説明

架橋したポリビニルアセタール

本発明は、任意の順序で、(i)ポリマー(A1)を式(5)、R(CHO)、の少なくとも1のポリアルデヒドと反応させ、かつ(ii)少なくとも部分的に式(1)および式(4a)の基を相互にエステル化することによりカルボキシル基を有するポリビニルアルコール(A1)を架橋させる、架橋したポリビニルアセタールの製造方法に関する。さらに本発明は、(i)ポリマー(A2)を式(6)の少なくとも1の化合物と反応させ、(ii)式(4b)の少なくとも1の化合物を添加し、(iii)式(5)のポリアルデヒドを添加し、かつ(iv)少なくとも部分的に式(1)の基および式(4b)の化合物から誘導される構造単位を相互にエステル化することによりポリビニルアルコール(A2)を架橋させる、架橋したポリビニルアセタールの製造方法に関する。その際、基R、R、R、R10およびR11ならびに指数nは記載に従って定義されている。さらに本発明は本方法により得られる架橋したポリビニルアセタールならびに該ポリマーの特に有利な適用分野に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は架橋したポリビニルアセタール、その製造方法ならびに、特に複合安全ガラスのためのその使用に関する。
【0002】
アセタール化による、特にn−ブチルアルデヒドを用いたポリビニルアルコールの変性は久しい以前から公知であり、かつ利用されている反応である。この方法で得られるポリビニルアセタール、特にポリビニルブチラールのフィルムはその高い光安定性ならびにその極めて良好な接着力(Klebevermoegen)に基づいて複合安全ガラスにおいて、特に自動車用ガラス(フロントガラスおよびサイドウインドウガラス)において中間層として使用される。このような合わせガラスは高度の安全性を提供する。というのも、衝突使用の場合に、弾性のポリビニルアセタールフィルムは機械的エネルギーを吸収し、かつ場合により生じるガラス破片をフィルムに付着させておくからである。
【0003】
しかし残念ながら従来のポリビニルアセタールタイプをベースとする複合安全ガラスはしばしば、特に150℃より高い温度においては、不十分な機械的特性を有するにすぎない。この問題は比較的高い分子量を有するポリビニルアセタールを使用することによっても解決することが困難である。というのも、ここでは特に加工の問題(たとえば気泡の形成、加工温度でのポリビニルアセタールの高すぎるか、または低すぎる粘度、加工の間の特性の持続性の不足)に基づいて多くの場合、実際の実現可能性の限界にぶつかるからである。
【0004】
この理由から、欧州特許出願EP第0211818A1号明細書は、少なくとも2個のアルデヒド基を有するアルデヒドを使用して分子間ジアセタール結合によりポリビニルアルコールのアセタール化反応の前またはその間にブチルアルデヒドにより架橋したポリビニルブチラールを使用することを提案している。しかしこの種の架橋はアルデヒドの極めて高い反応性に基づいて著しく架橋した、著しく高分子の、ひいては部分的に不溶性のポリビニルブチラールを生じ、これはたとえ高品質であるとしても、そのような複合安全ガラスを製造するためには限定的に適しているにすぎない。それ以外にジアルデヒドまたはポリアルデヒドにより架橋したポリビニルブチラールは、ポリマーを熱可塑的に加工する(たとえば押出)条件下で安定性が不十分であり、従って適用された温度、滞留時間、剪断速度などに依存して程度の差はあるものの、架橋箇所の極めて著しい分解(分子量の崩壊)が行われる。熱安定性のこのような不足は特に再現性のある生成物品質の製造を困難にする。というのも、ポリマーはプロセスの変動に極めて敏感に反応し、かつさらに、特に高温で、ポリビニルアセタールの機械的特性の劣化につながるからである。
【0005】
従ってこの従来技術を考慮して本発明の課題は改善された機械的特性を、特に高温で、有利には150℃より高い温度で有するポリビニルアセタールを提供することである。その際、本発明によるポリビニルアセタールは特に高品質のフィルムを製造するため、ならびに特に複合安全ガラスを製造するために適切であるべきであり、かつこの理由から有利には、フィルムへ、および複合安全ガラスへ加工する間に材料特性、特に機械的特性の改善された持続性を有しているべきである。
【0006】
さらに本発明の根底には、容易な方法で、大規模工業的に、かつ安価に実施することができる、本発明によるポリビニルアセタールを製造するための方法を提供するという課題が存在していた。
【0007】
本発明のもう1つの課題は、本発明によるポリビニルアセタールの特に適切な適用分野を示すことに見ることができた。
【0008】
これらの課題ならびにその他の、詳細には記載されていないが、しかしここで議論した関連において容易に導き出すことができるか、または推論することができる課題は、本発明の請求項1または5の全ての特徴を有する製造方法により得られる架橋したポリビニルアセタールにより解決される。本発明による方法の有利な変法は請求項1および/または5を引用する従属請求項において保護される。さらに本発明による方法により得られるポリビニルアセタールならびに適用のために特に重要な適用形および適用分野が請求される。
【0009】
ポリマー(A1)の全質量に対して、
a.)式(1)
【0010】
【化1】

