説明

架橋可能なゴム組成物

【課題】可塑剤として非極性炭化水素系オイルを用いることにより、加工性と非汚染性を共に改良することができ、かつ、ポリオレフィン系の架橋ゴム材料の耐熱性、非汚染性の性能を十分に発揮することができる架橋可能なゴム組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも、成分(A)100重量部に対し、成分(B)を0.1〜100重量部、及び成分(C)を10〜1000重量部を含む、混合後の25℃での粘度が0.01Pa・s〜10000Pa・sであることを特徴とする架橋可能なゴム組成物。
(A)特定のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体
(B)ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物
(C)非極性炭化水素系オイル

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋(加硫)可能なゴム組成物に関し、耐熱性、非汚染性に優れ、ポッティング材、電気・電子部品材料用封止材をはじめとする電気・電子部品材料に適した架橋(加硫)可能なゴム組成物に関し、さらに詳しくは加工性及び非汚染性が共に優れる架橋(架硫)可能なゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポッティング材、電気・電子部品材料用封止材をはじめとする電気・電子部品材料には、耐熱性、非汚染性、環境衛生性に加え、加工性(低粘度)が求められる。
【0003】
一方、エチレン・プロピレンゴムのようなポリオレフィン系の架橋ゴム材料は耐熱性、非汚染性に優れる材料であり、これらの用途に有望であり好適である。
【0004】
しかしながら、ポッティング材、電気・電子部品材料用封止材をはじめとする電気・電子部品材料には、加工性(低粘度)が求められるが、ポリオレフィン系の架橋ゴム材料は、一般にその粘度が高く加工性が不十分である。
【0005】
そこで、ポリオレフィン系の架橋ゴム材料の加工性(低粘度)を改良するため、パラフィンオイル等の可塑材を配合する方法が知られているが、加工及び非汚染性を共に達成するまでには至っていない。
【0006】
さらに、ポッティング材、電気・電子部品材料用封止材などにおいて、主に用いられるシリコ−ン等の液状樹脂を配合すると、配合量の増加と共に非汚染性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−279027
【特許文献2】特開2008−88384
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、ポッティング材、電気・電子部品材料用封止材をはじめとする電気・電子部品材料にポリオレフィン系の架橋ゴム材料を用いる際において、加工性と非汚染性を両立させ十分に改良することが課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、可塑剤として非極性炭化水素系オイルを用いることにより、特にエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることにより、ゴム成分である低分子量のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体との相溶性が高く、加工性と非汚染性を共に改良することができることに基づく。
【0010】
すなわち本発明は、少なくとも、成分(A)100重量部に対し、成分(B)を0.1〜100重量部、及び成分(C)を10〜1000重量部を含む、混合後の25℃での粘度が0.01Pa・s〜10000Pa・sであることを特徴とする架橋(加硫)可能なゴム組成物に関する。
(A)エチレン、炭素数3から20のα−オレフィン、及び下記一般式[ I ]または[ I I ]で表わされる少なくとも一種類の非共役ポリエンから導かれる構成単位を有し、以下の(イ)〜(ハ)を満足するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体
(イ)エチレン単位/α−オレフィン単位のモル比が、35/65〜95/5
(ロ)ヨウ素価が0.5〜50グラム/100グラム
(ハ)135℃のデカリン溶液で測定した極限粘度[η]が0.01〜5dl/g
【0011】
【化1】

【0012】
[ 式中、nは0ないし10の整数であり、Rは水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、Rは水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基である ]、
【0013】
【化2】

【0014】
[式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基である]
(B)ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物
(C)非極性炭化水素系オイル
さらに本発明は、上記の架橋(加硫)可能なゴム組成物において、非極性炭化水素系オイル(C)が、40℃動的粘度で1〜10000mm/sであることを特徴とする上記の架橋(加硫)可能なゴム組成物に関する。
【0015】
さらに本発明は、非極性炭化水素系オイルが、エチレン・α−オレフィンオリゴマ−であることを特徴とする上記の架橋(加硫)可能なゴム組成物に関する。
【0016】
さらに本発明は、上記の架橋(加硫)可能なゴム組成物を架橋(加硫)して得られることを特徴とする架橋ゴム成形品に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、可塑剤として非極性炭化水素系オイルを用いることにより、特にエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることにより、ゴム成分である低分子量のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体との相溶性が高く、加工性と非汚染性を共に改良することができ、かつ、エチレン・プロピレンゴムのようなポリオレフィン系の架橋ゴム材料の耐熱性、非汚染性の性能を十分に発揮することができ、ポッティング材、電気・電子部品材料用封止材をはじめとする電気・電子部品材料への利用を可能とすることができ、シリコンや化合物半導体などの半導体チップや、セラミックスの抵抗体やコンデンサチップ等を封止、保護する用途のためのベ−ス材料や、電極や配線などを封止・保護するためのベ−ス材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の架橋(加硫)可能なゴム組成物は、上記の成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含む組成物である。
【0019】
本発明の架橋(加硫)可能なゴム組成物を構成する上記の各成分について説明する。
【0020】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)
成分(A)は、エチレン、炭素数3から20のα−オレフィン、及び下記一般式[I]または[II]で表わされる少なくとも一種類の非共役ポリエンから導かれる構成単位を有し、以下の(イ)〜(ハ)を満足するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体である。
【0021】
(イ)エチレン単位/α−オレフィン単位のモル比が、35/65〜95/5
(ロ)ヨウ素価が0.5〜50(グラム(g)/100グラム(g))
(ハ)135℃のデカリン溶液で測定した極限粘度[η]が0.01〜5(dl/g)
【0022】
【化3】

【0023】
[式中、nは0ないし10の整数であり、Rは水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、Rは水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基である]、
【0024】
【化4】

【0025】
[式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基である]
【0026】
本発明に用いられるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンと、非共役ポリエンとの共重合体、好ましくはランダム共重合体である。このような炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどが挙げられる。中でも、炭素原子数3〜10のα−オレフィンが好ましく、特にプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが好ましく用いられる。
【0027】
