説明

柄及びそれを用いた手動利器

【課題】柄と刃部が全体的に調和のとれた一体感のある縞模様を有する刃物を提供する。
【解決手段】中心部に位置する刃芯鋼板21の両側面にニッケル層22、ステンレス鋼層23を交互に接合して積層したニッケル・ダマスカス鋼板20を用いて、柄11と刃部12を形成し、柄11と刃部12の表面にニッケル層22及びステンレス鋼層23の切断面によって縞模様を表出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柄及びそれを用いた手動利器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、包丁やナイフの刃部には、外観を向上するために、例えばニッケル・ダマスカス鋼板を用いることによって、表面に縞模様を形成している。この刃部は柄と別体で構成され、最終段階で、柄に刃部を連結するようになっている。
【0003】
一方、刃物の柄は刃部と別の例えば木材あるいは合成樹脂等の材料によって単体で構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の刃物は、刃部にダマスカス鋼板特有の縞模様が形成されているので、刃部の外観を向上することができる。しかし、柄は刃部と異なる材料によって形成されているので、通常、刃部のような趣のある縞模様を形成することが難しいという問題があった。
【0005】
従来の柄として、木目による縞模様を表出したものはあったが、刃部と柄が別の材料によって形成されているので、全体として調和のとれた一体感のある縞模様を有する刃物を製造することができないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、縞模様の施された趣のある柄を提供することにある。
本発明の別の目的は、柄と作動部が全体的に調和のとれた一体感のある縞模様を有する手動利器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数の金属層を積層接着して構成された棒状又は厚板状の積層素材の左右両側面を弧状に湾曲するように成形して積層された前記金属層によって縞模様を表出したことを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、複数の金属層を積層接着して構成された棒状又は厚板状の積層素材の左右両側面を弧状に湾曲するように成形して積層された前記金属層によって縞模様を表出した柄の先端部に手動利器を構成する作動部を連結したことを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記手動利器は刃物であって、柄の先端部には刃部が一体又は別体に連結されていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記柄及び刃部の積層素材は、刃芯鋼板の左右両側表面に対し、種類の異なる複数の金属層を接合して積層したダマスカス鋼板であって、刃部に積層素材による縞模様を表出したことを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の柄の発明によれば、柄の表面に複数の金属層による縞模様が現れるので、柄の表面を趣のある意匠性に優れた外観とすることができる。
請求項2記載の手動利器の発明によれば、手動利器の柄の表面に複数の金属層による縞模様が現れるので、柄の表面を趣のある意匠性に優れた外観とすることができる。
【0011】
請求項3記載の手動利器の発明によれば、刃物の柄の表面を趣のある意匠性に優れた外観とすることができる。
請求項4記載の手動利器の発明によれば、柄と刃部に全体的に調和のとれた一体感のある縞模様が現れるので、刃物の表面を趣のある意匠性に優れた外観とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した柄を備えた手動利器としてのナイフの一実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。
このナイフは、ニッケル・ダマスカス鋼板よりなる柄11に対し、同じくニッケル・ダマスカス鋼板よりなる刃部12が一体に形成されている。前記柄11と刃部12の境界部には口金部13が一体に形成されている。図2に示すように、前記柄11の前記口金部13の近傍には幅狭部14が形成されている。前記柄11の後端部には、紐等を挿通するための挿通孔15が水平方向に貫通形成されている。
【0013】
次に、前記ナイフの製造方法について説明する。
このナイフの素材として、図6に示す鍛造により形成された積層素材としてのニッケル・ダマスカス鋼板20が用いられる。このニッケル・ダマスカス鋼板20は、中心部に位置する刃芯鋼板21と、その左右両側面に対し、ニッケル層22と、ステンレス鋼層23を交互に接合して積層させたものである。前記刃芯鋼板21として、例えばモリブデン鋼をベースに、コバルト・バナジウム・クロームを添加した超硬質合金鋼を用いている。前記ニッケル層22と鋼層23は、例えば片側16層、全体として32層に重ね合わせた本鍛造ニッケルダマスカス仕上げとなっている。
【0014】
上記ニッケル・ダマスカス鋼板20を用いて、図1及び図2に示すナイフを製造するには、図7に示すように、ニッケル・ダマスカス鋼板20の材料を工作機械により切削して柄11、刃部12、口金部13及び幅狭部14を形成すればよい。
【0015】
この切削工程においては、最初に刃部12となるニッケル・ダマスカス鋼板20の一部を工作機械のクランプ機構によりクランプした状態で、柄11となるニッケル・ダマスカス鋼板20を数値制御される工具によって切削作業を行う。次に、切削された柄11をクランプ機構によりクランプした状態で、刃部12となるニッケル・ダマスカス鋼板20の切削作業を行う。
