説明

染毛剤

【課題】美容室で大量に使用される染毛剤第一剤の容器の容積並びに重量を大幅に削減し保管スペースの削減と使用後に廃棄されるアルミチューブの廃棄量の大幅削減を行う。
【解決手段】アルカリ剤としてアンモニアを2.5%以上5.6%以下と重炭酸アンモニュウムを2%以上5%以下とを同時に配合した染毛剤第一剤と過酸化水素を6%以下含有する染毛剤第二剤を1:4から1:8で混合して使用する染毛剤、および該染毛剤第一剤組成物25g以下13g以上をエポキシフェノールで内面コートした内容量30ml以下15ml以上の小型アルミニュウムチューブに充填した染毛剤。染毛剤第一剤の一人当たりの使用量を染毛剤の性能を維持向上しながら従来の三分の一から五分の一にすることにより容器の小型化を実現し美容室の保管スペースの低減とごみの量の低減を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は理美容院で使用する環境負荷を低減した染毛剤に関する。
つまり理美容院における染毛剤の保管スペースの削減と染毛剤使用後のごみの廃棄量の削減ができる染毛剤に関する。
【背景技術】
【0001】
従来毛髪の染毛は染毛剤有効成分としてパラフェニレンジアミン等の酸化染料を含む染毛剤第一剤と過酸化水素等の酸化剤を含む染毛剤第二剤を1:1で混合し染毛剤有効成分を髪に浸透させ酸化染料を髪の内部で酸化重合させ髪を染色する。
【0002】
酸化染料を含む染毛剤第一剤は染料の酸化を防ぐ為 酸素透過性がないアルミニウムチューブに充填されている。その内容量は一人当たりの毛髪の毛染めに必要な60gから80gほどでチューブの内容積は65ccから85ccである。またチューブに使用されるアルミニウムの一本あたりの重量は7gから9gである。
【0003】
最近では特開2001−226238あるいは 特開2003−55173で開示されているように第一剤と第二剤の混合割合を1:3〜1:5や1:5〜1:20にする試みがなされ明るく染まる染毛剤第一剤が提案されている。
【特許文献】特開2001−226238 特開2003−55173
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
染毛は家庭で本人が染毛する場合と美容室で美容師に染毛してもらう場合がある。
家庭で染毛する場合は1ヵ月に一度程度でしかも特定の色味に限定して染毛する。一方美容室では一日に数十人にしかも顧客の好みに合わせて色味を選択する為100色を超える異なる色の染毛剤第一剤を在庫せざるを得ない。そのため在庫の量が数百本になる場合もあり狭い日本の美容室では保管場所に苦慮している。更に使用済みのチューブもリサイクルに回らず産業廃棄物として処理されており経費がかかり資源の無駄である。
【0005】
わが国では年間約2億本のアルミニウムチューブに充填された染毛剤が美容室で消費される。一本あたりのアルミニウムチューブの重さは9g程度でありアルミニウム使用量は年間1800トンでそのほとんどがリサイクルされず廃棄され資源の無駄になっている。本発明は、美容師の作業環境ならびに作業性を改善すると同時に使用済みのアルミニュウム容器の廃棄量の大幅削減を実現し資源問題、環境問題を美容室の立場から改善しようとするものであり、使用量の少ない濃縮タイプの染毛剤第一剤の開発により染毛剤第一剤のアルミニウム容器の小型化、軽量化することを目的とする。
【課題を解決する為の手段】
【0006】
染毛剤第一剤の一人当たりの使用量を染毛剤の性能を維持向上しながら三分の一から五分の一にすることにより容器の小型化を実現し美容室の保管スペースの低減とごみの量の低減を実現する。一人当たりの染毛剤の使用量は作業性や頭髪への染毛を確実にするため約120gである。従来は染毛剤第一剤60gと染毛剤第二剤60g合計120gを混合し使用する。本発明ではたとえば剤染毛剤第一剤20gと第二剤100gの合計120gを混合し使用する。つまり従来は第一剤と第二剤の混合比は1:1であるのに対し本発明では1:5で混合することにより染毛剤第一剤の使用量を削減し容器を小型化し大幅に保管スペースの削減とごみの量の削減を可能にする。
