説明

板紙の製造方法

【課題】抄紙系でのスケールトラブル及びピッチトラブルを回避しながら、撥水加工適性を備え、かつ、優れた層間強度を有する板紙の製造方法を提供する。
【解決手段】(1)表層はサイズ剤の存在下にpH4以上6.5未満で抄紙を行い、(2)その他のいずれかの層は1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマー、又は1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーとサイズ剤との存在下に、pH6.5〜8.5で抄紙することを特徴とする抄き合わせ板紙の製造方法。
【効果】抄紙系でのスケールトラブル及びピッチトラブルを回避しながら、優れた層間強度と撥水加工適性を有する板紙を製造することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板紙の製造方法に関し、さらに詳しくは、抄紙系でのスケールトラブル及びピッチトラブルを回避しながら、撥水加工適性を備え、かつ優れた層間強度を有する板紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に古紙から板紙を抄造する場合、硫酸バンドにより抄紙pHを酸性にして製造していた。これは一般的に用いられているロジン系サイズ剤の効果を効率良く得る為である。
【0003】
しかしながら、近年環境問題から抄紙系はクローズド化が進み、硫酸バンドに由来する硫酸イオンの蓄積によるマシンの腐食が問題となった。また、古紙中の炭酸カルシウム含有量が近年増えており、抄紙系のpHが下がり難くそのため硫酸バンドの使用量が増大している。このクローズド化による硫酸イオンの増加と炭酸カルシウム含有量の増加により、硫酸バンドと炭酸カルシウムとの反応物である硫酸カルシウム(石膏)が系内で増加し、これが抄紙工程で析出する事によるスケールトラブルが多発している。
【0004】
さらに最近、抄紙工程において合成系のピッチによるトラブルが増加している。合成系のピッチは古紙から持ちこまれるインキビヒクル、コート紙用のバインダーに用いられるラテックス類、ガムテープやラベルに用いられる粘着物質、書籍・雑誌類の背糊として使用されるホットメルト接着剤などに由来する物質である。ピッチは抄紙装置内部や用具類に付着して搾水不良や断紙などを引き起こし、紙の生産性を低下させる。また、集塊化したピッチは、紙面上にピンホールやピッキングなどを生じさせるだけでなく、塗工時や印刷時におけるトラブルを招き、紙の品質が著しく損なわれる原因となる。
【0005】
現在、板紙の製造において一般的な抄紙pHは5〜6.5である。これは上記の問題を回避する為に従来の酸性抄紙から硫酸バンドの添加量を減らした為であり、また炭酸カルシウムの含有量が増加したため抄紙pHが上がってきた為でもある。
【0006】
サイズ剤は高pH抄紙対応のロジン系サイズ剤が多用されているが効果は充分でなく、古紙中の炭酸カルシウムの含有量が変動するため抄紙pHが変動し、サイズ性が安定しないと言う問題を抱えている。また、クローズド化の進行により硫酸バンドと炭酸カルシウムに由来するカルシウムイオン及び硫酸イオンが系内に蓄積され、これに伴いロジン系サイズ剤の定着率が落ちてきており、未定着のロジン系サイズ剤が原因となる抄紙系の発泡トラブルも問題となっている。このカルシウムイオンの蓄積は、アクリルアミド系紙力増強剤の効果も落とす原因となっている。
【0007】
前記した問題を回避するために炭酸カルシウムを含有するパルプスラリーに特定のロジン系エマルションサイズ剤と硫酸バンド及びキレート剤の存在下にpH6〜8の中性条件で抄紙し乾燥する方法(例えば、特許文献1参照)、カルシウムイオンを含有するパルプスラリーから紙力強度に優れた板紙を製造する際に使用する紙力増強剤として、N置換基にイオン性を示す原子団を含まず、かつN置換基中に4〜20個の炭素原子を有するN置換(メタ)アクリルアミドを特定量で含有するイオン性の(メタ)アクリルアミド系共重合体(例えば、特許文献2参照)、特定のリン酸基を含有する(メタ)アクリルアミド系重合体(例えば、特許文献3参照)、古紙パルプを含むパルプスラリーに、水溶性リグニンと、紙力増強剤として特定の(メタ)アクリルアミド系共重合体を添加する技術(例えば、特許文献4参照)等が提案されているが、未だその効果は十分でなかった。
【特許文献1】特開2004−190149号公報
【特許文献2】特開平9−209293号公報
【特許文献3】特開平9−324391号公報
【特許文献4】特開2002−194694号公報
【0008】
冷食用段ボールや、野菜用段ボール等に使用される外装用ライナー(以下ライナーと略すことがある)は、クラフトパルプ、及びクラフトパルプ系古紙を原料とする紙にワックス系エマルションからなる撥水剤を塗工することによって撥水効果を付与し、耐水強度を向上させてきた。しかし、段ボール原紙の古紙原料の増加により、単に撥水剤を塗工しただけでは十分な撥水効果が得られなくなって来ている。
【0009】
また、従来、板紙の抄紙工程において、紙の品質向上を図るために種々の抄紙方法が検討、採用されており、アクリルアミド系共重合紙力剤のような内添紙力剤による紙の改質が提案されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、これらアクリルアミド系共重合紙力剤は、古紙に含まれるアニオン性物質や懸濁コロイド物質などの影響を受けやすく、これらの量が多くなると性能を発揮できなくなるという欠点があった。
【特許文献5】特開2005−273790号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、抄紙系でのスケールトラブル及びピッチトラブルを回避しながら、撥水加工適性を備え、かつ、優れた層間強度を有する板紙の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)(A)表層はサイズ剤の存在下にpH4以上6.5未満で抄紙を行い、
(B)その他のいずれかの層は1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマー、又は1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーとサイズ剤の存在下に、pH6.5〜8.5で抄紙する
ことを特徴とする抄き合わせ板紙の製造方法、
(2)(C)表層はサイズ剤の存在下にpH4以上6.5未満で抄紙を行い、
(D)その他のいずれかの層は1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーと凝結剤、又は1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーと凝結剤とサイズ剤の存在下に、pH6.5〜8.5で抄紙する
ことを特徴とする抄き合わせ板紙の製造方法、
(3)その他のいずれかの層に用いるサイズ剤がロジン系サイズ剤、置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤、及び2−オキセタノン系サイズ剤から選ばれる少なくとも1種である前記(1)又は(2)の板紙の製造方法、
(4)1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーが、ホフマン分解反応によるカチオン変性(メタ)アクリルアミド系重合体である前記(1)〜3のいずれかの板紙の製造方法、
(5)1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーがジアリルアミン化合物と(メタ)アクリルアミドとの共重合体である前記(1)〜(3)のいずれかの板紙の製造方法、
(6)パルプスラリーの固形分に対してアルミニウム化合物を
(E)表層に0.1〜10重量%用い、かつ
