説明

板状部分の固定構造およびこの板状部分の固定構造を含む電気接続箱

【課題】容易に固定することができるとともに固定強度を高めることができる板状部分の固定構造およびこの固定構造を含む電気接続箱を提供すること。
【解決手段】板状部分の固定構造1であって、軸部31の一端部31aに設けられてなる頭部32と、軸部31の他端部31bの外周に沿って部分的に突設され、締結の回転方向Dに沿って漸次軸方向の厚みが増す端部側突出ネジ部40とを有してなる締結部材30を含み、第一導電部材10の第一部材貫通部12に軸部31が挿通され、かつ第一平面11aが第二平面21aに向かい合わせて配置され、第二導電部材20は、迫出し部22aが形成され、かつ端部側突出ネジ部40が挿通可能な挿通孔部22を有してなり、締結部材30は、挿通孔部22に挿通された状態で締結のために回転された場合、回転方向奥側部分41が迫出し部22aに当接されることによって、第一導電部材10と第二導電部材20とが締結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状部分を含む複数の部材の板状部分同士を固定させる板状部分の固定構造およびこの板状部分の固定構造を含む電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状部分を含む複数の部材の板状部分同士を固定させる場合、ボルト、ナット等の締結部材を用いて締結される。より具体的には、ボルトが各板状部分に形成されたボルト挿通孔に挿通されて各部材の板状部分が固定される。
このようにボルトを用いて板状部分を固定させる場合、ボルトによる締結作業は、ボルトがボルト挿通孔に対して斜め方向に挿通されることを防止するため、手作業で仮締めした後、インパクトレンチ等の工具を用いて本締めするようにしている。このため、ボルトによる締結作業は煩雑な作業を有するので、例えば、特許文献1には、ヒューズの端子および電線端末の端子の板状部分を電線接続箱の電線接続部の板状部分に容易に固定することができる電気接続箱用端子固定具が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載された電気接続箱用端子固定具は、軸部の一端に該軸部より大径の頭部が設けられ他端に螺旋溝と環状溝が設けられたボルトと、このボルトが挿通される挿通孔を有する前壁および挿通孔を挿通したボルトの軸部を弾性挟持すると共に、ボルトを所定角度まで回転させると螺旋溝、環状溝と係合する弾性挟持部を備えて端子接続部に固定されるボルト受け部材とからなり、螺旋溝、環状溝に弾性挟持部の爪部を係合させることでヒューズの端子と電線端末の端子をボルトの頭部と前壁との間で共締め固定するようになっている。この電気接続箱用端子固定具は、弾性挟持部が撓むことによってボルトが固定されるようになっている。すなわち、弾性挟持部材の弾性を利用することによってボルトが固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−85911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の電気接続箱用端子固定具は、弾性を利用して板状部分が固定されるようになっているので、固定強度を高めることが難しく、結果的に電気接続の接続安定性が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、容易に固定することができるとともに電気接続の接続安定性が低下することを防ぐことができる板状部分の固定構造およびこの固定構造を含む電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1にかかる板状部分の固定構造は、第一平面が形成される板状の第一板状部分を有してなる第一導電部材と、第二平面が形成される板状の第二板状部分を有してなる第二導電部材とが、前記第一平面と前記第二平面とを向かい合わせて締結される板状部分の固定構造であって、円柱状の軸部と、該軸部の径方向の幅が該軸部の径に比して大きく形成されるようにして前記軸部の一端部に設けられてなる頭部と、前記軸部の他端部の外周に沿って部分的に突設され、締結のための回転方向に沿って漸次軸方向の厚みが増すように形成されてなる端部側突出ネジ部と、を有してなる締結部材を含み、前記第一導電部材は、前記軸部が挿通可能に前記第一板状部分に形成されてなる第一部材貫通部を有してなり、前記頭部と前記端部側突出ネジ部との間で前記第一部材貫通部に前記軸部が挿通され、かつ前記第一平面が前記第二平面に向かい合わせて配置され、前記第二導電部材は、前記他端部の径方向の断面形状に沿った形状をなすことによって前記軸部に沿う部分が孔内内