説明

架橋性セルロースエステル組成物およびそれから形成されるフィルム

【課題】光学装置において使用するためのフィルムを形成するための新規な組成物を提供する。
【解決手段】組成物は、セルロースおよび架橋剤を、溶媒系中に溶解または分散させて含む。好ましいセルロースは、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートフタレートおよびセルロースアセテートブチレート等のセルロースエステルである。好ましい架橋剤は、メラミンおよびベンゾグアナミンに由来するもの等のトリアジンである。本発明の組成物は、例えば偏光板において使用するための保護フィルムおよび/または補償フィルムを形成するために使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、偏光板および他の光学装置において使用するためのフィルムの形成に対して有用な新規の架橋性セルロース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースエステルフィルムは、種々の光学用途に対して使用されてきた。より最近では、セルロースエステルの、透明性、良好な表面平滑性、光学等方性および最適な気化水分透過率(MVTR)の特異な組み合わせによって液晶ディスプレイにおけるセルロースエステルの用途が見出されている。偏光板用の保護フィルム、光学補償フィルム(位相差板)、他の機能性フィルムのための基体フィルムとして、そして種々の他の機能性フィルム(例えば、プラズマディスプレイ用の反射防止フィルム、有機エレクトロルミネセントディスプレイ用のフィルム)として、セルロースエステルの実用性が見出されている。
【0003】
長年、溶媒キャストセルローストリアセテートフィルムが、これらの材料の丈夫で難燃性である性質から写真用フィルム支持体として用いられてきた。加えて、トリアセテートフィルムはLCD用途用の偏光子の保護層として広く使用されており、溶媒キャストにより与えられるその物理特性および寸法均一性および表面品質により、セルローストリアセテートは多くの光学フィルムに対して第1候補となってきた。
【0004】
溶媒キャストセルロースエステルフィルムの優れた光学特性にも関わらず、該フィルムのキャストにおいて従来使用される溶媒についての環境面の懸案事項により、フィルムの新たな製造方法または新たな種類のフィルム支持体に対する要求が生じている。当該分野において、セルローストリアセテートは、その融点がその分解温度よりも高いために溶融キャストできないことが報告されている。セルローストリアセテートの溶媒キャストに関しては、従来のものと比べてより許容できる、工業用途に対して好適な溶媒がわずかに見出されており、これらは一般的に有毒で環境面で不都合である。溶媒に対する要求を完全に解消するための考えられる方法としては、ポリ(エチレンテレフタレート)等の熱的に安定なポリマーを溶融キャストする方法がある。実際、この種のポリマーはX線フィルムおよび印刷芸術フィルム等の写真用シートフィルム用の支持体の製造に対して工業的に使用されている。しかしこれは、アマチュアカメラ用のロールフィルム等の多種の光学フィルムに対しては好適ではない。この用途では、フィルムスプール上に巻き取られる際にポリエステルフィルムにカールまたは「コアセット」が発生する。セルローストリアセテートにはまた、巻き取られる際にカールが発生する(および所定量のコアセットが望ましい)が、セルロースフィルムが水分に暴露される際に、親水性のセルロースフィルムのカールが緩和され、そしてフィルムが平坦な状態になる。一方、ポリ(エチレンテレフタレート)フィルムでは、そのコアセットが単に湿度では緩和せず、これらは写真用ロールフィルム用には満足できないものである。他のポリマーは、溶媒キャストセルローストリアセテートを溶融キャストフィルムと比べて好ましい光学フィルムとするような特性および能力の組み合わせの1以上を欠く。
【0005】
セルロースヒドロキシル基のエステルは、種々の用途に対して、単独の酸および混酸の両者で幅広い範囲にわたって作られている。セルロースエステルにおいて、既知の置換基によるエステル化の程度は、置換度(DS)として表され、ここで無水グルコースユニット当たりの最大の置換量は典型的には3である。セルロースジアセテート(DSac=2.45)は、トリアセテートと異なり、十分に低い融点を有し、適切な可塑剤の添加で溶融押出しが可能であり、よって、有毒で環境面において不都合な溶媒の必要性を回避できる。混合エステルによって、またはトリアセテートのアセチル基を適量のプロピオン酸、酪酸または他のより高級のエステル基で置換することによって同じ目的が達成される。より低いアセチル量のこれらの公知のセルロースエステル組成物から作られるフィルムは、一般的に、写真用ロールフィルム支持体に対して必要な特性、最も顕著には剛性および加熱たわみ温度、において不十分である。
【0006】
加えて近年では、耐熱性、耐水性、耐化学性、寸法安定性、および機械強度が改善された、より薄く、より軽量で、高度に透明な光学フィルムに対する動きがある。フィルムが薄くなるに従い、幅広い範囲の問題に遭遇する。例えば、フィルムが厚みにおいてより不均一になる場合があり、表面がまだらになる場合があり、紫外(UV)光への耐性が低下する場合があり、MVTRが増大する場合があり、そして寸法安定性が劣る場合がある。
【0007】
偏光板用の保護フィルムに関し、フィルム厚みが低減するに従い、MVTRが増大し、これにより、特に高温高湿環境下で耐久性に劣る偏光板がもたらされる。可塑剤量が増大するとMVTRが低減される可能性があることが公知であるが、可塑剤量が増えることでセルロースエステルフィルムのガラス転移温度(Tg)が低下し、これが該フィルムの寸法安定性の悪化に繋がる。加えて、可塑剤の充填量の増大は、セルロースエステルフィルムの表面への可塑剤の浸出を招来する可能性があり、これにより、不均一な可塑剤の分布またはフィルムウェブもしくはロールの汚染が生じる可能性があることが示されている。
【0008】
偏光板用の保護フィルムとして使用されるセルロースエステルはまた、偏光子をUV光から保護するためにUV吸収剤を含んでも良い。保護フィルムがより薄くなるに従い、該フィルムは十分量のUV光を遮蔽できなくなる。結果として、追加のUV吸収剤が必要であり、これがセルロースエステルから浸出してフィルムウェブもしくはロールを汚染させる場合があり、または、完成したフィルムのヘイズの増大を招来する場合がある。優れたMVTR、優れたフィルム性能および寸法安定性、良好な可塑剤保持力、ならびに良好なUV吸収剤保持力を有する、偏光板用の薄い保護フィルムが求められている。
【0009】
残念ながら、セルロースエステルもLCD用の光学補償フィルムとして使用されている。これらのフィルムは、液晶化合物含有溶液を異方性セルロースエステルフィルム上にコーティングすることによって製造される場合がある。偏光板用の保護フィルムの場合のようにUV吸収剤が補償フィルムに添加される。補償フィルム中のUV吸収剤の浸出は、フィルム中のヘイズを招来する場合があり、または、該浸出が液晶化合物を汚染させ、液晶化合物の障害を招来する場合がある。優れた寸法安定性、優れたフィルム性能、および良好なUV吸収剤保持力を有する偏光板用の光学補償フィルムが求められている。
【0010】
薄いセルロースエステル フィルムは、典型的には、MVTRの増大および寸法安定性の低下を被る。加えて、フィルム厚みが薄くなり、温度が上昇し、そして湿度が上昇する等の特定条件下で、セルロースエステルフィルムが可塑剤および/またはUV吸収剤を浸出させる場合がある。セルロースエステル組成物への代替化合物の添加、セルロースエステルフィルムへのハードコートの適用、またはセルロースエステルに対する代替材料の使用を通じてこれらの問題を扱うことが試みられてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、広範には、改善された寸法安定性およびMVTRを有するフィルムを形成するために使用できる新規な架橋性セルロース組成物を提供することによって、これらの問題を解決する。
【0012】
ある態様において、本発明は、セルロースエステルおよび/またはセルロースエーテルならびにトリアジン架橋剤を、溶媒系中に分散または溶解させて含む組成物を提供する。該組成物は、厚み約0.5から約15milを有する硬化フィルムに形成されたときに、波長約400から700nmを有する光の少なくとも約80%を透過させることができる。
【0013】
他の態様において、光ディスプレイ装置において使用するための偏光板およびこのような板を形成する方法が提供される。該偏光板は、第1および第2の外面を有する偏光フィルムと、これらの外面の少なくともいずれか(そして好ましくは両方)の上に支持されるかまたはこれらの外面の少なくともいずれか(そして好ましくは両方)に隣接する併用フィルム(コンパニオンフィルム:companion film)(例えば、保護フィルム、補償フィルム)とを含む。該併用フィルムは、トリアジン架橋剤と架橋した、セルロースエーテルまたはセルロースエステル等のセルロースを含む。
【0014】
ある態様において、架橋剤は式、
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、各Xは個々にフェニル基および−NR2からなる群から選択される)を有する。各Rは個々に水素、アルコキシアルキル基、カルボキシル基およびヒドロキシメチル基からなる群から選択される。他の態様において、Rの少なくとも1つがアルコキシアルキル基、カルボキシル基およびヒドロキシメチル基からなる群から選択され、Xの少なくとも1つが−NR2であり、そして、Rの少なくとも1つがアルコキシアルキル基、カルボキシル基およびヒドロキシメチル基からなる群から選択される。
【0017】
他の態様において、架橋剤は、式−OR’を有する少なくとも1つの基を含み、式中R’はアルキルである。他の態様において、架橋剤は、好ましくはエポキシ基を含まず、そして式、
【0018】
【化2】

