説明

枚葉加飾シート準備装置及び射出成形システム

【課題】枚葉加飾シートを用いた成形同時加飾装置における成形サイクルを短縮化する。
【解決手段】枚葉加飾シート準備装置3は、ロボットによって成形同時加飾装置に搬送される枚葉加飾シートを準備する装置であって、基体5と、切断装置47と、保持テーブル11と、センサユニットと、テーブル駆動機構15とを備えている。切断装置47は、長尺加飾シート19を切断することで枚葉加飾シートを作成する。保持テーブル11は、枚葉加飾シートを保持する保持面13を有する。位置検出装置は、保持テーブル11の保持面13に保持された枚葉加飾シート141の位置を検出する。テーブル駆動機構15は、位置検出結果に基づいて、枚葉加飾シートを基体5に対して位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枚葉加飾シート準備装置及びそれを含む射出成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶融樹脂から射出成形品を形成すると同時に射出成形品の表面に加飾シートを固着する成形同時加飾技術が知られている。この技術では、一対の金型が用意され、一対の金型の一方又は両方に加飾シートが配置され、さらに金型間の空間に溶融樹脂が注入されて射出成形が行われる。この場合、射出成形と同時に、転写層が成形品の表面に転写されて加飾層が形成される。
【0003】
二色成形では、色又は材質が異なる2種類の溶融した溶融樹脂を順次射出成形して、異なる2種類の溶融樹脂部が接合した二色成形品を製造する。さらに、転写層が転写された一次成形品を成形同時加飾によって作成した後に、一次成形品の加飾面上に二次成形用樹脂を射出成形する二色成形同時絵付け方法も知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−105211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の2色成形同時絵付け方法では、第1固定型と、第2固定型と、2つの可動型とを有する成形同時加飾装置が用いられる。第1固定型は一次成形を行うのに用いられ、第2固定型は二次成形を行うのに用いられる。2つの可動金型は回転によって第1固定型及び第2固定型に対する位置を変更する。特許文献1に記載の装置では、固定金型にロール状の加飾シートが供給される。
【0006】
一方、例えば、可動金型側に加飾シートが配置される成形同時加飾技術も知られている。その場合、加飾シートが長尺であれば供給ロール及び巻取ロールによって可動金型側の装置が大型化してしまう。そこで、加飾シートは長尺ではなく枚葉であることが好ましい。しかし、枚葉加飾シートの場合は、金型への正確な位置決めが難しい。また、金型内でロボットが位置決めを行う場合には、成形サイクルの中で位置決めのための特別な時間が必要になるので、成形サイクルが長くなるという問題がある。また、ロボットにはセンサを搭載することになり、ロボットの構造が複雑になる。
【0007】
本発明の課題は、成形同時加飾装置における成形サイクルを短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0009】
本発明の一見地に係る枚葉加飾シート準備装置は、ロボットによって成形同時加飾装置に搬送される枚葉加飾シートを準備する装置であって、基体と、切断装置と、保持テーブルと、位置検出装置と、位置決め装置とを備えている。切断装置は、長尺加飾シートを切断することで枚葉加飾シートを作成する。保持テーブルは、枚葉加飾シートを保持する保持面を有する。位置検出装置は、保持テーブルの保持面に保持された枚葉加飾シートの位置を検出する。位置決め装置は、位置検出結果に基づいて、枚葉加飾シートを基体に対して位置決めする。
【0010】
なお、ここでは、枚葉加飾シートとは、基体シートが剥離されて製品に残らない転写シートと、基体シートが製品に残るラミネートシートを含む。
【0011】
この装置では、成形同時加飾装置の外側で正確に位置決めされた枚葉加飾シートを準備することができる。したがって、枚葉加飾シートの位置決め動作を、成形同時加飾装置における成形動作と並列的に行うことができる。この結果、成形同時加飾装置における成形サイクルを短縮できる。
【0012】
保持テーブルは、基体に対して所定平面内で移動可能に装着されていてもよい。その場合、位置決め装置は、枚葉加飾シートを基体に対して位置決めするために、保持テーブルの位置を調整してもよい。
【0013】
位置検出装置による位置検出と、位置決め装置による位置決めとは、複数回実行されてもよい。この装置では、枚葉加飾シートの位置決め精度が向上する。
【0014】
位置検出装置は、枚葉加飾シートの一端部を検出する複数の検出装置を有していてもよい。この装置では、複数の検出装置が枚葉加飾シートの片側にのみ配置されているので、全体の構造及び配線が簡単になる。
【0015】
枚葉加飾シート準備装置は、ロボットが枚葉加飾シートを保持テーブルから取り出すときに、ロボットを基体に対して位置決めするロボット位置決め部材をさらに備えていてもよい。この装置では、ロボットがロボット位置決め部材によって機械的に基体に対して位置決めされるので、ロボットが正確に枚葉加飾シートを保持できる。
【0016】
枚葉加飾シート準備装置は、長尺加飾シートを保持テーブルの保持面まで引き出す引出し装置をさらに備えていてもよい。その場合、切断装置は、長尺加飾シートが引き出された状態で長尺加飾シートを切断してもよい。
【0017】
引出し装置は、長尺加飾シートの先端を把持する把持部と、把持部を移動させて長尺加飾シートを引き出す移動部とを有していてもよい。
【0018】
把持部は、長尺加飾シートの第1面に接触する金属面と、長尺加飾シートの第2面に接触するゴム面とを有していてもよい。この装置では、例えばゴム面が長尺加飾シートの基材シートに接触し、金属面が長尺加飾シートの加飾層に接触する。この結果、保持力を十分に高めつつも、加飾層の剥離が生じにくい。
【0019】
枚葉加飾シート準備装置は、引出し装置によって引き出される前に、長尺加飾シートの先端をクランプするクランプ装置をさらに備えていてもよい。その場合、クランプ装置は、長尺加飾シートの先端が位置する第1歯形状部分を有しており、把持部は、第1歯形状部分に噛み合うような第2歯形状部分を有していてもよい。そして、把持部が長尺加飾シートの先端を把持するときには、第2歯形状部分が第1歯形状部分に噛み合った位置にある。この装置では、クランプ装置の第1歯形状部分によって長尺加飾シートの先端の姿勢が維持されているので、把持部が確実に長尺加飾シートの先端を把持できる。また、把持部の第2歯形状部分の形状によって十分なつかみ代が確保されている。
【0020】