【0007】
たとえば従来の一人用の染毛剤の容器は内容量60g入りのアルミチューブで 直径が28.5mm 長さ156mm 重さ9gほどである。 本発明の染毛剤第一剤は内容量が20g、アルミニウムチューブは直径16mm 長さ118mm 重さ3.3gであり体積が約四分の一に重さが約三分の一となる。 美容院での保管スペースは四分の一にごみは三分の一になり資源の無駄を省き環境問題にも大きく貢献する。更に容器の小型化により美容師の作業性が向上する。
【0008】
染毛剤第一剤の容器の容量と重量を小さくしても染毛剤そのものの性能が劣っては商品価値がない。容器の小型化には染毛剤の性能の維持向上が必要である。
染毛剤第一剤と染毛在第二剤の混合割合に関しては特開2001−226238や特開2003−55173でふれられ明るく染まるヘアーカラーが提案されている。しかしながらアルカリ剤としてアンモニアのみを高配合で使用するため頭皮の刺激が強くまたアンモニア臭が強いため顧客に不快感を与えまた職場環境も改悪となり従来の染毛剤第一剤との性能比較において明るく染まるものの刺激臭、刺激に関し劣っている。
【発明の効果】
【0009】
本発明者は上記欠点を解消し容器の小型化を目指し鋭意検討した結果染毛剤第一剤のアルカリ剤として従来のアンモニアを高濃度で配合するのと同時にさらに重炭酸アンモニウムを同時に配合することでアンモニアの配合量を低減させ刺激臭や刺激が少なく従来の配合量の三分の一から五分の一という少量で均一に明るく染色できることを発見し本発明を完成した。
【0010】
さらに本処方を充填する容器に関しては耐アルカリ性のエポキシフェノール系樹脂で特殊加工した小型アルミニュウムチューブを使用した。このアルミニュウムチューブに本発明品の染毛剤第一剤20gを充填し一人用の染毛剤第一剤とした。
【0011】
従来品に比べ染毛剤の品質を維持向上しながらアルミニウムチュウブの大きさを体積で四分の一、重量で三分の一にすることに成功し美容室での保管スペースの大幅削減、アルミニウムチュウブの小型化等資源の効率的使用を実現し本発明を完成した。
【発明の実施の為の最良の方法】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
市販されているアンモニアは28%アンモニア水として広く使用されているため以下の説明にはその濃度で説明する。
本発明に使用するアルカリ剤は28%アンモニア水 9〜20%(アンモニアとして2.5%〜5.6%)並びに重炭酸アンモニウム2〜5%であり特開2001−226238または特開2003−55173で開示されているアンモニア単独使用と比べるとアンモニア量を低減できる為pHを下げることができ頭皮への刺激と刺激臭の低減ができ市場価値が高い。
【0013】
28%アンモニア水の配合量が9%以下では染まりが悪く20%以上では頭皮への刺激が強くまた刺激臭が強く好ましくない。重炭酸アンモニウムが2%以下で染まりがわるく5%以上ではアルミニュウムチューブへの腐食性が強く好ましくない。
【0014】
染毛剤第一剤に配合される染毛剤の有効成分は次のものが上げられる。
商品にはこれらから数種類の有効成分が処方配合される。
5−アミノオルトクレゾール、2−アミノー4−ニトロフェノール、2−アミノー5ニトロフェノール、1−アミノー4メチルアミノアントラキノン、3,3イミノジフェノール、塩酸2,4−ジアミノフェノキシエタノール、塩酸2,4−ジアミノフェノール、塩酸トルエン2,5ジアミン、塩酸パラニトロフェニレンジアミン、塩酸パラフェニレンジアミン、塩酸N−フェニルパラフェニレンジアミン、塩酸メタフェニレンジアミン、オルトアミノフェノール、酢酸N−フェニルパラフェニレンジアミン、1,4−ジアミノアントラキノン、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、トルエン2,6−ジアミン、トルエン3,4−ジアミン、ニトロパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、パラニトロオルトフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラメチルアミノフェノール、ピクラミン酸、ピクラミン酸ナトリウム、N,N−ビス(4−アミノフェニル)2,5、ジアミノー1,4−キノンジイミン、5−(2−ヒドロキシアミノ)−2−メチルフェノール、n−フェニルパラフェニレンジアミン、メタアミノフェノール、