これらのα−オレフィンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いられる。本発明で用いられる非共役ポリエンは、上記の一般式[I]または[II]で表わされる末端ビニル基含有ノルボルネン化合物である。
【0028】
一般式[ I ]において、nは0ないし10の整数であり、R は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R の炭素原子数1〜10のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
【0029】
は水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基である。R の炭素原子数1〜5のアルキル基の具体例としては、上記R の具体例のうち、炭素原子数1〜5のアルキル基が挙げられる。
【0030】
一般式[II]において、R は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基である。Rのアルキル基の具体例としては、上記R のアルキル基の具体例と同じアルキル基を挙げることができる。
【0031】
上記一般式[I]または[II]で表わされるノルボルネン化合物としては、具体的には、
5−メチレン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、
5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、
5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、
5−(1−メチル−2−プロペニル)−2−ノルボルネン、
5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、
5−(1−メチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、
5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、
5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、
5−(2,3−ジメチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、
5−(2−エチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、
5−(6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、
5−(3−メチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、
5−(3,4−ジメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、
5−(3−エチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、
5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、
5−(2−メチル−6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、
5−(1,2−ジメチル−5−ヘキセシル)−2−ノルボルネン、
5−(5−エチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、
5−(1,2,3−トリメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン
など挙げられる。
このなかでも、
5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、
5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、
5−(3−ブテニル )−2−ノルボルネン、
5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、
5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、
5−(6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、
5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン
が好ましい。
これらのノルボルネン化合物は、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
上記のようなエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、以下のような特性を有している。
【0033】
(イ)エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとのモル比(エチレン/α−オレフィン)
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、(a)エチレンで導かれる単位と(b)炭素原子数3〜20のα−オレフィン(以下単にα−オレフィンということがある)から導かれる単位とを、35/65〜95/5、好ましくは50/50〜90/10のモル比[(a)/(b)]で含有している。
【0034】
このモル比が上記範囲内にあると、耐熱老化性、強度特性及びゴム弾性に優れるとともに、耐寒性及び加工性に優れた架橋ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られる。
(ロ)ヨウ素価
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)のヨウ素価は、0.5〜50(グラム(g)/100グラム(g)))である。
【0035】
ヨウ素価が0.5(g/100g)未満では架橋速度が遅くなり、50(g/100g)を越えると長鎖分岐が多く、加工性悪化を招くため、好ましくない。
(ハ)135℃のデカリン溶液で測定した極限粘度[η]
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の極限粘度[η](135℃のデカリン溶液で測定)は、0.01〜5(dl/g)である。特に好ましくは0.01〜3(dl/g)、さらに好ましくは0.02〜2.8(dl/g)である。極限粘度[η]が0.01未満では、加工性悪化のおそれ、強度不足の傾向があり、また5(dl/g)を越えても加工性が悪化する。
【0036】
本発明においては、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)として、上記(イ)、(ロ)及び(ハ)の物性の他に、下記(ニ)の分子量分布(Mw/Mn)を有することが望ましい。
(ニ)分子量分布(Mw/Mn)
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)のGPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)は、2〜200、好ましくは2〜150、さらに好ましくは2〜100である。
【0037】
この分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内にあると、加工性に優れるとともに、強度特性に優れた架橋ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られる。
【0038】
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、下記化合物(D)及び(E)を主成分として含有する触媒の存在下に、重合温度30〜60℃、特に30〜59℃、重合圧力4〜50kgf/cm、特に5〜40kgf/cm 、非共役ポリエンとエチレンとの供給量のモル比(非共役ポリエン/エチレン)0.01〜0.2の条件で、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンと、上記一般式[I]または[II]で表わされる末端ビニル基含有ノルボルネン化合物とを共重合、特にランダム共重合することにより得られる。共重合は、炭化水素媒体中で行なうのが好ましい。
【0039】
(D)VO(OR)3−n(式中、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、nは0または1〜3の整数である)で表わされる可溶性バナジウム化合物、またはVX(Xはハロゲン原子である)で表わされるバナジウム化合物。
【0040】
上記可溶性バナジウム化合物(D)は、重合反応系の炭化水素媒体に可溶性の成分であり、具体的には、一般式 VO(OR)aXbまたはV(OR)cXd(式中、Rは炭化水素基であり、0≦a≦3、0≦b≦3、2≦a+b≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦c+d≦4)で表わされるバナジウム化合物、あるいはこれらの電子供与体付加物を代表例として挙げることができる。