側に迫り出される迫出し部が形成され、かつ前記端部側突出ネジ部が前記第二平面の裏側に挿通可能な挿通孔部を有してなり、前記締結部材は、前記端部側突出ネジ部が前記第二平面の裏側に位置するように前記挿通孔部に挿通された状態で締結のために回転された場合、前記端部側突出ネジ部の回転方向奥側部分が前記迫出し部に当接されることによって、前記第一導電部材と前記第二導電部材とが締結されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2にかかる板状部分の固定構造は、上記の発明において、前記第一部材貫通部は、円形状の貫通孔あることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3にかかる板状部分の固定構造は、上記の発明において、前記締結部材は、前記端部側突出ネジ部が前記軸部に対して対称配置されるように対で設けられ、かつ前記軸部の他端部の外周に沿って、前記端部側突出ネジ部が設けられる領域と、前記端部側突出ネジ部が設けられない領域とが略等しい間隔で交互に形成されてなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4にかかる板状部分の固定構造は、上記の発明において、前記締結部材は、前記頭部の上部に起倒自在に軸止めされ、かつ倒れた状態で頭部の側方に突出される取手部を有してなり、前記第二導電部材は、前記第二平面上に突設され、前記取手部が締結完了位置で倒された場合、該取手部と当接されることによって、前記締結部材が前記軸部の軸を中心とする回転を規制する回転規制突起部を有してなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5にかかる板状部分の固定構造は、上記の発明において、前記締結部材は、前記頭部と前記端部側突出ネジ部との間に1以上のスプリングワッシャーが配置されてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項6にかかる板状部分の固定構造は、上記の発明において、前記締結部材は、前記頭部と前記端部側突出ネジ部との間に1以上の平板状の保持プレートが配置されてなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項7にかかる板状部分の固定構造は、上記の発明において、当該板状部分の固定構造は、前記軸部が挿通可能な第三部材貫通部が板状部分に形成されてなる一以上の第三導電部材をさらに有してなり、前記一以上の第三導電部材が、前記第三部材貫通部に前記軸部が挿通され、かつ前記第一導電部材と前記第二導電部材との間に配置されることによって、前記第一導電部材と前記第二導電部材とともに締結されることを特徴とする。
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項8にかかる電気接続箱は、複数の導電路に板状部分が形成され、各板状部分を介して各導電路が電気的に接続される電気接続箱において、上記の板状部分の固定構造を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1にかかる板状部分の固定構造は、前記端部側突出ネジ部が前記第二平面の裏側に位置するように前記挿通孔部に挿通された状態で回転されるだけで、前記第一導電部材と前記第二導電部材とを締結することができ、しかも弾性を利用せずに前記第一部導電材と前記第二導電部材とを固定させることができるので、容易に固定することができるとともに、電気接続の接続安定性が低下することを防ぐことができる。
【0016】
本発明の請求項2にかかる板状部分の固定構造は、前記第一部材貫通部が円形状の貫通孔あるので、前記軸部が挿通された場合、前記第一部材が前記軸部に対して偏った方向にずれ難くなり、結果的に組み付けが容易になる。
【0017】
本発明の請求項3にかかる板状部分の固定構造は、前記締結部材が、前記端部側突出ネジ部が前記軸部に対して対称配置されるように対で設けられ、かつ前記軸部の他端部の外周に沿って、前記端部側突出ネジ部が設けられる領域と、前記端部側突出ネジ部が設けられない領域とが略等しい間隔で交互に形成されてなるので、前記締結部材が前記軸部を中心として90度回転移動されることによって締結および締結解除することができる。しかも前記端部側突出ネジ部が前記軸部に対して対称配置されるように対で設けられているので、前記締結部材が回転される際、前記軸部が傾き難くなり、前記第一平面と、前記第二平面との平行状態を安定的に維持しながら前記第一部材と前記第二部材とを締結することができる。
【0018】
