説明

枠結合構造および枠結合具

【課題】枠結合具の雌ネジ軸心と雄ネジ軸心とを合わせやすく、枠同士を結合したときに枠に損傷を与えず、また、枠の大きさに応じてネジ径を変えることができる新規な技術手段を提供する。
【解決手段】上枠20の第2穴25,26に挿入される丸ナット受具40a,40bは、側面を貫通するボルト挿入孔(43)を有する円柱状部材(44)と、この円柱状部材のボルト挿入孔(43)と略同心である雌ネジ(45)を備えた板状ナット部材(46)とを有する。ボルト状結合具50a,50bの雄ネジ51を縦枠30の貫通孔31,32および上枠の第1穴22,23に通して丸ナット受具の雌ネジにねじ込もうとしたときに、それらの軸心が角度的にずれていても、丸ナット受具が第2穴の中で該ずれている角度αだけ回転して丸ナット受具の雌ネジ軸心47とボルト状結合具の雄ネジ軸心48とを一致させる自動調心作用が働く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠部材同士(たとえば縦枠と横枠)を直交状態で結合してなる枠結合構造およびこの枠結合構造を得るために用いる枠結合具に関する。
【背景技術】
【0002】
このような枠結合構造としては、たとえば、下記特許文献1に記載のものが知られている。この従来技術には、一方の枠部材(たとえば上枠)の端面を他方の枠部材(たとえば縦枠)の内側面に当接させた状態で該他方の枠部材の外側面からビスなどを該一方の端面に打ち込んで連結固定するに際して、あらかじめ該一方の枠部材にネジ孔を有するナットを埋設しておくと共に、このナットのネジ孔と整列する貫通孔を該他方の枠部材に形成しておき、該他方の枠部材の外側から貫通孔およびネジ孔にビスをねじ込んでこれら枠部材同士を結合することが記載されている。この従来技術によれば、ビスの位置ずれや枠部材に割れを生じさせることのない枠結合構造が得られる。
【特許文献1】特開2003−247380号公報(段落0019〜0027)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、この従来技術によると、上記他方の枠部材に形成する貫通孔と一方の枠部材に埋設されるナットのネジ孔とが一直線上に整列していることが必要であり、加工精度が低いなどにより貫通孔とネジ孔とがずれていると、貫通孔にねじ込んだビスがナットのネジ孔に入り込むことができず、枠部材同士の結合ができなくなるという課題があった。
【0004】
また、ナットにボルトをねじ込んで枠同士を結合したときに、ナットが挿入されている穴に変形や割れなどの損傷を与えるおそれがあった。
【0005】
さらに、枠の大きさが変化しても枠結合具のネジ径を変えることができず、枠の大きさに適したネジ径を選択して用いることができないものであった。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、枠結合具の雌ネジ(ナット)軸心と雄ネジ(ビス、ボルト)軸心とを合わせやすく、枠同士を結合したときに枠に損傷を与えず、また、枠の大きさに応じてネジ径を変えることができる新規な技術手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、請求項1に係る本発明は、一方の枠部材の端面を他方の枠部材の内側面に当接させ、これら両枠部材を直交状態に結合して得られる枠結合構造において、一方の枠部材は、その端面から該枠部材の長手方向に延長するように穿設された第1穴と、この第1穴と略垂直に交わって該枠部材の外側面で開口する略円柱形の第2穴とを有し、他方の枠部材は、その外側面から内側面に貫通する貫通孔を有しており、一方の枠部材の第2穴には丸ナット受具が回転自在に挿入され、該丸ナット受具は、側面を貫通するボルト挿入孔を有する円柱状部材と、この円柱状部材のボルト挿入孔と略同心である雌ネジを備えた板状ナット部材とを有してなり、丸ナット受具が一方の枠部材の第2穴に挿入された状態において一方の枠部材の第1穴と他方の枠部材の貫通孔とを整列させた状態にしてボルト状結合具が挿入され、且つ、該ボルト状結合具の雄ネジが丸ナット受具の板状ナット部材の雌ネジに螺合することにより枠部材同士が結合されることを特徴としている。
