説明

染色または仕分け方法において細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物の使用

生存可能な精子、細胞内または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物、およびDNA選択色素を含む染色混合物が開示される。そのような懸濁液中に含有される細胞は、性別豊富化された集団への精子細胞の仕分けと典型的に関連した種々の工程に耐えるより大きい能力を有する傾向があり、それにより増加した数の生存可能または運動精子を有する仕分け後組成物が生じる。また、染色混合物を形成することを特徴とする精子細胞を染色するための方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、染色された精子細胞を仕分ける方法に関する。より具体的には、本発明は、細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物を含有する精子細胞懸濁液が形成される、精子細胞を仕分けるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インビトロ受精に続く人工授精 (AI)および胚移植による動物の受精は、確立された手順である。畜産業において、1以上の所望の特徴を有する子孫に向けた繁殖成績に影響を及ぼす能力は、明白な利点を有する。一例として、雌性を好んで子孫を前もって選択して、乳牛の生産を確証することは、乳業において、経済的な利益があるであろう。性別豊富化された精液または性別豊富化された精子として知られる、XおよびY染色体を持った細胞の豊富化された集団への精子の分離は、前もって選択された子孫を達成する1つの方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
性別豊富化された精液を入手するために、精子細胞は色素によって染色され、続いてXおよびY染色体を持った細胞へと仕分けられなければならない。染色および仕分け方法の各々は、精子細胞生存率または運動率、特に前進運動率を減少する精子細胞に重点を置く。特に重点を置くのは、該精子細胞を染色する方法であり、これは、しばしば該典型的な精子細胞環境において一般的でない温度およびpHにて、特定の時間、該細胞を色素と接触させることを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の種々の態様のなかには、例えば、精子をXまたはY-染色体を持った精子へと仕分けるのに使用される方法において用途を有する精子懸濁液がある。
【0005】
従って、簡潔には、本発明は、生存可能な精子、細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物、およびDNA選択色素を含み、ここに、該組成物がピルビン酸である時、染色混合物中の該組成物の濃度は50μMより大きい染色混合物に指向される。
【0006】
本発明は、さらに、精子細胞を染色するための方法に指向され、ここに、該方法は、無傷の生存可能な精子細胞、細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物、およびDNA選択色素を含有し、ここに、該組成物がピルビン酸である時、染色混合物中の該組成物の濃度は50μMより大きい染色混合物を形成することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
驚くべきことに、細胞内でおよび/または細胞外で、酸化/還元反応を制御する組成物と接触される精子は、XまたはY染色体を持った精子の豊富化された集団へと精子細胞を仕分けることと典型的に関連した種々の方法工程に耐えるより大きい能力を有する傾向がある。従って、好ましい具体例において、精子の性別豊富化された集団を、染色後または仕分け後組成物において、増加した数の生存可能な細胞または増加した数の運動精子、特に前進運動精子を有する人工授精について調製してもよい。
【0008】