本発明の請求項4にかかる板状部分の固定構造は、前記締結部材の締結完了位置で前記取手部が倒され、前記回転規制突起部に当接されることによって前記締結部材が締結完了位置で回転されないようにすることができる。
【0019】
本発明の請求項5にかかる板状部分の固定構造は、前記スプリングワッシャーによって、前記第一板状部分および第二板状部分に締結力がバラツキを低減するように付加されるので前記第一平面と、前記第二平面との平行状態を安定的に維持しながら前記第一部材と前記第二部材とを締結することができる。
【0020】
本発明の請求項6にかかる板状部分の固定構造は、前記頭部と前記端部側突出ネジ部との間に前記保持プレートを配置することによって、締結力を容易に調整することができる。
【0021】
本発明の請求項7にかかる板状部分の固定構造は、前記一以上の第三導電部材が、前記第三部材貫通部に前記軸部が挿通され、かつ前記第一導電部材と前記第二導電部材との間に配置されることによって、前記第一導電部材と前記第二導電部材とともに締結されるので、板状部分を有する三以上の導電部材を共に締結することができる。
【0022】
本発明の請求項8にかかる電気接続箱は、上述した板状部分の固定構造が電線端子の固定構造に適用されることによって、上述した板状部分の固定構造と同様な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る板状部分の固定構造、およびこの板状部分の固定構造を含む電気接続箱の分解斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した板状部分の固定構造の拡大斜視図である。
【図3】図3は、図1に示した締結部材を前方から視た拡大斜視図である。
【図4】図4は、図1に示した締結部材を後方から視た拡大斜視図である。
【図5】図5は、図1に示したバスバーの挿通孔部周辺を示した図である。
【図6】図6は、図1に示した締結部材が締結方向に回転される前の状態を説明するための図である。
【図7】図7は、図1に示した締結部材が締結方向に回転されて締結完了された状態を説明するための図である。
【図8】図8は、板状部分の固定構造の組み付け手順を示した図である。
【図9】図9は、板状部分の固定構造の組み付け手順を示した図である。
【図10】図10は、板状部分の固定構造の組み付け手順を示した図である。
【図11】図11は、板状部分の固定構造の組み付け手順を示した図である。
【図12】図12は、変形例1の板状部分の固定構造、およびこの板状部分の固定構造を含む電気接続箱の分解斜視図である。
【図13】図13は、図12に示した締結部材を後方から視た拡大斜視図である。
【図14】図14は、図12に示した締結部材が締結方向に回転される前の状態を説明するための図である。
【図15】図15は、変形例2の電気接続箱の締結部材周辺の分解斜視図である。
【図16】図16は、図15に示した締結部材を前方から視た拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、この発明に係る板状部分の固定構造およびこの固定構造を含む電気接続箱の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0025】
図1は、本発明の実施例に係る板状部分の固定構造1、およびこの板状部分の固定構造1を含む電気接続箱100の分解斜視図である。図2は、図1に示した板状部分の固定構造1の拡大斜視図である。図3は、図1に示した締結部材30を前方から視た拡大斜視図である。図4は、図1に示した締結部材30を後方から視た拡大斜視図である。図5は、図1に示したバスバー20の挿通孔部22周辺を示した図である。図6は、図1に示した締結部材30が締結方向Dに回転される前の状態を説明するための図である。図7は、図1に示した締結部材30が締結方向Dに回転されて締結完了された状態を説明するための図である。
なお、図6および図7では、上段に示した図が、板状部分の固定構造1のうちヒューズ端子122よりも後方に位置される部分を示している。また、図6および図7では、下段に示した図が、上段の図の矢視図を示している。
なお、便宜上、図中に示した互いに直交する矢印の方向を前後左右上下方向とする。
【0026】
本発明の実施例に係る板状部分の固定構造1を含む電気接続箱100は、電線Wの端末部に接続される板状の電線端子10とヒューズ120の板状のヒューズ端子122と、板状のバスバーとが電気的に接続される、いわゆるヒューズボックスである。
この電気接続箱100は、電気接続箱100の外郭を形成する箱本体部101と、箱本体部110に取り付けされるカセットブロック110と、二つのヒューズ120と、板状部分の固定構造1とを有してなる。
【0027】
