説明

染毛剤組成物

【課題】従来の酸化染毛剤組成物の欠点を改良して、染毛処理後の毛髪の染毛性及び色持ちに優れた新規の染毛剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の染毛剤組成物は、カチオン化度0.15〜0.6のカチオン化ヒアルロン酸を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のカチオン化度を有するカチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する染毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、染毛剤としては酸化染料中間体を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤よりなる二剤型の酸化染毛剤組成物が広く使用されている。この酸化染毛剤組成物は、無色の低分子の酸化染料中間体を毛髪中に浸透させ、毛髪内部で酸化重合を行わせることにより色素を生成させて染着させるものである。これらの酸化染毛剤組成物は要望に応じた種々の色調に毛髪を染色することができる。
【0003】
このような酸化染毛剤組成物に、カチオン化ポリマーを含有せしめたものが知られている(特許文献1)。特許文献1には、このカチオン化ポリマーを染毛剤組成物に配合することにより、染毛処理後の毛髪の損傷を防ぐことができ、毛髪の感触が改善されると記載されている。
【0004】
しかしながら、上記従来のカチオン化ポリマーを配合した染毛剤組成物によっては、染毛処理後の毛髪の染色性及び色持ちについて、十分な効果があるとは言い難かった。
【特許文献1】特開平07−17836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、特に染毛処理後の毛髪の染色性及び色持ちに優れた、染毛剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく、染毛剤組成物について鋭意研究を重ねた結果、特定のカチオン化度を有するカチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩を含有せしめるならば、意外にも、特に染毛処理後の毛髪の染色性及び色持ちに優れた染毛剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)第四級アンモニウム基含有基を有し、かつ、カチオン化度が0.15〜0.6であるカチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する、染毛剤組成物、
(2)前記第四級アンモニウム基含有基は下記一般式(1)で表される、(1)記載のカチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する染毛剤組成物、
【化3】

・・・・・(1)
(式中、R〜Rは独立して炭化水素基を表し、Xは1価の陰イオンを表す。)
(3)前記カチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩は下記一般式(2)で表される、(1)又は(2)の染毛剤組成物、
【化4】

・・・・・(2)
(式中、R〜Rは独立して、水素原子または第四級アンモニウム基含有基を表し(ただし、R〜Rがいずれも水素原子を表す場合を除く。)、nは2〜5000の数を示す。)
(4)カチオン化ヒアルロン酸の含有量が全体量に対して0.0001〜10%である、(1)乃至(3)の染毛剤組成物、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定のカチオン化度を有するカチオン化ヒアルロン酸を含有せしめることにより、染毛処理後の毛髪の染色性及び色持ちに優れた染毛剤組成物を提供することができる。したがって、カチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩の更なる利用拡大が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る染毛剤組成物について詳細に説明する。なお、本実施形態および後述する実施例において、「%」は「質量%」を意味する。
【0010】
本発明の染毛剤組成物は、カチオン化度が0.15〜0.6であるカチオン化ヒアルロン酸を含有することを特徴とする。
【0011】
「ヒアルロン酸」とは、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの二糖からなる繰り返し構成単位を1以上有する多糖類をいう。また、本発明において、ヒアルロン酸および/またはその塩の「カチオン化度」とは、ヒアルロン酸および/またはその塩の構成単位である上記二糖当たりの第四級アンモニウム基含有基の数(置換数)をいう。また、「ヒアルロン酸の塩」としては、特に限定されないが、薬学上許容しうる塩であることが好ましく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0012】