【0019】
を有する基を含まない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、広範には、優れた寸法安定性および気化水分透過率(MVTR)を有する架橋フィルムを形成するために使用できる新規な架橋性セルロース組成物を提供する。本発明はまた、光学装置において使用されることが予定されるフィルムをこれらの組成物を用いて形成する方法を提供する。
【0021】
他の表示がない限り、含有成分、分子量や反応条件等の特性、その他明細書および特許請求の範囲で用いられるもの等の量を表す全ての数は、全ての場合で用語「約」により修飾されることを理解すべきである。よって、逆の表示がない限り、以下の明細書および特許請求の範囲におけるような数値パラメータは、本発明による実現が求められる所望の特性に応じて変動し得る近似である。最低でも、各数値パラメータは、少なくとも記載される有効数字の数を考慮し通常の四捨五入法を適用して解釈すべきである。さらに、この開示および特許請求の範囲で記載される範囲は全範囲を具体的に含みかつ1または2以上の端点のみではないことが意図される。例えば、0から10と記載される範囲は、例えば1、2、3、4等のような0から10の間の全ての整数、例えば1.5、2.3、4.57、6.1113等のような0から10の間の全ての端数、ならびに端点0および10を開示することが意図される。また、例えば「C1からC5の炭化水素」等の化学置換基に関連する範囲は、C1およびC5の炭化水素ならびにC2、C3およびC4の炭化水素を具体的に含みかつ開示することが意図される。
【0022】
本発明の広範な範囲を説明する数値範囲およびパラメータが近似であることに関わらず、具体例において説明される数値は可能な限り厳密に記載される。しかしいずれの数値も、これらのそれぞれの試験測定で見られる標準偏差に起因して本質的にある程度の誤差を必然的に含む。
【0023】
ここに使用される冠詞"a" "an"および"the"は、他を指す明確な記載がない限りこれらの複数の指示対象を含む。例えば、a "polymer"またはa "shaped article"の記載は、複数のポリマーまたは物品を加工または形成することを含むことが意図される。"an" ingredientまたは"a" polymerを有しまたは含む組成物の記載は、名前の挙がったものに加えて他の含有成分または他のポリマーをそれぞれ含むことが意図される。
【0024】
"comprising"または"containing"または"including"によれば、少なくとも名前の挙がった化合物、成分、粒子、または方法ステップ等が組成物または物品または方法に存在するが、他の化合物、触媒、材料、粒子、方法ステップ等の存在は、他のこのような化合物、材料、粒子、方法ステップ等が名前の挙がったものと同じ機能を有しても、明確に排除していない限りは排除されないことが意味される。
【0025】
また、1以上の方法ステップの記載は、組み合わされた列挙されるステップの前もしくは後の追加の方法ステップ、または明確に規定されるこれらのステップの間の途中の方法ステップの存在を排除しないことを理解すべきである。さらに、プロセスステップまたは含有成分の表記は別々の働きまたは含有成分を規定するための便宜的な手段であり、そして列挙された表記は他の記載がない限り任意の配列に並べることができる。
【0026】
本発明の組成物は、好ましくは、セルロースおよび架橋剤を、溶媒系中に溶解または分散されて含む。セルロースは任意の物理形状(例えば、ペレット、粉末、粒、繊維)であることができ、そして好ましくは、セルロースエーテルおよびセルロースエステルからなる群から選択され、セルロースエステルが最も好ましい。ある態様では、セルロースエステルは、ヒドロキシル置換度(すなわち、無水グルコースユニット当たりのヒドロキシル置換基の数)約0.05から約1.5、および好ましくは約0.1から約0.9を有する。好ましいアセチル置換度は約0.01から約3.0である。好ましいプロピオニル置換度は約0.3から約3.0である。好ましいブチリル置換度は約0.01から約3.0であり、一方好ましいカルボキシメチル置換度は約0.01から約0.5である。
【0027】
ある態様において、セルロースは、アセチル基の置換度約1.5から約2.49を有するセルロースアセテートである。他の態様において、セルロースは、アセチル基の置換度約2.81から約3.0、そして好ましくは約2.83から約2.88を有するセルローストリアセテートである。他の態様において、セルロースは、プロピオニル基の置換度約0.3から約3.0を有するセルロースプロピオネートである。他の態様において、セルロースは、ブチリル基の置換度約0.3から約3.0を有するセルロースブチレートである。
【0028】
好ましいセルロースアセテートブチレートは、アセチル基の置換度約0.01から約1.5、より好ましくは約0.03から約1.45を有し、そしてブチリル基の置換度約0.1から約2.9、より好ましくは約0.7から約2.7を有する。好ましいセルロースアセテートプロピオネートは、アセチル基の置換度約0.01から約1.5、およびより好ましくは約0.03から約1.45を有し、そしてプロピオニル基の置換度約0.1から約2.9、およびより好ましくは約0.6から約2.7を有する。
【0029】
好ましいセルロースプロピオネートブチレートは、プロピオニル基の置換度約0.1から約2.9、より好ましくは約0.5から約2.5を有し、そしてブチリル基の置換度約0.1から約2.9、より好ましくは約0.5から約2.5を有する。好ましいカルボキシメチルセルロースアセテートブチレートは、カルボキシメチル基の置換度約0.01から約1.0、より好ましくは約0.05から約0.6;アセチル基の置換度約0.05から約1.0、より好ましくは約0.1から約0.6;そしてブチリル基の置換度約0.5から約2.5、より好ましくは約1.5から約1.8、を有する。
【0030】
好ましいセルロースエステルは、約5,000から約400,000g/mol、より好ましくは約100,000から約300,000g/mol、およびさらにより好ましくは約125,000から約250,000g/molの重量平均分子量を有することができる。絶対分子量を評価するためにはゲル透過クロマトグラフィーを使用できる。この手順においては、50mgのセルロースエステルを、流速マーカーとしてのトルエン10マイクロリットルとともに10mLのテトラヒドロフランに溶解させ、そして50マイクロリットルをPolymer Laboratoriesの屈折率検出カラムセットに注入する。
【0031】
好ましいセルロースエステルは、セルロースのC1−C20エステル、より好ましくはセルロースのC2−C20エステル、およびさらにより好ましくはセルロースのC2−C10エステル、およびさらにより好ましくはセルロースのC2−C4エステルを含む。2級および3級のセルロースエステルもまた好ましい。本発明において使用するために特に好ましいセルロースエステルは、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、セルローストリブチレート、セルロースプロピオネート、セルローストリプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートブチレートサクシネート、セルロースプロピオネートブチレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0032】
ある態様において、セルロースエステルはまた、水素またはC1−C20(より好ましくはC1−C10、およびさらにより好ましくはC2−C8)アルカノイル、C1−C20(より好ましくはC1−C10、およびさらにより好ましくはC2−C8)分岐アルカノイル、C7−C20アロイル、および/またはC2−C20(より好ましくはC1−C10、およびさらにより好ましくはC2−C8)ヘテロアロイル置換基(ここでヘテロ原子は好ましくは窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される)で置換されていても良い。
【0033】
セルロースエステルまたはセルロースエーテルは、100質量%とされる組成物全質量を基にして該組成物が約1質量%から約50質量%のセルロースエステルまたはセルロースエーテル、好ましくは約5質量%から約40質量%のセルロースエステルまたはセルロースエーテル、およびさらにより好ましくは約15質量%から約35質量%のセルロースエステルまたはセルロースエーテルを含むのに十分な量で好ましく用いられる。
【0034】
ある態様において、好ましい架橋剤はトリアジン架橋剤を含む。好ましいトリアジン架橋剤は置換されたメラミンである。ある態様において、置換されたメラミンは式、
【0035】
【化3】

【0036】
(式中、各Xは個々にフェニル基および−NR2からなる群から選択される)を有する。各R2は個々に水素、アルコキシアルキル基(好ましくはC1−C20、より好ましくはC1−C10、およびさらにより好ましくはC1−C6)、アルコキシ基(好ましくはC1−C20、より好ましくはC1−C10、およびさらにより好ましくはC1−C6)、カルボキシル基、およびヒドロキシメチル基からなる群から選択される。ある好ましい態様においては、X基の少なくとも2つが−NR2である。さらにより好ましくは、3つのX全てが−NR2である。
【0037】
好ましくは、R基の少なくとも1つ(より好ましくは少なくとも2つのR基、およびさらにより好ましくは少なくとも4つのR基)が、アルコキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシ基およびヒドロキシメチル基からなる群から選択される。
【0038】
他の好ましい態様においては、全てのR基が、アルコキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシ基およびヒドロキシメチル基からなる群から選択される。この態様に係る好ましい架橋剤は、メトキシメチル基等のアルコキシアルキル基である少なくとも1つのRを含む。
【0039】
他の好ましい態様においては、3つのX基全てが−NR2で、かつ各Rがメトキシメチル基等のアルコキシアルキル基である。このような架橋剤としては、CYMEL(登録商標)303(Cytec Industries,Inc.)の名称で販売されているものがある。
【0040】
他の態様において、架橋剤は、セルロース上の−OH基と反応することができる基を少なくとも1つ(好ましくは少なくとも2つ、およびより好ましくは少なくとも4つ)含む。好ましくは、この基は、式−OR’、式中R’はアルキル(好ましくはC1−C20、より好ましくはC1−C10、さらにより好ましくはC1−C6、およびさらにより好ましくはC2−C4)である、を有する。
【0041】
他の態様において、架橋剤は、エポキシ基を含まず、かつ式、
【0042】
【化4】

