板状材料の溶断システム及び溶断方法
【課題】溶断後のノロ取りのための労力を軽減することが出来て、溝切断加工における溶断開始点及び溶断終了点における加工精度を向上すると共に、溶断するべき板状材料の曲がりや反りにも対処することが出来るような板状材料の溶断システム及び溶断方法の提供。
【解決手段】ガストーチを備えたガス溶断ユニット(2)と、プラズマトーチ(31)を備えたプラズマ溶断ユニット(溝切断ユニット3)と、板状材料(W)における溶断するべき位置(X方向位置、Z方向位置)を検出する計測装置(センサ5)と、プラズマトーチ(31)の位置(X方向位置、Z方向位置)及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する調節装置(例えば、多軸ロボット6)と、制御装置(10)を備えている。
【解決手段】ガストーチを備えたガス溶断ユニット(2)と、プラズマトーチ(31)を備えたプラズマ溶断ユニット(溝切断ユニット3)と、板状材料(W)における溶断するべき位置(X方向位置、Z方向位置)を検出する計測装置(センサ5)と、プラズマトーチ(31)の位置(X方向位置、Z方向位置)及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する調節装置(例えば、多軸ロボット6)と、制御装置(10)を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば大型ブルドーザの足廻り部品の一つである大型履板の様に、製品そのものが大きい上、厚さが均等ではなく、断面が湾曲している板状材料を溶断(切断)する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、大型ブルドーザのような建設機械の足廻り部品の一つである大型履板の製造ラインの一部を示している。
図9で示す製造ラインは、バー材(素材或いは素形材)搬入装置Eと、搬送装置Lを有している。搬送装置Lは、切断エリアCと、ノロ取りエリアDとを備えている。
バー材搬入装置Eから搬送装置Lに投入された素形材Mは、切断エリアCの全長切断エリアC1で所定の製品長さのワークWに裁断(切断)され、切断エリアCの溝切断エリアC2ではワークWの「短辺部」の2箇所に、履板におけるリンクベルトの緩衝部が切り欠かれる。
切断エリアCにおいて切断加工を終えたワークWは、ノロ取りエリアDに送られ、ワークWの表面に付着した「ノロ」が除去される。
ここで、「短辺部」とは、履板の幅方向(図10のX方向:長手方向或いはY方向と直交する方向)について、グローサGを境にして、短い方の領域をいい、図10では符号Bで示されている。なお、グローサGを境にして、長い方の領域は「長辺部」といい、図10では符号BLで示されている。
「ノロ」は、溶断(切断加工)した際に履板に付着した溶融金属(いわゆる「溶け屑」)である。
【0003】
当該製造ラインで製造される大型履板(加工が終了したワークに符号Wpを付している)Wpが図10に示されている。図11は、大型履板Wpの切断面(素形材であるバー材の断面に等しい)の形状を示している。
大型履板を加工するためには、厚さが均等ではなく、断面が湾曲しており、且つ、大型の板状材料Mを切断しなくてはならない。そのため、切断をプレスで行うには、大型のプレス機械が必要となり、導入コストが高騰してしまうと共に、当該プレス機械の設置スペースが大きくなり過ぎてしまう。
したがって、大型履板の製造(加工)においては、ガス切断(溶断)を採用している場合が存在する。その様な場合には、ガス切断工程において、バー材を大型履板の製品長さに切断する「全長切断」(図10の矢印A位置)と、履板の短辺部を溝状に切断、除去する「溝切断」(図10の矢印TB位置)とが行なわれる。ここで、溝切断で切断、除去されるのは、走行装置の履帯(クローラ)におけるリンクベルトとの干渉部分である。換言すれば、溝切断により形成される溝は、リンクベルトと履板との緩衝を避けるために形成される。
図10、図11において、Y方向(図10参照)は履板の長手方向である。また、符号Wpfは、履板の表面を示している。「X方向」は幅方向(長手方向と直交する方向と直交する方向)であり、履板の表面Wpfに沿った方向である。そして、「Z方向」は、図11においてX方向(幅方向)と直交する方向である。
【0004】
図9において、切断エリアCの上流側には全長切断を行う全長切断エリアC1が設けられ、下流側には溝切り切断を行う溝切断エリアC2が設けられている。
全長切断エリアC1には全長切断用のガストーチT1が備えられ、溝切断エリアC2には1対の溝切断用のガストーチT2が備えられている。ここで、全長切断用トーチT1を一対設け、バー材を同時に2箇所で切断することも可能である。
全長切断は全長切断用トーチT1によって同時に行われ、溝切断は1対の溝切断用トーチT2によって同時に行われる。
製造ラインには切断作業者O1、ノロ除去作業者O2、O3が従事している(図9の例では、合計三人)。
切断作業者O1は、全長切断と溝切り切断との双方の切断(溶断)作業を担当(監督)している。一方、ノロ除去作業者O2、O3は、切断(溶断)加工時に発生したノロを、例えばハンドグラインダーを用いて、手作業で除去している。
【0005】
上述した切断(溶断)作業では、倣い板を用いて、倣い板に沿ってトーチT1、T2を移動させながら、切断作業を行っている。全長切断或いは溝切断の切断条件設定は、例えば切断作業者O1が、切断面をその都度確認して、その技量によって微調整を行いつつ、製品の寸法精度を確保している。
ここで、上述した様に、素形材Mは(図11に示すように)断面形状が複雑であり、切断箇所を特定する際の切断トーチの調整等が困難である。そのため、従来の切断作業は、切断(溶断)作業を担当する作業者の技量により、その加工精度が決定していた。そのため、熟練者を必要とする傾向があった。
【0006】
また、図9で示す製造ラインでは、ガス切断によるノロの発生量が多い。
ノロ除去作業は、二人の作業者O2、O3がハンドグラインダーを用いて行っているが、ノロ発生量が多いため、作業に要する時間が長い。
それに加えて、大型履板の製造ラインであれば、ノロ除去作業を行なう作業者の扱うワークの重量が大きい。
さらに、除去作業で生じるノロ屑が周囲に飛散してしまうので、ノロ除去作業現場の作業環境は決して良くはない。
すなわち、係る製造ラインは、作業者の負担が大きく(いわゆる「3K」であり)、作業者の健康管理という観点からも改善が望まれる。
【0007】
各種ワークを溶断する機器として、ガストーチではなく、プラズマトーチを使用する従来技術も存在する。しかし、係る従来技術においては、プラズマアーチで溶断する際に、溶断するべきワークにおいて、溶断開始点(始端部)及び溶断終了点(終端部)の裏面側(プラズマトーチの反対側)における金属溶融量が多くなり、溶断開始点及び溶断終了点における加工精度が低下するという問題がある。
【0008】
その他の従来技術として、任意の方向に垂直溶断することを可能にした技術(特許文献1参照)、切断効率の向上を図ったプラズマ切断技術(特許文献2参照)、切断遅れが生じない様に自動的にプラズマ切断を行なう技術(特許文献3参照)、多点同時加工が可能な溶断技術(特許文献4参照)、ガイドレールを設けずに直交切断を行なうことが出来るポータブル溶断機(特許文献5参照)、溶断位置に自在に溶断機を位置決めガイドすることが出来るガス溶断ガイド装置(特許文献6参照)、管切断作業を短縮化する技術(特許文献7参照)が存在する。
しかし、これ等の従来技術は、何れも、大型履板の様に、厚さが均等ではなく、湾曲している板状材料を溶断することを対象とするものではなく、上述した問題を解決することは出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−155960号公報
【特許文献2】特開2007−50428号公報
【特許文献3】特開2003−136247号公報
【特許文献4】特開平7−323370号公報
【特許文献5】特開平7−155941号公報
【特許文献6】特開2006−95591号公報
【特許文献7】特開2007−75838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、溶断後のノロ取りのための労力を軽減することが出来て、溝切断加工における溶断開始点及び溶断終了点における加工精度を向上すると共に、溶断するべき板状材料の曲がりや反りにも対処することが出来るような板状材料の溶断システム及び溶断方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の板状材料(例えば、大型履板のバー材(素形材)M)の溶断システムは、ガストーチ(21)を備えたガス溶断ユニット(2)と、(プラズマアーク放電により溶断を行う)プラズマトーチ(31)を備えたプラズマ溶断ユニット(溝切断ユニット3)と、板状材料(W)における溶断するべき位置(X方向位置、Z方向位置)を検出する計測装置(センサ5)と、プラズマトーチ(31)の位置(X方向位置、Z方向位置)及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する調節装置(例えば、多軸ロボット6)と、制御装置(10)を備え、
当該制御装置(10)は、計測装置(5)により検出された板状材料(M)における溶断するべき位置に応答して、調節装置(例えば、多軸ロボット6)に対して、プラズマトーチ(31)の位置(X方向位置、Z方向位置)及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する制御信号を発信する機能を有することを特徴としている。
以降、加工対象で全長切断するまでの素形材に符号「M」を付し、全長切断されたワークに符号「W」を付し、ノロ除去作業を終えて、製品形状となったワークには符号「Wp」を付すものとする。
【0012】
そして本発明において、前記制御装置(10)は、プラズマトーチによる溶断が板状材料(W)の溶断開始点近傍(例えば、溝切断開始点より10〜15mm離隔した範囲)及び溶断終了点近傍(例えば、溝切断終了点より10〜15mm離隔した範囲)で行なわれている場合には、プラズマトーチ(31)を垂直軸に対して、プラズマトーチ(31)による溶融量が減少する方向へ傾斜させる制御信号を発信する機能を有し、
