説明

架橋ゴムの製造方法

【課題】未架橋ゴム、特に従来架橋に長時間を要していたブチルゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴムなどのオレフィン系ゴムを短時間で架橋して、薄膜性に優れる架橋ゴムを与える、架橋ゴムの製造方法を提供する。
【解決手段】(A)未架橋ゴムを、(B)電子吸引基含有多官能性モノマーの存在下で、活性エネルギー線の照射により架橋反応させることを特徴とする、架橋ゴムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ゴムの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、未架橋ゴム、特に従来架橋に長時間を要していたブチルゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)などのオレフィン系ゴムを短時間で架橋して、薄膜性に優れる架橋ゴムを与える、架橋ゴムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴムの架橋方法としては硫黄架橋、キノイド架橋、フェノール樹脂架橋等が知られているが、これらの方法は、高温で長時間の加熱が必要であって、生産効率に欠けるなどの問題がある。また、薄膜を作製する場合、高温による架橋方法では均一・均質な薄膜を得ることが困難である。
従来技術として、例えば(1)少なくともキノイド、有機過酸化物、アクリルモノマーの三者を共存させて架橋反応を行わせることを特徴とするブチルゴムの架橋方法(特許文献1参照)や、(2)有機過酸化物と、電子吸引基を含有する多官能性モノマーとの存在下で、かつ、キノイド又は硫黄よりなる他の架橋剤の非存在下で、未架橋ブチルゴムの架橋反応を行わせることを特徴とするブチルゴムの架橋方法(特許文献2参照)が開示されている。
しかしながら、これらの方法はいずれも高温加熱が必要であり、ゴム架橋体の薄膜製造には適さない。特に、ブチルゴムやEPDMゴム等のオレフィン系ゴムは、架橋効率が低く、また架橋工程に長時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−74934号公報
【特許文献2】特許第3197068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下になされたものであり、未架橋ゴム、特に従来架橋に長時間を要していたブチルゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴムなどのオレフィン系ゴムを短時間で架橋して、薄膜性に優れる架橋ゴムを与える、架橋ゴムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、未架橋ゴム、特に好ましくは、分子内に0.1〜10モル%程度の不飽和結合を有するオレフィン系ゴムを、電子吸引基含有多官能性モノマーの存在下で、活性エネルギー線の照射により架橋させることにより、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
[1](A)未架橋ゴムを、(B)電子吸引基含有多官能性モノマーの存在下で、活性エネルギー線の照射により架橋反応させることを特徴とする、架橋ゴムの製造方法、
[2](B)電子吸引基含有多官能性モノマーが、(メタ)アクリル酸系多官能性モノマーである、上記[1]項に記載の架橋ゴムの製造方法、
[3]活性エネルギー線が紫外線であって、(A)未架橋ゴムを、(B)電子吸引基含有多官能性モノマーと、(C)光重合開始剤との存在下で、紫外線の照射により架橋反応させる、上記[1]又は[2]項に記載の架橋ゴムの製造方法、
[4](A)成分と(B)成分との使用割合が、質量比で100:0.1〜100:50である、上記[1]〜[3]項のいずれかに記載の架橋ゴムの製造方法、
[5](A)成分と(C)成分との使用割合が、質量比で100:0.01〜100:30である、上記[3]又は[4]項に記載の架橋ゴムの製造方法、
[6](A)未架橋ゴムが、分子内に不飽和結合を有するゴムである、上記[1]〜[5]項のいずれかに記載の架橋ゴムの製造方法、
[7]分子内に不飽和結合を有するゴムが、分子内に0.1〜95モル%の不飽和結合を有するオレフィン系ゴムである、上記[6]項に記載の架橋ゴムの製造方法、
[8]分子内に0.1〜95モル%の不飽和結合を有するオレフィン系ゴムが、ブチルゴム及び/又はエチレン−プロピレン−ジエンゴムである、上記[7]項に記載の架橋ゴムの製造方法、
[9]支持体上に設けられた、未架橋ゴムと電子吸引基含有多官能性モノマーを含む塗膜に活性エネルギー線を照射して、未架橋ゴムを架橋反応させる、上記[1]〜[8]項のいずれかに記載の架橋ゴムの製造方法、及び
[10]塗膜の厚さが0.01〜1000μmである、上記[9]項に記載の架橋ゴムの製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電子吸引基含有多官能性モノマーを存在させることにより、未架橋ゴム、特に従来架橋に長時間を要していたブチルゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴムなどのオレフィン系ゴムを短時間で架橋することができ、かつ薄膜性に優れる架橋ゴムを与える、架橋ゴムの製造方法を提供することができる。
さらに、本発明の架橋ゴムの製造方法によれば、一般的な塗布方式で薄膜形成後に、活性エネルギー線を照射することで架橋ゴムが得られる。また、均一な薄膜が得られやすく、生産効率もよい。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の架橋ゴムの製造方法は、(A)未架橋ゴムを、(B)電子吸引基含有多官能性モノマーの存在下で、活性エネルギー線の照射により架橋反応させることを特徴とする。
