説明

柑橘類入り包装体及び柑橘類の保存方法

【課題】 薬品を用いることなく、柑橘類の腐れ等の障害を減らし、歩留まりの向上又は出荷期間の延長が可能となる柑橘類を長期貯蔵できる包装体を提供する。
【解決手段】 柑橘類を合成樹脂フィルムで包装した包装体であって、前記包装体の柑橘類100gあたりの酸素透過速度が130〜7000cc/100g・日・atmであり、前記柑橘類は、前記柑橘類の収穫時の質量に対して2〜13%質量を減少させた後前記包装体で包装されている柑橘類入り包装体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘類入り包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
柑橘類は、収穫後に出荷調整や柑橘類に含まれる酸を減らすことを目的に1ヶ月以上の長期間に渡って貯蔵されることがある。この間に、腐敗、しおれ、カビの発生などの現象が生じ、貯蔵中の柑橘類の劣化が進んで、ジュースなど加工品用やさらには廃棄となるものが多く、歩留まりの向上が求められている。また、4ケ月以上の出荷時期の延長が求められている柑橘類があるもののこれといった有効な手段が無いのが現状である。
【0003】
柑橘類の鮮度保持に関しては、特開2004−208558号公報があり、当該公報の特許請求の範囲に柑橘類を天然イソチオシアン酸アリルオイル含有製剤と併存させて、イソチオシアン酸アリル空間濃度として1〜50mg/Lの条件下で保存することを特徴とする青果物の鮮度保持方法が記載されている。これによって、防黴作用効果が発揮され、柑橘類の不良率を低減できるとされている。しかし、この方法では、薬品を用いること、薬品が揮発性で取り扱い難いこと、使用条件が難しいこと、薬品の臭いが果実にしみ込む可能性があるなどの問題がある。
【0004】
特開平10−243767号公報では、10〜35℃の温度条件でスダチ1grあたりの酸素透過量が3.6〜35cc/24h・atm、二酸化炭素透過量3.6〜39.4cc/24h・atmであり、水蒸気透過率が40gr/24h・m2(JIS Z0208,40℃,90%RH、0.1mm)以下の特性を有するプラスチックフィルムでスダチを密封包装するスダチの鮮度保持包装体について記載されている。貯蔵中に生じる腐敗の防止方法として包装体内を適度なガス組成にすることが記され、当該公報の実施例では14日間の保存の結果が記載されているが、それ以上の柑橘類を長期に保存する点については何ら記載されていない。
【特許文献1】特開2004−208558号公報
【特許文献2】特開平10−243767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、薬品を用いることなく、柑橘類の腐れ等の障害を減らし、歩留まりの向上又は出荷期間の延長が可能となる柑橘類を長期貯蔵できる包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
柑橘類を合成樹脂フィルムで包装した包装体であって、前記包装体の柑橘類100gあたりの酸素透過速度が130〜7000cc/100g・日・atmであり、前記柑橘類は、前記柑橘類の収穫時の質量に対して2〜13%質量を減少させた後前記包装体で包装されている柑橘類入り包装体である。
更に好ましい形態としては、前記合成樹脂フィルムの水蒸気透過度が2〜30g/m2・日(40℃、90RH)である柑橘類入り包装体であり、合成樹脂フィルムに微細孔があり、柑橘類100gあたりの包装体の開口面積が3.1×10-3〜8.5×10-2mm2であり、柑橘類が1個入りである柑橘類入り包装体である。
また、前記に記載の柑橘類入り包装体を用いて保存された柑橘類の保存方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法に従うと、貯蔵中に於ける柑橘類の腐敗等を減らすことができ、柑橘類の歩留まりを向上させることができ、従って、従来よりも長期に亘る柑橘類の貯蔵が可能となるため柑橘類の出荷調整が可能となり、通常流通できなかった時期に柑橘類を供給することが可能となる。また、流通・市場における留置期間を長くできるため、流通・市場における柑橘類の腐敗等を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、柑橘類の包装体に関するものである。柑橘類の種類としては、特に限定されず、本発明を適用することができるが、例えば、不知火、ポンカン、清見柑、レモン、ライム、河内晩柑、甘夏、八朔、ブンタン、ニューサマーオレンジ、はるみ、せとか、ネーブル、カラーマンダリン、イヨカン、温州ミカンなどが挙げられる。本発明は、これらの内、不知火、カラーマンダリン、甘夏などの中晩生柑橘類やレモン、ライムなどの香酸柑橘類に好ましく用いることができる。
