説明

架橋ゴム組成物の製造方法

【課題】加硫以外の方法でゴムの架橋を可能にすることにより、再生時に架橋を外す処理を容易にすると共に、ゴム物性の低下を起こさないようにする架橋ゴム組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】官能基を有するジエン系ゴム100重量部に脂肪族ポリエステルの単量体を0.1〜20重量部を混合し、その混合物を加熱処理することにより、前記ジエン系ゴムを脂肪族ポリエステルで架橋することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ゴム組成物の製造方法に関し、さらに詳しくは、加硫以外の方法でゴムの架橋を可能にすることにより、再生時に架橋を外す処理を容易にすると共に、ゴム物性の低下を起こさないようにする架橋ゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境を保護する観点から、空気入りタイヤ等のゴム製品を構成する架橋ゴム組成物のリサイクル率を高くすることが要求されている。その対策の一環として使用済みのタイヤやチューブを粉末ゴムとして再生し、このようにして回収された再生粉末ゴムを再び新しいゴム原料中に配合して新しいゴム製品にすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来のゴム製品は、一般に未加硫ゴムに硫黄を加えて架橋することによりゴム弾性を付与しているため、特許文献1などが提案する使用済みのゴム製品の再生方法は、物理的及び化学的処理により脱硫処理を行なうことにより、可塑性と粘着性を付与するようにしている。しかしながら、加硫部を取り除くために脱硫処理を行なっているため再生ゴムのゴム物性が大幅に低下するという問題があった。そのため、再生ゴムを多量に配合するようにしてリサイクル率を大幅に向上するということには限界があった。
【特許文献1】特開2002−338743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、加硫以外の方法でゴムの架橋を可能にすることにより、再生時に架橋を外す処理を容易にすると共に、ゴム物性の低下を起こさないようにする架橋ゴム組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明の架橋ゴム組成物の製造方法は、官能基を有するジエン系ゴム100重量部に脂肪族ポリエステルの単量体を0.1〜20重量部を混合し、その混合物を加熱処理することにより、前記ジエン系ゴムを脂肪族ポリエステルで架橋することを特徴とする。
【0006】
前記官能基は、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基及びカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種であるとよく、前記脂肪族ポリエステルの単量体は、乳酸、ラクチド、カプロラクトン及びアルキレンサクシネートから選ばれる少なくとも1種であるとよい。また、前記ジエン系ゴムは、天然ゴムであるとよい。
【0007】
前記混合物は、前記ジエン系ゴム100重量部に対し0.1〜10重量部の脂肪族ポリエステルの重合触媒を配合するとよく、その重合触媒は、金属化合物であるとよく、金属化合物としては、亜鉛化合物又はすず化合物が好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、官能基を有するジエン系ゴム100重量部に脂肪族ポリエステルの単量体を0.1〜20重量部混合し、その混合物を加熱処理することによりジエン系ゴムの官能基同士を脂肪族ポリエステルで架橋するため、硫黄を配合しないで架橋したゴム弾性を有する架橋ゴム組成物を製造することができる。また、この架橋ゴム組成物の架橋部は、脂肪族ポリエステルで形成されているため、微生物分解、酸やアルカリによる加水分解等により選択的に切断若しくは分解することができ、しかもこの架橋を外す処理がジエン系ゴムの主鎖に影響を与えることがないため、架橋ゴム組成物を再生処理するときに架橋部の取り外し処理が容易になり、ゴム物性の低下を起こさないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の架橋ゴム組成物の製造方法において、ゴム成分には官能基を有するジエン系ゴムが使用される。ジエン系ゴムとしては、特に制限されるものではなく、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム等が挙げられる。好ましくは天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムがよい。これらジエン系ゴムは、単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
【0010】
ジエン系ゴムが有する官能基は、脂肪族ポリエステルと結合可能なものであればよく、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基が好ましく、なかでもエポキシ基が好ましい。このような官能基を有するジエン系ゴムは、ジエン系ゴムの主鎖の末端に官能基を有していてもよいし、ジエン系ゴムに官能基を有する化合物をグラフトしたものであってもよい。官能基を有するジエン系ゴムとしては、例えばエポキシ化天然ゴム、エポキシ化ブタジエンゴム、エポキシ化スチレン−ブタジエンゴム、エポキシ化アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エポキシ化ブチルゴム、エポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アミノ化天然ゴム、ヒドロキシル化天然ゴム、ヒドロキシル化スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴム等を好ましく例示することができる。