[式中、Rは水素またはメチルを表す]の構造単位を1.0〜99.9質量%、
b.)式(2)
【0011】
【化2】

[式中、Rは水素または1〜6の炭素原子を有するアルキル基を表す]の構造単位を0〜99.0質量%、
c.)式(3)
【0012】
【化3】

[式中、R、R、RおよびRはそれぞれ相互に無関係に1〜500g/モルの範囲の分子量を有する基を表す]の構造単位を0〜70.0質量%、
d.)式(4a)
【0013】
【化4】

[式中、Rは結合、1〜10の炭素原子を有するアルキレン基または6〜12の炭素原子を有する、場合により置換されたアリーレン基であり、かつRは水素、COOH、1〜10の炭素原子を有するアルキル基または6〜12の炭素原子を有する、場合により置換されたアリール基である]の構造単位を0.00001〜30.0質量%
含有するポリマー(A1)を架橋させる、架橋したポリビニルアセタールを製造するための第一の方法において、任意の順序で、
(i)ポリマー(A1)を式(5)
(CHO) (5)
[式中、Rは結合を表すか、または1〜40の炭素原子を有する基を表し、かつnは2以上の整数を表す]の少なくとも1のポリアルデヒドと反応させ、かつ
(ii)少なくとも部分的に式(1)および式(4a)の基を相互にエステル化する
ことにより、および
ポリマー(A2)の全質量に対して、
a.)式(1)の構造単位を1.0〜99.9質量%、
b.)式(2)の構造単位を0〜99.0質量%、
c.)式(3)の構造単位を0〜70.0質量%
含有するポリマー(A2)を架橋させる、架橋したポリビニルアセタールを製造するための第二の方法において、
(i)ポリマー(A2)を式(6)
【0014】
【化5】

[式中、R10およびR11はそれぞれ相互に無関係に水素、1〜10の炭素原子を有するアルキル基または6〜12の炭素原子を有する、場合により置換されたアリール基である]の少なくとも1の化合物と反応させ、
(ii)式(4b)
【0015】
【化6】

[式中、Rは結合、1〜10の炭素原子を有するアルキレン基または6〜12の炭素原子を有する、場合により置換されたアリーレン基であり、かつRは水素、COOH、1〜10の炭素原子を有するアルキル基または6〜12の炭素原子を有する、場合により置換されたアリール基である]の少なくとも1の化合物を添加し、
(iii)式(5)のポリアルデヒドを添加し、かつ
(iv)少なくとも部分的に式(1)の基および式(4b)の化合物から誘導される構造単位を相互にエステル化する
ことにより、容易に予測することができない方法で、特に高い温度、有利には150℃より高い温度で、改善された機械的特性、特に高い貯蔵弾性率を有する、架橋したポリビニルアセタールを得ることができる。
【0016】
同時に本発明による、架橋したポリビニルアセタールは一連のその他の利点を有する。これには特に次のものが属する:
→本発明によるポリビニルアセタールはその材料特性、特にその機械的特性、たとえばその貯蔵弾性率、の改善された持続性により優れている。この利点は特に高い温度、とりわけ150℃を超える温度で観察される。EP0211818A1におけるような架橋密度の変化は、本発明の範囲では観察することができず、反対に本発明によるポリビニルアセタールは、高い温度、特に150℃より高い温度でもその架橋密度の明らかに改善された持続性を有する。
→本発明によるポリマー中のポリマー結合したカルボキシル基もしくはカルボキシレート基の存在は、アセタール架橋を介して生じる結合箇所の明らかな安定化につながる。さらにこれは緩衝機能も満足し、かつこのようにして、たとえば粘着防止剤の加水分解生成物による考えられる有害な酸の影響に対抗する。
→本発明により架橋したポリビニルアセタールは容易な方法で大規模工業的に、および安価に得られる。その際、特に保護的な架橋条件およびこのために必要とされる短い架橋時間により、酸化反応および/または、通常、ポリマーの変色を生じ、従って特に(透明な)複合安全ガラスとしての適用にとって品質の損害を意味しうる、その他の熱により誘発される副反応が回避される。
→本発明による架橋したポリビニルアセタールの製造は、極めて迅速に、かつ保護的に行うことができるので、すでに最初から高い分子量のポリビニルアセタールに基づいて極めて短い押出帯域もしくは押出機滞留時間を選択することができる。
→その特徴的な特性プロファイルに基づいて、本発明によるポリビニルアセタールは特に、容易な方法で、大規模工業的に、および安価に、特に押出法により製造することができる複合安全ガラスのために適切である。その際、この関連において特に、本発明によるポリビニルアセタールの使用により、気泡の形成も、加工の間の特性の変動も十分に回避され、かつこのようにして、改善された光学的および機械的特性を有する複合安全ガラスが高い再現性で得られるという利点を有するに至る。
【0017】
第一の実施態様によれば、本発明は、
ポリマー(A1)の全質量に対して、
a.)式(1)
【0018】
【化7】

