説明

果菜植物栽培方法

【課題】 一つの苗から長期間に亘って良質な果菜を連続して収穫できる栽培方法を実現することにある。
【解決手段】 苗から出る二本又は複数本の枝の成長開始に日数差を持たせ、先に成長を開始させた先枝と後から成長を開始させた後枝の日数差は、先枝の最上段又はその近くの段の花房の開花時に後枝の最下段又はその近くの段の花房が開花する日数差とする。成長日数差を持って成長させる枝は果菜収穫後に切断する。二本又は複数本の枝の日数差のある成長開始、収穫後の先枝の切断、その後の後枝の前記日数差の成長開始を繰り返して栽培を継続し、先枝の収穫終了頃に後枝の収穫を開始して切れ目なく継続して収穫できるようにする。先枝の成長開始から後枝の成長開始までは他の芽を摘心して先枝と後枝に養分が行き渡るようにする。後枝用の芽と予備芽の双方を育成して、後枝用の芽が順調に生育しなくても予備芽を後枝として確実に成長させることができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は例えば、ナス、トマト、ピーマンなどのナス科の植物、キュウリ、ウリなどのウリ科の植物、その他の各種果菜植物の栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
果菜植物は成長する主枝、側枝、蔓、茎等(以下、これらをまとめて「枝」という)を誘引しながら苗の上方の支持具まで成長させ、その後は枝を斜め横方向に誘引して成長を続けるのが通常である。その一例として特許文献1に記載の方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−328824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の栽培方法には次のような課題があった。
(1)枝が成長し過ぎると先端部の果菜まで栄養が行き届きにくくなり、先端部に結実する果菜と下段に結実する果菜とが同品質になり難く、一本の枝から収穫する果菜に品質のばらつきが生ずることがある。
(2)枝を伸ばし続けて収穫するため、数ヶ月もすると枝が疲弊して収量の減少や品質の低下といった問題を招くことがある。この場合、苗を新たに植え替えなければならず、その植え替え中は収穫が出来ず、減収の一因となっている。
(3)枝を斜め横方向に誘引すると隣接する枝の隙間が狭くなり、隣接する枝、葉、果菜が相互に接触して、枝葉の損傷や果菜の落下を招くことがある。
(4)隣接枝の隙間が狭くなると通気性や日当たりが悪くなり、植物や果菜の成長、果菜の色付きが遅くなり、場合によっては収量が低減することもある。また、葉掻き・芽掻きといった作業がし難くなり、作業性が悪くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明の課題は、前記諸課題を解消でき、均一で良好な品質の果菜の増収を期待でき、一本の苗からこれまでの栽培方法よりも長期に亘って収穫を継続できる果菜植物栽培方法を提供することにある。
【0006】
本願発明の果菜植物栽培方法は、苗から枝を二本又は複数本成長させ、二本又は複数本の枝は成長日数差を持たせて成長を開始させ、夫々の枝を所定の花房数まで成長させ、その成長日数差は先に成長開始した先枝の最上段又はその近くの段の花房の開花時に、後から成長開始した後枝の最下段又はその近くの段の花房が開花する日数差とし、成長日数差を持って成長させる各枝はその果菜収穫後に切断し、枝の切断後は新たな枝をその前に成長開始した枝と前記成長日数差をもって成長を開始させ、前記成長日数差を持たせた二本又は複数本の枝の成長開始、収穫後の枝の切断、その後の後枝の日数差のある成長開始を繰り返して栽培するようにした。この場合、後枝は、先枝の2乃至7段目のいずれかの花房が開花する程度の成長日数差を持って成長を開始させ、先枝と後枝の果菜収穫を継続できるようにした。先枝の成長開始から後枝の成長開始まで他の芽を摘心して、養分が成長中の先枝と後枝に行き渡らせるようにした。後枝用の芽と予備芽の双方を育成し、後枝用の芽が順調に生育しないときは、予備芽を後枝として成長させることができるようにした。