【0043】
を有する基を含まない。すなわち架橋剤の各モルは1以下のこのような基を含み、そしてより好ましくはこのような基が無し(ゼロ)である。
【0044】
最も好ましい架橋剤は、メラミン由来のもの(すなわち、セルロースとの架橋に対する機能性を有する、置換されたメラミン)等のトリアジンである。架橋剤が約100℃から約175℃、およびより好ましくは約120℃から約150℃の温度で反応することもまた好ましい。
【0045】
他の潜在的な架橋剤としては、これらに限定されないが、アジリデン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、メタノール基および活性メチレン基等の基を含む多官能化合物が挙げられる。また、ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、エチレン性不飽和化合物、エーテル化メチロール、および/または金属アルコキシド(テトラメトキシシラン)を使用できる。好適なエチレン性不飽和架橋剤としては、これらに限定されないが、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、多官能アクリレートおよびこれらの混合物が挙げられる。好適な多官能アクリレートとしては、これらに限定されないが、エチレンジオールジメタクリレート、エチレンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0046】
架橋剤は、好ましくは、架橋剤のヒドロキシル質量当量と、組成物中に存在する全てのセルロースエステルおよび/またはセルロースエーテルの組合せヒドロキシル質量当量と間のストイキオメトリーが、約0.1から約10、好ましくは約0.25から約7、およびさらにより好ましくは約0.5から約5の範囲となるのに十分なレベルで用いられる。ヒドロキシル数(OHN)はASTM D1957により評価できる。ヒドロキシル質量当量(HEW)は、56,100/OHNをとることにより評価される。
【0047】
本発明で用いられる溶媒系は、1または2以上の溶媒を含むことができ、そしてセルロース、架橋剤、および組成物中に存在する他の含有成分の溶解パラメータに基づいて選択されることができる。溶媒の選択のためのガイドラインは、参照によりここに組み入れられるColemanら,Polymer 31,1187(1990)に見出すことができる。
【0048】
ある典型的な溶媒としては、これらに限定されないが、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、n−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。有利には、本発明は塩化メチレン等の有毒な溶媒を完全に回避できる。
【0049】
溶媒系は、好ましくは、100質量%とされる組成物全質量を基にして組成物が約5質量%から約95質量%の溶媒系、好ましくは約40質量%から約90質量%の溶媒系、およびさらにより好ましくは約65質量%から約85質量%の溶媒系を含むのに十分なレベルで用いられる。好ましい溶媒系は、沸点約0℃から約200℃、より好ましくは約20℃から約150℃、およびさらにより好ましくは約40℃から約120℃を有しても良い。
【0050】
組成物の全固形分量は、100質量%とされる組成物全質量を基にして、典型的には約5質量%から約95質量%、好ましくは約10質量%から約80質量%、より好ましくは約15質量%から約55質量%、およびさらにより好ましくは約18質量%から約35質量%である。組成物の粘度(ブルックフィールド粘度計により、適切なスピンドルを用いて、トルク表示が回転速度50/秒における最大値の10から90%の間になるように維持して評価される)は、好ましくは約1から約200Pa・s(パスカル秒)、好ましくは約5から約100Pa・s、およびより好ましくは約10から約50Pa・sである。
【0051】
本発明の組成物はまた、任意に1種以上の添加剤を含むことができる。ある態様では、該添加剤がセルロースのある特性を変更または保護する。好ましい添加剤としては、架橋触媒(例えば、p−トルエンスルホン酸)、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外(UV)安定剤、酸安定剤、酸捕捉剤、色素、顔料、蛍光増白剤、UV吸収剤、着色剤、微粒子(例えばヒュームドシリカ)、遅延防止剤、およびこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。ある態様においては、添加剤は、選択される架橋剤との反応性を有し、これにより従来技術のセルロースフィルムの浸出問題を最小化および好ましくは排除する官能基(例えば、ヒドロキシル、アミン)を含むように選択される。
【0052】
本発明の組成物は、セルロースと溶媒系とを混合することにより形成できる。典型的には、これは混合物を加熱する間に、任意には加圧下(例えば、約0.11から約1.50MPa)で、約40℃から約120℃の温度まで、そしてより好ましくは約50℃から約100℃まで、約0.5時間から約24時間、そしてより好ましくは約2時間から約8時間の間実施できる。添加剤はセルロースと溶媒系との混合と同時に組成物中に混合でき、または添加剤はセルロースと溶媒系との混合後に添加できる。混合ステップの間に適用される熱に起因する早過ぎる架橋を回避するために、架橋剤をセルロースと溶媒系との混合後に添加することが好ましい。次いで、公知のろ過法を用いて組成物をろ過でき、必要であれば、組成物中の異物粒子の平均粒子サイズが約50μm未満であることが好ましい。
【0053】
フィルムのキャスト
キャスト工程は、上記のドープ組成物を加圧型の計量ギアポンプを経て加圧ダイに搬送し、そして該加圧ダイから、キャスト位置のキャスト用支持体(例えば走行しているエンドレス金属ベルトまたは回転している金属ドラム)の上にキャストするものである。キャスト用支持体の表面は典型的には鏡面様である。
【0054】
ドープ厚みは、当該分野で公知の任意の方法で調整および制御でき、これらに限定されないが、ドクターブレードまたは逆回転しているローラーコーターの使用を通じたものが挙げられる。フィルムのキャストにおける使用に対して好ましい加圧ダイは、マウスピース部位での開口の形状およびフィルム厚みが均一になるように容易に管理されるものである。加圧ダイの例としてはコートハンガーダイおよび“T”ダイが挙げられる。
【0055】
キャスト速度を増大させるために、金属支持体上に2以上の加圧ダイを準備しても良く、2以上の部分に分割されたドープを該金属支持体上に同時にキャストしても良い。積層セルロースエステルフィルムは、支持体上で、複数のスリットを有するダイから複数のドープ組成物を同時キャスト(共キャスト)することにより作製できる。セルロースフィルムは、上記で得られるセルロースドープをベルトまたはドラム等の支持体上にキャストすることにより作製される。支持体上の乾燥条件を容易に制御できるという理由で、本発明ではベルトを採用した溶液キャストフィルム製造工程が特に好ましい。
【0056】
ある態様において、本発明によって形成されるフィルムが有する異物粒子は極めて低く、サイズ約10から約50μmの異物粒子の数が、好ましくは、250mm2当たり約200(約0.8粒子/mm2)未満、およびより好ましくは250mm2当たり約100未満とされる。さらに、サイズが50μmを超える異物粒子の数は、好ましくは250mm2当たり約2未満、およびより好ましくは約0である。得られる溶媒キャストセルロースフィルムは平滑な表面、優れた光透過、低いヘイズ、良好な剛性、高い寸法安定性および低い汚染物量を有する。溶媒キャストフィルムはまた、従来の溶媒キャスト工程により作製されるLCD用途用の高品質の薄膜トランジスタ(TFT)グレードセルローストリアセテートフィルムと同等またはより優れる。
【0057】
得られるフィルムは、フィルムキャストおよびフィルム後処理の間に用いられる条件に応じて等方性または異方性であって良い。等方性フィルムは、偏光板用の保護フィルムとして有用であり、そして異方性フィルムはディスプレイの視野角を改善するための補償フィルムとして有用である。等方性および異方性は、屈折率値(n,TEおよびTMモードの波長633nmでのMetricon 2010プリズムカプラー操作により評価される)により、3方向(x,y,z)(ここでxおよびyはフィルム平面内、かつzはフィルム平面の厚み方向内)で規定される。この発明のフィルムは、厚みが約1から約1,000milの範囲、好ましくは厚みが約1から約100mil、より好ましくは厚みが約1から約10mil、およびさらにより好ましくは厚みが約1から約5milであることができる。
【0058】
フィルム平面内における遅延値(Ro)は、
o=(nx−ny)×フィルム厚み
により規定される。
【0059】
フィルム厚み方向における遅延値(Rt)は、
t=[(nx+ny)/2−nz]×フィルム厚み
により規定される。
【0060】
保護フィルムとして有用なフィルムは、RoおよびRtが200nm以下の場合等方性と考えられ、そして補償フィルムとして有用なフィルムは、RoおよびRtが200nm超の場合異方性と考えられる。これらの遅延値は、目標の補償フィルムまたは保護フィルムのいずれかに対して、フィルム厚み、延伸率、延伸温度、およびフィルム組成(例えばセルロース種および使用される添加剤)を調整することにより制御できる。偏光子の保護のために使用されるフィルムは、好ましくは、遅延値(RoおよびRt)約100nm未満、好ましくは約50nm未満、およびより好ましくは約30nm未満を有する。補償フィルムとして使用されるフィルムは、遅延値(RoおよびRt)約50nm以上、好ましくは約80nm以上、およびより好ましくは約120nm以上を有する。特定のディスプレイのタイプ(例えば、TN[twisted nematic]、HAN[hybrid aligned nematic]、IPS[in plane switching]、VA[vertically aligned]、π−cellまたはOCB[optically compensated bend])に対し、遅延値(RoおよびRt)は、約200nm以上、好ましくは約250nm以上、より好ましくは約300nm以上、およびさらにより好ましくは約350nm以上であることができる。遅延フィルムは、偏光子保護フィルムの一方または両方と組み合わせまたは代替して使用できる。
【0061】
溶媒蒸発工程
溶媒蒸発工程は、ウェブ(フィルム)が支持体上でキャストのために加熱され、そして溶媒が蒸発するものである。溶媒蒸発方法としては、ウェブ側からの空気の吹き付け、および/または液体を用いた支持体と逆の表面からの加熱が挙げられる。好適な他の溶媒蒸発方法としては、熱放射を用いた両面の加熱がある。これらのうち、逆表面液体加熱方法は乾燥効率が高いため好ましい。これらの方法を組み合わせることもできる。キャストウェブは(好ましくは支持体上で)温度約30℃から約100℃で乾燥される。ウェブをこれらの温度まで加熱することは、好ましくは、該温度を有する空気を用いてまたは赤外線ヒーターを経て実施される。
【0062】
剥離工程は、支持体上で溶媒の蒸発を受けたウェブを支持体から剥離するものである。次いで、剥離されたウェブは次の工程ステップに送られる。残留溶媒量が大き過ぎるときにはウェブの剥離が困難である場合がある。支持体上でウェブを完全に乾燥させた後に剥離が実施されるときには、剥離位置より前でウェブの一部が剥離する場合がある。