本発明の染毛剤組成物に使用されるカチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩は、第四級アンモニウム基含有基を有し、かつ、カチオン化度が0.15〜0.6である。ここで、カチオン化度が0.15未満では、染毛剤組成物に配合した際に、染毛処理後の毛髪の染色性及び色持ちの面で効果が得られ難く、好ましくない。一方、カチオン化度が0.6を超えるものは、染毛処理後の毛髪の染色性は優れるが、染毛処理後の毛髪の損傷を改善するヒアルロン酸特有の効果が失われるため、色持ちが持続し難く、好ましくない。さらに良好な染毛処理後の毛髪の染色性及び色持ちを両立させるためには、本発明で使用されるカチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩のカチオン化度は、0.15〜0.4であることが好ましい。
【0013】
第四級アンモニウム基含有基は、第四級アンモニウム基を少なくとも一部に有する基である。第四級アンモニウム基含有基は、例えば、下記一般式(1)で表される基であることができる。
【化5】

・・・・・(1)
(式中、R〜Rは独立して炭化水素基を表し、Xは1価の陰イオンを表す。)
上記一般式(1)において、R〜Rで表される炭化水素基としては、例えば、直鎖状または分岐状のアルキル基、不飽和炭化水素基、および芳香族炭化水素基が挙げられ、アルキル基であることがより好ましい。ここで、アルキル基としては、炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などの炭素数1〜3のアルキル基である。また、上記一般式(1)において、Xで表される1価の陰イオンとしては、フッ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオンが挙げられる。
【0014】
本発明で使用されるカチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩のカチオン化度(第四級アンモニウム基含有基の置換度)は、まず、セミミクロケルダール法により、原料ヒアルロン酸ナトリウムとカチオン化ヒアルロン酸の窒素含有率を求め、この窒素含有率の増加分に基づいて、下記計算式から算出することにより得ることができる。
例えば、上記一般式(1)において、R〜Rが全てメチル基であり、Xが塩素である第四級アンモニウム基含有基が、ヒアルロン酸ナトリウムに結合したカチオン化ヒアルロン酸ナトリウムのカチオン化度は、以下の方法により求めることができる。
原料ヒアルロン酸ナトリウムの窒素含有率N(%)、カチオン化度(x)のカチオン化ヒアルロン酸の窒素含有率N(%)とすると、窒素含有率の増加分(N―N)とカチオン化度(x)の関係は次の式で表すことができる。
―N(%)
=[窒素の原子量×x/(カチオン化ヒアルロン酸ナトリウムの二糖単位の分子量)]×100
=[14x/{原料ヒアルロン酸ナトリウムの二糖単位の分子量+(第四級アンモニウム基含有基の分子量−ナトリウムの原子量)x}]×100
=[14x/{401.3+(152.5−23)x}]×100
よって、カチオン化度(第四級アンモニウム基含有基の置換度)は、下記式から求めることができる。
カチオン化度(x)=[(N―N)×401.3]/[1400−129.5×(N―N)]
また、原料ヒアルロン酸が未知であるカチオン化ヒアルロン酸のカチオン化度は、上記式において、純度99%以上のヒアルロン酸ナトリウムを原料ヒアルロン酸ナトリウムとみなし、上記式から求めることができる。
【0015】
また、本発明で使用されるカチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量は、毛髪の染色性や色持ちの効果、および染毛剤組成物への配合のしやすさの点で、800〜250万であるのがより好ましく、5万〜150万であるのがさらに好ましい。
【0016】
本実施形態に係るカチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩は、下記一般式(2)で表される構造を有することができる。
【化6】

・・・・・(2)
(式中、R〜Rは独立して、水素原子または第四級アンモニウム基含有基を表し(ただし、R〜Rがいずれも水素原子を表す場合を除く。)、nは2 〜5000の数を示す。)
上記一般式(2)において、R〜Rで表される第四級アンモニウム基含有基としては、例えば、下記一般式(3)で表される基が挙げられる。
【化7】

・・・・・(3)
(式中、R〜RおよびXは上記一般式(1)で定義したとおりである。)
〜RおよびXでそれぞれ表される基は例えば、上記一般式(1)においてR〜RおよびXでそれぞれ表される基として例示したものであることができる。
【0017】