なお、本発明において、活性エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち紫外線又は電子線などを指す。
【0008】
[(A)未架橋ゴム]
本発明の架橋ゴムの製造方法において、(A)成分として用いる未架橋ゴムとしては、特に制限はなく、例えば天然ゴムやイソプレンゴム、ブタジエンゴム、EPDMゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、クロロプレンゴム、アクリルゴムなどが挙げられる。さらには上記スチレン−イソプレン−スチレン共重合体の不完全水素添加物や、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体の不完全水素添加物などを使用することもできる。これらの未架橋ゴムは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、前記の未架橋ゴムとして、分子内に不飽和結合を有するものが好ましく、分子内に0.1〜95モル%程度、好ましくは0.5〜90モル%の不飽和結合を有するオレフィン系ゴムが有利であり、特にブチルゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)が好適である。このようなオレフィン系ゴムは、ジエン系ゴムに比べて不飽和結合が少なく、架橋が困難であって、これまで高温で長時間の加熱が必要である上、架橋効率も低かったが、本発明の方法によれば、短時間で架橋が可能であり、かつ薄膜性に優れる架橋ゴムを与えることができる。
【0009】
[(B)電子吸引基含有多官能性モノマー]
本発明の架橋ゴムの製造方法においては、(B)成分として、電子吸引基含有多官能性モノマーが用いられる。前記多官能性モノマーにおける電子吸引基としては、例えば−NO2、−CN、−CO−、−CONH−、−CON=、−COO−などの基を挙げることができる。
前記電子吸引基は、多官能性モノマーにおける官能基の炭素−炭素二重結合(以下官能性二重結合という)の近傍にあることが好ましく、特に、官能性二重結合を構成する炭素原子に直接結合していることが好ましい。
本発明で用いる電子吸引基含有多官能性モノマーに特に制限はないが、入手性及び反応性などの観点から、(メタ)アクリル酸系多官能性モノマーが好ましい。
【0010】
((メタ)アクリル酸系多官能性モノマー)
(メタ)アクリル酸系多官能性モノマーとしては、例えば、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加2−メチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、プロピレンオキシド/エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味する。
本発明においては、これらの(メタ)アクリル酸系多官能性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
本発明においては、前述した(A)成分の未架橋ゴムと、(B)成分の電子吸引基含有多官能性モノマーとの使用割合に特に制限はなく、使用する未架橋ゴムの種類、電子吸引基含有多官能性モノマーの分子内における官能性二重結合の個数、あるいは得られる架橋ゴムの所望物性などに応じて適宜選定されるが、未架橋ゴムの架橋性や、得られる架橋ゴムの性能などの観点から、(A)成分の未架橋ゴム100質量部に対して、(B)成分の電子吸引基含有多官能性モノマーは、通常0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜30質量部、より好ましくは1〜10質量部の割合で用いられる。
【0012】
本発明においては、前述した(A)成分の未架橋ゴムを、(B)成分の電子吸引基含有多官能性モノマーの存在下で、活性エネルギー線の照射により架橋反応させて架橋ゴムを製造するが、前記活性エネルギー線としては、装置や生産性、経済性などの観点から、紫外線が好ましく用いられる。
活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合には、必要に応じ、(C)成分として光重合開始剤を用いることができる。なお、電子線を用いる場合には、光重合開始剤を用いる必要はない。
【0013】
[(C)光重合開始剤]
本発明において、(C)成分として用いることのできる光重合開始剤としては特に制限はなく、例えば2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル]チタニウム等のチタノセン系光重合開始剤、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)−ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、3−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。
【0014】
これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記光重合開始剤には、例えばトリイソプロパノールアミンや、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノンなどの光重合開始助剤などを併用してもよい。
前記光重合開始剤の使用量は、固形分として、前述した(A)成分の未架橋ゴム100質量部(固形分)に対して、通常0.01〜30質量部、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1〜8質量部の範囲で選定される。光重合開始剤の使用量が0.01質量部未満では、十分な架橋を行うことができず、一方30質量部を超えると、紫外線照射時に主骨格の分解が促進されたりする。