(F)その他の層に用いない若しくは1重量%以下用いる
ことを特徴とする前記(1)〜(5)の板紙の製造方法、
(7)板紙が撥水ライナー原紙である前記(1)〜(6)の板紙の製造方法、
を提供することにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法により抄紙系でのスケールトラブル及びピッチトラブルを回避しながら、優れた層間強度と撥水加工適性を有する板紙を製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<板紙>
本発明の板紙としては、少なくとも表層とその他の層の2層以上を有する抄き合わせ紙であればよく、板紙の種類としては、ライナー原紙、中芯原紙、紙管原紙、石膏ボード原紙、コート白板、ノーコート白板、チップボール等を挙げることができる。この中でもライナー原紙が好ましく、特に撥水ライナー原紙であることが好ましい。
【0014】
本発明の板紙の製造方法は、
表層は、パルプスラリーに、サイズ剤の存在下で、かつpH4以上6.5未満、で抄紙することを必須とするものであり、pH4以上6未満で抄紙することが好ましい。また、その他のいずれかの層は、パルプスラリーに、1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーの存在下で、かつpH6.5〜8.5で抄紙することを必須とするものである。
【0015】
<パルプスラリー>
パルプスラリーとしては、パルプ原料をスラリー化したものである。パルプ原料として、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプなどの晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプなどの晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙などの古紙パルプのいずれも使用することができる。また、前記パルプ原料としては、前記パルプ原料と、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等との混合物も使用することができる。
【0016】
<サイズ剤>
本発明に用いるサイズ剤としては、サイズ効果を奏するものであればよく、具体的には、ロジン系サイズ剤、置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤、2−オキセタノン系サイズ剤、カチオン性合成サイズ剤等が挙げられ、これらを単独又は2種以上で用いることができる。これらの中で、ロジン系サイズ剤、置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤、2−オキセタノン系サイズ剤を用いることが好ましい。特に置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤が好ましい。
【0017】
上記置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤はサイズ剤としての有効成分のうち置換環状ジカルボン酸無水物を主成分とするサイズ剤のことであり、置換環状ジカルボン酸無水物は、
一般式(1)

(但し、式(1)中、Rは炭素数5以上のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、またはアラルケニル基、nは2〜3の整数を表わす。)
の基本構造を有する置換環状ジカルボン酸無水物である。また、本発明においては、前記置換環状ジカルボン酸無水物の加水分解物をサイズ剤とするものも置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤に含むものとする。
【0018】
具体的にはヘキサデシルコハク酸無水物、オクタデシルコハク酸無水物等のアルキルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物等のアルケニルコハク酸無水物、及びヘキサデシルグルタル酸無水物、オクタデシルグルタル酸無水物、ヘキサデセニルグルタル酸無水物、オクタデセニルグルタル酸無水物等のアルキルグルタル酸無水物などが挙げられる。
【0019】
前記置換環状ジカルボン酸無水物を従来公知の方法により乳化分散してエマルションの形態で用いることができる。また、その乳化方法としては特に制限はなく、従来周知の方法を適用できる。例えば、界面活性剤を含んだ置換環状ジカルボン酸無水物を水または(イオン性)デンプン糊液で乳化分散せしめる方法、界面活性剤を含まない置換環状ジカルボン酸無水物を界面活性剤の存在下または非存在下に、ポリアクリルアミド系乳化剤、及び/若しくは(イオン性)デンプン糊液の存在下乳化分散せしめる方法などが挙げられる。
【0020】
前記2−オキセタノン系サイズ剤はサイズ剤としての有効成分のうち2−オキセタノン化合物を主成分とするサイズ剤のことであり、2−オキセタノン化合物は、

一般式(2)
(但し、式(2)中のR、Rは、8〜24個の炭素原子を有する同一または異なる飽和又は不飽和のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
の基本構造を有するアルキル及び/又はアルケニルケテンダイマー、及び、
一般式(3)

(但し、式(3)中、nは自然数であり、通常1〜10であり、R及びRは8〜24個の炭素原子を有する同一または異なる飽和又は不飽和のアルキル基又はアルケニル基であり、Rは4〜40個の炭素原子を有する飽和又は不飽和のアルキル基又はアルケニル基である。)
の基本構造を有するアルキル及び/又はアルケニルケテンマルチマーの総称である。
【0021】
前記2−オキセタノン化合物は、炭素数6から30の飽和または不飽和モノカルボン酸、炭素数6から44の飽和ジカルボン酸または不飽和ジカルボン酸、及びこれらの塩化物、並びにこれらの混合物を原料として製造される。具体的な原料としては、飽和モノカルボン酸としてステアリン酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、及びベヘン酸、これらの酸塩化物、並びにこれらの混合物よりなる群から選択され、不飽和モノカルボン酸としてオレイン酸、リノール酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸、エイコセン酸、エイコサテトラエン酸、ドコセン酸及びドコサペンタエン酸、及びこれらの酸塩化物、並びにこれらの混合物よりなる群から選択される。飽和または不飽和ジカルボン酸としては、具体的にセバシン酸、アゼライン酸、11,10−ドデカンニ酸、ブラジル酸、ドコサンニ酸、及びこれらの酸塩化物、並びにこれらの混合物よりなる群から選択される。
【0022】
前記2−オキセタノン化合物を従来公知の方法により乳化剤を用い分散してエマルションの形態で用いることができる。分散剤として例えば、カチオン化澱粉やカチオン性ポリマー等のカチオン性分散剤、スルホン酸基若しくは硫酸エステル基およびそれらの塩を有するアニオン性分散剤が挙げられる。これらの分散剤の一種あるいは二種以上を混合して用いることができる。また、その乳化方法としては特に制限はなく、従来周知の方法を適用でき、例えば、反転乳化、溶剤乳化、強制乳化などの乳化方法などを用いることができる。
【0023】
上記ロジン系サイズ剤としては、特に制限はなく、従来公知のものを使用できる。例えば、ロジン系物質として、(A)ロジン類および/または、ロジン類のα,β−不飽和カルボン酸変性ロジン類、(B)ロジン類のエステル化反応により得られるロジンエステル類および/または、前記ロジンエステル類のα,β−不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類、を任意に組み合わせて使用することが出来る。これらロジン系物質を、従来公知の方法で水に乳化分散させたロジンエマルションサイズ剤を使用することができる。また、溶液ロジンも使用できる。
