説明

【課題】
頭部と頸部を好みの形態で支持でき、しかも頸部を広域に亘って安定して支持し、脊椎の自然な姿勢の保持を増進して快適な睡眠を得られるとともに、肩部の保温作用を向上し、しかも病気や怪我をした人のうつ伏せ寝用またはリハビリ用の介助具に好適な枕を提供すること。
【解決手段】
頭部12を載置可能な主枕2と、頸部13を載置可能な補助枕3とを備える。
前記補助枕3に主枕2よりも通気性の良好な詰物8を充填した枕である。
前記主枕2の一端部に補助枕3の一側面の中間部を揺動自在に連結する。
前記補助枕3を前記連結部を中心に反転自在に設ける。
前記補助枕3を主枕2の表裏両面の一側に重合して配置可能にすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部と頸部を好みの形態で支持でき、しかも頸部を広域に亘って安定して支持し、脊椎の自然な姿勢の保持を増進して快適な睡眠を得られるとともに、肩部の保温作用を向上し、しかも病気や怪我をした人のうつ伏せ寝用またはリハビリ用の介助具に好適な枕に関する。
【背景技術】
【0002】
快適な睡眠を得られる枕の一般的な条件として、頭部と頸部を優しく支持し、その支持高さを頭部より頸部を若干高くし、脊椎の自然な姿勢を保ち、脊椎に負担が掛からないようにすることが望ましいとされている。
このような要望に応じられる枕として、中央に頭部を収容する凹部を設け、枕本体の一辺に脊椎当て用の略三角形状の突出部を設け、凹部と突出部によって首から背中まで支え、脊椎を自然の状態に保ち、脊椎への負担を軽減するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、前記枕は、突出部による脊椎の支持が頸部の背部の一箇所に限られ、その支持域が狭小で頸部を安定して支持することできず、脊椎の負担軽減効果が概して低く、十分な快眠効果を得られない上に、凹部と突出部によって首から背中まで支えるため、大形かつ異形になって高価になる等の問題があった。
【0004】
このような問題を解決するものとして、後頭部支持部の両側に側頭部支持部を設け、それらの下側縁に楕円形断面の頸椎支持部を設け、頸椎を優しく支持し頭部をしっかり支持し、仰向き寝や横向き寝に応じられるとともに、頸椎支持部を平面上山形に形成し、仰向き寝から横向き寝に変わった際、頸椎支持部によって肩口を支持し、その保温性や吸汗性を図るようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、前記枕は、後頭部支持部および両側頭部支持部と一体の軸状の頸椎支持部に頸部を載せて支持するため、脊椎の支持が頸部の背部に限られ、その支持域が狭小で頸部を安定して支持することできず、脊椎の負担軽減効果が概して低く、十分な快眠効果を得られない上に、後頭部支持部と両側頭部支持部と頸椎支持部とを一体に構成しているため、大形かつ大重量で、高価でかつ取り扱い辛いという問題があった。
【0006】
更に、前記問題を解決するものとして、半円形断面の頭部支持部と、円形断面の頸部支持部とを線接触状態に連結し、頸部支持部を頭部支持部よりも高く形成し、頭部から頸部を支持するようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかし、前記枕は、頸部支持部に頸部を載せて支持するため、前述と同様に脊椎の支持が頸部の背部に限られ、その支持域が狭小で頸部を安定して支持することできず、脊椎の負担軽減効果が概して低く、十分な快眠効果を得られない上に、頭部支持部と頸部支持部の底面が凸状の曲面に形成されているため、安定性が悪く、使用時に頭部や頸部が移動し易く、安定した睡眠状態を得られないという問題があった。
【0008】
ところで、人の睡眠姿勢は生活習慣や身体条件、疲労の大小によって様々で、仰向け寝や横向き寝、うつ伏せ寝、更にこれらの複合等がある。
