冷却用エアーを送り込むダクトを棚板の側辺に隣接して設け、このダクトに各棚板の側辺の取込み口を全て接続したことを特徴とする請求項1に記載の板状処理物冷却装置。
【請求項4】
取込み口を棚板の相対向する二側辺に設け、棚板の一方の側辺の取込み口に冷却用エアーを送る一方の送気ファンと、棚板の他方の側辺の取込み口に冷却用エアーを送る他方の送気ファンを設置したことを特徴とする請求項1に記載の板状処理物冷却装置。
【請求項5】
一方の送気ファンから冷却用エアーを送り込む一方のダクトを棚板の一方の側辺に隣接して設けると共に、他方の送気ファンから冷却用エアーを送り込む他方のダクトを棚板の他方の側辺に隣接して設け、一方のダクトに各棚板の一方の側辺の取込み口を全て接続すると共に、他方のダクトに各棚板の他方の側辺の取込み口を全て接続したことを特徴とする請求項4に記載の板状処理物冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−2970(P2006−2970A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177934(P2004−177934)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000167200)光洋サーモシステム株式会社 (180)
【Fターム(参考)】