の構造単位を1.0〜99.9質量%、
b.)式(2)
【0019】
【化8】

の構造単位を0〜99.0質量%、
c.)式(3)
【0020】
【化9】

の構造単位を0〜70.0質量%、
d.)式(4a)
【0021】
【化10】

の構造単位を0.00001〜30.0質量%、有利には0.1〜30.0質量%
含有するポリマー(A1)から出発して得られるポリビニルアセタールに関する。
【0022】
その際、そのつどの構造単位は当然のことながら相互に異なっており、特に本発明の範囲では式(3)の構造単位は式(1)、(2)および/または(4a)の構造単位を含まない。
【0023】
基Rは、そのつど相互に無関係に水素またはメチルを表し、有利には水素を表す。
【0024】
基Rは、水素または1〜6の炭素原子を有するアルキル基を表し、有利には1〜6の炭素原子を有するアルキル基を表し、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソ−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基またはn−ヘキシル基を表し、有利にはメチル基またはエチル基、特にメチル基を表す。
【0025】
基R、R、RおよびRは、そのつど相互に無関係に1〜500g/モルの範囲の分子量を有する基であり、有利には水素、1〜16の炭素原子を有し、場合により1以上のカルボン酸アミド基および/またはスルホン酸基を有していてもよい、場合により分岐した、脂肪族もしくは脂環式の基である。
【0026】
基Rは、結合であるか、1〜10の炭素原子を有するアルキレン基、または6〜12の炭素原子を有する、場合により置換されたアリーレン基であり、有利には水素またはメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソ−プロピレン基、n−ブチレン基、s−ブチレン基、t−ブチレン基、n−ペンチレン基またはn−ヘキシレン基であり、これらは場合により1もしくは複数のCOOH基を置換基として有していてもよい。
【0027】
基Rは、水素、カルボキシル基または1〜10の炭素原子を有アルキル基または6〜12の炭素原子を有する、場合により置換されたアリール基であり、有利には水素またはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソ−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基またはn−ヘキシル基であり、これらは場合により1もしくは複数のCOOH基を置換基として有していてもよい。特に有利な基Rは水素、メチル基および−CHCOOHを含む。
【0028】
式(3)の特に有利な構造単位は、2〜18の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状のオレフィン、(メタ)アクリルアミドおよび/またはエチレンスルホン酸から誘導される。この場合、オレフィン、特に有利に2〜6の炭素原子を有し、末端のC−C−二重結合を有するオレフィンが特に有利であることが判明した。さらに、アクリルアミドプロペニルスルホン酸(AMPS)から誘導される構造単位(3)もまた本発明により特に有利な結果を生じる。
【0029】
式(4)の特に有利な構造単位は式(1)の構造単位をグリオキシル酸によりアセタール化することにより得られる。
【0030】
第二の実施態様によれば本発明は、ポリマー(A2)の全質量に対して、
a.)式(1)の構造単位を1.0〜99.9質量%、
b.)式(2)の構造単位を0〜99.0質量%、
c.)式(3)の構造単位を0〜70.0質量%
含有するポリマー(A2)から出発して得られるポリビニルアセタールに関する。
【0031】
その際、それぞれの構造単位は当然のことながら相互に異なっており、特に本発明の範囲では式(3)の構造単位は式(1)および/または(2)の構造単位を含まない。
【0032】
さらに基R〜Rは前記のとおりに定義されている。
【0033】
ポリマー(A1)および/または(A2)の組成に関して、有利には次のことが該当する:
式(2)の構造単位の総数はそのつど式(1)および(2)の構造単位の総数に対して、有利には0.1〜40モル%の範囲、好ましくは0.5〜25.0モル%の範囲、特に1.0〜15.0モル%の範囲である。その際、本発明の第一の有利な実施態様によれば、式(1)および(2)の構造単位の総数に対して、式(2)の構造単位を1.0〜2.0モル%含有するポリマー(A1)および/または(A2)を使用する。本発明の第二の有利な実施態様によれば、式(1)および(2)の構造単位の総数に対して、式(2)の構造単位を3.0〜7.0モル%含有するポリマー(A1)および/または(A2)を使用する。本発明の第三の有利な実施態様によれば、式(1)および(2)の構造単位の総数に対して、式(2)の構造単位を10.0〜15.0モル%含有するポリマー(A1)および/または(A2)を使用する。
【0034】
本発明のもう1つの、特に有利な実施態様によれば、ポリマー(A1)および/または(A2)は、そのつどその全質量に対して、式(1)および/または(2)の構造単位を>50.0質量%、有利には>60.0質量%、好ましくは>70.0質量%、特に>80.0質量%を含有する。その際、特に有利な結果は、そのつどその全質量に対して、式(1)および/または(2)の構造単位を>85.0質量%、有利には>90.0質量%、好ましくは>95.0質量%、特に>99.0質量%を含有するポリマー(A1)および/または(A2)により達成することができる。
【0035】
本発明の範囲でポリマー(A1)および/または(A2)はシンジオタクチック、アイソタクチックおよび/またはアタクチックな鎖の構造を有していてよい。さらに該ポリマーはランダムコポリマーとして存在していても、ブロックコポリマーとして存在していてもよい。
【0036】
ポリマー(A1)および/または(A2)の粘度は本発明によればそれほど重要ではなく、原則として低分子のポリマー(A1)および/または(A2)も、高分子のポリマー(A1)および/または(A2)も使用することができる。それにもかかわらず本発明の範囲では、ポリマー(A1)および/または(A2)が1〜70mPasの範囲、有利には2〜40mPasの範囲、特に3〜30mPasの範囲の粘度を有する(Hoepplerにより、20℃で4質量%の水溶液として測定、DIN53015)ことが、特に有利であることが判明した。
【0037】
さらにポリマー(A1)または(A2)はその分子量に関して、特別な制限を受けることはないが、しかし本発明の目的のために、少なくとも20000g/モルの分子量の質量平均を有するポリマー(A1)および/または(A2)が特に有利であることが証明された。その際、分子量の質量平均は有利にはゲル透過クロマトグラフィーにより、有利にはポリエチレンオキシド検定を使用して測定する。
【0038】
本発明により使用すべきポリマー(A1)および/または(A2)の製造は、自体公知の方法により多工程法で行うことができる。第一工程で相応するビニルエステルを適切な溶剤、通常は水またはアルコール、たとえばメタノール、エタノール、プロパノールおよび/またはブタノール中で、適切なラジカル開始剤の使用下にラジカル重合させる。重合をラジカル共重合性モノマーの存在下に実施する場合、相応するビニルエステルコポリマーが得られる。
【0039】
次いでビニルエステル(コ)ポリマーを第二工程で、通常はメタノールとの反応によりけん化し、その際、けん化度は自体公知の方法で、たとえば触媒濃度、反応温度および/または反応時間を変更することにより、適切に調節することができる。その他の詳細は通常の専門書、特にUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、CD−ROM Wiley−VCH、1997年、キーワード:ポリ(ビニルアセタール)およびここに記載されている文献箇所を参照のこと。
【0040】
このようにして得られたポリビニルアルコールから出発して、次いで式(4b)
【0041】
【化11】