【0008】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の枠結合構造において、板状ナット部材が丸ナット受具に着脱可能であることを特徴としている。
【0009】
請求項3に係る本発明は、請求項1または2記載の枠結合構造において、丸ナットの円柱状部材が合成樹脂で形成され、板状ナット部材が金属で形成されることを特徴としている。
【0010】
請求項4に係る本発明は、請求項1ないし3のいずれか記載の丸ナット受具とボルト状結合具とからなることを特徴とする枠結合具である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第2穴に挿入された丸ナット受具の板状ナット部材の雌ネジ軸線と、ボルト状結合具の雄ネジ軸線とが角度的にずれていても、丸ナット受具がその雌ネジ軸心とボルト状結合具の雄ネジ軸心とが一致するように第2穴の中で回転して自動調心作用が働く。これにより、丸ナット受具の雌ネジ軸心とボルト状結合具の雄ネジ軸心とが一致し、ボルト状結合具が確実に丸ナット受具に螺合する。すなわち、本発明によれば、丸ナット受具の雌ネジ軸線を第1穴の軸心に対して厳密に合わせる必要がなくなり、枠部材同士の結合作業を容易に行うことができる。
【0012】
特に、丸ナット受具の円柱状部材を合成樹脂で形成した場合には、金属製のボルト状結合具の先端が合成樹脂製の円柱状部材のボルト挿入孔の縁や内壁に当たったときに第2穴内で滑りやすくなり、上記の自動調心作用がより効果的に働く。
【0013】
また、板状ナット部材を金属製とすることにより、同じ金属製のボルト状結合具との螺合が確実に行われる。
【0014】
また、丸ナット受具の円柱状部材は合成樹脂で形成されるので、円柱状部材の外面(円柱面)と一方の枠材の第2穴の内面とが形状的に多少不一致であっても、丸ナット受具とボルト状結合具とを螺合させて締め付けたときに、円柱状部材の外面が第2穴の内面になじんで比較的広い面積で接触することになるため、該枠材に変形や割れなどの損傷を与えることがない。
【0015】
また、丸ナット受具は板状ナット部材を円柱状部材に着脱可能に装着されるので、雌ネジ径の異なる複数の板状ナット部材を用意しておいて、その中から任意の一を選択して丸ナット受具に装着することができる。したがって、結合すべき枠部材の大きさなどに応じてボルト状結合具のネジ径を変更したい場合には、該ネジ径に応じた雌ネジ径を有する板状ナット部材に差し替えて使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好適な一実施形態による枠結合構造について、図1ないし図8を参照して以下に詳述する。この枠結合構造10は、上枠20と縦枠30とをいわゆる縦勝ちに結合するものである。
【0017】
上枠20には、端面21で開口してその長手方向(枠体幅方向W)に所要長さ延長する一対の第1穴22,23が枠体奥行方向Zに所定間隔をおいてあらかじめ形成されている。第1穴22,23は水平な軸心を有する。また、第1穴22,23の径は後述するボルト状結合具50の雄ネジ51胴径より若干大きい。
【0018】
さらに、上枠表面24で開口する第2穴25,26が、第1穴22,23が形成されている長さ範囲内においてそれらの直上位置に各々形成され、これら第1穴22,23より深くまで下方に延長している。第2穴25,26は垂直な軸心を有する。すなわち、上枠20の厚み内において、第1穴22は第2穴25と直交状に交差し、第1穴23は第2穴26と直交状に交差している。
【0019】
丸ナット受具40(40a,40b)は、上面に長溝41を有すると共に下面にスリット42を有し、さらに側面を貫通するボルト挿入孔43を有する円柱状部材44と、この円柱状部材44のボルト挿入孔43と略同心に雌ネジ45が向くように装着された板状ナット部材46とから構成されている。
【0020】