フェノール、硫酸オルトアミノフェノール、硫酸オルトクロルパラフェニレンジアミン 硫酸4,4−ジアミノジフェニルアミン、硫酸2,4−ジアミノフェノール、硫酸トルエンー2、5−ジアミン、硫酸ニトロパラフェニレンジアミン、硫酸ニトロパラフェニレンジアミン、硫酸パラアミノフェノール、硫酸パラニトロオルトフェニレンジアミン、硫酸パラニトロメタフェニレンジアミン、硫酸パラメチルアミノフェノール、硫酸メタアミノフェノール、硫酸メタフェニレンジアミン、カテコール、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログリシン、没食子酸、レゾルシン
【0015】
処方はこれら染料を多量に溶解させ、刺激臭を低減させる為にアンモニア水と重炭酸アンモニウムを含むクリーム状の乳化系が良い。処方構成は油相としてポリオキシエチレンアルキルエーテルに代表される乳化剤、セタノールに代表される高級アルコール等固形油性成分、流動パラフィンに代表される液体油性成分等が適宜配合されるがこのほかカチオン界面活性剤、油脂、ワックス シリコン誘導体等通常乳化に使用する原料で構成される。水相には染料を多量に配合し刺激臭を低減させ毛髪を均一によく染色する為アンモニア単独ではなく重炭酸アンモニウムをともに配合する。
【0016】
染毛剤第二剤は染料を酸化重合するために酸化剤として過酸化水素水を配合し第一剤と容易に混合できるよう第一剤と油分の組成を共通にするとよい。
過酸化水素水の配合量は市販されている35%過酸化水素水として記載する。
染毛剤第一剤と染毛剤第二剤の混合比率は1:4〜1:8が望ましい。1:4以下ではアルミニウム容器の小型化の効果が少なく1:8以上では第一剤が小さすぎ調色時の作業性が悪い。
ちなみに混合時の使用量が120gの場合 染毛剤第一剤と第二剤の混合割合が1:4のときは染毛剤第一剤の使用量は24gまた1:8のときは13gとなる。
以下例により具体的に説明する。
【0017】
実施例1,2 比較例1,2の処方、調整法ならびに染毛剤第一剤と第二剤の混合比は次の表1の通りである。
【表1】

資料調整の方法)
【0018】
第一剤の調整方法)
水相成分1)2)6)8)9)を混合し80℃に過熱する。油相成分3)4)5)を80℃に加熱溶解する。拡販しながら油相を水相に混合し5分間攪拌し40℃まで冷却し成分7)を混合し35℃まで冷却し実施例1,2は小型アルミニウムチュウブに比較例1、2は通常のアルミニウムチューブに充填し資料とした。
第二剤の調整方法)
成分11)と15)を80℃で加熱溶解する。成分12)13)14)を80℃にて加熱溶解する。拡販しながら油相を水相に投入し5分間攪拌後に40℃まで冷却して成分10)を混合し35℃まで冷却してから1リットルのポリエチレンボトルに充填して資料とする。
使用法)
【0019】
染毛剤第一剤と染毛剤第二剤を所定の混合比で合計120gになるようヘアーカラー用の混合皿にとり均一になるまで攪拌混合し刷毛で頭髪に塗布し30分放置しシャンプーで洗い乾燥する。
【0020】
実施例1 実施例2 実施例3
実施例1、2に使用したアルミニウムチュウブは図1に示す直径19mm 長さ117mmの小型アルミニウムチューブであり中味を20g充填し実施例1、2とした。
更に実施例1のアルミニウムチューブを6本 縦、横、厚みがそれぞれ116mm、117mm 厚み20mmの1つの箱にいれ実施例3とした(図3)。
実施例1を一個箱(図2)にいれても良いが通常の染毛剤第一剤に比較し大幅に小型化軽量化されているため一個箱に入れる必要もない。一個箱を使用する必要がないのでコスト、資源の削減になる。
