説明

架橋ゲルで構成された吸水剤及びその製造方法

【課題】吸水速度及び吸水量が高く、屋外などでの作業性にも優れた吸水剤を提供する。
【解決手段】架橋したカルボキシアルキルセルロース又はその塩100重量部に対して、0〜1000重量部の溶媒を添加して造粒するとともに、カルボキシアルキルセルロース又はその塩を加熱により架橋することにより、平均粒径が0.1〜1.8mmであるカルボキシアルキルセルロース又はその塩の架橋ゲルで構成された吸水剤を調製する。この吸水剤は、5分間における0.9重量%生理食塩水の垂直吸収倍率(VA5)が12g/g以上であり、かつ24時間後における0.9重量%生理食塩水の自由膨潤倍率(FSC24)が18g/g以上である。前記架橋ゲルの平均粒径は0.5〜1.2mm程度であり、かつ粒径1.0〜1.8mmの架橋ゲルの割合が全架橋ゲルに対して10重量%以下であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性及び生分解性に優れ、カルボキシアルキルセルロース又はその塩の架橋ゲルで構成された吸水剤及びその製造方法、その吸水剤を用いて廃棄物を浄化処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高吸収性ポリマー(SAP)は、おむつ、血液吸水剤、生理用ナプキンなどのサニタリー用品などに幅広く使用されている。しかし、従来のSAPでは、石油系のポリマーで構成されているため、廃棄すると環境破壊に繋がる虞があった。また、環境に負荷のかからない吸水剤として、デンプン系の吸水剤やカルボキシメチルセルロース(CMC)の放射線架橋物などが提案されていた。しかし、デンプン系の吸水剤は、分解が速すぎるために、吸収した水の保持時間が短い。さらに、放射線架橋CMCは、大規模な製造設備が必要であり、コスト及び生産性が低い。
【0003】
一方、従来から、水分含有量の高い廃棄物(例えば、食物残渣、汚泥、家畜糞尿など)の処理(例えば、堆肥化など)においては、水分量を低減するため、おがくずやもみ殻が使用されている。例えば、乳牛などの糞尿では、含水率が90%程度であるため、発酵させて堆肥化するためには、含水率を50〜60%程度まで低下させる必要がある。しかし、おがくずやもみ殻を用いて水分量を低減させる場合、おがくずやもみ殻を水分量と同等量程度に多量に添加する必要がある。そのため、日本の土地事情上、省スペース型の堆肥化システムとして機能するように、添加量が少なくても、水を有効に吸収することができ、含水量の調整に有用な吸水剤が必要とされている。さらに、堆肥化処理が終わると、環境中に速やかに循環するように生分解性が必要である。特に、家畜糞尿などの堆肥化においては、撒いた後に即座に水分を吸収し、できるだけ大量の水分を保持する必要がある。さらに、屋外での使用における粉塵の飛散防止など、作業性も要求される。
【0004】
環境に負荷のかからない吸収体として、天然由来の樹脂を主成分とする吸水剤も知られている。例えば、特開2005−95737号公報(特許文献1)には、セルロース誘導体及び/又はデンプン誘導体のペースト状物に放射線橋かけによって得られるハイドロゲル、その生乾きの半乾燥ゲル及び乾燥ゲルの少なくとも1種を含有物に添加し寒天状に固化させ堆肥及び/又は飼料化を可能にすることからなる含水物の固化処理方法が開示されている。しかし、このゲルでは、ゲルを架橋するのに放射線を利用するため、製造設備が大掛かりになり、生産性、コスト面に問題がある。また、このゲルは、液体の吸収速度が低い上に、デンプン誘導体で構成されるため、分解も速すぎるため、液体の保持性が十分でない。
【0005】
特開2005−305236号公報(特許文献2)には、カルボキシアルキル化ガラクトマンナンを主成分として含み、ポリカルボン酸又はその塩で架橋された生分解性吸水材が開示されている。さらに、特開平7−82301号公報(特許文献3)には、カルボキシアルキルセルロースアルカリ金属塩が多価カルボン酸で架橋された生分解性吸水材が開示されている。しかし、これらの吸水材では、吸水倍率や吸水速度が不十分であり、含水量の多い廃棄物を処理する用途には不向きである。
【0006】
また、特許第3249201号公報(特許文献4)には、熱処理操作の時間を調整するために、カルボキシアルキルポリサッカライド及び水を含む溶液を形成し、この溶液のpHを調整した後、この溶液からカルボキシアルキルポリサッカライドを回収した後、熱処理して架橋する方法が開示されている。しかし、この方法では、水を回収する工程が必要であり、簡便性及び経済性が低い。
【0007】
さらに、特開2006−110537号公報(特許文献5)には、鹸化度が90モル%以上であり、かつ粒径が2〜20メッシュのポリビニルアルコール共重合体からなる家畜排泄物用処理剤が開示されている。しかし、この処理剤では、粒状のポリビニルアルコール共重合体を原料としているため、液体を十分に吸収又は保持するためには、添加量を多くする必要がある。さらに、合成高分子で構成されているため、生分解に長期間必要とし、環境への負荷が懸念される。