【0063】
本発明では、剥離位置での支持体上の温度が約10℃から約40℃、および好ましくは約11℃から約30℃であることが好ましい。剥離位置での残留溶媒レベルは、好ましくは、剥離位置でのフィルム中の固形分の質量の約10質量%から約120質量%、およびより好ましくは、剥離位置でのフィルム中の固形分の質量の約25質量%から約100質量%である。残留溶媒を剥離位置で上記の量に調整するために、剥離位置での支持体の温度は、好ましくは、キャスト用支持体の表面の温度を制御することによって有機溶媒の蒸発が効率的に行われると思われる上記範囲に設定される。支持体の温度を制御するためには、良好な伝熱効率(例えば、支持体の背面からの伝熱)を有する伝熱法が好ましい。
【0064】
支持体が回転ベルトであり、そして下側位置にある場合、ベルトの温度は、加熱空気を支持体上に穏やかに吹き付けることによって制御できる。支持体温度は、支持体の種々の位置で種々の加熱方法を通じて変化させることができ、そして支持体上のキャスト位置で、支持体上の乾燥位置で、または支持体上の剥離位置で、変化させることができる。
【0065】
ゲルキャスト法は、残留溶媒の量が比較的多い場合のフィルム形成速度を増大させることができる。ゲルキャスト法は、(セルロースエステルに関する)貧溶媒をドープに添加し、そしてドープのキャスト後にゲル化させることを含む。他のゲルキャスト法は、支持体の温度を低下させることによりゲル化させることを含む。支持体上でのドープのゲル化を通じてウェブを強化することによって、より早い剥離とキャスト速度の増大との実現が可能である。
【0066】
乾燥工程:偏光板用の保護フィルム
ウェブは、好ましくは、ウェブが代わりに互い違いのローラを経て移送される乾燥装置を経て乾燥される。または、クリップを用いてウェブの両縁が保持されつつ該ウェブが移送されるテンター装置で乾燥を達成できる。乾燥工程において、ウェブを移送するための移送張力は、好ましくは、残留溶媒量が約5質量%未満になるまで低くされる。
【0067】
乾燥方法は特に限定されず、例えば、加熱空気、赤外放射、加熱ロール、またはマイクロ波によって達成できる。加熱空気法はその簡便さから好ましい。寸法安定性を向上させるために、乾燥温度は、好ましくは、約40℃から約150℃、およびより好ましくは約80℃から約140℃の範囲内で3から5段階で段階的に上昇させる。急速に乾燥させると完成したフィルムの平滑性が低下する傾向がある。高温乾燥は、好ましくは、残留溶媒量がフィルム中の固形分の全質量の約8質量%未満であるウェブに対して適用する。全乾燥工程を通じ、乾燥温度は、一般的には約40℃から約250℃、および好ましくは約40℃から約160℃である。セルロースエステルフィルムの架橋(硬化)は乾燥段階中に生じ、そして熱的にまたは放射で触媒される場合がある。温度が上昇することによって架橋剤の脱ブロックが可能になり、これにより熱安定性、寸法安定性、耐溶媒性および耐化学性を有するフィルムを得るための架橋反応を進行させることができる。アセチルの置換度が約2.49未満であるセルロースアセテート、およびアセチルの置換度が約2.81超であるセルローストリアセテートは放射(例えばUV光)によって好ましく硬化する。高級脂肪酸のセルロースエステルまたはこれらの混合エステルは、放射または熱的方法のいずれかによって硬化する。
【0068】
乾燥工程において、ウェブは有機溶媒の蒸発により横方向において収縮する傾向がある。ウェブがより高温で急速に乾燥される場合、ウェブが収縮する該傾向はより強い。収縮を可能な限り最小化しつつウェブを乾燥させることにより、完成したセルロースエステルフィルムの平滑性が改善される。以上に鑑み、参照によりここに組み入れられる日本国特許O.P.I.公開第62−46625号に記載される方法が好ましく用いられる。この方法は、ウェブの横方向における両縁をクリップまたはピンで保持してウェブ幅を維持しつつウェブを乾燥させることを含む(“テンター法”という)。
【0069】
支持体から剥離されるかまたはテンターから出てくるセルロースエステルフィルムは、好ましくは乾燥工程においてさらに乾燥され、100質量%とされるフィルムの全質量を基にして、フィルム中の残留溶媒量の約0.5質量%未満、好ましくは約0.1質量%未満、およびより好ましくは約0.01質量%未満が与えられる。
【0070】
乾燥工程:補償フィルム用のセルロースエステル
光学的に2軸の配向を得るために、任意の公知の方法を用いることができる。好ましい方法では、溶媒がフィルム中にまだ存在している間にフィルムの延伸を行う。すなわち、ウェブ(フィルム)がキャスト支持体から剥離されている間、約1.0から約4.0、より好ましくは約1.01から約6.0、およびさらにより好ましくは約1.1から約3.5の係数で少なくとも1方向にこれが延伸される。延伸中、ウェブ中には、100質量%とされるフィルム中の固形分を基にして約10から約100質量%、好ましくは約10から約50質量%、およびより好ましくは約20から約40質量%のレベルで残留溶媒が存在する。ウェブ中の残留溶媒量が過度に大きい場合、延伸効果が得られない。一方、残留溶媒量が過度に小さい場合、延伸が顕著に困難になってウェブが損傷することがある。さらに、延伸係数が過度に小さい場合には十分な位相差を得ることが困難であり、そして延伸係数が過度に大きい場合には延伸が困難になってウェブが損傷することがある。延伸中の温度は、好ましくは約25℃から約160℃である。
【0071】
延伸方向が互いに直交する2軸延伸を行うことにより、延伸フィルムにおける厚みばらつきを低減することが可能である。セルロースフィルム支持体の厚みばらつきが過度に大きい場合、不均一な位相差が生じ、着色等の問題がもたらされる。セルロースフィルム支持体の厚みばらつきは、好ましくは、500mm2である任意の領域を通じて±3%の範囲、およびより好ましくは±1%の範囲である。
【0072】
ウェブを延伸する方法は特に限定されず、例えば、複数のロールを異なる円周速度で回転させ、そしてロールの回転中に異なる円周速度を用いて長手方向の延伸を行う方法が挙げられる。他の方法としては、ウェブの両縁をクリップまたはピンで安定させ、そしてクリップ間またはピン間の距離を進行方向に増大させることによって長手方向に延伸する方法がある。他の方法としては、クリップ間またはピン間の距離を横方向に増大させることによる横延伸がある。さらに他の方法としては、クリップ間またはピン間の距離を長手方向および横方向に増大させることによる同時の縦延伸および横延伸がある。これらの方法はそれぞれ組み合わせで用いることができる。さらに、いわゆるテンター法の場合には、円滑な延伸を行いかつフィルム損傷の危険性を最小化することが可能になるように線形運転系を用いてクリップ部位を運転することが好ましい。
【0073】
完成したフィルムは、延伸後、好ましくは、残留溶媒レベルを、100質量%とされるフィルム全質量を基にして約2質量%未満、およびより好ましくは約0.4質量%未満の量で有する。
【0074】
前の乾燥工程とは関係なく、ある態様では、硬化フィルムがより高度に透明である。すなわち、厚み約0.5から15milで、該フィルムは、波長約400から700nmを有する光の少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、およびさらにより好ましくは少なくとも約95%を透過させる。透過する光の%は、ダブルビームUV−VISスペクトロメータで評価できる。
【0075】
巻取工程
フィルムの残留溶媒量が上記のレベルになった後、フィルムは、典型的にはその後の使用のためにスプールの周りに巻取られる。任意の従来の巻取方法を使用でき、そして巻取方法の例としては、定トルク法、定張力法、テーパー張力法、および一定の内部応力を有するようにプログラムされた方法が挙げられる。
【0076】
セルロースエステルフィルムの厚みは、組成物濃度、ポンプにより供給される組成物量、ダイのマウスピース部位のスリット幅、ダイの押出圧力、またはキャスト用支持体の移動速度を制御することにより調整できる。厚み検出器によって検出した厚み情報を上記の装置へ、これらにフィードバックすべき情報のためにプログラムされたシステムを経てフィードバックすることによって、フィルムの厚みを均一に管理することが好ましい。
【0077】
巻取りでのフィルムの最適な厚みは末端用途によって異なる。フィルムの厚みは、通常約5μmから約500μm、および好ましくは約10μmから約200μmである。液晶ディスプレイ(LCD)において用いられるフィルムの厚みは、好ましくは約10μmから約120μmである。本発明のフィルムは、厚みが約10μmから約60μmまで低減された場合においても、良好な気化水分透過率、および優れた寸法安定性を有する。
【0078】
本発明のセルロースフィルムは、約80℃および約90%RHで48時間貯蔵した後、フィルムの機械方向(MD)における寸法変化率およびフィルムの横方向(TD)における寸法変化率の両者は、好ましくは約±0.5%未満、より好ましくは約±0.3%未満、およびさらにより好ましくは約±0.1%未満である。機械方向における寸法変化率は、[(L1−L2)/L1]×100、ここでL1は処理前のサンプルの機械方向における初期幅、そしてL2は処理後のサンプルの機械方向における幅である、をとることにより評価される。横方向における寸法変化率は、[(L3−L4)/L3]×100、ここでL3は処理前のサンプルの横方向における初期幅、そしてL4は処理後のサンプルの横方向における幅である、をとることにより評価される。
【0079】
架橋フィルムの用途
ある態様において、本発明のフィルムは、これらの良好な気化水分浸透および寸法安定性に鑑み、好ましくは液晶ディスプレイ(LCD)の一部(例えば偏光板保護フィルム)として用いられる。本発明のフィルムを用いた偏光板は、任意の従来の方法に従って作製できる。例えば、光学またはセルロースフィルムをアルカリ鹸化し、そして得られる併用フィルムを、水性の完全に鹸化されたポリビニルアルコール溶液を介して偏光フィルムの両面に接着させる方法がある。偏光フィルムは、典型的には、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素液中に浸漬し、そして得られたフィルムを延伸することにより作製される。アルカリ鹸化は、フィルムの水性接着剤への濡れ性を向上させ、およびフィルムに良好な接着を与えるために、光学またはセルロースフィルムを環境温度より上(例えば、約30℃から約50℃)で約60秒間強アルカリ溶液中に浸漬する処理をいう。
【0080】
以上で得られる偏光板は液晶セルの一方または両方の側の上に作製され、そして得られる材料はLCD内に組み込まれる。本発明の偏光板を用いた液晶ディスプレイは安定で長期のディスプレイ性能を維持できる。
【0081】
本発明のフィルムはまたLCD用の補償フィルムとして使用でき、これもまた安定で長期のディスプレイ性能を維持できる。または、本発明のフィルムはまた、反射防止フィルム、反射板、防眩フィルム、無反射フィルム、静電防止フィルム、または前記の機能を2以上備えるフィルムに対して使用できる。末端用途に応じて、併用フィルムは、接着剤を用いてもしくは用いずに偏光フィルムもしくは他の支持体に接着でき、または該併用フィルムを単に偏光フィルムもしくは他の支持体に隣接して配置できる。
【0082】