プラズマトーチ(31)による溶断が板状材料(W)の溶断開始点近傍(例えば、溝切断開始点より10〜15mm離隔した範囲)及び溶断終了点近傍(例えば、溝切断終了点より10〜15mm離隔した範囲)以外で行なわれている場合には、プラズマトーチ(31)の方向を垂直にする制御信号を発信する機能を有しているのが好ましい。
【0013】
また本発明において、前記ガス溶断ユニット(2)のガストーチ(21)に供給される切断酸素量が増加(例えば、既存のガストーチ21に供給される切断酸素量の40%〜50%増加)しており、ガストーチ(21)の切断火口の口径を減少(例えば、既存のガストーチ21における切断火口の口径の15%〜25%減少)しているのが好ましい。
【0014】
本発明の実施に際して、前記板状材料(M)は、(大型ブルドーザの足廻り部品の一つである大型)履板の材料となる圧延材料(いわゆる「バー材」M)であり、
前記ガス溶断ユニット(2)は、前記圧延材料(いわゆる「バー材」M)を、履板(Wp)の横方向(Y方向:図10における左右方向)の所定寸法毎に切断する作業(全長切断)で、前記圧延材料Mを溶断する機能を有しており、
前記プラズマ溶断ユニット(3)は、履板(Wp)におけるリンクベルトの干渉部を切り欠く加工(溝切断)の際に、前記圧延材料(W)を溶断する機能を有しているのが好ましい。
【0015】
また本発明の板状材料(例えば、大型履板のバー材M)の溶断方法は、ガストーチ(21)を備えたガス溶断ユニット(2)により板状材料(M)を切断する工程と、
プラズマトーチ(31)を備えたプラズマ溶断ユニット(溝切断ユニット3)により板状材料(W)の一部を切断する工程と、
板状材料(W)における溶断するべき位置(X方向位置、Z方向位置)を計測装置(センサ5)により検出する工程と、
計測装置(5)により検出された板状材料(W)における溶断するべき位置に応答して、(プラズマトーチ31のX方向位置、Z方向位置及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する調節装置6により、)プラズマトーチ(31)の位置(X方向位置、Z方向位置)及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する工程を有することを特徴としている。
【0016】
本発明の溶断方法において、プラズマトーチ(31)による溶断が板状材料(W)の溶断開始点近傍(例えば、溝切断開始点より10〜15mm離隔した範囲)及び溶断終了点近傍(例えば、溝切断終了点より10〜15mm離隔した範囲)で行なわれている場合には、プラズマトーチ(31)を垂直軸に対して、プラズマトーチ(31)による溶融量が減少する方向へ傾斜させる工程と、
プラズマトーチ(31)による溶断が板状材料(W)の溶断開始点近傍(例えば、溝切断開始点より10〜15mm離隔した範囲)及び溶断終了点近傍(例えば、溝切断終了点より10〜15mm離隔した範囲)以外で行なわれている場合には、プラズマトーチ(31)の方向を垂直にする工程を有しているのが好ましい。
【0017】
また本発明の溶断方法において、前記ガス溶断ユニット(2)のガストーチ(21)の切断火口の口径は減少(例えば、既存のガストーチにおける切断火口の口径の15%〜25%減少)しており、
ガストーチ(21)に供給される切断酸素量を増加(例えば、既存のガストーチに供給される切断酸素量の40%〜50%増加)する工程を有しているのが好ましい。
【0018】
本発明の溶断方法の実施に際して、前記板状材料(M)は、(大型ブルドーザの足廻り部品の一つである大型)履板の材料となる圧延材料(いわゆる「バー材」M)であり、
前記圧延材料(いわゆる「バー材」M)を、履板(Wp)の横方向(Y方向:図10における左右方向)の所定寸法毎に切断する作業(全長切断)では、前記ガス溶断ユニット(2)により前記圧延材料を溶断し、
履板(Wp)におけるリンクベルトの干渉部を切り欠く加工(溝切断)の際に、前記プラズマ溶断ユニット(3)により前記圧延材料(W)を溶断するのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
上述する構成を具備する本発明によれば、プラズマトーチ(31)の位置(X方向位置、Z方向位置)及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する調節装置(例えば、多軸ロボット6)と、制御装置(10)を備え、計測装置(5)により検出された板状材料(W)における溶断するべき位置に応答して、調節装置(例えば、多軸ロボット6)により、プラズマトーチ(31)の位置(X方向位置、Z方向位置)及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する様に構成されているので、溶断の対象である板状材料(W)に、いわゆる「曲がり」や「反り」が存在する場合においても、プラズマトーチ(31)を溶断位置へ正確に位置させることが出来る。
そのため、作業者の作業スキルと無関係に、自動制御により、プラズマトーチ(31)による溶断を高精度で実行することが出来る。
【0020】
ここで、板状材料(W)とプラズマトーチ(31)の相対的な距離が一定ではないと、プラズマトーチ(31)におけるプラズマアーク放電にバラツキが発生し、溶断(切断)加工が不良になる恐れが存在する。
それに対して、本発明によれば、プラズマトーチ(31)の垂直方向位置(Z方向位置)を調節することが出来るので、溶断の対象である板状材料(W)とプラズマトーチ(31)の相対的な距離(間隔、クリアランス)を常に一定に維持することが可能である。そして、板状材料(W)とプラズマトーチ(31)の相対的な距離を一定に維持することが出来るため、プラズマトーチ(31)におけるプラズマアーク放電も一定となり、溶断作業が不良になってしまう恐れはない。
換言すれば、本発明によれば、プラズマアーク放電が安定した溶断が実行される。
【0021】
上述した様に、従来技術では、溶断開始点及び溶断終了点(終始端部)の裏面側(ガストーチの反対側)における金属溶融量が多くなり、溶断開始点及び溶断終了点における加工精度が低下するという問題も有している。
本発明においては、係る問題が発生する加工(例えば、履板における溝切断加工)においてはプラズマトーチ(31)を使用して溶断を行ない、且つ、プラズマトーチ(31)による溶断が板状材料(W)の溶断開始点近傍(例えば、溝切断開始点より10〜15mm離隔した範囲)及び溶断終了点近傍(例えば、溝切断終了点より10〜15mm離隔した範囲)で行なわれている場合には、プラズマトーチ(31)を垂直軸に対して傾斜させて、板状材料(W)の溶融量が減少する様に構成することが出来る。
本発明をその様に構成すれば、プラズマトーチ(31)を垂直軸に対して傾斜させて、板状材料(W)の溶融量が減少するので、溶断開始点及び溶断終了点において板状材料(W)の溶融量は増加せず、当該溶融量の増加に起因して加工精度が低下するという問題を解消することが出来る。
【0022】
そして本発明によれば、溶断加工を終了した板状材料(例えば、全長切断加工及び溝切断加工を行った後の履板W)に付着するノロ(溶融金属、いわゆる「溶け屑」)の量が減少する。そのため、ノロ取り作業に必要な労力を減少することが出来て、その分、作業効率が向上する。
また、本発明によれば、板状材料(W)を溶断する加工が自動制御により高精度で実行することが出来るので、作業者の作業スキルとは無関係に、高い作業効率が達成できる。そのため、従来技術における作業者毎に異なる調整作業が不必要となり、調整作業に要していた時間を節約することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態を適用した履板溶断ラインの概要を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の要部を示すブロック図である。
【図3】図2における制御系統を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態において大型履板を溶断する制御を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態の要部を示すブロック図である。
【図6】図5における制御系統を示すブロック図である。
【図7】本発明の第3実施形態の要部を示すブロック図である。
【図8】図7における制御系統を示すブロック図である。
【図9】大型履板製造ラインの概要を示すブロック図である。
【図10】大型履板において溶断するべき部分を示す平面図である。
【図11】図10の矢印Y方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1〜図4は、本発明の第1実施形態を示している。
図1において、第1実施形態を適用した履板溶断ラインは、図9と同様に、バー材Mをラインに搬入するバー材搬入装置1と、バー材Mを履板の横方向(Y方向:バー材の搬入方向;図10参照)寸法毎に切断する全長切断ユニット2と、履板のリンクベルトと干渉する部分を溶断して切除する(切り欠く)加工を行う溝切断ユニット(「板状材料の溶断システム」と記載する場合がある)3と、溶断された履板のノロ取りを行うノロ取りユニット4を備えている。
【0025】
バー材搬入装置1と、全長切断ユニット2と、溝切断ユニット3とは自動制御により必要な操作が行われているが、ノロ取りユニット4では、一人の作業員がマニュアル作業により、履板に付着した「ノロ」を除去している。
全長切断ユニット2では、ガストーチ21によりバー材Mを切断する。ここで、ガストーチ21を一対設け、バー材を同時に2箇所で切断することも可能である。
【0026】
図示の実施形態では、溶断の対象となる板状材料は、例えば大型ブルドーザの足廻り部品の一つである大型履板、或いはその材料であるバー材Mである。
換言すれば、導入コストが高額であり、多大な設置スペースを必要とする大型のプレス機械でなければプレス切断することができず、通常のプレス機械ではプレス切断することが出来ない様な板状材料を、図示の実施形態では溶断の対象としている。
【0027】
図9で示す従来技術では、全長切断ユニット(全長切断エリア)C1と、溝切断ユニット(溝切断エリア)C2は何れもガストーチにより、バー材Mの切断(溶断)を行なっていた。
それに対して、図1〜図4の第1実施形態では、溝切断ユニット3は1対のプラズマトーチ31で溶断する様に構成されている。一方、全長切断ユニット2は、図9で示すラインと同様に、ガストーチ21によりバー材Mを切断している。
【0028】