本発明の染毛剤組成物に含まれるカチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩のカチオン化度が0.15〜0.6であり、かつ、0.2%水溶液の動粘度が1〜50mm/sであることが好ましい。上記カチオン化度および動粘度を有するカチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩を染毛剤組成物に使用することにより、染毛処理後の毛髪の染色性及び色持ちを改善し、かつ、適度な粘度を有し、毛髪に潤いを付与し、感触を改善することができる。
【0018】
カチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩の水溶液の動粘度は、ウベローデ粘度計(柴田科学器械工業株式会社製)を用いて測定することができる。この際、流下秒数が200〜1000秒になるような係数のウベローデ粘度計を選択する。また、測定は30℃の恒温水槽中で行い、温度変化のないようにする。
ウベローデ粘度計により測定された前記水溶液の流下秒数と、ウベローデ粘度計の係数との積により、動粘度(単位:mm/s)を求めることができる。
【0019】
本発明の染毛剤組成物に使用されるカチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩は、原料ヒアルロン酸および/またはその塩を塩基性含水媒体中でカチオン化剤と反応させる工程を含むことが好ましい。上記方法によれば、例えば、原料ヒアルロン酸および/またはその塩を水に溶解させてカチオン化剤と反応させる場合と比較して、製造工程の効率を高めることができる。
【0020】
本発明で使用されるカチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法において、原料ヒアルロン酸および/またはその塩を塩基性含水媒体中でカチオン化剤と反応させる工程では、原料ヒアルロン酸および/またはその塩は、塩基性含水媒体中に分散させた状態でカチオン化剤と反応させることが好ましい。ここで、反応条件(時間、温度等)を調整することにより、カチオン化の度合いを調整することができる。
【0021】
原料ヒアルロン酸および/またはその塩は一般に、鶏冠、臍の緒、眼球、皮膚、軟骨等の生物組織、あるいはストレプトコッカス属の微生物等のヒアルロン酸生産微生物を培養して得られる培養液等を原料として、これらの原料から抽出(さらに必要に応じて精製)して得られるものである。
原料ヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量は通常、800〜300万であり、100万〜200万であるのが好ましい。前記平均分子量の原料ヒアルロン酸を用いることにより、好ましくは平均分子量800〜250万、より好ましくは5万〜150万のカチオン化ヒアルロン酸を得ることができる。
原料ヒアルロン酸および/またはその塩としては、当該粗抽出物および精製物のいずれを用いてもよいが、精製物、具体的にはヒアルロン酸および/またはその塩の純度が90%(質量比)以上のものが好ましい。純度が90%以上の原料ヒアルロン酸および/またはその塩を原料として用いた場合、保存中の変化の原因となり難いため、安定な染毛剤組成物が得られる。
【0022】
使用可能なカチオン化剤としては例えば、上記一般式(3)で表される2,3−エポキシプロピルトリアルキルアンモニウムハライド(グリシジルトリアルキルアンモニウム塩)および上記一般式(4)で表される3−ハロゲノ−2−ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハライド等の第四級アンモニウム基を含有するカチオン化剤が挙げられる。かかるカチオン化剤は単独でも、あるいは二種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、カチオン化剤は、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドおよびグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドもしくはいずれか一方であることが好ましい。
【0023】
本発明の染毛剤組成物は、上記カチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩を通常、0.0001〜10%含有する。含有量が0.0001%未満では、満足な染毛処理後の毛髪の染色性及び色持ちの効果が得られないため、好ましくない。含有量が10%を超えると、粘度が高くなりすぎ、毛髪に伸ばしにくくなる恐れがある。
【0024】
本発明の染毛剤組成物を永久染毛剤とする場合、通常、酸化染料とアルカリ剤を配合した第1剤と、酸化剤を配合した第2剤からなる多剤型の酸化染毛剤組成物となる。そして第1剤に酸化染料を配合しなければ毛髪脱色剤として機能する。
【0025】
本発明の染毛剤組成物に用いられる酸化染料中間体としては、フェニレンジアミン類、トルイレンジアミン類、アミノフェノール類、アミノニトロフェノール類、ジフェニルアミン類、ジアミノフェニルアミン類、N−フェニルフェニレンジアミン類、ジアミノピリジン類等およびそれらの塩類のうち1種または2種以上を使用することができる。塩類としては塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。酸化染料中間体の配合量は染毛剤組成物第1剤の全量に対して0.01〜15%であることが好ましく、0.1〜10%であることがさらに好ましい。0.01%よりも少ないと十分な染毛効果が得られず、15%を超えても染毛効果に大きな変化がないため経済的でない。