【0024】
その他のサイズ剤として、前記カチオン性合成サイズ剤としては公知のものを使用することができ、例えば特開2001−262495公報に記載されているように、スチレン−アクリル酸エステル系共重合体の4級化物を使用できる。これは、スチレン系モノマーと、ジメチルアミノエチルメタクリレートのような3級アミノ基を含有するアクリル酸エステル系モノマーと、これらのモノマーと共重合可能なモノマーを重合させて得られるカチオン性共重合物にエピハロヒドリンのような4級化剤を反応させる方法で製造されたものである。
【0025】
前記スチレン系モノマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼン等が挙げられ、これらのモノマーは一種又は二種以上を使用できる。これらのモノマーの中でもスチレンは入手がしやすく、安価であるため好ましい。
【0026】
前記3級アミノ基を含有するアクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば(モノアルキル又はジアルキル)アミノアルキル(メタ)アクリレート、(モノアルキル又はジアルキル)アミノヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用できる。これらのモノマーの中でもジエチルアミノエチルメタクリレートは入手がしやすく、安価であるため好ましい。
【0027】
必要に応じて使用するこれらのモノマーと共重合可能なモノマーとしては、スチレン系モノマー以外の疎水性モノマー、3級アミノ基を含有するアクリル酸エステル系モノマー以外のカチオン性モノマー等を挙げることができる。
【0028】
スチレン系モノマー以外の疎水性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート、マレイン酸、及びフマル酸のジアルキルジエステル類、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、N−アルキル(メタ)アクリルアミド類、並びにメチルビニルエーテル等が挙げられ、これらのモノマーの一種又は二種以上を使用できる。
【0029】
前記3級アミノ基を含有するアクリル酸エステル系モノマー以外のカチオン性モノマーとしては、例えば、(モノアルキル又はジアルキル)アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
【0030】
前記4級化剤としては、塩化メチル、塩化エチル、塩化ベンジル、エピクロロヒドリン、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、及び3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の有機ハロゲン化物、並びにジメチル硫酸、及びジエチル硫酸等のジアルキル硫酸を挙げることができる。
【0031】
前記カチオン性共重合物の重合は、例えば前記スチレン系モノマーと、3級アミノ基を含有するアクリル酸エステル系モノマーとの混合物と、必要に応じてその他の共重合可能なビニルモノマーとの混合物を、メチルアルコール、エチルアルコールあるいはイソプロピルアルコール等の低級アルコール系有機溶剤あるいはベンゼン、トルエン、キシレン等の油性有機溶剤中にて、あるいはこれらの低級アルコール系有機溶剤と水との混合液中にて、さらには水中において、ラジカル重合触媒を使用して60〜120℃で1〜10時間重合させることができる。
【0032】
<1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマー>
本発明の1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーとは、1級及び/又は2級アミノ基を有しているポリマーであればよい。具体的には、ホフマン分解反応によるカチオン変性(メタ)アクリルアミド系重合体、ジアリルアミン化合物と(メタ)アクリルアミドとの共重合体、ポリビニルアミンなどを挙げることができ、これらの中でもホフマン分解反応によるカチオン変性(メタ)アクリルアミド系重合体、ジアリルアミン化合物と(メタ)アクリルアミドとの共重合体が好ましい。
【0033】
1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーのカチオン当量は好ましくは1.0meq/g〜8.0meq/gの範囲である。1.0meq/g未満であるとサイズ性の発現効果が弱い場合があり、8.0meq/gを越えた1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーを用いても本発明の効果は頭打ちとなる場合がある。
【0034】
<ホフマン分解反応によるカチオン変性(メタ)アクリルアミド系重合体>
ホフマン分解反応によるカチオン変性(メタ)アクリルアミド系重合体としては、ホフマン分解反応によりカチオン変性した(メタ)アクリルアミド系重合体であれば良く、変性前の(メタ)アクリルアミド系重合体としては(メタ)アクリルアミドと共重合可能なノニオン性モノマー、カチオン性モノマー、アニオン性モノマーとの共重合体や、これに架橋性モノマーや連鎖移動剤を併用したものであってもよい。
【0035】
本発明において(メタ)アクリルアミドと共重合可能なノニオン性モノマーとしては、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0036】
本発明において(メタ)アクリルアミドと共重合可能なカチオン性モノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基を有するビニルモノマー又はそれらの無機酸若しくは有機酸の塩類あるいは3級アミノ基含有ビニルモノマーとメチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロロヒドリン、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級化剤との反応によって得られる4級アンモニウム基を有するビニルモノマー等が挙げられる。
【0037】
本発明において(メタ)アクリルアミドと共重合可能なアニオン性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、フマル酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸又はそれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩等のビニルモノマーが挙げられる。
【0038】
本発明において(メタ)アクリルアミドと共重合可能な架橋性ビニルモノマーとしては、メチロールアクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル類、エポキシアクリレート類、ウレタンアクリレート類、ジビニルベンゼン、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリアリルアミン、N,N−ジアリルアクリルアミド、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリラート、N置換アミド基を有するN,N−ジメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0039】
本発明においてホフマン分解反応によりカチオン変性する(メタ)アクリルアミド系重合体は前記(メタ)アクリルアミドと共重合可能なモノマーの1種または複数種を共重合させても良く、好ましくは(メタ)アクリルアミドは総モル%の60%以上である。