【0011】
本発明の架橋ゴム組成物の製造方法は、官能基を有するジエン系ゴムに、脂肪族ポリエステルの単量体を混合し、その混合物を加熱処理することにより、ジエン系ゴムの官能基同士を脂肪族ポリエステルで架橋する。したがって、硫黄を配合しないでジエン系ゴムを簡便に架橋することができ、しかも架橋部が脂肪族ポリエステルで形成されているため、微生物分解、酸やアルカリによる加水分解等により選択的に切断若しくは分解することができる。なお、ジエン系ゴムとして天然ゴムを使用した架橋ゴム組成物を再生処理するときは酸やアルカリによる加水分解により架橋部を選択的に切断するとよい。天然ゴムは生分解性であるため、脂肪族ポリエステルからなる架橋部を選択的に微生物分解することが難しいからである。
【0012】
脂肪族ポリエステルの単量体の配合量は、官能基を有するジエン系ゴム100重量部に対し、0.1〜20重量部、好ましくは1〜15重量部、より好ましくは2〜10重量部配合する。脂肪族ポリエステルの単量体の配合量が0.1重量部未満の場合、ジエン系ゴムの官能基同士を効率的に架橋することができない。また、脂肪族ポリエステルの単量体の配合量が20重量部を超えると、ジエン系ゴムに対する分散性が悪くなると共に、加熱時に発泡するなどの不具合が起きる。
【0013】
本発明において、架橋部を形成する脂肪族ポリエステルとしては、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレートなどのポリヒドロキシアルキレート、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリブチロラクトン、ポリプロピオラクトンなどのポリラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリヘキサンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサンアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリプロピレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサンセバケートなどのポリアルキレンアルキレート等を例示することができる。なかでもポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリアルキレンサクシネートが好ましい。
【0014】
また、脂肪族ポリエステルの単量体としては、ヒドロキシ酸、ラクチド(環状ジポリエステル)、ラクトン、アルキレンアルキレート等を例示することができる。ヒドロキシ酸としては、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、リシノール酸等が例示される。また、ラクチドは乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸などの2−ヒドロキシ酸の2分子を脱水して生ずる環状ジエステルである。ラクチドのなかでも乳酸の環状ジエステルであるラクチド(C684)が好ましい。ラクトンとしては、例えばβ−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が例示される。
【0015】
アルキレンアルキレートとしては、例えばアルキレンサクシネート、アルキレンアジペート等が例示される。また、アルキレンサクシネートとしては、例えばエチレンサクシネート、プロピレンサクシネート、ブチレンサクシネート、ペンテンサクシネート、ヘキセンサクシネート等が例示される。なかでも脂肪族ポリエステルの単量体としては、乳酸、ラクチド(C684)、ε−カプロラクトン、アルキレンサクシネートが好ましい。
【0016】
本発明の架橋ゴム組成物の製造方法において、官能基を有するジエン系ゴムと脂肪族ポリエステルの単量体との混合物に、架橋部を形成する脂肪族ポリエステルの重合触媒を配合することにより、ジエン系ゴムの官能基同士の架橋をより効率的に行なうことができる。重合触媒の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部にするとよい。重合触媒の配合量が0.1重量部未満の場合、重合触媒を配合する効果が得られないことがある。また、重合触媒の配合量が10重量部を超えると、架橋部を形成する脂肪族ポリエステルの重合効果が逆に阻害される。
【0017】
脂肪族ポリエステルの重合触媒としては、通常使用されるものを用いればよく、例えばすず化合物、亜鉛化合物などの金属化合物を例示することができる。すず化合物としては2−エチルヘキサン酸すず、ラウリル酸すず等が例示される。また、亜鉛化合物は、脂肪族ポリエステルの重合触媒としては活性が低いものの、本発明における架橋ゴムの架橋を促進する作用を行なうことができる。このような亜鉛化合物としては、亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ラウリル酸亜鉛、酸化亜鉛、その他の亜鉛酸化物を例示することができる。
【0018】
本発明の架橋ゴム組成物の製造方法において、ジエン系ゴムと脂肪族ポリエステルの単量体とを混合する条件は、特に制限されるものではなく、従来の未加硫ゴムの混練・混合条件と同等の温度及びせん断条件を適用することができる。また、ジエン系ゴムと脂肪族ポリエステルの単量体の混合物を架橋する条件は、脂肪族ポリエステルを重合可能な条件であればよく、従来の未加硫ゴムの加硫条件と同等の温度、圧力条件を適用することができる。
【0019】
