説明

架空地線の誘導電流利用電源装置

【課題】コアを分割した分割型のCTを利用した電源装置において、コアを大型化したり、コアの切断面を高度に加工したりすることなく、出力電力を増大させる。
【解決手段】分割型のCTであるCT20aとCT20bの2個のCTを架空地線10に取り付け、さらに各CT20a,20bの出力端子にコンデンサC1,C2を接続する。架空地線10に流れる誘導電流を各CT20a,20bによって取り出し、その出力電流をダイオード整流器40a,40bにより整流した後、電力変換回路50を介し負荷に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電鉄塔上で利用する装置に電気を供給するための電源装置のうち、送電線と並行して架設された架空地線に、コアを分割した分割型のCTを設置する方式の架空地線の誘導電流利用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、送電鉄塔上で利用する装置に電気を供給するための電源装置として、送電線と並行して架設された架空地線にCT(変流器)を設置し、送電線の電流によって架空地線に発生する誘導電流を取り出すようにした電源装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このCTを利用した電源装置のうち、架空地線をCTのコアに貫通させる貫通形CTを利用するものでは、架空地線への設置及び取り外しを容易にする上で、CTのコアを分割した、いわゆる分割型のCT(例えば特許文献2,3参照)を利用することが好ましい。
【0004】
しかし、分割型のCTとしたとしても、原形は貫通形CTであることから、一次巻線の巻数はコアに貫通した架空地線による1ターンのみとなるので、CTから大きな電力を取り出すことは困難である。大きな電力を取り出すには大型のコアが必要であり、分割型のCTの場合、コアが大型化するほど切断面の加工が困難になる傾向があり、相乗的にコアの製作が難しくなるという問題点がある。
【0005】
また、コアの切断面に隙間が生じることで出力電力が減少したり、特性のばらつきが生じたりするため、切断面には高度な加工が必要という問題点もある。
【特許文献1】特公昭55−27530号公報
【特許文献2】特開平10−257654号公報
【特許文献3】特開平10−142285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、コアを分割した分割型のCTを利用した電源装置において、コアを大型化したり、コアの切断面を高度に加工したりすることなく、出力電力を増大させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コアを分割した分割型のCTのコアに、送電線と並行して架設された架空地線を貫通して架空地線に発生する誘導電流を取り出す架空地線の誘導電流利用電源装置において、CTの出力端子にコンデンサを接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、CTの出力端子に接続したコンデンサの静電容量を適切な値とすることにより、コアを大型化することなく出力電力を増大させることができる。
【0009】
また、コアの切断面の加工精度がばらついたとしても、同じくCTの出力端子に接続したコンデンサの静電容量を適切な値とすることにより、大きな出力電力を得ることができる。
【0010】
さらに、複数のCTから並列に出力電流を取り出す場合、各CTの出力端子にコンデンサを接続することにより、各CTの特性のばらつきを吸収し、各CTが最大の出力電流を取り出せる出力電圧を実用上問題ない程度まで一致させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1は本発明の電源装置を示す基本構成図であり、図2はその等価回路図である。
【0013】
図1において、コア21を上下に2分割した分割型のCT20のコア21に、図示しない送電線と並行して架設された架空地線10を貫通させており、これによって、架空地線10に発生する誘導電流(図2に示す負荷電流i)を取り出すようにしている。
【0014】
図2に示すように、負荷電流iが大きくなるほど負荷抵抗Rが消費する電力が大きくなることは明らかである。そして、図2においてCT20の出力端子にコンデンサCを接続しなかった場合(従来例)、その負荷電流iの値は式1で表される。
【数1】