円柱状部材44は、硬質PVC、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、ポリプロピレン樹脂などの合成樹脂で形成され、その外径dは第2穴25,26の内径Dより若干小さく、また、第2穴25,26の深さHと略同一である長さhを有する(図4,図6)ものであって、第2穴25,26に回転自在に嵌合収容される。
【0021】
円柱状部材44の側面を貫通するボルト挿入孔43は、ボルト状結合具50の軸径より大きい内径を有する。枠体の大きさに応じてボルト状結合具50のサイズ(ネジ径)を適宜変えて使用する場合は、ボルト挿入孔43の内径を想定される使用の最大径のボルト状結合具50が挿入可能な大きさに形成しておく。
【0022】
円柱状部材44の上面に刻設形成された長溝41は、マイナスドライバーの先端を係止して円柱状部材44を回転させてボルト挿入孔43の軸心方向を調整することに使用されるほか、ボルト挿入孔43の軸心に略一致する方向に延長していて、長溝41の方向によってボルト挿入孔43の軸心方向、すなわち雌ネジ45の軸心方向を容易に確認できるようになっている。
【0023】
円柱状部材44の下面から刻設形成されたスリット42は、板状ナット部材46を円柱状部材44の下側から挿入して装着するためのものであり、板状ナット部材46に対応した寸法に形成されている。一例として、スリット42の幅Y(図7)は板状ナット部材46の板厚y(図8(b))より大きく、たとえばY=y+0.1mm程度とする。また、スリット42の上端内面からボルト挿入孔43の軸心までの距離X(図6,図7)は板状ナット部材46の上端から雌ネジ45の軸心までの距離x(図8)に一致させる。板状ナット部材46をスリット42に挿入したとき、板状ナット部材46の雌ネジ45の軸心はボルト挿入孔43の軸心と一致する(図4(b),図5)。
【0024】
板状ナット部材46は、鋼、アルミニウム、銅合金などの金属から図8に示すような形状に形成されたものであり、この実施形態では正面視正方形状の板状部材の中心に雌ネジ45を有している。板状部材の上端から雌ネジ45の軸心までの距離xは、円柱状部材44におけるスリット42の上端内面からボルト挿入孔43の軸心までの距離Xに一致しており、また、板厚yは同スリット42の幅Yに一致している。したがって、板状ナット部材46をスリット42に挿入したとき、板状ナット部材46の雌ネジ45の軸心はボルト挿入孔43の軸心と一致する(図4(b),図5)。
【0025】
ボルト状結合具50(50a,50b)は、雌ネジ部51の基端部にその胴径より大径の頭部52が一体に固着され、頭部52にはドライバ(図示せず)などの先端を係止してボルト状結合具50を回転させるため十字溝53および長溝54が刻設形成されている。
【0026】
縦枠30には、その上端近くを厚み方向(枠体幅方向W)に貫通する貫通孔31,32が枠体奥行方向Zに所定間隔をおいてあらかじめ形成されている。貫通孔31,32の径はボルト状結合具50の雄ネジ部51胴径より若干大きく、第1穴22,23と同径であって良い。貫通孔31,32の枠体奥行方向Zにおける位置は、上枠20と縦枠30とを縦勝ちに連結したときに、上枠20における第1穴22,23と整列する位置関係となるように設計されている。貫通孔31,32の縦枠外面35側の開口部33,34は、ボルト状結合具50の頭部52を受容するため、頭部52の径に応じて拡径されている。
【0027】
枠結合構造10を得るには、上枠20と縦枠30とを、上枠20の上面24が縦枠30の上端端面36と面一になるように縦勝ちにした位置関係とし、この位置関係において水平方向に整列状態となっている縦枠30の貫通孔31,32および上枠20の第1穴22,23に対して各々ボルト状結合具50a,50bを挿入し、ボルト状結合具50a,50bの頭部54の十字溝53または長溝54にドライバの先端を差し込んで回転させることにより、ボルト状結合具50a,50bの雄ネジ51,51を、上枠20の第2穴25,26に収容されている丸ナット受具40a,40b内の板状ナット部材46の雌ネジ45,45に螺着する。
【0028】