【特許文献1】特開2005−95737号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2005−305236号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平7−82301号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特許第3249201号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献5】特開2006−110537号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、吸水性(吸水速度及び吸水量)に優れ、屋外などでの作業性にも優れた吸水剤及びその製造方法、並びにこの吸水剤を用いて高含水率の廃棄物を浄化処理する方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、生分解性を有し、かつ簡便な方法で得られる吸水剤及びその製造方法、並びにこの吸水剤を用いて高含水率の廃棄物を浄化処理する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定の方法でカルボキシアルキルセルロース又はその塩を熱架橋し、平均粒径が0.1〜1.8mmである吸水剤を調製すると、優れた吸収性を示し、かつ屋外などでの作業性にも優れる吸水剤を簡便に効率よく製造できることを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の吸水剤は、平均粒径が0.1〜1.8mmであるカルボキシアルキルセルロース又はその塩の架橋ゲルで構成された吸水剤であって、5分間における0.9重量%生理食塩水の垂直吸収倍率(VA5)が12g/g以上であり、かつ24時間後における0.9重量%生理食塩水の自由膨潤倍率(FSC24)が18g/g以上である。この吸水剤において、前記垂直吸収倍率(VA5)と前記自由膨潤倍率(FSC24)との比(VA5/FSC24)は0.4以上であってもよい。前記架橋ゲルの平均粒径は0.5〜1.2mm程度であり、かつ粒径1.0〜1.8mmの架橋ゲルの割合が全架橋ゲルに対して10重量%以下であってもよい。前記架橋ゲルは加熱により架橋されたゲルであってもよい。
【0012】
本発明には、カルボキシアルキルセルロース又はその塩100重量部に対して、0〜1000重量部の溶媒を添加して造粒する造粒工程と、カルボキシアルキルセルロース又はその塩を加熱により架橋する架橋工程とを含む吸水剤の製造方法も含まれる。前記架橋工程において、加熱温度が50〜200℃であり、加熱時間が10分〜7時間であってもよい。
【0013】
さらに、本発明には、前記吸水剤を用いて、高含水率の廃棄物を浄化処理する方法も含まれる。この方法において、高含水率の廃棄物は家畜糞尿であってもよい。
【0014】
なお、本明細書において、「水」とは、特に断りのない限り、塩を含まない水に限られず、塩を含む水をも意味する。さらに、「カルボキシアルキルセルロース」とは、塩を形成していないカルボキシアルキルセルロースのみならず、カルボキシアルキルセルロース塩を含む意味に用いる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、吸水性(吸水速度及び吸水量)に優れ、かつ屋外などでの作業性にも優れた吸水剤が得られる。すなわち、この吸水剤は、粒径が比較的大きいため、風がある屋外などでも粉塵の発生が抑制され、作業性に優れるとともに、飛散による消失が少なく、有効利用できる。一方、粒径を大きくすると、通常は吸水性(特に、初期の吸収スピード)が阻害されるにも拘わらず、この吸水剤は、優れた吸水性を示す。さらに、この吸水剤は、カルボキシアルキルセルロースで構成されているため、生分解性にも優れ、家畜糞尿処理などの高含水率の廃棄物処理に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[吸水剤]
本発明の吸水剤は、平均粒径が0.1〜1.8mmであるカルボキシアルキルセルロース(又はその塩)の架橋ゲルで構成されている。
【0017】
(カルボキシアルキルセルロース)
原料となるカルボキシアルキルセルロースとしては、例えば、カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロースなど)、アルキルカルボキシアルキルセルロース(メチルカルボキシメチルセルロース、メチルカルボキシエチルセルロースなど)、ヒドロキシアルキルカルボキシアルキルセルロース(ヒドロキシエチルカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルカルボキシメチルセルロースなど)などが挙げられる。これらのカルボキシアルキルセルロースは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
これらのカルボキシアルキルセルロースのうち、カルボキシC1-2アルキルセルロースなどのセルロースエーテル、特に、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのカルボキシメチル基含有セルロースエーテルが好ましい。
【0019】
