説明

果汁飲料及びその製造方法

【課題】果汁本来の濃度感、果汁感等を十分に感じることができるとともに、香味等のバランスが良好であり、かつ低コストで製造可能な果汁飲料及び当該果汁飲料の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の果汁飲料は、果汁と、発酵果汁と、食酢とを配合してなる。これにより、当該果汁飲料の摂飲時において、濃度感、果汁感等を十分に感じることができるとともに、当該果汁飲料を低コストで製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果汁飲料及び当該果汁飲料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
果汁飲料は、年齢や性別を問わず広く摂取されている嗜好性の高い飲料の一つである。かかる果汁飲料としては、摂飲時における濃度感、果汁感等を強く感じることができるが、すっきりとした味わいが感じられるものが望まれている現状がある。
【0003】
果汁含量1質量%未満の無果汁飲料や、1質量%以上30質量%未満の低果汁飲料であれば、すっきりとした味わいが感じられるものの、濃度感、果汁感等が弱いという問題があるため、そのような飲料においても、摂飲時における濃度感や果汁感等を強く感じることができるように、従来、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50以上であるグルカンを有効成分として含有する果汁感向上剤を無果汁飲料や低果汁飲料に配合する方法(特許文献1)、飲食物の風味改善という観点から、ヘスペリジン配糖体を添加することで果汁の苦味をマスキングし、果汁感を向上させる方法(特許文献2)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−289836号公報
【特許文献2】特開平11−318379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の方法では、十分な果汁感を得ることができず、また、濃度感においても不十分であり、消費者の望む果汁飲料を提供するに至っていなかった。
【0006】
果汁飲料中における果汁の配合量を増加させれば、摂飲時に、果汁本来の濃度感、果汁感等を強く感じることのできる果汁飲料とすることも可能であるが、果汁の配合量を多くすると、果汁飲料自体の香味等を調整するのが困難となる場合があり、製造コストが増加してしまうという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、果汁本来の濃度感、果汁感等を十分に感じることができるとともに、香味等のバランスが良好であり、かつ低コストで製造可能な果汁飲料及び当該果汁飲料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、果汁と、発酵果汁と、食酢とを配合してなることを特徴とする果汁飲料を提供する(発明1)。かかる発明(発明1)によれば、果汁とともに、発酵果汁及び食酢を配合することで、果汁の配合量を増加させることなく、果汁本来の果汁感及び濃度感を強く感じるものとすることができ、かつ香味等のバランスを良好にすることができ、また、低コストで果汁飲料を製造することができる。
【0009】
上記発明(発明1)においては、前記果汁の配合量が、ストレート果汁換算で0.1〜50質量%であるのが好ましい(発明2)。かかる発明(発明2)によれば、果汁含有量が上記範囲内であることで、すっきりとした味わいを感じることができるとともに、果汁本来の果汁感及び濃度感を強く感じることができる。
【0010】
上記発明(発明1,2)においては、前記食酢の配合量が、酢酸換算で0.025〜0.3質量%であるのが好ましい(発明3)。かかる発明(発明3)によれば、果汁本来の果汁感及び濃度感をより強く感じることができるとともに、香味等のバランスを良好にすることができる。
【0011】
上記発明(発明1〜3)においては、前記食酢として、果実酢、穀物酢及び黒酢からなる群より選択される1種又は2種以上を用いることができる(発明4)。
【0012】
上記発明(発明1〜4)においては、前記果汁飲料が、加温販売用果汁飲料であるのが好ましい(発明5)。
【0013】
また、本発明は、果汁と、食酢と、発酵果汁とを配合することを特徴とする果汁飲料の製造方法を提供する(発明6)。
【0014】