【0015】
[塗膜形成用コーティング剤]
本発明においては、前述した(A)成分の未架橋ゴムと、(B)成分の電子吸引基含有多官能性モノマーと、必要により用いられる(C)成分の光重合開始剤を、所定の割合で含む、塗膜形成用コーティング剤を調製する。
このコーティング剤には、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、充填剤、着色剤などの従来公知の各種添加剤を適宜配合してもよく、また、必要に応じてポリイソブチレン、ポリブテンなどの従来公知のポリマー成分を含有させてもよい。なお、この塗膜形成用コーティング剤の調製においては、無溶媒で行ってもよいし、必要に応じて適当な溶媒を適宜含有させることができる。
【0016】
[架橋ゴム層の形成]
前記のようにして調製した塗膜形成用コーティング剤を、無溶媒の場合には加熱により低粘度化し、ホットメルトにて支持体の一方の面に塗布し、冷却固化して塗膜層を形成させる。また、当該コーティング剤が、溶媒で希釈されて液状である場合には、支持体の一方の面に、従来公知の塗布手段、例えばナイフコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、グラビアコーターなどにより塗布し、乾燥させることにより、塗膜層を形成させる。
前記の塗膜層を形成させる支持体としては、基材や工程シートなどを用いることができる。基材は、塗膜層が形成された積層物を所望する場合に用い、基材としては特に制限はなく、プラスチック基材、紙基材、不織布基材、ガラス基材、金属系基材、セラミックス系基材などの中から、形成される架橋ゴム層の用途に応じて適宜選択すればよい。また、架橋ゴムシート単体を所望する場合には、工程シートを用いることができる。
前記塗膜層の厚さは特に制限はなく、通常0.01〜1000μm、好ましくは0.1〜500μm、より好ましくは0.1〜300μmである。
【0017】
本発明においては、このようにして支持体上に形成された塗膜層に活性エネルギー線を照射して、未架橋ゴムを架橋させ、架橋ゴム層を形成させる。活性エネルギー線としては、前述したように紫外線が好ましく用いられる。紫外線は、高圧水銀ランプ、フュージョン製Hランプ、キセノンランプなどで得られる。この活性エネルギー線の照射量としては、例えば紫外線の場合には、光量で100〜5000mJ/cm2程度である。
前記紫外線は、塗膜層側から照射してもよいし、基材や工程シート側から照射してもよいが、基材や工程シート側から照射する場合には、基材や工程シートは、紫外線透過性を有することが肝要である。
【0018】
[架橋ゴム層の性状]
このようにして形成された架橋ゴム層は、下記の方法で測定されるゲル分率が、通常55%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。
<ゲル分率の測定>
サイズ100mm×100mm、厚さ約20μmの架橋ゴムシートからなるテストピースを、ステンレス製金網[質量(Ag)]で挟み込み質量(Bg)を測定する。次いで、ソックスレー(抽出器)を用いて、トルエン中に浸漬し、24時間還流を行った。続いて金網付きテストピースを取り出し、120℃、3時間加熱乾燥して、乾燥後の質量(Cg)を測定し、下記の式
ゲル分率(質量%)=[(C−A)/(B−A)]×100
によりゲル分率を算出する。
また、本発明においては、23℃における未架橋ゴム層の貯蔵弾性率E1'及び23℃における架橋ゴム層の貯蔵弾性率E2'の上記E1'に対する下記の式で算出される変化率(以下、23℃貯蔵弾性率の変化率という。)を求めた。
23℃貯蔵弾性率の変化率(%)=[(E2'/E1')−1]×100
23℃貯蔵弾性率の変化率は、15%以上が好ましく、20〜150%がより好ましい。
なお、23℃における、未架橋ゴム層及び架橋ゴム層の貯蔵弾性率E1'及びE2'は、動的弾性率測定装置[TAインスツルメント社製、装置名「DMA Q800」]を用いて、周波数1Hzにて測定する。
【0019】
本発明の架橋ゴムの製造方法によれば、未架橋ゴム、特に従来架橋に長時間を要していたブチルゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴムなどのオレフィン系ゴムを短時間で架橋して、薄膜性に優れる架橋ゴムを与える。
本発明の方法で得られた架橋ゴムは、例えば粘着剤、剥離剤、熱可塑性エラストマーの改質剤などとして有用である。
【実施例】
【0020】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた未架橋ゴムシート及び架橋ゴムシートのゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'は、明細書本文に記載の方法に従って測定した。また、未架橋ゴムのゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'は、架橋ゴムシートのゲル分率と同様の方法で測定した。
未架橋ゴムシートと架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率は、明細書本文に記載の計算式より算出した。
実施例1