一般的には、細胞内でおよび/または細胞外で、酸化/還元反応を制御する組成物は、1つの物質からもう一方へと電子を移すことができる要素を含む組成物である。そのような組成物は、電子を得るまたは除去するかいずれかの要素(酸化剤または電子受容体)または電子を提供する要素(還元剤または電子供与体)を含んでもよい。生物系に関して、細胞内でおよび/または細胞外で、酸化/還元反応を制御する組成物は、化合物から、酸素または水素を添加するまたは除去するかいずれかの要素であると、より容易に理解される。
【0009】
従って、一般的には、そのような組成物は、例えば、ピルビン酸、ビタミンK、リポ酸、グルタチオン、フラビン、キノン、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、およびSODミミックを含み得る。そのような組成物は、精子健康に悪影響を及ぼさずに、保護作用をもたらすのに十分な濃度で、精子懸濁液中に存在し得る。例示的濃度範囲は、約10μMないし約50mMを含み、使用される特定の組成物または該懸濁液中の精子の濃度のような要因によって決定される。例えば、もしピルビン酸が該組成物中に含まれるなら、それは、約0.5μMないし約50mM、好ましくは約1mMないし約40mM、より好ましくは約2.5mMないし約25mM、さらにより好ましくは約10mMないし約20mM、なおより好ましくは約15mM、および最も好ましくは約10mMの濃度で、該精子懸濁液中に存在し得る。もしビタミンKが該組成物中に含まれるなら、それは、約1μMないし約100μM、好ましくは約10μMないし約100μM、より好ましくは約50μMないし約100μM、最も好ましくは約100μMの濃度で、該精子懸濁液中に存在し得る。もしリポ酸が該組成物中に含まれるなら、それは、約0.1mMないし約1mM、好ましくは約0.5mMないし約1mM、より好ましくは約0.5mM、および最も好ましくは約1mMの濃度で、該精子懸濁液中に存在し得る。該精子懸濁液は、該上記にリストした濃度で、該組成物の上記にリストした具体例のいずれか1またはそのいずれかの混合物を含み得る。例えば、該精子懸濁液は、約10mMの濃度でピルビン酸および約100μMの濃度でビタミンkを含む、細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物を含み得る。別法として、該精子懸濁液は、約10mMの濃度でピルビン酸および約1mMの濃度でリポ酸を含む組成物を含み得る。さらにもう1つの例は、約10mMの濃度でピルビン酸、約100μMの濃度でビタミンK、および約1mMの濃度でリポ酸を含む組成物を含む精子懸濁液を含む。
【0010】
一般的には、細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物は、該組成物を含有する該精子懸濁液中の生存可能な細胞の数の増加または運動性細胞、特に前進運動性細胞の数の増加のような保護効果を提供し得る。そのような組成物は、精子細胞を仕分ける方法において形成されるいずれかの懸濁液に保護効果を提供するが、該利益は、該染色工程の間、特定の価値を有し、ここにそのような組成物は、上昇した染色温度にて、上昇した色素濃度にて、上昇した染色期間にて、またはそのいずれかの組合せにて、精子生存率を維持するのに役立ち得る。
【0011】
一般的には、該細胞仕分け方法は、一連の別個の工程、つまり、細胞試料の収集、該細胞の染色、該細胞の仕分け、該仕分けられた細胞の収集、および所望により、該仕分けられた細胞の低温拡大培養(cryoextension)を含む。有利には、細胞内でおよび/または細胞外で、酸化/還元反応を制御する該組成物は、1以上のこれらの工程で形成または使用される精子懸濁液に含まれ得る。
【0012】
該細胞試料の収集
無傷の生存可能なウシ、ブタ、ウマ、または他の哺乳類精子細胞を収集し、該運動率阻害剤と接触させてもよい。生存可能な精子を収集する種々の方法が知られており、例えば、手袋着用方法(gloved-hand method)、人工膣の使用、および電気射精を含む。一例として、典型的には1ミリリットル当たり約0.5ないし約100億の精子細胞を含有するウシ精液試料を、該源哺乳類から直接的に、細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物を含有する容器に収集して、精子懸濁液を形成してもよい。別法として、該精液試料を、空の容器に収集し、引き続いて、収集後数時間以内に、そのような組成物と接触させて、該精子懸濁液を形成してもよい。