【0040】
(メタ)アクリルアミド系重合体の製造方法としては、従来公知の各種の方法を採用することが出来る。例えば、撹拌機及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、前述のモノマーと水を仕込み、重合開始剤として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリ、アンモニウムハイドロパーオキサイド等の過酸化物、またはそれらの過酸化物と重亜硫酸塩等の還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤、あるいは2,2−アゾビス−(2−アミジノプロパン)塩酸塩等の水溶性アゾ系重合開始剤などを加え、また必要に応じてイソプロピルアルコール、アリルアルコール、次亜リン酸ナトリウム、メルカプトエタノール、チオグリコール酸等の重合調整剤又は連鎖移動剤を適宜使用し、反応温度20〜90℃で1〜5時間反応させ、目的とする(メタ)アクリルアミド系重合体を得ることが出来る。
【0041】
本発明のホフマン分解反応によるカチオン変性は従来と同様の方法を採用すれば良い。例えば、前述の(メタ)アクリルアミド系重合体の水溶液に次亜ハロゲン酸塩とアルカリ触媒とを添加することにより、アルカリ性領域において(メタ)アクリルアミド系重合体と次亜塩素酸塩とを反応せしめ、しかる後に酸を添加してpH3.5〜5.5に調整する方法、塩化コリンの存在下にポリ(メタ)アクリルアミドをホフマン分解反応して調整する方法(例えば、特許文献6参照)、ホフマン分解反応において水酸基を有する3級アミンと塩化ベンジルあるいはその誘導体との4級反応物を添加して調整する方法(例えば、特許文献7参照)、ホフマン分解反応において安定剤として有機多価アミンを添加して調整する方法(例えば、特許文献8参照)、またはホフマン分解反応において安定剤として特定のカチオン化合物を添加して調整する方法(例えば、特許文献9参照)等を挙げることが出来る。
【特許文献6】特開昭53−109545号公報
【特許文献7】特公昭58−8682号公報
【特許文献8】特公昭60−17322号公報
【特許文献9】特公昭62−45884号公報
【0042】
<ジアリルアミン化合物と(メタ)アクリルアミドとの共重合体>
ジアリルアミン化合物と(メタ)アクリルアミドとの共重合体とは、(メタ)アクリルアミド化合物およびジアリルアミン化合物の無機または有機酸塩を少なくとも共重合したポリマーである。
【0043】
本発明において、
(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドである。
【0044】
ジアリルアミン化合物及びその無機または有機酸塩としては、ジアリルアミン、ジメタアリルアミン及びこれらの塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸、またはギ酸、酢酸、プロピオン酸などの有機酸の塩を例示することができる。これらのうち、ジアリルアミンの塩が最も好ましく用いられる。
【0045】
本発明のジアリルアミン化合物と(メタ)アクリルアミドとの共重合体において、前記(メタ)アクリルアミド及び前記ジアリルアミン化合物及びその無機または有機酸塩以外に必要に応じて用いることができる成分としては、前記(メタ)アクリルアミド及び前記ジアリルアミン化合物及びその無機または有機酸塩と共重合しうるビニルモノマーであればよく、ノニオン性、カチオン性、アニオン性、架橋性の各モノマーのいずれでも用いることができる。
【0046】
ノニオン性モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、メチルビニルエーテルなどが例示される。これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0047】
前記カチオン性ビニルモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルであるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類を始めとする3級アミノ基、2級アミノ基、1級アミノ基含有ビニルモノマー、前記アミノ基含有ビニルモノマーの塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸などの無機酸ないしは有機酸の塩類、前記3級アミノ基含有ビニルモノマーとメチルクロライド、メチルブロマイド等のアルキルハライド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド等のアラルキルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、エピクロロヒドリン、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジルトリアルキルアンモニウムクロライド等の4級化剤との反応によって得られる4級アンモニウム塩を含有するビニルモノマー、例えば2−ヒドロキシN,N,N,N’,N’−ペンタメチル−N’−[3−{(1−オキソ−2−プロペニル)アミノ}プロピル]−1,3−プロパンジアミニウムジクロライド等、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ビニルピリジン、ビニルピロリドンなどが例示でき、これらは1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0048】
前記アニオン性ビニルモノマーとしては、カルボキシル基含有ビニルモノマー、スルホン酸基含有ビニルモノマー及びホスホン酸基含有ビニルモノマー等が挙げられる。これらのうちカルボキシル基含有ビニルモノマー、スルホン酸基含有ビニルモノマーが好ましく、特に2種以上のカルボキシル基含有ビニルモノマーの併用、1種以上のカルボキシル基含有ビニルモノマーと1種以上のスルホン酸基含有ビニルモノマーの併用が好ましい。前記カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸、不飽和テトラカルボン酸等及びそれらの塩類等を挙げることができ、前記スルホン酸基含有ビニルモノマーとして不飽和スルホン酸等及びそれらの塩類等を挙げることができ、前記ホスホン酸基含有ビニルモノマーとして不飽和ホスホン酸等及びそれらの塩類等を挙げることができる。
【0049】
前記不飽和モノカルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸等を挙げることができ、上記不飽和モノカルボン酸の塩類として、例えば不飽和カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類及びアンモニウム塩等を挙げることができ、これらは、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0050】
前記不飽和ジカルボン酸として具体的には、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等を挙げることができ、前記不飽和ジカルボン酸の塩類として具体的には、例えば不飽和ジカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類、及びアンモニウム塩等を挙げることができ、これらは、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0051】