カルボキシアルキルセルロースは、塩を形成していてもよい。カルボキシアルキルセルロース塩としては、例えば、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩など)などの一価金属塩、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩など)などの二価金属塩、第四級アンモニウム塩、アミン塩、又はこれらの複塩などが挙げられる。CMCの場合、通常、ナトリウム塩などのアルカリ金属塩が使用される。
【0020】
カルボキシアルキルセルロース(特にCMC)の平均エーテル化度(カルボキシアルキル基の平均エーテル化度)(又は平均置換度DS)は、例えば、0.1〜3.0程度の範囲から選択でき、特に0.3〜2.5、好ましくは0.4〜2.0、さらに好ましくは0.45〜1.5程度である。平均エーテル化度がこのような範囲にあると、吸水速度及び保液性が向上する。
【0021】
なお、「平均置換度」とは、セルロースを構成するグルコース単位の2,3および6位のヒドロキシル基に対する置換度(置換割合、特に、塩を形成していてもよいカルボキシアルキル基の置換度)の平均であり、最大値は3である。
【0022】
本発明では、架橋ゲルはカルボキシアルキルセルロースのカルボキシル基とヒドロキシル基との脱水縮合により自己架橋されている。一方、吸水性などの点からは、カルボキシアルキルセルロースは塩の形態であるのが好ましいが、完全な塩の形態であると、架橋のための遊離のカルボキシル基が存在しないため、架橋の前に微量の酸を添加して、部分酸型カルボキシアルキルセルロースに変換(転化)してもよい。部分酸型カルボキシアルキルセルロースにおいて、遊離のカルボキシル基(カルボキシアルキルセルロースの遊離のカルボキシル基)をAモル、塩を形成したカルボキシル基(カルボキシアルキルセルロースの塩を形成したカルボキシル基)をBモルとするとき、[A/(A+B)]×100(%)で表される酸型化率は、例えば、0.01〜5%であり、好ましくは0.03〜4.5%、さらに好ましくは0.05〜2.5%程度であってもよい。
【0023】
なお、カルボキシアルキルセルロースの酸型化率は、酸又はアルカリ滴定、電導度測定、赤外線吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトルなどの慣用の方法を利用して測定できる。
【0024】
カルボキシアルキルセルロースの粘度は、例えば、1重量%水溶液の粘度(25℃、B型粘度計、No.4ローター、60rpm)が500〜20000mPa・s、好ましくは600〜15000mPa・s、さらに好ましくは800〜10000mPa・s(特に1000〜5000mPa・s)程度である。
【0025】
カルボキシアルキルセルロースの平均重合度(粘度平均重合度)は、特に制限されないが、例えば、10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは100〜800程度である。
【0026】
1重量%水溶液のpHは、例えば、4〜8、好ましくは5〜7.5、さらに好ましくは5.5〜7(特に6〜6.7)程度である。
【0027】
このようなカルボキシアルキルセルロース(架橋していないカルボキシアルキルセルロース)の形状は、粉粒状、繊維状、乾燥した粉末(パウダー)状、湿綿状(エーテル化後の湿潤状態のカルボキシアルキルセルロース)などであってもよい。カルボキシアルキルセルロースは、市販品を使用してもよく、以下の方法で製造してもよい。
【0028】
(カルボキシアルキルセルロースの製造方法)
このような原料としてのカルボキシアルキルセルロースは、慣用のスラリー法(高液倍率法)やニーダー法(低液倍率法)などの種々の方法、例えば、セルロースとアルカリとを反応させてアルカリセルロースを生成させる工程(アルカリセルロース化工程)と、生成したアルカリセルロースとエーテル化剤との反応によりセルロースエーテルを生成させる工程(エーテル化工程)とを含む方法により製造できる。
【0029】
前記アルカリセルロース化工程(アルセル化工程)において、セルロースとしては、種々の原料、例えば、木材パルプ、リンターパルプなどが使用できる。セルロースの形状は、粉粒状、繊維状などであってもよく、通常、繊維状である。
【0030】
アルカリとしては、前記塩に対応する化合物、例えば、アルカリ金属の水酸化物(リチウム、カリウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウムなど)、アルカリ土類金属の水酸化物(マグネシウム、カルシウム、バリウムなど)、アンモニアなどが挙げられる。これらのアルカリのうち、アルカリ金属水酸化物(特に水酸化ナトリウム)が汎用される。なお、アルカリは、通常、水溶液の形態で使用される。
【0031】