【0041】
より具体的には、VOCl 、VO(OC )Cl 、VO(OC Cl、VO(O−iso−C )Cl 、VO(O−n−C )Cl 、VO(OC 、VOBr、VCl 、VOCl 、VO(O−n−C、VCl ・2OC12 OHなどを例示することができる。
(E)R'm AlX'3−m (R’は炭化水素基であり、X’はハロゲン原子であり、mは1〜3の整数である)で表わされる有機アルミニウム化合物
上記有機アルミニウム化合物(E)としては、具体的には、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムエトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド等のアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;R0.5Al(OR0.5などで表わされる平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド等のアルキルアルミニウムセスキハライド等のアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド等のジアルキルアルミニウムヒドリド等のアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリドなどの部分的にアルコキシ化及びハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0042】
本発明において、上記化合物(D)のうち、VOClで表わされる可溶性バナジウム化合物と、上記化合物(E)のうち、Al(OC Cl/Al(OC Cl のブレンド物(ブレンド比は1/5以上)を触媒成分として使用すると、ソックスレ−抽出(溶媒:沸騰キシレン、抽出時間:3時間、メッシュ:325)後の不溶解分が1%以下であるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)が得られるので好ましい。
【0043】
また、上記共重合の際に使用する触媒として、いわゆるメタロセン触媒を用いることも行われ、後記する無極性炭化水素系オイルとして好適なエチレン・α−オレフィン共重合体を製造する際に用いられる触媒も利用することができる。
【0044】
また、本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、極性モノマ−たとえば不飽和カルボン酸またはその誘導体(たとえば酸無水物、エステル)でグラフト変性されていてもよい。
【0045】
このような不飽和カルボン酸としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ビシクロ(2,2,1) ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸などが挙げられる。
【0046】
不飽和カルボンの酸無水物としては、具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、ビシクロ(2,2,1) ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。これらの中でも、無水マレイン酸が好ましい。
【0047】
不飽和カルボン酸エステルとしては、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、ビシクロ(2,2,1) ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸ジメチルなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
【0048】
上記の不飽和カルボン酸等のグラフト変性剤(グラフトモノマ−)は、それぞれ単独または2種以上の組み合わせで使用されるが、何れの場合も前述したグラフト変性前のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100g当たり、0.1モル以下のグラフト量にするのがよい。
【0049】
上記のようなグラフト量が上記範囲にあるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)を用いると、耐寒性に優れた架橋ゴム成形体を提供し得る、流動性(成形加工性)に優れたゴム組成物が得られる。
【0050】
グラフト変性したエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、前述した未変性のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体と不飽和カルボン酸またはその誘導体とを、ラジカル開始剤の存在下に反応させることにより得ることができる。
【0051】
このグラフト反応は溶液にして行なうこともできるし、溶融状態で行なってもよい。溶融状態でグラフト反応を行なう場合には、押出機の中で連続的に行なうことが最も効率的であり、好ましい。
【0052】
グラフト反応に使用されるラジカル開始剤としては、具体的には、ジクミルパ−オキサイド、ジ−t−ブチルパ−オキサイド、ジ−t−ブチルパ−オキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のジアルキルパ−オキサイド類;t−ブチルパ−オキシアセテ−ト酸等のパ−オキシエステル類;ジシクロヘキサノンパ−オキサイド等のケトンパ−オキサイド類;及びこれらの混合物などが挙げられる。中でも半減期1分を与える温度が130〜200℃の範囲にある有機過酸化物が好ましく、特に、ジクミルパ−オキサイド、ジ−t−ブチルパ−オキサイド、ジ−t−ブチルパ−オキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルクミルパ−オキサイド、ジ−t−アミルパ−オキサイド、t−ブチルヒドロパ−オキサイドなどの有機過酸化物が好ましい。
【0053】
また、不飽和カルボン酸またはその誘導体(たとえば酸無水物、エステル)以外の極性モノマ−としては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、ビニルエステル化合物、塩化ビニルなどが挙げられる。
【0054】
ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物(B)
本発明に用いられるヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物(B)は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と反応し、架橋剤として作用する。このヒドロシリル基含有化合物(B)は、その分子構造に特に制限はなく、従来製造されている例えば線状、環状、分岐状構造あるいは三次元網目状構造の樹脂状物などでも使用可能であるが、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に直結した水素原子、すなわちSiH基を含んでいることが必要である。
【0055】
ヒドロシリル基含有化合物(B)としては、一般組成式R(4−b−c)/2で表わされる化合物を使用することができる。
【0056】
この一般組成式において、R は、脂肪族不飽和結合を除く、炭素原子数1〜10、特に炭素原子数1〜8の置換または非置換の1価炭化水素基であり、このような1価炭化水素基としては、前記R に例示したアルキル基の他に、フェニル基、ハロゲン置換のアルキル基たとえばトリフロロプロピル基を例示することができる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基が好ましく、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0057】
また、bは、0≦b<3、好ましくは0.6<b<2.2、特に好ましくは1.5≦b≦2であり、cは、0<c≦3、好ましくは0.002≦c<2、特に好ましくは0.01≦c≦1であり、かつ、b+cは、0<b+c≦3、好ましくは1.5<b+c≦2.7である。
【0058】
このヒドロシリル基含有化合物(B)は、1分子中のケイ素原子数が好ましくは2〜1000個、特に好ましくは2〜300個、最も好ましくは3〜200個のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等のシロキサンオリゴマ−;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノ−ル基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノ−ル基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等からなるシリコ−ンレジンなどを挙げることができる。