図1において、全長切断ユニット2の切断酸素量は、従来技術に比較して、40%〜50%増加しており、一方、ガストーチの切断火口の口径を、従来技術に比較して、15%〜25%減少している。
従来技術におけるガストーチの切断火口の口径を、例えばφ2.3mmとすると、図1の全長切断ユニット2におけるガストーチの切断火口の口径は、φ1.8mmであり、21.7%減少している。
【0029】
図1における溝切断ユニット3の詳細について、図2〜図4を参照して説明する。
図2において、溝切断ユニット3は、多軸ロボット6と、ワークWとの距離を計測する距離計測用センサ(以下、「センサ」と言う)5と、プラズマトーチ31と、制御手段であるコントロールユニット10とを備えている。センサ5とプラズマトーチ31は、何れも、多軸ロボット6のハンド先端に装着されている。
コントロールユニット10は、入力信号ラインLiによってセンサ5と接続されており、制御信号ラインLoによって多軸ロボット6の制御部6Cと、プラズマトーチ31(より詳細には、プラズマトーチ31の図示しない照射制御部)と接続されている。
図2において、符号RCは、ワーク搬送手段であるローラコンベアを示している。
【0030】
コントロールユニット10及び多軸ロボット6の制御部6Cが、図3で示されている。
図3において、コントロールユニット10は、短辺部X方向位置決定ブロック11と、X方向偏差決定ブロック12と、短辺部Z方向位置決定ブロック13と、Z方向偏差決定ブロック14と、相対位置決定ブロック15と、多軸ロボット位置制御ブロック16と、溶断開始信号発生ブロック17と、トーチ傾き決定ブロック18と、溶断終了信号発生ブロック19と、タイマ189とを有している。
多軸ロボット6の制御部6Cは、X方向トーチ位置調節ブロック6cxと、Z方向トーチ位置調節ブロック6czと、トーチ傾き調節ブロック6ccとを有している。
【0031】
図3において、センサ5によって検知したワークWの位置情報が短辺部X方向位置決定ブロック11と、短辺部Z方向位置決定ブロック13と、溶断開始信号発生ブロック17とに送信(入力)される。
短辺部X方向位置決定ブロック11は、入力した位置情報に基いて短辺部のX方向位置を決定し、決定した短辺部のX方向位置を、X方向偏差決定ブロック12に伝送する。X方向偏差決定ブロック12は、ブロック11で決定された短辺部のX方向位置が、X方向の基準値に対してどれだけ異なっているのか(X方向偏差)を決定する。
短辺部Z方向位置決定ブロック13は、入力した位置情報に基いて短辺部のZ方向位置を決定し、決定した短辺部のZ方向位置を、Z方向偏差決定ブロック14に伝送する。Z方向偏差決定ブロック14は、ブロック13で決定された短辺部のZ方向位置が、Z方向の基準値に対してどれだけ異なっているのか(Z方向偏差)を決定する。
【0032】
相対位置決定ブロック15は、X方向偏差決定ブロック12が決定したX方向偏差と、Z方向偏差決定ブロック14が決定したZ方向偏差から、ワーク(履板)Wの短辺部(図2のB部)とトーチ5との相対位置を求めて決定する。
多軸ロボット位置制御ブロック16は、相対位置決定ブロック15が決定したワークW(履板)の短辺部とトーチ5との相対位置について、X方向の位置情報に関しては、多軸ロボット6の制御部6CにおけるX方向トーチ位置調節ブロック6cxに送る。そして、Z方向の位置情報については、多軸ロボット6の制御部6CにおけるZ方向トーチ位置調節ブロック6czに送る。
【0033】
溶断開始信号ブロック17は、センサ5から得た情報に基いて、ワークWが溶断を開始する位置にきた旨の溶断開始信号を、トーチ傾き決定ブロック18と、溶断終了信号発生ブロック19と、タイマ189と、プラズマトーチ31とに送信する。
ここで、トーチ傾き決定ブロック18は、溶断の始点近傍と、終点近傍において、ワークWにおける金属溶融量を減少するためにトーチ31を傾ける機能を有している。
トーチ傾き決定ブロック18は、「溶断開始」の信号を受信してスタンバイ状態となる。タイマ189は、「溶断開始」の信号受信で計時を開示する。溶断終了信号発生ブロック19は、「溶断開始」の信号とタイマの計時信号により、溶断終了信号を発生するタイミングを判定する。
【0034】
多軸ロボット位置制御ブロック16は、図示しない記憶手段に切断(溶断)する溝形状と、溝形状に対応する多軸ロボットの動作が予め記憶されており、溶断開始信号を受信してからの経過時間(タイマ189で計測)をも参照して、トーチ31を傾けるタイミングや、溶断終了のタイミングを演算している。
トーチ傾き決定ブロック18は、溶断の始点近傍と、終点近傍において、ワークWにおける金属溶融量を減少するためにトーチを傾けるタイミングで、その旨を多軸ロボット6の制御部6Cにおけるトーチ傾き調節ブロック6ccに送信する。
溶断終了信号発生ブロック19は、溶断終了のタイミングになったら、プラズマトーチ31に対して、プラズマアーク放電停止信号を送る。
【0035】
次に、図4のフローチャートを参照して、プラズマトーチによる溝切断の制御について説明する。
図4のステップS1において、コントロールユニット10は、センサ5が作動するまで待機しており(ステップS10がNOのループ)、センサが作動したなら(ステップS1がYES)、ステップS2に進む。
【0036】
ステップS2では、位置決めが完了したか否か、すなわち、図2のワークWがライン上の所定の位置に達したか否かを判断する。
ワークWがライン上の所定の位置に達していないならば(ステップS2がNO)、ステップS1に戻り、再びステップS1以降を繰り返す。一方、ワークWがライン上の所定の位置に達したならば(ステップS2がYES)、ステップS3でローラコンベアRCを停止させる。
【0037】
次のステップS4では、センサ5によってワーク(履板)WのX方向、Z方向の位置を計測する。そしてステップS5に進み、ワーク(履板)Wの短辺部(図2の符号B)のX方向、Z方向の位置が検出されたか否かを判断する。
ワーク(履板)Wの短辺部の位置が検出されなければ(ステップS5がNO)、ステップS4に戻り、再びステップS4以降を繰り返す。
ワーク(履板)Wの短辺部の位置が検出されたならば(ステップS5がYES)、ステップS6に進み、多軸ロボット6を操作して、プラズマトーチ31のX方向、Z方向位置を適正位置に調節する。そして、更にトーチ31と履板(ワーク)Wとのクリアランスを調節する(ステップS7)。
ここで、ステップS6と、ステップS7とは処理順序が逆であっても良い。或いは、同時に処理しても良い。
【0038】
次のステップS8では、多軸ロボット6を操作してトーチの傾きを、垂直状態に対して所定の角度だけ内側に傾ける。
上述した様に、溶断開始直後(溝加工始点近傍の領域)では、ワークWの溶断箇所を過剰に溶かしてしまい(溶融金属量が過剰となり)、加工精度や形状を損なってしまう。そのような問題を避けるために、溶断開始直後及び溶断終了直前には、トーチ31をワークWに対して垂直状態から傾斜して、ワークWの金属溶融量が過剰となることを防止している。
換言すれば、溝加工始点近傍の領域におけるトーチ31の傾斜方向は、プラズマアーク放電によるワークWの金属溶融量が減少する方向である。同様に、後述する溝加工終点近傍の領域におけるトーチ31の傾斜方向も、プラズマアーク放電によるワークWの金属溶融量が減少する方向である。
【0039】
ステップS9では、コントロールユニット10は、トーチ31に制御信号を送ってトーチ31を傾けたまま、溝溶断(切断)を開始する。
ステップS10に進み、コントロールユニット10は、トーチ31が溝溶断開始点近傍よりも離隔した位置になるまで待機しており(ステップS10がNOのループ)、トーチ31が溝溶断開始点近傍よりも離隔した位置になったなら(ステップS10がYES)、トーチ31を垂直に起こした状態で溶断を続ける(ステップS11)。
ここで、「溝溶断開始点近傍」とは、例えば、溝溶断開始点から10〜15mmの領域を意味している。
【0040】
次いで、ステップS12では、コントロールユニット10は、トーチ31が溶断終了点近傍位置まで移動したか否かを判断する。
トーチ31が溶断終了点近傍位置に移動したなら(ステップS12がYES)、トーチ31を内側(プラズマアーク放電によるワークWの金属溶融量が減少する側)に傾けて、溶断終了点近傍の溶断加工を行う(ステップS13)。
ここで、「溶断終了点近傍」とは、溶断終了点から10〜15mm手前の領域を意味している。
【0041】
ステップS14では、コントロールユニット10は、溝溶断が終了したか否かを判断する。
溝溶断が終了したならば(ステップS14がYES)、トーチ31を垂直状態に戻し(トーチ姿勢の初期化)、ローラコンベアRCを作動させる(ステップS15)。
そしてステップS16では、コントロールユニット10は、ラインにおける溝溶断作業を終了するか否かを判断する。
溝溶断作業を終了するのであれば、そのまま制御を終える。
一方、別のワークWにおける溝溶断加工を行うのであれば、ステップS1以降の制御を繰り返す。
【0042】
図示の第1実施形態によれば、溶断(切断)加工は多軸ロボット6が全て自動で行うように構成されている。すなわち、センサ5により検出されたワークWにおける溶断するべき位置に応答して、多軸ロボット6により、プラズマトーチ31の位置(X方向位置、Z方向位置)及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する様に構成されているので、ワークWに、いわゆる「曲がり」や「反り」が存在する場合においても、プラズマトーチ31を正確に溶断するべき位置へ移動することが出来る。
【0043】
ここで、ワークWとプラズマトーチ31の相対的な距離が一定ではないと、プラズマトーチ31におけるプラズマアーク放電にバラツキが発生し、溶断(切断)加工が不良になる恐れがある。
それに対して、第1実施形態によれば、プラズマトーチ31の垂直方向位置(Z方向位置)を調節することが出来るので、ワークWとプラズマトーチ31の相対的な距離(間隔、クリアランス)を常に一定に維持することが可能である。そして、ワークWとプラズマトーチ31の相対的な距離を一定に維持することが出来るため、プラズマトーチ31におけるプラズマアーク放電も一定となり、溶断作業が不良になってしまう恐れはない。
【0044】
前述した様に、従来技術では、溶断開始点及び溶断終了点(終始端部)の裏面側(ガストーチの反対側)における金属溶融量が多くなり、溶断開始点及び溶断終了点における加工精度が低下するという問題も有している。