【0013】
また、該精子試料を、緩衝液と組み合わせて(固体または溶液の形態で)、緩衝精子懸濁液を形成してもよい。何よりも、該緩衝液は、pHまたは浸透圧の有意な変化に対して該懸濁液を緩衝することによって、精子生存率を促進し得る。一般的には、緩衝液は、細胞に対して非毒性であり、該細胞を染色するのに使用される色素と適合性がある。例示的な緩衝液は、リン酸塩、二リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、およびその組合せを含む。現在好ましい緩衝液は、TCA、TEST、クエン酸ナトリウム、HEPES、TL、TES、クエン酸一水和物、HEPEST (Gradipore, St. Louis, MO)、PBS (Johnson et al., Gamete Research, 17:203-212 (1987))、およびダルベッコPBS (Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を含む。
【0014】
1以上の緩衝液は、一緒にまたは下記で論議する添加剤と組み合わせて、緩衝液を形成してもよく、該緩衝液を該精子試料と組み合わせて、緩衝精子懸濁液を形成してもよい。また、緩衝液は、下記でより詳細に記載するように、1以上の添加剤、あるいは細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物を含有し得る。例示的な緩衝液は、表Iに記載される。好ましい緩衝液は、約7.0のpHにて、水中に3%トリス塩基、2%クエン酸一水和物、および1%フルクトース(w/v)を含む溶液、表IにおいてTCA #1と指定された溶液、および表IにおいてTCA #2と指定された溶液を含む。
【0015】
【表1】

【0016】
使用された緩衝液の量は、一般的には、例えば、該緩衝精子懸濁液中の該特定の緩衝液および該所望の精子濃度(#精子/ml)といったいくつかの考慮によって決まる。従って、十分な量の緩衝液は、該所望の濃度の精子/mlが達成されるように使用されるであろう。緩衝液は、約1X103精子/mlないし約5X1010精子/mlを含有する精子懸濁液を達成するように添加されてもよい。例えば、1つの具体例において、緩衝液は、該精子懸濁液において「比較的低い」濃度の精子を達成するように添加されてもよく、つまり、緩衝液は、約1X107精子/ml未満、好ましくは約1X106精子/ml未満、より好ましくは約1X103ないし約5X106精子/ml、さらにより好ましくは約1X103ないし約1X106精子/ml、さらにより好ましくは約1X104ないし約1X105精子/ml、および最も好ましくは約1X105精子/mlを含有する精子懸濁液を達成するように添加される。代替の具体例において、緩衝液は、該精子懸濁液において「中程度」の濃度を達成するように添加されてもよく、つまり、緩衝液を添加して、約1X107ないし約1X108精子/mlを含有する精子懸濁液を達成する。さらにもう1つの代替の具体例において、緩衝液を添加して、該精神懸濁液において「比較的高い」濃度の精子を達成してもよく、つまり、緩衝液を添加して、約1X108精子/ml以上、好ましくは約1X108ないし約5X1010精子/ml、より好ましくは約1.5X108ないし約2X1010精子/ml、さらにより好ましくは約1.5X108ないし約2X108精子/ml、およびさらにより好ましくは約1.5X108精子/mlを含有する精子懸濁液を達成する。
【0017】
使用される緩衝液の量を決定する際のさらなる考慮すべき事柄、つまり、該緩衝された精子懸濁液が該精子懸濁液において「比較的低い」、「中程度」または「比較的高い」濃度の精子を有するかは、該精子細胞が引き続いて仕分けられるまたは豊富化される方法を含む。例えば、該精子細胞は、下記にさらに詳細に記載されるように、フローサイトメトリーを用いて仕分けられてもよい。そのような例において、該緩衝された精子懸濁液は、典型的には、「中程度」または「比較的高い」濃度の精子/mlを有し得る。他の仕分けまたは豊富化技術は、例えば、「比較的低い」濃度の本明細書中に記載の色素および標識のようなマーカーによって標識された精子細胞のようなより低い濃度の精子細胞から利益を得るであろう。
【0018】