【0059】
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、たとえば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0060】
(CH ) SiO−(−SiH(CH)−O−)d−S(CH )
[式中のdは2以上の整数である。]
分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
(CH )O−(−S(CH ) −O−)e −(−SH(CH )−O−)f −S(CH )
[式中のeは1以上の整数であり、fは2以上の整数である。]
分子鎖両末端シラノ−ル基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、たとえば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0061】
HOS(CH ) O−(−SH(CH )−O−) −S(CH )
分子鎖両末端シラノ−ル基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、たとえば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0062】
HOS(CH ) O−(−Si(CH) −O−)e −(−SH(CH)−O−)f−S(CH ) OH
[式中のeは1以上の整数であり、fは2以上の整数である。]
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンとしては、たとえば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0063】
HS(CH ) O−(−S(CH ) −O−)e −S(CH )
[式中のeは1以上の整数である。]
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサンとしては、たとえば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0064】
HS(CH ) O−(−SH(CH )−O−)e−S(CH )
[式中のeは1以上の整数である。]
分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、たとえば下式で示される化合物、さらには下式においてメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換した化合物などが挙げられる。
【0065】
HS(CH ) O−(−S(CH ) −O−)e −(−SH(CH )−O−)h −S(CH )
[式中のe及びhは、それぞれ1以上の整数である。]
このような化合物は、公知の方法により製造することができ、たとえばオクタメチルシクロテトラシロキサン及び/またはテトラメチルシクロテトラシロキサンと、末端基となり得るヘキサメチルジシロキサンあるいは1,3−ジハイドロ−1,1,3,3− テトラメチルジシロキサンなどの、トリオルガノシリル基あるいはジオルガノハイドロジェンシロキシ基を含む化合物を、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下に、−10℃〜+40℃程度の温度で平衡化させることによって容易に得ることができる。
【0066】
上記のヒドロシリル基含有化合物(B)は、単独でも任意に選択した2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
【0067】
ヒドロシリル基含有化合物(B)は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、一般に0.5〜100重量部、好ましくは1〜70重量部、さらに好ましくは1〜30重量部である。
【0068】
ヒドロシリル基含有化合物(B)がこの範囲内の割合で用いると、耐圧縮永久歪み性に優れるとともに、架橋密度が適度で強度特性及び伸び特性に優れた架橋ゴム成形体を形成できるゴム組成物が得られる。100重量部を超えて用いると、コスト的に不利になるので好ましくない。
【0069】
好ましいヒドロシリル基含有化合物としては、具体的には、((C)Si(OSi(CHH))、(CSi(OSi(CHH)、Si(CHO(SiH(CH)O)Si(CHO(SiH(C)O)Si(CHOCH等が挙げられる。
【0070】
非極性炭化水素系オイル(C)
本発明において用いられる非極性炭化水素系オイルとしては、その40℃動的粘度で1〜10000mm/sであるものが好適である。
【0071】
40℃での動粘度が1mm/s未満のオイルは、揮発しやすい低分子量成分が多いため耐熱性が悪化するおそれがある。一方、10000mm/sを越えると、高分子量成分が多くなり粘性が不十分となり、加工性の改良効果が少なくなる。
【0072】
本発明においては、非極性炭化水素系オイルとして、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる非極性炭化水素系オイルは、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)との相溶性がよく特に好適である。
【0073】
このようなエチレン・α―オレフィン共重合体からなる非極性炭化水素系オイルは、エチレンと炭素数3〜20のα―オレフィンとの共重合体であり、α―オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチルー1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンの直鎖状のα−オレフィンや、4−メチル−ペンテン、8−メチル−1−ノネン、7−メチル−1−デセン、6−メチル−1−ウンデセン、6,8−ジメチル−1−デセンなどの分岐を有するα−オレフィンを挙げることができるが、好ましくは直鎖状のα−オレフィンであり、これらの一種類あるいは2種類以上が必要に応じて用いられる。また、このようなエチレン−α−オレフィン共重合体は、特にランダム共重合体であることが好ましく、一般に、エチレンの構成単位が5モル%から95モル%、α―オレフィンの構成単位が95モル%から5モル%(エチレンとα−オレフィンの合計で100モル%とする)である。
【0074】
さらに、このようなエチレン−α−オレフィン共重合体は、一般にその数平均分子量(Mn)が100〜30000、好ましくは100から20000である。
【0075】
数平均分子量(Mn)が100未満となると、揮発しやすい低分子量成分が多くなり、耐熱性が悪化するおそれがある。一方、数平均分子量(Mn)が30000を越えると、高分子量成分が多くなり、加工性の改良効果が少なくなる。
【0076】
また、その分子量分布(Mw/Mn)は一般に、1.1から3であり、その中でも、1.1〜2.5が好適である。
【0077】
分子量分布(Mw/Mn)が3を超えると、一般的に揮発しやすい低分子量成分が多くなり、耐熱性が悪化するおそれがある。
【0078】
さらに、このようなエチレン−α−オレフィン共重合体における分子片末端の不飽和基の含有率が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下である。
【0079】
これらのエチレン−α−オレフィン共重合体を製造する方法としては、特開平3−179005号公報、特開平3−193796号公報、特開平6−122718号公報、特開平8−239414号公報、特開平10−087716号公報、特開2000−212194号公報に記載されているような、α−オレフィン系ポリマーを製造する際に使用される触媒を用いる方法がある。
【0080】
具体的には、例えば、遷移金属化合物が周期表第4族の遷移金属化合物(X)と、(Y)
(Y−1)有機金属化合物、
(Y−2)有機アルミニウム化合物、
(Y−3)有機アルミニウムオキシ化合物、
(Y−4)前記第4族遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、
とから選ばれる少なくとも1種以上の化合物とからなるオレフィン重合用触媒の存在下にエチレンとα−オレフィンを共重合することにより得ることができる。
【0081】