枚葉加飾シート準備装置は、引出し装置が長尺加飾シートを引き出すときに、長尺加飾シートが保持面から離れないように長尺加飾シートの移動を規制するワイヤーをさらに備えていてもよい。この装置では、長尺加飾シートが引き出されるときにワイヤーによって長尺加飾シートが保持面から離れにくいので、長尺加飾シートがカールしにくい。
【0021】
保持テーブルは、保持面に開口した複数の孔と、複数の孔から空気を吸引することで枚葉加飾シートを保持面に吸着する吸着装置とをさらに有していてもよい。この装置では、吸着装置が複数の孔から空気を吸引することで、枚葉加飾シートを保持面に吸着する。
【0022】
吸着装置は、複数の孔による吸着を行う領域を枚葉加飾シートの寸法に合わせて変更できてもよい。この装置では、必要に応じて吸着を行う領域を変更できるので、サイズが小さな枚葉加飾シートを用いる場合に無駄な真空吸着が行われない。
【0023】
吸着装置は、複数の孔による吸着を行う領域を段階的に増減できてもよい。この装置ででは、例えば、枚葉加飾シートを保持面に吸着する前、間又は後に段階的に吸着を行うことでシートを保持面に沿わせることができる。
【0024】
枚葉加飾シート準備装置は、枚葉加飾シートを保持面に沿わせるためのローラをさらに備えていてもよい。この装置では、枚葉加飾シートを保持面に吸着する際にローラによってシートを保持面に沿わせることができる。
【0025】
本発明の他の見地に係る射出成形装置は、上記の枚葉加飾シート準備装置と、枚葉加飾シートを用いて成形同時加飾を行う成形同時加飾装置と、枚葉加飾シート準備装置から成形同時加飾装置に枚葉加飾シートを搬送するロボットとを備えている。
【0026】
この装置では、成形同時加飾装置の外側で正確に位置決めされた枚葉加飾シートを準備することができる。したがって、枚葉加飾シートの位置決め動作を、成形同時加飾装置における成形動作と並列的に行うことができる。その結果、成形同時加飾装置における成形サイクルを短縮できる。
【0027】
成形同時加飾装置は、ロボットが枚葉加飾シートを成形同時加飾装置に搬入するときに、ロボットを成形同時加飾装置に位置決めする第2ロボット位置決め部材を有していてもよい。この装置では、ロボットは枚葉加飾シート準備装置と成形同時加飾装置の両方でそれぞれ機械的に位置決めされる。したがって、ロボットにロボット自体による位置調整のためのカメラを設ける必要が無くなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る枚葉加飾シート準備装置及び射出成形装置では、枚葉加飾シートを用いた成形同時加飾装置における成形サイクルが短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】射出成形システムの概略図。
【図2】枚葉加飾シート準備装置の正面図。
【図3】枚葉加飾シート準備装置の側面図。
【図4】枚葉加飾シート準備装置の制御構成を示すブロック構成図。
【図5】枚葉加飾シートを準備する制御動作を示すフローチャート。
【図6】クランプ部材が長尺加飾シートの先端をクランプしている状態を示す側面図。
【図7】ハンド部材が長尺加飾シートの先端をクランプしている状態を示す側面図。
【図8】ハンド部材が長尺加飾シートの先端をクランプしている状態を示す断面図。
【図9】ローラ機構が枚葉加飾シートを保持テーブルの保持面に沿うように押し付けている状態を示す断面図。
【図10】枚葉加飾シートが保持テーブルに保持された状態を示す側面図。
【図11】1回目の位置検出及び位置調整動作を示す模式図。
【図12】2回目の位置検出及び位置調整動作を示す模式図。
【図13】3回目の位置検出及び位置調整動作を示す模式図。
【図14】枚葉加飾シート準備装置の側面図。
【図15】枚葉加飾シートの寸法に合わせて変更可能な保持面の吸着エリアを示す側面図。
【図16】成形同時加飾装置の模式的断面図。
【図17】成形同時加飾装置の制御構成を示すブロック構成図。
【図18】成形同時加飾装置の制御動作を示すフローチャート。
【図19】成形同時加飾装置の一状態を示す模式的断面図。
【図20】成形同時加飾装置の一状態を示す模式的断面図。
【図21】成形同時加飾装置の一状態を示す模式的断面図。
【図22】成形同時加飾装置の一状態を示す模式的断面図。
【図23】成形同時加飾装置の一状態を示す模式的断面図。
【図24】成形同時加飾装置の一状態を示す模式的断面図。
【図25】成形同時加飾装置の一状態を示す模式的断面図。
【図26】クランプが枚葉加飾シートをクランプしている状態の平面図。
【図27】クランプが開放位置にある状態の平面図。
【図28】搬入中の枚葉加飾シートと一対のクランプの位置関係を示す模式的断面図。
【図29】搬入中の枚葉加飾シートと一対のクランプの位置関係を示す模式的断面図。
【図30】搬入中の枚葉加飾シートと一対のクランプの位置関係を示す模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(1)射出成形システム
図1を用いて、枚葉加飾シートを用いた射出成形システム1を説明する。図1は、射出成形システムの概略図である。
【0031】
射出成形システム1は、枚葉加飾シート準備装置3と、成形同時加飾装置101と、ロボット131とを備えている。枚葉加飾シート準備装置3は、長尺加飾シートから枚葉加飾シートを作成する装置である。成形同時加飾装置101は、枚葉加飾シートを用いて成形品を製造する装置である。成形同時加飾装置101は、一次成形部118と、二次成形部119とを有している。ロボット131は、枚葉加飾シート及び成形品を搬送するための装置である。ロボット131は、具体的には、以下の動作を連続して行う。
【0032】
・枚葉加飾シート準備装置3から、枚葉加飾シートを受け取る(図1の(1))。
【0033】
・枚葉加飾シートを、成形同時加飾装置101の二次成形部119に供給する(図1の(2))。
【0034】
・成形同時加飾装置101の二次成形部119から、成形品を受け取る(図1の(3))。
【0035】
・成形品を、所定の場所に載置する(図1の(4))。
【0036】
以上の動作(1)〜(4)は、繰り返し実行される。そして、動作(2)と(3)との間に、後述するように、成形同時加飾装置101において成形が実行される。さらに、動作(1)と次の動作(1)との間に、後述するように、枚葉加飾シート準備装置3において枚葉加飾シートが準備される。
【0037】
射出成形システム1では、枚葉加飾シート準備装置3によって、成形同時加飾装置101の外部で正確に位置決めされた枚葉加飾シートを準備することができる。したがって、枚葉加飾シートの位置決め動作が、成形同時加飾装置101における成形動作と並列的に行われる。この結果、成形同時加飾装置101における成形サイクルが短縮されている。
【0038】