【0007】
本願発明の果菜植物栽培方法では、成長させる先枝と後枝を、栽培床の幅方向反対側に間隔をあけて、又は苗の植え付け方向に間隔をあけて、又は苗の周囲の任意方向に間隔をあけて誘引する。
【発明の効果】
【0008】
本願発明の果菜植物栽培方法には次のような効果がある。
(1)同時に二本又は数本の枝しか成長させないので、成長中の枝に養分が集中し、枝を順調に成長させることができ、品質の良い果菜を収穫できる。
(2)成長させる先枝と後枝の成長開始に日数差を持たせるので、両枝の葉掻き・芽掻き、消毒といった作業時期、果菜収穫時期がずれ、作業の繁忙が解消される。
(3)先枝の果菜収穫終了後はその枝を切断して新たな枝を成長させるので、成長、収穫に無関係な枝がなく、成長中の枝に養分が行き渡り易くなり、下段から上段までの花房の果菜が高品質になり、一本の枝の下段と上段の果菜に品質のばらつきがない。
(4)一本の苗から成長開始時期をずらして新たな枝を成長させ、それを繰り返すので、一本の苗から長期間に亘って果菜を収穫でき、増収を実現できる。また、苗の植え替え間隔(スパン)を長くできるので植え替えに要する手間や資材が低減し、植え替えのためのコストも低減し、植え替えに伴う収穫不能日数が減るため増収に繋がる。
(5)先枝の成長開始後から後枝の成長開始までは他の枝や芽などを摘心するので成長中の枝に養分が集中し、枝の成長が促進され、品質の良い果菜に成長させることができる。
(6)後枝用と予備枝用の双方の芽を育成させて、後枝用の芽が順調に成長しないときは予備枝用の芽を成長させて後枝とするので後枝を絶やすことなく成長させることができる。
(7)成長日数差を持って成長させる枝を栽培床の幅方向反対側に、又は栽培床の苗植え付け方向に、又は苗の周囲の所望方向に間隔をあけて誘引するので、狭いスペース内で効率良く枝間隔を確保でき、枝や果菜への日当りや枝間の通気性が良くなって枝及び果菜が成長しやすくなり、品質の良好な果菜を短期間で収穫でき収量の増加も可能となる。また、隣接する果菜同士の接触による損傷・落果を防止することができるうえ、葉掻き・芽掻き、消毒、収穫といった各種作業もしやすくなる。
(8)一般に、隣接苗の間隔(株間)は500mm程度にされるが、成長日数差を持って成長させる枝を栽培床の幅方向反対側に誘引する場合、株間を狭くしても(例えば、株間400mm程度としても)隣接苗の枝葉や果菜同士の接触を回避できるので、枝葉や果菜が接触することによる前記問題は生じない。また、株間を狭くすることができるので一栽培床Aに植える苗1の本数を増やすことができ、生産性を高めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明の果菜植物栽培方法の実施形態の一例を示す斜視図。
【図2】本願発明の果菜植物栽培方法の一例を示すもので、(a)は第二成長枝の成長開始時の状態を示す正面図、(b)は第一成長枝上段と第二成長枝下段の開花のタイミングを示す正面図、(c)は第一成長枝の切断後に第二成長枝から出る芽を第三成長枝として成長させる様子を示す正面図、(d)は第二成長枝の切断後に第三成長枝から出る芽を新たな枝として成長させる様子を示す正面図。
【図3】仕切りシートで仕切った栽培床で本願発明の果菜植物栽培方法を実施する場合の一例を示す正面図。
【図4】苗からでる二本の枝を同方向に間隔をあけて誘引する場合の一例を示すもので、(a)は長手方向に連続して定植した全ての苗から出る枝を同方向に誘引する場合の斜視図、(b)は苗単位で枝の誘引方向を交互に入れ替える場合の斜視図。