別法として、該精子は、阻害性緩衝液と組み合わせて、阻害された精子懸濁液を形成してもよい。阻害性緩衝液は、哺乳類の精巣上体または精巣上体の管を刺激することによって、例えば雄牛のような哺乳類の精巣上体の精子細胞を模倣させる。そのような緩衝液は、該精子の運動率または代謝活性を減少または阻害するであろう。このクラスの例示的緩衝液は、例えば、Salisbury & Graves, J. Reprod. Fertil., 6:351-359 (1963)に記載のもののような炭酸系緩衝液を含む。このタイプの好ましい緩衝液は、25mLの精製水当たり0.204gNaHCO3、0.433gKHCO3、および0.473gC6H8O7・H2O(水中に0.097モル/LのNaHCO3、0.173モル/LのKHCO3、0.090モル/L C6H8O7・H2O)を含む。加えて、該阻害された精子懸濁液は、また、細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物を含み得る。
【0019】
緩衝液に加えて、該精子懸濁液は、また、さまざまな添加剤を含有して、精子生存率または運動率を促進するまたは他の利点を提供し得る。例示的な添加剤は、エネルギー源、蛋白源、および抗生物質を含む。1以上のこれらの添加剤は、該緩衝された精子懸濁液の形成前に、緩衝液または緩衝された溶液へと導入されるか、あるいは別法として、別々に、該精子懸濁液へと導入されてもよい。
【0020】
1以上のエネルギー源を添加して、該精子細胞が、細胞内リン脂質および他の細胞成分を酸化するのを最小化または阻害してもよい。例示的エネルギー源は、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マンノースのような単糖類、およびスクロース、ラクトース、マルトース、およびトレハロースのような二糖類、ならびに他の多糖類を含む。例えば、該得られた精子懸濁液は、約1%(w/v)ないし約4%(w/v)の(複数の)該エネルギー源を含み得る。もし含まれるなら、該エネルギー源は、好ましくはフルクトースであり、該精子懸濁液は約2.5%(w/v)を含有する。
【0021】
希釈ショックを最小化する、細胞に支持体を提供する、または懸濁液を通して細胞を分散するために、蛋白源が、緩衝液、緩衝溶液、精子懸濁液、または緩衝された精子懸濁液中に含まれてもよい。例示的蛋白源は、卵黄、卵黄抽出物、(熱で均質化されたおよびスキムを含む)牛乳、牛乳抽出物、大豆蛋白質、大豆蛋白質抽出物、血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ヒト代替血清補充物(human serum substitute supplement)、およびその組合せを含む。アルブミン、およびより具体的にはウシ血清アルブミン(BSA)は、好ましい蛋白源である。例えば、もし含まれるなら、約5.0%(w/v)未満、好ましくは約2%(w/v)未満、より好ましくは約1%(w/v)未満の量で、最も好ましくは約0.1%(w/v)の量で、精子懸濁液中に存在し得る。
【0022】
BSAのような蛋白源のみの使用は、懸濁液中の精子細胞のパーセンテージにおいて、受精能獲得の処理を開始し得る。この処理が、雌の生殖器官で起こるのが好ましい。従って、希釈の間ならびに続く染色および仕分けの間、受精能獲得の開始を阻害するために、代替の蛋白源または蛋白質代替物が、精子懸濁液中に含まれても良い。代替の蛋白源または蛋白質代替物は、精子懸濁液中のより大きいパーセンテージの細胞において受精能獲得の開始を阻害する能力に加えて、BSAのような典型的な蛋白源の有益な効果を有する。代替の蛋白源の例は、ヒト代替血清(SSS) (Irvine Scientific, Santa Ana, CA)およびコレステロール促進BSAを含み、代替蛋白質の例は、例えば、一般的には約30,000ないし約60,000の分子量の低いないし中程度の粘度のポリビニルアルコールのようなポリビニルアルコールを含む。一般的には、もし含まれるなら、これらの組成物は、BSAに関して上記で開示したのと同量で存在し、ここに該緩衝液または緩衝溶液の総アルブミン含有量は、一般的には、約5.0%(w/v)を超えない。
【0023】