上記発明(発明6)においては、前記果汁を、前記果汁飲料全量に対してストレート果汁換算で0.1〜50質量%配合するのが好ましく(発明7)、前記食酢を、前記果汁飲料全量に対して酢酸換算で0.025〜0.3質量%配合するのが好ましい(発明8)。
【0015】
上記発明(発明6〜8)においては、前記食酢として、果実酢、穀物酢及び黒酢からなる群より選択される1種又は2種以上を用いることができる(発明9)。
【0016】
上記発明(発明6〜9)においては、前記果汁飲料が、加温販売用果汁飲料であるのが好ましい(発明10)。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、果汁本来の濃度感、果汁感等を十分に感じることができるとともに、香味等のバランスが良好であり、かつ低コストで製造可能な果汁飲料及び当該果汁飲料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る果汁飲料は、果汁と、発酵果汁と、食酢とを配合してなるものである。なお、本実施形態において、単に「果汁」と表記するときは、発酵処理を一切行っていない果汁、すなわち不発酵果汁のことを意味するものとする。
【0019】
本実施形態に係る果汁飲料に含まれる果汁としては、特に限定されるものではなく、レモン果汁、ユズ果汁、オレンジ果汁、グレープフルーツ果汁等の柑橘類果汁、リンゴ果汁、モモ果汁、ブドウ果汁、パインアップル果汁、バナナ果汁等が挙げられる。これらのうち、少なくとも1種を用いればよいが、リンゴ果汁を好適に用いることができる。
【0020】
また、上記果汁には、果実の搾汁液を濃縮又は希釈していないストレート果汁、搾汁液を濃縮した濃縮果汁、濃縮果汁をさらに希釈した還元果汁等が含まれる。さらに、上記果汁には、果実の搾汁液に酵素処理等を施すことで清澄化した透明果汁、果実に由来する混濁成分や不溶性成分等の固形分を含む混濁果汁、果実の破砕物を裏ごしして得られるピューレ等が含まれる。本実施形態においては、これらの果汁のうちの1種を用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】
本実施形態に係る果汁飲料に含まれる発酵果汁としては、特に限定されるものではないが、上記果汁を乳酸菌又は酵母等を用いて発酵させてなるものを用いることができる。
【0022】
発酵果汁を製造する方法としては、特に限定されるものではなく、常法であればよい。例えば、上記果汁に所望によりリン酸一カリウム等のpH調整剤を添加して当該果汁のpHを2.0〜7.0に調整し、乳酸菌又は酵母を加えて、5〜45℃で1〜100時間程度発酵させることにより得ることができる。なお、発酵条件(pH、温度、時間等の条件)は、使用する乳酸菌又は酵母の種類等に応じて適宜設定されればよい。
【0023】
上記乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(streptococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、オエノコッカス(Oenococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属等に属する乳酸菌等を用いることができ、より具体的には、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・プランタラム、ストレプトコッカス・サーモフィラス、ラクトコッカス・ラクティス、オエノコッカス・オエニー、ペディオコッカス・ペントサセウス等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
また、上記酵母としては、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属に属するサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の酵母、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属に属する酵母、チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)属に属する酵母等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
なお、上記果汁及び上記発酵果汁は、同一種類の果実から得られたものを用いてもよいし、異なる種類の果実から得られたものを用いてもよく、製造しようとする果汁飲料の呈味や風味に応じて、適宜使用する果汁及び発酵果汁を選択すればよい。