このうち、うつ伏せ寝は健常者に限らず、例えば病気や怪我をした人が余儀無くされる場合があり、その場合は口や鼻が枕に圧迫されるため、通常の枕で代用することはできない。
このようなうつ伏せ寝用の枕として、胸部を支持する三日月形の支持面と、額を支持する額支持面とを有し、これらの支持面の間に凹状の顔面周囲空間部を設けた、ウレタンマット製のものがある(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
しかし、前記枕は、ウレタンマットを成形または加工して構成されるため、型代が高価で製作が難しく、また使用時に顔面周囲空間部の通気を確保する構造上、当該部を一定の硬度に形成するため、使用時に当該部周縁に顔面を押し当てると感触が悪く、押圧痕や痛みを生じて長時間の使用に堪えられない、という問題があった。
【0010】
【特許文献1】登録実用新案第3040522号公報
【特許文献2】特開2001−104127号公報
【特許文献3】特開2004−215699号公報
【特許文献4】特開2006−55383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題を解決し、頭部と頸部を好みの形態で支持でき、しかも頸部を広域に亘って安定して支持し、脊椎の自然な姿勢の保持を増進して快適な睡眠を得られるとともに、肩部の保温作用を向上し、しかも病気や怪我をした人のうつ伏せ寝用またはリハビリ用の介助具に好適な枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、頭部を載置可能な主枕と、頸部を載置可能な補助枕とを備え、該補助枕に主枕よりも通気性の良好な詰物を充填した枕において、前記主枕の一端部に補助枕の一側面の中間部を揺動自在に連結し、該補助枕を前記連結部を中心に反転自在に設け、前記補助枕を主枕の表裏両面の一側に重合して配置可能にし、補助枕を主枕の表裏両面に重合した二様の使用形態を得られ、使用者の多様な使用に応じられるとともに、主枕の一端部に補助枕の一側面の中間部を揺動自在に連結することによって、補助枕を主枕に一体に形成したものに比べ、補助枕の変位の自由度を得られ、また補助枕を主枕に重合することによって、頸部の支持高さを頭部よりも高くでき、脊椎の自然の姿勢を保持して脊椎の負担を軽減し、快適な睡眠を得られるようにしている。
【0013】
請求項2の発明は、前記補助枕に頸部を載置した際、前記頸部を中心に補助枕の一側または両側を起立可能にし、この起立部による頸部または肩口の支持若しくは支持域並びに支持形態を変えられるようにしている。
請求項3の発明は、前記起立した補助枕の一側または両側部を介し、頸部周面または肩口を支持または抱持可能にし、頸部の一箇所だけを支持していた従来の枕に比べ、支持域を広げることによって頸部を確実かつ安定して支持し、脊椎の自然の姿勢の保持を増進し、脊椎の負担軽減を向上して、快適な睡眠を得られるとともに、肩口を抱持可能にして、肩口の保温を促し肩口の冷えを防止するようにしている。
【0014】
請求項4の発明は、補助枕を平面略V字形状に形成し、これを連結部を中心に反転することによって、主枕の表裏両面において、略V字形状とその点対称の略逆V字形状の補助枕の形態を得られ、略V字形状の場合は、起立した補助枕の両側部によって頸部の両側周面を支持し、頸部を広域かつ安定して支持し、脊椎の自然な姿勢の保持を増進して、脊椎の負担軽減を向上し、快適な睡眠を得られるようにしている。
一方、略逆V字形状の場合は、起立した補助枕の両側部によって頸部を支持するとともに、両肩口を抱持するように支持して、その保温作用を向上し、肩口の冷えを防止するようにしている。
【0015】