遷移金属化合物(X)として、具体的には、四塩化チタン、ジメチルチタニウムジクロライド、テトラベンジルチタン、テトラベンジルジルコニウム、テトラブトキシチタンなどを例示することができる。また非架橋性または架橋性メタロセン化合物としては、シクロペンタジエニル骨格を有する周期律表第4族の遷移金属化合物があり、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、例えばシクロペンタジエニル基、アルキル置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、アルキル置換インデニル基、4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、アルキル置換フルオレニル基などを例示することができる。これらの基はハロゲン原子、トリアルキルシリル基などが置換していてもよい。これらのシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を2個以上含む場合、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子同士は、アルキレン基、置換アルキレン基、シリレン基、置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。また、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、例えばシクロペンタジエニル基;メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、メチルエチルシクロペンタジエニル基、プロピルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、ブチルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基などのアルキル置換シクロペンタジエニル基;インデニル基;4,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、2−メチルインデニル、テトラヒドロインデニル、2−メチルテトラヒドロインデニル、2,4,4−トリメチルテトラヒドロインデニル、フルオレニル;ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、オクタヒドロジベンゾフルオレニル、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル等などを例示することができる。
【0082】
これらの具体的には、シクロペンタジエニルトリクロライド、シクロペンタジエニルジルコニウムトリクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド等を含むビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(1,3−ジエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド等を含むビス(ジエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(1−インデニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(メチル−tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド等がある。
【0083】
このようにして製造させるエチレン−α−オレフィン共重合体として、三井化学(株)から商品名「ル−カント」(登録商標)で市販されているものなどが挙げられる。
【0084】
これらの非極性炭化水素系オイル、特にエチレン−α−オレフィン共重合体の組成物中での割合は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、10〜1000重量部、好ましくは10〜800重量部、さらに好ましくは10〜500重量部である。
【0085】
これら非極性炭化水素系オイル、特にエチレン−α−オレフィン共重合体をこの範囲内の割合で用いると、耐圧縮永久歪み性に優れるとともに、架橋密度が適度で強度特性及び伸び特性に優れた架橋ゴム成形体を形成できるゴム組成物が得られる。
【0086】
触媒(F)
本発明の組成物において、任意成分として用いられる触媒(F)は、付加反応触媒であり、上記エチレン・α− オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)成分のアルケニル基及びヒドロシリル基含有化合物(B)のヒドロシリル基との付加反応(アルケンのヒドロシリル化反応)を促進するものであれば特に制限はなく、たとえば白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族元素よりなる付加反応触媒(周期律表8族金属、8族金属錯体、8族金属化合物等の8族金属系触媒)を挙げることができ、中でも、白金系触媒が好ましい。
【0087】
好適な白金触媒としては、通常、付加硬化型の硬化に使用される公知のものでよく、例えば米国特許第2,970,150号明細書に記載の微粉末金属白金触媒、米国特許第2,823,218号明細書に記載の塩化白金酸触媒、米国特許第3,159,601号公報明細書および米国特許第159,662号明細書に記載の白金と炭化水素との錯化合物、米国特許第3,516,946号明細書に記載の塩化白金酸とオレフィンとの錯化合物、米国特許第3,775,452号明細書および米国特許第3,814,780号明細書に記載の白金とビニルシロキサンとの錯化合物などが挙げられる。
【0088】
より具体的には、白金の単体(白金黒)、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、あるいはアルミナ、シリカ等の担体に白金の担体を担持させたものなどが挙げられる。それらは、単独でも選択した2種以上を任意の割合で混合して使用することもできる。
【0089】
ヒドロシリコン架橋用の触媒(F)の量は、上記エチレン・α− オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)に対して、0.1〜100000重量ppmである。好ましくは0.1〜50000重量ppm、さらに好ましくは0.1〜30000重量ppmである。0.1重量ppm以下では架橋速度が遅くなり、また、100000重量ppmを超える割合で用いると、コスト的に不利になるので好ましくない。上記範囲内の割合でヒドロシリコン架橋用の触媒(F)を用いると、架橋密度が適度で強度特性および伸び特性に優れる加硫ゴム成形体を形成できるゴム組成物が得られる。
【0090】
また、本発明においては、上記触媒(F)を含まないゴム組成物の未架橋ゴム成形体に、光、γ線、電子線等を照射して架橋ゴム成形体を得ることもできる。
【0091】
反応抑制剤(G)
本発明において触媒(F)と共に任意成分として用いられる反応抑制剤(G)としては、ベンゾトリアゾ−ル、エチニル基含有化合物(たとえばエチニルシクロヘキサノ−ル、3,7,11−トリメチル−3−ヒドロキシ−1−ドデシン、3,7,11−トリエチル−3−ヒドロキシ−1−ドデシン、4−エチル−1−オクチン−3−オール等)、アクリロニトリル、アミド化合物(たとえばN,N−ジアリルアセトアミド、N,N−ジアリルベンズアミド、N,N,N',N'−テトラアリル−o−フタル酸ジアミド、N,N,N',N'−テトラアリル−m−フタル酸ジアミド、N,N,N',N'−テトラアリル−p−フタル酸ジアミド等)、イオウ、リン、窒素、アミン化合物、イオウ化合物、リン化合物、スズ、スズ化合物、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、ハイドロパ−オキサイド等の有機過酸化物などが挙げられる。エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)が有するアルケニル基と、(B)ヒドロシリル基含有化合物のヒドロシリル基との架橋反応を抑制する。この架橋反応の抑制は、混練時及び成形時での加工性を安定させるために必要である。
【0092】
反応抑制剤(G)は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、0〜50重量部、通常0.01〜50重量部、好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.01〜20重量部、さらに好ましくは0.01〜10重量部、特に好ましくは0.01〜5重量部の割合で用いられる。
【0093】
0.01重量部以下の割合で反応抑制剤(G)を用いると、架橋スピ−ドが速く、架橋ゴム成形体の生産性に優れたゴム組成物が得られる。50重量部を超える割合で反応抑制剤(G)を用いると、コスト的に不利になるので好ましくない。
【0094】
その他の成分本発明に係る架橋可能なゴム組成物は、未架橋のままでも用いることができるが、架橋ゴム成形体あるいは架橋ゴム発泡成形体のような架橋物として用いた場合に最もその特性を発揮することができる。
【0095】
本発明に係る架橋可能なゴム組成物中に、意図する架橋物の用途等に応じて、従来公知のゴム補強剤、無機充填剤、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、加硫促進剤、有機過酸化物、架橋助剤、発泡剤、発泡助剤、着色剤、分散剤、難燃剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0096】