[式中、Rは、結合、1〜10の炭素原子を有するアルキレン基または6〜12の炭素原子を有する、場合により置換されたアリーレン基であり、かつRは水素、COOH、1〜10の炭素原子を有するアルキル基または6〜12の炭素原子を有する、場合により置換されたアリール基である]の化合物と反応させ、かつアセタール化することによりポリマー(A1)を得ることができる。
【0042】
ポリビニルアルコールと化合物(4b)との反応は有利には少なくとも1の不活性溶剤中で行い、その際、「不活性溶剤」の概念は、そのつどの反応条件下で所望の反応の進行を妨げないか、または防止することがない溶剤である。この関連において特に有利な溶剤は水である。
【0043】
その際、有利には酸性触媒の存在下で反応を実施する。適切な酸は有機酸、たとえば酢酸ならびに鉱酸、たとえば塩酸、硫酸および/または硝酸を含み、その際、塩酸、硫酸および/または硝酸の使用は従来技術において特に有利であることが証明されている。反応の実施は有利には、ポリビニルアルコールが水溶液中に存在し、化合物(4b)を該溶液中に導入し、かつ引き続き酸性触媒を滴加して実施する。
【0044】
本発明の第一の実施態様の範囲では、任意の順序で、
(i)ポリマー(A1)を式(5)
(CHO) (5)
の少なくとも1のポリアルデヒドと反応させ、かつ
(ii)少なくとも部分的に式(1)および式(4a)の基を相互にエステル化する
ことにより、架橋したポリビニルアセタールが得られる。
【0045】
その際、Rは結合を表すか、または1〜40の炭素原子を有する基、有利には1〜20、好ましくは1〜12、特に2〜10の炭素原子を有する脂肪族、脂環式および/または芳香の族の基を表す。
【0046】
指数nは2以上、有利には2〜10の範囲、好ましくは2〜6の範囲の整数、特に2または3を表す。本発明の特に有利な実施態様によればnは2である。
【0047】
本発明により式(5)の特に適切な化合物は、グリオキシル、プロパンジアール、n−ブタンジアール、グルタルジアルデヒド、n−ヘキサンジアール、n−ヘプタンジアール、n−オクタンジアール、n−ノナンジアール、n−デカンジアール、n−ウンデカンジアール、n−ドデカンジアール、4,4′−エチレンジオキシジベンゾアルデヒドおよび2−ヒドロキシヘキサンジアール、特にグルタルジアルデヒドおよびn−ノナンジアールを含む。
【0048】
ポリアルデヒド(5)の量は本発明の範囲では原則として任意に選択することができるが、しかし、本発明の目的のためには、ポリマー(A1)の全質量に対して、ポリアルデヒド(5)を0.001〜1.0質量%、有利には0.005〜2.0質量%、特に0.01〜1.0質量%使用することが特に有利であることが証明された。
【0049】
工程(i)および(ii)の実施は任意の順序で行うことができる、つまり、まず工程(i)および次いで工程(ii)を実施するか、またはまず工程(ii)および次いで工程(i)を実施するか、あるいはまた両方の工程を同時に実施することが可能である。しかし本発明の目的のためにはまず工程(i)および次いで工程(ii)を実施することが特に有利であることが判明した。
【0050】
本発明の特に有利な実施態様の範囲で、さらに任意の時点において式(6)
【0051】
【化12】