第1実施形態では、係る問題が発生する加工(例えば、履板における溝切断加工)においては、高精度の加工が可能なプラズマトーチ31を使用して溶断をおこなっている。そして、プラズマトーチ31がワークWの溶断開始点近傍(例えば、溝切断開始点より10〜15mm離隔した範囲)及び溶断終了点近傍(例えば、溝切断終了点より10〜15mm離隔した範囲)の領域に到達したならば、プラズマトーチ31を垂直軸に対して傾斜させて、ワークWの金属溶融量が減少する様にしている。その結果、溶断開始点及び溶断終了点においてワークWの溶融量は増加せず、当該溶融量の増加に起因する加工精度の低下という問題を解消することが出来る。
【0045】
また、第1実施形態によれば、溶断加工を終了した板状材料(例えば、全長切断加工及び溝切断加工を行った後の履板W)に付着するノロ(溶融金属、いわゆる「溶け屑」)の量も減少する。そのため、ノロ取り作業に必要な労力を減少することが出来て、その分、作業効率が向上する。
【0046】
このように、第1実施形態によれば、ワークWを溶断する加工が自動制御により高精度で実行することが出来るので、作業者の作業スキルとは無関係に、高い作業効率が達成できる。そのため、従来技術における作業者毎に異なる調整作業が不必要となり、調整作業に要していた時間を節約することが出来る。
発明者の実験によれば、従来2人の作業員を必要としたノロ取り作業は、第1実施形態を実行した場合には不要となった。すなわち、第1実施形態によれば、重労働であるノロ取り作業を作業員に行なわせる必要がなくなった。
【0047】
次に、図5、図6を参照して第2実施形態を説明する。
第2実施形態において、履板溶断ラインの全体構成と、溶断(切断)の制御については、第1実施形態の図1で示す構成及び図4で示す制御と共通している。
ここで、第1実施形態では、多軸ロボット6に設けた単一のセンサ5により、履板(ワーク)Wの短辺部のX方向位置、Z方向位置、溝溶断箇所と多軸ロボット6に設けたプラズマトーチ31との間隔(クリアランス)を検出して、制御している。
それに対して、第2実施形態では、図5において全体を符号3Aで示す溝切断ユニットは、多軸ロボット6側に設けたセンサ5と、溝切断ユニット3Aに固定されたセンサ(固定センサ)5Aを有しており、溝切断ユニット3Aに設けた固定センサ5Aにより履板の短辺部のX方向位置、Z方向位置を検出し、多軸ロボット6側のセンサ5により溝溶断箇所とプラズマトーチの間隔(クリアランス)を検出している。
【0048】
コントロールユニット10Aと多軸ロボット6の制御部6Cを示す図6において、コントロールユニット10Aは、短辺部X方向位置決定ブロック11と、X方向偏差決定ブロック12と、短辺部Z方向位置決定ブロック13と、Z方向偏差決定ブロック14と、クリアランス決定ブロック15Aと、多軸ロボット位置制御ブロック16と、溶断開始信号発生ブロック17と、トーチ傾き決定ブロック18と、溶断終了信号発生ブロック19と、タイマ189とを有している。
【0049】
多軸ロボット6の制御部6Cは、第1実施形態と同様に、X方向トーチ位置調節ブロック6cxと、Z方向トーチ位置調節ブロック6czと、トーチ傾き調節ブロック6ccとを有している。
【0050】
図6において、固定センサ5Aによって検知したワークWの位置情報が、短辺部X方向位置決定ブロック11と、短辺部Z方向位置決定ブロック13に入力される。
一方、多軸ロボット6側のセンサ5によって検知された履板の短辺部(B部)とトーチ31のクリアランス(間隔)に関する情報は、クリアランス決定ブロック15Aと、溶断開始信号発生ブロック17とに入力される。
クリアランス決定ブロック15Aでは、多軸ロボット6側のセンサ5から入力された情報(履板の短辺部とトーチ31のクリアランスに関する情報)によって、履板の短辺部(B部)とトーチ31とのクリアランスを決定する。
【0051】
短辺部X方向位置決定ブロック11は、固定センサ5Aから入力した位置情報に基いて短辺部のX方向位置を決定し、決定された短辺部のX方向位置を、X方向偏差決定ブロック12に伝送する。X方向偏差決定ブロック12は、決定された短辺部のX方向位置が、X方向の基準値とはどの程度異なっているか(X方向偏差)を求める。
短辺部Z方向位置決定ブロック13は、固定センサ5Aから入力した位置情報に基いて短辺部のZ方向位置を決定し、決定された短辺部のZ方向位置を、Z方向偏差決定ブロック14に伝送する。Z方向偏差決定ブロック14は、決定された短辺部のZ方向位置が、Z軸方向の基準値とはどの程度異なっているか(Z方向偏差)を求める。
【0052】
多軸ロボット位置制御ブロック16は、X方向偏差決定ブロック12が決定したX方向偏差と、Z方向偏差決定ブロック14が決定した偏差と、クリアランス決定ブロック15Aが決定した履板の短辺部(B部)とトーチ31とのクリアランスを、多軸ロボット6の制御部6CにおけるX方向トーチ位置調節ブロック6cxとZ方向トーチ位置調節ブロック6czに送る。
【0053】
溶断開始信号ブロック17は、多軸ロボット6側のセンサ5から得た情報によって、溶断を開始する位置であれば、「溶断開始」の信号をトーチ傾き決定ブロック18と、溶断終了信号発生ブロック19と、タイマ189と、プラズマトーチ31とに送信する。
トーチ傾き決定ブロック18、タイマ189、「溶断終了信号発生ブロック19については、第1実施形態において、図3で説明したのと同様である。
図5、図6の第2実施形態における上述した以外の構成及び作用効果は、図1〜図4の第1実施形態と同様である。
【0054】
次に、図7、図8を参照して第3実施形態を説明する。
第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、履板溶断ラインの全体構成と、溶断(切断)の制御については、図1で示す構成及び図4で示す制御と共通している。
【0055】
第3実施形態は、図7において全体を符号3Bで示す溝切断ユニットは、多軸ロボット6Aに、第1のセンサ51及び第2のセンサ52を設けている。
第1のセンサ51により履板(ワーク)Wの短辺部のX方向位置、Z方向位置を検出し、第2のセンサ52により溝溶断箇所とプラズマトーチの間隔(クリアランス)を検出している。
換言すれば、第3実施形態では、図7の溝切断ユニット3Bは、多軸ロボット6Aに第1のセンサ51及び第2のセンサ52が設けられている点を除くと、図2と同様な構成を具備している。
【0056】
そして、コントロールユニット10Aと多軸ロボット6の制御部6Cを示す図8においては、図6で示す固定センサ5Aに代えて、多軸ロボット6に設けた第1のセンサ51が設けられ、図6におけるロボット側センサ5に代えて、多軸ロボット6に設けた第2のセンサ52が設けられている点を除き、図6と同様である。
第3実施形態の上述した以外の構成及び作用効果は、第1実施形態及び第2実施形態と同様である。
【0057】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
例えば、図示の実施形態では、大型履板を溶断する場合についてのみ説明しているが、図示の実施形態によれば、厚さが均等ではなく、湾曲している板状材料を溶断するのにも適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1・・・バー材搬入装置
2・・・全長切断ユニット
3・・・溝切断ユニット
4・・・ノロ取りユニット
5・・・計測装置/センサ
6・・・多軸ロボット
10・・・制御装置/コントロールユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば大型ブルドーザの足廻り部品の一つである大型履板の様に、製品そのものが大きい上、厚さが均等ではなく、断面が湾曲している板状材料を溶断(切断)する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、大型ブルドーザのような建設機械の足廻り部品の一つである大型履板の製造ラインの一部を示している。
図9で示す製造ラインは、バー材(素材或いは素形材)搬入装置Eと、搬送装置Lを有している。搬送装置Lは、切断エリアCと、ノロ取りエリアDとを備えている。
バー材搬入装置Eから搬送装置Lに投入された素形材Mは、切断エリアCの全長切断エリアC1で所定の製品長さのワークWに裁断(切断)され、切断エリアCの溝切断エリアC2ではワークWの「短辺部」の2箇所に、履板におけるリンクベルトの緩衝部が切り欠かれる。
切断エリアCにおいて切断加工を終えたワークWは、ノロ取りエリアDに送られ、ワークWの表面に付着した「ノロ」が除去される。
ここで、「短辺部」とは、履板の幅方向(図10のX方向:長手方向或いはY方向と直交する方向)について、グローサGを境にして、短い方の領域をいい、図10では符号Bで示されている。なお、グローサGを境にして、長い方の領域は「長辺部」といい、図10では符号BLで示されている。
「ノロ」は、溶断(切断加工)した際に履板に付着した溶融金属(いわゆる「溶け屑」)である。
【0003】
当該製造ラインで製造される大型履板(加工が終了したワークに符号Wpを付している)Wpが図10に示されている。図11は、大型履板Wpの切断面(素形材であるバー材の断面に等しい)の形状を示している。
大型履板を加工するためには、厚さが均等ではなく、断面が湾曲しており、且つ、大型の板状材料Mを切断しなくてはならない。そのため、切断をプレスで行うには、大型のプレス機械が必要となり、導入コストが高騰してしまうと共に、当該プレス機械の設置スペースが大きくなり過ぎてしまう。
したがって、大型履板の製造(加工)においては、ガス切断(溶断)を採用している場合が存在する。その様な場合には、ガス切断工程において、バー材を大型履板の製品長さに切断する「全長切断」(図10の矢印A位置)と、履板の短辺部を溝状に切断、除去する「溝切断」(図10の矢印TB位置)とが行なわれる。ここで、溝切断で切断、除去されるのは、走行装置の履帯(クローラ)におけるリンクベルトとの干渉部分である。換言すれば、溝切断により形成される溝は、リンクベルトと履板との緩衝を避けるために形成される。
図10、図11において、Y方向(図10参照)は履板の長手方向である。また、符号Wpfは、履板の表面を示している。「X方向」は幅方向(長手方向と直交する方向と直交する方向)であり、履板の表面Wpfに沿った方向である。そして、「Z方向」は、図11においてX方向(幅方向)と直交する方向である。