箱本体部101は、合成樹脂等の絶縁性樹脂材からなり、箱型をなしている。
カセットブロック110は、合成樹脂等の絶縁性樹脂材からなり、上部111に各ヒューズ120が挿入される挿入口112が設けられ、下部113に後述するヒューズ端子122が配置されるヒューズ端子配置部114が設けられている。
また、ヒューズ端子配置部114は、後述するバスバー20に電線端子10が取り付けできるようにするための開口である取付開口部114aが形成されている。
また、カセットブロック110の下端には、電線端子10に接続された電線Wが引き出されるための開口である電線引き出し口114bが形成されている。
【0028】
各ヒューズ120は、ヒューズ本体部121と、一対のヒューズ端子122とを有してなる。
ヒューズ本体部121は、一対のヒューズ端子122の間で各ヒューズ端子122に接続される不図示の可溶部が収容されている。
一対のヒューズ端子122の各ヒューズ端子122は、電線端子10の第一平面11aと接続されるヒューズ端子平面122aが形成されてなる板状の端子であり、後述する軸部31の他端部31bが挿通可能な貫通孔122bが形成されている。
【0029】
次に、板状部分の固定構造1について説明する。
板状部分の固定構造1は、第一平面11aが形成される板状の第一板状部分11を有してなる電線端子10と、第二平面21aが形成される板状の第二板状部分21を有してなるバスバー20とが、第一平面11aと第二平面21aとを向かい合わせて締結される固定構造である。
この実施例の板状部分の固定構造1は、第一導電部材としての電線端子10と、第二導電部材としてのバスバー20との間に第三導電部材としての板状のヒューズ端子122が配置される。このため、電線端子10とバスバー20とともにヒューズ端子122が締結されるようになっている。
【0030】
バスバー20は、各ヒューズ端子120と電線端子10とともに電気的に接続され、電気接続箱100内の各電気部品と電気的に接続される板状の導電路であり、箱本体部110内に設けられている。
【0031】
また、板状部分の固定構造1は、締結部材30を含んでいる。
締結部材30は、電線端子10とバスバー20と、さらにはヒューズ端子122を締結するものである。
この締結部材30は、円柱状の軸部31と、軸部31の一端部31aに設けられてなる頭部32と、軸部31の他端部31bに形成されてなる端部側突出ネジ部40と、締結部材30を締結のための回転方向D(以下、締結方向という。)および締結解除方向に回転させる際の取手部分となる取手部50とを有してなる。
【0032】
頭部32は、軸部31の径方向の幅が軸部31の径に比して大きく形成されてなる。より具体的には、頭部32は軸部31に比して径が大きい円柱状をなしている。このような頭部32の下面32bは、電線端子10が当接されるようになっている。
なお、頭部32は、円柱状をなすものを例示したが、これに限らない。すなわち、頭部32は、下面32bが電線端子10に当接されるように、軸部31の径方向の幅が軸部31の径に比して大きく形成されてなれば、その他の形状であってもよい。例えば、角柱形状であってもよい。
【0033】
端部側突出ネジ部40は、軸部31の他端部31b(以下、ネジ部側端部という。)の外周に沿って部分的に突設され、締結方向Dに沿って漸次軸方向の厚みが増すように形成されてなる。この端部側突出ネジ部40は、より具体的には、軸部31に対して対称配置されるように対で設けられ、かつネジ部側端部31bの外周に沿って、端部側突出ネジ部40が設けられる領域と、端部側突出ネジ部40が設けられない領域とが略等しい間隔で交互に形成されてなる。
【0034】
取手部50は、略U字形状の板状部材であり、その両端部50aが頭部32の側部32cで軸支されるようになっている。このような取手部50は、頭部31の上面32aに起倒自在に軸支され、かつ倒れた状態で頭部32の側方に突出されるようになっている。
このため、取手部50は、倒されることによって、後述する一対の係止突起部23に当接される。この取手部50が一対の係止突起部23に当接された場合、頭部32が軸部31を中心として回転不可能に固定されるようになっている。
【0035】
ここで、電線端子10についてより詳細に説明する。
電線端子10は、軸部31が挿通可能に第一板状部分11に形成されてなる第一部材貫通部としての円形状の貫通孔である電線端子貫通部12を有してなる。この電線端子10は、頭部32と端部側突出ネジ部40との間で電線端子貫通部12に軸部31が挿通され、かつ第一平面11aが第二平面21aに向かい合わせて配置される。
なお、電線端子貫通部12は、円形状の貫通孔に限らず、軸部31が挿通されるようになっていればその他の形状であっても構わない。