本発明の製造方法により得られた架橋ゴム組成物は、架橋部が微生物分解、酸やアルカリによる加水分解、光分解、酸素(オゾン)分解又は脂肪族ポリエステルの解重合条件により切断若しくは分解される。このため、使用済みのゴム製品を構成する架橋ゴム組成物を再生するとき、ゴム成分の主鎖に悪影響を与えずに未架橋状態にすることができるので、ゴム物性の低下を抑制することができる。したがって、このゴム成分を再生ゴムとして、新たなゴム組成物に配合しても物性低下を小さくすることができるためリサイクル率を高くすることが可能である。架橋ゴム組成物の架橋部を微生物分解、酸やアルカリの加水分解処理、光分解処理又は酸素(オゾン)分解処理する条件は、特に制限させるものではなく通常ポリ乳酸などの生分解性ポリマーの処理条件と同じ条件を適用することができる。
【0020】
また、前述したように天然ゴムは生分解性であるため、官能基を有する天然ゴムをベースにした架橋ゴム組成物は、その全部を微生物分解することが可能である。このため使用済みの架橋ゴム組成物をリサイクルする代わりに、微生物分解により処理することができる。例えば従来の空気入りタイヤは、天然ゴムが生分解性であっても、加硫することにより微生物分解することができなかった。これに対して、本発明により得られる天然ゴムベースの架橋ゴム組成物は微生物分解が可能であり、廃棄処分するときでも地球環境を保全することができる。このような微生物分解の処理条件は、特に制限されるものではなく、通常の生分解性ポリマーと同じ処理条件を適用することができる。
【0021】
本発明の架橋ゴム組成物の製造方法は、無機充填剤、老化防止剤、可塑剤、カップリング剤などの架橋ゴム組成物の製造方法に一般的に使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、上述した方法で架橋することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。未加硫のゴム組成物の製造方法は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0022】
以上、詳細を説明したように、本発明の架橋ゴム組成物の製造方法は、硫黄を配合して加硫する代わりに、ジエン系ゴムの官能基同士を脂肪族ポリエステルにより架橋することによりゴム弾性を得ることができる。また、この架橋部は、微生物分解、酸又はアルカリによる加水分解等が可能であるので架橋を取り除くのが容易であり、しかもゴム物性の低下を招くことがない。したがって、本発明の架橋ゴム組成物の製造方法を空気入りタイヤの製造に適用した場合には、従来の加硫装置をそのまま使用しグリーンタイヤの架橋が可能であると共に、使用済みタイヤの再生利用を容易にし、かつゴム物性の低下を抑制するのでリサイクル率を高くすることができる。
【0023】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
表1〜4に示す配合からなる23種類のゴム組成物(実施例1〜16、比較例1〜7)を秤量し、150mLのニーダーに投入し、120℃で5分間混合し、未架橋のゴム組成物(ジエン系ゴムと脂肪族ポリエステルのモノマーの混合物、或いは未加硫ゴム)を調製した。得られた23種類の未架橋のゴム組成物の架橋性を下記の方法により評価した。
【0025】
また得られた23種類のゴム組成物(実施例1〜16、比較例1〜7)を160℃で1時間プレス成形し、架橋ゴム組成物からなる厚さ2mmのシートを成形した。得られたシートのうち、本発明の製造方法により得られた実施例1〜16の架橋シート及び硫黄を配合した加硫シート(比較例1,2,5,6)は、ゴム弾性を有することを確認した。これに対し、比較例3,4,7で得られたシートはゴム弾性を示さなかった。
【0026】
上記により得られた12種類のシート(実施例1〜10、比較例1,2)のリサイクル性を下記に示す方法により評価した。また、天然ゴムベースの8種類のシート(実施例10〜13、比較例3〜6)の生分解性を下記に示す方法により評価した。また、天然ゴムベースの6種類のシート(実施例10,11,14〜16、比較例7)の引張り応力を下記に示す方法により評価した。
【0027】
架橋性
得られた未架橋のゴム組成物を、レオメーター(上島製作所社製FLAT DIE RHEOMETER MODEL VR−3110)を使用し、160℃で60分間加熱したときのトルクを測定した。得られたトルク曲線の代表例として、実施例12、比較例3及び4の測定結果を図1に示す。図1において、aは実施例12、bは比較例3、cは比較例4のトルク曲線である。
【0028】
測定されたトルク曲線に基づいて、以下の判定基準により架橋性を評価し、その結果を表1〜4に示した。
○: トルクの上昇が見られると共に、加熱後のゴム組成物をトルエンに浸漬しても溶解しない。
△: トルクの上昇が見られるが、加熱後のゴム組成物をトルエンに浸漬すると溶解する。
×: トルクの上昇が見られない。
【0029】
リサイクル性
得られたシート5gを、アセトンと0.1NのNaOH水溶液との混合液に浸漬し、温度40℃で1週間静置した。このアルカリ処理したシートを24時間真空乾燥した後、0.5mmの厚さにプレスした。得られた結果から、以下の判定基準によりリサイクル性を評価し、その結果を表1,2に示した。
○: 0.5mmにプレスすることが容易であり、成形表面がきれいな未架橋のゴムシートが得られた。
△: 0.5mmにプレスすることが可能であるが、成形表面が平滑でないゴムシートが得られた。
×: 加圧するときの抵抗が大きく、高圧でプレスするとシートが粉々に割れ、0.5mmの厚さにすることができなかった。
【0030】
生分解性
得られたシートを20×20mmの大きさにして、JIS K6953に準拠する条件で、微生物コンポスト(東京都有機農業堆肥センター製とうきょう元気堆肥プラス)に生ゴミ分解菌(アイリスオーヤマ社製EC−400K)を加えた後、小型生ゴミ処理器(アイリスオーヤマ社製エコメイト)に入れ、温度58±2℃で60日間微生物分解処理を行なった。得られた結果に基づいて、以下の判定基準により生分解性を評価し、その結果を表3に示した。