の化合物少なくとも1種を添加する。
【0052】
基R10およびR11はそのつど相互に無関係に水素、1〜10の炭素原子を有するアルキル基または6〜12の炭素原子を有するアリール基である。その際、1もしくは複数のヒドロキシル基、スルホン酸基および/またはハロゲン原子、たとえばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を有するこれらのアルキル基およびアリール基は置換されていてもよい。式(6)の有利な化合物にはホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソ−ブチルアルデヒド、2−エトキシブチルアルデヒド、パラアルデヒド、1,3,5−トリオキサン、カプロンアルデヒド、2−エチルヘキサナール、ペラルゴンアルデヒド、3,5,5−トリメチルヘキサナール、2−ホルミル−ベンゼンスルホン酸、アセトン、エチルメチルケトン、ブチルエチルケトンおよび/またはエチルヘキシルケトンが属する。
【0053】
本発明の範囲でアルデヒド、つまりR10=水素およびR11=水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基またはイソ−プロピル基である式(6)の化合物、有利にはホルムアルデヒドおよび/またはn−ブチルアルデヒド、特にn−ブチルアルデヒドの使用が特に有利であることが証明された。
【0054】
成分(5)および(6)の比は有利には次のとおり
(1)少なくとも1種の化合物(6)95.00〜99.99質量部、
(2)少なくとも1種のポリアルデヒド(5)0.01〜5.00質量部
に選択され、その際、記載された質量部は有利には合計して100.00質量部である。
【0055】
ポリマー(A1)と化合物(5)および/または(6)との反応は有利には少なくとも1の不活性溶剤中で行い、その際、「不活性溶剤」の概念は、そのつどの反応条件下で所望の反応の進行を妨げないか、または防止することがない溶剤である。この関連において特に有利な溶剤は水である。
【0056】
さらに有利には酸性触媒の存在下で反応を実施する。適切な酸は有機酸、たとえば酢酸ならびに鉱酸、たとえば塩酸、硫酸および/または硝酸を含み、その際、塩酸、硫酸および/または硝酸の使用は従来技術において特に有利であることが証明されている。反応の実施は有利には、ポリマー(A1)が水溶液中に存在し、化合物(5)および/または(6)を該溶液中に導入し、かつ引き続き酸性触媒を滴加して実施する。
【0057】
本発明の第二の実施態様の範囲では、
(i)ポリマー(A2)を式(6)の少なくとも1の化合物と反応させ、
(ii)式(4b)の少なくとも1の化合物を添加し、
(iii)式(5)のポリアルデヒドを添加し、かつ
(iv)少なくとも部分的に式(1)の基および式(4b)の化合物から誘導される構造単位を相互にエステル化する
ことにより、架橋したポリビニルアセタールが得られる。
【0058】
その際、式(4b)、(5)および(6)の化合物は前記のとおりに定義されている。 エステル化(ii)および/または(iv)は自体公知の方法で行うことができるが、ただしその際、本発明の範囲では架橋を、場合により少なくとも1種の可塑剤の存在下に、80〜280℃の範囲、有利には120〜280℃の範囲、特に140〜260℃の範囲の物質温度で実施することが特に有利であることが判明した。
【0059】
その際、ポリビニルアセタールの熱的な架橋は、当業者に公知の全ての加熱可能な装置、たとえば炉、混練機、押出機、プレスまたはオートクレーブを用いて実施することができる。しかし有利には熱的な架橋は押出機または混練装置中で行う。というのも、これらは有利な実施態様で含有されている可塑剤との良好な均質化を保証するからである。その際、架橋は、架橋していないポリビニルアセタールと比較して、架橋したポリビニルアセタールの高い分子量により識別することができる。
【0060】
架橋の度合いは、適用に応じて、自由に選択することができる。しかし本発明の範囲では、本来ポリビニルアセタール中に含有されているカルボキシル基全ての少なくとも10モル%、有利には少なくとも20モル%、好ましくは少なくとも30モル%、特に少なくとも40モル%をエステル化することが特に有利であることが判明した。その際、カルボキシル基の含有率は、架橋したポリビニルアセタールの全質量に対して、有利には10.0質量%以下であり、かつ有利には0.00001〜10.0質量%の範囲、特に有利には0.001〜10.0質量%の範囲、好ましくは0.01〜5.0質量%の範囲および特に0.01〜2.0質量%の範囲である。