【0036】
次に、バスバー20についてより詳細に説明する。
バスバー20は、ネジ部側端部31bの径方向の断面形状に沿った形状をなすことによって軸部31に沿う部分が孔内内側に迫り出される迫出し部22aが形成され、かつ端部側突出ネジ部40が第二平面21aの裏側に挿通可能な挿通孔部22を有してなる。この挿通孔部22は、より具体的には、迫出し部22aが、軸部31に対して対称配置されるように対で設けられてなる。
【0037】
また、バスバー20は、第二平面21a上に突設され、取手部50が締結完了位置で倒された場合、取手部50と当接されることによって、締結部材30が軸部31の軸を中心とする回転を規制する回転規制突起部を有してなる。
この回転規制突起部23は、一対の係止突起部23aを有してなる。この一対の係止突起部23aは、挿通孔部22を間にして向かい合うようにして、かつヒューズ端子122が取付けされる際、ヒューズ端子122に干渉しないように第二の平面21a上に突設され、図2に示すように、取手部50が締結完了位置で倒された場合、取手部50の両側部に当接されるようになっている。
このような回転規制突起部23によって、締結部材30が軸部31の軸を中心として回転されないようになるとともに、取手部50が倒れた状態で保持されるようになっている。
なお、回転規制突起部23は、挿通孔部22を間にして向かい合うようにして突設された一対の係止突起部23aを有してなるものを例示したが、締結部材30の回転を規制することができれば、設置場所、および設置数はこれに限らない。
【0038】
このような、板状部分の固定構造1は、端部側突出ネジ部40が第二平面21aの裏側に位置するように挿通孔部22に挿通された状態で締結部材30が締結のために回転された場合、各端部側突出ネジ部40の回転方向奥側部分41が迫出し部22aに当接されることによって、電線端子10と、バスバー20と、ヒューズ端子122とが締結される。
【0039】
なお、本発明の実施例では、電気接続箱100に二つのヒューズ120が収容されるものを例示したが、これに限らず、1以上のヒューズ120が収容されるものであればよい。
【0040】
ここで、図8−図11を用いて、板状部分の固定構造1の組み付け手順について説明する。図8−図11は、板状部分の固定構造1の組み付け手順を示した図である。
まず、作業者は、ヒューズ120をカセットブロック110にセットする(図8(a)参照)。これにより、各ヒューズ端子122が、バスバー20の第二平面21a上に配置される。より具体的には、バスバー20の挿通孔部22と、ヒューズ端子122の貫通孔122bとがネジ部側端部31bを挿通可能に並ぶように配置される。
【0041】
その後、作業者は、電線端子10をヒューズ端子122とバスバー20との固定位置に配置する(図8(b)参照)。より具体的には、電線端子10の電線端子貫通部12と、ヒューズ端子122の貫通孔122bとがネジ部側端部31bを挿通可能に並ぶように配置する。
これにより、ネジ部側端部31bが挿通できるように電線端子10と、ヒューズ端子122と、バスバー20とが並んで配置される。
また、電線端子10は、第一平面11aがバスバー20の第二平面21aに向かい合わせて配置されることによって、第一平面11aと、ヒューズ端子平面122aとが向かい合わせて配置される。
なお、電線端子10をヒューズ端子122とバスバー20との固定位置に配置する際、ネジ部側端部31bを電線端子10の電線端子貫通部12に挿通させた状態で、位置合わせを行うようにしても構わない。
【0042】
その後、作業者は、締結部材30の端部側突出ネジ部40を電線端子貫通部12、貫通孔122b、挿通孔部22に挿通する。(図9(a),(b)参照)。これにより、端部側突出ネジ部40が第二平面21aの裏側に位置される。この状態において、電線端子10は、頭部32と端部側突出ネジ部40との間で電線端子貫通部12に軸部32が挿通され、かつ第一平面11aが端部側突出ネジ部40側に向けられて配置される。
【0043】
その後、作業者は、取手部50を摘まんで締結部材30を締結方向Dに所定角度回転させる。(図10(a),(b)参照)。これによって、図6および図7に示すように、各端部側突出ネジ部40が、各迫出し部22aに、軸方向の厚みが薄い部分から摺接開始され(図6参照)、回転にともなって、各迫出し部22aが各端部突出ネジ部40の厚みが厚い部分に当接される(図7参照)。すなわち、締結部材30が締結方向Dに回転されることによって、電線端子10とバスバー20とが締結されるようになっている。これにより電線端子10と、バスバー20と、ヒューズ端子122とが締結されるので、ヒューズ端子122と、電線端子10と、バスバー20とが接続固定される。