【0026】
また、カップラーとしては、レゾルシン、ピロガロール、カテコール、m−アミノフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノール、1,2,4−ベンゼントリオール、トルエン−3,4−ジアミン、トルエン−2,4−ジアミン、ハイドロキノン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノ−o−クレゾール、ジフェニルアミン、p−メチルアミノフェノール、フロログルシン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、没食子酸、タンニン酸、没食子酸エチル、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、五倍子、1−メトキシ−2−アミノ−4−(2−ヒドロキシエチル)アミノベンゼン、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール等及びそれらの塩を配合することができる。カップラーの配合量は染毛剤組成物第1剤の全量に対して0.01〜10%であることが好ましく、0.1〜5%であることがさらに好ましい。0.01%よりも少ないと十分な染毛効果が得られず、10%を超えても染毛効果に大きな変化がないため経済的でない。また、上記物質のほか、「医薬部外品原料規格」(薬事日報社、2006年6月発行)に
収載されたものを適宜使用することができる。
【0027】
本発明の染毛剤組成物には、更に、直接染料を配合することもできる。タール系色素や天然色素などの公知のものを1種又は2種以上併用できる。その中でも、ニトロ系染料、アゾ染料、ニトロソ染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、キノリン染料、アントラキノン染料又はインジゴ染料が、良好な染毛効果を得られ好ましく、また、これらの染料を染毛剤組成物第1剤の全量に対して0.01〜10%配合するのが最も良い。0.01%より少ない場合、染毛効果は不十分であり、逆に10%より多い場合には、染毛効果に大きな変化がないばかりか頭皮、手指への染着が著しくなり望ましくない。
【0028】
アルカリ剤としては、酸化染毛剤に通常使用されるものを配合することができ、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン及び2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のアルカノールアミン類やアンモニアが挙げられる。
【0029】
さらに、この第1剤には本発明の効果を妨げない範囲において、従来公知の成分を添加配合することができる。例えば、流動パラフィンやワセリン等の炭化水素類、高級アルコール、エステル油、脂肪酸、シリコーンおよびその誘導体、多価アルコール、紫外線吸収剤、防腐剤、界面活性剤、増粘剤、pH調整剤、アルカリ剤、香料、パール化剤などが挙げられる。
【0030】
一方、第2剤に配合する酸化剤は、通常、過酸化水素が用いられる。
【0031】
これらの他、必要に応じて高級アルコール、多価アルコール、界面活性剤、高分子物質、pH調整剤、金属封鎖剤、酸化防止剤、アミノ酸、香料、防腐剤、抗炎剤、着色料等を配合しても良く、それらは公知のものを広く使用できる。
【0032】
本発明の染毛剤組成物を、半永久染毛剤とする場合には、上述の直接染料のみが使用され、さらに染色促進剤としてエタノールなどの低級アルコール、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、アルキレンカーボネート、N−メチルピロリドンあるいはレブリン酸等の各種溶剤が配合される。その他、必要に応じて高級アルコール、多価アルコール、界面活性剤、高分子物質、pH調整剤、金属封鎖剤、酸化防止剤、アミノ酸、香料、防腐剤、抗炎剤、着色料等を配合しても良く、それらは公知のものを広く使用できる。
【0033】
本発明の染毛剤組成物の剤型としては、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状あるいはエアゾール泡沫状など、通常知られている形態をとることができる。
【0034】
次に、本発明を以下の実施例、比較例および試験例に基づき、さらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、動粘度の測定は、上述した方法により行われた。
【0035】
〔実施例1〕(カチオン化ヒアルロン酸の調製)
1L容ビーカーに、ヒアルロン酸ナトリウム(キユーピー株式会社製、平均分子量200万)20g、5%水酸化ナトリウム20mL、80%含水エタノール180mL、およびグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTA(有効成分約80%、水分約20%))30mLを添加し、撹拌子を用いて撹拌しながら、40℃で1時間反応させた。