また、射出成形システム1では、ロボット131は、枚葉加飾シート準備装置3と成形同時加飾装置101の両方において、それぞれ機械的に位置決めされる。したがって、ロボット131にロボット自体による位置調整のためのカメラを設ける必要がない。
(2)枚葉加飾シート準備装置の構成
図2〜図4を用いて、枚葉加飾シート準備装置3を説明する。図2は、枚葉加飾シート準備装置の正面図である。図3は、枚葉加飾シート装置の側面図である。図4は、枚葉加飾シート準備装置の制御構成を示すブロック構成図である。
【0039】
枚葉加飾シート準備装置3は、ロボット131によって成形同時加飾装置101に搬送される枚葉加飾シート141を準備する装置である。枚葉加飾シート準備装置3は、基体5を有している。基体5は、地面に設置されており、上方に延びる筐体を有している。基体5には、後述するように、制御部61及び入力部62が設けられている。
【0040】
枚葉加飾シート準備装置3は、さらに、保持装置9を有している。保持装置9は、枚葉加飾シート141を保持するための装置である。保持装置9は、保持テーブル11を有している。保持テーブル11は、図から明らかなように、平板状の部材であり、基体5に装着されている。より具体的には、保持テーブル11は、テーブル駆動機構15を介して基体5に取り付けられている。保持テーブル11は、基体5と反対側に、保持面13を有している。保持面13は、側面視で四角形であり、平坦である。保持面13は、鉛直方向に延びており、一側方向を向いている。保持面13には、複数の孔16が形成されている。複数の孔16は、吸着装置67(図4)に接続されている。
【0041】
保持テーブル11の保持面13は、は、図2のX−Y平面に一致している。そして、保持テーブル11は、テーブル駆動機構15によって、X−Y方面に沿って移動可能である。テーブル駆動機構15は、X方向の移動機構(モータ、ボールネジ)及びY方向の駆動機構(モータ、ボールネジ)が組み合わされて構成されている。
【0042】
また、基体5には、保持テーブル11と同じ側に、位置決めピン71が設けられている。図では、位置決めピン71は1つであるが、複数であってもよい。
【0043】
枚葉加飾シート準備装置3は、さらに、長尺加飾シート供給装置17を有している。長尺加飾シート供給装置17は、ロール状の長尺加飾シート19を繰り出す装置である。長尺加飾シート供給装置17は、長尺加飾シート19が巻かれた繰り出しローラ21と複数のローラとを有している。そのような構造によって、長尺加飾シート19の先端23は、保持テーブル11の下方に配置される。
【0044】
枚葉加飾シート準備装置3は、さらに、クランプ装置25を有している。クランプ装置25は、長尺加飾シート19をクランプすることで移動を規制する装置である。クランプ装置25は、図2及び図3に示すように、X方向に細長く延びた一対のクランプ部材27
から主に構成されている。クランプ部材27は、クランプ駆動装置65(図4)によって駆動され、長尺加飾シート19をクランプした状態と、長尺加飾シート19を開放した状態とを取ることができる。図6に示すように、クランプ部材27は、上方に向かって開いた第1歯形状部分29を有している。
【0045】
枚葉加飾シート準備装置3は、さらに、引出し装置37を有している。引出し装置37は、長尺加飾シート19を保持装置9の保持テーブル11まで引き出す装置である。引出し装置37は、長尺加飾シート19の先端23を把持するハンド部39と、ハンド部39を移動させて長尺加飾シート19を引き出す移動部43(図4)とを有している。ハンド部39は、X方向に細長く延びた一対のハンド部材41から主に構成されている。ハンド部材41は、ハンド駆動装置63(図4)によって駆動され、長尺加飾シート19をクランプした状態と、長尺加飾シート19を開放した状態とを取ることができる。図7に示すように、ハンド部材41は、下方に向かって開いた第2歯形状部分45を有している。図7は、ハンド部材が長尺加飾シートの先端をクランプしている状態を示す側面図である。第2歯形状部分45は、第1歯形状部分29内に入り込むことができるようになっている。この結果、図6に示すように、長尺加飾シート19は、先端23がクランプ部材27のわずか上方の位置に配置された状態でクランプ部材27にクランプされる。つまり、この状態において長尺加飾シート19のクランプ部材27からの突出量は少なくなっている。そのため、先端23は、たわみにくく、ハンド部材41によって確実に挟まれる。また、ハンド部材41は、図7に示すように、第2歯形状部分45が第1歯形状部分29内に入り込んで長尺加飾シート19の先端23を挟持しているので、長尺加飾シート19に接触する面積が大きくなっている。したがって、ハンド部材41は長尺加飾シート19を確実に保持することができる。
【0046】
また、ハンド部材41は金属製であるが、図8に示すように、一方のハンド部材41の内側面には、シリコンゴム層31が設けられている。図8は、ハンド部材が長尺加飾シートの先端をクランプしている状態を示す断面図である。シリコンゴム層31は、長尺加飾シート19の基体シート33に当接しており、他方のハンド部材41(金属面)は、長尺加飾シート19の加飾層35に当接している(基体シート33と加飾層35については後述する)。シリコンゴム層31を設けることで、クランプ部材27から長尺加飾シート19に作用する抵抗が十分に大きくなり、その結果、長尺加飾シート19がクランプ部材27によって確実に保持される。また、シリコンゴム層31は加飾層35には当接していないので、加飾層35を捲り上げるような不具合は生じにくい。この結果、保持力を十分に高めつつも、加飾層35の剥離が生じにくい。
【0047】
移動部43は、ハンド部39をY方向(上下)に移動させることができる。移動部43は、公知の昇降機構である。
【0048】
ハンド部材41には、ローラ機構44が設けられている。ローラ機構44は、ハンド部材41の下方位置と、そこから斜め上方の位置との間で回動可能である。
【0049】
枚葉加飾シート準備装置3は、さらに、切断装置47を有している。切断装置47は、長尺加飾シート19を切断することで枚葉加飾シート141を作成する。切断装置47は、保持テーブル11の下方でかつクランプ装置25の上方において、基体5に設けられている。切断装置47は、この実施形態では、ヒートカッタである。
【0050】
枚葉加飾シート準備装置3は、さらに、ワイヤー供給装置49を有している。ワイヤー供給装置49は、引出し装置37が長尺加飾シート19を上方に引き出すときに、長尺加飾シート19が保持面13から離れないように長尺加飾シート19の移動を規制するワイヤー55を供給する。ワイヤー供給装置49は、保持テーブル11の下方でかつクランプ装置25の上方において、切断装置47とZ方向に対向する位置に配置されている。ワイヤー供給装置49は、ワイヤー収納部51と、ワイヤー収納部51をZ方向に移動させる移動部53と、3本のワイヤー55とを有している。3本のワイヤー55は、X方向に所定の間隔を空けて配置されており、先端がハンド部材41に取り付けられている。この結果、ハンド部材41が上方に移動すると、ワイヤー55はワイヤー収納部51から引き出される。