請求項5の発明は、使用者の顔面を押し当て可能な枕の中間部に通気孔を形成し、該通気孔に使用者の口と鼻を位置付け、前記通気孔の開口部周辺に使用者の額と顎を押し当て可能にし、かつ一端に使用者の胸部を載置可能な胴体部を突設した枕において、前記枕の内部に柔軟な詰物を収納して膨潤成形し、前記胴体部を抱持可能な筒状に形成し、従来の型成形のものに比べ、型成形によらず、したがって高価な型代を要することなく、容易かつ安価に製作し得る。
しかも、枕の内部に柔軟な詰物を収納して膨潤成形し、該胴体部を抱持可能な筒状に形成し、従来の型成形のものに比べ、胴体部に載置した胸部の感触のソフト化を図れるとともに、両腕で胴体部を抱持可能にすることによって、両腕の所在が安定し、また胸部と胴体部との密着を図ることで精神的に癒され、快適な睡眠を促される。
したがって、うつ伏せ状態での療養やその状態での睡眠を余儀無くされる、病気や怪我をした人の睡眠用枕または療養若しくはリハビリ用の介助具に好適である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明は、主枕の一端部に補助枕の一側面の中間部を揺動自在に連結し、該補助枕を前記連結部を中心に反転自在に設け、前記補助枕を主枕の表裏両面の一側に重合して配置可能にしたから、補助枕を主枕の表裏両面に重合した二様の使用形態を得られ、使用者の多様な使用に応じられるとともに、主枕の一端部に補助枕の一側面の中間部を揺動自在に連結することによって、補助枕を主枕に一体に形成したものに比べ、補助枕の変位の自由度を得られ、また補助枕を主枕に重合することによって、頸部の支持高さを頭部よりも高くでき、脊椎の自然の姿勢を保持して脊椎の負担を軽減し、快適な睡眠を得られる効果がある。
【0017】
請求項2の発明は、補助枕に頸部を載置した際、前記頸部を中心に補助枕の一側または両側を起立可能にしたから、この起立部による頸部または肩口の支持若しくは支持域並びに支持形態を変えることができる。
請求項3の発明は、前記起立した補助枕の一側または両側部を介し、頸部周面または肩口を支持または抱持可能にしたから、頸部の一箇所だけを支持していた従来の枕に比べ、頸部を広域に支持し、頸部を確実かつ安定して支持でき、脊椎の自然の姿勢の保持を増進し、脊椎の負担軽減を向上して、快適な睡眠を得られるとともに、肩口を抱持可能にし、肩口の保温を促し肩口の冷えを防止することができる。
【0018】
請求項4の発明は、補助枕を平面略V字形状に形成したから、これを連結部を中心に反転することによって、主枕の表裏両面において、略V字形状とその点対称の略逆V字形状の補助枕の形態を得られ、略V字形状の場合は、起立した補助枕の両側部によって頸部の両側周面を支持し、頸部を広域かつ安定して支持し、脊椎の自然な姿勢の保持を増進して、脊椎の負担軽減を向上し、快適な睡眠を得られる効果がある。
一方、略逆V字形状の場合は、起立した補助枕の両側部によって頸部を支持するとともに、両肩口を抱持するように支持でき、その保温作用を向上し、肩口の冷えを防止することができる。
【0019】
請求項5の発明は、枕の内部に柔軟な詰物を収納して膨潤成形し、胴体部を抱持可能な筒状に形成したから、従来の型成形のものに比べ、型成形によらず、したがって高価な型代を要することなく、容易かつ安価に製作することができる。
しかも、枕の内部に柔軟な詰物を収納して膨潤成形し、該胴体部を抱持可能な筒状に形成したから、従来の型成形のものに比べ、胴体部に載置した胸部の感触のソフト化を図れ、また両腕で胴体部を抱持可能にすることによって、両腕の所在が安定し、胸部と胴体部との密着を図れることで精神的に癒され、快適な睡眠を促すことができる。
したがって、うつ伏せ状態での療養やその状態での睡眠を余儀無くされる、病気や怪我をした人の睡眠用枕または療養若しくはリハビリ用の介助具に好適な効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を図示の実施形態について説明すると、図1乃至図9において1は枕で、該枕1は主枕2と、主枕2より小形の補助枕3とを揺動自在に連結して構成している。