前記不飽和トリカルボン酸として具体的には、例えばアコニット酸、3−ブテン−1 , 2, 3−トリカルボン酸、4−ペンテン−1 , 2, 4−トリカルボン酸等を挙げることができ、前記不飽和トリカルボン酸の塩類として具体的には、例えば不飽和トリカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類及びアンモニウム塩等を例示することができ、これらは、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0052】
前記不飽和テトラカルボン酸として具体的には、例えば1−ペンテン−1 , 1, 4, 4−テトラカルボン酸、4−ペンテン−1 , 2, 3, 4−テトラカルボン酸、3−ヘキセン−1 , 1, 6, 6―テトラカルボン酸等を挙げることができ、前記不飽和テトラカルボン酸の塩類として具体的には、例えば不飽和テトラカルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類及びアンモニウム塩等を挙げることができ、これらは、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0053】
前記不飽和スルホン酸として具体的には、例えばビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等を挙げることができ、前記不飽和スルホン酸の塩類として具体的には、例えば不飽和スルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類及びアンモニウム塩等を挙げることができ、これらは、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0054】
前記不飽和ホスホン酸として具体的には、例えばビニルホスホン酸及びα−フェニルビニルホスホン酸等を挙げることができ、前記不飽和ホスホン酸の塩類として具体的には、例えば前記不飽和ホスホン酸のナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩類及びアンモニウム塩等を挙げることができ、これらは、1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0055】
架橋性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、及びN,N−ビスアクリルアミド酢酸等のビス(メタ)アクリルアミド類、アジピン酸ジビニル、ジアリルマレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアリルジメチルアンモニウム、及びグリシジル(メタ)アクリレート等の2官能性ビニルモノマー、トリアクリルホルマール、トリアリルアミン、トリアリルイソシアヌレート、及びトリアリルトリメリテート等の3官能性ビニルモノマー、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリレート、テトラアリルアミン塩、及びテトラアリルオキシエタン等の4官能性ビニルモノマー、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、及びトリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオンエート等の水溶性アジリジニル化合物、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等の水溶性の多官能エポキシ化合物、並びに3−(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリフェノキシシラン、及び2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリアセトキシシラン等のシリコン系化合物等が例示でき、これらを単独で使用することができ、また、その二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0056】
本発明において、ジアリルアミン化合物と(メタ)アクリルアミドとの共重合体の製造に用いる(メタ)アクリルアミドおよびジアリルアミン化合物の無機または有機酸塩の好ましい使用する割合は、モノマー全量を基準として、前記(メタ)アクリルアミドが40〜99モル%、さらに好ましくは50〜97モル%であり、前記ジアリルアミン化合物及びその無機または有機酸塩が1〜60モル%、さらに好ましくは3〜50モル%である。またその他使用できるモノマーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、好ましくはモノマー全量を基準として40モル%以下の範囲で用いることができるが、その水溶性とイオン性によっても、使用量はある程度制限を受ける。ノニオン性モノマーの場合は、生成するポリマーの水溶性を損なわない範囲で用いることが好ましい。カチオン性モノマーの場合は、モノマー全量を基準として40モル%以下、より好ましくは30モル%以下がよい。またアニオン性モノマーの場合は、前記ジアリルアミン化合物より少ない範囲で用いられる。なお、前記(メタ)アクリルアミド化合物が40モル%未満の場合や、前記ジアリルアミン化合物が1モル%未満の場合には、本発明の効果が十分に発揮されない場合があり、またその他使用できるモノマーが40モル%を越える場合も同様である。
【0057】
本発明で用いるジアリルアミン化合物と(メタ)アクリルアミドとの共重合体は、公知の方法によって製造することができ、重合形式は特に限定されないが、水溶媒中または、水と水溶性溶媒との混合溶媒中で、重合開始剤の存在下に重合反応させるのが好ましい。また必要に応じて、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、(メタ)アリルスルホン酸ナトリウム、次亜燐酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、アルキルメルカプタン、例えばメチルメルカプタンなど、公知慣用の分子量調整剤を用いることも可能である。
【0058】
重合開始剤としては、通常用いられるものが使用できる。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムのような過硫酸塩、2,2′−ジアミジノ−2,2′−アゾプロパンジ塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化水素のような過酸化物などが挙げられる。また公知のレドックス系開始剤、例えば過硫酸カリウムと亜硫酸水素ナトリウムまたは3級アミンとの組合せなどを用いることもできる。
【0059】
重合は、通常10〜100℃、好ましくは40〜80℃で、1〜20時間行なわれる。この重合反応は、酸素存在下でも可能であるが、一般には窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気中で行なうのが好ましい。
【0060】
前記(メタ)アクリルアミド化合物および前記ジアリルアミン化合物、また、所望により用いるその他使用できるモノマーは、これらの全成分を一括して仕込んだ後、重合を開始してもよいし、またある成分の一部または全部を他の成分の重合開始後に連続してあるいは分割して添加し、重合を行なってもよい。
【0061】
本発明においては、前記のようにしてジアリルアミン化合物と(メタ)アクリルアミドとの共重合体を得ることができる。このジアリルアミン化合物と(メタ)アクリルアミドとの共重合体は、好ましくは、15重量%濃度の水溶液の25℃におけるブルックフィールド粘度が200〜10000 mPa・s程度である。
【0062】
<凝結剤>
本発明に用いる凝結剤としては有機系凝結剤と無機系凝結剤が挙げられる。有機系凝結剤として少なくとも1種以上のカチオン性モノマーを含んで重合することにより得られるカチオン性重合物、アミン−エピハロヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン変性物、ポリビニルアミン等のカチオン性化合物が挙げられる。