【図5】本願発明の果菜植物栽培方法の一例を示すものであって、(a)は苗から出る枝を四方に誘引する場合の一例を示す斜視図、(b)はその平面図。
【図6】本願発明の果菜植物栽培方法において、後枝と同時期に予備枝をも成長させる場合の実施形態の一例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願発明の果菜植物栽培方法の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態は、農業用ハウス内の栽培床A(図1)でトマトを栽培し、成長させる各枝の最上段を5段目までとした場合の例である。以下の説明では先に成長を開始させる枝を「先枝」と、後から成長を開始させる枝を「後枝」と、n番目に成長させる枝を「第n成長枝」という。なお、「先枝」と「後枝」は相対的な概念であり、例えば、第二成長枝は、第一成長枝との関係では「後枝」となり、第三成長枝との関係では「先枝」となる。
【0011】
(実施形態1)
本願発明の果菜植物栽培方法の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。本願発明の果菜植物栽培方法は一本の苗から成長させる枝を所定の成長日数差を持って成長させ、それらの枝を栽培床A(例えば畝)の幅方向反対側上方に交互に誘引する場合の例である。
【0012】
(第一成長枝の成長開始)
図1では苗1が栽培床Aに一定間隔で定植されている。本願発明ではこの一本の苗1から一本の枝を第一成長枝2として成長させ、その第一成長枝2を栽培床Aの上方に架設した二本の支持材4a、4bから吊り下げてある紐や線材などの誘引具5に誘引する。この場合、プラスチック製のリングや紐などの連結材6で第一成長枝2を誘引具5に係止することができる。
【0013】
(第二成長枝の成長開始)
前記第一成長枝2の成長途中までは前記苗1から出る他の芽や葉などは芽掻き、葉掻きして成長を止めておき、第一成長枝2の所望段の花房が開花する頃に、前記苗1又は第一成長枝2から出た芽のうち任意に選択した一つの芽を第二成長枝7として成長を開始させる(図2(b))。より具体的には、第二成長枝7(後枝)は、第一成長枝2(先枝)の5段目(最上段)の花房が開花する頃に第二成長枝7の1段目(最下段)の花房が開花する成長日数差(日数遅れ)を持って成長を開始することが望ましい。この成長日数差を実現するためには、第一成長枝2の2.5段目の花房が開花するタイミング(2段目の花房の開花後であって、3段目の花房の開花前のタイミング)で第二成長枝7の成長を開始することが望ましい。後枝の成長を開始させるタイミングは、最上段の段数に応じて任意に変更することができる。例えば、先枝の2〜7段目の花房が開花するタイミングで、後枝の成長を開始させることができる。また、各枝を6段以上まで成長させる場合、先枝の最上段から2〜3段下の花房が開花するタイミングで、後枝の成長を開始させることもできる。
【0014】
(第一成長枝と第二成長枝の誘引)
前記第一成長枝2と第二成長枝7は、栽培床Aの幅方向両側上方に栽培床Aの長手方向に沿って架設される二本の支持材4a、4bに向けて誘引する。この場合、成長日数差を持って成長させる枝を、栽培床Aの幅方向反対側に交互に誘引する。より具体的には、前記第一成長枝2をいずれか一方の支持材4(例えば4a)に向けて誘引し、第二成長枝7を他方の支持材4bに向けて誘引する。これにより、両枝2、7が互いに栽培床Aの幅方向反対側に誘引されて両枝2、7間に間隔(空間)9ができる。このように、間隔9を設けることによって、枝、葉、花房に結実する果菜8の接触を防止することや、枝間の日当たりや風通しを良くすることができる。
【0015】