このうち、主枕2は横長矩形に形成され、内部にポリエステル綿、アクリル綿、スポンジ片、綿等の柔軟な詰物4が充填され、その表裏両面を化学繊維製の布地5で被覆し、その周囲の接合部を縫着している。
【0021】
図中、6は主枕2の中央部に設けた仕切片(図示略)の凹状の縫着部、7は主枕2の一側端部の中間位置に取り付けたファスナーで、該ファスナー7を介して補助枕3を揺動自在に連結している。
【0022】
前記補助枕3は図1および図3のように、平面が緩やかな略V字若しくは略く字形状に形成され、その長さは主枕2の長辺と略同長に形成され、その幅を主枕2の短辺の長さの略1/2に形成している。
前記補助枕3の内部に平滑な合成樹脂製のパイプ、ビーズ等の通気性および流動性に優れる詰物8が充填され、その表裏両面を通気性の良好な化学繊維製のメッシュ地9で被覆し、その周囲の接合部を縫着している。
【0023】
前記補助枕3の裏地側の中間部にファスナー10が取り付けられ、該ファスナー10を前記ファスナー7に装着して、補助枕3の裏面を主枕2に揺動自在に連結している。
図中、11は枕の使用者、12は前記使用者11の頭部、13は前記使用者11の頸部、14は使用者11の肩部、15は枕を敷設する敷布団または畳等の被敷設体である。
【0024】
なお、この実施形態では主枕2と補助枕3との連結手段として、ファスナー7,10を用いているが、ファスナー7,10の代わりに、例えば縫着、複数のボタンまたはホックを用いることも可能である。
この場合、連結手段は着脱可能性は問わないが、着脱可能であれば、主枕2と補助枕3とを分離して使用し、また洗濯し得る利点がある。
【0025】
このように構成した枕は主枕2と補助枕3とからなり、このうち主枕2は横長矩形で内部に柔軟な詰物4を充填して構成され、その長辺側の一端の中間部にファスナー7を取り付けて製作する。
また、補助枕3は主枕2よりも小形で、平面形状を緩やかな略V字形状若しくは略く字形状に形成し、その長さを主枕2の長辺と略同長に形成し、その幅を主枕2の短辺の長さの略1/2に形成する。
【0026】
そして、補助枕3の内部に通気性および流動性に優れる詰物8を充填し、その表裏両面を通気性の良好な化学繊維製のメッシュ地9で被覆し、その周囲の接合部を縫着するとともに、補助枕3の裏地側の中間部にファスナー10を取り付けて製作する。
このように主枕2と補助枕3の構成は簡単で、別々に製作し得るから、これを容易かつ安価に製作することができ、しかもファスナー7,10を取り外して別々に保管し得るから、その取り扱いが至便である。
【0027】
このように製作した主枕2と補助枕3とは、使用に際しファスナー7,10を接続して
両者を連結する。
この連結状況は図1のように、主枕2の一端部に補助枕3の裏面が重合して斜状に取り付けられ、これらはファスナー7,10の部分を除いて、互いに揺動自在に連結される。
【0028】
したがって、例えば前記ファスナー7,10部を中心に主枕2を反転し、主枕2の一端部に補助枕3の向きを変えれば、つまり略逆V字形状にして重合すれば、斜状に配置することができる。この状況は図6のようである。
【0029】
すなわち、この実施形態の枕1は、頸部13の支持の安定性を増進し得る図1乃至図5に示す第1の使用形態と、頸部13の支持と肩部14の支持と保温を図れる図6乃至図9に示す第2の使用形態を選択し得る。
この場合、第1および第2の使用形態の選択は、主枕2を反転し、補助枕3の向きを変えるだけで良く、その操作は頗る簡単でファスナー7,10の着脱操作も要しない。
【0030】
この実施形態の枕1の使用に際し、例えば枕1を仰向け寝用に使用する第1の使用形態を基に説明すると、前記連結した主枕2と補助枕3とを敷布団や畳等の被敷設体15上に敷設し、主枕2上に使用者11の頭部12を載せ、補助枕3上に頸部13の背部を載せる この状況は図3のようである。
【0031】