【0061】
本発明による架橋したポリビニルアセタールは有利な実施態様では可塑剤を含有する。その際、可塑剤として当業者に公知の全ての可塑剤を使用することができる。その際、可塑剤は、当業者に公知の通常の量で使用される。ポリビニルアセタールのため、特にポリビニルブチラールのための公知の可塑剤は、脂肪族モノカルボン酸およびジカルボン酸と一価もしくは多価のアルコールまたはオリゴアルキレン−グリコールエーテルとのエステル、リン酸エステルならびに種々のフタレート、たとえばUS−A−5137954に開示されているものである。しかし有利にはジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールと、脂肪族モノカルボン酸とのジエステル、アジピン酸−ジアルキルエステルならびに未公開のDE−A−10100681に記載されているアルキレングリコールおよびポリアルキレングリコールのジベンゾエートを使用する。
【0062】
本発明による架橋したポリビニルアセタールの可能な使用分野は当業者に明らかである。該ポリビニルアセタールは特に、架橋したポリビニルアセタールのため、特にポリビニルホルマールおよび/またはポリビニルブチラールのために定められている全ての適用のために適切である。特に有利な適用分野は、有利にはスロットダイを用いた直接押出により製造することができるフィルムとしての、特に合わせガラスのためのその使用を含む。ポリビニルアセタールの押出のため、およびポリビニルアセタールフィルム、特にポリビニルブチラールフィルムの製造のためのその他の詳細は当業者に専門書から周知である。
【0063】
本発明によるポリビニルアセタールの本発明の範囲で特に有利な適用分野は、有利に0.5μm〜1mmの範囲の厚さを有する平面状構成物、特にフィルムである。その際、本発明によるフィルムはその他の通常の添加剤、たとえば酸化安定剤、UV安定剤、着色剤、充填剤、顔料および/または粘着防止剤を含有していてもよい。
【0064】
さらに本発明によるポリビニルアセタールは支持体、特に木材、金属、プラスチック、ガラス、テキスタイル、紙、皮革ならびにセラミックおよび鉱物質の下地の被覆のためにも特に適切である。従って本発明の対象は本発明によるポリビニルアセタールを含有する被覆でもある。
【0065】
該被覆はさらにポリマー樹脂、可塑剤、顔料、充填剤、安定剤、接着性改良剤、レオロジー調整剤、pH値に影響を与える添加剤および/または本発明によるポリビニルアセタールと他のポリマー樹脂との間の、ならびにその他のポリマー樹脂相互の間の化学的な反応を触媒する添加剤を含有していてよい。
【0066】
本発明による被覆は自体公知の方法で、後から有利には高めた温度で溶融し、かつ架橋させる粉末としても、また有利に有機溶液からでも、当業者に公知の被覆法により行うことができる。その際、溶液からの塗布の場合、有利には本発明により架橋すべきポリビニルアセタールを、場合によりその他のバインダーと一緒に、ならびに場合によりその他の成分、たとえば可塑剤、顔料、充填剤、安定剤、接着性改善剤、レオロジー調整剤と一緒に、溶剤または溶剤混合物中に溶解し、かつ次いで被覆すべき支持体上に施与する。本発明による架橋は有利には溶剤を蒸発させた後、有利には20〜200℃の範囲の温度で行う。その際、架橋反応は有利にはpH値を低下させる添加剤、たとえば有機および/または無機酸により促進される。
【0067】
被覆中での適用の際に、架橋は、架橋していないポリビニルアセタールと比較して、被覆の溶剤安定性の増加ならびに分子量の増加において示される。
【0068】
本発明のもう1つの実施態様によれば、本発明によるポリビニルアセタールは特にエレクトロクロミックシステムのためのイオン伝導性の中間層を製造するためにも適切である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー(A1)の全質量に対して、
a.)式(1)
【化1】