【0051】
枚葉加飾シート準備装置3は、さらに、センサユニット57を有している。センサユニット57は、保持装置9の保持面13に保持された枚葉加飾シート141の基体5に対する位置を検出する。センサユニット57は、図2に示すように、枚葉加飾シート141の側端部を検出する複数のセンサ59a、59b,59cを有している。複数のセンサ59a,59b,59cはその順番で上から配置されている。センサ59a、59b及び59cは、各々が投光部と受光部とを有する光電センサである。センサユニット57は、図2に示す非検出位置と、さらにX方向内側に移動して枚葉加飾シート141の側端を検出可能な検出位置(図10)との間で移動可能である。この装置では、複数のセンサ59a、59b、59cが枚葉加飾シート141の片側にのみ配置されているので、全体の構造及び配線が簡単になる。なお、保持テーブル11には、複数のセンサ59a,59b,59cの検出位置に対応して切欠き部73a,73b,73cが形成されている。また、枚葉加飾シート141の図2左側端部には、図示しないが、上下方向に延びる幅方向検出マークと、上下複数箇所に設けられた上下方向検出マークが設けられている。
【0052】
図4に示すように、枚葉加飾シート準備装置3は、制御部61を有している。制御部61は、CPU、RAM、ROMを含むコンピュータであり、各種プログラムを実行することで、制御動作を実行する。制御部61は、移動部43、クランプ駆動装置65,ローラ機構44、ハンド駆動装置63、吸着装置67、テーブル駆動機構15、及び切断装置47を制御可能である。また、制御部61には、センサユニット57、カット用センサ60から検出信号が入力される。さらに、制御部61には、入力部62から設定情報及び操作情報を入力される。なお、制御部61は、他の装置(例えば、ロボット131、成形同時加飾装置101)と交信可能であってもよい。
(3)枚葉加飾シート準備装置の制御動作
図5を用いて、制御部61が枚葉加飾シート準備装置3の各種装置を制御する動作を説明する。図5は、枚葉加飾シートを準備する制御動作を示すフローチャートである。
【0053】
初期状態では、図6に示すように、長尺加飾シート19の先端23はクランプ部材27に挟まれて保持された状態になっている。図6は、クランプ部材が長尺加飾シートの先端をクランプしている状態を示す側面図である。また、ステップS1の前に、ワイヤー供給装置49では、ワイヤー収納部51が、クランプ部材27から離れた位置に移動させられる。
【0054】
ステップS1では、制御部61は、移動部43及びハンド駆動装置63に制御信号を送信して、図7に示すように、ハンド部39に長尺加飾シート19の先端23をチャックさせる。
【0055】
ステップS2では、制御部61は、クランプ駆動装置65に制御信号を送信して、クランプ駆動装置65にクランプ部材27を開かせる。
【0056】
ステップS3では、制御部61は、移動部43に制御信号を送信して、図2及び図3に示すように、ハンド部39を上方のカット位置まで移動させる。なお、制御部61は、ハンド部39がカット位置にきたことをカット用センサ60(図4)からの検出結果に基づいて判断する。長尺加飾シート19は、保持面13に沿って上方に引き上げられる。また、その後に、図3に示すように、ワイヤー供給装置49においてワイヤー収納部51が保持面13側に移動させられる。
【0057】
ステップS4では、制御部61は、クランプ駆動装置65に制御信号を送信して、クランプ部材27を閉じる。これにより、引き出された長尺加飾シート19の下端部がクランプされる。
【0058】
ステップS5では、制御部61は、切断装置47に制御信号を送信することで、切断装置47に長尺加飾シート19の下端部を切断させる。これにより、長尺加飾シート19から枚葉加飾シート141が得られる。
【0059】
ステップS6では、制御部61は、移動部43に制御信号を送信して、ハンド部39を上方の定位置まで移動させる。この結果、長尺加飾シート19は、保持面13に沿って上方にさらに引き上げられる。この引き上げ時に、ワイヤー55が保持面13の近傍に位置することで、長尺加飾シート19を保持面13から離れにくくなっている。したがって、長尺加飾シート19がカールしにくい。
【0060】
ステップS7では、制御部61は、吸着装置67に制御信号を送信することで、吸着装置67に枚葉加飾シート141を保持面13に吸着させる。また、制御部61は、ハンド駆動装置63に制御信号を送信することで、ハンド駆動装置63に枚葉加飾シート141の把持を解除させ、さらにハンド部材41を下方に移動させる。この動作のときに、ローラ機構44が、ローラを保持面13側に移動して枚葉加飾シート141を上から下に連続的に保持面13に密着させていく。したがって、枚葉加飾シート141にしわが生じにくい。また、図9に示すように、ローラ機構44が枚葉加飾シート141を保持面13に押し付けた部分から順番に枚葉加飾シートを吸着するようにしてもよい。図9は、ローラ機構が枚葉加飾シートを保持テーブルの保持面に沿うように押し付けている状態を示す断面図である。
【0061】
ステップS8では、枚葉加飾シート141は、基体5に対してXY方向の所定位置に位置決めされる。具体的には、センサユニット57が、図10に示すように、検出位置に移動して枚葉加飾シート141の位置を検出し、その検出結果に基づいて制御部61が保持テーブル11を移動させて枚葉加飾シート141を所定位置に近づける。図10は、枚葉加飾シートが保持テーブルに保持された状態を示す側面図である。具体的には、テーブル駆動機構15が、枚葉加飾シート141を基体5に対して位置決めするために、保持テーブル11の位置を調整する。この実施形態では、上記動作は3回繰り返される。以下、図11〜図13を用いて、3回の位置調整動作を説明する。図11〜図13は、1回目の位置検出及び位置調整動作を示す模式図である。より具体的には、最初に、センサユニット57が検出位置(図10)に移動する。図11に示すように、最初の段階では、枚葉加飾シート141の傾き角度は大きくなっている可能性がある。そこで、保持テーブル11をXY方向に移動させることで、枚葉加飾シート141の位置及び傾きを補正する。続いて、図12に示すように、既に傾きが小さくなった枚葉加飾シート141に対して保持テーブル11をXY方向に移動させることで、枚葉加飾シート141の位置及び傾きをさらに補正する。最後に、傾きがほとんど無くなくなりしかも上下方向の位置が定められた保持テーブル11をY方向に移動させることで、位置決め動作を終了する。このようにセンサユニット57による位置検出と、テーブル駆動機構15による位置決めとは、複数回実行されるので、枚葉加飾シート141の位置決め精度が向上する。なお、このように複数回の位置調整動作を行うことが可能になったのは、枚葉加飾シート141の位置決めを成形同時加飾装置101の外で行うことで、成形動作と同時並列的に枚葉加飾シート141を準備しており、そのため位置決めのために十分な時間を取れるからである。