【0004】
図9において、切断エリアCの上流側には全長切断を行う全長切断エリアC1が設けられ、下流側には溝切り切断を行う溝切断エリアC2が設けられている。
全長切断エリアC1には全長切断用のガストーチT1が備えられ、溝切断エリアC2には1対の溝切断用のガストーチT2が備えられている。ここで、全長切断用トーチT1を一対設け、バー材を同時に2箇所で切断することも可能である。
全長切断は全長切断用トーチT1によって同時に行われ、溝切断は1対の溝切断用トーチT2によって同時に行われる。
製造ラインには切断作業者O1、ノロ除去作業者O2、O3が従事している(図9の例では、合計三人)。
切断作業者O1は、全長切断と溝切り切断との双方の切断(溶断)作業を担当(監督)している。一方、ノロ除去作業者O2、O3は、切断(溶断)加工時に発生したノロを、例えばハンドグラインダーを用いて、手作業で除去している。
【0005】
上述した切断(溶断)作業では、倣い板を用いて、倣い板に沿ってトーチT1、T2を移動させながら、切断作業を行っている。全長切断或いは溝切断の切断条件設定は、例えば切断作業者O1が、切断面をその都度確認して、その技量によって微調整を行いつつ、製品の寸法精度を確保している。
ここで、上述した様に、素形材Mは(図11に示すように)断面形状が複雑であり、切断箇所を特定する際の切断トーチの調整等が困難である。そのため、従来の切断作業は、切断(溶断)作業を担当する作業者の技量により、その加工精度が決定していた。そのため、熟練者を必要とする傾向があった。
【0006】
また、図9で示す製造ラインでは、ガス切断によるノロの発生量が多い。
ノロ除去作業は、二人の作業者O2、O3がハンドグラインダーを用いて行っているが、ノロ発生量が多いため、作業に要する時間が長い。
それに加えて、大型履板の製造ラインであれば、ノロ除去作業を行なう作業者の扱うワークの重量が大きい。
さらに、除去作業で生じるノロ屑が周囲に飛散してしまうので、ノロ除去作業現場の作業環境は決して良くはない。
すなわち、係る製造ラインは、作業者の負担が大きく(いわゆる「3K」であり)、作業者の健康管理という観点からも改善が望まれる。
【0007】
各種ワークを溶断する機器として、ガストーチではなく、プラズマトーチを使用する従来技術も存在する。しかし、係る従来技術においては、プラズマアーチで溶断する際に、溶断するべきワークにおいて、溶断開始点(始端部)及び溶断終了点(終端部)の裏面側(プラズマトーチの反対側)における金属溶融量が多くなり、溶断開始点及び溶断終了点における加工精度が低下するという問題がある。
【0008】
その他の従来技術として、任意の方向に垂直溶断することを可能にした技術(特許文献1参照)、切断効率の向上を図ったプラズマ切断技術(特許文献2参照)、切断遅れが生じない様に自動的にプラズマ切断を行なう技術(特許文献3参照)、多点同時加工が可能な溶断技術(特許文献4参照)、ガイドレールを設けずに直交切断を行なうことが出来るポータブル溶断機(特許文献5参照)、溶断位置に自在に溶断機を位置決めガイドすることが出来るガス溶断ガイド装置(特許文献6参照)、管切断作業を短縮化する技術(特許文献7参照)が存在する。
しかし、これ等の従来技術は、何れも、大型履板の様に、厚さが均等ではなく、湾曲している板状材料を溶断することを対象とするものではなく、上述した問題を解決することは出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−155960号公報
【特許文献2】特開2007−50428号公報
【特許文献3】特開2003−136247号公報
【特許文献4】特開平7−323370号公報
【特許文献5】特開平7−155941号公報
【特許文献6】特開2006−95591号公報
【特許文献7】特開2007−75838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、溶断後のノロ取りのための労力を軽減することが出来て、溝切断加工における溶断開始点及び溶断終了点における加工精度を向上すると共に、溶断するべき板状材料の曲がりや反りにも対処することが出来るような板状材料の溶断システム及び溶断方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の板状材料(例えば、大型履板のバー材(素形材)M)の溶断システムは、ガストーチ(21)を備えたガス溶断ユニット(2)と、(プラズマアーク放電により溶断を行う)プラズマトーチ(31)を備えたプラズマ溶断ユニット(溝切断ユニット3)と、板状材料(W)における溶断するべき位置(X方向位置、Z方向位置)を検出する計測装置(センサ5)と、プラズマトーチ(31)の位置(X方向位置、Z方向位置)及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する調節装置(例えば、多軸ロボット6)と、制御装置(10)を備え、
当該制御装置(10)は、計測装置(5)により検出された板状材料(M)における溶断するべき位置に応答して、調節装置(例えば、多軸ロボット6)に対して、プラズマトーチ(31)の位置(X方向位置、Z方向位置)及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する制御信号を発信する機能を有することを特徴としている。
以降、加工対象で全長切断するまでの素形材に符号「M」を付し、全長切断されたワークに符号「W」を付し、ノロ除去作業を終えて、製品形状となったワークには符号「Wp」を付すものとする。
【0012】
そして本発明において、前記制御装置(10)は、プラズマトーチによる溶断が板状材料(W)の溶断開始点近傍(例えば、溝切断開始点より10〜15mm離隔した範囲)及び溶断終了点近傍(例えば、溝切断終了点より10〜15mm離隔した範囲)で行なわれている場合には、プラズマトーチ(31)を垂直軸に対して、プラズマトーチ(31)による溶融量が減少する方向へ傾斜させる制御信号を発信する機能を有し、
プラズマトーチ(31)による溶断が板状材料(W)の溶断開始点近傍(例えば、溝切断開始点より10〜15mm離隔した範囲)及び溶断終了点近傍(例えば、溝切断終了点より10〜15mm離隔した範囲)以外で行なわれている場合には、プラズマトーチ(31)の方向を垂直にする制御信号を発信する機能を有しているのが好ましい。
【0013】
また本発明において、前記ガス溶断ユニット(2)のガストーチ(21)に供給される切断酸素量が増加(例えば、既存のガストーチ21に供給される切断酸素量の40%〜50%増加)しており、ガストーチ(21)の切断火口の口径を減少(例えば、既存のガストーチ21における切断火口の口径の15%〜25%減少)しているのが好ましい。
【0014】
本発明の実施に際して、前記板状材料(M)は、(大型ブルドーザの足廻り部品の一つである大型)履板の材料となる圧延材料(いわゆる「バー材」M)であり、
前記ガス溶断ユニット(2)は、前記圧延材料(いわゆる「バー材」M)を、履板(Wp)の横方向(Y方向:図10における左右方向)の所定寸法毎に切断する作業(全長切断)で、前記圧延材料Mを溶断する機能を有しており、
前記プラズマ溶断ユニット(3)は、履板(Wp)におけるリンクベルトの干渉部を切り欠く加工(溝切断)の際に、前記圧延材料(W)を溶断する機能を有しているのが好ましい。
【0015】
また本発明の板状材料(例えば、大型履板のバー材M)の溶断方法は、ガストーチ(21)を備えたガス溶断ユニット(2)により板状材料(M)を切断する工程と、
プラズマトーチ(31)を備えたプラズマ溶断ユニット(溝切断ユニット3)により板状材料(W)の一部を切断する工程と、
板状材料(W)における溶断するべき位置(X方向位置、Z方向位置)を計測装置(センサ5)により検出する工程と、
計測装置(5)により検出された板状材料(W)における溶断するべき位置に応答して、(プラズマトーチ31のX方向位置、Z方向位置及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する調節装置6により、)プラズマトーチ(31)の位置(X方向位置、Z方向位置)及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する工程を有することを特徴としている。
【0016】
本発明の溶断方法において、プラズマトーチ(31)による溶断が板状材料(W)の溶断開始点近傍(例えば、溝切断開始点より10〜15mm離隔した範囲)及び溶断終了点近傍(例えば、溝切断終了点より10〜15mm離隔した範囲)で行なわれている場合には、プラズマトーチ(31)を垂直軸に対して、プラズマトーチ(31)による溶融量が減少する方向へ傾斜させる工程と、
プラズマトーチ(31)による溶断が板状材料(W)の溶断開始点近傍(例えば、溝切断開始点より10〜15mm離隔した範囲)及び溶断終了点近傍(例えば、溝切断終了点より10〜15mm離隔した範囲)以外で行なわれている場合には、プラズマトーチ(31)の方向を垂直にする工程を有しているのが好ましい。
【0017】
また本発明の溶断方法において、前記ガス溶断ユニット(2)のガストーチ(21)の切断火口の口径は減少(例えば、既存のガストーチにおける切断火口の口径の15%〜25%減少)しており、
ガストーチ(21)に供給される切断酸素量を増加(例えば、既存のガストーチに供給される切断酸素量の40%〜50%増加)する工程を有しているのが好ましい。
【0018】
本発明の溶断方法の実施に際して、前記板状材料(M)は、(大型ブルドーザの足廻り部品の一つである大型)履板の材料となる圧延材料(いわゆる「バー材」M)であり、
前記圧延材料(いわゆる「バー材」M)を、履板(Wp)の横方向(Y方向:図10における左右方向)の所定寸法毎に切断する作業(全長切断)では、前記ガス溶断ユニット(2)により前記圧延材料を溶断し、
履板(Wp)におけるリンクベルトの干渉部を切り欠く加工(溝切断)の際に、前記プラズマ溶断ユニット(3)により前記圧延材料(W)を溶断するのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