【0063】
本発明に用いられるカチオン性重合物に用いられるカチオン性モノマーとしては、下記一般式(4)〜(6)で示される化合物、ジアリルアミン類等が挙げられ、これらは単独でも用いられるが2種以上併用することもできる。
【0064】
一般式(4)

(但し、式中、Aは酸素又はNH、nは2〜4の整数、RはH又はメチル基、R、R、R、R、Rは同一又は異なる炭素数1〜3の低級アルキル基、X、Yは同一又は異なるアニオン性基を示す。)
【0065】
前記一般式(4)の具体的なカチオン性モノマーとしては、2−ヒドロキシ−N,N,N,N′,N′−ペンタメチル−N′−(3−(メタ)アクリロイルアミノプロピル)−1,3−プロパンジアンモニウムジクロライド、2−ヒドロキシ−N−ベンジル−N,N−ジエチル−N′,N′−ジメチル−N′−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−1,3−プロパンジアンモニウムジブロマイドなどが挙げられる。
【0066】
一般式(5)

(但し、式中、Aは酸素又はNH、nは2〜4の整数、RはH又はメチル基、R、Rは同一又は異なる炭素数1〜3の低級アルキル基を示す。)
【0067】
上記一般式(5)の具体的なカチオン性モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0068】
一般式(6)

(但し、式中、Aは酸素又はNH、nは2〜4の整数、R10はH又はメチル基、R11 、R12は同一又は異なる炭素数1〜3の低級アルキル基、R13は低級アルキル基又はベンジル基、Zはアニオン性基を示す。)
【0069】
上記一般式(6)の具体的なカチオン性モノマーとしては、上記一般式(5)で示されるカチオン性モノマーを適当な4級化剤、例えばアルキルハライド、ジアルキルカーボネート、アルキルトシレート、アルキルメシレート、ジアルキル硫酸、ベンジルハライドなどにより4級化することにより得られ、例えばN−エチル−N,N−ジメチル−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アンモニウムブロマイド、N−ベンジル−N,N−ジメチル−(3−(メタ)アクリロイルアミノプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0070】
ジアリルアミン類として、ジアリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0071】
カチオン性モノマーは10モル%以上使用していればよく、その他の共重合モノマーとしてアクリルニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル等のノニオン性モノマー、アクリル酸、メタクリル酸などのα、β−不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などのα、β−不飽和ジカルボン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などの不飽和スルホン酸及びそれらの塩類、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等のアニオン性モノマー、従来公知の連鎖移動剤、架橋剤を使用してもよい。
【0072】
本発明に用いられるカチオン性重合物の重合方法としては特に制限はなく従来公知の方法を採用できる。
【0073】
さらには、前記のように一般式(5)のカチオン性単量体を前記4級化剤により4級化してから重合反応を行うのみならず、上記一般式(5)に属するカチオン性単量体等を重合反応させる途中又は重合反応後に上記4級化剤を用いて4級化することもできる。この場合全部を4級化しても良いが、一部を4級化しても良い。
【0074】
本発明に用いられるアミン−エピハロヒドリン樹脂としては、アミン類とエピハロヒドリンを反応させることにより得られる。アミン類として用いることのできるアミンは、分子中に少なくとも1個のエピハロヒドリンと反応可能なアミノ基を有するアミン類であれば特に制限はないが、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、アルキレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン、及びアルカノールアミンからなる群から選択された1種以上のアミンが好ましい。
【0075】
アミンとして例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、アリルアミン、n −ブチルアミン、sec −ブチルアミン、tert −ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、及びプロピレンジアミン、N,Nジメチルアミノプロピルアミン、1 ,3 −ジアミノシクロヘキシル、1 ,4 −ジアミノシクロヘキシル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N −メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N ,N −ジエチルエタノールアミン、N ,N −ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0076】
エピハロヒドリンとしては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等を使用でき、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。エピハロヒドリンとしてはエピクロロヒドリンが好ましい。
【0077】
本発明に用いられるアミンエピハロヒドリン樹脂の重合方法としては特に制限はなく従来公知の方法を採用できる。
【0078】
無機系凝結剤としてポリ塩化アルミニウム、ポリアルミニウムシリケートサルフェート、ポリ水酸化アルミニウム等のポリアルミニウム化合物、ポリ硫酸鉄、炭酸ジルコニウムが挙げられる。
【0079】
<薬品の添加場所及び添加量>
本発明においてパルプスラリーに1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーを添加する場合、添加場所は特に制限されないが、抄紙工程の叩解機出口からインレット入口の間に添加するのが好ましい。また1箇所に限らず複数箇所に分割添加することもできる。
【0080】
1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーの対パルプ固形分の添加率は0.02〜3重量%、好ましくは0.05〜1重量%である。0.02重量%未満ではサイズ効果が不十分となる場合があり、3重量%を越えて使用しても効果が頭打ちとなる場合がある。
【0081】
表層に用いるサイズ剤の対パルプ固形分の添加率は0.01〜2重量%、好ましくは0.03〜1重量%である。0.01重量%未満ではサイズ効果が十分に発揮されない場合があり、2重量%を越えて使用した場合は効果が頭打ちとなる場合がある。
【0082】
その他のいずれかの層に用いる場合のサイズ剤の対パルプ固形分の添加率は0.01〜1重量%、好ましくは0.03〜0.5重量%である。0.01重量%未満ではサイズ効果が十分に発揮されない場合があり、1重量%を越えて使用した場合は効果が頭打ちとなる場合がある。
【0083】
本発明においてその他のいずれかの層に用いる凝結剤をパルプスラリーに添加する場合、添加場所は特に制限されないが、叩解機出口からインレット入口の間の混合性の良い場所で添加されるのが好ましい。また、一箇所に限らず複数箇所に分割添加してもよく、1種または2種以上の凝結剤を使用しても良い。