【0062】
ステップS9では、制御部61は、図14に示すように、ロボット131が保持面13に接近して、枚葉加飾シート141を吸着するのを待つ。図14は、枚葉加飾シート準備装置の側面図である。ロボット131の接近は、各種センサからの検出信号によって検出されてもよいし、ロボット131からの信号によって検出されてもよい。ロボット131は、図14に示すように、支持部140と、支持部140の先端に設けられた吸着部143とを有している。吸着部143は、保持面13側を向いており、四角形である。また、支持部140には、位置決めピン71が挿入可能な位置決め孔145が形成されている。位置決めピン71と位置決め孔145との係合によって、ロボット131と基体5との位置決めは機械的に行われる。そのため、ロボット131に対して枚葉加飾シート141が正確に位置決めされて保持される。この装置では、ロボットがロボット位置決め部材によって機械的に基体5に対して位置決めされるので、ロボット131が枚葉加飾シート141を正確に保持できる。
【0063】
ステップS10では、制御部61は、吸着装置67に制御信号を送信することで、吸着装置67に枚葉加飾シート141の保持面13への吸着を解除させる。
【0064】
ステップS11では、制御部61は、ロボット131が枚葉加飾シート141を吸着した状態で、保持面13から離れるのを待つ。
(4)枚葉加飾シート準備装置の効果
枚葉加飾シート準備装置(例えば、枚葉加飾シート準備装置3)は、ロボット(例えば、ロボット131)によって成形同時加飾装置(例えば、成形同時加飾装置101)に搬送される枚葉加飾シート(枚葉加飾シート141)を準備する装置であって、基体(例えば、基体5)と、切断装置(例えば、切断装置47)と、保持テーブル(例えば、保持テーブル11)と、位置検出装置(例えば、センサユニット57)と、位置決め装置(例えば、テーブル駆動機構15)とを備えている。切断装置は、長尺加飾シートを切断することで枚葉加飾シートを作成する。保持テーブルは、枚葉加飾シートを保持する保持面を有する。位置検出装置は、保持テーブルの保持面に保持された枚葉加飾シートの位置を検出する。位置決め装置は、位置検出結果に基づいて、枚葉加飾シートを基体に対して位置決めする。
【0065】
この装置では、成形同時加飾装置の外側で正確に位置決めされた枚葉加飾シートを準備することができる。したがって、枚葉加飾シートの位置決め動作を、成形同時加飾装置における成形動作と並列的に行われる。この結果、成形同時加飾装置における成形サイクルを短縮できる。
(5)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【0066】
吸着装置は、複数の孔による吸着を行う領域を枚葉加飾シートの寸法に合わせて変更できてもよい。この装置では、必要に応じて吸着を行う領域を変更できるので、サイズが小さい枚葉シートの場合に無駄に真空吸着が行われない。例えば、図15に示すように、基準位置80から広がる3種類の枚葉シート81,82,83に合わせて吸着を行うエリアが選択される。図15は、枚葉加飾シートの寸法に合わせて変更可能な保持面の吸着エリアを示す側面図である。
【0067】
保持テーブルの形状及び向きは前記実施形態に限定されない。
【0068】
ワイヤー及びローラ等の加飾シートを保持面に密着させるための構造は、不要であれば省略してもよい。
(6)成形同時加飾装置の構成
図16及び図17を用いて、本実施形態における成形同時加飾装置101を説明する。図16は、本発明の一実施形態に係る成形同時加飾装置の模式的断面図である。図17は、成形同時加飾装置の制御構成を示すブロック構成図である。成形同時加飾装置101は、主に、成形同時加飾用金型102と、固定盤111と、可動盤117とから構成されている。
【0069】
成形同時加飾用金型102は、主に、固定金型103と、可動金型105とから構成されている。固定金型103は、主に、第1固定型107と、第2固定型109と、固定盤111とから構成されている。第1固定型107は、第1面121が概ね平坦面であり、その反対側の第2面が固定盤111に固定されている。第2固定型109は、第1固定型107に並んで配置されており、第1面125が平坦であり、第1面125に第2部分キャビティ127が形成されている。第2固定型9は、第1面25と反対側の第2面が固定盤11に固定されている。
【0070】
可動金型105は、主に、第1可動型113と、第2可動型115と、可動盤117とから構成されている。以下、第1可動型113の説明を行うが、第2可動型115の構造も同じである。第1可動型113は、第1面129が平坦であり、第1面129に第1部分キャビティ130が形成されている。第1可動型113には、第1部分キャビティ130の外側であって、第1面129に開口する第1吸引孔135が形成されている。さらに、第1可動型113には、第1部分キャビティ130の底面に開口する第2吸引孔137が形成されている。なお、第1可動型13は、第1面29と反対側の第2面が可動盤17に固定されている。
【0071】
第1可動型113には、第1部分キャビティ130の回りにおいて枚葉加飾シート(枚葉フィルム)を保持するクランプ133(133a、133b)が設けられている(図16では、一対の第1クランプ133aのみ図示)。クランプ部材の構造及び動作は後に詳細に説明する。
【0072】
第1可動型113には、さらに、位置決めピン139が設けられている。位置決めピン139は、第1面129から延びており、固定金型103側に延びている。位置決めピン139は、後述するロボットの位置決めを行うための部材である。図では位置決めピンは1つであるが、複数であってもよい。
【0073】
可動金型105は、図16の状態から、固定金型103から離れる方向にスラスト移動することができ、さらに、固定金型103から離れた位置で回転軸O−Oを中心に回転することができる。この回転によって、第1固定型107と第1可動型113が対向してさらに第2固定型109と第2可動型115が対向する第1状態(図16)と、第1固定型107と第2可動型115が対向してさらに第2固定型109と第1可動型113が対向する第2状態(図23)との間で移行できる。可動金型105を回転駆動する機構としては、図17に示すように、金型回転装置163が設けられている。金型回転装置163は、モータ及び回転伝達装置を含んでおり、可動盤117を回転可能である。可動金型105をスラスト駆動する機構としては、図17に示すように、金型前後進装置165が設けられている。金型前後進装置165は、ピストンシリンダ及びスラスト力伝達装置を含んでおり、可動盤117をスラスト移動可能である。