上述する構成を具備する本発明によれば、プラズマトーチ(31)の位置(X方向位置、Z方向位置)及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する調節装置(例えば、多軸ロボット6)と、制御装置(10)を備え、計測装置(5)により検出された板状材料(W)における溶断するべき位置に応答して、調節装置(例えば、多軸ロボット6)により、プラズマトーチ(31)の位置(X方向位置、Z方向位置)及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する様に構成されているので、溶断の対象である板状材料(W)に、いわゆる「曲がり」や「反り」が存在する場合においても、プラズマトーチ(31)を溶断位置へ正確に位置させることが出来る。
そのため、作業者の作業スキルと無関係に、自動制御により、プラズマトーチ(31)による溶断を高精度で実行することが出来る。
【0020】
ここで、板状材料(W)とプラズマトーチ(31)の相対的な距離が一定ではないと、プラズマトーチ(31)におけるプラズマアーク放電にバラツキが発生し、溶断(切断)加工が不良になる恐れが存在する。
それに対して、本発明によれば、プラズマトーチ(31)の垂直方向位置(Z方向位置)を調節することが出来るので、溶断の対象である板状材料(W)とプラズマトーチ(31)の相対的な距離(間隔、クリアランス)を常に一定に維持することが可能である。そして、板状材料(W)とプラズマトーチ(31)の相対的な距離を一定に維持することが出来るため、プラズマトーチ(31)におけるプラズマアーク放電も一定となり、溶断作業が不良になってしまう恐れはない。
換言すれば、本発明によれば、プラズマアーク放電が安定した溶断が実行される。
【0021】
上述した様に、従来技術では、溶断開始点及び溶断終了点(終始端部)の裏面側(ガストーチの反対側)における金属溶融量が多くなり、溶断開始点及び溶断終了点における加工精度が低下するという問題も有している。
本発明においては、係る問題が発生する加工(例えば、履板における溝切断加工)においてはプラズマトーチ(31)を使用して溶断を行ない、且つ、プラズマトーチ(31)による溶断が板状材料(W)の溶断開始点近傍(例えば、溝切断開始点より10〜15mm離隔した範囲)及び溶断終了点近傍(例えば、溝切断終了点より10〜15mm離隔した範囲)で行なわれている場合には、プラズマトーチ(31)を垂直軸に対して傾斜させて、板状材料(W)の溶融量が減少する様に構成することが出来る。
本発明をその様に構成すれば、プラズマトーチ(31)を垂直軸に対して傾斜させて、板状材料(W)の溶融量が減少するので、溶断開始点及び溶断終了点において板状材料(W)の溶融量は増加せず、当該溶融量の増加に起因して加工精度が低下するという問題を解消することが出来る。
【0022】
そして本発明によれば、溶断加工を終了した板状材料(例えば、全長切断加工及び溝切断加工を行った後の履板W)に付着するノロ(溶融金属、いわゆる「溶け屑」)の量が減少する。そのため、ノロ取り作業に必要な労力を減少することが出来て、その分、作業効率が向上する。
また、本発明によれば、板状材料(W)を溶断する加工が自動制御により高精度で実行することが出来るので、作業者の作業スキルとは無関係に、高い作業効率が達成できる。そのため、従来技術における作業者毎に異なる調整作業が不必要となり、調整作業に要していた時間を節約することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態を適用した履板溶断ラインの概要を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の要部を示すブロック図である。
【図3】図2における制御系統を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態において大型履板を溶断する制御を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態の要部を示すブロック図である。
【図6】図5における制御系統を示すブロック図である。
【図7】本発明の第3実施形態の要部を示すブロック図である。
【図8】図7における制御系統を示すブロック図である。
【図9】大型履板製造ラインの概要を示すブロック図である。
【図10】大型履板において溶断するべき部分を示す平面図である。
【図11】図10の矢印Y方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1〜図4は、本発明の第1実施形態を示している。
図1において、第1実施形態を適用した履板溶断ラインは、図9と同様に、バー材Mをラインに搬入するバー材搬入装置1と、バー材Mを履板の横方向(Y方向:バー材の搬入方向;図10参照)寸法毎に切断する全長切断ユニット2と、履板のリンクベルトと干渉する部分を溶断して切除する(切り欠く)加工を行う溝切断ユニット(「板状材料の溶断システム」と記載する場合がある)3と、溶断された履板のノロ取りを行うノロ取りユニット4を備えている。
【0025】
バー材搬入装置1と、全長切断ユニット2と、溝切断ユニット3とは自動制御により必要な操作が行われているが、ノロ取りユニット4では、一人の作業員がマニュアル作業により、履板に付着した「ノロ」を除去している。
全長切断ユニット2では、ガストーチ21によりバー材Mを切断する。ここで、ガストーチ21を一対設け、バー材を同時に2箇所で切断することも可能である。
【0026】
図示の実施形態では、溶断の対象となる板状材料は、例えば大型ブルドーザの足廻り部品の一つである大型履板、或いはその材料であるバー材Mである。
換言すれば、導入コストが高額であり、多大な設置スペースを必要とする大型のプレス機械でなければプレス切断することができず、通常のプレス機械ではプレス切断することが出来ない様な板状材料を、図示の実施形態では溶断の対象としている。
【0027】
図9で示す従来技術では、全長切断ユニット(全長切断エリア)C1と、溝切断ユニット(溝切断エリア)C2は何れもガストーチにより、バー材Mの切断(溶断)を行なっていた。
それに対して、図1〜図4の第1実施形態では、溝切断ユニット3は1対のプラズマトーチ31で溶断する様に構成されている。一方、全長切断ユニット2は、図9で示すラインと同様に、ガストーチ21によりバー材Mを切断している。
【0028】
図1において、全長切断ユニット2の切断酸素量は、従来技術に比較して、40%〜50%増加しており、一方、ガストーチの切断火口の口径を、従来技術に比較して、15%〜25%減少している。
従来技術におけるガストーチの切断火口の口径を、例えばφ2.3mmとすると、図1の全長切断ユニット2におけるガストーチの切断火口の口径は、φ1.8mmであり、21.7%減少している。
【0029】
図1における溝切断ユニット3の詳細について、図2〜図4を参照して説明する。
図2において、溝切断ユニット3は、多軸ロボット6と、ワークWとの距離を計測する距離計測用センサ(以下、「センサ」と言う)5と、プラズマトーチ31と、制御手段であるコントロールユニット10とを備えている。センサ5とプラズマトーチ31は、何れも、多軸ロボット6のハンド先端に装着されている。
コントロールユニット10は、入力信号ラインLiによってセンサ5と接続されており、制御信号ラインLoによって多軸ロボット6の制御部6Cと、プラズマトーチ31(より詳細には、プラズマトーチ31の図示しない照射制御部)と接続されている。
図2において、符号RCは、ワーク搬送手段であるローラコンベアを示している。
【0030】
コントロールユニット10及び多軸ロボット6の制御部6Cが、図3で示されている。
図3において、コントロールユニット10は、短辺部X方向位置決定ブロック11と、X方向偏差決定ブロック12と、短辺部Z方向位置決定ブロック13と、Z方向偏差決定ブロック14と、相対位置決定ブロック15と、多軸ロボット位置制御ブロック16と、溶断開始信号発生ブロック17と、トーチ傾き決定ブロック18と、溶断終了信号発生ブロック19と、タイマ189とを有している。
多軸ロボット6の制御部6Cは、X方向トーチ位置調節ブロック6cxと、Z方向トーチ位置調節ブロック6czと、トーチ傾き調節ブロック6ccとを有している。
【0031】
図3において、センサ5によって検知したワークWの位置情報が短辺部X方向位置決定ブロック11と、短辺部Z方向位置決定ブロック13と、溶断開始信号発生ブロック17とに送信(入力)される。
短辺部X方向位置決定ブロック11は、入力した位置情報に基いて短辺部のX方向位置を決定し、決定した短辺部のX方向位置を、X方向偏差決定ブロック12に伝送する。X方向偏差決定ブロック12は、ブロック11で決定された短辺部のX方向位置が、X方向の基準値に対してどれだけ異なっているのか(X方向偏差)を決定する。
短辺部Z方向位置決定ブロック13は、入力した位置情報に基いて短辺部のZ方向位置を決定し、決定した短辺部のZ方向位置を、Z方向偏差決定ブロック14に伝送する。Z方向偏差決定ブロック14は、ブロック13で決定された短辺部のZ方向位置が、Z方向の基準値に対してどれだけ異なっているのか(Z方向偏差)を決定する。
【0032】
相対位置決定ブロック15は、X方向偏差決定ブロック12が決定したX方向偏差と、Z方向偏差決定ブロック14が決定したZ方向偏差から、ワーク(履板)Wの短辺部(図2のB部)とトーチ5との相対位置を求めて決定する。
多軸ロボット位置制御ブロック16は、相対位置決定ブロック15が決定したワークW(履板)の短辺部とトーチ5との相対位置について、X方向の位置情報に関しては、多軸ロボット6の制御部6CにおけるX方向トーチ位置調節ブロック6cxに送る。そして、Z方向の位置情報については、多軸ロボット6の制御部6CにおけるZ方向トーチ位置調節ブロック6czに送る。
【0033】
溶断開始信号ブロック17は、センサ5から得た情報に基いて、ワークWが溶断を開始する位置にきた旨の溶断開始信号を、トーチ傾き決定ブロック18と、溶断終了信号発生ブロック19と、タイマ189と、プラズマトーチ31とに送信する。
ここで、トーチ傾き決定ブロック18は、溶断の始点近傍と、終点近傍において、ワークWにおける金属溶融量を減少するためにトーチ31を傾ける機能を有している。
トーチ傾き決定ブロック18は、「溶断開始」の信号を受信してスタンバイ状態となる。タイマ189は、「溶断開始」の信号受信で計時を開示する。溶断終了信号発生ブロック19は、「溶断開始」の信号とタイマの計時信号により、溶断終了信号を発生するタイミングを判定する。
【0034】