アルカリ(水酸化ナトリウムなど)の使用量は、セルロース100重量部に対して、例えば、10〜100重量部、好ましくは30〜80重量部、さらに好ましくは40〜70重量部程度である。なお、スラリー法において、アルカリ(水酸化ナトリウムなど)の使用量は、通常、セルロース100重量部に対して、例えば、40〜70重量部、好ましくは45〜65重量部程度である。スラリー法では、セルロース濃度1〜7重量%程度、ニーダー法では、セルロース濃度10〜20重量%程度でアルセル化を行う場合が多い。また、アルセル化工程でのアルカリ濃度は、スラリー法、ニーダー法などにより異なるが、スラリー法では、通常、1〜20重量%程度の水性媒体中で行うことができ、ニーダー法では、通常、濃度1〜5重量%程度の水性媒体中で行うことができる。
【0032】
アルセル化工程は、適当な溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノールなど)、ケトン類(アセトンなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)などが例示できる。
【0033】
前記エーテル化工程(カルボキシアルキル化工程)で使用されるエーテル化剤としては、カルボキシアルキルセルロースの種類に応じて選択でき、例えば、ハロカルボン酸(モノクロロ酢酸、モノクロロプロピオン酸又はこれらの塩など)などが挙げられる。また、エーテル化工程も、前記アルセル化工程と同様に、前記例示の溶媒の存在下で行ってもよい。
【0034】
このようにして生成したセルロースエーテルは、脱液、洗浄して乾燥することにより精製できる。なお、必要であれば、反応終了後、粘度調整のため、過酸化水素、過酢酸などの過酸化物で処理してもよい。
【0035】
本発明では、前述のように、熱架橋のための遊離のカルボキシル基は、過剰のアルカリを中和させるための酸の存在により発生させてもよい。また、精製工程とは別個に、酸を添加するカルボキシル基変換(酸型化又は遊離化)工程を設けて、遊離のカルボキシル基を発生させてもよい。
【0036】
塩を形成したカルボキシル基を遊離のカルボキシル基に変換するための酸としては、プロトン酸、例えば、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸など)、有機酸(例えば、カルボン酸、スルホン酸など)などが挙げられる。安全性の点から、有機酸(特に、カルボン酸)が好適に使用される。なお、前記カルボン酸は、ギ酸、酢酸などの一価カルボン酸であってもよく、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸などの多価カルボン酸(ヒドロキシカルボン酸を含む)であってもよい。これらの酸は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましい酸は、ギ酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸である。
【0037】
酸の使用量(中和に用いる場合には余剰の量)は、カルボキシアルキルセルロースの酸型化率に応じて調整でき、塩を形成したカルボキシアルキルセルロース100重量部に対して、例えば、0.005〜1重量部、好ましくは0.01〜0.8重量部、さらに好ましくは0.015〜0.7重量部程度であってもよい。
【0038】
(架橋ゲル)
本発明の吸水剤は、前記カルボキシアルキルセルロース(又はその塩)の熱架橋ゲルで構成され、その形状は粒状又はペレット状である。平均粒径は0.1〜1.8mmであり、好ましくは0.3〜1.5mm、さらに好ましくは0.5〜1.2mm(特に0.7〜1.0mm)程度である。さらに、粒径1.0〜1.8mmの架橋ゲルの割合が全架橋ゲルに対して、例えば、10重量%以下(例えば、0.01〜10重量%)、好ましくは0.05〜8重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%程度である。本発明の吸水剤は、このように適度な大きさの粒径を有しているため、作業性や操作性に優れるとともに、吸水性も向上できる。
【0039】
本発明の吸水剤は、吸水性に関して、垂直吸収倍率(VA)及び自由膨潤倍率(FSC)で表される。本発明における垂直吸収倍率(VA)とは、吸水剤自身が垂直方向に水を吸引する力の目安であり、短時間(例えば、5分)の垂直吸収倍率を測定することにより吸水スピードの指標となる値である。具体的には、5分間における0.9重量%生理食塩水の自重に対する垂直吸収倍率(VA5)が、例えば、12g/g(倍)以上(例えば、12〜100g/g)、好ましくは15g/g以上(例えば、15〜80g/g)、さらに好ましくは18g/g以上(例えば、18〜50g/g)程度である。なお、本発明では、垂直吸収倍率(VA5)は、実施例に記載の方法で測定されて算出される。
【0040】
一方、本発明における自由膨潤倍率(FSC)とは、吸水剤自身が保持可能な最大の吸水量であり、充分な時間(例えば、24時間)経過後の飽和状態で測定することにより最大吸収量を確認できる。具体的には、24時間後における0.9重量%生理食塩水の自重に対する自由膨潤倍率(FSC24)が、例えば、18g/g(倍)以上(例えば、18〜200g/g)、好ましくは22g/g以上(例えば、22〜150g/g)、さらに好ましくは25g/g以上(例えば、25〜100g/g)である。なお、本発明では、自由膨潤倍率(FSC24)は、実施例に記載の方法で測定されて算出される。
【0041】