【0026】
本実施形態に係る果汁飲料に含まれる食酢とは、穀物、果実等を原料として用い、アセトバクター(Acetobacter)属に属する酢酸菌により酢酸発酵して得られるものであって、少なくとも酢酸の含有量がJAS規格(醸造酢の日本農林規格)に規定する基準を満たしているものを意味する。当該食酢としては、例えば、果実酢;米、麦及びとうもろこし等を原料として得られる酢、米酢等の穀物酢;黒酢等が挙げられ、これらのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
上記果実酢としては、特に限定されるものではなく、例えば、りんご酢、ぶどう酢、レモン酢、パインアップル酢、ブルーベリー酢、梅果実酢等を例示することができるが、りんご酢を用いるのが好ましい。
【0028】
なお、食酢として果実酢を用いる場合、上記果汁及び発酵果汁の原料となる果実と同一種類の果実から得られた果実酢を用いてもよいし、異なる種類の果実から得られた果実酢を用いてもよく、製造しようとする果汁飲料の呈味、風味等に応じて適宜選択すればよい。
【0029】
上記果汁の配合量は、ストレート果汁換算で0.1〜50質量%であるのが好ましく、1.0〜30質量%であるのがより好ましく、5.0〜20質量%であるのが特に好ましい。果汁の配合量が50質量%を超えると、果汁感や濃度感は強く感じられるものの、すっきりとした味わいを感じるのが困難となるおそれがある。
【0030】
上記発酵果汁の配合量は、ストレート果汁換算で0.1〜30質量%であるのが好ましく、0.2〜20質量%であるのがより好ましく、0.5〜10質量%であるのが特に好ましい。発酵果汁の配合量が0.1質量%未満であると、果汁本来の果汁感及び濃度感を十分に感じることができないおそれがあり、30質量%を超えると、嗜好性の低い果汁飲料となるおそれがある。
【0031】
上記食酢の配合量は、酢酸換算で0.025〜0.3質量%であるのが好ましく、0.03〜0.2質量%であるのがより好ましく、0.035〜0.1質量%であるのが特に好ましい。食酢の配合量が0.025質量%未満であると、果汁本来の果汁感及び濃度感を十分に感じることが困難となるおそれがあり、0.3質量%を超えると、食酢に由来する酸味が強くなり、飲みにくく、嗜好性の低い果汁飲料となるおそれがある。
【0032】
本実施形態に係る果汁飲料のpHは、2.0〜5.0であるのが好ましく、2.5〜4.5であるのがより好ましい。果汁飲料のpHが上記範囲であれば、果実(果汁)の呈味を損なうことなくほどよい酸味を与えることができる。
【0033】
なお、本実施形態に係る果汁飲料は、所望により、砂糖、ブドウ糖、果糖、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖、高果糖液糖、オリゴ糖、トレハロース、キシリトール、スクラロース、アセスルファムカリウム、ネオテーム、アスパルテーム、はちみつ、イソマルツロース、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ステビア抽出物、ソルビトール、カンゾウ抽出物、ラカンカ抽出物等の砂糖類及び甘味料;ペクチン、ゼラチン、コラーゲン、寒天、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、大豆多糖類、アラビアガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム等の増粘安定剤;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料;アスコルビン酸等の酸化防止剤;炭酸水素ナトリウム(重曹)、クエン酸ナトリウム等のpH調整剤;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤;食物繊維、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナイアシン、パントテン酸等の強化剤;各種乳酸菌;各種香料;各種色素等をさらに含有していてもよい。
【0034】
本実施形態に係る果汁飲料は、PETボトル、ガラスビン、缶等の容器に充填した形態で提供することができる。また、本実施形態に係る果汁飲料は、50〜70℃程度で加温されて販売に供される加温販売用果汁飲料であってもよいし、冷温販売用果汁飲料であってもよいが、加温時において、濃度感、果汁感等に優れるとともに、飲みやすく嗜好性の高いものとなることから、加温販売用果汁飲料であるのが好ましい。
