説明

架橋及び分岐ポリマーの形成プロセス

本発明は、ポリオレフィン又はジエンエラストマー、及びそれぞれオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有する少なくとも2つの基を有する不飽和化合物(A)を含むポリマー組成物において、不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有するそれぞれの基が、芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和を含有し、該芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和が、オレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−不飽和と共役であることを特徴とする組成物を提供する。多官能性不飽和化合物のオレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−不飽和と共役である芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合を含有する多官能性不飽和化合物(A)の使用は、芳香族環又はさらなるオレフィン結合を含有しない多官能性不飽和化合物での架橋と比較して、ポリマーの増加した架橋及び/若しくは分岐の生成、並びに/又は、より少ない分解をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋及び/又は分岐ポリマーの形成プロセス、並びに反応して架橋及び/又は分岐ポリマーを形成することができるポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
英国特許第GB957917号は、エチレン不飽和モノマーのポリマーがフリーラジカルの供給源、充填剤、及びRがアルキル又はアリール基であり、Xがカルボキシル基、アルデヒド基、酸塩化物基、酸アミド基、又はエステル基である、一般式R−CH=CH−CH=CH−Xの不飽和化合物を有するポリマーを加熱することにより加硫されることについて記載する。
【0003】
米国特許第US4303763号は、融液相中で飽和線状ポリエチレンをジエンモノマーと直接反応させるステップを具えるプロセスにより特徴づけられる不飽和エチレンポリマーについて記載し、カナダ特許第CA1099840号は、共役オレフィン不飽和のランダムに分布した部位を含有するエラストマーの、粒状吸着剤上に吸着させ、エラストマー中に分散させたモノマーでの架橋方法であって、モノマー対吸着剤の重量比が約100:1〜1:1である方法について記載する。
【0004】
多官能性アクリレートによるポリオレフィン及びジエンエラストマーのようなポリマーの架橋は、例えば文献“Crosslinking and degradation of polypropylene by electron beam irradiation in the presence of trifunctional monomers”,Do Hung Han,Seung−Ho Shin and Serguei Petrov,Radiation physics and chemistry;2004,vol.69,n3,pp.239−244:“Cross−Linking of polypropylene by peroxide and multifunctional monomers during reactive extrusion”,B.K.Kim,K.J.Kim,Advances in Polymer Technology;Volume 12 Issue 3,Pages 263−269(Mar 2003);“Branching of Polypropylene with a Polyfunctional Monomer for Extrusion,Foaming and Thermoforming Applications”,D.W.Yu,S.K.Dey,F.Pringgosusanto and M.Xanthos,ANTEC 2000 conference proceedings,by Society of Plastics Engineers;“Efficiency of Chemical Cross−Linking of Polypropylene”,E.Borsig;A.Fiedlerov;M.Lazr,Journal of Macromolecular Science,Part A,Volume 16,Issue 2 July 1981,pages 513−528;及び“Application of co−agents for peroxide crosslinking”,W.C.Endstra,Kautschuk und Gummi,Kunststoffe;1990,vol.43,n9,pp.790−793から知られている。これらは、例えば過酸化物の存在下で加熱することにより、ポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成することができる手段の存在下で多官能性アクリレートをポリオレフィン上にグラフトするプロセスについて記載する。
【0005】
上記技術を用いてポリプロピレンを変性しようとする場合、グラフトはβ位における鎖の切断、又はいわゆるβ切断によるポリマーの分解により達成される。こうした分解は処理する物質の粘度の減少をもたらす。多官能性アクリレートと組み合わせたスチレンのような架橋助剤の使用はポリマー分解を阻害するが、依然としてポリマー分解なしの増加した架橋の必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
架橋又は分岐ポリオレフィンを形成するための本発明の1つの態様によるプロセスは、ポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成することができる手段の存在下、ポリオレフィンをそれぞれオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有する3つ以上の基を有する不飽和化合物(B)と反応させるステップを含み、不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C=C−結合を有するそれぞれの基が芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和を含有し、芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和がオレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−不飽和と共役であることを特徴とする。
【0007】
本発明の別の態様によると、架橋又は分岐ジエンエラストマーの形成プロセスは、ジエンエラストマーを、それぞれオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有する3つ以上の基を有する不飽和化合物(A)と反応させるステップを含み、不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C=C−結合を有するそれぞれの基が芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和を含有し、芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和がオレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−不飽和と共役であることを特徴とする。
【0008】
本発明によるポリマー組成物は、ポリオレフィン又はジエンエラストマー、及びそれぞれオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有する少なくとも2つの基を有する不飽和化合物(A)を含み、不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C=C−結合を有するそれぞれの基が芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和を含有し、芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和がオレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−不飽和と共役であることを特徴とする。ポリマーがポリオレフィンである場合、こうした組成物は、ポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成する手段にかけると架橋又は分岐ポリオレフィンを形成する。ポリマーがジエンエラストマーである場合、組成物は、エラストマー中にフリーラジカル部位を生成するいずれかの特定の手段なしに、加熱すると架橋又は分岐エラストマーを形成する。
【0009】