【0074】
可動金型105には、さらに、図17に示すように、平坦面吸引装置171と、製品部吸引装置173が設けられている。平坦面吸引装置171は、第1吸引孔135に接続されている。製品部吸引装置173は、第2吸引孔137に接続されている。
【0075】
以上に述べた構造によって、第1固定型107と第1可動型113又は第2可動型115とによって一次成形部118が構成され、第2固定型109と第1可動型113又は第2可動型115とによって二次成形部119が構成される。
【0076】
制御部161は、CPU、RAM、ROMを含むコンピュータであり、各種プログラムを実行することで、制御動作を実行する。制御部161は、金型回転装置163,金型前後進装置165、第1樹脂射出装置167、第2樹脂射出装置169、平坦面吸引装置171、製品部吸引装置173、クランプ駆動装置175、長尺加飾シート駆動装置177を制御可能である。また、制御部161には、各種センサ179から検出信号が入力される。さらに、制御部161は、他の装置(例えば、搬送ロボット、枚葉加飾シート準備装置の制御部)と交信可能であってもよい。
【0077】
第1固定型107に対応して、第1樹脂射出装置167が設けられている。第1樹脂射出装置167は、第1部分キャビティ130に溶融樹脂を射出可能である。また、第2固定型109に対応して、第2樹脂射出装置169が設けられている。第2樹脂射出装置169は、第2部分キャビティ127に溶融樹脂を射出可能である。なお、図の簡略化のために、射出装置から金型への樹脂射出路は省略されている。
【0078】
なお、溶融樹脂としては、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、メタクリル酸メチル、ノリル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテフタレートがある。
(7)成形同時加飾装置の制御動作
図18〜図26を用いて、成形動作を説明する。図18は、成形同時加飾装置の制御動作を示すフローチャートである。図19〜図26は、成形同時加飾装置の一状態を示す模式的断面図である。
【0079】
図19では、可動金型105は固定金型103から離れており、両者の間に空間が確保されている。なお、図19では、すでに、第1可動型113の第1部分キャビティ130に一次成形品147(後述)が配置されている。
【0080】
ステップS101では、制御部161は、ロボット131が第2固定型109と第2可動型115との間に進入するのを待つ。ロボット131の進入は、各種センサ179からの検出信号によって検出されてもよいし、ロボット131からの信号によって検出されてもよい(以下、ロボットの位置検出に関しては同じ。)。ロボット131は、図19に示すように、支持部140と、支持部140の先端に設けられた吸着部143とを有している。吸着部143は、第2可動型115側を向いており、四角形である。吸着部143は、枚葉加飾シート141を吸着している。枚葉加飾シート141の四辺は、吸着部143の端面外側縁よりさらに外側にある。また、支持部140には、位置決めピン139が挿入可能な位置決め孔145が形成されている。
【0081】
枚葉加飾シート141は、基体シート33と、基体シート33上に設けられた加飾層35とから構成されている(図8を参照)。加飾層35は、例えば、表面保護層、絵柄層、接着層を有する。また、枚葉加飾シート141は、基体シート33と加飾層35との間に剥離層を有していてもよい。枚葉加飾シート141の種類としては、例えば、基体シート33が最終的に製品から剥離される転写シートと、基体シート33が製品に残るラミネートシートとがある。転写シートは基体シートの厚みが38〜50μmであり、ラミネートシートは基体シートの厚みが100〜400μmである。
【0082】
ステップS102では、制御部161は、クランプ駆動装置175に制御信号を送信することで、クランプ駆動装置175にクランプ133(133a、133b)を第1面129から離れた開放位置に移動させる。図19に示すように、一対の第1クランプ133aは、斜め外側に移動して、第1面129から離れる。
【0083】
ステップS103では、制御部161は、長尺加飾シート駆動装置177に制御信号を送信すすることで、長尺加飾シート駆動装置177に長尺加飾シート123(ロール状フィルム)を次の成形動作のために移動させる。
【0084】
長尺加飾シート123の層構成は、枚葉加飾シート141の層構成と同様であってもいし、異なっていてもよい。
【0085】
ステップS104では、制御部161は、図20に示すように、ロボット131が第2可動型115側に移動して、その結果、枚葉加飾シート141が第1面129に当接した状態でロボット131が停止するのを待つ。この成形同時加飾装置101では、位置決めピン139と位置決め孔145によって、ロボット131と第2可動型115との位置決めが機械的に行われるので、枚葉加飾シート141の第2可動型115に対する位置精度が向上し、さらにその後の成形同時加飾において転写精度が向上する。
【0086】
ステップS105では、制御部161は、平坦面吸引装置171に制御信号を送信することで、平坦面吸引装置171に枚葉加飾シート141の四辺部分を第1面129に吸着させる。このように第1吸引孔135が平坦な第1面129に形成されているので、供給される枚葉加飾シート141を位置ずれなく保持される。
【0087】
ステップS106では、制御部161は、クランプ駆動装置175に制御信号を送信することで、クランプ駆動装置175にクランプ133(133a、133b)を第1面129に密着したクランプ位置に配置させる。図20に示すように、一対の第1クランプ133aは、斜め内側に移動して、図21に示すように、第1面129に接触する。この結果、クランプ133(133a,133b)が枚葉加飾シート141の四辺を第1面129に押さえつける。このように、枚葉加飾シート141が平坦な第1面129に保持された後に、クランプ133によって機械的に枚葉加飾シート141に固定される。
【0088】
ステップS107では、制御部161は、製品部吸引装置173に制御信号を送信することで、図21に示すように、枚葉加飾シート141は、第1部分キャビティ130すなわち製品形状に密着した状態になる。
【0089】
ステップS108では、制御部161は、図21に示すように、ロボット131が第2可動型115から離れ、さらに固定金型103と可動金型105の間の空間から退避するのを待つ。
【0090】