【0035】
本実施形態に係る果汁飲料は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、まず、市水、井水、イオン交換水、脱気水等の飲用に適した水に果汁、発酵果汁及び食酢を上述したような配合量となるように添加し、所望によりその他の食品添加物等をさらに添加して攪拌し、飲料原液を調製する。
【0036】
上述のようにして得られた飲料原液にpH調整剤等を添加することにより、飲料原液のpHを所定の範囲に調整する。その後、pHを調整した飲料原液を加熱殺菌して密閉容器等に充填する。このようにして、本実施形態に係る果汁飲料を製造することができる。
【0037】
このようにして得られる本実施形態に係る果汁飲料によれば、果汁と、発酵果汁と、食酢とを配合してなることで、摂飲時において、濃度感、果汁感等を強く感じることができ、さらには香味等のバランスを良好にすることができ、飲みやすく、嗜好性の高いものとすることができる。特に、加温販売用果汁飲料とすることによって、果汁本来の濃度感、果汁感等をより強く感じることができる。
【0038】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0040】
〔実施例1,比較例1〜5〕
表1に示す配合に従って飲料原料を混合し、得られた混合物を95℃まで加温し、PETボトルに充填することで、果汁飲料(実施例1、比較例1〜5)を製造した。各果汁飲料において、りんご果汁として、ブリックスがJAS規格(果実飲料の日本農林規格)の規定に準ずるリンゴ透明濃縮果汁を用い、発酵果汁として、酵母発酵の発酵りんご果汁(ブリックス30)を用い、果実酢として、酢酸発酵したりんご酢(酢酸含有量:4.5質量%)を用いた。また、各果汁飲料のブリックスが11.00%、酸度が0.30%となるように、果糖ブドウ糖液糖及びクエン酸の配合量を調整した。なお、表1中、りんご果汁及び発酵果汁の配合量(質量%)は、ストレート果汁換算値であり、果実酢の配合量(質量%)は、酢酸換算値である。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例1及び比較例1〜5の果汁飲料について、官能評価を行った。かかる官能評価は、果汁飲料の開発を担当する訓練された5名のパネラーにより、25℃、60℃に調整した各果汁飲料の果汁感、濃度感、飲みやすさ及び嗜好性の4項目に関し、実施例1の果汁飲料における当該4項目の評価点をそれぞれ3点とした上で当該実施例1の果汁飲料を比較対象として、表2に示す判断基準に従って5段階で評価した。25℃の果汁飲料についての結果を表3に、60℃の果汁飲料についての結果を表4に示す。なお、表3及び4中、平均点は、5人のパネラーの評価点の平均値を示すものであり、評価は、平均点を四捨五入した点数が1点のものを「×」、2点のものを「△」、3点のものを「○」、4点及び5点のものを「◎」とし、総合評価は、各項目についての評価のうちの最低評価を採用した。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
表3及び4に示すように、果汁、発酵果汁及び果実酢(食酢)を配合した実施例1の果汁飲料は、発酵果汁及び果実酢を含まない比較例1の果汁飲料、果実酢を含むが発酵果汁を含まない比較例2の果汁飲料に比して、果汁本来の濃度感、果汁感を十分に強く感じることができるとともに、香味等のバランスが良好であることが判明した。
【0047】
また、比較例3の果汁飲料は、実施例1の果汁飲料よりも果汁配合量が多いにもかかわらず、果汁感及び濃度感、特に果汁感に劣る結果となった。さらに、比較例3の果汁飲料にさらに果実酢を配合した比較例4の果汁飲料は、実施例1の果汁飲料と同等の果汁感及び濃度感を感じることができるものであったが、飲みやすさ及び嗜好性の点で劣る結果となった。
【0048】
さらにまた、比較例3の果汁飲料よりもさらに果汁配合量を増加させた比較例5の果汁飲料は、実施例1の果汁飲料と同等の果汁感及び濃度感を感じることができるものであったが、果汁配合量が多くなることで、飲みやすさや嗜好性の点で劣る結果となった。
【0049】
この結果から、果汁飲料に果汁と、発酵果汁と、果実酢(食酢)とを配合することで、優れた果汁感及び濃度感を奏することができるとともに、飲みやすく嗜好性の高いものとすることができ、特に果汁配合量を10〜30質量%程度に低減させた果汁飲料であっても、果汁感及び濃度感を強く感じることができ、かつ香味等のバランスを良好にすることができると判明した。