さらに、本発明の吸水剤は、前記垂直吸収倍率(VA5)と前記自由膨潤倍率(FSC24)との比(VA5/FSC24)は、例えば、0.4以上、好ましくは0.4〜0.8、さらに好ましくは0.45〜0.6程度であってもよい。本発明の吸水剤は、自由膨潤倍率に対する垂直吸収倍率の比が大きいため、初期の吸水速度が高い。
【0042】
本発明の吸水剤は、必要に応じて慣用の添加剤、例えば、発泡剤、気泡調整剤、消泡剤、生分解性有機材料、安定剤(熱安定化剤、紫外線吸水剤など)、難燃剤、バイオサイド(殺菌剤、静菌剤、抗かび剤、防腐剤、防虫剤など)、粘度調節剤、分散剤、充填剤など)などを含んでいてもよい。
【0043】
[吸水剤(架橋ゲル)の製造方法]
本発明の吸水剤は、前記カルボキシアルキルセルロース(又はその塩)100重量部に対して、0〜1000重量部の溶媒を添加して造粒する造粒工程と、前記カルボキシアルキルセルロースを加熱により架橋する架橋工程とを経て製造できる。
【0044】
造粒工程において、カルボキシアルキルセルロースに添加する溶媒としては、常温下で液体である媒体に限られず、加熱(加温)条件下で液体(又は液状)である媒体であってもよい。このような溶媒として、例えば、水及びポリオール類から選択される少なくとも1種であってもよい。ポリオール類としては、例えば、C2-4アルカンジオール類(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、数平均分子量150〜1000程度のポリエチレングリコール類(ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなど)、三価以上のポリオール類(グリセリン、トリメチロールエタンなどの脂肪族C3−10トリオール類、ペンタエリスリトールなどのペンタエリスリトール類など)、糖アルコール類(エリスリトールなどのテトリトール類、アラビトール、リビトール、キシリトールなどのペンチトール類、ソルビトール、マンニトール、イジトール、グリトール、タリトール、ズルシトール、アロズルシトール、アルスリトールなどのヘキシトール類など)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの溶媒のうち、水、C2-4アルカンジオール類(特に、エチレングリコールなど)、ポリエチレングリコール類、糖アルコール類(特に、キシリトール、マンニトールなど)などが好適に使用される。なお、前記溶媒として、例えば、水、C2-4アルカンジオール類(特に、エチレングリコールなど)、低分子量(例えば、数平均分子量150〜500程度)のポリエチレングリコール類などを使用する場合には、造粒工程は常温下で行われてもよく、一方、糖アルコール類(特に、キシリトール、マンニトールなど)、高分子量(例えば、数平均分子量500〜1000程度)のポリエチレングリコール類などを使用する場合には、造粒工程は加熱(又は加温)条件下で行われてもよい。なかでも、簡便性などの点から、水が特に好ましい。
【0045】
前記溶媒の割合は、架橋カルボキシアルキルセルロース100重量部に対し、0〜1000重量部、好ましくは1〜900重量部、さらに好ましくは5〜700重量部程度である。
【0046】
造粒方法としては、慣用の造粒方法、例えば、転動造粒、流動層造粒、撹拌造粒、解砕造粒、圧縮造粒、押出造粒、溶解造粒などの造粒方法から選択できる。なかでも、圧縮造粒、撹拌造粒、転動造粒が、経済性や簡便性(設備的な容易性)などの点から好ましい。造粒温度は、例えば、常温〜200℃程度の範囲で選択できるが、簡便性の点から、通常、常温である。このようにして造粒された架橋ゲルは、分級することにより、所望の粒径を有するゲルとして容易に調製可能である。
【0047】
架橋工程において、加熱温度は50〜280℃程度の範囲から選択でき、例えば、50〜200℃、好ましくは70〜180℃、さらに好ましくは80〜160℃(特に100〜150℃)程度である。架橋温度が高すぎると、カルボキシアルキルセルロースが分解したり、着色する場合がある。加熱時間は、温度に応じて選択できるが、例えば、10分〜7時間、好ましくは20分〜5時間、さらに好ましくは30分〜3時間程度である。本発明では、架橋方法として、熱により自己架橋する方法を用いることにより、化学的に架橋する方法や活性エネルギー線を照射して架橋する方法に比べて、高い吸水速度と吸水量とを両立できるとともに、環境保全の面からも好ましい。
【0048】
架橋処理に供するカルボキシアルキルセルロースは、溶融状態であってもよく、乾燥状態であってもよいが、通常、架橋処理は、乾燥状態で造粒されたカルボキシアルキルセルロースに対して行われる。なお、溶媒によって溶解又は溶融した状態のカルボキシアルキルセルロースを架橋する場合には、前記カルボキシルアルキルセルロースを架橋する前に、予め自然乾燥などにより前記カルボキシアルキルセルロースを乾燥してもよいが、架橋温度で前記カルボキシアルキルセルロースを処理することにより、乾燥と架橋を同時に行うことができる。
【0049】
架橋処理(又は熱処理)は、乾燥機(恒温乾燥機、熱風乾燥機など)などの慣用の装置を用いて行うことができる。また、架橋は、空気又は酸素雰囲気下、又は非酸素雰囲気(ヘリウム、アルゴン、窒素)下で行ってもよく、通常、酸素雰囲気下(例えば、大気下又は空気中)で行ってもよい。また、架橋は、大気圧下又は加圧下で行ってもよく、通常、大気圧下で行ってもよい。