上記ゴム補強剤は、架橋ゴムの引張強度、引き裂き強度、耐摩耗性などの機械的性質を高める効果がある。このようなゴム補強剤としては、具体的には、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等のカ−ボンブラック、シランカップリング剤などにより表面処理が施されているこれらのカ−ボンブラック、微粉ケイ酸、シリカなどが挙げられる。
【0097】
シリカの具体例としては、煙霧質シリカ、沈降性シリカなどが挙げられる。これらのシリカは、ヘキサメチルジシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の反応性シランあるいは低分子量のシロキサン等で表面処理されていてもよい。また、これらシリカの比表面積(BED法)は、好ましくは50m /g以上、より好ましくは100〜400m /gである。
【0098】
これらのゴム補強剤の種類及び配合量は、その用途により適宜選択できるが、ゴム補強剤の配合量は通常、エチレン・α− オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、最大300重量部、好ましくは最大200重量部である。
【0099】
これらの無機充填剤としては、具体的には、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレ−などが挙げられる。これらの無機充填剤の種類及び配合量は、その用途により適宜選択できるが、無機充填剤の配合量は通常、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、最大300重量部、好ましくは最大200重量部である。
【0100】
本発明で用いられるアミン系老化防止剤としては、ジフェニルアミン類、フェニレンジアミン類などが挙げられる。ジフェニルアミン類としては、具体的には、p−(p−トルエン・スルホニルアミド)−ジフェニルアミン、4,4'−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4'−ジオクチル・ジフェニルアミン、ジフェニルアミンとアセトンとの高温反応生成物、ジフェニルアミンとアセトンとの低温反応生成物、ジフェニルアミンとアニリンとアセトンとの低温反応物、ジフェニルアミンとジイソブチレンとの反応生成物、オクチル化ジフェニルアミン、ジオクチル化ジフェニルアミン、p,p’−ジオクチル・ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミンなどが挙げられる。
【0101】
フェニレンジアミン類としては、具体的には、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N− イソプロピル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N'− ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N'−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、N,N'−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N'−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N'−ビス(1−エチル−3− メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニルオクチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン類などが挙げられる。
【0102】
これらの中でも、特に4,4'−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N'−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンが好ましい。これらの化合物は、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0103】
本発明で用いられるヒンダ−ドフェノ−ル系老化防止剤としては、具体的には
(1)1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニルブタン、
(2)4,4'−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、
(3)2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、
(4)7−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネ−ト、
(5)テトラキス−[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−トメタン、
(6)ペンタエリスリト−ル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]、
(7)トリエチレングリコ−ル−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]、
(8)1,6−ヘキサンジオ−ル−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]、
(9)2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5− ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、
(10)トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレ−ト、
(11)2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]、
(12)N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)−ヒドロシンナアミド、
(13)2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾ−ル、
(14)3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−ホスホネ−ト−ジエチルエステル、
(15)テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメイト)]メタン、
(16)オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル、
(17)3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4−8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン
などを挙げることができる。中でも、特に(5)、(17)のフェノ−ル化合物が好ましい。
【0104】
本発明で用いられるイオウ系老化防止剤としては、通常ゴムに使用されるイオウ系老化防止剤が用いられる。具体的には、2−メルカプトベンゾイミダゾ−ル、2−メルカプトベンゾイミダゾ−ルの亜鉛塩、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾ−ル、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾ−ルの亜鉛塩、2−メルカプトメチルイミダゾ−ルの亜鉛塩等のイミダゾ−ル系老化防止剤;ジミリスチルチオジプロピオネ−ト、ジラウリルチオジプロピオネ−ト、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジトリデシルチオジプロピオネ−ト、ペンタエリスリト−ル−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネ−ト)等の脂肪族チオエ−テル系老化防止剤などを挙げることができる。これらの中でも、特に2−メルカプトベンゾイミダゾ−ル、2−メルカプトベンゾイミダゾ−ルの亜鉛塩、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾ−ル、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾ−ルの亜鉛塩、ペンタエリスリト−ル−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネ−ト)が好ましい。
【0105】
上記の加工助剤としては、通常のゴムの加工に使用される化合物を使用することができる。具体的には、リシノ−ル酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸の塩;リシノ−ル酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸のエステル類などが挙げられる。
【0106】