また、端部側突出ネジ部40が軸部31に対して対称配置されるように対で設けられ、かつネジ部側端部31bの外周に沿って端部側突出ネジ部40が設けられる領域と、軸部が外周を形成する領域とが略等しい間隔で交互に形成されてなるので、図7に示すように、端部側突出ネジ部40を挿通孔部22に挿通した後、締結方向Dにほぼ90度回転させることによって、最も強く締結されるようになっている。また、端部側突出ネジ部40が軸部31に対して対称配置されるように対で設けられているので、締結部材30を回転させる際、軸部31が傾き難いようになっている。
【0044】
その後、作業者は、取手部50を倒すことによって取手部50を一対の突出係止部23に当接させる。(図11参照)。これによって、締結部材30が締結完了位置から回転されないように固定される。
なお、締結状態を解除させる場合、締結方向Dとは逆方向に90度回転させることによって固定状態が解除される。
【0045】
本発明の実施例に係る板状部分の固定構造1は、端部側突出ネジ部40が第二平面21aの裏側に位置するように挿通孔部22に挿通された状態で回転されるだけで、電線端子10と、バスバー20と、ヒューズ端子122とを締結することができ、しかも弾性を利用せずに電線端子10と、バスバー20と、ヒューズ端子122とを固定させることができるので、容易に固定することができるとともに、電気接続の接続安定性が低下することを防ぐことができる。
【0046】
また、本発明の実施例に係る板状部分の固定構造1は、電線端子貫通部12が円形状の貫通孔あるので、軸部31が挿通された場合、電線端子10が軸部31に対して偏った方向にずれ難くなり、結果的に組み付けが容易になる。
【0047】
また、本発明の実施例に係る板状部分の固定構造1は、締結部材30が軸部31を中心として90度回転移動されることによって締結および締結解除することができる。しかも端部側突出ネジ部40が軸部31に対して対称配置されるように対で設けられているので、締結部材30が回転される際、軸部31が傾き難くなり、第一平面11aと、第二平面21aとの平行状態を安定的に維持しながら電線端子10と、バスバー20と、ヒューズ端子122とを締結することができる。
【0048】
また、本発明の実施例に係る板状部分の固定構造1は、締結部材30の締結完了位置で取手部50が倒され、一対の係止突起部23に当接されることによって締結部材30が締結完了位置で回転されないようにすることができる。
【0049】
また、本発明の実施例に係る板状部分の固定構造1は、ヒューズ端子122が電線端子10とバスバー20との間に配置されることによって電線端子10とバスバー20とともに締結されるので、板状部分を有する三つの導電部材を共に締結することができる。
【0050】
また、本発明の実施例に係る電気接続箱100は、板状部分の固定構造1が電線端子10の固定構造に適用されることによって、板状部分の固定構造1と同様な効果を奏することができる。
【0051】
(変形例1)
次に、図12−図14を用いて本発明の実施例に係る電気接続箱100の変形例1について説明する。図12は、変形例1の板状部分の固定構造2、およびこの板状部分の固定構造2を含む電気接続箱200の分解斜視図である。図13は、図12に示した締結部材60を後方から視た拡大斜視図である。図14は、図12に示した締結部材60が締結方向に回転される前の状態を説明するための図である。
なお、図14では、板状部分の固定構造2のうちヒューズ端子よりも後方に位置される部分を示している。
【0052】
この変形例1の電気接続箱200は、板状部分の固定構造2が、締結部材30に代わって締結部材60を有し、バスバー20に代わってバスバー70を有してなる点で実施例の板状部分の固定構造1と異なる。
なお、その他の構成は実施例と同様であり、実施例と同一構成部分には同一符号を付している。
【0053】
締結部材60は、図13に示すように、端部側突出ネジ部61がネジ部側端部31bの外周に沿って外周のほぼ半周分の領域に突設されている。より具体的には、ネジ部側端部31bの外周に沿った領域が、端部側突出ネジ部61が設けられる領域と、端部側突出ネジ部61が設けられない領域とで2分されるとうになっている。
【0054】
バスバー70は、図14に示すように、挿通孔部71がネジ部側端部31bの径方向の断面形状に沿った形状をなすため、挿通孔部71の縁面71bのほぼ半周分を形成するように孔内内側に迫り出される迫出し部71aが形成されている。
【0055】