【0050】
さらに、熱架橋において、補助的に、架橋剤や架橋促進剤を添加してもよい。特に、水などの溶媒に加えて、pHを調整し、架橋を促進する点から、有機酸(例えば、クエン酸、酒石酸、りんご酸、乳酸など)や無機酸(例えば、塩酸、硫酸など)などの酸成分を添加してもよい。酸成分としては、安全性を考慮すると、有機酸が好ましい。酸成分の割合は、カルボキシアルキルセルロース及び溶媒の合計100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部程度である。
【0051】
前記2つの工程(造粒工程及び架橋工程)は、個別に行ってもよいが、工業的生産性の点から前記2つの工程を連続的に行ってもよい。なお、造粒工程と架橋工程との順序は、特に限定されないが、簡便性などの点から、カルボキシアルキルセルロースの造粒物を架橋するのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の吸水剤は、水や、塩を含有する水(例えば、生理食塩水、屎尿など)に対する吸水性(特に初期の吸水速度)に優れている。また、吸収した水の保持性にも優れている。さらに、高い生分解性を有しており、廃棄しても環境に対する影響を低減できる。
【0053】
このような吸水剤は、吸水性が要求される用途、例えば、おむつ(紙おむつ、おむつライナーなど)、生理用品(ナプキン、タンポンなど)、パット(汗取りパット、母乳パット、失禁パットなど)、ウェットティッシュ類[ウェットティッシュ、各種拭き取り用シート(掃除用ペーパークリーナー、メイク落とし用シートなど)など]、医療用品[創傷被覆材(又は創傷保護材)、創傷治癒材、手術用廃液処理材など]、土木又は園芸用品などが挙げられる。このような用途では、本発明の吸水剤単独で構成してもよく、本発明の吸水剤とこの吸水剤を被覆(又は被包又は内包)する基材とで構成してもよい。
【0054】
特に、本発明の吸水剤は、例えば、家畜糞尿、汚泥、食物残渣、酒の絞り粕などの含水率の高い廃棄物に添加すると、少量であっても水を素早く吸収しゲル内部に保持することができる。また、本発明の吸水剤は、前記廃棄物を浄化処理するのに有用な吸水体として有用である。通常、前記廃棄物を浄化処理する場合(例えば、発酵させて堆肥化する場合など)には、他の慣用の生分解性の吸水材、特に、不用で廃棄可能な生分解性の吸水材(例えば、おがくず、もみ殻、パルプ、コーヒー殻、茶殻などの生分解性有機材料など)を添加して廃棄物中の水分を吸収させるが、その際に本発明の吸水剤を併用すると、吸水剤の熱架橋ゲルが前記廃棄物中の水分を吸収するとともに、前記廃棄物と前記生分解性吸水材との間に空隙を形成し、廃棄物の発酵又は堆肥化の進行を補助できるため、前記生分解性吸水材の添加量を低減できる。より具体的には、本発明の吸水剤は、非吸水状態で、例えば、前記廃棄物100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.2〜20重量部、さらに好ましくは0.3〜10重量部程度用いてもよい。また、前記生分解性吸水材の平均粒径は、例えば、1〜15mm(好ましくは2〜10mm、さらに好ましくは3〜8mm)程度であってもよい。本発明の吸水剤は、このような生分解性吸水材100重量部に対して、非吸水状態で、0.1〜200重量部、好ましくは1〜150重量部、さらに好ましくは2〜100重量部程度用いてもよい。また、本発明の吸水剤(非吸水状態)と前記生分解性吸水材との合計は、前記廃棄物100重量部に対して0.01〜100重量部、好ましくは0.05〜50重量部、さらに好ましくは0.1〜30重量部程度であってもよい。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において、各物性の評価方法は以下の通りである。
【0056】
[平均エーテル化度]
精秤したカルボキシメチルセルロースナトリウム1gを包んだ濾紙を磁性ルツボにいれ、静かに加熱して炭化させた後、さらに600〜620℃で3時間炭化し、冷却後に500mLのビーカーに前記ルツボを移し、水250mLを加えた。さらに、0.1N硫酸を50mL加え、30分煮沸した。そして、冷却後、フェノールフタレイン試薬を加え、0.1N水酸化ナトリウム水溶液により滴定し、平均エーテル化度を測定した。
【0057】
[1重量%水溶液粘度]
精秤したカルボキシメチルセルロースナトリウム1gに、固形分が1重量%になるように補水を行いながら300rpmで30分間攪拌した後、ままこを潰し、4時間静置した。そして、B型粘度計により、60rpmおよび25℃の条件下で1重量%水溶液粘度を測定した。
【0058】
[自由膨潤倍率(FSC24)]
JIS K7223(Tバッグ法)に従い、縦100mm×横100mmのポリエステルメッシュ袋に1gの吸水剤(ゲル)を入れた。次いで、この吸水剤を入れたメッシュ袋を、1リットルの0.9重量%生理食塩水が入った2リットルのビーカーに浸漬し、25℃で24時間放置した。浸漬前後(吸水前後)のゲルの重量を測定し、吸収倍率(FSC24)を以下の式から算出した。