【0084】
本発明においてその他のいずれかの層に用いる凝結剤の対パルプ固形分の添加率は好ましくは0.005〜1重量%、さらに好ましくは0.01〜0.5重量%である。添加率0.005重量%未満では汚れ防止効果が不良となる場合があり、1重量%を超える添加率では抄紙系内のカチオン性が過剰となり、紙力剤等の定着が低下する場合がある。
【0085】
<アルミニウム化合物>
本発明に用いるアルミニウム化合物としては硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム、アルミナゾル、ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムゾル、ポリ水酸化アルミニウム等の水溶性アルミニウム化合物が挙げられ、特に硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウムが好ましい。これらのアルミニウム化合物は単独又は2種以上併用して用いられる。
【0086】
パルプスラリーの固形分に対してアルミニウム化合物を
(1)表層に0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%用い、かつ
(2)その他のいずれかの層に用いない若しくは1重量%以下用いる
ことが好ましい。
【0087】
パルプスラリーには、上記以外の添加薬品としてカチオン澱粉、両性澱粉、(メタ)アクリルアミド系共重合体等の乾燥紙力剤やポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂等の湿潤紙力剤等、更に濾水歩留剤等、また、軽質炭酸カルシウムや重質炭酸カルシウムのような炭酸カルシウム、クレー、酸化チタンなどの填料を適宜併用することは何ら差し支え無い。
【0088】
また所定pHにするためにpH調節剤、たとえば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ物質や硫酸等の酸性物質を併用することも何ら差し支え無い。
【0089】
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明する。なお、特にことわりがない場合は重量基準である。
【0090】
実施例1
(a) 400カナディアン・スタンダード・フリーネスの自製段ボール古紙を2.4%のスラリーとし、これに以下各々対パルプ固形分あたり、2.0%の硫酸バンド、0.3%のアクリルアミド系紙力剤DS4388(星光PMC(株)製)、0.2%のロジン系サイズ剤であるサイズ剤AL1300(星光PMC(株)製)を順次添加した。得られたパルプスラリーについて抄紙pH5.5で、TAPPIスタンダードシートマシン丸形を用いて、坪量30g/mとなるように抄紙し、湿紙A1を得た。
(b) 370カナディアン・スタンダード・フリーネスの炭酸カルシウムが含まれている自製段ボール古紙を2.4%のスラリーとし、これに以下各々対パルプ固形分あたり、0.3%の1級アミノ基含有ポリマー(ホフマン分解反応によるカチオン変性アクリルアミド系重合体)である紙力剤DH4160(星光PMC(株)製)、0.1%の置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤であるAS1530(星光PMC(株)製)を乳化剤SP1800(星光PMC(株)製)で乳化したものを順次添加した。得られたパルプスラリーについて抄紙pH7.5で、TAPPIスタンダードシートマシン丸形を用いて、坪量90g/mとなるように抄紙し、湿紙B1を得た。
(c) 上記湿紙A1と湿紙B1を互いに貼り合わせた後、410kPaで120秒間プレスした後、ドラムドライヤーを用いて110℃で120秒間乾燥して抄き合わせ紙C1を得た。
【0091】
実施例2
(a) 実施例1(a)と同様にして湿紙A1を得た。
(b) 0.1%のアミン−エピハロヒドリン樹脂(ジメチルアミンエピクロロヒドリン)である凝結剤AC7300(星光PMC(株)製)を最初に加えること以外は、実施例1(b)と同様にして湿紙B2を得た。
(c) 上記湿紙A1と湿紙B2を、実施例1(c)と同様にして抄き合わせ紙C2を得た。
【0092】
実施例3
(a) 実施例1(a)と同様にして湿紙A1を得た。
(b) 0.1%のカチオン性重合物(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド)である凝結剤AC7304(星光PMC(株)製)を最初に加えること以外は、実施例1(b)と同様にして湿紙B3を得た。
(c) 上記湿紙A1と湿紙B3を、実施例1(c)と同様にして抄き合わせ紙C3を得た。
【0093】
実施例4
(a) 実施例1(a)と同様にして湿紙A1を得た。
(b) 1級アミノ基含有ポリマー(ホフマン分解反応によるカチオン変性アクリルアミド系重合体)である紙力剤DH4160(星光PMC(株)製)に代えて、2級アミノ基含有ポリマー(ジアリルアミンと(メタ)アクリルアミドとの共重合体)であるFX7200(星光PMC(株)製)を0.3%使用した以外は、実施例1(b)と同様にして湿紙B4を得た。
(c) 上記湿紙A1と湿紙B4を、実施例1(c)と同様にして抄き合わせ紙C4を得た。
【0094】
実施例5
(a) 実施例1(a)と同様にして湿紙A1を得た。
(b) サイズ剤を置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤に代えて、2−オキセタノン系サイズ剤であるサイズ剤AD1604(星光PMC(株)製)を0.1%使用した以外は、実施例1(b)と同様にして湿紙B5を得た。
(c) 上記湿紙A1と湿紙B5を、実施例1(c)と同様にして抄き合わせ紙C5を得た。
【0095】
実施例6
(a) 実施例1(a)と同様にして湿紙A1を得た。
(b) 370カナディアン・スタンダード・フリーネスの炭酸カルシウムが含まれている自製段ボール古紙を2.4%のスラリーとし、これに以下各々対パルプ固形分あたり、0.8%の硫酸バンド、0.3%の1級アミノ基含有ポリマー(ホフマン分解反応によるカチオン変性アクリルアミド系重合体)である紙力剤DH4160(星光PMC(株)製)、0.3%の中性ロジン系サイズ剤であるCC1404(星光PMC(株)製)を順次添加した。得られたパルプスラリーについて抄紙pH7.0で、TAPPIスタンダードシートマシン丸形を用いて、坪量90g/mとなるように抄紙し、湿紙B6を得た。
(c) 上記湿紙A1と湿紙B6を、実施例1(c)と同様にして抄き合わせ紙C6を得た。
【0096】
実施例7
(a) 実施例1(a)と同様にして湿紙A1を得た。
(b) サイズ剤を中性ロジン系サイズ剤CC1404(星光PMC(株)製)に代えて置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤であるAS1530(星光PMC(株)製)を乳化剤SP1800(星光PMC(株)製)で乳化したものを0.1%使用した以外は、実施例6(b)と同様にして湿紙B7を得た。
(c) 上記湿紙A1と湿紙B7を、実施例1(c)と同様にして抄き合わせ紙C7を得た。
【0097】
実施例8
(a) サイズ剤をロジン系サイズ剤であるAL1300(星光PMC(株)製)に代えて置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤であるAS1530(星光PMC(株)製)を乳化剤SP1800(星光PMC(株)製)で乳化したものを0.1%使用した以外は、実施例1(a)と同様にして湿紙A2を得た。
(b) 実施例1(b)に記載されている方法と同様にして湿紙B1を得た。
(c) 上記湿紙A2と湿紙B1を、実施例1(c)と同様にして抄き合わせ紙C8を得た。