ステップS109では、制御部161は、金型回転装置163に制御信号を送信して、金型回転装置163に可動金型105を180度回転させる。その結果、図22に示すように、第1固定型107に対して第2可動型115が対向して、第2固定型109に対して第1可動型113が対向する。
【0091】
ステップS110では、制御部161は、金型前後進装置165に対して制御信号を送信して、金型前後進装置165に可動金型105を固定金型103側に移動させる。この結果、図23に示すように、固定金型103と可動金型105とが密着する。
【0092】
ステップS111では、制御部161は、第1樹脂射出装置167に制御信号を送信して、第1樹脂射出装置167に一次成形用樹脂を第1部分キャビティ130に射出させる。一次成形用樹脂は、枚葉加飾シート141と、長尺加飾シート123との間に流れ込み、冷却後に第1樹脂部145となる。この結果、一次成形部118において一次成形品147が得られる。
【0093】
以上に述べたように、この装置では、最初に、平坦面吸引装置171が、枚葉加飾シート141を第2可動型115の平坦な第1面129に吸引する。次に、クランプ133が、枚葉加飾シート141を第2可動型115に対して押さえつける。さらに次に、製品部吸引装置173が、枚葉加飾シート141を第1部分キャビティ130に吸着する。最後に、第1樹脂射出装置167が、第1部分キャビティ130に溶融樹脂を射出する。以上の工程で枚葉加飾シート141は第2可動型115の第1部分キャビティ130に密着状態にされるので、枚葉加飾シート141の位置ズレが生じにくい。
【0094】
また、制御部161は、第2樹脂射出装置169に制御信号を送信して、第2樹脂射出装置169に二次成形用樹脂を第2部分キャビティ127に射出させる。二次成形用樹脂は、冷却後に、一次成形品147の長尺加飾シート123側の面に接着された第2樹脂部151になる。この結果、二次成形部119において二次成形品153が得られる。なお、図16は、成形同時加飾装置101の最初の製造サイクルを示しており、そのため二次成形品が製造されていない。
【0095】
ステップS112では、制御部161は、金型前後進装置165に対して制御信号を送信して、金型前後進装置165に可動金型105を固定金型103から離れるように移動させる。この結果、図24に示すように、固定金型103と可動金型105との間に空間が形成される。なお、図から明らかなように、この型開きの結果、一次成形品147は可動金型105側に残り、二次成形品153は固定金型103側に残る。
【0096】
ステップS113では、制御部161は、図25に示すように、ロボット(図示せず)が、上記空間内に進入して二次成形品153を取り出すのを待つ。
【0097】
ステップS113が終了すると、プロセスはステップS101に戻る。
(8)クランプの構造及び動作
図26〜図30を用いて、クランプ133(133a、133b)の構造及び動作について詳細に説明する。図26は、クランプが枚葉加飾シートをクランプしている状態の平面図である。図27は、クランプが開放位置にある状態の平面図である。図28〜図30は、搬入中の枚葉加飾シートと一対のクランプの位置関係を示す模式的断面図である。
【0098】
図26に示すように、クランプ133は、一対の第1クランプ133aと、一対の第2クランプ133bとから構成されている。一対の第1クランプ133aは、図において枚葉加飾シート141の左右両辺を押さえつけている。また、一対の第2クランプ133bは、図において枚葉加飾シート141の上下両辺を押さえつけている。より詳細には、各クランプ133a,133bは、枚葉加飾シート141の各辺に当接する第1部分133Aと、各辺より外側において第2可動型115の第1面129に当接する第2部分133Bとを有している。このように各クランプ133a,133bが枚葉加飾シート141の各辺の外側縁までを第2可動型115に押し付けているので、枚葉加飾シート141の第2可動型115に対する位置精度が向上し、さらにその後の成形同時加飾において転写精度が向上する。
【0099】
図27に示すように、クランプ133が開放位置に移動した場合、一対の第1クランプ133aは、すでに説明したようにクランプ位置から斜め外側に移動している。したがって、枚葉加飾シート141が第2可動型115に搬入されるときに枚葉加飾シートが一対の第1クランプ133aに接触することはない。以上のように、枚葉加飾シート141の搬入時に一対の第1クランプ133aがクランプ位置から第2可動型115に対して斜め外側に離れた開放位置にあるので、枚葉加飾シート141が一対の第1クランプ133aに接触しにくい。その結果、枚葉加飾シート141が変形又は損傷しにくい。この場合、前述の枚葉転写シート及び枚葉ラミネートシートのいずれであっても上記効果が得られるが、特に枚葉転写シートは厚みが薄くて剛性が低いので、上記場合に優れた効果が得られる。つまり、薄いシートであっても、位置合わせが正確になされ、さらに、しわが生じにくい。
【0100】
また、図27に示すように、一対の第2クランプ133bはクランプ位置から第1面129に対して垂直に移動している。ただし、図28に示すように、一対の第2クランプ133bの第1面129からの距離は互いに異なっている。したがって、ロボット131が枚葉加飾シート141を搬入してくるときに、図28に示すように最初に枚葉加飾シート141が一方の第2クランプ133bに接触し、次に図29に示すように枚葉加飾シート141が他方の第2クランプ133bに接触し、最後に図30に示すように枚葉加飾シート141が第1面129に当接する。以上のように、枚葉加飾シート141が一度に接触するクランプ部材の数が少なくなる。つまり、枚葉加飾シート141に一度に作用する抵抗が少なくなるので、その結果、枚葉加飾シート141が変形又は損傷しにくい。
【0101】
第1クランプ133aは、例えば、揺動可能なアームに固定されており、アームはクランプ駆動装置175(例えば、油圧シリンダ)に装着されている。第2クランプ133bは、例えば、図示しないロッドに固定されており、ロッドはクランプ駆動装置175(例えば、油圧シリンダ)に装着されている。なお、クランプは金型に設けられておらず、ロボットアームによって外から金型内に搬入されるものであってもよい。
【0102】
この成形同時加飾装置1によれば、例えば、表面及び裏面に加飾によって立体的な模様が設けられさらに裏面に嵌合用リブが設けられた携帯電話の筐体の蓋が製造される。表面及び裏面の加飾は、第1樹脂部145に透明の材料を用いて、さらに枚葉加飾シート141と長尺加飾シート123とによって第1樹脂部145を加飾することで得られる。リブは、第2樹脂部151によって形成される。
(9)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【0103】