以下の例は本発明に関する好ましい方法を説明する。しかしこれらの例は実例の目的で与えられ、そしてこのうちのいずれも本発明の範囲全体の限定ととるべきでないことを理解すべきである。
【0083】
机上例1
1.ドープ組成物の調製
表1で説明するドープ組成物を、密閉容器に入れて60℃に加熱する。セルロースアセテートプロピオネート(CAP)を攪拌しながら完全に溶解させてドープを得る。溶解に必要な時間は4時間である。ドープ組成物をろ過し、そして、35℃に維持した状態で、30℃に維持されたステンレススチールバンド支持体上に均一にキャストする。
【0084】
【表1】

【0085】
ドープは、これを剥離可能な程度に乾燥させた後にステンレスバンド支持体から剥離する。この時点でドープ中の残留溶媒は25%である。ドープのキャストから剥離までに必要な時間は3分間である。支持体から剥離された後、横方向が保持された状態で、フィルムを120℃で乾燥および架橋させる。次いで横張力を緩め、そして乾燥ゾーンにおいて温度120〜135℃で、多数のロールで移送しながら乾燥および架橋を完了させる。乾燥されたフィルムはロール上に巻取られ、そして最終厚み40μmを有する。
【0086】
2.偏光板の作製
この例のパート1で作製したフィルムサンプルの各々に対して、水酸化ナトリウム2.5mol/L水溶液中、40℃で60秒間アルカリ処理を行い、そして水で3分間洗浄して鹸化層を形成し、アルカリ処理フィルムを作製する。次に、ポリビニルアルコールフィルム(クラレ株式会社からPOVAL(登録商標)の名称で入手可能)を、1質量部のヨウ素と4質量部のホウ酸とを含む水溶液100質量部に浸漬し、そして50℃で4倍まで延伸して偏光フィルムを得た。偏光板サンプルは、水性(5質量%)の完全に鹸化されたポリビニルアルコールを接着剤として用いて偏光フィルムの両面の上に上記のアルカリ処理フィルムを積層することにより作製する。
【0087】
机上例2
1.ドープ組成物の調製
表2で説明するドープ組成物を、密閉容器に入れて60℃に加熱する。セルロースアセテートブチレート(CAB)を攪拌しながら完全に溶解させてドープを得る。溶解に必要な時間は4時間である。ドープ組成物をろ過し、そして、35℃に維持した状態で、30℃に維持されたステンレススチールバンド支持体上に均一にキャストする。
【0088】
【表2】

【0089】
ドープは、これを剥離可能な程度に乾燥させた後にステンレスバンド支持体から剥離する。この時点でドープ中の残留溶媒は25%である。ドープのキャストから剥離までに必要な時間は3分間である。支持体から剥離された後、横方向が保持された状態で、フィルムを120℃で乾燥および架橋させる。次いで横張力を緩め、そして乾燥ゾーンにおいて温度120〜135℃で、多数のロールで移送しながら乾燥および架橋を完了させる。乾燥されたフィルムはロール上に巻取られ、そして最終厚み40μmを有する。
【0090】
2.偏光板の作製
この例のパート1で作製したフィルムサンプルの各々に対して、水酸化ナトリウム2.5mol/L水溶液中、40℃で60秒間アルカリ処理を行い、そして水で3分間洗浄して鹸化層を形成し、アルカリ処理フィルムを作製する。
【0091】
次に、ポリビニルアルコールフィルム(クラレ株式会社からPOVAL(登録商標)の名称で入手可能)を、1質量部のヨウ素と4質量部のホウ酸とを含む水溶液100質量部に浸漬し、そして50℃で4倍まで延伸して偏光フィルムを得た。偏光板サンプルは、水性(5質量%)の完全に鹸化されたポリビニルアルコールを接着剤として用いて偏光フィルムの両面の上に上記のアルカリ処理フィルムを積層することにより作製する。
【0092】
机上例3
1.ドープ組成物の調製
表3で説明するドープ組成物を、密閉容器に入れて70℃に加熱する。セルロースアセテートブチレート(CAB)を攪拌しながら完全に溶解させてドープを得る。溶解に必要な時間は4時間である。
【0093】
【表3】

【0094】
2.遅延増加剤溶液の調製
遅延増加剤は、表4の含有成分を混合タンクに入れて各成分が溶解するまで攪拌することにより調製する。
【0095】
【表4】

【0096】
3.艶消し剤溶液の調製
艶消し剤溶液は、表5に示す含有成分を分散器に入れて各成分が溶解するまで攪拌することにより調製する。次に、この例のパート1で調製したドープ組成物95質量部、艶消し剤溶液1質量部、および遅延増加剤溶液4質量部を、均一になるまで混合する。次いで、この組成物をろ過し、そして、35℃に維持した状態で、30℃に維持されたステンレススチールバンド支持体上に均一にキャストする。
【0097】
【表5】

【0098】
4.光学補償フィルムの作製
ドープは、これを剥離可能な程度に乾燥させた後にステンレスバンド支持体から剥離する。この時点でドープ中の残留溶媒は15%である。支持体から剥離された後、テンターを用いてフィルムを130℃で30%横延伸する。次いで、延伸された幅を維持した状態でフィルムを140℃で30秒間保持する。クリップを除去し、そしてフィルムを140℃で40分間乾燥および架橋させる。乾燥された光学補償フィルムはロール上に巻取られ、そして最終厚み50μmを有する。
【0099】
机上例4
1.ドープ組成物の調製
表6で説明するドープ成分を、密閉容器に入れて70℃に加熱する。セルローストリアセテート(CTA)を攪拌しながら完全に溶解させてドープを得る。溶解に必要な時間は4時間である。
【0100】
【表6】

【0101】
2.遅延増加剤溶液の調製
遅延増加剤は、表7の含有成分を混合タンクに入れて各成分が溶解するまで攪拌することにより調製する。
【0102】
【表7】

【0103】
3.艶消し剤溶液の調製
艶消し剤溶液は、表8に示す含有成分を分散器に入れて各成分が溶解するまで攪拌することにより調製する。次に、この例のパート1で調製したドープ組成物95質量部、艶消し剤溶液1質量部、遅延増加剤溶液4質量部を、均一になるまで混合する。次いで、この組成物をろ過し、そして、35℃に維持した状態で、30℃に維持されたステンレススチールバンド支持体上に均一にキャストする。
【0104】
【表8】

【0105】
4.光学補償フィルムの作製
ドープは、これを剥離可能な程度に乾燥させた後にステンレスバンド支持体から剥離する。この時点でドープ中の残留溶媒は15%である。支持体から剥離された後、テンターを用いてフィルムを130℃で30%横延伸する。次いで、延伸された幅を維持した状態でフィルムを140℃で30秒間保持する。クリップを除去し、そしてフィルムを140℃で40分間乾燥および架橋させる。乾燥された光学補償フィルムはロール上に巻取られ、そして最終厚み50μmを有する。
【0106】
机上例5
1.ドープ組成物の調製
表9で説明するドープ成分を、密閉容器に入れて70℃に加熱する。セルロースジアセテート(CA)を攪拌しながら完全に溶解させてドープを得る。溶解に必要な時間は4時間である。
【0107】
【表9】

【0108】
2.遅延増加剤溶液の調製
遅延増加剤は、表10の含有成分を混合タンクに入れて各成分が溶解するまで攪拌することにより調製する。
【0109】
【表10】