細菌の成長を阻害するために、抗生物質を、精子懸濁液または緩衝された精子懸濁液に添加してもよい。例示的な抗生物質は、例えば、チロシン、ゲンタマイシン、リノマイシン、スペクチノマイシン、Linco-Spectin(登録商標) (塩酸リンコマイシン-スペクチノマイシン)、ペニシリン、ストレプトマイシン、チカルシリン、またはそのいずれかの組合せを含む。精液が純物である、緩衝された、または例えば、本明細書中で言及する添加剤のいずれかのようなさらなる物質を含有するかに拘わらず、抗生物質は、約50μgないし約800μg/精液のmlの濃度で存在し得る。The Certified Semen Services (CSS) and National Association of Animal Breeders (NAAB)は、精子収集および使用に関して、抗生物質の使用に関するガイドラインを公布している。
【0024】
細胞の染色
細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物を、細胞を染色する方法で使用してもよい。一般的には、精子細胞を染色する方法は、無傷の生存可能な精子細胞、細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物、および標識と呼ばれる時もある色素を含有する標識混合物と呼ばれる時もある染色混合物の形成を含み得る。本発明のこの態様において、該組成物は、精子細胞と接触させて、精子懸濁液を形成し、次いで、該懸濁液をDNA選択色素と接触させてもよい。この具体例において、該精子源は、純物精液、または別法として、遠心分離または精液を画分へと分離する他の手段の使用によって得られた精子含有精液派生物であってもよい。
【0025】
一旦入手されると、該精子細胞は、純物精液の形態でまたは細胞試料の収集に関して上記で論議したような精子懸濁液または緩衝された精子懸濁液といったそれから由来した懸濁液の形態で、染色混合物に導入されてもよい。
【0026】
色素は、純物固体または液体組成物の形態であってもよい。また、該色素は、緩衝されていない液体中に溶解または分散して、色素溶液を形成してもよい。別法として、該色素は、色素および精子細胞と生物学的に適合性のある緩衝液または緩衝された溶液を含む色素懸濁液の形態であってもよい。例示的緩衝液および緩衝された溶液の範囲は、試料収集に関して、上記で論議される。例えば、使用され得る緩衝液の中には、約7.0のpHにて水中に3% トリス塩基、2% クエン酸一水和物、および1%フルクトースを含むTCA緩衝液、または0.204gNaHCO3、0.433gKHCO3、および0.473g C6H8O7・H2O/25mLの精製水(水中に0.097モル/LのNaHCO3、0.173モル/LのKHCO3、0.090モル/L C6H8O7・H2O)を含む炭酸系緩衝液がある。従って、例えば、染色混合物は、純物精液を色素および細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物と組み合わせることによって形成し得る。別法として、該染色混合物は、純物精液を、緩衝液または緩衝溶液、色素、および細胞内および/または細胞外で、酸化/還元反応を制御する組成物と組み合わせることによって形成されてもよい。加えて、該染色混合物は、精子懸濁液を色素と組み合わせることによって形成されてもよい。
【0027】
該染色混合物は、米国特許第5,135,759号およびWO02/41906で先述のように、1以上のUVまたは可視光励起性、DNA選択色素を用いることによって形成され得る。例示的UV光励起性、選択色素は、各々がSigma-Aldrich (St. Louis, MO)から商業的に入手可能であるHoechst 33342およびHoechst 33258を含む。例示的可視光励起性色素は、Molecular Probes, Inc. (Eugene, OR)から商業的に入手可能であるSYBR-14およびWO 02/41906に記載のビスベンズイミド-BODIPY(登録商標)コンジュゲート6-{[3-((2Z)-2-{[1-(ジフルオロボリル)-3,5-ジメチル-1H-ピロール-2-イル]メチレン}-2H-ピロール-5-イル)プロパノイル]アミノ}-N-[3-(メチル{3-[({4-[6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H,3'H-2,5'-ビベンズイミダゾール-2'-イル]フェノキシ}アセチル)アミノ]プロピル}アミノ)プロピル]ヘキサンアミド (「BBC」)を含む。これらの色素の各々は、単独でまたは組み合わせで使用されてもよく;別法として、他の細胞透過UVおよび可視光励起色素を、単独でまたは上記の色素と組み合わせて使用してもよく、但し、他所で記載のように、仕分けを可能にする濃度で使用された時、該色素は、該精子細胞の生存率を、許容できない程度まで悪影響を及ぼさない。