【0021】
比較例1、比較例2 比較例3
比較例1,2はそれぞれの中味を直径24mm長さ166mm の通常の大きさのアルミニウムチューブに60g充填したものである。(図4)
更に通常市場で行われているように比較例2を一個箱(図5)にいれ更に一個箱6個をまとめて縦横厚みがそれぞれ 83mm 170mm 78mm の梱包箱にいれ通常美容院が購入するように仕上げ比較例3とした(図6)。実施例3と比較例3では同じ6人用でも体積において約四分の一 重さで約三分の一に小型化されている。
効果の測定)
【0022】
美容師が黒髪と白髪の割合が約7:3である50代の女性の頭髪を左右半分に分けそれぞれに実施例1と比較例2を塗布し室温で30分放置したあと40℃の温水でシャンプーし充分にすすぎ乾燥したあと美容師5名による評価をした。
同様に実施例2と比較例2を 比較例1と比較例2を比較した。
【0023】
美容師5名に作業のしやすさ、作業中の臭い 染毛後の毛髪の手触り、染色度合いを5点法で評価させた。評価項目と結果は表2に示す。評価結果は5人の美容師の平均点である。通常のヘアーカラーである比較例2並びに比較例3を評価点3として評価した。
評価基準
大変良い 5点
良い 4点
普通 3点
悪い 2点
大変悪い 1点
【0024】
結果は下記の通りである。
【表2】


【0025】
同様に実施例3と比較例3に関し意見を聞いた。
実施例3 比較例3
容器の大きさ 5 3
保管のしやすさ 5 3
廃棄のしやすさ 5 3
5人全員が実施例1 実施例2の染毛剤は比較例1並びに比較例2の染毛剤に比べ第一剤と第二剤の混合時のpHが低く頭皮並びに毛髪へのダメージが少ない。また染毛剤として中味の出しやすさ、作業中の刺激臭、頭皮への刺激、髪の手触り、白髪の目立ちにくさに関し染毛剤しての性能に優れかつ容器に関しては60gの第一剤をチューブから搾り出す労力に比べ20gだけなら大変楽であると答え、更に実施例3は比較例3に比べ保管スペースが少なくてすみ使用後の廃棄も少なくてすみごみの軽減になると答えた。
【0026】
以上の結果から本発明の染毛剤は手触り、白髪の目立ちにくさに関し染毛剤としての性能に優れているとともに美容師として中味の出しやすさ 作業のしやすさ 保管のしやすさ、使用後の廃棄のしやすさに従来品と比較し大きな優位性があることが確認された。
【0027】
さらに顧客一人に使用する使用量が従来品の三分の一になる為 原料、アルミ容器、紙の箱 ダンボール 輸送コスト 保管コスト等 ほとんどすべての資材が大幅に削減できコストも大きく下げることができ産業上の利点が大きいが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1,2のアルミニウムチューブの見取り図
【図2】実施例1,2の1本入りの箱の見取り図
【図3】実施例3の6本入りの箱の見取り図
【図4】比較例1,2のアルミニウムチューブの見取り図
【図5】比較例1,2の従来の1本入りの箱の見取り図
【図6】比較例3の従来の6本入りの箱の見取り図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤としてアンモニアを2.5%以上5.6%以下と重炭酸アンモニュウムを2%以上5%以下とを同時に配合した染毛剤第一剤と過酸化水素を6%以下含有する染毛剤第二剤を1:4から1:8で混合して使用する染毛剤。
【請求項2】
請求項1の染毛剤第一剤組成物25g以下 13g以上をエポキシフェノールで内面コートした内容量30ml以下 15ml以上の小型アルミニュウムチューブに充填した染毛剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−180196(P2010−180196A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47072(P2009−47072)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(507033587)
【Fターム(参考)】