本発明は、これら柑橘類を、1ヶ月間以上の長期にわたって保存する際に特に有効である。特にこれらの中で中晩生柑橘類や香酸柑橘類は、減酸や出荷調整のために長期貯蔵されることが望まれ、貯蔵時の歩留まり向上が求められている。
【0009】
これら柑橘類は、収穫後に、収穫時の柑橘類の質量に対して2〜13%の質量を減少させてから柑橘類を包装することが好ましい。収穫時の柑橘類の質量に対して2〜13%の質量を減少させてから柑橘類を包装することにより、柑橘類に発生する腐敗、ヤケ(果皮が褐色になって陥没する症状)、カビの発生をより抑制しやすくなる。質量減少が2%未満では、腐敗、カビ発生の抑制効果が少なくなり、13%を越えると、果実のしおれが目だって商品性がなくなってしまう可能性がある。好ましくは、収穫時の柑橘類の質量に対して3〜10%の質量を減少させことであり、より好ましくは5〜9%である。
【0010】
柑橘類は、通常、収穫した後その日の内に農家の納屋、倉庫、出荷場などで一旦保存され、その後、出荷スケジュールに合わせて包装、梱包するのための作業場等へ運ばれることが多い。本発明における質量の減少は、柑橘類を収穫後、納屋、倉庫、集荷場などに一旦保存させた時からの質量を測定し、所定の質量減少となった時点で当該柑橘類の包装を行うことにより、柑橘類の長期の保存に適していることを見出したことにある。
【0011】
収穫時の柑橘類の質量に対して2〜13%の質量を減少させる方法としては、特に限定されないが、例えば無包装のまま10〜20kg程度の柑橘類をコンテナに入れて風通しの良い倉庫等で常温保存する方法があり、一定の温度、又は一定の温度と湿度に調整可能な倉庫内で保存する方法がある。その期間としては、概略、5〜40日程度の保存が目安であるが、年度、産地、収穫時期、品種、保存条件などによって違いがあるため、抜き取りでいくつかの果実の質量変化を測定して確認することが好ましい。保存は、冷蔵庫内でも良いが、あまり湿度が高いと時間がかかるので、この場合は、過湿しないで保存することが好ましい。
【0012】
これらの柑橘類は、所定の質量減少に達すると、合成樹脂フィルムよりなる包装袋にて包装され柑橘類の包装体となる。柑橘類を包装袋に入れた後、包装袋の開口部を閉じる。包装袋の開口部を閉じる方法としては、例えば、ヒートシール、カシメ、バックシール、輪ゴム、結束帯、糊付け、テープ止め、開口部を束ねて折り返すか束ねた後に束ねた開口部をひねって折り返し、さらに果実の自重や隣接する果実と接触させる等によって開口部を押さえつける方法などが用いられるがこの限りではない。
【0013】
これら柑橘類の包装体は、包装袋に1〜3個程度の少数の柑橘類で包装されることが好ましく、1個のみ入っていることがより好ましい。
柑橘類は、収穫時や栽培時の傷、病原菌の付着などによって、ある程度の個体で腐敗やカビが生じるのは避けられない。例えば、大きな袋に大量の柑橘類を入れた場合、1個にこのような症状が発生すると、周囲の個体へ伝染してしまうことがある。また、傷み始めた果実は、植物ホルモンの一種であるエチレンを生成するが、これが他の果実のヘタの枯れ、へたの脱落などを誘発する。これらを防止するには、1個ずつ包装することが好ましい。
【0014】
包装体に用いられる包装袋の合成樹脂フィルムの材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリ乳酸など合成樹脂製のフィルムが用いられる。これらのフィルムの内、いずれかの素材を単独あるいは複数積層して用いればよい。また、これらは延伸してあってもよく、防曇加工や印刷が施してあっても良い。これらの内、延伸ポリプロピレン(OPP)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、低価格であり、程よい保湿性を有することからより好ましい。
【0015】
これら合成樹脂フィルムの厚みは、経済的には60μm以下が好ましく、強度的に10μm以上が好ましい。より好ましくは、20μm以上45μm以下である。さらに好ましくは、25〜40μmである。
【0016】