ゴムとしてブチルゴム[JSR社製、製品名「JSR BUTYL365」、不飽和結合量2.0モル%]100質量部(固形分)と、光重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、製品名「IRGACURE184」]3質量部(固形分)と、電子吸引基含有多官能性モノマーとして、トリメチロールプロパントリアクリレート[新中村化学工業社製、製品名「NKエステル A−TMPT」]5質量部を混合してコーティング剤を得た。このコーティング剤を厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面がシリコーン処理された工程シート上に、乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗布し、未架橋ゴムシートを得た。また、その塗膜側の面から、フュージョン製Hランプで紫外線を照射し(光量100mJ/cm2)、工程シートから架橋体を剥離することで架橋ゴムシートを得た。この架橋ゴムシートを用いてゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'を測定すると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出した。その結果を第1表に示す。なお、未架橋ゴムシートのゲル分率は0%であり、23℃における貯蔵弾性率は0.614MPaであった。
【0021】
実施例2
実施例1において、ゴムをスチレン−イソプレン共重合体[日本ゼオン社製、製品名「Quintac 3520」、不飽和結合量89.6モル%]とした以外は、実施例1と同様に未架橋ゴムシート及び架橋ゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'を測定すると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出した。その結果を第1表に示す。なお、未架橋ゴムシートのゲル分率は0%であり、23℃における貯蔵弾性率は1.358MPaであった。
実施例3
実施例1において、ゴムをスチレン−ブタジエン共重合体[クレイトンポリマー社製、製品名「Kraton D1101」、不飽和結合量74.9モル%]とした以外は、実施例1と同様に未架橋ゴムシート及び架橋ゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'を測定すると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出した。その結果を第1表に示す。なお、未架橋ゴムシートのゲル分率は0%であり、23℃における貯蔵弾性率は28.907MPaであった。
【0022】
実施例4
実施例1において、光重合開始剤をベンゾフェノン[東京化成工業社製]とした以外は、実施例1と同様に未架橋ゴムシート及び架橋ゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'を測定すると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出した。その結果を第1表に示す。なお、未架橋ゴムシートのゲル分率は0%であり、23℃における貯蔵弾性率は0.615MPaであった。
実施例5
実施例1において、ゴムをエチレン−プロピレン−ジエンゴム[JSR社製、製品名「JSR EP43」、不飽和結合量0.88モル%]とし、光重合開始剤をベンゾフェノンとした以外は、実施例1と同様に未架橋ゴムシート及び架橋ゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'を測定すると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出した。その結果を第1表に示す。なお、未架橋ゴムシートのゲル分率は0%であり、23℃における貯蔵弾性率は1.410MPaであった。
【0023】
実施例6
実施例3において、光重合開始剤をベンゾフェノン[東京化成工業社製]とした以外は、実施例3と同様に未架橋ゴムシート及び架橋ゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'を測定すると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出した。その結果を第1表に示す。なお、未架橋ゴムシートのゲル分率は0%であり、23℃における貯蔵弾性率は28.904MPaであった。
実施例7
実施例1において、多官能性モノマーの添加量を2.5質量部とした以外は、実施例1と同様に未架橋ゴムシート及び架橋ゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'を測定すると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出した。その結果を第1表に示す。なお、未架橋ゴムシートのゲル分率は0%であり、23℃における貯蔵弾性率は0.616MPaであった。
実施例8
実施例1において、光重合開始剤の添加量を1.5質量部とし、多官能性モノマーの添加量を2.5質量部とした以外は、実施例1と同様に未架橋ゴムシート及び架橋ゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'を測定すると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出した。その結果を第1表に示す。なお、未架橋ゴムシートのゲル分率は0%であり、23℃における貯蔵弾性率は0.617MPaであった。
実施例9
実施例5において、光重合開始剤を1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、製品名「IRGACUARE184」]とした以外は、実施例5と同様に未架橋ゴムシート及び架橋ゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'を測定すると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出した。その結果を第1表に示す。なお、未架橋ゴムシートのゲル分率は0%であり、23℃における貯蔵弾性率は1.405Mpaであった。
実施例10