【0028】
別法として、該染色混合物は、蛍光ポリアミド、より具体的には蛍光標識またはそれにコンジュゲートされた輸送体を有するポリアミドを用いて形成されてよい。そのような標識は、核酸に結合された時、蛍光を発するであろう。蛍光標識またはそれに結合した輸送体を有するポリアミドの例は、例えば、それらの各々の内容が引用によって本明細書中に援用されるBest et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100(21): 12063-12068 (2003); Gygi, et al., Nucleic Acids Res., 30(13): 2790-2799 (2002); 米国特許第5,998,140号; 米国特許第6,143,901号;および米国特許第6,090,947号に記載のものを含む。
【0029】
また、蛍光ヌクレオチド配列を使用して、精子細胞を標識してもよい。そのようなヌクレオチド配列は、標的または相補的配列にハイブリダイズされた時、蛍光を発するが、ハイブリダイズされていない状態の時、蛍光を発しない。そのようなオリゴヌクレオチドは、例えば、(引用によって本明細書中に援用される)米国特許出願公開番号2003/0113765に開示される。
【0030】
また、性別特異的抗体を使用して、染色混合物中の精子細胞を標識してもよい。この具体例において、例えば、性別特異的抗体を、蛍光部位(または同等の輸送体分子)とコンジュゲートしてもよい。該抗体は、X染色体を有するまたは代わりにY染色体を有する細胞のみに存在する抗原に結合し、そのような細胞は、それらの蛍光に基づき、選択的に同定することができる(対非標識細胞の非蛍光)。さらに、各抗体がそれに結合した異なる蛍光部位を有する1以上の性別特異的抗体を同時に使用してもよい。これによって、各々の異なる蛍光に基づき、X染色体を有するおよびY染色体を有する細胞の識別が可能となる。
【0031】
また、発光性、色選択性ナノ結晶を使用して、染色混合物中の精子細胞を標識してもよい。量子ドットとも呼ばれるこれらの粒子は、それらの各々が引用によって本明細書中に援用される米国特許第6,322,901および米国特許第6,576,291によって示される。これらのナノ結晶は、例えば、ペプチド、抗体、核酸、ストレプトアビジン、および多糖類(例えば、それらの各々が引用によって本明細書中に援用される米国特許第6,207,392号; 6,423,551号; 5,990,479号、および6,326,144号参照)を含む多くの生物学的物質にコンジュゲートされており、生物学的標的を検出するために使用されている(例えば、それらの各々が引用によって本明細書中に援用される米国特許第6,207,392号および6,247,323号参照)。
【0032】
該染色混合物中のDNA選択色素の好ましい濃度は、選択された色素への細胞の透過性、該染色混合物の温度、染色が生じるのに許容される時間の量、および引き続いての仕分け工程において望ましい豊富化の程度を含む可変要素の範囲の関数である。一般的には、該色素濃度は、好ましくは、実質的に精子生存率に悪影響を及ぼさずに、適度に短時間で所望の程度の染色を達成するのに十分である。例えば、該染色混合物のHoechst 33342、Hoechst 33258、SYBR-14、またはBBCの濃度は、一般的には、約0.1μMおよび約1.0Mの間、好ましくは約0.1μMないし約700μM、およびより好ましくは約100μMないし約200μMであろう。特に好ましい具体例において、該染色混合物のHoechst 33342、Hoechst 33258、SYBR-14、またはBBCの濃度は、一般的には、約400μMないし約500μMの間、および最も好ましくは約450μMであろう。従って、1組の染色条件下で、Hoechst 33342の濃度は、好ましくは、約100μMである。もう1組の染色条件下で、Hoechst 33342の濃度は、約150μMである。さらにもう1組の染色条件下で、該濃度は、好ましくは、約200μMである。さらにもう1組の染色条件下で、Hoechst 33342の濃度は、最も好ましくは、約450μMである。