本発明の包装体において用いる合成樹脂フィルムの水蒸気透過度は、2〜30g/m2・日(40℃、90RH)であることが好ましい。水蒸気透過度が2g/m2・日(40℃、90RH)未満であると、包装体内の結露が多くなり、ヤケなどの劣化が生じやすくなり、30g/m2・日(40℃、90RH)を越えると、保存時に柑橘類にしおれが生じる可能性がある。更に好ましくは、2〜20g/m2・日(40℃、90RH)である。
【0017】
本発明の包装体において、23℃における柑橘類100gあたりの包装体の酸素透過速度は、130cc/100g・day・atm以上、7000cc/100g・day・atm以下である。酸素透過速度が130cc/100g・day・atm未満では、酸欠や炭酸ガス障害による果皮の腐敗や異臭が生じ、7000cc/100g・day・atmを越えるとヘタ枯れ、腐敗などが多くなる。より好ましくは、柑橘類100gあたりの包装体の酸素透過速度は、160cc/100g・day・atm以上、4200cc/100g・day・atm以下である。
【0018】
本発明に用いられる合成樹脂フィルム自身も酸素を透過するが、包装体の酸素透過速度を調節するために、合成樹脂フィルムに、傷、クラック(裂け目)、平均孔径が10〜100μmの微細孔、長さ1mm以上8mm以下の切れ込みなどの加工を施すことが好ましい。微細孔は、小さすぎると孔の数が多数必要であり、大きすぎると、孔1個あたりの酸素透過速度が大きすぎて、包装体の酸素透過速度の調節が難しくなる可能性があり、平均孔径が10〜100μmの微細孔が好ましい。
傷とクラックは、包装体の見栄えを考慮すると1個あたりの大きさが100μm以下であることが好ましい。切れ込みは、1個当たりの長さが8mmを超えると1袋あたりの切れ込み数が少なくなり、包装体の酸素透過速度及び二酸化炭素透過速度を調節する精度が悪くなる可能性があるので8mm以下が好ましい。さらに好ましくは、切れ込みは1mm以上5mm以下の切れ込みである。酸素透過速度を制御しやすい点より微細孔が好ましい。
【0019】
合成樹脂フィルムの酸素透過速度の測定方法は下記の方法による。
(1)袋の準備
酸素透過量を測定するフィルムで袋を作成する。この際、フィルム以外から酸素が漏れ出さないように、ヒートシールで袋を作成して密封する。測定する袋のサイズは、袋の内表面積を0.06m2以上とする。なお、以下の全ての作業は、大気中で行う。
(2)窒素ガスの封入
ヒートシール等で袋を密封した後、アスピレーター等を用いて袋を脱気する。脱気は、袋の両面が貼りつくまで行う。次に、この袋に白硬注射筒を用いて窒素ガス(純度99.9%以上)を充填する。ガスの注入量は、袋サイズによるが、フィルムにテンションがかからない範囲で極力多く入れ、注射筒の目盛りを用いて測定する。なお、ガスの脱気、注入は、注射針を袋に突き刺して行う。針を刺す際は、フィルムに両面テープを貼り、この上からポリプロピレンフィルム製の粘着テープ(以下「PPテープ」という)を貼り付ける。また、針を抜いた後は、速やかにPPテープで針孔を塞ぐ。袋に貼るテープは、4.5cm2以下の面積に収まるようにする。また、微細孔フィルムの場合は、微細孔を塞がないように注意する。
【0020】
(3)初期酸素濃度測定
窒素ガス充填直後(t=0)の袋内の初期酸素濃度(C0)を測定する。袋内のガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフィー(TCD)で袋内の初期酸素濃度(C0)を求める。C0は0.2%以下であり、これを超える場合は、作業をやり直す。
酸素濃度測定のためのサンプリングガスは、10cc以下とする。ガスクロマトグラフィーに注入する場合は、1cc程度を注入する。
(4)袋の保存
初期酸素濃度を測定した袋は、23℃、60%RH(恒温恒湿庫)で保存する。このとき、袋の上に物が載ったり、恒温恒湿庫のファンの風が直撃したりしないように静置する。
【0021】
(5)保存中の袋内酸素濃度の測定及び酸素透過量の計算
袋内酸素濃度の測定は、窒素ガス充填直後と3時間以上経過後に酸素濃度が1%以上7%以下の範囲内で2点以上の合計3点以上測定し、経過時間t(hr)と袋内酸素濃度間に比例関係(相関係数が0.98以上)が成り立つ必要がある。相関係数が成り立たない場合は再試験を行う。