【0050】
〔実施例2〜8〕
表5に示す配合に従って飲料原料を混合し、各果汁飲料のブリックスが11.00%、酸度が0.40%となるように果糖ブドウ糖液糖及びクエン酸の配合量を調整した以外は実施例1と同様にして果汁飲料(実施例2〜8)を製造した。各果汁飲料において、りんご果汁として、ブリックスがJAS規格(果実飲料の日本農林規格)の規定に準ずるリンゴ透明濃縮果汁を用い、発酵果汁として、酵母発酵の発酵りんご果汁(ブリックス30)を用い、果実酢として、酢酸発酵したりんご酢(酢酸含有量:4.5質量%)を用いた。なお、表5中、りんご果汁及び発酵果汁の配合量(質量%)は、ストレート果汁換算値であり、果実酢の配合量(質量%)は、酢酸換算値である。
【0051】
【表5】

【0052】
実施例2〜8の果汁飲料について、官能評価を行った。かかる官能評価は、果汁飲料の開発を担当する訓練された5名のパネラーにより、25℃、60℃に調整した各果汁飲料に関し、果汁感、濃度感、飲みやすさ及び嗜好性の4項目を、表6に示す判断基準に従って5段階で評価した。25℃の果汁飲料についての結果を表7に、60℃の果汁飲料についての結果を表8に示す。なお、表7及び8中、平均点は、5人のパネラーの評価点の平均値を示すものであり、評価は、平均点を四捨五入した点数が1点のものを「×」、2点のものを「△」、3点のものを「○」、4点及び5点のものを「◎」とし、総合評価は、各項目の平均点を四捨五入した点数の合計が1〜4点のものを「×」、5〜11点のものを「△」、12〜14点のものを「○」、15〜20点のものを「◎」とした。
【0053】
【表6】

【0054】
【表7】

【0055】
【表8】

【0056】
表7及び8に示すように、発酵果汁の配合量が5質量%(ストレート果汁換算)である実施例2の果汁飲料、及び果実酢の配合量が0.0225質量%(酢酸換算)である実施例5の果汁飲料では、果汁本来の果汁感及び濃度感を十分に感じることが困難であることが判明した。
【0057】
また、果実酢の配合量が0.36質量%(酢酸換算)である実施例3の果汁飲料では、果実酢に由来する酸味が強く出てしまい、飲みやすさ及び嗜好性の点で低評価となった。
【0058】
さらに、発酵果汁の配合量が40質量%(ストレート果汁換算)である実施例4の果汁飲料は、果汁本来の果汁感及び濃度感を十分に感じることができるものの、嗜好性の観点で低評価となった。
【0059】
一方で、発酵果汁の配合量が10〜25質量%(ストレート果汁換算)及び果実酢の配合量が0.0675〜0.18質量%(酢酸換算)である実施例6〜8の果汁飲料は、果汁本来の果汁感及び濃度感を十分に感じることができるとともに、飲みやすく、嗜好性の高いものであった。したがって、果汁、発酵果汁及び果実酢を配合するとともに、発酵果汁の配合量(ストレート果汁換算)を10〜30質量%及び果実酢の配合量(酢酸換算)を0.025〜0.3質量%とすることで、果汁本来の果汁感及び濃度感を十分に強く感じることができるとともに、飲みやすく、嗜好性の高い果汁飲料とすることができることが確認された。
【0060】
また、表7及び8の結果を比較すると、実施例2〜5の果汁飲料においては、加温するか否かによる有意な差は見られなかったが、実施例6〜8の果汁飲料においては、60℃に加温した方が、4つの項目(果汁感、濃度感、飲みやすさ、嗜好性)のすべてにおいて相対的に向上することが確認された。
【0061】
以上の結果から、果汁をストレート果汁換算で10質量%、発酵果汁をストレート果汁換算で10〜30質量%、及び果実酢を酢酸換算で0.025〜0.3質量%配合することによって、果汁本来の果汁感及び濃度感、飲みやすさ、並びに嗜好性の観点に優れた果汁飲料とすることができ、発酵果汁をストレート果汁換算で20質量%、及び果実酢を酢酸換算で0.135質量%配合することで、最もバランスの整った果汁飲料とすることができると考えられる。また、特に、加温販売用果汁飲料としたときに、果汁本来の果汁感及び濃度感をより強く感じることができ、かつ飲みやすく、嗜好性の高い果汁飲料とすることができると考えられる。
【0062】
〔実施例9〜11,比較例6〕