【0110】
3.艶消し剤溶液の調製
艶消し剤溶液は、表11に示す含有成分を分散器に入れて各成分が溶解するまで攪拌することにより調製する。次に、この例のパート1で調製したドープ組成物95質量部、艶消し剤溶液1質量部、遅延増加剤溶液4質量部を、均一になるまで混合する。次いで、この組成物をろ過し、そして、35℃に維持した状態で、30℃に維持されたステンレススチールバンド支持体上に均一にキャストする。
【0111】
【表11】

【0112】
4.光学補償フィルムの作製
ドープは、これを剥離可能な程度に乾燥させた後にステンレスバンド支持体から剥離する。この時点でドープ中の残留溶媒は15%である。支持体から剥離された後、テンターを用いてフィルムを130℃で30%横延伸する。次いで、延伸された幅を維持した状態でフィルムを140℃で30秒間保持する。クリップを除去し、そしてフィルムを140℃で40分間乾燥および架橋させる。乾燥された光学補償フィルムはロール上に巻取られ、そして最終厚み50μmを有する。
【0113】
対照例6
架橋剤を有さないセルロースジアセテートフィルム
まず、207.5gのメチルエチルケトン(MEK,Aldrichから入手)を、続いて、3.4gのトリフェニルホスフェート(TPP,固形分8%,Aldrichから入手)および42.5gのセルロースジアセテート(39.7質量%アセチル,Eastman Chemical CompanyからCA 398−30の名称で入手可能)を、8オンス瓶内に導入した。混合物を均一な溶液が得られるまで回した。2インチ幅および40mil高さのギャップを有する四角形の引落棒を用いて均一溶液を清浄なガラス板の上に引落した。フィルムは、これらをガラス板から剃刀を用いて除去する前に1晩乾燥させた。
【0114】
対照例7
架橋剤を有さないセルロースアセテートプロピオネートフィルム
まず、207.5gのMEKを、続いて、3.4gのTPPおよび42.5gのセルロースアセテートプロピオネート(46質量%プロピオニル,Eastman Chemical CompanyからCAP 482−20の名称で入手可能)を、8オンス瓶内に導入した。混合物を均一な溶液が得られるまで回した。2インチ幅および40mil高さのギャップを有する四角形の引落棒を用いて均一溶液を清浄なガラス板の上に引落した。フィルムは、これらをガラス板から剃刀を用いて除去する前に1晩乾燥させた。
【0115】
対照例8
架橋剤を有さないセルロースアセテートブチレートフィルム
まず、207.5gのMEKを、続いて、3.4gのTPPおよび42.5gのセルロースアセテートブチレート(35.5質量%ブチリル,Eastman Chemical CompanyからCAB 381−20の名称で入手可能)を、8オンス瓶内に導入した。混合物を均一な溶液が得られるまで回した。2インチ幅および40mil高さのギャップを有する四角形の引落棒を用いて均一溶液を清浄なガラス板の上に引落した。フィルムは、これらをガラス板から剃刀を用いて除去する前に1晩乾燥させた。
【0116】
例9
メラミン架橋されたセルロースジアセテートフィルム
CA 398−30(セルロースジアセテート、39.7質量%アセチル)のヒドロキシル量は3.5質量%である。これにより固体ポリマーに対するヒドロキシル質量当量486、または例6で調製したような固形分17%でのヒドロキシル質量当量2,857が与えられる。用いたメラミン架橋剤はCYMEL(登録商標)303(Cytec Industries,Inc.から入手可能なメラミン架橋剤)であった。CYMEL(登録商標)303の有効ヒドロキシル質量当量は130から190の範囲であるため、ストイキオメトリーを決定するために160のメジアン値を選択し、そしてこの例では1当量の架橋剤を用いた。
【0117】
架橋性フィルムを作製するために、23.67gの例6による溶液と、1.33gのCYMEL(登録商標)303および2滴のCYCAT(登録商標)4040(Cytec Industries,Inc.から入手可能なp−トルエンスルホン酸触媒)MEK1:4希釈物とを組み合わせた。この混合物を15分間回し、次いで清浄なガラス板上に2インチ幅および40mil高さのギャップを有する四角形の引落棒を用いて引落した。フィルムを1時間室温で乾燥させ、次いで20分間150℃でベークした。フィルムをガラス板から剃刀を用いて除去した。
【0118】
例10
メラミン架橋されたセルロースジアセテートフィルム
CA 398−30のヒドロキシル量は3.5%である。これにより固体ポリマーに対するヒドロキシル質量当量486、または例6で調製したような固形分17%でのヒドロキシル質量当量2857が与えられる。用いたメラミン架橋剤は、Cytec Industries,Inc.のCYMEL(登録商標)303であった。有効ヒドロキシル質量当量は130から190の範囲であるため、ストイキオメトリーを決定するために160のメジアン値を選択し、そしてこの例では0.5当量の架橋剤を用いた。
【0119】
架橋性フィルムを作製するために、24.32gの例6による溶液と、0.68gのCYMEL(登録商標)303および2滴のCYCAT(登録商標)4040(Cytec Industries,Inc.から入手可能なp−トルエンスルホン酸触媒)MEK1:4希釈物とを組み合わせた。この混合物を15分間回し、次いで清浄なガラス板上に2インチ幅および40mil高さのギャップを有する四角形の引落棒を用いて引落した。フィルムを1時間室温で乾燥させ、次いで20分間150℃でベークした。フィルムをガラス板から剃刀を用いて除去した。
【0120】
例11
メラミン架橋されたセルロースアセテートプロピオネートフィルム
CAP 482−20(セルロースアセテートプロピオネート,46質量%プロピオニル)のヒドロキシル量は1.8質量%である。これにより固体ポリマーに対するヒドロキシル質量当量944、または例7で調製したような固形分17%でのヒドロキシル質量当量5,556が与えられる。用いたメラミン架橋剤はCYMEL(登録商標)303(Cytec Industries,Inc.から入手可能なメラミン架橋剤)であった。CYMEL(登録商標)303の有効ヒドロキシル質量当量は130から190の範囲であるため、ストイキオメトリーを決定するために160のメジアン値を選択し、そしてこの例では1当量の架橋剤を用いた。
【0121】
架橋性フィルムを作製するために、24.30gの例7による溶液と、0.70gのCYMEL(登録商標)303および2滴のCYCAT(登録商標)4040(Cytec Industries,Inc.から入手可能なp−トルエンスルホン酸触媒)MEK1:4希釈物とを組み合わせた。この混合物を15分間回し、次いで清浄なガラス板上に2インチ幅および40mil高さのギャップを有する四角形の引落棒を用いて引落した。フィルムを1時間室温で乾燥させ、次いで20分間150℃でベークした。フィルムをガラス板から剃刀を用いて除去した。
【0122】
例12
メラミン架橋されたセルロースアセテートプロピオネートフィルム
CAP 482−20(セルロースアセテートプロピオネート,46質量%プロピオニル)のヒドロキシル量は1.8質量%である。これにより固体ポリマーに対するヒドロキシル質量当量944、または例7で調製したような固形分17%でのヒドロキシル質量当量5,556が与えられる。用いたメラミン架橋剤はCYMEL(登録商標)303(Cytec Industries,Inc.から入手可能なメラミン架橋剤)であった。CYMEL(登録商標)303の有効ヒドロキシル質量当量は130から190の範囲であるため、ストイキオメトリーを決定するために160のメジアン値を選択し、そしてこの例では0.5当量の架橋剤を用いた。
【0123】
架橋性フィルムを作製するために、24.65gの例7による溶液と、0.35gのCYMEL(登録商標)303および2滴のCYCAT(登録商標)4040(Cytec Industries,Inc.から入手可能なp−トルエンスルホン酸触媒)MEK1:4希釈物とを組み合わせた。この混合物を15分間回し、次いで清浄なガラス板上に2インチ幅および40mil高さのギャップを有する四角形の引落棒を用いて引落した。フィルムを1時間室温で乾燥させ、次いで20分間150℃でベークした。フィルムをガラス板から剃刀を用いて除去した。
【0124】
例13
メラミン架橋されたセルロースアセテートブチレートフィルム
CAB 381−20(セルロースアセテートブチレート,35.5質量%ブチリル)のヒドロキシル量は1.8質量%である。これにより固体ポリマーに対するヒドロキシル質量当量944、または例8で調製したような固形分17%でのヒドロキシル質量当量5,556が与えられる。用いたメラミン架橋剤はCYMEL(登録商標)303(Cytec Industries,Inc.から入手可能なメラミン架橋剤)であった。CYMEL(登録商標)303の有効ヒドロキシル質量当量は130から190の範囲であるため、ストイキオメトリーを決定するために160のメジアン値を選択し、そしてこの例では1当量の架橋剤を用いた。
【0125】
架橋性フィルムを作製するために、24.30gの例8による溶液と、0.70gのCYMEL(登録商標)303および2滴のCYCAT(登録商標)4040(Cytec Industries,Inc.から入手可能なp−トルエンスルホン酸触媒)MEK1:4希釈物とを組み合わせた。この混合物を15分間回し、次いで清浄なガラス板上に2インチ幅および40mil高さのギャップを有する四角形の引落棒を用いて引落した。フィルムを1時間室温で乾燥させ、次いで20分間150℃でベークした。フィルムをガラス板から剃刀を用いて除去した。
【0126】
例14
メラミン架橋されたセルロースアセテートブチレートフィルム
CAB 381−20(セルロースアセテートブチレート,35.5質量%ブチリル)のヒドロキシル量は1.8質量%である。これにより固体ポリマーに対するヒドロキシル質量当量944、または例8で調製したような固形分17%でのヒドロキシル質量当量5,556が与えられる。用いたメラミン架橋剤はCYMEL(登録商標)303(Cytec Industries,Inc.から入手可能なメラミン架橋剤)であった。CYMEL(登録商標)303の有効ヒドロキシル質量当量は130から190の範囲であるため、ストイキオメトリーを決定するために160のメジアン値を選択し、そしてこの例では0.5当量の架橋剤を用いた。
【0127】
架橋性フィルムを作製するために、24.65gの例8による溶液と、0.35gのCYMEL(登録商標)303および2滴のCYCAT(登録商標)4040(Cytec Industries,Inc.から入手可能なp−トルエンスルホン酸触媒)MEK1:4希釈物とを組み合わせた。この混合物を15分間回し、次いで清浄なガラス板上に2インチ幅および40mil高さのギャップを有する四角形の引落棒を用いて引落した。フィルムを1時間室温で乾燥させ、次いで20分間150℃でベークした。フィルムをガラス板から剃刀を用いて除去した。
【0128】
比較例15
イソシアネート架橋されたセルロースアセテートプロピオネートフィルム
CAP 482−20(セルロースアセテートプロピオネート,46質量%プロピオニル)のヒドロキシル量は1.8質量%である。これにより固体ポリマーに対するヒドロキシル質量当量944、または例7で調製したような固形分17%でのヒドロキシル質量当量5,556が与えられる。用いたイソシアネート架橋剤はDESMODUR(登録商標)BL 3272 MPA(Bayerから入手可能)、1−メトキシプロピル−アセテート−2中の固形分72%で供給されるブロックイソシアネート、である。有効ヒドロキシル質量当量は410であり、この例では1当量の架橋剤を用いた。
【0129】
架橋性フィルムを作製するために、23.28gの例7による溶液と、1.72gのDESMODUR(登録商標)BL 3272 MPAとを組み合わせた。この混合物を15分間回し、次いで清浄なガラス板上に2インチ幅および40mil高さのギャップを有する四角形の引落棒を用いて引落した。フィルムを1時間室温で乾燥させ、次いで40分間165℃でベークした。フィルムをガラス板から剃刀を用いて除去した。
【0130】
比較例16
イソシアネート架橋されたセルロースアセテートプロピオネートフィルム
CAP 482−20(セルロースアセテートプロピオネート,46質量%プロピオニル)のヒドロキシル量は1.8質量%である。これにより固体ポリマーに対するヒドロキシル質量当量944、または例7で調製したような固形分17%でのヒドロキシル質量当量5,556が与えられる。用いたイソシアネート架橋剤はDESMODUR(登録商標)BL 3272 MPA(Bayerから入手可能)、1−メトキシプロピル−アセテート−2中の固形分72%で供給されるブロックイソシアネート、である。有効ヒドロキシル質量当量は410であり、この例では0.5当量の架橋剤を用いた。
【0131】
架橋性フィルムを作製するために、24.11gの例7による溶液と、0.89gのDESMODUR(登録商標)BL 3272 MPAとを組み合わせた。この混合物を15分間回し、次いで清浄なガラス板上に2インチ幅および40mil高さのギャップを有する四角形の引落棒を用いて引落した。フィルムを1時間室温で乾燥させ、次いで40分間165℃でベークした。フィルムをガラス板から剃刀を用いて除去した。
【0132】
比較例17
イソシアネート架橋されたセルロースアセテートブチレートフィルム
CAB 381−20(セルロースアセテートブチレート,35.5質量%ブチリル)のヒドロキシル量は1.8質量%である。これにより固体ポリマーに対するヒドロキシル質量当量944、または例8で調製したような固形分17%でのヒドロキシル質量当量5,556が与えられる。用いたイソシアネート架橋剤はDESMODUR(登録商標)BL 3272 MPA(Bayerから入手可能)、1−メトキシプロピル−アセテート−2中の固形分72%で供給されるブロックイソシアネート、である。有効ヒドロキシル質量当量は410であり、この例では1当量の架橋剤を用いた。
【0133】
架橋性フィルムを作製するために、23.28gの例8による溶液と、1.72gのDESMODUR(登録商標)BL 3272 MPAとを組み合わせた。この混合物を15分間回し、次いで清浄なガラス板上に2インチ幅および40mil高さのギャップを有する四角形の引落棒を用いて引落した。フィルムを1時間室温で乾燥させ、次いで40分間165℃でベークした。フィルムをガラス板から剃刀を用いて除去した。
【0134】
比較例18
イソシアネート架橋されたセルロースアセテートブチレートフィルム
CAB 381−20(セルロースアセテートブチレート,35.5質量%ブチリル)のヒドロキシル量は1.8質量%である。これにより固体ポリマーに対するヒドロキシル質量当量944、または例8で調製したような固形分17%でのヒドロキシル質量当量5,556が与えられる。用いたイソシアネート架橋剤はDESMODUR(登録商標)BL 3272 MPA(Bayerから入手可能)、1−メトキシプロピル−アセテート−2中の固形分72%で供給されるブロックイソシアネート、である。有効ヒドロキシル質量当量は410であり、この例では0.5当量の架橋剤を用いた。
【0135】
架橋性フィルムを作製するために、24.11gの例8による溶液と、0.89gのDESMODUR(登録商標)BL 3272 MPAとを組み合わせた。この混合物を15分間回し、次いで清浄なガラス板上に2インチ幅および40mil高さのギャップを有する四角形の引落棒を用いて引落した。フィルムを1時間室温で乾燥させ、次いで40分間165℃でベークした。フィルムをガラス板から剃刀を用いて除去した。
【0136】
分析および結果
1.分析方法
硬化した乾燥フィルムのフィルム厚みは、Metricon 2010Mプリズムカプラーを用いて波長633nmで評価した。貯蔵弾性率(E’)は、動的粘弾性解析(Dynamic Mechanical Thermal Analysis )(DMTA)により、張力モード1Hz振動数、ひずみ0.1%、および温度ランプ速度毎分5℃で−50℃から250℃、で行って得た。
【0137】
2.結果
【0138】
【表12】