フィルムの酸素透過量が大きすぎて袋内酸素濃度の上昇が速すぎ、この条件をクリアできない場合は、フィルムの一部を酸素透過量が測定しているフィルムより小さく既知である同じ材質のフィルムと張り合わせて袋を作成して同様に行えばよい。この際、袋の表面積は既知である別のフィルムと貼り合わせた部分は除き、求められた酸素透過量より既知のフィルム部分の酸素透過量を差し引いたものが測定フィルムの酸素透過量となる。
酸素透過量は、経過時間が長いほうの値を用いて式1を計算する。

F=1.143×(Ct−C0)×V/t/s (式1)
但し、F : 酸素透過量(cc/m2・day・atm)
t : 窒素ガス充填後t時間後における袋内酸素濃度(%)
0 : 窒素ガス充填直後の袋内酸素濃度(%)
V : 充填した窒素ガスの量(cc)
t : ガス充填時からの経過時間(hr)
s : 袋の表面積(m2
【0022】
合成樹脂フィルムの水蒸気透過度は、透湿カップ法(JIS Z0208)で測定した。
【0023】
微細孔の開口面積は、柑橘類100gあたり3.1×10-3〜8.5×10-2mm2であることが好ましい。開口面積が3.1×10-3mm2未満では、柑橘類に腐敗、異味、異臭が生じやすく、8.5×10-2mm2より大きいと鮮度保持効果が弱くなる可能性がある。より好ましくは、開口面積は柑橘類100gあたり4.3×10-3〜8.5×10-2mm2である。微細孔は、包装体あたり2個以上設けることが好ましい。
【0024】
柑橘類を長期保存する場合の保存温度は、5℃以上15℃以下であることが好ましい。5℃未満では低温障害によって果皮にピッティング(果皮が褐変して凹んだ状態)を生じる可能性があり、15℃を越えると、ヘタ枯れ、腐敗やカビの発生などの劣化が生じる可能性がある。さらに好ましくは、5℃以上12℃以下である。
【0025】
本発明を用いることにより、柑橘類は1ケ月以上の長期保存することができ、低温での温度管理と併用することで、最長で6ケ月以上の長期保存も可能であり、そのような柑橘類として、例えば、レモンがある。当然のことながら、柑橘類は、出荷調整など目的として長期保存されるものであるから、市場の状況を見て適宜保存を終了し、出荷しても良い。この場合、柑橘類の個々の包装体は、例えば、適当なダンボール箱にて複数個包装され、市場へ出荷される。
【0026】
以下実施例で本発明を説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
《実施例1》
厚さ30μmの防曇加工を施した二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(水蒸気透過度5g/m2・日(40℃、90%RH))で内寸130×170mmの袋を作製した。袋には、開口面積3.4×10-3mm2の孔3個をあけた。この袋に、収穫後に無包装で常温保存して質量を9%減少させた国産レモン1個(包装時重量、平均135g)を入れて、開口部をヒートシールで密封した。なお、サンプル数は50袋である。
このとき、包装体の23℃におけるレモン100gあたりの酸素透過速度は、337cc/100g・day・atmであり、レモン100gあたりの開口面積は、7.6×10-3mm2/100gである。
このレモンの包装体を8℃で187日間保存(10月下旬から開始)してレモンの品質を評価したところ、しおれ、腐敗などが軽減されて、不良率(販売できない果実の率)7%と、十分に商業ベースで実用可能なレベルを維持していた。
《実施例2》
厚さ30μmの防曇加工を施した二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(水蒸気透過度5g/m2・日(40℃、90%RH))で内寸130×170mmの袋を作製した。袋には、開口面積4.3×10-3mm2の孔5個をあけた。この袋に、収穫後に無包装で常温保存して質量を4%減少させた国産レモン1個(包装時重量、平均136g)を入れて、開口部をヒートシールで密封した。なお、サンプル数は50袋である。
このとき、包装体の23℃におけるレモン100gあたりの酸素透過速度は、657cc/100g・day・atmであり、レモン100gあたりの開口面積は、1.6×10-2mm2/100gである。
このレモンの包装体を8℃で187日間保存(10月下旬から開始)してレモンの品質を評価したところ、しおれ、腐敗などが軽減されて、不良率(販売できない果実の率)8%と、十分に商業ベースで実用可能なレベルを維持していた。
《実施例3》