このような加工助剤は、通常、エチレン・α− オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)とヒドロシリル基含有化合物(B)との合計量100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは5重量部以下の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0107】
本発明においては、上述した触媒(F)の他に有機過酸化物を使用して、付加架橋とラジカル架橋の両方を行なってもよい。有機過酸化物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部に対し、0.1〜10重量部程度の割合で用いられる。有機過酸化物としては、ゴムの架橋の際に通常使用されている従来公知の有機過酸化物を使用することができる。
【0108】
また、有機過酸化物を使用するときは、架橋助剤を併用することが好ましい。架橋助剤としては、具体的には、イオウ;p− キノンジオキシム等のキノンジオキシム系化合物;ポリエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト等のメタクリレ−ト系化合物;ジアリルフタレ−ト、トリアリルシアヌレ−ト等のアリル系化合物;マレイミド系化合物;ジビニルベンゼンなどが挙げられる。このような架橋助剤は、使用する有機過酸化物1モルに対して0.5〜2モル、好ましくは約等モルの量で用いられる。
【0109】
上記の発泡剤としては、具体的には、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N'− ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミド、N,N'− ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレ−ト等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'− オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホルニルアジド等のアジド化合物などが挙げられる。
【0110】
これらの発泡剤は、エチレン・α− オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)とヒドロシリル基含有化合物(B)との合計量100重量部に対して、0.5〜30重量部、好ましくは1〜20重量部の割合で用いられる。上記のような割合で発泡剤を用いると、比重0.03〜0.8g/cm の発泡体を製造することができるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0111】
また、必要に応じて、発泡剤と併用して、発泡助剤を使用してもよい。発泡助剤は、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化などの作用をする。このような発泡助剤としては、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、しゅう酸等の有機酸、尿素またはその誘導体などが挙げられる。
【0112】
これらの発泡助剤は、エチレン・α− オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0113】
また、本発明に係る架橋可能なゴム組成物中に、本発明の目的を損なわない範囲で、公知の他のゴムとブレンドして用いることができる。このような他のゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などのイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などの共役ジエン系ゴムを挙げることができる。
【0114】
ゴム組成物及びその架橋ゴム成形体の調製
上述したように、本発明に係る架橋可能なゴム組成物は、未架橋のままでも用いることもできるが、架橋ゴム成形体あるいは架橋ゴム発泡成形体のような架橋物として用いた場合に最もその特性を発揮することができる。
【0115】
本発明に係る架橋可能なゴム組成物から架橋物を製造するには、通常一般のゴムを加硫(架橋)するときと同様に、未架橋の配合ゴムを一度調製し、次いで、この配合ゴムを意図する形状に成形した後に架橋を行なえばよい。
【0116】
架橋方法としては、架橋剤(ヒドロシリル基含有化合物(B))を使用して加熱する方法、または光、γ線、電子線照射による方法のどちらを採用してもよい。
【0117】
まず、本発明に係る架橋可能なゴム組成物は、たとえば次のような方法で調製される。
【0118】
すなわち、本発明に係る架橋可能なゴム組成物は、バンバリ−ミキサ−、ニ−ダ−、インタ−ミックスのようなインタ−ナルミキサ−(密閉式混合機)類により、エチレン・α− オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)、非極性炭化水素系オイル(C)及び必要に応じてゴム補強剤、無機充填剤、軟化剤などの添加剤を好ましくは80〜170℃の温度で3〜10分間混練した後、オ−プンロ−ルのようなロ−ル類、あるいはニ−ダ−を使用して、ヒドロシリル基含有化合物(B)、及び必要に応じて触媒(F)、反応抑制剤(G)、加硫促進剤、架橋助剤、発泡剤、発泡助剤を追加混合し、好ましくはロ−ル温度80℃以下で1〜30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。
【0119】
本発明においては、エチレン・α− オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)、非極性炭化水素系オイル(C)及びゴム補強剤、無機充填剤等とは高温で混練りすることができるが、ヒドロシリル基含有化合物(B)と触媒(F)とは同時に高温で混練りすると、架橋(スコ−チ)してしまうことがあるため、ヒドロシリル基含有化合物(B)と触媒(F)とを同時に添加する場合は、80℃以下で混練りすることが好ましい。ヒドロシリル基含有化合物(B)と触媒(F)のうち、一方の成分を添加する場合は80℃を超える高温でも混練りすることができる。なお、混練りによる発熱に対して、冷却水を使用することも場合によっては好ましい。
【0120】
また、インタ−ナルミキサ−類での混練温度が低い場合には、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)、ヒドロシリル基含有化合物(B)、非極性炭化水素系オイル(C)、ゴム補強剤、無機充填剤、軟化剤などとともに、老化防止剤、着色剤、分散剤、難燃剤、発泡剤などを同時に混練してもよい。
【0121】
上記のようにして調製された、本発明に係る架橋可能なゴム組成物は、押出成形機、カレンダ−ロ−ル、プレス、インジェクション成形機、トランスファ−成形機などを用いる種々の成形法より、意図する形状に成形され、成形と同時にまたは成型物を加硫槽内に導入し、架橋することができる。120〜270℃の温度で1〜30分間加熱するか、あるいは前記した方法により光、γ線、電子線を照射することにより架橋物が得られる。この架橋の段階は金型を用いてもよいし、また金型を用いないで架橋を実施してもよい。金型を用いない場合は成形、架橋の工程は通常連続的に実施される。加硫槽における加熱方法としては、熱空気、ガラスビ−ズ流動床、UHF(極超短波電磁波)、スチ−ムなどの加熱槽を用いることができる。
【0122】
また、分子量の低いエチレン・α− オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)を用いる場合には、共重合体(A)が液体状態にあるため、液体の状態でヒドロシリル基含有化合物(B)、非極性炭化水素系オイル(C)を混合し、必要に応じて触媒(F)、反応抑制剤(G)、発泡剤、発泡助剤を混合し、意図する形状の金型に流し室温で架橋させることができる。
【0123】
発明に係る架橋可能なゴム組成物から得られる架橋ゴム成形体は、自動車用ウェザ−ストリップ;自動車用ホ−ス、送水用ホ−ス、ガス用ホ−ス等のホ−ス;自動車用防振ゴム、鉄道用防振ゴム、産業機械用防振ゴム、建築用免震ゴム等の防振ゴム;伝動ベルト、搬送用ベルト等のベルト;自動車用カップ・シ−ル材、産業機械用シ−ル材等のシ−ル材;自動車用ウェザ−ストリップスポンジ、建築用シ−ルスポンジ、その他ホ−ス保護用スポンジ、クッション用スポンジ、断熱スポンジ、シンシュレ−ションパイプ等の発泡体;被覆電線、電線ジョイント、電気絶縁部品、半導電ゴム部品;OA機器用ロ−ル、工業用ロ−ル;建築用止水シ−ト、土木用止水シ−ト;雨具、輪ゴム、靴、ゴム手袋、ラッテクス、ゴルフボ−ル等の家庭用品;プラスチック改質用、熱可塑性エラストマ−用、水架橋ゴム用、熱可塑性樹脂改質剤、エンジニアリングプラスチック改質用などの用途に広く用いられる。
【0124】
また、塗料、粘着材、テープ製品、放熱材料、電磁波シールド、輸液キャップ、接着剤、コーティング材、応力吸収材、太陽電池用封止材、LED用等の封止材、Li電池用ガスケット、燃料電池用ガスケット、電線止水材、歯科印象材などにも使用できる。