【0033】
もう1つの例として、例えば、米国特許公開番号2001/0002314に記載のもののような蛍光ポリアミドの濃度は、一般的には、約0.1μMおよび約1mMの間、好ましくは約1μMないし約1mM、より好ましくは約5μMないし約100μM、さらにより好ましくは約10μMであろう。
【0034】
緩衝液に加えて、他の添加剤が該染色混合物中に含まれて、該精子の該生存率または運動率を促進してもよい;これらの添加剤は、精子源、色素源の一部としてまたは別々に、該染色混合物に提供されてもよい。そのような添加剤は、エネルギー源、抗生物質、および精漿を含み、それらの最初の2つは、細胞試料の収集に関して、上記で論議され、それらの最後は、仕分けられた細胞の収集に関して、下記で論議される。そのような添加剤は、それに従って、染色技術の間に添加されてもよい。
【0035】
該染色混合物は、ある範囲の温度のいずれかにて維持することができ;典型的には、これは約4℃ないし約50℃の範囲内であろう。例えば、該染色混合物は、「比較的低い」温度、つまり約4℃ないし約30℃の温度にて維持してもよく;この具体例において、該温度は、好ましくは、約20℃ないし約30℃、より好ましくは約25℃ないし約30℃、最も好ましくは約28℃である。別法として、該染色混合物は、「中程度の」温度範囲内、つまり、約30℃ないし約39℃の温度であってよく;この具体例において、該温度は、好ましくは、約34℃ないし約39℃、より好ましくは約37℃である。加えて、該染色混合物は、「比較的高い」温度範囲内、つまり、約40℃ないし約50℃の温度で維持されてよく;この具体例において、該温度は、好ましくは、約40℃ないし約45℃、より好ましくは約40℃ないし約43℃、最も好ましくは約41℃である。好ましい温度の選択は、一般的には、使用される(複数の)色素への細胞の透過性、該染色混合物中の(複数の)色素の濃度、細胞が該染色混合物中で維持されるであろう時間の量、および該仕分け工程において望ましい豊富化の程度を含む可変要素の範囲に基づく。
【0036】
該染色混合物中の精子細胞による色素の取り込みは、DNA染色の所望の程度を得るのに十分な時間継続することが許容される。該期間は、典型的には、XおよびY染色体を有する精子細胞が、該2つの間の異なるおよび測定可能な蛍光強度に基づき仕分けられ得るように、該色素が該精子細胞のDNAに結合するのに十分な期間である。一般的には、これは、約160分以下、好ましくは約90分以下、さらにより好ましくは約60分以下、および最も好ましくは約5分ないし約40分であろう。
【0037】
従って、1つの具体例において、精子細胞、約100μMないし約200μMの濃度の色素、および細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物を含む染色混合物が形成され、該染色混合物は、約41℃の温度にて、一定時間、保持される。もう1つの具体例において、細胞内でおよび/または細胞外で、酸化/還元反応を制御する組成物は、約10mMの濃度のピルビン酸、約100μMの濃度のビタミンK、または約1mMの濃度のリポ酸を含む。
【0038】
さらにもう1つの具体例において、精子細胞、約100μMないし約200μMの濃度の色素、および細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物を含む染色混合物が形成され、該染色混合物は、約28℃の温度にて一定の時間保持される。もう1つの具体例において、細胞内でおよび/または細胞外で、酸化/還元反応を制御する該組成物は、約10mMの濃度のピルビン酸、約100μMの濃度のビタミンK、または約1mMの濃度のリポ酸を含む。
【0039】