本発明は、共役不飽和を含有しない多価不飽和化合物での架橋と比較してポリオレフィンのより少ない分解でのポリオレフィンの架橋における、それぞれオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有する3つ以上の基を有する不飽和化合物(A)の使用において、オレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C=C−結合を有するそれぞれの基が芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和を含有し、芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和がオレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−不飽和と共役であることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
我々は、本発明によると、ポリオレフィン上で架橋反応を行う際の、多官能性不飽和化合物のオレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−不飽和と共役である芳香族環又はさらなるオレフィン結合を含有する多官能性不飽和化合物(A)の使用が、芳香族環又はさらなるオレフィン結合を含有しない多官能性不飽和化合物での架橋と比較して、ポリマーの増加した架橋及び/若しくは分岐の生成並びに/又はより少ない分解をもたらすことを見出した。スチレンのような架橋助剤の使用は、競合反応が架橋助剤でのグラフトと多官能性不飽和化合物でのグラフトとの間で起こるので、いくらかの限定を有する。スチレン架橋助剤は架橋又は分岐をもたらすことができない。本発明のプロセスは、単一分子で鎖切断を防止しながら、高い架橋及び/又は分岐効率もたらす。架橋モノマーと分解を阻害するモノマーとの間に競合反応はなく、よって本発明はより効率的な反応をもたらす。
【0011】
ポリオレフィン出発物質は、例えば、2〜18個の炭素原子を有するオレフィン、とくにQが水素又は1〜8個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキル基である、式CH=CHQのαオレフィンのポリマーとすることができる。ポリオレフィンはポリエチレン又はエチレンコポリマーとすることができるが、ポリエチレン及び主にエチレン単位で構成されるポリマーは、ポリエチレン中にフリーラジカル部位が生成される場合、通常分解しない。3個以上の炭素原子を有するオレフィンの多くのポリマー、例えばポリプロピレンは、ポリオレフィン中にフリーラジカル部位が生成される場合、鎖β切断によりポリマー分解する。本発明のプロセスは、ポリオレフィンの分解を阻害しながらグラフトを達成するので、とくにこうしたポリオレフィンにとって有用である。
【0012】
ポリオレフィンは、例えば、エテン(エチレン)、プロペン(プロピレン)、ブテン、2−メチル−プロペン−1(イソブチレン)、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、又はスチレンのポリマーとすることができる。プロピレン及びエチレンポリマーは、重要なクラスのポリマー、とくにポリプロピレン及びポリエチレンである。ポリプロピレンは広く市販されている低コストの製品ポリマーである。低密度を有し、容易に処理され、多用途である。もっとも市販されているポリプロピレンはイソタクチックポリプロピレンであるが、本発明のプロセスはアタクチック及びシンジオタクチックポリプロピレンに、並びにイソタクチックポリプロピレンに適用可能である。イソタクチックポリプロピレンは、例えばZiegler−Natta触媒又はメタロセン触媒を用いるプロペンの重合により調製される。本発明は、製品ポリプロピレンから向上した特性を有する架橋ポリプロピレンをもたらすことができる。ポリエチレンは、例えば、密度0.955〜0.97g/cmの高密度ポリエチレン、密度0.935〜0.955g/cmの中密度ポリエチレン(MDPE)又は超低密度ポリエチレン、高圧低密度ポリエチレン及び低圧低密度ポリエチレン、若しくは微孔性ポリエチレンを含む密度0.918〜0.935g/cmの低密度ポリエチレン(LDPE)とすることができる。ポリエチレンは、例えばZiegler−Natta触媒、クロム触媒又はメタロセン触媒を用いて製造することができる。ポリオレフィンはコポリマー又はターポリマー、例えばプロピレンのエチレンとのコポリマー、プロピレン若しくはエチレンの4〜18個の炭素原子を有するαオレフィンとのコポリマー、エチレン若しくはプロピレンのアクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、又はアクリル若しくはメタクリル酸及び1〜16個の炭素原子を有するアルキル若しくは置換アルキル基のエステル、例えばエチルアクリレート、メチルアクリレート若しくはブチルアクリレートのようなアクリルモノマーとのコポリマー、又はビニルアセテートとのコポリマーとすることができる。ポリオレフィンはヘテロ相、例えばプロピレンエチレンブロックコポリマーとすることができる。
【0013】
異なるポリオレフィンの混合物を用いることができる。多官能性不飽和化合物(A)は1つのタイプのポリオレフィンと混合し、マスターバッチを形成することができ、これをその後異なるタイプのポリオレフィンと混合することができる。例えば、微孔性ポリプロピレンは液体添加剤と混合してマスターバッチを形成するのに非常に効果的であり、これをバルクポリマーと混合することができる。微孔性ポリエチレン又はエチレンビニルアセテートコポリマーも液体添加剤と混合してマスターバッチを形成するのに非常に効果的であり、こうしたマスターバッチをポリプロピレンのようなポリマーと混合することができる。
【0014】
ジエンエラストマーは天然ゴムとすることができる。ジエンエラストマーは、あるいはジエンモノマー(共役の有無にかかわらず2つの二重炭素−炭素結合を有するモノマー)のホモポリマー又はコポリマーである合成ポリマーとすることができる。好適には、エラストマーは、少なくとも部分的に共役ジエンモノマーからもたらされ、15モル%より大きいジエン源(共役ジエン)のメンバー又は単位の含有量を有するジエンエラストマーである、「本質的に不飽和の」ジエンエラストマーである。より好適には、50モル%より大きいジエン源(共役ジエン)の単位の含有量を有するジエンエラストマーである、「高度に不飽和の」ジエンエラストマーである。ブチルゴムのようなジエンエラストマー又はジエン及び低い(15モル%未満の)ジエン源の単位の含有量を有する「本質的に飽和の」ジエンエラストマーとして表すことができるエチレン−プロピレンジエンモノマー(EPDM)タイプのαオレフィンのコポリマーをあるいは用いることができる。
【0015】
ジエンエラストマーは、例えば:
(a)4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合により得られるいずれかのホモポリマー;
(b)1つ以上の共役ジエン又は8〜20個の炭素原子を有する1つ以上のビニル芳香族化合物と共重合により得られるいずれかのコポリマー;
(c)3〜6個の炭素原子を有するα−オレフィンのエチレンの6〜12個の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーとの共重合により得られる三元コポリマー、例えば、エチレンから、プロピレンから、とくに1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン又はジシクロペンタジエンのような、前述のタイプの非共役ジエンモノマーで得られるエラストマー;
(d)イソブテン及びイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、並びにまたこのタイプのコポリマーのハロゲン化、とくに塩素化又は臭素化バージョン
とすることができる。
【0016】
適切な共役ジエンは、とくに、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジ(C〜Cアルキル)−1,3−ブタジエン、例えば、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−イソプロピル−1,3−ブタジエン、アリール−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン及び2,4−ヘキサジエンである。適切なビニル−芳香族化合物は、例えば、スチレン、オルト−、メタ−、及びパラ−メチルスチレン、市販の混合物「ビニルトルエン」、パラ−tert−ブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン並びにビニルナフタレンである。
【0017】
ジエンエラストマーコポリマーは、99〜20重量%のジエン単位及び1〜80重量%のビニル芳香族単位を含有することができる。エラストマーは、用いられる重合条件、とくに変性及び/又はランダム化剤の有無、並びに用いられる変性及び/又はランダム化剤の量の作用である、いずれかの微細構造を有することができる。エラストマーは、例えば、ブロック、統計、逐次又はミクロ逐次エラストマーであってもよく、分散液中又は溶液中で調製することができ;それらは結合及び/若しくは星型化又は官能化剤で結合及び/若しくは星型化又はあるいは官能化することができる。好適なブロックコポリマーの例は、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロックコポリマー及びスチレン−エチレン/ブタジエン−スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。
【0018】
