説明

枯草菌電池

【課題】 水の中に電極(例えば正極:炭素棒、負極:亜鉛棒)を挿入すると起電力が生ずる。
納豆(糸引納豆)の中に電極を差し込んだら起電力が生じ、水の中に電極を挿入するよりも大きな電力が得られた。
納豆の中では、納豆菌が無機物を生じている。納豆菌は枯草菌と同種であるので、枯草菌の働きで起電力が生じないかと考えて試行した。
【解決手段】 稲わらを容器に入れ水に浸して5時間後に電極を差し込み、テスターに接続すると起電力が生じ、水の中に電極を挿入するより大きな電力であることを示した。
従って、枯植物を水に浸すと枯草菌は植物の有機物を栄養源として増殖し、水の中には無機物が生じて電解質となり、多くのイオンが働いて大きな電力が生ずると推察される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、納豆(糸引納豆)の中に電極(例えば、正極:炭素棒、負極:亜鉛棒)を挿入すると、両電極間に起電力が生ずる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆の中には、Mg、K、Ca、Fe、Znなどの金属元素が存在する。
納豆は熟成が進むと、納豆菌の働きで無機物のMgNHPO・6HO(ストラバイト)が生成することが知られている(日本食品科学工学会誌、第44巻第4号、27頁〜31頁)。
このことから連想すると、納豆菌の働きで納豆中に電解質が生成して電離し、このイオンによって電流が生じて電力が大きくなると推察される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
冷蔵販売している納豆(135g)を購入後すぐ図1のような装置に入れて電極を挿入し、電圧と電流を測った。測定値は、テスター接続時の最大値である(以後、同じ)。
電圧 1.17V 電流 2.1mA
図1の納豆に水道水50mlを注いで攪拌し、室温(約28℃)で24時間放置後の電圧と電流の値は下記のとおりである。
電圧 1.12V 電流 11.5mA
これは、納豆菌の増殖によって納豆中に、イオンの働きをする電解質が増加していることを示している。
納豆は時間の経過とともに不快臭が強くなる。また食品であるので、納豆を使った発電は一般の普及には適さない。従って、これを解決する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
納豆菌と同種で枯植物に存在する増殖力が強い枯草菌は、水の中で増殖する過程で栄養源としての枯植物中の有機物を分解し、生じた電解質が水の中でイオンとなって電離し、このイオンの働きで発電すると推察して以下の試行をした。
枯植物の試行検体として、稲わら、すすきの葉、ゼラニウムの葉、ローズマリーの葉、椿の葉を用いた。
但し、枯草菌の増殖を計るため、検体に水道水(以下、試行に用いた水は水道水)を注いで24時間後に電圧と電流を計測した。室温約28℃。
【0005】
稲わらを約1cmの長さに切断したもの(重さ約5g)を、図1の装置に入れて水面まで水を注ぐ。
電圧 1.12V 電流 5.3mA
【0006】
枯すすきの葉を約1cmの長さに切断したもの(重さ約5g)を、図1の装置に入れて水面まで水を注ぐ。
電圧 1.12V 電流 3.6mA
【0007】
ゼラニウムの枯葉(重さ約5g)を手もみして細かくしたものを、図1の装置に入れて水面まで水を注ぐ。
電圧 1.13V 電流 7.8mA
【0008】
ローズマリーの葉を48時間日陰干しにしたもの(重さ約10g)を、図1の装置に入れて水面まで水を注ぐ。
電圧 1.15V 電流 6.5mA
【0009】
椿の葉30枚を約1cm×0.5cm角に切断して48時間日陰干しにしたもの(重さ約10g)を、図1の装置に入れて水面まで水を注ぐ。
電圧 1.10V 電流 4.6mA
【0010】
摘みたてゼラニウムの葉(重さ約10g)を、図1の装置に入れて水面まで水を注ぎ、生えている植物を摘みとったばかりのものを用いた場合の発電現象を観察した。
電圧 1.21V 電流 5.7mA
【0011】
枯植物に寄生する枯草菌の増殖作用でも起電力が生じ、納豆と枯植物の発酵では電圧の大きさはほぼ同じであるが、電流の大きさには差がある。
これは、植物成分の違いに由来するものと考えられる。
【発明の効果】
【0012】
枯草菌(納豆菌)は水に浸した枯植物の植物成分を分解しながら増殖し、分解物質は水中に溶出して電解質の水溶液となる。
そこで〔0005〕〔0006〕〔0007〕〔0008〕〔0009〕〔0010〕の枯植物を5日間水に浸した後、電圧と電流を計った。
稲わら 電圧 1.20V 電流 8.0mA
枯れすすきの莱 電圧 1.10V 電流 4.0mA
ゼラニウムの枯葉 電圧 1.16V 電流 8.4mA
ローズマリーの干し葉 電圧 1.17V 電流 8.2mA
椿の干し葉 電圧 1.05V 電流 6.4mA
摘みたてゼラニウムの葉 電圧 1.14V 電流 8.8mA