【0098】
実施例9
(a) パルプを400カナディアン・スタンダード・フリーネスの自製段ボール古紙に代えて、410カナディアン・スタンダード・フリーネスの未晒クラフトパルプを用いたこと及び抄紙pH4.5としたこと以外は、実施例8(a)に記載されている方法と同様にして湿紙A3を得た。
(b)実施例1(b)に記載されている方法と同様にして湿紙B1を得た。
(c) 上記湿紙A3と湿紙B1を、実施例1(c)と同様にして抄き合わせ紙C9を得た。
【0099】
比較例1
(a) 400カナディアン・スタンダード・フリーネスの自製段ボール古紙を2.4%のスラリーとし、これに以下各々対パルプ固形分あたり、0.3%の1級アミノ基含有ポリマー(ホフマン分解反応によるカチオン変性アクリルアミド系重合体)である紙力剤DH4160、0.1%の置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤であるAS1530(星光PMC(株)製)を乳化剤SP1800(星光PMC(株)製)で乳化したものを順次添加した。得られたパルプスラリーについて抄紙pH7.5で、TAPPIスタンダードシートマシン丸形を用いて、坪量30g/mとなるように抄紙し、湿紙A4を得た。
(b) 実施例1(b)に記載されている方法と同様にして湿紙B1を得た。
(c) 上記湿紙A4と湿紙B1を、実施例1(c)とにして抄き合わせ紙D1を得た。
【0100】
比較例2
(a)実施例9(a)に記載されている方法と同様にして湿紙A3を得た。
(b)370カナディアン・スタンダード・フリーネスの炭酸カルシウムが含まれている自製段ボール古紙を2.4%のスラリーとし、これに0.1%の置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤であるAS1530(星光PMC(株)製)を乳化剤SP1800(星光PMC(株)製)で乳化したものを添加した。得られたパルプスラリーについて抄紙pH7.5で、TAPPIスタンダードシートマシン丸形を用いて、坪量90g/mとなるように抄紙し、湿紙B8を得た。
(c) 上記湿紙A3と湿紙B8を、実施例1(c)とにして抄き合わせ紙D2を得た。
【0101】
(紙質の評価)
上記実施例及び比較例により得られた抄き合わせ紙C1〜C9、D1〜D2は、温度23℃ 湿度50%の恒温恒湿室に於いて24時間調湿した後、下記測定法に準じて各種紙質の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
抄き合わせ紙の湿紙A1〜A3の側をオモテ面として測定を行なった。
層間強度 :JAPAN TAPPI No19−1に準拠
コブ吸水度 :JIS P−8140に準拠
【0102】
比較例については、抄き合わせ紙の層間強度が実施例に比べ大きく劣ったことから、サイズ度測定は実施しなかった。
【0103】
(撥水度の測定)
抄き合わせ紙C1〜C9、D1〜D2について、A1〜A3の側をオモテ面として、オモテ面に撥水剤WR3922(星光PMC(株)製)をNo.3バーコーターにて0.3g/m塗工を行った後に70℃で20秒間乾燥し、撥水性を有する抄き合わせ紙を得、熱処理前の抄き合わせ紙の撥水度の測定を行なった。
別途、150℃に設定した電気乾燥機に撥水剤を塗工した抄き合わせ紙を入れ、10分間熱処理を行い取り出した。その後、温度23℃、湿度55%において24時間調湿後に撥水度を測定した。熱処理前と後の塗工紙の撥水度を比較する事により、撥水加工適性を比較した。なお、熱処理前後の撥水度の低下が少ない原紙が撥水加工適性の良い原紙である事を意味する。
撥水度 :JAPAN TAPPI No68に準拠
【0104】
(パルプスラリーろ液の濁度測定)
濁度の測定は、各実施例中の湿紙B1〜8の抄紙直前のパルプスラリーをNO.5Aのろ紙で吸引ろ過して得られる濾液を検体としてハック社製濁度計2100Pを用いて行った。得られた結果を表2に示した。なお、濁度は値が小さいほど、ろ液中のコロイド状夾雑物が少ないことを示し、マシン汚れも低減すると考えられる。
【0105】
【表1】

【0106】
表中「−」は測定しなかったことを示す。
実施例1〜8(酸性抄紙−中性抄紙の抄き合わせ)は比較例1(中性抄紙−中性抄紙の抄き合わせ)に比べ層間強度が高く、且つ撥水加工適性が優れた。
【0107】
【表2】

【0108】
表中「−」は測定しなかったことを示す。
実施例9は比較例2に比べ層間強度が高く、且つ撥水加工適性が優れた。
1級及び/又は/2級アミノ基含有ポリマーは、層間強度及び撥水加工適性の向上に寄与していることが示唆されている。
【0109】
【表3】

【0110】
実施例1〜8の比較において、ウラ層に凝結剤を使用することで、抄き合わせ紙のオモテ層のサイズ度が向上し、ウラ層パルプスラリーの濁度が低下する結果が得られた。凝結剤がサイズ効果発現、マシン汚れ防止に有効であるとが示唆された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)表層はサイズ剤の存在下にpH4以上6.5未満で抄紙を行い、
(2)その他のいずれかの層は1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマー、又は1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーとサイズ剤の存在下に、pH6.5〜8.5で抄紙する
ことを特徴とする抄き合わせ板紙の製造方法。
【請求項2】
(3)表層はサイズ剤の存在下にpH4以上6.5未満で抄紙を行い、
(4)その他のいずれかの層は1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーと凝結剤、又は1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーと凝結剤とサイズ剤の存在下に、pH6.5〜8.5で抄紙する
ことを特徴とする抄き合わせ板紙の製造方法。
【請求項3】
その他のいずれかの層に用いるサイズ剤がロジン系サイズ剤、置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤、及び2−オキセタノン系サイズ剤から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の板紙の製造方法。
【請求項4】
1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーが、ホフマン分解反応によるカチオン変性(メタ)アクリルアミド系重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の板紙の製造方法。
【請求項5】
1級及び/又は2級アミノ基含有ポリマーがジアリルアミン化合物と(メタ)アクリルアミドとの共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の板紙の製造方法。
【請求項6】
パルプスラリーの固形分に対してアルミニウム化合物を
(5)表層に0.1〜10重量%用い、かつ
(6)その他の層に用いない若しくは1重量%以下用いる
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の板紙の製造方法。
【請求項7】
板紙が撥水ライナー原紙であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の板紙の製造方法。

【公開番号】特開2007−113126(P2007−113126A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303694(P2005−303694)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】