【0016】
前記柄11の中心部は図3に示すように上下両端部が円弧状に切削されているので、柄11を側方から見た場合に図1に示すようニッケル層22及びステンレス鋼層23の切断層による縞模様が表れる。同様に幅狭部14も図4に示すように上下両端部が円弧状に切削されているので、柄11を側方から見た場合に図1に示すように縞模様が表れる。さらに、刃部12は図5に示すように下端ほど幅狭となるテーパ状に形成されているので、図1に示すように縞模様が表れる。
【0017】
上記実施形態のナイフによれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、柄11がニッケル・ダマスカス鋼板20の左右両側面を弧状に湾曲するように切削成形して積層された前記ニッケル層22、鋼層23によって縞模様を表出したので、図1に示すように柄11の表面に趣のある縞模様を表出することができる。
【0018】
(2)上記実施形態では、柄11と刃部12が同一のニッケル・ダマスカス鋼板20によって形成されているので、ナイフの製造を容易に行うことができるとともに、柄11と刃部12に全体的に調和のとれた一体感のある縞模様を形成することができ、ナイフの意匠性を向上することができる。
【0019】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図8に示すように、柄11のみを積層構造とし、刃部12を鋼板21のみによって形成するようにしてもよい。
【0020】
・図9に示すように、柄11の内部の刃芯鋼板21を省略するとともに、この柄11の先端部に刃部12を連結するようにしてもよい。
・前記実施形態では、ナイフについて具体化したが、これ以外の例えば、包丁、スプーン、フォーク、鋏あるいはドライバー等の柄を備えた各種の手動利器に適用してもよい。
【0021】
・ニッケル・ダマスカス鋼板20以外に、刃芯鋼板21を用いないで各種の金属層を接合して積層した棒状又は厚肉板状の積層材料を用いてもよい。
・前記ニッケル・ダマスカス鋼板20に代えて、前記刃芯鋼板21の左右両表面に対し、銅層とステンレス鋼層23を交互に接合して積層したものや、真鍮層とステンレス鋼層23を交互に接合して積層したものを用いてもよい。又、前記刃芯鋼板21の左右両表面に対し、銅層、ステンレス鋼層23及び真鍮層を交互に接合して積層したものを用いたり、ニッケル層22、銅層、真鍮層及びステンレス鋼層23を交互に接合して積層したもを用いたり、種類の異なるステンレス鋼層23を交互に接合して積層したものを用いたりしてもよい。
【0022】
・前記ステンレス鋼層23として、炭素含有量の低い焼の入らない材料(例えばJIS規格:SUS303,SUS304)を用いてもよく、炭素含有量の高い焼入れ可能な材料(例えばJIS規格:SUS402J1,SUS402J2)を用いてもよい。
【0023】
・前記ダマスカス鋼板20として、柄11を構成する部分の厚さ寸法が刃部12を構成する部分の厚さ寸法よりも予め大きく形成したものを用いてもよい。
上記実施形態から把握される請求項以外の技術的思想について以下に説明する。
【0024】
(1)請求項4において、前記ダマスカス鋼板は、柄を構成する部分が刃部を構成する部分よりも予め肉厚寸法に形成されていることを特徴とする刃物。
上記の刃物は、材料費を低減することができる。
【0025】
(2)請求項3又は4において、柄の先端寄りの部分には、幅狭部が形成されていることを特徴とする刃物。
上記の刃物は、幅狭部によって縞模様が多様化されて美観を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の柄を備えた刃物としてのナイフを具体化した一実施形態を示す正面図。
【図2】ナイフの平面図。
【図3】図1の1−1線拡大断面図。
【図4】図1の2−2線拡大断面図。
【図5】図1の3−3線拡大断面図。
【図6】ナイフの素材を示すニッケル・ダマスカス鋼板の一部省略平断面図。
【図7】ナイフの製造方法を示す平断面図。
【図8】この発明の別の実施形態を示すナイフの部分平断面図。
【図9】この発明の別の実施形態を示すナイフの部分平断面図。
【符号の説明】
【0027】
11…柄、12…刃部、20…ダマスカス鋼板、21…刃芯鋼板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属層を積層接着して構成された棒状又は厚板状の積層素材の左右両側面を弧状に湾曲するように成形して積層された前記金属層によって縞模様を表出したことを特徴とする柄。
【請求項2】
複数の金属層を積層接着して構成された棒状又は厚板状の積層素材の左右両側面を弧状に湾曲するように成形して積層された前記金属層によって縞模様を表出した柄の先端部に手動利器を構成する作動部を連結したことを特徴とする手動利器。
【請求項3】
請求項2において、前記手動利器は刃物であって、柄の先端部には刃部が一体又は別体に連結されていることを特徴とする手動利器。
【請求項4】
請求項3において、前記柄及び刃部の積層素材は、刃芯鋼板の左右両側表面に対し、種類の異なる複数の金属層を接合して積層したダマスカス鋼板であって、刃部に積層素材による縞模様を表出したことを特徴とする手動利器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−61944(P2007−61944A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249962(P2005−249962)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(594044417)株式会社大野ナイフ製作所 (5)
【Fターム(参考)】