厚さ30μmの防曇加工を施した二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(水蒸気透過度5g/m2・日(40℃、90%RH))で内寸130×170mmの袋を作製した。袋には、開口面積3.4×10-3mm2の孔3個をあけた。この袋に、収穫後に無包装で常温保存して質量を9%減少させた国産レモン1個(包装時重量、平均137g)を入れて、開口部をヒートシールで密封した。なお、サンプル数は50袋である。
このとき、包装体の23℃におけるレモン100gあたりの酸素透過速度は、332cc/100g・day・atmであり、レモン100gあたりの開口面積は、7.5×10-3mm2/100gである。
このレモンの包装体を常温で153日間保存(10月下旬から開始)してレモンの品質を評価したところ、しおれ、腐敗などが軽減されて、不良率(販売できない果実の率)4%と、十分に商業ベースで実用可能なレベルを維持していた。
【0027】
《実施例4》
厚さ25μmの線状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(水蒸気透過度16g/m2・日(40℃、90%RH))で内寸150×200mmの袋を作製した。袋には、開口面積5.1×10-3mm2の孔26個をあけた。この袋に、収穫後に無包装で常温保存して質量を4%減少させた国産カラーマンダリン1個(包装時重量、平均166g)を入れて、開口部をヒートシールで密封した。なお、サンプル数は44袋である。
このとき、包装体の23℃におけるカラーマンダリン100gあたりの酸素透過速度は、3979cc/100g・day・atmであり、カラーマンダリン100gあたりの開口面積は、8.1×10-2mm2/100gである。
このカラーマンダリンの包装体を常温で30日間保存(4月中旬から開始)してカラーマンダリンの品質を評価したところ、しおれ、腐敗などが軽減されて、不良率(販売できない果実の率)4%と、十分に商業ベースで実用可能なレベルを維持していた。
《実施例5》
厚さ25μmの線状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(水蒸気透過度16g/m2・日(40℃、90%RH))で内寸200×200mmの袋を作製した。袋には、開口面積4.5×10-3mm2の孔7個をあけた。この袋に、収穫後に無包装で常温保存して質量を5%減少させた国産の不知火1個(包装時重量、平均273g)を入れて、開口部をヒートシールで密封した。なお、サンプル数は49袋である。
このとき、包装体の23℃における不知火100gあたりの酸素透過速度は、711cc/100g・day・atmであり、不知火100gあたりの開口面積は、1.2×10-2mm2/100gである。
この不知火包装体を8℃で80日間保存(3月中旬から開始)して不知火の品質を評価したところ、腐敗、カビなどが軽減されて、不良率(販売できない果実の率)9%と、十分に商業ベースで実用可能なレベルを維持していた。
【0028】
《比較例1》
収穫後すぐの国産レモン1個(包装時重量、平均137g)を入れた以外は、実施例1と同様にして開口部をヒートシールで密封した。このとき、23℃におけるレモン100gあたりの酸素透過速度は、332cc/100g・day・atmであり、レモン100gあたりの開口面積は、7.5×10-3mm2/100gである。
このレモン包装体を8℃で187日間保存(10月下旬から開始)してレモンの品質を評価したところ、しおれは、見られなかったが、腐敗、カビなどが多く発生して、不良率(販売できない果実の率)25%と、実用化困難な状態であった。
《比較例2》
レモンの質量減少が1%である以外は、実施例1と同様に国産レモン1個(包装時重量、平均139g)を入れて、開口部をヒートシールで密封した。
このとき、包装体の23℃におけるレモン100gあたりの酸素透過速度は、327cc/100g・day・atmであり、レモン100gあたりの開口面積は、7.4×10-3mm2/100gである。
このレモン包装体を8℃で187日間保存(10月下旬から開始)してレモンの品質を評価したところ、しおれは、見られなかったが、腐敗、カビなどが多く発生して、不良率(販売できない果実の率)24%と、実用化困難な状態であった。
《比較例3》
収穫後のレモンの質量を無包装の状態で常温保存することにより14%減らしたところ、しおれて表皮にツヤが無くなって見栄えが悪く、軟化しており94%の果実で商品性が無い状態になってしまった。(10月下旬から保存開始)
【0029】
《比較例4》