多軸ロボット位置制御ブロック16は、図示しない記憶手段に切断(溶断)する溝形状と、溝形状に対応する多軸ロボットの動作が予め記憶されており、溶断開始信号を受信してからの経過時間(タイマ189で計測)をも参照して、トーチ31を傾けるタイミングや、溶断終了のタイミングを演算している。
トーチ傾き決定ブロック18は、溶断の始点近傍と、終点近傍において、ワークWにおける金属溶融量を減少するためにトーチを傾けるタイミングで、その旨を多軸ロボット6の制御部6Cにおけるトーチ傾き調節ブロック6ccに送信する。
溶断終了信号発生ブロック19は、溶断終了のタイミングになったら、プラズマトーチ31に対して、プラズマアーク放電停止信号を送る。
【0035】
次に、図4のフローチャートを参照して、プラズマトーチによる溝切断の制御について説明する。
図4のステップS1において、コントロールユニット10は、センサ5が作動するまで待機しており(ステップS10がNOのループ)、センサが作動したなら(ステップS1がYES)、ステップS2に進む。
【0036】
ステップS2では、位置決めが完了したか否か、すなわち、図2のワークWがライン上の所定の位置に達したか否かを判断する。
ワークWがライン上の所定の位置に達していないならば(ステップS2がNO)、ステップS1に戻り、再びステップS1以降を繰り返す。一方、ワークWがライン上の所定の位置に達したならば(ステップS2がYES)、ステップS3でローラコンベアRCを停止させる。
【0037】
次のステップS4では、センサ5によってワーク(履板)WのX方向、Z方向の位置を計測する。そしてステップS5に進み、ワーク(履板)Wの短辺部(図2の符号B)のX方向、Z方向の位置が検出されたか否かを判断する。
ワーク(履板)Wの短辺部の位置が検出されなければ(ステップS5がNO)、ステップS4に戻り、再びステップS4以降を繰り返す。
ワーク(履板)Wの短辺部の位置が検出されたならば(ステップS5がYES)、ステップS6に進み、多軸ロボット6を操作して、プラズマトーチ31のX方向、Z方向位置を適正位置に調節する。そして、更にトーチ31と履板(ワーク)Wとのクリアランスを調節する(ステップS7)。
ここで、ステップS6と、ステップS7とは処理順序が逆であっても良い。或いは、同時に処理しても良い。
【0038】
次のステップS8では、多軸ロボット6を操作してトーチの傾きを、垂直状態に対して所定の角度だけ内側に傾ける。
上述した様に、溶断開始直後(溝加工始点近傍の領域)では、ワークWの溶断箇所を過剰に溶かしてしまい(溶融金属量が過剰となり)、加工精度や形状を損なってしまう。そのような問題を避けるために、溶断開始直後及び溶断終了直前には、トーチ31をワークWに対して垂直状態から傾斜して、ワークWの金属溶融量が過剰となることを防止している。
換言すれば、溝加工始点近傍の領域におけるトーチ31の傾斜方向は、プラズマアーク放電によるワークWの金属溶融量が減少する方向である。同様に、後述する溝加工終点近傍の領域におけるトーチ31の傾斜方向も、プラズマアーク放電によるワークWの金属溶融量が減少する方向である。
【0039】
ステップS9では、コントロールユニット10は、トーチ31に制御信号を送ってトーチ31を傾けたまま、溝溶断(切断)を開始する。
ステップS10に進み、コントロールユニット10は、トーチ31が溝溶断開始点近傍よりも離隔した位置になるまで待機しており(ステップS10がNOのループ)、トーチ31が溝溶断開始点近傍よりも離隔した位置になったなら(ステップS10がYES)、トーチ31を垂直に起こした状態で溶断を続ける(ステップS11)。
ここで、「溝溶断開始点近傍」とは、例えば、溝溶断開始点から10〜15mmの領域を意味している。
【0040】
次いで、ステップS12では、コントロールユニット10は、トーチ31が溶断終了点近傍位置まで移動したか否かを判断する。
トーチ31が溶断終了点近傍位置に移動したなら(ステップS12がYES)、トーチ31を内側(プラズマアーク放電によるワークWの金属溶融量が減少する側)に傾けて、溶断終了点近傍の溶断加工を行う(ステップS13)。
ここで、「溶断終了点近傍」とは、溶断終了点から10〜15mm手前の領域を意味している。
【0041】
ステップS14では、コントロールユニット10は、溝溶断が終了したか否かを判断する。
溝溶断が終了したならば(ステップS14がYES)、トーチ31を垂直状態に戻し(トーチ姿勢の初期化)、ローラコンベアRCを作動させる(ステップS15)。
そしてステップS16では、コントロールユニット10は、ラインにおける溝溶断作業を終了するか否かを判断する。
溝溶断作業を終了するのであれば、そのまま制御を終える。
一方、別のワークWにおける溝溶断加工を行うのであれば、ステップS1以降の制御を繰り返す。
【0042】
図示の第1実施形態によれば、溶断(切断)加工は多軸ロボット6が全て自動で行うように構成されている。すなわち、センサ5により検出されたワークWにおける溶断するべき位置に応答して、多軸ロボット6により、プラズマトーチ31の位置(X方向位置、Z方向位置)及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する様に構成されているので、ワークWに、いわゆる「曲がり」や「反り」が存在する場合においても、プラズマトーチ31を正確に溶断するべき位置へ移動することが出来る。
【0043】
ここで、ワークWとプラズマトーチ31の相対的な距離が一定ではないと、プラズマトーチ31におけるプラズマアーク放電にバラツキが発生し、溶断(切断)加工が不良になる恐れがある。
それに対して、第1実施形態によれば、プラズマトーチ31の垂直方向位置(Z方向位置)を調節することが出来るので、ワークWとプラズマトーチ31の相対的な距離(間隔、クリアランス)を常に一定に維持することが可能である。そして、ワークWとプラズマトーチ31の相対的な距離を一定に維持することが出来るため、プラズマトーチ31におけるプラズマアーク放電も一定となり、溶断作業が不良になってしまう恐れはない。
【0044】
前述した様に、従来技術では、溶断開始点及び溶断終了点(終始端部)の裏面側(ガストーチの反対側)における金属溶融量が多くなり、溶断開始点及び溶断終了点における加工精度が低下するという問題も有している。
第1実施形態では、係る問題が発生する加工(例えば、履板における溝切断加工)においては、高精度の加工が可能なプラズマトーチ31を使用して溶断をおこなっている。そして、プラズマトーチ31がワークWの溶断開始点近傍(例えば、溝切断開始点より10〜15mm離隔した範囲)及び溶断終了点近傍(例えば、溝切断終了点より10〜15mm離隔した範囲)の領域に到達したならば、プラズマトーチ31を垂直軸に対して傾斜させて、ワークWの金属溶融量が減少する様にしている。その結果、溶断開始点及び溶断終了点においてワークWの溶融量は増加せず、当該溶融量の増加に起因する加工精度の低下という問題を解消することが出来る。
【0045】
また、第1実施形態によれば、溶断加工を終了した板状材料(例えば、全長切断加工及び溝切断加工を行った後の履板W)に付着するノロ(溶融金属、いわゆる「溶け屑」)の量も減少する。そのため、ノロ取り作業に必要な労力を減少することが出来て、その分、作業効率が向上する。
【0046】
このように、第1実施形態によれば、ワークWを溶断する加工が自動制御により高精度で実行することが出来るので、作業者の作業スキルとは無関係に、高い作業効率が達成できる。そのため、従来技術における作業者毎に異なる調整作業が不必要となり、調整作業に要していた時間を節約することが出来る。
発明者の実験によれば、従来2人の作業員を必要としたノロ取り作業は、第1実施形態を実行した場合には不要となった。すなわち、第1実施形態によれば、重労働であるノロ取り作業を作業員に行なわせる必要がなくなった。
【0047】
次に、図5、図6を参照して第2実施形態を説明する。
第2実施形態において、履板溶断ラインの全体構成と、溶断(切断)の制御については、第1実施形態の図1で示す構成及び図4で示す制御と共通している。
ここで、第1実施形態では、多軸ロボット6に設けた単一のセンサ5により、履板(ワーク)Wの短辺部のX方向位置、Z方向位置、溝溶断箇所と多軸ロボット6に設けたプラズマトーチ31との間隔(クリアランス)を検出して、制御している。
それに対して、第2実施形態では、図5において全体を符号3Aで示す溝切断ユニットは、多軸ロボット6側に設けたセンサ5と、溝切断ユニット3Aに固定されたセンサ(固定センサ)5Aを有しており、溝切断ユニット3Aに設けた固定センサ5Aにより履板の短辺部のX方向位置、Z方向位置を検出し、多軸ロボット6側のセンサ5により溝溶断箇所とプラズマトーチの間隔(クリアランス)を検出している。
【0048】
コントロールユニット10Aと多軸ロボット6の制御部6Cを示す図6において、コントロールユニット10Aは、短辺部X方向位置決定ブロック11と、X方向偏差決定ブロック12と、短辺部Z方向位置決定ブロック13と、Z方向偏差決定ブロック14と、クリアランス決定ブロック15Aと、多軸ロボット位置制御ブロック16と、溶断開始信号発生ブロック17と、トーチ傾き決定ブロック18と、溶断終了信号発生ブロック19と、タイマ189とを有している。
【0049】
多軸ロボット6の制御部6Cは、第1実施形態と同様に、X方向トーチ位置調節ブロック6cxと、Z方向トーチ位置調節ブロック6czと、トーチ傾き調節ブロック6ccとを有している。
【0050】
図6において、固定センサ5Aによって検知したワークWの位置情報が、短辺部X方向位置決定ブロック11と、短辺部Z方向位置決定ブロック13に入力される。
一方、多軸ロボット6側のセンサ5によって検知された履板の短辺部(B部)とトーチ31のクリアランス(間隔)に関する情報は、クリアランス決定ブロック15Aと、溶断開始信号発生ブロック17とに入力される。
クリアランス決定ブロック15Aでは、多軸ロボット6側のセンサ5から入力された情報(履板の短辺部とトーチ31のクリアランスに関する情報)によって、履板の短辺部(B部)とトーチ31とのクリアランスを決定する。
【0051】
短辺部X方向位置決定ブロック11は、固定センサ5Aから入力した位置情報に基いて短辺部のX方向位置を決定し、決定された短辺部のX方向位置を、X方向偏差決定ブロック12に伝送する。X方向偏差決定ブロック12は、決定された短辺部のX方向位置が、X方向の基準値とはどの程度異なっているか(X方向偏差)を求める。