【0139】
【表13】

【0140】
架橋フィルムにおいて、貯蔵弾性率E’はガラス転移温度で低くなり、そしてある最小値に至り(最小E’)、該点で温度の上昇とともにE’が増大することになる。フィルムが架橋されていない場合、これは本質的にガラス転移温度よりも上に分かれて出現する。このような場合、最小E’は存在しないことになる。
【0141】
表12のデータから証明されるように、メラミン架橋剤を用いて作製されたフィルムは最小E’を示し、これは顕著な架橋を表すものである。しかし表13のデータに見られるように、ブロックイソシアネート架橋剤を用いて作製されたフィルムはこれを示さなかった。よって、ブロックイソシアネート含有フィルムは本発明における使用に対しては許容できるものでない一方でメラミン含有フィルムは良好に作用すると考えられる。
[1]光ディスプレイ装置において使用するための偏光板であって、前記偏光板が、
第1および第2の外面を有する偏光フィルム、ならびに
前記第1および第2の外面の少なくともいずれかの上に支持されるかまたは前記第1および第2の外面の少なくともいずれかに隣接する併用フィルム、
を含み、
前記併用フィルムが、架橋剤と架橋したセルロースを含み、前記セルロースが、セルロースエーテルおよびセルロースエステルからなる群から選択され、かつ前記架橋剤が、式、
【化5】

(式中、各Xは個々にフェニル基および−NR2からなる群から選択され、ここで各Rは個々に水素、アルコキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシ基およびヒドロキシメチル基からなる群から選択され、そしてXの少なくとも1つが−NR2でかつRの少なくとも1つがアルコキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシ基およびヒドロキシメチル基からなる群から選択される)
を有する、偏光板。
[2]各Xが−NR2である、[1]に記載の偏光板。
[3]各Rがアルコキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシ基およびヒドロキシメチル基からなる群から選択される、[1]に記載の偏光板。
[4]各Rがアルコキシアルキル基である、[3]に記載の偏光板。
[5]各Xが−NR2であり、かつ各Rがメトキシメチル基である、[4]に記載の偏光板。
[6]前記偏光フィルムがポリビニルアルコールフィルムを含む、[1]に記載の偏光板。
[7]前記セルロースがセルロースエステルを含む、[1]に記載の偏光板。
[8]前記セルロースエステルがセルロースのC1-C20エステルを含む、[7]に記載の偏光板。
[9]前記セルロースエステルが、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、セルローストリブチレート、セルロースプロピオネート、セルローストリプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートブチレートサクシネート、セルロースプロピオネートブチレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、[7]に記載の偏光板。
[10]前記併用フィルムが、保護フィルム、補償フィルム、およびこれらの混合物からなる群から選択される、[1]に記載の偏光板。
[11]前記併用フィルムが前記第1および第2の外面の少なくともいずれかの上に接着剤を介して支持されている、[10]に記載の偏光板。
[12]前記併用フィルムが前記第1および第2の外面の少なくともいずれかに接着剤を使用することなく隣接している、[10]に記載の偏光板。
[13]光ディスプレイ装置において使用するための偏光板であって、前記偏光板が、
第1および第2の外面を有する偏光フィルム、ならびに
前記第1および第2の外面の少なくともいずれかの上に支持されるかまたは前記第1および第2の外面の少なくともいずれかに隣接する併用フィルム、
を含み、
前記併用フィルムが、架橋剤と架橋したセルロースを含み、前記セルロースが、セルロースエーテルおよびセルロースエステルからなる群から選択され、かつ前記架橋剤が、
式−OR’を有する少なくとも1つの基を含み、式中R’はアルキルであり、かつ、
エポキシ基および式、
【化6】