[式中、Rは水素またはメチルを表す]の構造単位を1.0〜99.9質量%、
b.)式(2)
【化2】

[式中、Rは水素または1〜6の炭素原子を有するアルキル基を表す]の構造単位を0〜99.0質量%、
c.)式(3)
【化3】

[式中、R、R、RおよびRはそれぞれ相互に無関係に1〜500g/モルの範囲の分子量を有する基である]の構造単位を0〜70.0質量%、
d.)式(4a)
【化4】

[式中、Rは結合、1〜10の炭素原子を有するアルキレン基または6〜12の炭素原子を有する置換されていてもよいアリーレン基であり、かつRは水素、COOH、1〜10の炭素原子を有するアルキル基または6〜12の炭素原子を有する置換されていてもよいアリール基である]の構造単位を0.00001〜30.0質量%
含有するポリマー(A1)を架橋させる、架橋したポリビニルアセタールの製造方法において、任意の順序で、
(i)ポリマー(A1)を式(5)
(CHO) (5)
[式中、Rは結合を表すか、または1〜40の炭素原子を有する基を表し、かつnは2以上の整数を表す]の少なくとも1のポリアルデヒドと反応させ、かつ
(ii)少なくとも部分的に式(1)および式(4a)の基を相互にエステル化する
ことを特徴とする、架橋したポリビニルアセタールの製造方法。
【請求項2】
任意の時点で式(6)
【化5】