○: ゴムシートの形跡が全く認められないほど微生物分解された。
△: コンポスト中に分解途中のゴムシートが残っていた。
×: ゴムシートがほとんど分解されなかった。
【0031】
引張り応力
得られたシートからJIS K6251に準拠して3号型ダンベル試験片を成形した。この試験片を温度25℃で、500mm/分の引張り速度で引張り試験を行ない、300%ひずみ時における引張り応力を測定し、得られた結果を表4に示した。また、測定された応力−ひずみ曲線の代表例として、実施例10,11,15及び比較例7の測定結果を図2に示す。図2において、Aは実施例10、Bは実施例11、Cは実施例15、Dは比較例7の応力−ひずみ曲線である。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
【表4】

【0036】
なお、表1〜4において使用した原材料の種類を下記に示す。
E−SBR:エポキシ化スチレンブタジエンゴム、以下の方法により調製した。
乳化重合スチレンブタジエンゴムラテックス(日本ゼオン社製A9725HT)1リットルに対し30%過酢酸500gを加え、60℃で3時間撹拌した。ラテックス中のトルエンを除去し24時間真空乾燥し、エポキシ化スチレンブタジエンゴムを得た。このエポキシ化スチレンブタジエンゴムを赤外線分光法により分析したところ、赤外吸収スペクトルに1254cm-1、872cm-1の振動吸収が出現し、エポキシ環が生成したことを確認した。
【0037】
E−NBR:エポキシ化アクリロニトリルブタジエンゴム、以下の方法により調製した。
アクリロニトリルブタジエンゴムラテックス(日本ゼオン社製LX513)1リットルに対し30%過酢酸500gを加え、60℃で3時間撹拌した。ラテックス中のトルエンを除去し24時間真空乾燥し、エポキシ化アクリロニトリルブタジエンゴムを得た。このエポキシ化アクリロニトリル−ブタジエンゴムを赤外線分光法により分析したところ、赤外吸収スペクトルに1254cm-1、872cm-1の振動吸収が出現し、エポキシ環が生成したことを確認した。
【0038】
E−BR:エポキシ化ブタジエンゴム、ダイセル化学工業社製エポリード PB3600
E−SBS:エポキシ化スチレンブタジエンスチレン共重合体、ダイセル化学工業社製AT501
E−NR:エポキシ化天然ゴム、The Rubber Research Institute of Malaysia製ENR−50
CB:カーボンブラック、新日化カーボン社製HTC#G
オイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
ラクチド:L−ラクチド、武蔵野化学研究所製
カプロラクトン:ε−カプロラクトン、ダイセル化学工業社製
乳酸:L−乳酸、東京化成工業社製
サクシネート:無水コハク酸、関東化学社製
触媒−1:2−エチルヘキサン酸すず、和光純薬工業社製
触媒−2:2−エチルヘキサン酸亜鉛、大崎工業社製
触媒−3:酸化亜鉛、正同化学工業社製酸化亜鉛3種
ポリ乳酸:三井化学社製レイシアH440
硫黄:鶴見化学工業社製微粉硫黄
加硫促進剤:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例において測定された架橋時のトルク曲線の一例を示すグラフである。
【図2】実施例において測定された応力−歪み曲線の一例を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能基を有するジエン系ゴム100重量部に脂肪族ポリエステルの単量体を0.1〜20重量部を混合し、その混合物を加熱処理することにより、前記ジエン系ゴムを脂肪族ポリエステルで架橋する架橋ゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
前記官能基が、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基及びカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の架橋ゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステルの単量体が、乳酸、ラクチド、カプロラクトン及びアルキレンサクシネートから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の架橋ゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記混合物に前記ジエン系ゴム100重量部に対し0.1〜10重量部の脂肪族ポリエステルの重合触媒を配合する請求項1,2又は3に記載の架橋ゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
前記重合触媒が、金属化合物である請求項4に記載の架橋ゴム組成物の製造方法。
【請求項6】
前記金属化合物が、亜鉛化合物又はすず化合物である請求項5に記載の架橋ゴム組成物の製造方法。
【請求項7】
前記ジエン系ゴムが、天然ゴムである請求項1〜6のいずれかに記載の架橋ゴム組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法により製造された架橋ゴム組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−6952(P2010−6952A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167858(P2008−167858)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】