こうして、主枕2が頭部12の後頭部に圧迫され、また補助枕3が頸部13の背部に圧迫され、これらが共に押し縮められると、頸部13の背部が優しく支持され、また圧迫後の高さは補助枕3の重合分、頸部13の背部が後頭部よりも高くなり、脊椎の自然の姿勢が保持され、その負担を軽減して快適な睡眠を促す。この状況は図5のようである。
【0032】
その際、頸部13の圧迫によって補助枕3の詰物8が外側へ移動し、前記圧迫部が沈み込む一方、補助枕3の両側部がその分膨らんで起立し、該両側部が頸部13の周面に優しく接触して支持する。この場合、詰物8が流動性に富むビーズ等で構成され速やかに移動するため、前記補助枕3の起立を促す。
【0033】
したがって、補助枕3の変位が主枕2から独立し、かつその自由度が得られる分、従来の枕に比べ頸部13を広域かつ確実に支持し得るから、頸部13の安定性が向上し、脊椎の自然な姿勢保持を促して快適な睡眠を得られる。
【0034】
この場合、補助枕3は通気性を有するメッシュ地9で被覆され、内部の詰物8が不規則に位置して通気性を促すから、頸部13周辺の通気性が保持され、また保温性も得られて快適な睡眠を促す。
【0035】
一方、第2の使用形態では、補助枕3が第1の使用形態の略V字形状と点対称の略逆V字形状に配置され、補助枕3の中央部、つまり頸部13の載置部が主枕2の内側へ突出して重合しているから、使用者11はその分、頭部12を主枕2の奥部へ移動し、第1の使用形態に比べ、頸部13を主枕2側へ移動して補助枕3上に載せる。
この状況は図7のようで、補助枕3の外側端部に使用者11の肩口が載り、肩口が優しく支持される。
【0036】
この場合、頸部13の背部が補助枕3に優しく支持され、また頸部13の圧迫によって補助枕3の詰物8が外側へ移動し、前記圧迫部が沈み込む一方、補助枕3の両側部がその分膨らんで起立し、該両側部が頸部13の周面に優しく接触して支持することは、第1の使用形態と同様である。
【0037】
また、第2の使用形態では、補助枕3の両側部が膨らんで起立し、該両側部が両肩口に優しく接触して抱き込み、その癒し作用を奏するから、快適な睡眠を促すとともに、肩口の冷えを防止し、所定の保温効果を得られる。
この場合、補助枕3の変位が主枕2から独立し、かつその自由度が得られる分、従来の枕に比べ肩口を確実かつ十分に抱き込むから、肩口の冷えを防止し、その保温効果を増進する。
【0038】
なお、前記第1および第2の使用形態において、使用者11が仰向き寝から横向き寝へ寝返りした場合、または最初から横向き寝した場合、頭部12と主枕2との接触位置、および頸部13と補助枕3との接触位置は前述の位置と変わるが、主枕2と補助枕3との高さ関係、つまり頸部13の高さが頭部12よりも高い関係は維持されるから、脊椎の自然の姿勢が保持され、その負担を軽減して快適な睡眠を促す。
【0039】
そして、前記のように就眠姿勢が変化すると、頸部13の圧迫によって補助枕3の当該部の詰物8が外側へ移動し、前記圧迫部が沈み込む一方、補助枕3の両側部がその分膨らんで起立し、該両側部が頸部13の側面に優しく接触して支持する。
この場合、詰物8が流動性に富むビ−ズ等で構成され速やかに移動するため、前記補助枕3の起立を促す。
【0040】
また、第2の使用形態では前記起立した補助枕3の両側部が胸部と背中の各上部に優しく接触して抱き込み、癒しの効果を奏して快適な睡眠を促すとともに、当該部の保温を促す。このよう当該部を抱き込んでも、補助枕3の通気性によって快適性を損なうことはない。
【0041】
図10乃至図16は本発明の他の実施形態を示し、前述の実施形態と対応する構成部分に同一の符号を用いている。
この実施形態は、健常者や病気または怪我をした人の睡眠用または介助具に好適な、うつ伏せ寝用枕16を示している。
【0042】
前記枕16は平面略逆L字形状に形成され、その中間部に通気孔17を形成し、かつ一側に幅広で太めの胴体部18を突設していて、その表裏両面を布地5で被覆し、周囲の接合部を縫着するとともに、その内部に三つの中袋19〜21を収納している。