前記支持材4a、4bは、図3のように、栽培床Aの幅W1よりもその間隔W2を多少狭くして栽培床Aの上方に架設し、両支持材4a、4bに誘引される両枝2、7の間隔9が上方に向けて狭くなるようにしてある。例えば、栽培床Aの幅W1を560mm程度、支持材4a、4bの間隔W2を300mm程度とすることができる。これにより、支持材4aの上方から吊り下げた農業用ハウス内の仕切りシート10aと第一成長枝2との間、支持材4bの上方から吊り下げた仕切りシート10bと第二成長枝7との間に、夫々空間9a、9bが確保され、仕切りシート10が第一成長枝2や第二成長枝7の葉に接触せず、両枝2、7の成長が阻害されない。また、前記両支持材4a、4bの間隔W2を栽培床Aの幅W1よりも狭くして前記誘引具5に誘引される両枝2、7の上方を次第に内側に傾斜させることで、側方仕切りシート10a、10bを巻き取って作業する際にも、栽培床Aの横の通路を歩行する作業者が枝、葉、花房に接触しないようにすることができ、作業スペースが広く確保されるので作業しやすくもなる。また、両枝2、7を上方に垂直に誘引する場合よりも隣接する栽培床Aの間隔を狭くすることができるため農業用ハウス内に多くの栽培床Aを作ることができ、農業用ハウス内を有効利用して増収を図ることもできる。
【0016】
(芽掻き、葉掻き)
前記第一成長枝2、第二成長枝7の成長中は苗1や第二成長枝7から出る芽や葉などは芽掻き、葉掻きして成長を止め、苗1や成長中の第一成長枝2、第二成長枝7に養分が行き渡るようにする。肥料管理やホルモン剤の葉面散布などにより調節することにより、第一成長枝2と第二成長枝7を確実に成長させることができる。
【0017】
(第一成長枝、第二成長枝からの収穫)
第一成長枝2の花房(果房)に結実した収穫適期の果菜8は下段の果房に結実したものから順次収穫する。第二成長枝7を成長させながら第二成長枝7の果房に結実して収穫適期となった果菜8も下段の花房に結実したものから順次収穫する。二本の枝を、前記成長日数差を持って成長させることにより、第一成長枝2の5段目(最上段)の果房に結実した果菜8の収穫と、第二成長枝7の一段目(最下段)の果房に結実した果菜8の収穫を同時期に行うことができ、空白期間のない連続的な果菜収穫を実現できる。
【0018】
(第一成長枝の切断、第三成長枝の成長開始)
第一成長枝2は最上段の果菜8の収穫後、その根元付近Bから切断する(図2(b)、(c))。この切断の少し前又は少し後に前記第二成長枝7(先枝)から出る芽を第三成長枝11(後枝)として成長を開始させる。第三成長枝11は、苗1から出る芽のうち任意の芽を選択して成長させることもできる。この場合、なるべく栽培床Aに近い芽(苗1の下方から出る芽)を選択するのが好ましい。前記第二成長枝7と第三成長枝11の成長日数差も前記第一成長枝2と第二成長枝7の成長日数差と同様の日数差とするのがよい(図2(c))。前記第三成長枝11は切断された第一成長枝2が誘引されていた支持材4a(成長中或いは収穫中の第二成長枝7とは栽培床Aの幅方向反対側の支持材)に誘引する(図2(d))。これにより、第二成長枝7と第三成長枝11との間に間隔9を十分に確保することができる。
【0019】
(第三成長枝成長中の芽欠き・葉欠き、第三成長枝からの収穫)
前記第二成長枝7、第三成長枝11の成長中は前記苗1や第二成長枝7から出る芽や葉などは芽掻き、葉掻きして成長を止め、苗1や成長中の第二成長枝7と第三成長枝11に養分が行き渡るようにする。第三成長枝11を成長させながらそれに結実した果菜8を下段の果房に結実したものから順次収穫する。
【0020】
(第二成長枝の切断、第四成長枝の成長開始とその後の栽培)
本願発明では、前記第二成長枝7はその最上段の果菜8の収穫終了後にその成長開始点付近Cから切断する(図2(d))。この切断の少し前又は少し後に前記第三成長枝11から出る芽を第四成長枝12として前記成長日数差を持って成長を開始させる(図2(d))。第三成長枝11の場合同様、第四成長枝12も苗1から出る芽のうち、任意の芽を選択して成長させることができる。その後、前記第一成長枝2と第二成長枝7、第二成長枝7と第三成長枝11の場合と同様に、成長日数差をもって先枝と後枝を成長させ、それらの果菜8を収穫し、収穫後の枝を切断する、という工程を繰り返して果菜植物を栽培する。これにより、果菜8を連続的に空白期間なく収穫することができるので果菜8の収量向上を図ることができる。