【0059】
吸収倍率(g/g)=(吸水後のゲル重量−吸水前のゲル重量)/吸水前のゲル重量。
【0060】
[垂直吸収倍率(VA5)]
図1に示す装置を組み立てて、垂直吸収倍率(g/g)を求めた。すなわち、図1において、ビュレット1には0.9重量%生理食塩水2が充填されており、ビュレット1のコック1aを開いて、食塩水2を2ml/分の速度(滴下量)でタンク3の中に滴下し、吸水スピードにより滴下速度を調整した。タンク3は、径φ30mmの円筒形で底部に孔を有しており、その孔は連結管4で収容器5の底部の孔と連結されることにより、食塩水2がタンク3と収容器5とが連通可能な構造となっている。連結管4の径φは12mmであり、長さは300mmである。タンク3には、さらに径φ8mmの側管3aが形成されており、タンク3に溜まった水2は、側管3aからオーバーフローし、メスシリンダー7に収容される。一方、収容器5には、その内部にろ紙5aを備え、さらにそのろ紙5aの上には吸水剤6が載置されている。ろ紙5aの上面は、タンク3の側管3aの下面と同じ高さとなるように配置されており、タンク3に溜まった食塩水2を吸水剤6が素早く吸収すれば、タンク3の側管3aからの食塩水2のオーバーフローが少なくなる。このような装置において、ビュレット1から食塩水2を5分間オーバーフローさせながら滴下した後(オーバーフローした状態での滴下時間:5分間)、ビュレット1中の減少した食塩水2の重量(H)、メスシリンダー7に溜まった食塩水2の重量(T)を測定して、吸水剤6が吸収した食塩水2の重量を算出し、吸水剤6の重量(S)から、以下の式より垂直吸収倍率(VA5)を算出した。
【0061】
垂直吸収倍率(g/g)=(H−T)/S。
【0062】
[有効率]
屋外(兵庫県姫路市のダイセル化学工業株式会社の敷地内)の50m四方が開けた場所の中心で、1m四方のバット(平皿)を置き、中心から1mの高さより10gの吸水剤を10回に分けて撒き、バットに回収された吸水剤の重量を測定し、有効率(重量%)を測定した。なお、試験時の平均風速は2.5m/sであった。
【0063】
[保形性]
10リットルのポリバケツに対して、牛糞尿(含水率90重量%)5kg、オガクズ1.5リットル及び吸水剤を100g加え、ハンドスコップを使い手早く均一に混合した。すぐに蓋をして10kgの重りを乗せ、1分後に重りと蓋を取り除き、逆さにして、3分後の山の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0064】
○:乾燥してパサパサし、山が保持されている
△:半乾燥しているが、流動性があって山が徐々に消失する
×:ドロドロの状態であり、山が直ちに消失する。
【0065】
[粉体ほぐれ率]
造粒した各吸水剤100gを強力小型粉砕機(フォースミル、大阪ケミカル(株)、容量300ml)に入れ、22,000rpmで30秒間回転させた。次いで、80メッシュの篩いで分級し、篩上に残った各吸水剤のほぐれ率を以下の式から算出した。
【0066】
粉体ほぐれ率(%)=篩後通過重量(g)/篩前の粉体重量(g)×100。
【0067】
(CMC−Naの合成例)
主溶媒成分として、イソプロピルアルコール(以下、IPAと略記する)を使用する有機溶媒法により、カルボキシメチルセルロース及びその塩を製造した。すなわち、撹拌装置付き3リットルのセパラブルフラスコに、IPA1600g、水170g、粉砕パルプ(セルロース)70gを投入して撹拌した。30℃の温度条件下、水酸化ナトリウム33gと水32gとの水溶液を添加し、30〜35℃で60分撹拌混合して、アルカリセルロースを得た(アルセル化工程)。
【0068】
この反応生成物に、モノクロロ酢酸28gをIPA24gに溶解したIPA溶液を供給して混合し、70℃の温度で60分間反応させた。反応終了後、3リットルのセパラブルフラスコから得られた反応混合物を取り出し、遠心分離機により脱液し、湿綿状のカルボキシルメチルセルロースナトリウム(以下、CMC−Naと略記する)を得た(エーテル化工程)。得られた湿綿状のCMC−Naに80重量%メチルアルコール水溶液を添加し、99.5重量%酢酸を添加して過剰のアルカリ成分を中和し、さらに、80重量%メチルアルコール水溶液で洗浄し、脱液、乾燥を行った。次いで、得られた繊維を60℃で一昼夜乾燥させた。乾燥後、得られた繊維は、白色で繊維長2〜10mmであった。この繊維を、強力小型粉砕機(フォースミル、大阪ケミカル(株)、容量300ml)で粉砕し、分級して粉末状のCMC−Naを得た。得られた粉体は、平均粒径177μm以下、平均エーテル化度0.63、1重量%水溶液粘度2100mPa・s(温度25℃)、1重量%水溶液のpH6.4であった。
【0069】
実施例1
合成例で得られたCMC−Na粉体100kgをローラーコンパクター(WP160×60型、(株)マツボー製)で2.0T/cm2のロール圧力で造粒し、次いで140℃で2時間加熱した。得られた架橋ゲルを篩いで分級し、0.5〜0.9mmの粒径の吸水剤を得た。
【0070】
実施例2
実施例1で造粒した架橋ゲルを篩いで分級し、0.9〜1.2mmの粒径の吸水剤を得た。
【0071】
実施例3
実施例1で造粒した架橋ゲルを篩いで分級し、1.2〜1.8mmの粒径の吸水剤を得た。