図中、22は胴体部18の側面の布地5に設けファスナーで、枕16の内部を開閉可能にしている。
【0043】
前記中袋19〜21は、図10(b)のように互いに異形に形成され、このうち中袋19は略円筒状に形成され、また中袋20は略C字形状に形成され、それらの表裏両面を布地23,24で被覆し、周囲の接合部を縫着するとともに、その内部に柔軟なポリエステル綿、アクリル綿等の詰物33,25を充填している。
【0044】
更に、中袋21は略楕円形状に形成され、その表裏両面を通気性を有するメッシュ地26で被覆し、周囲の接合部を縫着するとともに、その内部に平滑な合成樹脂製のビーズ等の通気性を有する詰物27を充填している。
前記通気孔17の内面と枕16の表裏両面に亘って、通気性を有するメッシュ地の帯片28を配置し、該帯片28を介し通気孔17と詰物27と外気との間の通気を可能にしている。
【0045】
この他、図中、29,30は使用者11の鼻と口で、通気孔17の上側開口部に位置し、31,32は使用者11の額と顎で、通気孔17の上側開口部の周縁部に押し当てている。
【0046】
このように構成した実施形態のうつ伏せ用枕16は、略L字形状の布地5,5の接合部を縫着し、その胴体部18の側周面の接合部にファスナー22を取り付け、また中間部に通気孔17を刳り抜き、該通気孔17の一側にメッシュ地の帯片28を環状に縫着し、前記縫着した布地5,5の内部に三つの中袋19〜21を収納する。
【0047】
前記中袋19〜21は、布地23,24およびメッシュ地26を縫着して袋状に製作し、その内部にポリエステル綿等の詰物33,25またはビーズ等の詰物27を充填して、図15(b)のように膨潤形成し、これらをファスナー22の開口部から、前記布地5,5の内部に収納する。
【0048】
こうして製作したうつ伏せ用枕16は図10(a)のように、略L字形状に膨潤形成され、内部に収納した中袋19〜21によって、布団のような柔軟性と質感を有し、全体的に手造り様のソフト感を有している。
したがって、従来のこの種の枕のような型成形によらず、高価な型代を要することなく、容易かつ安価に製作することができる。
【0049】
前記うつ伏せ用枕16を使用する場合は、該枕16を敷布団または畳等の被敷設体15上に配置し、この枕16上に使用者11がうつ伏せ状態で横臥し、胴体部18上に胸部を載せ、顔面を前記枕16に押し当てる。
その際、通気孔17の上側開口部に鼻29と口30を位置付け、通気孔17の上側開口部の周辺に額31と顎32を押し当て、また両腕で胴体部18を抱き込む。この状況は図15,16のようである。
【0050】
このようにすると、使用者11の呼吸は通気孔17によって維持され、該通気孔17は通気性を有する帯地28および詰物27を介して外気に連通し、所要の空気が供給されている。
また、通気孔17の上側開口部周辺は柔軟で、当該部に額31と顎32とを押し当てているから、額31や顎32の感触はソフトで負担が掛からず、押圧痕を生ずることもない
【0051】
しかも、柔軟な胴体部18上に胸部を載せているから、胸部の感触はソフトで負担が掛からず、また使用者11の体重の一部を胴体部18で支持することによって、うつ伏せ姿勢の負担を軽減し、うつ伏せ状態を長時間に亘り安定して行なえる。
【0052】
更に、両腕で胴体部18を抱き込むことによって、両腕の所在が安定し、また胸部と胴体部18との密着を図れることによって精神的に癒され、快適な睡眠を促される。
したがって、うつ伏せ状態での療養やその状態での睡眠を余儀無くされる、病気や怪我をした人の睡眠用枕または療養若しくはリハビリ用の介助具に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