【0021】
(実施形態2)
本願発明の果菜植物栽培方法の第2の実施形態は、基本的には前記実施形態1に示した栽培方法と同様であり、異なるのはその誘引方法である。この実施形態は、成長日数差を持って成長させる二本の枝を、図4(a)(b)に示すように苗1の植付け方向に沿って間隔をあけて支持材4に誘引する場合の一例である。図4(a)は栽培床Aの各苗1の二本の枝を支持材4aに間隔9をあけて誘引した場合の例であり、図4(b)は栽培床Aの複数本の苗1のうち、図中手前に定植されている苗1から前記成長日数差で成長させる二本の枝を栽培床Aの幅方向一方(左側)の支持材4aに誘引し、その苗1の隣の苗1から前記日数差で成長させる二本の枝を栽培床Aの幅方向反対側(右側)の支持材4bに誘引した場合の例である。この実施形態では便宜上、第一成長枝2と第二成長枝7についてのみ説明したが、第三成長枝11以降の枝の成長についても実施形態1と同様に所定の成長日数差をもって成長させ、それらの枝を図4(a)又は4(b)に示す方法で誘引して成長させる。
【0022】
(実施形態3)
本願発明の果菜植物栽培方法の第3の実施形態を図5に基づいて説明する。この実施形態は苗1から複数本の枝を実施形態1と同様の成長日数差で成長させ、それらの枝を、図5(b)に示すように苗1を中心とする四角形の領域を想定して、その四角形の各点上方に向けて等間隔で誘引する場合の例である。具体的には図5(a)に示すように栽培床Aに定植した一本の苗1から出る第一成長枝2を栽培床Aの幅方向一方の支持材(ここでは栽培床Aの幅方向左側の支持材4a)のP方向に誘引し、次に成長を開始する第二成長枝7を栽培床Aの幅方向他方(ここでは栽培床Aの幅方向右側の支持材4b)のQ方向(前記P方向と苗1を結んだ対角線上の反対側)に誘引し、その後に成長を開始する第三成長枝11(図示しない)を前記支持材4aのR方向(前記P方向の側方)に誘引し、その後に成長を開始する第四成長枝12(図示しない)を前記支持材4bのS方向(前記Q方向の側方)に誘引して第一成長枝2から第四成長枝12まで順次等間隔で誘引する方法である。このように苗1からでる枝を四方に誘引することにより、前記枝の間隔9を広く確保することができ、栽培床Aの上方空間を有効活用することができる。誘引箇所、誘引方向、誘引順序等については前記例に限定されることはなく、作業性や日当たり等の面から他の方法で行なうこともできる。また、各枝の間隔9を広く確保できる限り、三方向や五方向以上に誘引することもできる。この実施形態では、便宜上、第一成長枝2から第四成長枝12についてのみ説明したが、それ以降の枝の成長についても実施形態1と同様に所定日数差で成長を開始させ、それらの枝を前記と同様の方向、順序で繰り返し誘引することができる。
【0023】
(実施形態4)
本願発明の果菜植物栽培方法の第4の実施形態を図6に基づいて説明する。この実施形態は基本的には前記実施形態1〜3と同様であり、異なるのは、後枝の成長と並行して一又は二以上の他の芽を予備枝14として成長させることにある。予備枝14を並存させることにより、仮に後枝が順調に育たなくても予備枝14を後枝の代替枝として育てることができ、空白期間なく果菜8の収穫をすることができる。予備枝14は、後枝が順調に成長した場合には摘心して成長を止めることもできる。これにより、後枝に栄養が行き渡り、後枝が順調に成長する。
【0024】
(実施形態5)