表9に示す配合に従って飲料原料を混合し、実施例7と同様にして果汁飲料(実施例9〜11,比較例6〜7)を製造した。各果汁飲料において、特に示さない限り、りんご果汁として、ブリックスがJAS規格(果実飲料の日本農林規格)の規定に準ずるリンゴ透明濃縮果汁を用い、発酵果汁として、酵母発酵の発酵りんご果汁(ブリックス30)を用い、果実酢として、酢酸発酵したりんご酢(酢酸含有量:4.5質量%)を用いた。なお、実施例9の果汁飲料は、食酢として穀物酢(酢酸含有量:4.2質量%)を用い、実施例10の果汁飲料は、食酢として黒酢(酢酸含有量:4.5質量%)を用い、実施例11の果汁飲料は、発酵果汁として乳酸発酵の発酵りんご果汁(ブリックス20)を用いた。また、表9中、りんご果汁及び発酵果汁の配合量(質量%)は、ストレート果汁換算値であり、食酢の配合量(質量%)は、酢酸換算値である。
【0063】
【表9】

【0064】
実施例9〜11、並びに比較例6及び7の果汁飲料について、官能評価を行った。かかる官能評価は、果汁飲料の開発を担当する訓練された5名のパネラーにより、25℃、60℃に調整した各果汁飲料の果汁感、濃度感、飲みやすさ及び嗜好性の4項目に関し、実施例7の果汁飲料における当該4項目の評価点を3点とした上で当該実施例7の果汁飲料を比較対象として、表2に示す判断基準に従って5段階で評価した。25℃の果汁飲料についての結果を表10に、60℃の果汁飲料についての結果を表11に示す。なお、表10及び11中、平均点は、5人のパネラーの評価点の平均値を示すものであり、評価は、平均点を四捨五入した点数が1点のものを「×」、2点のものを「△」、3点のものを「○」、4点及び5点のものを「◎」とし、総合評価は、各項目の平均点を四捨五入した点数の合計が1〜4点のものを「×」、5〜11点のものを「△」、12〜14点のものを「○」、15〜20点のものを「◎」とした。
【0065】
【表10】

【0066】
【表11】

【0067】
表10及び11に示すように、発酵果汁を含有せずに果実酢を酢酸換算で0.135質量%配合した比較例6の果汁飲料は、実施例7の果汁飲料よりも全体的に低評価となった。また、発酵果汁をストレート果汁換算で20質量%配合し果実酢を配合していない比較例7の果汁飲料は、実施例7の果汁飲料よりも果汁感の点で低評価となった。この結果から、果汁、発酵果汁及び果実酢の相乗作用によって果汁本来の果汁感及び濃度感を強く感じることができるとともに、飲みやすく、かつ嗜好性の高い果汁飲料とすることができるものと考えられる。
【0068】
一方、果実酢に替えて穀物酢を配合した実施例9の果汁飲料及び黒酢を配合した実施例10の果汁飲料は、実施例7の果汁飲料と同等の評価を得ることができた。したがって、食酢の種類による有意差はないと考えられる。
【0069】
また、発酵果汁として乳酸発酵させた果汁を配合した実施例11の果汁飲料は、実施例7の果汁飲料と同等の評価を得ることができた。したがって、発酵果汁の発酵方法に依存することなく、発酵させた果汁を配合することで、果汁本来の果汁感及び濃度感を十分に強く感じることができるものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
果汁と、発酵果汁と、食酢とを配合してなることを特徴とする果汁飲料。
【請求項2】
前記果汁の配合量が、ストレート果汁換算で0.1〜50質量%であることを特徴とする請求項1に記載の果汁飲料。
【請求項3】
前記食酢の配合量が、酢酸換算で0.025〜0.3質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の果汁飲料。
【請求項4】
前記食酢が、果実酢、穀物酢及び黒酢からなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の果汁飲料。
【請求項5】
前記果汁飲料が、加温販売用果汁飲料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の果汁飲料。
【請求項6】
果汁と、発酵果汁と、食酢とを配合することを特徴とする果汁飲料の製造方法。
【請求項7】
前記果汁を、前記果汁飲料全量に対してストレート果汁換算で0.1〜50質量%配合することを特徴とする請求項6に記載の果汁飲料の製造方法。
【請求項8】
前記食酢を、前記果汁飲料全量に対して酢酸換算で0.025〜0.3質量%配合することを特徴とする請求項6又は7に記載の果汁飲料の製造方法。
【請求項9】
前記食酢が、果実酢、穀物酢及び黒酢からなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の果汁飲料の製造方法。
【請求項10】
前記果汁飲料が、加温販売用果汁飲料であることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の果汁飲料の製造方法。