次に、デカンテーションにより液を除去して、固形物(カチオン化ヒアルロン酸を含む)を得た。
次いで、食塩水400mLを加え、固形物を溶解させた。固形物が完全に溶解したことを確認した後、エタノール600mLを添加して、カチオン化ヒアルロン酸を沈殿させた。デカンテーションにより液を除去した後、80%含水エタノール500mLを添加して15分間撹拌し、さらに、含水エタノールをデカンテーションにより除去して沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物に残存するカチオン化剤(GTA)および食塩を除去した。
次いで、遠心分離処理を行うことにより含水エタノールをさらに除去した後、真空乾燥機を用いて、60℃にて減圧で5時間加熱乾燥を行った。
これにより、白色粉末のカチオン化ヒアルロン酸20.5gを得た。このカチオン化ヒアルロン酸の窒素含有率を測定し、上述の計算式によって求めたカチオン化度は0.27であった。また、このカチオン化ヒアルロン酸の0.2%(W/W)水溶液を調製し、30℃における動粘度を測定したところ、13.3mm/sであった。
【0036】
〔実施例2〕(カチオン化ヒアルロン酸の調製)
1L容ビーカーに、ヒアルロン酸ナトリウム(キユーピー株式会社製、平均分子量130万)20g、5%水酸化ナトリウム20mL、65%含水エタノール180mL、およびグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTA(有効成分約80%、水分約20%))30mLを添加し、撹拌子を用いて撹拌しながら、60℃で1時間反応させた。
次に、デカンテーションにより液を除去して、固形物(カチオン化ヒアルロン酸を含む)を得た。
次いで、食塩水400mLを加え、固形物を溶解させた。固形物が完全に溶解したことを確認した後、エタノール600mLを添加して、カチオン化ヒアルロン酸を沈殿させた。デカンテーションにより液を除去した後、80%含水エタノール500mLを添加して15分間撹拌し、さらに、含水エタノールをデカンテーションにより除去して沈殿物を得た。この操作を3回繰り返し、沈殿物に残存するカチオン化剤(GTA)および食塩を除去した。
次いで、遠心分離処理を行うことにより含水エタノールをさらに除去した後、真空乾燥機を用いて、60℃にて減圧で5時間加熱乾燥を行った。
これにより、白色粉末のカチオン化ヒアルロン酸21.3gを得た。このカチオン化ヒアルロン酸の窒素含有率を測定し、上述の計算式によって求めたカチオン化度は0.48であった。また、このカチオン化ヒアルロン酸の0.2%(W/W)水溶液を調製し、30℃における動粘度を測定したところ、2.3mm/sであった。
【0037】
〔実施例3〕(カチオン化ヒアルロン酸の調製)
実施例2のカチオン化ヒアルロン酸の調製方法において、反応温度を30℃とし、反応時間を0.1時間とした以外は、実施例2のカチオン化ヒアルロン酸の調製方法と同様にして、実施例3のカチオン化ヒアルロン酸を調製した。
これにより、白色粉末のカチオン化ヒアルロン酸19.6gを得た。このカチオン化ヒアルロン酸の窒素含有率を測定し、上述の計算式によって求めたカチオン化度は0.17であった。また、このカチオン化ヒアルロン酸の0.2%(W/W)水溶液を調製し、30℃における動粘度を測定したところ、18.5mm/sであった。
【0038】
〔実施例4〕(カチオン化ヒアルロン酸の調製)
実施例2のカチオン化ヒアルロン酸の調製方法において、反応温度を50℃とした以外は、実施例2のカチオン化ヒアルロン酸の調製方法と同様にして、実施例4のカチオン化ヒアルロン酸を調製した。
これにより、白色粉末のカチオン化ヒアルロン酸20.2gを得た。このカチオン化ヒアルロン酸の窒素含有率を測定し、上述の計算式によって求めたカチオン化度は0.33であった。また、このカチオン化ヒアルロン酸の0.2%(W/W)水溶液を調製し、30℃における動粘度を測定したところ、10.5mm/sであった。
【0039】
〔比較例1〕(カチオン化ヒアルロン酸の調製)
実施例2のカチオン化ヒアルロン酸の調製方法において、5%水酸化ナトリウムを14mL、65%含水エタノールを190mL、およびグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTA(有効成分約80%、水分約20%))を4mLとする以外は、実施例2のカチオン化ヒアルロン酸の調製方法と同様にして、比較例1のカチオン化ヒアルロン酸を調製した。
これにより、白色粉末のカチオン化ヒアルロン酸19.7gを得た。このカチオン化ヒアルロン酸の窒素含有率を測定し、上述の計算式によって求めたカチオン化度は0.10であった。また、このカチオン化ヒアルロン酸の0.2%(W/W)水溶液を調製し、30℃における動粘度を測定したところ、17.5mm/sであった。
【0040】
〔比較例2〕(カチオン化ヒアルロン酸の調製)