いずれの場合も、経時により電流が多くなり電解質が増加していることを示している。
ちなみに、同じ電極を水に浸した電圧は1.13V、電流は1.6mAである。これは枯草菌と枯植物が起電力に係わっていることを示している。
【0013】
米ヌカも枯植物であるので、米ヌカ(重さ約5g)を〔0005〕と同様に水を注いで電圧と電流を計った。
この場合、発酵によって泡が盛んに発生した。
電圧 1.10V 電流 18.5mA
この結果の電流の値が大きいのは、米ヌカには枯草菌の増殖に必要な栄養素が多いことを示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
地球上には水と植物が存在しているので、多くの地域で枯草菌による発電が可能であることが分かった。
そこで、この現象を利用する発電装置を枯草菌電池と呼称し、枯草菌電池を使用するための代表例を2通り示す。
【0015】
米ヌカの枯草菌電池3個をつくって直列に接続し(図2)、これに白色LEDを1個接続すると点灯する。
LED点灯直前 電圧 3.4V 電流 11.0mA
LED点灯2時間後消灯 電圧 2.7V 電流 10.5mA
LED消灯2時間後 電圧 3.2V 電流 12.0mA
【0016】
稲わらの枯草菌電池で正負の電極を各2本にしたものを3個つくって直列に接続し(図3)、これで2個の白色LEDを並列にして点灯する。
LED点灯直前 電圧 3.6V 電流 6.9mA
LED点灯2時間後消灯 電圧 2.9V 電流 5.0mA
LED消灯2時間後 電圧 3.3V 電流 6.0mA
【0017】
図4に示す水槽16の水17の中に、米ヌカ100gを入れて攪拌し、室温28℃の部屋に24時間放置の後、この中へ電極18,19を入れて枯草菌電池とし、電圧と電流を計った。
電圧 1.07V 電流 225.0mA
ちなみに、同じ電極を水に浸した電圧は1.13V、電流は41.5mAである。
【0018】
枯草菌電池のメカニズムは、学術的研究を待たなければならないが、摘みたての植物または枯植物への枯草菌の働きによって起電力が生ずるのは、事実である。
〔0015〕〔0016〕〔0017〕の観察から分かるように、枯草菌電池を直列または並列に接続し、または電極を大きくして電力を大きくすることができる。
減少した電力は、電池の中の枯植物や水を入れ替えることによっても回復できる。
従って、LED点灯用や二次電池充電用など、用途は多方面に及ぶものと考えられる。
なお、枯草菌電池の発電効率を上げる電極の開発と、植物の探索が待たれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 発電装置(円筒容器)の縦断面図
【図2】 枯草菌電池を3個直列に接続して白色LEDを点灯する横断面図
【図3】 枯草菌電池に正負の電極を各2本入れたものを3個直列に接続し、2個の白色LEDを並列にして点灯する横断面図
【図4】 正極(CF)2枚、負極(亜鉛板)1枚を水槽に入れる状態を示す図
【符号の説明】
【0020】
1 正極(炭素:φ5mm)
2 負極(亜鉛:φ5mm、または巾5mm×厚1mm)
3 水と枯植物、または納豆
4 枯草菌電池(米ヌカ使用)
5 正極(炭素:φ5mm)
6 負極(亜鉛:φ5mm、または巾5mm×厚1mm)
7 白色LED
8 抵抗器1kΩ
9 スイッチ
10 枯草菌電池(稲わら使用)
11 正極(炭素:φ5mm)
12 負極(亜鉛:φ5mm、または巾5mm×厚1mm)
13 白色LED
14 抵抗器1kΩ
15 スイッチ
16 水槽
17 水(この中へ米ヌカを入れて攪拌する)
18 正極(多数の小穴をあけた縦70mm×横200mm×厚2mmの樹脂板にらせん状に巻いたCF:三菱レーヨン社製PAN系炭素繊維TR−50S15L、300cm、30g)
19 負極(亜鉛:縦75mm×横200mm×厚1mm)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を入れた容器に電極(正極、負極)を挿入すると超電力が生ずる。
枯植物を入れた容器に水を注ぐと、枯植物がふやけた状態になる。枯植物に存在する枯草菌は増殖力が活発で、枯植物の有機物を分解しながら無機物がつくられて水中で電解質となり、容器に正極と負極となる物体を挿入すると起電力が生ずる。
また、摘みたての植物によっても、同様の現象をみる。
そして、水だけの容器に電極を挿入した電力より、水と枯植物を入れた容器に電極を挿入した電力は大きい。
枯草菌が増殖に必要な栄養源となる枯植物の有機物が無くなるまで、電解質は生じ続けて電流は流れ続ける。
この現象を利用した発電装置(枯草菌電池)。
【請求項2】
納豆(糸引納豆)に電極(正極と負極)となる物体を挿入すると起電力が生ずる発電装置(枯草菌電池)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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