この変形例1の板状部分の固定構造2は、実施例の板状部分の固定構造1と同様に、端部側突出ネジ部61が第二平面21aの裏側に位置するように挿通孔部71に挿通された状態で回転されただけで、電線端子10と、バスバー70と、ヒューズ端子122とを締結することができ、しかも弾性を利用せずに電線端子10と、バスバー70と、ヒューズ端子122とを固定させることができるので、容易に固定することができるとともに、電気接続の接続安定性が低下することを防ぐことができる。
【0056】
(変形例2)
次に、図15および図16を用いて本発明の実施例に係る電気接続箱100の変形例2について説明する。図15は、変形例2の電気接続箱300の締結部材80周辺の分解斜視図である。図16は、図15に示した締結部材80を前方から視た拡大斜視図である。
【0057】
この変形例2の電気接続箱200は、板状部分の固定構造3が、締結部材30に代わって、締結部材80を有してなる点で、実施例の板状部分の固定構造1と異なる。
なお、その他の構成は実施例と同様であり、実施例と同一構成部分には同一符号を付している。
【0058】
締結部材80は、頭部32と端部側突出ネジ部40との間に1枚のスプリングワッシャー81および1枚の平板状の保持プレート82が設けられている。このため、電線端子10と頭部32との間にスプリングワッシャー81および平板状の保持プレート82が配置できるようになっている。
【0059】
この変形例2の板状部分の固定構造3は、スプリングワッシャー81によって、第一板状部分11および第二板状部分21に対して締結力がバラツキを低減するように付加されるので第一平面11aと、第二平面21aとの平行状態を安定的に維持しながら電線端子10、バスバー20、およびヒューズ端子122を締結することができる。
また、保持プレート82によって、頭部32の下面32bから端部側突出ネジ部40までの間隔が調整され、結果的に締結力を調整することができる。
なお、この変形例2の板状部分の固定構造3は、1枚のスプリングワッシャー81および1枚の平板状の保持プレート82が設けられるものを例示したが、スプリングワッシャー81および保持プレート82の数はこれに限らず、適宜設定するようにすればよい。
【0060】
なお、本発明の実施例に係る板状部分の固定構造1,2,3は、取手部50が一対の突出当接部23に当接されることによって締結完了位置から締結部材30,60,80が回転されないようするものを例示したが、これに限らない。すなわち、締結部材30,60,80が締結完了位置で回転され難いようになっていれば取手部50を有しない構成であっても構わない。例えば、端部側突出ネジ部40の軸方向の最大厚みを調整し、締結力を高めることによって締結完了位置から締結部材30,60,80が回転され難いようにしてもよい。
【0061】
また、本発明の実施例に係る板状部分の固定構造1,2,3は、締結部材30,60,80が金属材からなるものを例示したが、これに限らず、合成樹脂等であってもよい。
【0062】
また、本発明の実施例に係る板状部分の固定構造1,2,3は、電線端子貫通部12が円形状の貫通孔あるものを例示したが、軸部31が挿通されるようになっていれば、第一板状部分11の端部11bから内部に向けて切り込まれてなる切り欠き形状であっても構わない。
【0063】
また、本発明の実施例に係る板状部分の固定構造1,2,3は、第一導電部材が電線端子10であり、第二導電部材がバスバー20であり、第三導電部材がヒューズ端子122であるものを例示したが、これに限らず、板状部分を有してなる導電部材であれば、その他の端子等を用いても構わない。例えば、第二電導部材がヒューズ端子122であっても構わない。
【0064】
また、本発明の実施例に係る板状部分の固定構造1,2,3は、板状部分を有してなる三つの導電部材が締結されるものを例示したが、これに限らず、少なくとも第一導電部材と、第二導電部材とが締結できればよい。また、第一導電部材と第二導電部材との間に配置される第三導電部材は、1つに限らず複数配置されても構わない。すなわち、板状部分を有する三以上の導電部材が共に締結されるようにしても構わない。
【0065】
以上、本発明者によってなされた発明を、上述した発明の実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0066】
1、2、3 板状部分の固定構造
10 電線端子
11 第一板状部分
11a 第一平面
12 電線端子貫通部
20、70 バスバー
21 第二板状部分
21a 第二平面
22、71 挿通孔部
22a、71a 迫出し部
23 回転規制突起部
23a 係止突起部
30、60、80 締結部材
31 軸部
31a 一端部
31b 他端部
32 頭部
32a 上面
32b 下面
40、61 端部側突出ネジ部
41 回転方向奥側部分
50 取手部
71b 縁面
81 スプリングワッシャー
82 保持プレート