好適なものは、ポリブタジエン、とくに4重量%〜80重量%の1,2−単位の含有量を有するもの、又は80重量%より大きいシス−1,4の含有量を有するもの、ポリイソプレン、ブタジエン−スチレンコポリマー、とくに5重量%〜50重量%、とりわけ20重量%〜40重量%のスチレン含有量、4重量%〜65重量%のブタジエン画分の1,2−結合の含有量、20重量%〜80重量%のトランス−1,4結合の含有量を有するもの、ブタジエン−イソプレンコポリマー、及びとくに5重量%〜90重量%のイソプレン含有量を有するものである。ブタジエン−スチレン−イソプレンコポリマーの場合、適切なものは、とくに5重量%〜50重量%、とりわけ10重量%〜40重量%のスチレン含有量、15重量%〜60重量%、とりわけ20重量%〜50重量%のイソプレン含有量、5重量%〜50重量%、とりわけ20重量%〜40重量%のブタジエン含有量、4重量%〜85重量%ブタジエン画分の1,2−単位の含有量、6重量%〜80重量%のブタジエン画分のトランス−1,4単位の含有量、5重量%〜70重量%のイソプレン画分の1,2−プラス3,4−単位の含有量、及び10重量%〜50重量%のイソプレン画分のトランス−1,4単位の含有量を有するものである。
【0019】
エラストマーはエポキシド化ゴム、例えばエポキシド化天然ゴム(ENR)とすることができる。エポキシド化ゴムは、ゴム、例えば天然ゴムを変性することにより得られ、飽和のいくらかが化学変性によってエポキシ基で置換されている。有用なエポキシド化ゴムは、エポキシド化度がオキシラン、ヒドロキシル、又はエステル基に変換されたゴム中にもともと存在するオレフィン不飽和部位のモルパーセントとして定義される場合、約5〜約95モル%、好適には約15〜約80モル%、より好適には約20〜約50モル%のエポキシド化度を有する。
【0020】
エポキシド化反応は、不飽和ゴムをエポキシド化剤と反応させることによりもたらすことができる。有用なエポキシド化剤としては、m−クロロ過安息香酸及び過酢酸のような過酸が挙げられる。他の例としては、過酸化水素とともに、酢酸及びギ酸のようなカルボキシル酸、又は無水酢酸のようなカルボン酸無水物が挙げられる。触媒、例えば硫酸、p−トルエンスルホン酸、又はスルホン化ポリスチレンのようなカチオン交換樹脂を任意で用いることができる。
【0021】
エポキシド化は好適には約0℃〜約150℃、好適には約25℃〜約80℃の温度で行われる。エポキシド化反応をもたらすのに必要な時間は一般的には約0.25〜約10時間、好適には約0.5〜約3時間である。
【0022】
エポキシド化反応は好適には、そのもともとの条件及びエポキシド化後の両方でゴムを実質的に溶解することができる溶媒中で行われる。適切な溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びクロロベンゼンのような芳香族溶媒、並びにシクロヘキサン、シクロヘプタン、及びこれらの混合物のような脂環式溶媒が挙げられる。
【0023】
エポキシド化後、エポキシド化ゴムは好適には、エポキシド化剤及び酸性触媒を含み得る酸性環境から除去又は分離される。この分離は、ろ過によって、又は希釈塩基水溶液を添加して酸を中和した後、ポリマーを実質的に凝固することにより達成することができる。ポリマーは、メタノール、エタノール、又はプロパノールのようなアルコールを用いることにより凝固することができる。抗酸化剤は一般的には分離手順後に添加され、最終生成物は真空蒸留のような技術を用いて乾燥させてもよい。あるいは、水蒸気蒸留及びドラム乾燥を含む、炭化水素溶媒等からポリマーを除去する他の既知の方法を用いてもよい。
【0024】
他のジエンエラストマーは、これらに限定されないが、共役ジエン単独又はビニル芳香族モノマーとの組み合わせの重合から誘導されるゴムのようなエポキシド化形態で用いることもできる。
【0025】
エラストマーは、スズ結合溶液重合によって調製される、アルコキシシラン末端ジエンポリマー又はジエン及びアルコキシ含有分子のコポリマーとすることができる。
【0026】
不飽和化合物(A)において、不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有するそれぞれの基は、芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和を含有し、芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和はオレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−不飽和と共役である。本発明の1つの態様によると、不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有するそれぞれの基は、オレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−結合に対する電子求引部分も含有する。
【0027】
電子求引部分は、反応中心から電子を求引する化学基である。電子求引結合Xは一般的にはMichael B.Smith and Jerry March;March’s Advanced Organic Chemistry,5th edition,John Wiley & Sons,New York 2001,at Chapter 15−58(page 1062)にジエノフィルとして挙げられた基のいずれかとすることができる。結合XはとくにC(=O)R、C(=O)OR、OC(=O)R、C(=O)Ar結合とすることができ、Arはアリーレンを表し、Rは二価炭化水素部分を表す。XはC(=O)−NH−R結合とすることもできる。
【0028】
不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有するそれぞれの基は、例えば式R−CH=CH−CH=CH−Y−を有することができ、式中、Rは水素又は1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、Yは隣接する−CH=CH−結合に対する電子求引効果を有する有機結合を表す。あるいは、不飽和化合物(A)は式Ar−CH=CH−Y−を有することができる。電子求引効果を有する結合Yは例えばカルボキシル結合とすることができ、不飽和化合物(A)は多価アルコールのエステルとすることができる。
【0029】
不飽和化合物(A)はそれぞれオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有する少なくとも2つの基を有する。これらの1つの反応による化合物(A)のポリオレフィン又はジエンエラストマーへのグラフトは、第2のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合のさらなる反応が分岐又は架橋をもたらすことを可能にする。それぞれ1分子当たり1つのオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有する平均で3つ以上の基を有する不飽和化合物(A)、例えば3〜6つのこうした基を有する不飽和化合物(A)は、架橋の密度を増加することが好適であり得る。
【0030】
不飽和化合物(A)は、例えば2〜6つ以上の−OH基を有するいずれかの多価アルコールのエステル、例えば3−(ヒドロキシメチル)ペンタン−1,5−ジオール(トリメチロールプロパン又はTMP)、ペンタエリスリトール、プロパン−1,3−ジオール、プロパン−1,2−ジオール(プロピレングリコール)、エチレングリコール、グリセロール又はソルビトールとすることができる。3つ以上の−OH基を有する多価アルコールは完全に又は部分的にエステル化することができる。
【0031】
不飽和化合物(A)は、例えば、
ペンタエリスリトールトリソルベート、
【化1】


ペンタエリスリトールテトラソルベート、
【化2】


トリメチロールプロパントリソルベート、
【化3】


プロパン−1,2−ジオールジソルベート若しくはプロパン−1,3−ジオールジソルベート、
【化4】


のような多価アルコールのソルベートエステル、又はトリメチロールプロパントリシンナメートのような多価アルコールのシンナメートとすることができる。酸触媒エステル化によるペンタエリスリトールテトラソルベートの調製については、米国特許第US3458460号の実施例4に記載されている。他の多価アルコールのソルベートは同じ技術により調製することができる。
【0032】
ポリオレフィンの十分な架橋及び/又は分岐をもたらし、ポリオレフィンの安定性及び/又は物理的特性を向上させる程度までの不飽和化合物(A)のポリオレフィンへのグラフトは、一般的にはポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成することができる手段を必要とするが、ジエンエラストマーについては任意である(好適には必要でない)。ポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成する手段としては、好適にはフリーラジカルを生成することができ、よってポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成することができる化合物を含む。他の手段としては、せん断、加熱又は電子ビーム放射のような照射の適用が挙げられる。溶融押出プロセスによりもたらされる高温及び高せん断速度は、ポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成することができる。
【0033】
ポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成することができる化合物は、好適には有機過酸化物であるが、アゾ化合物のような他のフリーラジカル開始剤を用いることができる。好適には、フリーラジカル開始剤の分解により形成される基は酸素系フリーラジカルである。ヒドロペルオキシド、カルボキシルペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ジアルキルペルオキシド及びジアシルペルオキシド、ケトンペルオキシド、ジアリールペルオキシド、アリール−アルキルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシ酸、アシルアルキルスルホニルペルオキシド並びにモノペルオキシジカーボネートを用いることがより好ましい。好適な過酸化物の例としては、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキソナン、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシアセテート、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,2−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ブチル4,4−ジ(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ジ−tert−アミルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチル−ペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(tertブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tertブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジ(tertブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルペルオクトエート、メチルエチルケトンペルオキシド、tert−ブチルα−クミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン−3、1,3−又は1,4−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルアセテート、及びtert−ブチルペルベンゾエートが挙げられる。アゾ化合物の例は、アゾビスイソブチロニトリル及びジメチルアゾジイソブチレートである。上記ラジカル開始剤は単独で又はそれらの少なくとも2つの組み合わせで用いることができる。
【0034】
ポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成することができる化合物の存在下でポリオレフィン及び不飽和化合物(A)が反応する温度は、一般的には120℃より高く、通常は140℃より高く、ポリオレフィンを溶融し、フリーラジカル開始剤を分解するのに十分に高い。ポリプロピレン及びポリエチレンについて、170℃〜220℃の範囲内の温度が通常好適である。過酸化物又はポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成することができる他の化合物は、120〜220℃、もっとも好適には160〜190℃の範囲内の分解温度を有する。1つの好適な手順において、ポリオレフィン、不飽和化合物(A)及びポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成することができる化合物は、二軸押出機において120℃より高い温度で混合され、不飽和化合物(A)をポリマーにグラフトし、これによりポリオレフィンの架橋及び/又は分岐をもたらす。
【0035】
ポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成することができる化合物は、一般的には総組成物の少なくとも0.01重量%の量で存在し、最大5又は10重量%の量で存在することができる。有機過酸化物は、例えば、好適にはグラフト反応中ポリオレフィンに対して0.01〜2重量%で存在する。もっとも好適には、有機過酸化物は総組成物の0.01重量%〜0.5重量%で存在する。
【0036】
ポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成する手段は、あるいは電子ビームとすることができる。電子ビームを用いる場合、フリーラジカルを生成することができる過酸化物のような化合物の必要はない。ポリオレフィンに不飽和シラン(I)又は(II)の存在下で少なくとも5MeVのエネルギーを有する電子ビームを照射する。好適には、電子ビームの加速電位又はエネルギーは5MeV〜100MeV、より好適には10〜25MeVである。電子ビーム発生器の電力は好適には50〜500kW、より好適には120〜250kWである。ポリオレフィン/グラフト剤混合物に施す放射線量は好適には0.5〜10Mradである。ポリオレフィン及び不飽和化合物(A)の混合物は、混合物を照射する電子ビーム発生器下を通る、エンドレスベルトのような連続的に動くコンベヤ上に堆積させることができる。コンベヤ速度は所望の照射線量を達成するように調節される。
【0037】
ポリオレフィンの十分な架橋及び/又は分岐をもたらし、ジエンの安定性及び/又は物理的特性を向上させる程度までの、不飽和化合物(A)のジエンエラストマーへのグラフトは、一般的にはエン反応によって進み、ポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成することができる手段を必要としない。エラストマー及び不飽和化合物(A)は各種手順により反応させることができる。いくつかの反応は周囲温度で起こるが、エラストマー及び不飽和化合物(A)は好適にはともに少なくとも80℃の温度で、より好適には90℃〜200℃、もっとも好適には120℃〜180℃の温度まで加熱される。エラストマー及び不飽和化合物(A)を純粋機械的混合により混合した後所望に応じて別々の加熱ステップを行うことができるが、混合及び加熱は好適には同時に行われ、エラストマーには加熱しながら機械加工が施される。ジエンエラストマーにグラフトされた不飽和化合物(A)はゴム製造において加硫戻り防止剤として機能する。
【0038】
エラストマー及び不飽和化合物(A)は、不飽和化合物(A)とジエン含有ゴムポリマー、例えば三酢酸ホウ素のようなルイス酸との間のエン付加反応を加速する触媒の存在下で反応させることができる。こうした触媒の使用は、エラストマーと不飽和化合物(A)との間の反応をもたらすのに必要な熱機械処理の温度を低減することができる。触媒は混合段階中に生成される結合の数を制御し、トルクを最適化することができる。しかしながら、ジエンエラストマー及び不飽和化合物(A)は、ゴムの熱機械混練に従来より用いられる温度で容易に反応し、架橋又は分岐エラストマー中の触媒残渣を回避することが望ましくあり得る。
【0039】
成形ゴム製品に硬化されるジエンエラストマー組成物は通常、2つの連続調製段階:高温、110℃〜190℃の最大温度(Tmax)での熱機械混合又は混練の第1段階(「非製造」段階と称されることもある)の後、その間に架橋及び加硫系が組み込まれる、一般的には110℃未満の温度での機械混合の第2段階(「製造段階」と称されることもある)を用いて製造される。半製品の加熱下で硬化挙動を加速するため、ルイス酸のような触媒を製造段階中に添加することもできる。
【0040】
成形ゴム製品に硬化される本発明によるジエンエラストマー組成物は、一般的には充填剤、とくにシリカ又はカーボンブラックのような補強充填剤を含有する。充填剤は通常、非製造熱機械混合又は混練段階においてエラストマーと混合され、不飽和化合物(A)もこの段階においてエラストマー及び充填剤と混合される。
【0041】
本発明によるポリオレフィン組成物は充填剤を含有することができる。充填剤は、グラフト/架橋反応中、不飽和化合物(A)及び有機過酸化物とともにポリオレフィンに便利に混合することができる。あるいは、不飽和化合物(A)はポリオレフィン又はジエンエラストマーと反応させる前に充填剤上に堆積させることができる。
【0042】
充填剤は好適には、ホワイトタイヤ組成物に用いられるような、シリカ若しくはケイ酸充填剤のような補強充填剤、アルミナ三水塩若しくは水酸化酸化アルミニウムのようなアルミナタイプの鉱物酸化物のような金属酸化物、テトラエチルオルトシリケートのようなアルコキシシランで予備処理したカーボンブラック、アルミノシリケートのようなシリケート、又はこれらの異なる充填剤の混合物である。
【0043】
補強充填剤は、例えば、焼成若しくは沈降ケイ質顔料又はアルミノシリケートを含む、ゴム配合用途に用いられるいずれかの一般的なケイ質充填剤とすることができる。沈降シリカ、例えば可溶性ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムの酸性化により得られるものが好適である。沈降シリカは好適には、窒素ガスを用いて測定されるように、1グラム当たり約20〜約600、より一般的には約40又は50〜約300平方メートルの範囲内のBET表面積を有する。表面積を測定するBET法は、Journal of the American Chemical Society,Volume 60,Page 304(1930)に記載されている。シリカは一般的には、ASTM D2414に記載されるように測定される、約100〜約350、より一般的には約150〜約300cm/100gの範囲内のジブチルフタレート(DBP)値を有すると特徴づけることもできる。シリカ、及び用いる場合アルミナ又はアルミノシリケートは、好適には約100〜約220m/gの範囲内のCTAB表面積を有する(ASTM D3849)。CTAB表面積は、9pHを有する臭素化セチルトリメチルアンモニウムにより評価されるような外部表面積である。その方法はASTM D3849に記載されている。