このとき、丸ナット受具40a,40bの円柱状部材44の上面に形成された長溝41,41が示す丸ナット受具の軸心47が、第1穴22、第2穴31およびこれらに挿入されるボルト状結合具50a,50bの雄ネジ軸心48と略一致するよう、必要に応じて丸ナット受具40a,40bをドライバなどで回転させることにより、ボルト状結合具50の雄ネジ51,51と板状ナット部材46の雌ネジ45,45の方向性を合わせることが好ましいが、本発明によれば、丸ナット受具40a,40bが上枠20の第2穴25,26内において回転自在とされているので、それ程厳密に長溝方向合わせを行う必要はなく、若干の軸心ずれ(図1に角度αで示す)があっても自動調心作用が働いて雄ネジ51,51を雌ネジ45,45に確実に螺合させることができる。
【0029】
さらに、丸ナット受具40の円柱状部材44が合成樹脂で形成されているので、丸ナット受具40の軸心47がボルト状結合具50の軸心48と若干ずれていても、金属製のボルト状結合具50の先端が合成樹脂製の円柱状部材44のボルト挿入孔43の縁や内壁に当たったときに滑りやすくなり、上記の自動調心作用がより効果的に働く。そして、ボルト状結合具50の雄ネジ51は、同じく金属製の板状ナット部材46の雌ネジ45に確実に螺合するので、上枠20と縦枠30とを強固に結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の好適な一実施形態による枠結合構造を結合前の状態で示す平面図である。
【図2】この枠結合構造を同じく結合前の状態で示す正面図である。
【図3】この枠結合構造に用いられる丸ナット受具を示す斜視図である。
【図4】丸ナット受具の平面図(a)および正面図(b)である。
【図5】丸ナット受具の側面図である。
【図6】丸ナット受具の円柱状部材の平面図(a)および正面図(b)である。
【図7】丸ナット受具の円柱状部材の側面図である。
【図8】丸ナット受具の円柱状部材に装着される板状ナット部材の正面図(a)および側面図(b)である。
【符号の説明】
【0031】
10 枠結合構造
20 上枠
21 上枠の端面
22,23 第1穴
24 上枠の表面
25,26 第2穴
30 縦枠
31,32 貫通孔
35 縦枠の外面
40 丸ナット受具
41 長溝
42 スリット
43 ボルト挿入孔
44 円柱状部材
45 雌ネジ
46 板状ナット部材
47 丸ナット受具の軸心
48 ボルト状結合具の軸心
50 ボルト状結合具
51 雄ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の枠部材の端面を他方の枠部材の内側面に当接させ、これら両枠部材を直交状態に結合して得られる枠結合構造において、一方の枠部材は、その端面から該枠部材の長手方向に延長するように穿設された第1穴と、この第1穴と略垂直に交わって該枠部材の外側面で開口する略円柱形の第2穴とを有し、他方の枠部材は、その外側面から内側面に貫通する貫通孔を有しており、一方の枠部材の第2穴には丸ナット受具が回転自在に挿入され、該丸ナット受具は、側面を貫通するボルト挿入孔を有する円柱状部材と、この円柱状部材のボルト挿入孔と略同心である雌ネジを備えた板状ナット部材とを有してなり、丸ナット受具が一方の枠部材の第2穴に挿入された状態において一方の枠部材の第1穴と他方の枠部材の貫通孔とを整列させた状態にしてボルト状結合具が挿入され、且つ、該ボルト状結合具の雄ネジが丸ナット受具の板状ナット部材の雌ネジに螺合することにより枠部材同士が結合されることを特徴とする、枠結合構造。
【請求項2】
板状ナット部材が丸ナット受具に着脱可能であることを特徴とする、請求項1記載の枠結合構造。
【請求項3】
丸ナットの円柱状部材が合成樹脂で形成され、板状ナット部材が金属で形成されることを特徴とする、請求項1または2記載の枠結合構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか記載の丸ナット受具とボルト状結合具とからなることを特徴とする枠結合具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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