厚さ30μmの防曇加工を施した二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(水蒸気透過度5g/m2・日(40℃、90%RH))で内寸130×170mmの袋を作製した。袋には、直径5mmの穴8個をあけた。この袋に、収穫後に無包装で常温保存して質量を9%減少させた国産レモン1個(包装時重量、平均133g)を入れて、開口部をヒートシールした。なお、サンプル数は50袋である。
このとき、包装体の23℃におけるレモン100gあたりの酸素透過速度は、大きすぎて測定不能であり、レモン100gあたりの開口面積は、1.2×102mm2/100gである。
このレモン包装体を常温で187日間保存(10月下旬から開始)してレモンの品質を評価したところ、しおれ、カビなどが発生したため、不良率(販売できない果実の率)100%であった。
《比較例5》
厚さ25μmの線状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(水蒸気透過度16g/m2・日(40℃、90%RH))で内寸150×200mmの袋を作製した。袋には、開口面積5.3×10-3mm2の孔50個をあけた。この袋に、収穫後に質量減少させないで国産カラーマンダリン1個(包装時重量、平均170g)を入れて、開口部をヒートシールで密封した。なお、サンプル数は44袋である。
このとき、包装体の23℃におけるカラーマンダリン100gあたりの酸素透過速度は、7463cc/100g・day・atmであり、カラーマンダリン100gあたりの開口面積は、1.6×10-1mm2/100gである。
このカラーマンダリンの包装体を常温で30日間保存(4月中旬から開始)してカラーマンダリンの品質を評価したところ、腐敗、カビの発生が多く、不良率(販売できない果実の率)64%と、商業ベースで実用不可能なレベルであった。
《比較例6》
厚さ25μmの線状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(水蒸気透過度16g/m2・日(40℃、90%RH))で内寸200×200mmの袋を作製した。袋には、開口面積9.1×10-4mm2の孔1個をあけた。この袋に、収穫後に質量減少させないで国産の不知火1個(包装時重量、平均276g)を入れて、開口部をヒートシールで密封した。なお、サンプル数は49袋である。
このとき、包装体の23℃における不知火100gあたりの酸素透過速度は、116cc/100g・day・atmであり、不知火100gあたりの開口面積は、3.3×10-4mm2/100gである。
この不知火の包装体を8℃で80日間保存(3月下旬から開始)して不知火の品質を評価したところ、腐敗、カビ、異臭、異味が発生しており、不良率(販売できない果実の率)100%であった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、柑橘類の包装に用いることができ、本発明により、貯蔵中に於ける柑橘類の腐敗等を減らすことができ、柑橘類の歩留まりを向上させることができ、従って、従来よりも長期に亘る柑橘類の貯蔵が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘類を合成樹脂フィルムで包装した包装体であって、前記包装体の柑橘類100gあたりの酸素透過速度が130〜7000cc/100g・日・atmであり、前記柑橘類は、前記柑橘類の収穫時の質量に対して2〜13%質量を減少させた後前記包装体で包装されていることを特徴とする柑橘類入り包装体。
【請求項2】
前記合成樹脂フィルムの水蒸気透過度が2〜30g/m2・日(40℃、90RH)である請求項1に記載の柑橘類入り包装体。
【請求項3】
合成樹脂フィルムに微細孔があり、柑橘類100gあたりの包装体の開口面積が3.1×10-3〜8.5×10-2mm2である請求項1又は2に記載の柑橘類入り包装体。
【請求項4】
柑橘類が1個入りである請求項1、2又は3に記載の柑橘類入り包装体。
【請求項5】
前記の請求項1〜4のいずれかに記載の柑橘類入り包装体を用いて保存されたことを特徴とする柑橘類の保存方法。

【公開番号】特開2009−38976(P2009−38976A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204089(P2007−204089)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】