【0044】
Rhodiaから、例えば、Zeosil(登録商標)1165MP、1115MP、又はHRS 1200MPの表示で市販されるシリカ;PPG IndustriesからHi−Sil商標下、Hi−Sil(登録商標)EZ150G、210、243、等の表示で市販される200MPpremium、80GR又は同等のシリカ;Degussa AGから、例えば、表示VN3、Ultrasil(登録商標)7000及びUltrasil(登録商標)7005で市販されるシリカ;並びにHuberから、例えば、Hubersil(登録商標)8745及びHubersil(登録商標)8715の表示で市販されるシリカのような、各種市販のシリカは、本発明によるエラストマー組成物における使用を検討することができる。処理沈降シリカ、例えば欧州特許第EP−A−735088号に記載されているアルミニウムドープシリカを用いることができる。
【0045】
本発明のエラストマー組成物にアルミナを用いる場合、例えば、天然酸化アルミニウム又は水酸化アルミニウムの制御沈降により調製される合成酸化アルミニウム(Al)とすることができる。補強アルミナは好適には30〜400m/g、より好適には60〜250m/gのBET表面積、及び最大500nm、より好適には最大200nmの平均粒径を有する。こうした補強アルミナの例は、BaikowskiのアルミナA125、CR125、D65CR又はAldrich Chemical Companyから入手することができる中性、酸性、若しくは塩基性Alである。中性アルミナが好適である。
【0046】
本発明のエラストマー組成物に用いることができるアルミノシリケートの例は、スペイン、トレドのTolsa S.A.からPANSIL(登録商標)として入手することができる天然アルミノシリケートのセピオライト、Degussa GmbHからの合成アルミノシリケートである。
【0047】
本発明のポリオレフィン又はジエンエラストマー組成物に組み込むことができる鉱物充填剤又は顔料の例としては、二酸化チタン、三水酸化アルミニウム、二水酸化マグネシウム、雲母、カオリン、炭酸カルシウム;ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウムの非含水、部分含水、若しくは含水フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、クロム酸塩、炭酸塩、水酸化物、リン酸塩、リン酸水素、硝酸塩、酸化物、及び硫酸塩;酸化亜鉛、五酸化アンチモン、三酸化アンチモン、酸化ベリリウム、酸化クロム、酸化鉄、リトポン、ホウ酸又はホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム若しくはホウ酸アルミニウムのようなホウ酸塩、バーミキュライト、石英、砂、シリカゲル;籾殻灰、セラミック及びガラスビーズ、ゼオライト、アルミニウム薄片若しくは粉末、青銅粉末、銅、金、モリブデン、ニッケル、銀粉末若しくは薄片、ステンレス鋼粉末、タングステンのような金属、含水ケイ酸カルシウム、チタン酸バリウム、シリカ−カーボンブラック複合体、官能化カーボンナノチューブ、セメント、フライアッシュ、スレート粉、ベントナイト、粘土、タルク、アンスラサイト、アパタイト、アタパルガイト、窒化ホウ素、クリストバライト、珪藻土、ドロマイト、第一鉄、長石、黒鉛、焼成カオリン、二硫化モリブデン、パーライト、軽石、ピロフィライト、セピオライト、スズ酸亜鉛又はウォラストナイトが挙げられる。
【0048】
本発明のポリオレフィン又はジエンエラストマー組成物に組み込むことができる繊維充填剤の例としては、天然繊維、例えば木粉、木質繊維、綿繊維、セルロース繊維、又は麦藁、麻、亜麻、ケナフ、カポック、ジュート、カラムシ、サイザル、ヘネッケン、トウモロコシ繊維、コイア、ナッツ殻若しくは籾殻のような農業繊維、又はポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、若しくはガラス繊維のような合成繊維が挙げられる。有機充填剤の例としては、リグニン、デンプン若しくはセルロース及びセルロース含有生成物、又はポリテトラフルオロエチレン若しくはポリエチレンのプラスチックミクロスフェアが挙げられる。充填剤は、アゾ、インジゴイド、トリフェニルメタン、アントラキノン、ヒドロキノン又はキサンチン染料を組み込むもののような固体有機顔料とすることができる。
【0049】
こうした充填組成物中の充填剤又は顔料の濃度は幅広く変化することができ;例えば、充填剤は総組成物の1又は2重量%〜最大70重量%を形成することができる。
【0050】
ポリオレフィン又はジエンエラストマーと不飽和化合物(A)との間の反応は、いずれかの適切な装置を用いてバッチプロセスとして又は連続プロセスとして行うことができる。バッチプロセスは、例えば、Banburyミキサー又はローラーブレードを備えるBrabender Plastograph(商標)350Sミキサーのような内部ミキサー中で行うことができる。ロールミルのような外部ミキサーはバッチ又は連続処理のいずれかに用いることができる。
【0051】
連続処理は単軸又は二軸押出機のような押出機中で行うことができる。機械的に加工、すなわち材料を通過させながら混練又は配合するのに、押出機、例えば二軸押出機が好適には用いられる。適切な押出機の1つの例は、Coperion Werner Pfeidenerから商標ZSKで市販されるものである。押出機は好適には、いずれかの未反応不飽和化合物(A)を除去するため、押出ダイのすぐ前に真空ポートを備える。
【0052】
本発明によるジエンエラストマー組成物は好適には、高温での機械又は熱機械混合又は混練(「非製造」段階)、その間に加硫系が組み込まれる、その後の低温、一般的には110℃未満、例えば40℃〜100℃での機械混合の第2段階(「製造」段階)の従来の2つの連続調製段階を用いて製造される。非製造段階は上述のようにバッチ又は連続プロセスとして行うことができる。バッチプロセスでは、エラストマー及び不飽和化合物(A)は一般的には、100℃より高い温度で少なくとも1分間混合され、最大20分間混合することができるが、高温での混合時間は一般的には2〜10分である。100℃より高い温度でのジエンエラストマー及び不飽和化合物(A)の押出機又は他の連続反応器における滞留時間は、一般的には少なくとも0.5分であり、好適には少なくとも1分であり、最大15分とすることができる。より好適には、滞留時間は1〜5分である。
【0053】
本発明により製造される架橋又は分岐エラストマーを含む組成物は、各種メカニズムにより硬化し、必要に応じてさらなる架橋をもたらすことができる。変性エラストマーの硬化剤は、硫黄加硫剤のような従来のゴム硬化剤とすることができる。あるいは、変性エラストマーは、過酸化物のようなラジカル開始剤により硬化させることができる。
【0054】
適切な硫黄加硫剤の例としては、例えば、硫黄元素(遊離硫黄)又は硫黄供与加硫剤、例えば、従来より最終製造ゴム組成物混合ステップにおいて添加されるアミンジスルフィド、ポリマーポリスルフィド又は硫黄オレフィン付加化合物が挙げられる。好適には、ほとんどの場合、硫黄加硫剤は硫黄元素である。硫黄加硫剤は、エラストマーに対して約0.4〜約8重量%、好適には1.5〜約3重量%、とくに2〜2.5重量%の範囲内の量で用いられる。
【0055】
促進剤は一般的には加硫に必要な時間及び/又は温度を制御し、加硫エラストマー組成物の特性を向上させるのに用いられる。1つの実施形態では、単一促進剤系、すなわち一次促進剤を用いることができる。従来より好適には、一次促進剤は、エラストマーに対して約0.5〜約4重量%、好適には約0.8〜約1.5重量%の範囲内の総量で用いられる。別の実施形態では、一次及びニ次促進剤の組み合わせを用いることができるが、加硫物の特性を活性化及び向上させるため、二次促進剤は約0.05〜約3重量%の少量で用いられる。遅延作用促進剤を用いることができ、これは通常の処理温度により影響されないが、通常の加硫温度で十分な硬化をもたらす。加硫遅延剤、例えば無水フタル酸、安息香酸又はシクロヘキシルチオフタルイミドを用いることもできる。本発明に用いることができる適切なタイプの促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオウレア、チアゾール、例えばメルカプトベンゾチアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメート、チオカーボネート、及びキサンテートである。好適には、一次促進剤はスルフェンアミドである。二次促進剤を用いる場合、二次促進剤は好適にはグアニジン、ジチオカルバメート又はチウラム化合物である。
【0056】
硬化系が硫黄で構成される場合、タイヤ又はタイヤトレッドのようなゴム製品の加硫又は硬化は、既知の方法で、好適には130℃〜200℃の温度で、圧力下、十分に長い時間行われる。加硫に必要な時間は例えば2〜30分の間で変化し得る。
【0057】