このように本発明の枕は、頭部と頸部を好みの形態で支持でき、しかも頸部を広域に亘って安定して支持し、脊椎の自然な姿勢の保持を増進して快適な睡眠を得られるとともに、肩部の保温作用を向上できるから、快眠用枕または病気や怪我をした人のうつ伏せ寝用またはリハビリ用の介助具に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態を示す斜視図で、主枕に対し補助枕をV字形状に重合して配置している。
【図2】主枕と補助枕をファスナーで連結している状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の使用形態による使用状態を示す平面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う断面図で、90°回転して図示している。
【図5】本発明の第1の使用形態による使用状態を示す断面図である。
【0055】
【図6】本発明の第2の使用形態を示す斜視図で、補助枕を反転し、これを略逆V字形状にして主枕に重合配置している。
【図7】本発明の第2の使用形態による使用状態を示す平面図である。
【図8】図7のB−B線に沿う断面図で、90°回転して図示している。
【図9】本発明の第2の使用形態による使用状態を示す断面図である。
【図10】本発明をうつ伏せ寝用枕に適用した他の実施形態を示し、同図(a)はその斜視図を示し、同図(b)は前記枕に収納した三個の中袋を示す斜視図である。
【0056】
【図11】図10のうつ伏せ寝用枕の正面図である。
【図12】図11の右側面図である。
【図13】図11のC−C線に沿う断面図である
【図14】図12のD−D線に沿う断面図である
【図15】前記うつ伏せ寝用枕の使用状態を示す平面図である。
【図16】前記うつ伏せ寝用枕の使用状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 枕
2 主枕
3 補助枕
4,8 詰物
11 使用者
【0058】
12 頭部
13 頸部
14 肩部
16 うつ伏せ寝用枕
17 通気孔
【0059】
18 胴体部
25 詰物
27 詰物
29 鼻
【0060】
30 口
31 額
32 顎
33 詰物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部を載置可能な主枕と、頸部を載置可能な補助枕とを備え、該補助枕に主枕よりも通気性の良好な詰物を充填した枕において、前記主枕の一端部に補助枕の一側面の中間部を揺動自在に連結し、該補助枕を前記連結部を中心に反転自在に設け、前記補助枕を主枕の表裏両面の一側に重合して配置可能にしたことを特徴とする枕。
【請求項2】
前記補助枕に頸部を載置した際、前記頸部を中心に補助枕の一側または両側を起立可能にした請求項1記載の枕。
【請求項3】
前記起立した補助枕の一側または両側部を介し、頸部周面または肩口を支持または抱持可能にした請求項1記載の枕。
【請求項4】
前記補助枕を平面略V字形状に形成した請求項1記載の枕。
【請求項5】
使用者の顔面を押し当て可能な枕の中間部に通気孔を形成し、該通気孔に使用者の口と鼻を位置付け、前記通気孔の開口部周辺に使用者の額と顎を押し当て可能にし、かつ一端に使用者の胸部を載置可能な胴体部を突設した枕において、前記枕の内部に柔軟な詰物を収納して膨潤成形し、前記胴体部を抱持可能な筒状に形成したことを特徴とする枕。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−88548(P2010−88548A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259283(P2008−259283)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(394000437)直寝具株式会社 (5)
【Fターム(参考)】