100、200、300 電気接続箱
101 箱本体部
110 カセットブロック
111 上部
112 挿入口
113 下部
114 ヒューズ端子配置部
114a 取付開口部
114b 電線引き出し口
120 ヒューズ
121 ヒューズ本体部
122 ヒューズ端子
122a 平面
122b 貫通孔
W 電線
D 締結のための回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一平面が形成される板状の第一板状部分を有してなる第一導電部材と、第二平面が形成される板状の第二板状部分を有してなる第二導電部材とが、前記第一平面と前記第二平面とを向かい合わせて締結される板状部分の固定構造であって、
円柱状の軸部と、該軸部の径方向の幅が該軸部の径に比して大きく形成されるようにして前記軸部の一端部に設けられてなる頭部と、
前記軸部の他端部の外周に沿って部分的に突設され、締結のための回転方向に沿って漸次軸方向の厚みが増すように形成されてなる端部側突出ネジ部と、
を有してなる締結部材を含み、
前記第一導電部材は、
前記軸部が挿通可能に前記第一板状部分に形成されてなる第一部材貫通部を有してなり、前記頭部と前記端部側突出ネジ部との間で前記第一部材貫通部に前記軸部が挿通され、かつ前記第一平面が前記第二平面に向かい合わせて配置され、
前記第二導電部材は、
前記他端部の径方向の断面形状に沿った形状をなすことによって前記軸部に沿う部分が孔内内側に迫り出される迫出し部が形成され、かつ前記端部側突出ネジ部が前記第二平面の裏側に挿通可能な挿通孔部を有してなり、
前記締結部材は、
前記端部側突出ネジ部が前記第二平面の裏側に位置するように前記挿通孔部に挿通された状態で締結のために回転された場合、前記端部側突出ネジ部の回転方向奥側部分が前記迫出し部に当接されることによって、前記第一導電部材と前記第二導電部材とが締結されることを特徴とする板状部分の固定構造。
【請求項2】
前記第一部材貫通部は、
円形状の貫通孔あることを特徴とする請求項1に記載の板状部分の固定構造。
【請求項3】
前記締結部材は、
前記端部側突出ネジ部が前記軸部に対して対称配置されるように対で設けられ、かつ前記軸部の他端部の外周に沿って、前記端部側突出ネジ部が設けられる領域と、前記端部側突出ネジ部が設けられない領域とが略等しい間隔で交互に形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の板状部分の固定構造。
【請求項4】
前記締結部材は、
前記頭部の上部に起倒自在に軸止めされ、かつ倒れた状態で頭部の側方に突出される取手部を有してなり、
前記第二導電部材は、
前記第二平面上に突設され、前記取手部が締結完了位置で倒された場合、該取手部と当接されることによって、前記締結部材が前記軸部の軸を中心とする回転を規制する回転規制突起部を有してなることを特徴とする請求項1、2、または3に記載の板状部分の固定構造。
【請求項5】
前記締結部材は、
前記頭部と前記端部側突出ネジ部との間に1以上のスプリングワッシャーが配置されてなることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の板状部分の固定構造。
【請求項6】
前記締結部材は、
前記頭部と前記端部側突出ネジ部との間に1以上の平板状の保持プレートが配置されてなることを特徴とする1、2、3、4、または5に記載の板状部分の固定構造。
【請求項7】
当該板状部分の固定構造は、
前記軸部が挿通可能な第三部材貫通部が板状部分に形成されてなる一以上の第三導電部材をさらに有してなり、
前記一以上の第三導電部材が、
前記第三部材貫通部に前記軸部が挿通され、かつ前記第一導電部材と前記第二導電部材との間に配置されることによって、前記第一導電部材と前記第二導電部材とともに締結されることを特徴とする1、2、3、4、5または6に記載の板状部分の固定構造。
【請求項8】
複数の導電路に板状部分が形成され、各板状部分を介して各導電路が電気的に接続される電気接続箱において、
請求項1、2、3、4、5、6または7に記載の板状部分の固定構造を含むことを特徴とする電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−105670(P2013−105670A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249957(P2011−249957)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(501321084)株式会社タンゲ製作所 (5)
【出願人】(000252296)和光株式会社 (1)
【Fターム(参考)】