金型の種類及び形状は特に限定されない。
【0104】
成形品の種類、構成及び形状は特に限定されない。
【0105】
成形同時加飾装置は、二材成形機でなくてもよい。二材成形機であっても、構造は前記実施形態に限定されない。例えば、一対の可動型の位置入れ替えは回転で行ったが、スライドで行ってもよい。
【0106】
クランプの種類の組合せは、前記実施形態に限定されない。
【0107】
前記実施形態では枚葉加飾シート準備装置と可動金型にロボット位置決め用ピンが設けられていたが、プログラムによって制御されるロボットの位置精度が許容範囲内であれば、位置決めピンは省略されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、枚葉加飾シート準備装置及びそれを含む射出成形システムに広く適用できる。
【符号の説明】
【0109】
1 射出成形システム
3 枚葉加飾シート準備装置
5 基体
9 保持装置
11 保持テーブル
13 保持面
15 テーブル駆動機構
16 孔
17 長尺加飾シート供給装置
19 長尺加飾シート
21 繰り出しローラ
23 先端
25 クランプ装置
27 クランプ部材
29 第1歯形状部分
31 シリコンゴム層
33 基体シート
35 加飾層
37 引出し装置
39 ハンド部
41 ハンド部材(把持部)
43 移動部
44 ローラ機構
45 第2歯形状部分
47 切断装置
49 ワイヤー供給装置
51 ワイヤー収納部
53 移動部
55 ワイヤー
57 センサユニット(位置検出装置)
59a、59b、59c センサ
61 制御部
62 入力部
63 ハンド駆動装置
65 クランプ駆動装置
67 吸着装置
71 位置決めピン(ロボット位置決め部材)
73a,73b、73c 切欠き
101 成形同時加飾装置
102 成形同時加飾用金型
118 一次成形部
119 二次成形部
131 ロボット
140 支持部
141 枚葉加飾シート
145 位置決め孔
143 吸着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットによって成形同時加飾装置に搬送される枚葉加飾シートを準備する枚葉加飾シート準備装置であって、
基体と、
長尺加飾シートを切断することで枚葉加飾シートを作成する切断装置と、
前記枚葉加飾シートを保持する保持面を有する保持テーブルと、
前記保持テーブルの前記保持面に保持された枚葉加飾シートの位置を検出する位置検出装置と、
位置検出結果に基づいて、前記枚葉加飾シートを前記基体に対して位置決めする位置決め装置と、
を備えた枚葉加飾シート準備装置。
【請求項2】
前記保持テーブルは、前記基体に対して所定平面内で移動可能に装着されており、
前記位置決め装置は、前記枚葉加飾シートを前記基体に対して位置決めするために、前記保持テーブルの位置を調整する、請求項1に記載の枚葉加飾シート準備装置。
【請求項3】
前記位置検出装置による位置検出と、前記位置決め装置による位置決めとは、複数回実行される、請求項2に記載の枚葉加飾シート準備装置。
【請求項4】
前記位置検出装置は、前記枚葉加飾シートの一端部を検出する複数の検出装置を有している、請求項1〜3のいずれかに記載の枚葉加飾シート準備装置。
【請求項5】
前記ロボットが前記枚葉加飾シートを前記保持テーブルから取り出すときに、前記ロボットを前記基体に対して位置決めするロボット位置決め部材をさらに備えている、請求項1〜4のいずれかに記載の枚葉加飾シート準備装置。
【請求項6】
前記長尺加飾シートを前記保持テーブルの前記保持面まで引き出す引出し装置をさらに備え、
前記切断装置は、前記長尺加飾シートが引き出された状態で前記長尺加飾シートを切断する、請求項1〜5のいずれかに記載の枚葉加飾シート準備装置。
【請求項7】
前記引出し装置は、前記長尺加飾シートの先端を把持する把持部と、前記把持部を移動させて前記長尺加飾シートを引き出す移動部とを有する、請求項6に記載の枚葉加飾シート準備装置。
【請求項8】
前記把持部は、前記長尺加飾シートの第1面に接触する金属面と、前記長尺加飾シートの第2面に接触するゴム面とを有している、請求項7に記載の枚葉加飾シート準備装置。
【請求項9】
前記引出し装置によって引き出される前に、前記長尺加飾シートの前記先端をクランプするクランプ装置をさらに備え、
前記クランプ装置は、前記長尺加飾シートの前記先端が位置する第1歯形状部分を有しており、
前記把持部は、前記第1歯形状部分に噛み合うような第2歯形状部分を有しており、
前記把持部が前記長尺加飾シートの前記先端を把持するときには、前記第2歯形状部分が前記第1歯形状部分に噛み合った位置にある、請求項7又は8に記載の枚葉加飾シート準備装置。
【請求項10】
前記引出し装置が前記長尺加飾シートを引き出すときに、前記長尺加飾シートが前記保持面から離れないように前記長尺加飾シートの移動を規制するワイヤーをさらに備えている、請求項6〜9のいずれかに記載の枚葉加飾シート準備装置
【請求項11】
前記保持テーブルは、前記保持面に開口した複数の孔と、前記複数の孔から空気を吸引することで前記枚葉加飾シートを前記保持面に吸着する吸着装置とをさらに有している、請求項1〜10のいずれかに記載の枚葉加飾シート準備装置。
【請求項12】
前記吸着装置は、前記複数の孔による吸着を行う領域を前記枚葉加飾シートの寸法に合わせて変更できる、請求項11に記載の枚葉加飾シート準備装置。
【請求項13】
前記吸着装置は、前記複数の孔による吸着を行う領域を段階的に増減できる、請求項11又は12に記載の枚葉加飾シート準備装置。
【請求項14】
前記枚葉加飾シートを前記保持面に沿わせるためのローラをさらに備えている、請求項1〜13のいずれかに記載の枚葉加飾シート準備装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の枚葉加飾シート準備装置と、
前記枚葉加飾シートを用いて成形同時加飾を行う成形同時加飾装置と、
前記枚葉加飾シート準備装置から前記成形同時加飾装置に前記枚葉加飾シートを搬送するロボットと、
を備えた射出成形システム。
【請求項16】
前記成形同時加飾装置は、前記ロボットが前記枚葉加飾シートを前記成形同時加飾装置に搬入するときに、前記ロボットを前記成形同時加飾装置に位置決めする第2ロボット位置決め部材を有している、請求項15に記載の射出成形システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−232420(P2012−232420A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100595(P2011−100595)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】