を有する基を含まない、偏光板。
[14]R’が、C2−C4アルキルからなる群から選択される、[13]に記載の偏光板。
[15]前記偏光フィルムがポリビニルアルコールフィルムを含む、[13]に記載の偏光板。
[16]前記セルロースがセルロースエステルを含む、[13]に記載の偏光板。
[17]前記セルロースエステルがセルロースのC1−C20エステルを含む、[16]に記載の偏光板。
[18]前記セルロースエステルが、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、セルローストリブチレート、セルロースプロピオネート、セルローストリプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートブチレートサクシネート、セルロースプロピオネートブチレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、[16]に記載の偏光板。
[19]前記併用フィルムが、保護フィルム、補償フィルム、およびこれらの混合物からなる群から選択される、[13]に記載の偏光板。
[20]前記併用フィルムが前記第1および第2の外面の少なくともいずれかの上に接着剤を介して支持されている、[19]に記載の偏光板。
[21]前記併用フィルムが前記第1および第2の外面の少なくともいずれかに接着剤を使用することなく隣接している、[19]に記載の偏光板。
[22]前記架橋剤がトリアジン架橋剤を含む、[13]に記載の偏光板。
[23]光ディスプレイ装置において使用するための偏光板を形成する方法であって、該方法が、
第1および第2の外面を有する偏光フィルムを準備すること、ならびに
併用フィルムを前記第1および第2の外面の少なくともいずれかに適用すること、
を含み、
前記併用フィルムが、架橋剤と架橋したセルロースを含み、前記セルロースが、セルロースエーテルおよびセルロースエステルからなる群から選択され、かつ前記架橋剤が、式、
【化7】

(式中、各Xは個々にフェニル基および−NR2からなる群から選択され、ここで各Rは個々に水素、アルコキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシ基およびヒドロキシメチル基からなる群から選択され、そしてXの少なくとも1つが−NR2でかつRの少なくとも1つがアルコキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシ基およびヒドロキシメチル基からなる群から選択される)
を有する、方法。
[24]各Xが−NR2である、[23]に記載の方法。
[25]各Rがアルコキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシ基およびヒドロキシメチル基からなる群から選択される、[23]に記載の方法。
[26]各Rがアルコキシアルキル基である、[25]に記載の方法。
[27]各Xが−NR2であり、かつ各Rがメトキシメチル基である、[4]に記載の方法。
[28]前記偏光フィルムがポリビニルアルコールフィルムを含む、[23]に記載の方法。
[29]前記セルロースがセルロースエステルを含む、[23]に記載の方法。
[30]前記セルロースエステルがセルロースのC1-C20エステルを含む、[29]に記載の方法。
[31]前記セルロースエステルが、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、セルローストリブチレート、セルロースプロピオネート、セルローストリプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートブチレートサクシネート、セルロースプロピオネートブチレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、[29]に記載の方法。
[32]前記併用フィルムが、保護フィルム、補償フィルム、およびこれらの混合物からなる群から選択される、[23]に記載の方法。
[33]前記併用フィルムが前記第1および第2の外面の少なくともいずれかの上に接着剤を介して支持されている、[32]に記載の方法。
[34]前記併用フィルムが前記第1および第2の外面の少なくともいずれかに接着剤を使用することなく隣接している、[32]に記載の方法。
[35]光ディスプレイ装置において使用するための偏光板を形成する方法であって、前記方法が、
第1および第2の外面を有する偏光フィルムを準備すること、ならびに
併用フィルムを前記第1および第2の外面の少なくともいずれかに適用すること、
を含み、
前記併用フィルムが、架橋剤と架橋したセルロースを含み、前記セルロースが、セルロースエーテルおよびセルロースエステルからなる群から選択され、かつ前記架橋剤が、
式−OR’を有する少なくとも1つの基を含み、式中R’はアルキルであり、かつ、
エポキシ基および式、
【化8】

を有する基を含まない、方法。
[36]R’が、C2−C4アルキルからなる群から選択される、[35]に記載の方法。
[37]前記偏光フィルムがポリビニルアルコールフィルムを含む、[35]に記載の方法。
[38]前記セルロースがセルロースエステルを含む、[35]に記載の方法。
[39]前記セルロースエステルがセルロースのC1−C20エステルを含む、[38]に記載の方法。
[40]前記セルロースエステルが、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、セルローストリブチレート、セルロースプロピオネート、セルローストリプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートブチレートサクシネート、セルロースプロピオネートブチレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、[38]に記載の方法。
[41]前記併用フィルムが、保護フィルム、補償フィルム、およびこれらの混合物からなる群から選択される、[35]に記載の方法。
[42]前記併用フィルムが前記第1および第2の外面の少なくともいずれかの上に接着剤を介して支持されている、[41]に記載の方法。
[43]前記併用フィルムが前記第1および第2の外面の少なくともいずれかに接着剤を使用することなく隣接している、[41]に記載の方法。
[44]前記架橋剤がトリアジン架橋剤を含む、[35]に記載の方法。
[45]光ディスプレイ装置において使用するための組成物であって、前記組成物が、架橋剤、ならびに、セルロースエーテルおよびセルロースエステルからなる群から選択されるセルロース、を溶媒系中に分散または溶解させて含み、前記組成物が、厚み約0.5から約15milを有する硬化フィルムに形成されたときに、波長約400から700nmを有する光の少なくとも約80%を透過させることができ、前記架橋剤が式、
【化9】

(式中、各Xは個々にフェニル基および−NR2からなる群から選択され、ここで各Rは個々に水素、アルコキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシ基およびヒドロキシメチル基からなる群から選択され、そしてXの少なくとも1つが−NR2でかつRの少なくとも1つがアルコキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシ基およびヒドロキシメチル基からなる群から選択される)
を有する、組成物。
[46]前記セルロースがセルロースエステルを含む、[45]に記載の組成物。
[47]前記セルロースエステルがセルロースのC1−C20エステルを含む、[46]に記載の組成物。
[48]前記セルロースエステルが、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、セルローストリブチレート、セルロースプロピオネート、セルローストリプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートブチレートサクシネート、セルロースプロピオネートブチレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、[46]に記載の組成物。
[49]各Xが−NR2である、[45]に記載の組成物。
[50]各Rが、アルコキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシ基およびヒドロキシメチル基からなる群から選択される、[49]に記載の組成物。
[51]各Rがアルコキシアルキル基である、[50]に記載の組成物。
[52]各Xが−NR2であり、かつ各Rがメトキシメチル基である、[51]に記載の組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスプレイ装置において使用するための偏光板であって、前記偏光板が、
第1および第2の外面を有する偏光フィルム、ならびに
前記第1および第2の外面の少なくともいずれかの上に支持されるかまたは前記第1および第2の外面の少なくともいずれかに隣接する併用フィルム、
を含み、
前記併用フィルムが、架橋剤と架橋したセルロースを含み、前記セルロースが、セルロースエーテルおよびセルロースエステルからなる群から選択され、かつ前記架橋剤が、
式−OR’を有する少なくとも1つの基を含み、式中R’はアルキルであり、かつ、
エポキシ基および式、
【化1】

を有する基を含まない、偏光板。
【請求項2】
R’が、C2−C4アルキルからなる群から選択される、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記偏光フィルムがポリビニルアルコールフィルムを含む、請求項に記載の偏光板。
【請求項4】
前記セルロースがセルロースエステルを含む、請求項に記載の偏光板。
【請求項5】
前記セルロースエステルがセルロースのC1−C20エステルを含む、請求項に記載の偏光板。
【請求項6】
前記セルロースエステルが、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、セルローストリブチレート、セルロースプロピオネート、セルローストリプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートブチレートサクシネート、セルロースプロピオネートブチレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項に記載の偏光板。
【請求項7】
前記併用フィルムが、保護フィルム、補償フィルム、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項に記載の偏光板。
【請求項8】
前記併用フィルムが前記第1および第2の外面の少なくともいずれかの上に接着剤を介して支持されている、請求項に記載の偏光板。
【請求項9】
前記併用フィルムが前記第1および第2の外面の少なくともいずれかに接着剤を使用することなく隣接している、請求項に記載の偏光板。
【請求項10】
前記架橋剤がトリアジン架橋剤を含む、請求項に記載の偏光板。
【請求項11】
光ディスプレイ装置において使用するための偏光板を形成する方法であって、前記方法が、
第1および第2の外面を有する偏光フィルムを準備すること、ならびに
併用フィルムを前記第1および第2の外面の少なくともいずれかに適用すること、
を含み、
前記併用フィルムが、架橋剤と架橋したセルロースを含み、前記セルロースが、セルロースエーテルおよびセルロースエステルからなる群から選択され、かつ前記架橋剤が、
式−OR’を有する少なくとも1つの基を含み、式中R’はアルキルであり、かつ、
エポキシ基および式、
【化2】

を有する基を含まない、方法。
【請求項12】
R’が、C2−C4アルキルからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記偏光フィルムがポリビニルアルコールフィルムを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記セルロースがセルロースエステルを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記セルロースエステルがセルロースのC1−C20エステルを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記セルロースエステルが、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、セルローストリブチレート、セルロースプロピオネート、セルローストリプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートブチレートサクシネート、セルロースプロピオネートブチレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記併用フィルムが、保護フィルム、補償フィルム、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記併用フィルムが前記第1および第2の外面の少なくともいずれかの上に接着剤を介して支持されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記併用フィルムが前記第1および第2の外面の少なくともいずれかに接着剤を使用することなく隣接している、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記架橋剤がトリアジン架橋剤を含む、請求項11に記載の方法。

【公開番号】特開2012−98752(P2012−98752A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−14286(P2012−14286)
【出願日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【分割の表示】特願2008−513682(P2008−513682)の分割
【原出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】