本発明による充填組成物は、アルキル基中に1〜20個の炭素原子及びアルコキシ基中に1〜6個の炭素原子を有する結合剤、例えばトリアルコキシ、ジアルコキシ又はモノアルコキシシラン結合剤、とくにスルフィドシラン、メルカプトシラン、アゾシラン、アクリルアミドシラン、ブロックメルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン又はアルケニルシランを含有することができる。好適な結合剤の例としては、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン若しくはビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファンのような米国特許第US−A−5684171号に記載されるビス(トリアルコキシシリルプロピル)ジスルファン若しくはテトラスルファン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)テトラスルファン若しくはビス(メチルジエトキシシリルプロピル)ジスルファンのようなビス(ジアルコキシメチルシリルプロピル)ジスルファン若しくはテトラスルファン、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)テトラスルファン若しくはビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)ジスルファンのようなビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)オリゴスルファン、米国特許第US−B1−6774255号に記載されるビス(ジメチルヒドロキシシリルプロピル)ポリスルファン、国際公開第WO−A−2007/061550号に記載されるジメチルヒドロキシシリルプロピルジメチルアルコキシシリルプロピルオリゴスルファン、又はトリエトキシシリルプロピルメルカプトシランのようなメルカプトシランが挙げられる。こうした結合剤は、充填剤のエラストマー又はポリオレフィンへの結合を促進し、よって充填エラストマー又はポリオレフィンの物理的特性を向上させる。充填剤を結合剤で予備処理することができ、又は結合剤をエラストマー又はポリオレフィン、充填剤及び本発明による不飽和化合物(A)とともにミキサーに添加することができる。
【0058】
多くの用途のため、本発明のポリマー組成物は好適には少なくとも1つの抗酸化剤を含有する。適切な抗酸化剤の例としては、商標Ciba Irgafos(登録商標)168で市販されるトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、商標Ciba Irganox(登録商標)1010で市販されるテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル−プロピオネート)]メタン処理安定剤及び商標Ciba Irganox(登録商標)1330で市販される1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、Flexsysから「Santoflex 6−PPD」(商標)として市販されるN−1,3−ジメチルブチル−N−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン等、例えばThe Vanderbilt Rubber Handbook(1978),Pages 344−346に開示されるものが挙げられる。ポリマー組成物は紫外線放射及び光放射に対する安定剤、例えば4−置換−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンのようなヒンダードアミン光安定剤、例えば商標Tinuvin(登録商標)770、Tinuvin(登録商標)622、Uvasil(登録商標)299、Chimassorb(登録商標)944及びChimassorb(登録商標)119で市販されるものを含有することも望ましくあり得る。抗酸化剤及び/又はヒンダードアミン光安定剤は、架橋及び/又は分岐反応中に、従来よりポリオレフィン又はジエンエラストマーに不飽和化合物(A)、及び用いる場合有機過酸化物とともに便利に組み込むことができる。架橋ポリオレフィン中の抗酸化剤及び光安定剤の総濃度は、一般的には総組成物の0.02〜0.15重量%の範囲内である。架橋ジエンエラストマー中の抗酸化剤及び光安定剤の総濃度は一般的には0.1〜5重量%の範囲内である。
【0059】
本発明によるエラストマー組成物は、処理添加剤、例えば油、粘着付与樹脂を含む樹脂、可塑剤、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、オゾン劣化防止剤、熱安定剤、UV安定剤、染料、顔料、増量剤及び素練り促進剤のような各種一般的な添加剤物質とともに配合することができる。用いる場合、粘着付与樹脂の一般的な量としてはエラストマーに対して約0.5〜約10重量%、好適には1〜5重量%が挙げられる。処理助剤の一般的な量としてはエラストマーに対して約1〜約50重量%が挙げられる。こうした処理助剤としては、例えば、芳香族、ナフテン、及び/又はパラフィン処理油を挙げることができる。用いる場合、ステアリン酸又はステアリン酸亜鉛を含むことができる脂肪酸の一般的な量としてはエラストマーに対して約0.1〜約3重量%が挙げられる。酸化亜鉛の一般的な量としてはエラストマーに対して約0〜約5重量%、あるいは0.1〜5重量%が挙げられる。ワックスの一般的な量としてはエラストマーに対して約1〜約5重量%が挙げられる。微結晶及び/又は結晶ワックスを用いることができる。素練り促進剤の一般的な量としてはエラストマーに対して約0.1〜約1重量%が挙げられる。一般的な素練り促進剤は、例えばペンタクロロチオフェノール又はジベンズアミドジフェニルジスルフィドとすることができる。
【0060】
本発明によるポリオレフィン組成物は、染料又は処理助剤のような他の添加剤を含有することもできる。
【0061】
本発明によって製造される架橋及び/又は分岐ポリオレフィン組成物は幅広い種類の製品において用いることができる。架橋及び/又は分岐ポリオレフィン組成物を吹込成形又は回転成形し、瓶、缶又は他の液体容器、液体供給部、通風部、燃料タンクを含むタンク、波形ベローズ、カバー、ケース、チューブ、管、管継手又は輸送トランクを形成することができる。架橋及び/又は分岐ポリオレフィン組成物を吹込押出し、管、波形管、シート、繊維、プレート、コーティング、シュリンク包装フィルムを含むフィルム、プロファイル、床材、チューブ、導管若しくはスリーブを形成することができ、又は電気絶縁層としてワイヤー若しくはケーブル上に押出すことができる。架橋及び/又は分岐ポリオレフィン組成物を射出成形し、チューブ及び管継手、包装、ガスケット並びにパネルを形成することができる。架橋及び/又は分岐ポリオレフィン組成物は発泡又は熱形成することもできる。
【0062】
加硫系のような硬化剤を含有する架橋及び/又は分岐ジエンエラストマー組成物は、製品に形成及び硬化される。エラストマー組成物を用い、ビード、アペックス、サイドウォール、インナーライナー、トレッド又はカーカスのようなそのいずれかの部品を含む、タイヤを製造することができる。エラストマー組成物をあるいは用い、いずれかの他の工学的ゴム製品、例えば橋梁緩衝要素、ホース、ベルト、靴底、耐震バイブレータ、及び制振要素を製造することができる。エラストマー組成物は、コード、例えばポリエステル、ナイロン、レーヨン、若しくはセルロースコードのような有機ポリマーコード又はスチールコード、繊維層又は金属若しくは有機シートのような補強要素と接触させて硬化することができる。
【0063】
架橋及び/又は分岐ポリオレフィンから形成される製品は、同じポリオレフィンから架橋又は分岐なしに形成された製品と比較して、向上した物理/機械特性及び/又は向上した耐熱性、耐傷性及び難燃性を有する。架橋及び/又は分岐ジエンエラストマーから形成された加硫製品は、架橋又は分岐なしに、同じジエンエラストマーから形成された製品と比較して向上した物理/機械特性並びに向上した耐熱性、耐傷性及び難燃性を有する。
【0064】
本発明は、ポリオレフィン又はジエンエラストマー、及びそれぞれオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有する少なくとも2つの基を有する不飽和化合物(A)を含むポリマー組成物において、不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有するそれぞれの基が芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和を含有し、芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和がオレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−不飽和と共役であることを特徴とする組成物を提供する。
・好適には、ポリオレフィンは少なくとも50重量%単位の3〜8個の炭素原子を有するαオレフィンを含む。
・好適には、ポリオレフィンはポリプロピレンである。
・好適には、不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有するそれぞれの基は、オレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−結合に対する電子求引部分を含有する。
・好適には、不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有するそれぞれの基は、式R−CH=CH−CH=CH−Y−を有し、式中、Rは水素又は1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、Yは隣接する−CH=CH−結合に対する電子求引効果を有する有機結合を表す。