【0125】
太陽電池の表面封止材、または周縁部封止材として本発明のゴム組成物を用いれば、常温で封止することが可能な上、耐水(耐透湿)性、ゴム弾性、充填性、粘着(接着)性に優れ、従来以上の封止性能を得ることが可能となる。
【0126】
有機薄膜太陽電池のセル内空洞部/封止部又は筐体シール部に本発明のゴム組成物を用いれば筐体内封止と一括した工程で筐体シールも可能となり、工程ロスが減らせる。
【0127】
色素増感型太陽電池の封止材として本発明の組成物を用いれば常温架橋が可能な上、耐水性も向上できる。
【0128】
電線やケーブルの止水処理に使われる材料、電子部品の封止に使われるポッティング材料、建築シーリング用途に使われるシーリング剤、粘着テープ用途に使われる粘着層に本発明のゴム組成物を用いれば、常温架橋が可能な上、耐水性も向上できる。
【0129】
放熱材、電磁波シールド材、静電防止材、導電材、セラミックコンデンサーなどのバインダー、塗料のバインダーに使われる樹脂として本発明のゴム組成物を用いれば、常温架橋、溶剤レス、耐水性向上が可能となる。
【0130】
ガスケット、ゴムパッキンに使われる樹脂として本発明のゴム組成物を用いれば、加工粘度の低下が可能な上、柔軟性を付与しシール性を向上することが可能である。
【0131】
振動制御材、制振部材に使われる樹脂として本発明のゴム組成物を用いれば、その場加工(塗布)、常温架橋、溶剤レスが可能となる。
【0132】
高反発材に使われる樹脂として本発明のゴム組成物を用いれば、その場加工(塗布)、常温架橋、溶剤レス且つ耐水性向上が可能となる。
【0133】
歯科用印象材料に使われる樹脂として本発明のゴム組成物を用いれば、弾性歪が大きく、且つ粘着性コントロールにより易離型性も得られるため印象撤去が容易となる。
【0134】
工業用、事務機器用ゴムロールに使われるポリオレフィン系合成ゴム材料として本発明のゴム組成物を使用することで成形性を改善し高い生産性を発揮できる。
【0135】
ゴムホースに使われる材料として本発明のゴム組成物を用いることで成形性を改善し高い生産性を発揮できる。樹脂レンズとして本発明のゴム組成物を用いれば良成形性と寸法安定性を両立することができる。
【実施例】
【0136】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例に何ら限定されるものではない。
【0137】
なお、実施例、比較例で用いた共重合体の組成、ヨウ素価、極限粘度[η]、分子量分布(Mw/Mn)は次のような方法で測定ないし求めた。
(1)共重合体の組成
共重合体の組成は13C−NMR法で測定した。
(2)共重合体のヨウ素価(g/100g)
共重合体のヨウ素価は、滴定法により求めた。
(3)極限粘度[η]
共重合体の極限粘度[η]は、135゜Cデカリン中で測定した。
(4)粘度評価
東機産業(株)製E型粘度計(RE−105U)を用いて、コ−ンプレ−ト(角度:1°×R24ミリメ−トル(mm)若しくは3°×R14ミリメ−トル(mm)、回転数:0.1〜50rpm、試料量:0.6〜1.0グラム(g)の条件にて測定した。30秒以上同じ値を示した数値を粘度とした。
【0138】
混合後の粘度が0.01Pa・s〜10000Pa・sの範囲に入る場合を○とした。
(5)架橋性評価
150℃×10〜60分加熱したゴム組成物を濾紙で掴み、濾紙表面の付着物の有無を確認した。濾紙表面に付着物がない場合を○とした。
(6)ちょう度評価
架橋したゴム組成物の針入度を測定した。測定はJIS K 2207に準拠した装置を用い、5秒針入させた後の針入度を測定した。1.5ミリメートル(mm)以上針入する場合を○とした。
(7)揮発性評価
架橋したゴム組成物の熱分解温度を評価した。測定装置は、島津製作所製のTGA−51を用いた。TGA−51付属のアルミパンに所定量のサンプルを計り取り、装置の天秤に仕掛けた後、空気雰囲気にて常温から150℃まで昇温した後、60分間の加熱を実施し熱分解挙動(重量減少)を測定した。150℃×60分の加熱にて重量減少が1重量%以下の場合を○とした。
(8)ブリードアウト評価
架橋したゴム組成物の表面を目視により観察し、表面にオイルがブリードアウトしているかを確認した。オイルブリードがない場合を○とした。
【0139】
[実施例1]
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体、ヒドロシリル基含有化合物(B−1,商品名:X93−916)、非極性炭化水素系オイル(C)、可塑材を評価結果一覧表の配合組成に従い秤量した。秤量したサンプルを、(株)THINKY製あわとりれん太郎(AR−250)を用いて300s以上攪拌した。
ゴム組成物にPt触媒を添加し、(株)THINKY製あわとりれん太郎(AR−250)を用いて60s以上攪拌した。真空ポンプを用いて、>1cmHgの条件で5分間以上脱泡した。容器に移し、150℃×10分の加熱により架橋した。
【0140】
[実施例2、比較例1および比較例2]
実施例1に示す配合量をそれぞれ表1に示すように変えた以外は実施例1と同様に行なった。結果を表1に示す。
【0141】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明に係る架橋可能なゴム組成物から得られる架橋ゴム成形体は、自動車用ウェザ−ストリップ;自動車用ホ−ス、送水用ホ−ス、ガス用ホ−ス等のホ−ス;自動車用防振ゴム、鉄道用防振ゴム、産業機械用防振ゴム、建築用免震ゴム等の防振ゴム;伝動ベルト、搬送用ベルト等のベルト;自動車用カップ・シ−ル材、産業機械用シ−ル材等のシ−ル材;自動車用ウェザ−ストリップスポンジ、建築用シ−ルスポンジ、その他ホ−ス保護用スポンジ、クッション用スポンジ、断熱スポンジ、シンシュレ−ションパイプ等の発泡体;被覆電線、電線ジョイント、電気絶縁部品、半導電ゴム部品;OA機器用ロ−ル、工業用ロ−ル;建築用止水シ−ト、土木用止水シ−ト;雨具、輪ゴム、靴、ゴム手袋、ラッテクス、ゴルフボ−ル等の家庭用品;プラスチック改質用、熱可塑性エラストマ−用、水架橋ゴム用、熱可塑性樹脂改質剤、エンジニアリングプラスチック改質用などの用途に広く用いられる。
【0143】
また、塗料、粘着材、テープ製品、放熱材料、電磁波シールド、輸液キャップ、接着剤、コーティング材、応力吸収材、太陽電池用封止材、LED用等の封止材、Li電池用ガスケット、燃料電池用ガスケット、電線止水材、歯科印象材などにも使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、成分(A)100重量部に対し、成分(B)を0.1〜100重量部、及び成分(C)を10〜1000重量部を含む、混合後の25℃での粘度が0.01Pa・s〜10000Pa・sであることを特徴とする架橋可能なゴム組成物。
(A)エチレン、炭素数3から20のα−オレフィン、及び下記一般式[ I ]または[ I I ]で表わされる少なくとも1種類の非共役ポリエンから導かれる構成単位を有し、以下の(イ)〜(ハ)を満足するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体
(イ)エチレン単位/α−オレフィン単位のモル比が、35/65〜95/5
(ロ)ヨウ素価が0.5〜50グラム/100グラム
(ハ)135℃のデカリン溶液で測定した極限粘度[η]が0.01〜5dl/g
【化1】

[ 式中、nは0ないし10の整数であり、Rは水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、Rは水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基である ]、
【化2】

[ 式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基である ]
(B)ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個持つヒドロシリル基含有化合物
(C)非極性炭化水素系オイル
【請求項2】
非極性炭化水素系オイル(C)が、40℃動的粘度で1〜10000mm/sであることを特徴とする請求項1に記載の架橋可能なゴム組成物。
【請求項3】
非極性炭化水素系オイル(C)が、エチレン・α−オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項1または2に記載の架橋可能なゴム組成物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の架橋可能なゴム組成物を架橋して得られることを特徴とする架橋ゴム成形品。

【公開番号】特開2012−214582(P2012−214582A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79809(P2011−79809)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】