【0015】
これに対し、図2に示すようにCT20の出力端子にコンデンサCを接続すると、その負荷電流iは式2で表される。
【数2】

【0016】
ここで、式1,2において、ωは架空地線を流れる電流の角周波数、L,Lはインダクタンス、nは巻線数、Iは架空地線を流れる電流、Qはコンデンサの静電容量である。
【0017】
式2からわかるように、CT20の出力端子にコンデンサCを接続した場合、このコンデンサCの静電容量の値Qによって、式2の分母の第1項 R(1−ωQ(L+L))の大きさを調節できる。すなわち、式2の第1項が0となるように、静電容量がQ=1/{ω(L+L)}となるコンデンサCを選べば、従来例である式1で表される負荷電流iの値より大きな値を得ることが可能である。
【0018】
一方、図1のコア21における切断面22の加工精度の良否は、図2ではインダクタンスL、Lの大きさに、特にLの大きさに影響する。加工精度がよく切断面22の隙間が小さければL、Lは大きく、逆に隙間が大きければL、Lは小さくなる。本発明では切断面22の加工精度がばらついても、対応するインダクタンスL、Lの値に応じて最適なコンデンサCを接続することで大きな電流を得ることができる。すなわち、対応するインダクタンスL、Lの値に応じて、上述のように静電容量がQ=1/{ω(L+L)}となるコンデンサCを接続することで大きな電流を得ることができる。
【実施例】
【0019】
図3は本発明の実施例を示す説明図である。同図に示す実施例では、送電鉄塔30を挟んだ両側の架空地線10に第1のCT20aおよび第2のCT20bを設置している。そして、それぞれのCT20a,20bの出力端子にコンデンサC1およびC2を接続し、ダイオード整流器40a,40bで整流した電流を並列に接続している。こうして得られた電流を電力変換回路50を介し負荷に供給する。
【0020】
送電鉄塔30を挟んだ両側の第1のCT20aおよび第2のCT20bにおいて、それぞれの出力端子に接続されたコンデンサC1およびC2は、先に説明したように、第1のCT20aおよび第2のCT20bから個別に取得できる電力を増大させる調整手段として有効に機能する。
【0021】
また、図3ように、複数のCTからの出力を並列にする場合、回路構成上、各CTは同じ出力電圧で動作することとなる。この場合、それぞれのCTが最大の出力電力を取り出せる出力電圧が同じでないと、効率よく電力を取り出せない。このような状況において、各CTの出力端子に接続されたコンデンサは、各CT特性のばらつきを吸収し、CTが最大の出力電力を取り出せる出力電圧を実用上問題ない程度まで調節する手段としても有効に機能する。
【0022】
例えば、図3において、適当な静電容量の値を有するコンデンサC1,C2を選択することにより、第1のCT20aおよび第2のCT20bの最大出力電力を取り出せる出力電圧を一致させるための調整が可能であり、複数のCT全体から取得できる電力を増大する場合の調整手段としてコンデンサC1,C2が有効に機能する。
【0023】
なお、図3において、第1のCT20aおよび第2のCT20bからの電流は、ダイオード整流器40a,40bを通したあとで並列接続されることにより、コンデンサClとコンデンサC2が交流的に並列にならないため、一方のCTとコンデンサの調整が他方に影響を与えず、それぞれ独立でのキャパシタンス(静電容量)の調整が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、送電鉄塔上で利用する情報伝送装置、さらに具体的には送電線保守情報伝送装置等の装置に電気を供給するための電源装置として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の電源装置を示す基本構成図である。
【図2】図1に示す電源装置の等価回路図である。
【図3】本発明の実施例を示す説明図である
【符号の説明】
【0026】
10 架空地線
20,20a,20b CT(変流器)
21 コア
22 コアの切断面
30 送電鉄塔
40a,40b ダイオード整流器
50 電力変換回路
C,C1,C2 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアを分割した分割型のCTのコアに、送電線と並行して架設された架空地線を貫通して架空地線に発生する誘導電流を取り出す架空地線の誘導電流利用電源装置において、CTの出力端子にコンデンサを接続したことを特徴とする架空地線の誘導電流利用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−197758(P2006−197758A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8194(P2005−8194)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(000110778)ニシム電子工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】