・好適には、不飽和化合物(A)は多価アルコールのソルベートエステルである。
・好適には、ソルベートエステルはペンタエリスリトールトリソルベート、ペンタエリスリトールテトラソルベート、トリメチロールプロパントリソルベート、プロパン−1,2−ジオールジソルベート又はプロパン−1,3−ジオールジソルベートである。
【0065】
本発明は、ポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成することができる手段の存在下、ポリオレフィンをそれぞれオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有する3つ以上の基を有する不飽和化合物(A)と反応させるステップを具える架橋又は分岐ポリオレフィンの形成プロセスにおいて、不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有するそれぞれの基が芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和を含有し、芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和がオレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−不飽和と共役であることを特徴とするプロセスを提供する。
・好適には、ポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成することができる有機過酸化物化合物は組成物中に総組成物に対して0.01〜5重量%の量で存在する。
・好適には、架橋又は分岐ジエンエラストマーの形成プロセスは、ジエンエラストマーをそれぞれオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有する3つ以上の基を有する不飽和化合物(A)と反応させるステップを含み、不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有するそれぞれの基が芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和を含有し、芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和がオレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−不飽和と共役であることを特徴とする。
・好適には、85〜100重量部のポリオレフィン又はジエンエラストマーを0.01〜10重量部の不飽和化合物(A)と反応させる。
・好適には、不飽和化合物(A)は、ポリオレフィン又はジエンエラストマーと反応させる前に充填剤上に堆積させる。
・好適には、不飽和化合物(A)、充填剤及びポリオレフィン又はジエンエラストマーをin situ反応させる。
【0066】
本発明は、共役不飽和を含有しない多価不飽和化合物での架橋と比較してポリオレフィンより少ない分解でのポリオレフィンの架橋における、それぞれオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有する3つ以上の基を有する不飽和化合物(A)の使用において、オレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有するそれぞれの基が芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和を含有し、芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和がオレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−不飽和と共役であることを特徴とする使用を提供する。
【実施例】
【0067】
本発明は以下の実施例により示される。
【0068】
原材料
用いたポリマー:
・PP=Borealis(登録商標)HB205TFとして供給されるイソタクチックポリプロピレンホモポリマー(ISO1133により測定される230℃/2.16kgでのメルトフローインデックスMFR1g/10分);
・多孔性PP=MembranaよりAccurel(登録商標)XP100として供給される微孔性ポリプロピレン。この微孔性ポリマーは液体成分を吸収するために用いた。Accurel(登録商標)XP100の特性はMFR(2.16kg/230℃)2.1g/10分(ISO1133法)、及び溶融温度(DSC)156℃である。
【0069】
用いた過酸化物:
・DHBP=Arkema Luperox(登録商標)101peroxideとして供給される2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサンペルオキシド。
【0070】
用いた抗酸化剤:
・Irgafos(登録商標)168=CibaよりIrgafos(登録商標)168として供給されるトリス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト抗酸化剤
・Irganox(登録商標)1010=CibaよりIrganox(登録商標)1010として供給されるテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル−プロピオネート)]メタンフェノール抗酸化剤
【0071】
架橋助剤:
・スチレン(純度99%、Sigma−Aldrichより供給されるReagent Plus(登録商標)(ref.S4972))
・エチルソルベート(純度≧98%、Sigma−Aldrichより供給されるReagent Plus(登録商標)(ref.177687))
【0072】
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)はSigma−Aldrichより供給されるReagent Plus(登録商標)(ref.408263)であり、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)はCray Valleyより供給された(ref.SARTOMER 351)。
【0073】
ペンタエリスリトールテトラソルベート(PETS)、トリメチロールプロパントリソルベート(TMPTS)及びプロパン−1,3−ジオールジソルベート(「ジソルベート」)は、米国特許第US3458460号の実施例4による対応する多価アルコールの酸触媒エステル化により調製された。
【0074】
実施例1
10重量部の多孔性PPペレットを1.87重量部のPETS及び0.2部のDHBPと、液体試薬がポリプロピレンにより吸収され、多官能性ソルベートマスターバッチを形成するまでタンブルした。
【0075】
100重量部のBorealis(登録商標)HB205TFポリプロピレンペレットを、ローラーブレードを備えたBrabender(登録商標)Plastograph350Eミキサーに入れ、配合を行った。充填比は0.7に設定した。回転速度は50rpmであり、チャンバーの温度は190℃で維持した。融液のトルク及び温度を成分の反応処理を制御するために観測した。PPを3部に分けて入れ、各添加後に1分融合/混合した。多官能性ソルベートマスターバッチを次に添加し、4分間混合し、グラフト反応を開始させた。0.5部のIrganox1010及び0.5部のIrgafos168抗酸化剤を次に添加し、さらに1分間混合し、その間グラフトを継続した。融液を次にミキサーから滴下し、周囲温度まで冷却した。得られるグラフトポリプロピレンを、周囲温度まで15℃/分で冷却する前に、Agila(登録商標)PE30プレス上で210℃での5分間のさらなる押圧によって2mm厚シートに成形した。
【0076】
実施例2及び3
表1に示すように、PETSをソルビロキシ官能基のモル量に合わせるのに必要な対応する量のTMPTS又はジソルベートのいずれかにより置き換え、実施例1を繰り返した。
【0077】
比較例C1及びC2
比較例C1では、PETSを省略して実施例1を繰り返した。比較例2では、PETS及び過酸化物を省略した。
【0078】
比較例C3及びC4
表1に示すように、PETS及びTMPTSを、アクリレート官能基のモル量をソルビロキシ官能基のモル量に合わせるのに必要なそれぞれ対応する量のPETA及びTMPTAにより置き換え、実施例1及び2を繰り返した。
【0079】
比較例C5
表1に示すように、架橋助剤として1.6部のスチレンを添加し、比較例C4を繰り返した。
【0080】
各実施例について、架橋ポリプロピレンの配合中のトルク及び弾性せん断率G’を測定した。これらは表1に記録する。
【0081】
処理トルクは、50rpmの混合速度を維持するためPlastograph350Eミキサーのモーターにより適用される、ニュートンメートル(N.m)でのトルクの測定値である。報告される値は混合の終わりでのトルクレベルのプラトーの1つである。
【0082】
トルクが低いほど、ポリマー粘度は低い。混合段階後のトルクレベルは従って、混合中のポリマー分解を表す。
【0083】