[式中、R10およびR11はそれぞれ相互に無関係に水素、1〜10の炭素原子を有するアルキル基または6〜12の炭素原子を有する置換されていてもよいアリール基である]の少なくとも1の化合物を添加することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
=水素を有するポリマー(A1)を使用することを特徴とする、請求項1および/または2記載の方法。
【請求項4】
が結合または1〜4の炭素原子を有するアルキレン基であるポリマー(A1)を使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ポリマー(A2)の全質量に対して、
a.)式(1)
【化6】

[式中、Rは水素またはメチルを表す]の構造単位を1.0〜99.9質量%、
b.)式(2)
【化7】

[式中、Rは水素または1〜6の炭素原子を有するアルキル基を表す]の構造単位を0〜99.0質量%、
c.)式(3)
【化8】

[式中、R、R、RおよびRはそれぞれ相互に無関係に1〜500g/モルの範囲の分子量を有する基を表す]の構造単位を0〜70.0質量%
含有するポリマー(A2)を架橋させる、架橋したポリビニルアセタールの製造方法において、
(i)ポリマー(A2)を式(6)
【化9】

[式中、R10およびR11はそれぞれ相互に無関係に水素、1〜10の炭素原子を有するアルキル基または6〜12の炭素原子を有し、置換されていてもよいアリール基である]の少なくとも1の化合物と反応させ、
(ii)式(4b)
【化10】

[式中、Rは結合、1〜10の炭素原子を有するアルキレン基または6〜12の炭素原子を有し、置換されていてもよいアリーレン基であり、かつRは水素、COOH、1〜10の炭素原子を有するアルキル基または6〜12の炭素原子を有し、置換されていてもよいアリール基である]の少なくとも1の化合物を添加し、
(iii)式(5)
(CHO) (5)
[式中、Rは結合を表すか、または1〜40の炭素原子を有する基を表し、かつnは2以上の整数である]のポリアルデヒドを添加し、かつ
(iv)少なくとも部分的に式(1)の基および式(4b)の化合物から誘導される構造単位を相互にエステル化する
ことを特徴とする、架橋したポリビニルアセタールの製造方法。
【請求項6】
=水素を有する式(4b)の化合物を使用することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
が結合であるか、または1〜4の炭素原子を有するアルキレン基である式(4b)の少なくとも1の化合物を使用することを特徴とする、請求項5および/または6記載の方法。
【請求項8】
n=2または3を有する化合物(5)を使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
が1〜12の炭素原子を有する脂肪族、脂環式および/または芳香族の基である化合物(5)を使用することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
化合物(5)としてグルタルジアルデヒドおよび/またはn−ノナンジアールを使用することを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
化合物(6)としてn−ブチルアルデヒドを使用することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
(1)少なくとも1の化合物(6)を95.00〜99.99質量部、
(2)少なくとも1のポリアルデヒド(5)を0.01〜5.00質量部
を使用し、その際、上記の質量部は合計して100.00質量部であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
エステル化(ii)もしくは(iv)を、場合により少なくとも1の可塑剤の存在下に、80〜280℃の範囲の物質温度で実施することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
架橋を押出機、混練機またはその他の加熱可能な装置中で実施することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の方法により得られる架橋したポリビニルアセタール。
【請求項16】
ポリビニルアセタールの全質量に対して、エステル化された、およびエステル化されていないものの全含有率が、10.0質量%以下であることを特徴とする、請求項15記載のポリビニルアセタール。
【請求項17】
可塑剤を含有する、請求項15および/または16記載のポリビニルアセタール。
【請求項18】
請求項15から17までのいずれか1項に記載されたポリビニルアセタールを含有する成形材料。
【請求項19】
請求項15から18までのいずれか1項に記載されたポリビニルアセタールを含有するフィルム。
【請求項20】
複合安全ガラスを製造するための、請求項19記載のフィルムの使用。
【請求項21】
請求項15から17までのいずれか1項に記載されたポリビニルアセタールを含有する被覆。
【請求項22】
エレクトロクロミックシステムのためのイオン伝導性中間層を製造するための請求項15から17までのいずれか1項に記載されたポリビニルアセタールの使用。

【公表番号】特表2006−513284(P2006−513284A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565965(P2004−565965)
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014109
【国際公開番号】WO2004/063231
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(505220930)クラレイ スペシャリティーズ ヨーロッパ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (8)
【Fターム(参考)】