実施例2において、光重合開始剤をベンゾフェノン[東京化成工業社製]とした以外は、実施例2と同様に未架橋ゴムシート及び架橋ゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'を測定すると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出した。その結果を第1表に示す。なお、未架橋ゴムシートのゲル分率は0%であり、23℃における貯蔵弾性率は1.348MPaであった。
実施例11
実施例1において、多官能性モノマーをペンタエリスリトールテトラアクリレート[新中村化学工業社製、製品名「NHエステル A−TMMT」]とした以外は、実施例1と同様に未架橋ゴムシート及び架橋ゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'を測定すると共に、23℃における未架橋ゴムシートとの貯蔵弾性率の変化率を算出した。その結果を第1表に示す。なお、未架橋ゴムシートのゲル分率は0%であり、23℃における貯蔵弾性率は0.609MPaであった。
【0024】
比較例1
実施例1において、光重合開始剤と多官能性モノマーを添加しない以外は、実施例1と同様にゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'の測定を行った。その結果を第1表に示す。
比較例2
実施例5において、光重合開始剤と多官能性モノマーを添加しない以外は、実施例5と同様にゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'の測定を行った。その結果を第1表に示す。
【0025】
比較例3
実施例2において、光重合開始剤と多官能性モノマーを添加しない以外は、実施例2と同様にゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'の測定を行った。その結果を第1表に示す。
比較例4
実施例3において、光重合開始剤と多官能性モノマーを添加しない以外は、実施例3と同様にゴムシートを得てゲル分率及び23℃における貯蔵弾性率E'の測定を行った。その結果を第1表に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
[注]
A−1:ブチルゴム[JSR社製、製品名「JSR BUTYL365」]
A−2:エチレン−プロピレン−ジエンゴム[JSR社製、製品名「JSR EP43」]
A−3:スチレン−イソプレン共重合体[日本ゼオン社製、製品名「Quintac 3520」]
A−4:スチレン−ブタジエン共重合体
[クレイトンポリマー社製、製品名「Kraton D1101」]
C−1:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、製品名「IRGACURE184」]
C−2:ベンゾフェノン
B−1:トリメチロールプロパントリアクリレート
[新中村化学工業社製、製品名「NKエステル A−TMPT」]
B−2:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
[新中村化学工業社製、製品名「NHエステル A−TMMT」]
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の架橋ゴムの製造方法は、未架橋ゴム、特に従来架橋に長時間を要していたブチルゴムやエチレン−プロピレン−ジエンゴムなどのオレフィン系ゴムを短時間で架橋して、薄膜性に優れる架橋ゴムを与える。この架橋ゴムは、例えば粘着剤、剥離剤、熱可塑性エラストマーの改質剤などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)未架橋ゴムを、(B)電子吸引基含有多官能性モノマーの存在下で、活性エネルギー線の照射により架橋反応させることを特徴とする、架橋ゴムの製造方法。
【請求項2】
(B)電子吸引基含有多官能性モノマーが、(メタ)アクリル酸系多官能性モノマーである、請求項1に記載の架橋ゴムの製造方法。
【請求項3】
活性エネルギー線が紫外線であって、(A)未架橋ゴムを、(B)電子吸引基含有多官能性モノマーと、(C)光重合開始剤との存在下で、紫外線の照射により架橋反応させる、請求項1又は2に記載の架橋ゴムの製造方法。
【請求項4】
(A)成分と(B)成分との使用割合が、質量比で100:0.1〜100:50である、請求項1〜3のいずれかに記載の架橋ゴムの製造方法。
【請求項5】
(A)成分と(C)成分との使用割合が、質量比で100:0.01〜100:30である、請求項3又は4に記載の架橋ゴムの製造方法。
【請求項6】
(A)未架橋ゴムが、分子内に不飽和結合を有するゴムである、請求項1〜5のいずれかに記載の架橋ゴムの製造方法。
【請求項7】
分子内に不飽和結合を有するゴムが、分子内に0.1〜95モル%の不飽和結合を有するオレフィン系ゴムである、請求項6に記載の架橋ゴムの製造方法。
【請求項8】
分子内に0.1〜95モル%の不飽和結合を有するオレフィン系ゴムが、ブチルゴム及び/又はエチレン−プロピレン−ジエンゴムである、請求項7に記載の架橋ゴムの製造方法。
【請求項9】
支持体上に設けられた、未架橋ゴムと電子吸引基含有多官能性モノマーを含む塗膜に活性エネルギー線を照射して、未架橋ゴムを架橋反応させる、請求項1〜8のいずれかに記載の架橋ゴムの製造方法。
【請求項10】
塗膜の厚さが0.01〜1000μmである、請求項9に記載の架橋ゴムの製造方法。

【公開番号】特開2010−163572(P2010−163572A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8527(P2009−8527)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】