弾性せん断率(G’)測定はAdvanced Polymer Analyzer APA2000(登録商標)上で行った。3.5gの試料を、その融点より高い、210℃の温度で分析した。弾性せん断率(G’)は、一定の振動条件(0.5Hz)下での歪み掃引ついて記録した。1〜610%の歪みの範囲についての弾性せん断率(G’)、粘性率(G”)、及びTanDの記録は約8分かかる。歪みパーセントの作用としてのG’の各種プロットから、歪み12%での値はすべて線形粘弾性領域にあった。よって、歪み12%でのG’値を、実施例において記載する試料の分解及び架橋の作用としての弾性せん断率の変化に従って選択した。
【0084】
ポリプロピレンシートのゲル含有量を測定し、表1に記録した。ゲル含有量は、ISO10147法“Pipes and fittings made of crosslinked polyethylene(PE−X)−Estimation of the degree of crosslinking by determination of the gel content”を用いて測定した。試験の原則は、試験片の溶媒中への浸漬(還流キシレン中に8時間)の前後に成形部から取った試験片の質量を測定するステップからなる。架橋度は不溶性物質の質量パーセントとして表す。
【0085】
実施例1〜3を比較例C1及び2と比較し、我々は、添加剤の非存在下、過酸化物で製造される製剤(比較例C1)と比較して、我々の発明の製剤の顕著なポリプロピレン分解防止効果を観測した。実施例1〜3は、過酸化物なしのPP(比較例C2)のトルク値に近い、又はさらにこれを超える比較例C1より高いトルク値を示した。実施例1〜3は、その分解を防止しながら、不飽和化合物のポリプロピレン樹脂への良好なグラフト効率から得られた高G’及びゲル含有量値により示されるように実質的な架橋も示した。これは我々の発明の製剤のポリプロピレン架橋効率を示した。
【0086】
実施例1〜3を比較例C3及びC4と比較し、我々は、アクリレート化合物で製造された製剤と比較して、我々の発明の製剤の顕著なポリプロピレン分解防止及びポリプロピレン架橋効果を観測した。実施例1〜3は、グラフト中にポリプロピレン分解が起こった比較例C3及びC4より高いトルク、G’及びゲル含有量値を示した。
【0087】
スチレンのような架橋助剤の多官能性アクリレートと組み合わせた使用は、ポリマー分解を阻害することが知られている。実施例1〜3の比較例C5との比較は、我々の発明の製剤が、アクリレート化合物及び架橋助剤としてのスチレンを同時に用いる製剤と同様の性能を、こうした架橋助剤を必要とせずに達成することを可能にすることを示した。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン又はジエンエラストマー、及び、それぞれオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有する少なくとも2つの基を有する不飽和化合物(A)、を含むポリマー組成物において、
該不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有するそれぞれの基が、芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和を有し、該芳香族環又は該さらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和が前記オレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−不飽和と共役であることを特徴とするポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィンが、少なくとも50重量%単位の3〜8個の炭素原子を有するαオレフィンを含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィンがポリプロピレンであることを特徴とする、請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有するそれぞれの基が、前記オレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−結合に対する電子求引部分を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有するそれぞれの基が式R-CH=CH−CH=CH−Y−を有し、式中、Rが水素又は1〜12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、Yが隣接する−CH=CH−結合に対する電子求引効果を有する有機結合を示すことを特徴とする、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記不飽和化合物(A)が多価アルコールのソルベートエステルであることを特徴とする、請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記ソルベートエステルが、ペンタエリスリトールトリソルベート、ペンタエリスリトールテトラソルベート、トリメチロールプロパントリソルベート、プロパン−1,2−ジオールジソルベート又はプロパン−1,3−ジオールジソルベートであることを特徴とする、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
ポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成することができる手段の存在下、該ポリオレフィンを、それぞれオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有する3つ以上の基を有する不飽和化合物(A)と反応させるステップを具える、架橋又は分岐ポリオレフィンの形成プロセスにおいて、
該不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有するそれぞれの基が芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和を含有し、該芳香族環又は該さらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和が該オレフィン−C=C−又は該アセチレン−C≡C−不飽和と共役であることを特徴とするプロセス。
【請求項9】
前記ポリオレフィン中にフリーラジカル部位を生成することができる有機過酸化物化合物が前記組成物中、総組成物に対して0.01〜5重量%の量で存在することを特徴とする、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
ジエンエラストマーをそれぞれオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有する3つ以上の基を有する不飽和化合物(A)と反応させるステップを具える架橋又は分岐ジエンエラストマーの形成プロセスにおいて、該不飽和化合物(A)中のオレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有するそれぞれの基が芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和を含有し、該芳香族環又は該さらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和が、前記オレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−不飽和と共役であることを特徴とする、プロセス。
【請求項11】
85〜100重量部のポリオレフィン又はジエンエラストマーを、0.01〜10重量部の前記不飽和化合物(A)と反応させることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
前記不飽和化合物(A)を、前記ポリオレフィン又はジエンエラストマーと反応させる前に、充填剤上に堆積させることを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
前記不飽和化合物(A)、前記充填剤及び前記ポリオレフィン又はジエンエラストマーをin situ反応させることを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
共役不飽和を含有しない多価不飽和化合物での架橋と比較してポリオレフィンのより少ない分解でのポリオレフィンの架橋での、オレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合をそれぞれ有する3つ以上の基を有する不飽和化合物(A)の使用において、
オレフィン−C=C−結合又はアセチレン−C≡C−結合を有するそれぞれの基が芳香族環又はさらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和を含有し、該芳香族環又は該さらなるオレフィン二重結合若しくはアセチレン不飽和が、前記オレフィン−C=C−又はアセチレン−C≡C−不飽和と共役であることを特徴とする使用。

【公表番号】特表2013−519735(P2013−519735A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547480(P2012−547480)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070483
【国際公開番号】WO2011/083046
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】