【0072】
実施例4
湿式造粒機(ニューグラマシンSEG350、(株)セイシン企業製)を用いて、合成例で得られたCMC−Na10kgに対して、水2.5kgを添加し、10分間撹拌造粒した。次いで、140℃で3時間加熱した。得られた架橋ゲルを篩いで分級し、0.5〜0.9mmの粒径の吸水剤を得た。
【0073】
比較例1
合成例で得られた未架橋CMC−Naの粉体を吸水剤とした。
【0074】
比較例2
加熱しない以外は実施例1と同様にしてCMC−Na粉体を造粒し、未架橋ゲルで構成された0.5〜0.9mmの粒径の吸水剤を得た。
【0075】
比較例3
造粒及び分級を行わない以外は実施例1と同様にして、平均粒径177μm以下の架橋ゲルで構成された吸水剤を得た。
【0076】
比較例4
実施例1で造粒した架橋ゲルを篩いで分級し、2.0〜3.0mmの粒径の吸水剤を得た。
【0077】
比較例5
300mlのビーカーに、合成例で得られたCMC−Na粉体30g及び水70gを投入し、手で撹拌した。続いて、厚み10mm程度に延展し、5kGyの電子線を照射し、40℃で24時間乾燥した。さらに、得られた架橋ゲルを強力小型粉砕機(フォースミル、大阪ケミカル(株)、容量300ml)で粉砕し、篩いで分級し、0.5〜0.9mmの粒径の吸水剤を得た。
【0078】
比較例6
合成例で得られたCMC−Na粉体20kgを二軸押出機((株)池貝社製、PCM30)にフィーダーより投入した。次いで、途中のラインから水10kgに酒石酸50gを予め溶解させた水溶液を注入し、80℃、15kg/hrのスピードで混練した。この混練物を直径φ1mmの口金から押出して、このストランドをペレタイザで長さ1mm程度にペレット化(粒状化)した。さらに、このペレットを流動層乾燥機(ミゼットドライヤMDG−80、ダルトン社製)に入れて、140℃で1.5時間乾燥し、熱架橋させて吸水剤を得た。
【0079】
比較例7
デンプン系吸水剤(KZR−10、日澱化学(株)製)を篩いで分級し、0.5〜0.9mmの粒径の吸水剤を得た。
【0080】
これらの実施例及び比較例で得られた吸水剤について、各種特性を測定した結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
表1から明らかなように、実施例では、吸水スピードが速く、吸水量も多いため、短時間で作業を終了することが可能であり、糞尿処理などに有効である。さらに、粒径が適度であるため、有効率が高く、作業性に優れている。
【0083】
これに対して、比較例1では、未架橋で粒径が小さいため、吸水スピードが低く、作業性も低い。比較例2では、粒径は適度であるものの、未架橋であるため、吸水スピードが小さい。比較例3では、粒径が小さいため、吸水量も充分でなく、作業性が低い。比較例4では、粒径が大きいため、吸水スピードが小さい。比較例5では、電子線で架橋しているため、吸水スピードが小さい。比較例6では、架橋前に水で混練しているため、表面積が小さく、吸水スピードが小さい。比較例7の澱粉系吸水剤では、吸水量が小さすぎるため、糞尿用途などの吸水剤としては機能しない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】実施例における垂直吸収倍率(VA5)を測定するための装置の概略模式図である。
【符号の説明】
【0085】
1…ビュレット
2…0.9重量%生理食塩水
3…タンク
4…連結管
5…収容器
6…吸水剤
7…メスシリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.1〜1.8mmであるカルボキシアルキルセルロース又はその塩の架橋ゲルで構成された吸水剤であって、5分間における0.9重量%生理食塩水の垂直吸収倍率(VA5)が12g/g以上であり、かつ24時間後における0.9重量%生理食塩水の自由膨潤倍率(FSC24)が18g/g以上である吸水剤。
【請求項2】
垂直吸収倍率(VA5)と自由膨潤倍率(FSC24)との比(VA5/FSC24)が、0.4以上である請求項1記載の吸水剤。
【請求項3】
架橋ゲルが加熱により架橋されたゲルである請求項1又は2記載の吸水剤。
【請求項4】
カルボキシアルキルセルロース又はその塩100重量部に対して、0〜1000重量部の溶媒を添加して造粒する造粒工程と、カルボキシアルキルセルロース又はその塩を加熱により架橋する架橋工程とを含む吸水剤の製造方法。
【請求項5】
架橋工程において、加熱温度が50〜200℃であり、加熱時間が10分〜7時間である請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の吸水剤を用いて、高含水率の廃棄物を浄化処理する方法。
【請求項7】
高含水率の廃棄物が家畜糞尿である請求項6記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−227885(P2009−227885A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77229(P2008−77229)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】