短辺部Z方向位置決定ブロック13は、固定センサ5Aから入力した位置情報に基いて短辺部のZ方向位置を決定し、決定された短辺部のZ方向位置を、Z方向偏差決定ブロック14に伝送する。Z方向偏差決定ブロック14は、決定された短辺部のZ方向位置が、Z軸方向の基準値とはどの程度異なっているか(Z方向偏差)を求める。
【0052】
多軸ロボット位置制御ブロック16は、X方向偏差決定ブロック12が決定したX方向偏差と、Z方向偏差決定ブロック14が決定した偏差と、クリアランス決定ブロック15Aが決定した履板の短辺部(B部)とトーチ31とのクリアランスを、多軸ロボット6の制御部6CにおけるX方向トーチ位置調節ブロック6cxとZ方向トーチ位置調節ブロック6czに送る。
【0053】
溶断開始信号ブロック17は、多軸ロボット6側のセンサ5から得た情報によって、溶断を開始する位置であれば、「溶断開始」の信号をトーチ傾き決定ブロック18と、溶断終了信号発生ブロック19と、タイマ189と、プラズマトーチ31とに送信する。
トーチ傾き決定ブロック18、タイマ189、「溶断終了信号発生ブロック19については、第1実施形態において、図3で説明したのと同様である。
図5、図6の第2実施形態における上述した以外の構成及び作用効果は、図1〜図4の第1実施形態と同様である。
【0054】
次に、図7、図8を参照して第3実施形態を説明する。
第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、履板溶断ラインの全体構成と、溶断(切断)の制御については、図1で示す構成及び図4で示す制御と共通している。
【0055】
第3実施形態は、図7において全体を符号3Bで示す溝切断ユニットは、多軸ロボット6Aに、第1のセンサ51及び第2のセンサ52を設けている。
第1のセンサ51により履板(ワーク)Wの短辺部のX方向位置、Z方向位置を検出し、第2のセンサ52により溝溶断箇所とプラズマトーチの間隔(クリアランス)を検出している。
換言すれば、第3実施形態では、図7の溝切断ユニット3Bは、多軸ロボット6Aに第1のセンサ51及び第2のセンサ52が設けられている点を除くと、図2と同様な構成を具備している。
【0056】
そして、コントロールユニット10Aと多軸ロボット6の制御部6Cを示す図8においては、図6で示す固定センサ5Aに代えて、多軸ロボット6に設けた第1のセンサ51が設けられ、図6におけるロボット側センサ5に代えて、多軸ロボット6に設けた第2のセンサ52が設けられている点を除き、図6と同様である。
第3実施形態の上述した以外の構成及び作用効果は、第1実施形態及び第2実施形態と同様である。
【0057】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
例えば、図示の実施形態では、大型履板を溶断する場合についてのみ説明しているが、図示の実施形態によれば、厚さが均等ではなく、湾曲している板状材料を溶断するのにも適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1・・・バー材搬入装置
2・・・全長切断ユニット
3・・・溝切断ユニット
4・・・ノロ取りユニット
5・・・計測装置/センサ
6・・・多軸ロボット
10・・・制御装置/コントロールユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガストーチを備えたガス溶断ユニットと、プラズマトーチを備えたプラズマ溶断ユニットと、板状材料における溶断するべき位置を検出する計測装置と、プラズマトーチの位置及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する調節装置と、制御装置を備え、
当該制御装置は、計測装置により検出された板状材料における溶断するべき位置に応答して、調節装置に対して、プラズマトーチの位置及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する制御信号を発信する機能を有することを特徴とする板状材料の溶断システム。
【請求項2】
前記制御装置は、プラズマトーチによる溶断が板状材料の溶断開始点近傍及び溶断終了点近傍で行なわれている場合には、プラズマトーチを垂直軸に対して、プラズマトーチによる溶融量が減少する方向へ傾斜させる制御信号を発信する機能を有し、
プラズマトーチによる溶断が板状材料の溶断開始点近傍及び溶断終了点近傍以外で行なわれている場合には、プラズマトーチの方向を垂直にする制御信号を発信する機能を有している請求項1の板状材料の溶断システム。
【請求項3】
前記ガス溶断ユニットのガストーチに供給される切断酸素量が増加しており、ガストーチの切断火口の口径を減少している請求項1、2の何れかの板状材料の溶断システム。
【請求項4】
前記板状材料は、履板の材料となる圧延材料であり、
前記ガス溶断ユニットは、前記圧延材料を、履板の横方向の所定寸法毎に切断する作業で、前記圧延材料を溶断する機能を有しており、
前記プラズマ溶断ユニットは、履板におけるリンクベルトの干渉部を切り欠く加工の際に、前記圧延材料を溶断する機能を有している請求項1〜3の何れか1項の板状材料の溶断システム。
【請求項5】
ガストーチを備えたガス溶断ユニットにより板状材料を切断する工程と、
プラズマトーチを備えたプラズマ溶断ユニットにより板状材料の一部を切断する工程と、
板状材料における溶断するべき位置を計測装置により検出する工程と、
計測装置により検出された板状材料における溶断するべき位置に応答して、プラズマトーチの位置及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する工程を有することを特徴とする板状材料の溶断方法。
【請求項6】
プラズマトーチによる溶断が板状材料の溶断開始点近傍及び溶断終了点近傍で行なわれている場合に、プラズマトーチを垂直軸に対して、プラズマトーチによる溶融量が減少する方向へ傾斜させる工程と、
プラズマトーチによる溶断が板状材料の溶断開始点近傍及び溶断終了点近傍以外で行なわれている場合に、プラズマトーチの方向を垂直にする工程を有している請求項5の溶断方法。
【請求項7】
前記ガス溶断ユニットのガストーチの切断火口の口径は減少しており、
ガストーチに供給される切断酸素量を増加する工程を有している請求項5、6の何れかの溶断方法。
【請求項8】
前記板状材料は、履板の材料となる圧延材料であり、
前記圧延材料を、履板の横方向の所定寸法毎に切断する作業)では、前記ガス溶断ユニットにより前記圧延材料を溶断し、
履板におけるリンクベルトの干渉部を切り欠く加工の際に、前記プラズマ溶断ユニットにより前記圧延材料を溶断する請求項5〜7の何れか1項の溶断方法。
【請求項1】
ガストーチを備えたガス溶断ユニットと、プラズマトーチを備えたプラズマ溶断ユニットと、板状材料における溶断するべき位置を検出する計測装置と、プラズマトーチの位置及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する調節装置と、制御装置を備え、
当該制御装置は、計測装置により検出された板状材料における溶断するべき位置に応答して、調節装置に対して、プラズマトーチの位置及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する制御信号を発信する機能を有することを特徴とする板状材料の溶断システム。
【請求項2】
前記制御装置は、プラズマトーチによる溶断が板状材料の溶断開始点近傍及び溶断終了点近傍で行なわれている場合には、プラズマトーチを垂直軸に対して、プラズマトーチによる溶融量が減少する方向へ傾斜させる制御信号を発信する機能を有し、
プラズマトーチによる溶断が板状材料の溶断開始点近傍及び溶断終了点近傍以外で行なわれている場合には、プラズマトーチの方向を垂直にする制御信号を発信する機能を有している請求項1の板状材料の溶断システム。
【請求項3】
前記ガス溶断ユニットのガストーチに供給される切断酸素量が増加しており、ガストーチの切断火口の口径を減少している請求項1、2の何れかの板状材料の溶断システム。
【請求項4】
前記板状材料は、履板の材料となる圧延材料であり、
前記ガス溶断ユニットは、前記圧延材料を、履板の横方向の所定寸法毎に切断する作業で、前記圧延材料を溶断する機能を有しており、
前記プラズマ溶断ユニットは、履板におけるリンクベルトの干渉部を切り欠く加工の際に、前記圧延材料を溶断する機能を有している請求項1〜3の何れか1項の板状材料の溶断システム。
【請求項5】
ガストーチを備えたガス溶断ユニットにより板状材料を切断する工程と、
プラズマトーチを備えたプラズマ溶断ユニットにより板状材料の一部を切断する工程と、
板状材料における溶断するべき位置を計測装置により検出する工程と、
計測装置により検出された板状材料における溶断するべき位置に応答して、プラズマトーチの位置及び垂直軸に対する傾斜角度を調節する工程を有することを特徴とする板状材料の溶断方法。
【請求項6】
プラズマトーチによる溶断が板状材料の溶断開始点近傍及び溶断終了点近傍で行なわれている場合に、プラズマトーチを垂直軸に対して、プラズマトーチによる溶融量が減少する方向へ傾斜させる工程と、
プラズマトーチによる溶断が板状材料の溶断開始点近傍及び溶断終了点近傍以外で行なわれている場合に、プラズマトーチの方向を垂直にする工程を有している請求項5の溶断方法。
【請求項7】
前記ガス溶断ユニットのガストーチの切断火口の口径は減少しており、
ガストーチに供給される切断酸素量を増加する工程を有している請求項5、6の何れかの溶断方法。
【請求項8】
前記板状材料は、履板の材料となる圧延材料であり、
前記圧延材料を、履板の横方向の所定寸法毎に切断する作業)では、前記ガス溶断ユニットにより前記圧延材料を溶断し、
履板におけるリンクベルトの干渉部を切り欠く加工の際に、前記プラズマ溶断ユニットにより前記圧延材料を溶断する請求項5〜7の何れか1項の溶断方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−130960(P2012−130960A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286900(P2010−286900)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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