本願発明の果菜植物栽培方法の第5の実施形態は、基本的には前記実施形態1〜4と同様であり、異なるのは複数の苗1を一列の栽培床Aの幅方向に位置をずらして千鳥配列に定植することにある。この場合、栽培床Aの幅方向右側に定植した苗1から成長する枝は栽培床Aの右側上方の支持材4bに、幅方向左側に定植した苗から成長する枝は栽培床Aの左側上方の支持材4aに誘引し易く、一列の栽培床Aにその長手方向に間隔9をあけて定植する苗1の株間を狭くしても、隣接する苗1から成長する枝の間隔9を十分広く確保することができ、隣接する枝間の通風性、採光性が良好になる。
【0025】
(その他の実施形態)
本願発明の果菜植物栽培方法は、各種果菜植物に適用でき、土耕栽培・水耕栽培のいずれにも、農業用ハウス栽培・露地栽培のいずれにも応用することができる。栽培する植物もトマト以外の果菜植物、例えば、ピーマン、ナス、キュウリ、ウリ等のウリ科の植物やナス科の植物とすることもできる。また、前記実施形態では二本仕立て、四本仕立ての場合について説明したが、枝の本数は任意数とすることができ、三本に仕立てることも、五本以上に仕立てることもできる。また、説明の便宜上、前記実施形態1乃至5は最上段を5段目とした場合を一例として説明したが、最上段は5段以上にすることも5段以下にすることもできる。この場合も、前記成長日数差をもって各枝の成長を開始させるようにする。
【符号の説明】
【0026】
1 苗
2 第一成長枝
4、4a、4b 支持材
5 誘引具
6 連結材
7 第二成長枝
8 果菜
9 (枝同士の)間隔
9a (側方仕切りシートと第一成長枝の間の)空間
9b (側方仕切りシートと第二成長枝の間の)空間
10 仕切りシート
10a、10b 側方仕切りシート
11 第三成長枝
12 第四成長枝
14 予備枝
A 栽培床
B 第一成長枝切断箇所
C 第二成長枝切断箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗から枝を二本又は複数本成長させ、
前記枝は成長日数差を持たせて成長を開始させ、
夫々の枝を所定の花房数まで成長させ、
前記成長日数差は先に成長を開始させた先枝の最上段又はその近くの段の花房の開花時に、後から成長開始した後枝の最下段又はその近くの段の花房が開花する日数差とし、
成長日数差をもって成長させる枝は、果菜収穫後に切断し、
前記枝の切断後は、新たな枝をその前に成長を開始させた先枝と前記成長日数差をもって成長を開始させ、
前記成長日数差を持たせた枝の成長開始、果菜収穫後の枝の切断、その後の後枝の前記成長日数差の成長開始、を繰り返して栽培することを特徴とする果菜植物栽培方法。
【請求項2】
請求項1記載の果菜植物栽培方法において、
後枝は、先枝の2乃至7段目のいずれかの花房が開花する程度の成長日数差を持って成長を開始させることを特徴とする果菜植物栽培方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の果菜植物栽培方法において、
先枝の成長開始から後枝の成長開始までは、他の芽を摘心することを特徴とする果菜植物栽培方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の果菜植物栽培方法において、
後枝用の芽と予備芽の双方を育成し、後枝用の芽が順調に成育しないときは予備芽を後枝として成長開始させることを特徴とする果菜植物栽培方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の果菜植物栽培方法において、
成長させる先枝と後枝は、栽培床の幅方向反対側に間隔をあけて、又は苗の植え付け方向に間隔をあけて、又は苗の周囲の任意方向に間隔をあけて誘引することを特徴とする果菜植物栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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