実施例2のカチオン化ヒアルロン酸の調製方法において、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GTA(有効成分約80%、水分約20%))を40mLとし、反応温度を70℃とする以外は、実施例2のカチオン化ヒアルロン酸の調製方法と同様にして、比較例2のカチオン化ヒアルロン酸を調製した。
これにより、白色粉末のカチオン化ヒアルロン酸17.7gを得た。このカチオン化ヒアルロン酸の窒素含有率を測定し、上述の計算式によって求めたカチオン化度は0.82であった。また、このカチオン化ヒアルロン酸の0.2%(W/W)水溶液を調製し、30℃における動粘度を測定したところ、1.3mm/sであった。
【0041】
〔試験例〕
実施例及び比較例のカチオン化ヒアルロン酸を使用して酸化染毛剤組成物を製した。表1に、酸化染毛剤組成物の第1剤及び第2剤の配合例を示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1の各組成物を常法にて調製した。上記第1剤と第2剤を1:1で混合し、染毛剤組成物として使用した。各染毛剤組成物を人毛白髪毛束に塗布後、10分放置し、シャンプーで洗浄後、ドライヤーで乾燥した。対照によって処理した毛髪と比較して、染色直後の染色性及び1ヵ月後保存後の色持ちの状態を目視により、以下の基準で評価した。
【0044】
10名のパネラーにより、染毛処理後および1ヵ月保存後の毛束の色調について評価を行った。8名以上が対照より優れていると評価(◎)、6名以上が対照より優れていると評価(○)、及び6名以上が対照と同等であると評価(△)の3段階とした結果を、表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2に示すとおり、実施例1乃至4及び比較例2のカチオン化ヒアルロン酸を含有する染毛剤組成物(試験例1〜4、6)で処理した毛髪は、染色処理直後において、カチオン化ヒアルロン酸を含有しない染毛剤組成物(対照)で処理した毛髪と比較して、染色性に優れることが確認された。一方、比較例1のカチオン化ヒアルロン酸を含有する染毛剤組成物(試験例5)で処理した毛髪は、カチオン化ヒアルロン酸を含有しない染毛剤組成物(対照)で処理した毛髪と同等の染色性であった。
また、1ヵ月後の色持ちは、実施例1および実施例3のカチオン化ヒアルロン酸を含有する染毛剤組成物(試験例1、3)で処理した毛髪が、カチオン化ヒアルロン酸を含有しない染毛剤組成物(対照)で処理した毛髪に比べ、優れていた。実施例2および実施例4のカチオン化ヒアルロン酸を含有する染毛剤組成物(試験例2、4)で処理した毛髪は、カチオン化ヒアルロン酸を含有しない染毛剤組成物(対照)で処理した毛髪に比べ、色持ちに優れていたが、実施例1および実施例3のカチオン化ヒアルロン酸を含有する染毛剤組成物(試験例1、3)で処理した毛髪に比べるとわずかに劣っていた。
一方、比較例1のカチオン化ヒアルロン酸を含有する染毛剤組成物(試験例5)で処理した毛髪の色持ちは、カチオン化ヒアルロン酸を含有しない染毛剤組成物(対照)で処理した毛髪の色持ちと同等であった。また、比較例2のカチオン化ヒアルロン酸を含有する染毛剤組成物(試験例6)で処理した毛髪の色持ちも同様に、カチオン化ヒアルロン酸を含有しない染毛剤組成物(対照)で処理した毛髪の色持ちと同等であり、色持ちの効果に優れてはいないことがわかる。
【0047】
以上の結果より、カチオン化度が0.15〜0.6であるカチオン化ヒアルロン酸を含有する染毛剤組成物は、特に染毛処理後の毛髪の染色性及び色持ちに優れているといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第四級アンモニウム基含有基を有し、かつ、カチオン化度が0.15〜0.6であるカチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する、染毛剤組成物。
【請求項2】
前記第四級アンモニウム基含有基は下記一般式(1)で表される、請求項1に記載のカチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する染毛剤組成物。
【化1】

・・・・・(1)
(式中、R〜Rは独立して炭化水素基を表し、Xは1価の陰イオンを表す。)
【請求項3】
前記カチオン化ヒアルロン酸および/またはその塩は下記一般式(2)で表される、請求項1又は2記載の染毛剤組成物。
【化2】

・・・・・(2)
(式中、R〜Rは独立して、水素原子または第四級アンモニウム基含有基を表し(ただし、R〜Rがいずれも水素原子を表す場合を除く。)、nは2〜5000の数を示す。)
【請求項4】
前記カチオン化ヒアルロン酸の含有量が全体量に対して0.0001〜10%である、請求項1乃至3記載の染毛剤組成物。

【公開番号】特開2010−24210(P2010−24210A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190425(P2008−190425)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】