さらにもう1つの例において、精子細胞、0.204gのNaHCO3、0.433gのKHCO3、および0.473g C6H8O7・H2O/25mLの精製水を含む緩衝液(水中に0.097 モル/LのNaHCO3、0.173 モル/LのKHCO3、0.090 モル/L C6H8O7・H2O)、約100μMないし約200μMの濃度の色素、および細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物を含む染色混合物が形成され、該染色混合物は約28℃の温度にて一定時間保持される。もう1つの具体例において、該染色混合物は、約41℃の温度にて、一定時間保持される。さらにもう1つの具体例において、細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物は、約10mMの濃度のピルビン酸、約100μMの濃度のビタミンK、または約1mMの濃度のリポ酸を含む。
【0040】
仕分け
また、細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物を、精子細胞の仕分けの間使用してもよい。一般的には、一旦精子が本発明によって染色されると、それらは、蛍光に基づく分離を可能にするいずれかの既知の手段によって仕分けられてもよい。一般的に使用されよく知られた方法は、米国特許第5,135,759号、5,985,216号、6,071,689号、6,149,867号、および6,263,745号、国際特許公報WO 99/33956およびWO 01/37655、米国特許出願番号10/812,351および対応する国際特許公報WO 2004/088283によって例示され記載されるように、フローサイトメトリーシステムを含む。
【0041】
上記のフローサイトメトリーシステムによって、該染色された細胞は、証拠物件Aに記載のように、フローサイトメトリーのノズルに、試料流体として導入される。従って、1つの具体例において、該試料流体は、該染色された精子細胞および細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物を含み得る。
【0042】
該試料流体は、典型的には、シース液によって囲まれる。該シース液は、該試料流体中の該精子細胞が、一列に引き出されることを許容する。該シース液は、フローサイトメーターの収集システムによって精子細胞と共に収集され、従って、精子細胞に対する仕分け後環境の一部を形成する。従って、該シース液は、該シース液による細胞の接触の際に、細胞に保護効果を提供することが望ましい。
【0043】
従って、該シース液は、一般的には、緩衝液または緩衝溶液および細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物を含む。該シース液において使用され得る緩衝液および緩衝溶液の例およびそれらの説明的濃度は、試料収集および希釈に関して、上記で開示される。特定の具体例において、該シース液は、約7.0のpHにて、水中に0.96%ダルベッコリン酸緩衝食塩水(w/v)、0.1% BSA (w/v)を含む。
【0044】
所望により、該シース液は、精子生存率または運動率に有利な添加剤の範囲も含有し得る。そのような添加剤は、例えば、エネルギー源、蛋白源、抗生物質、およびポリビニルアルコールを含む。これらの添加剤の各々、およびその例は、細胞試料の収集に関して、上記で論議される。そのような添加剤は、それに従って、該シース液に添加してもよい。
【0045】
該シース液は、所望により、仕分け工程前にろ過されてもよい。非溶解性粒子のような該シース液中に存在し得る汚染物質は、仕分けを妨げ得る。従って、該シース液は、フローサイトメーターへの導入前にろ過してもよい。そのようなフィルターおよびそれを使用する方法は、当該分野でよく知られる。一般的には、該フィルターは、約0.1ミクロンないし約0.5ミクロン、好ましくは約0.2ミクロンないし約0.3ミクロン、およびより好ましくは約0.2ミクロンの膜である。
【0046】
該染色された細胞は、染色後いつ該シース液に導入されてもよい。典型的には、該試料流体中の該染色された細胞の流れは、該フローサイトメーターのノズル内のシース液の流れに注入される。最初は、下記でより詳細に論議されるように、該流体の層流による該試料流体および該シース液の接触は、実質的には存在しない。該試料流体中の粒子(例えば、該染色された精子細胞)が分析される後まで、該試料流体およびシース液が、実質的に異なる流れのままであることが望ましい。しかしながら、ある時点で、該試料流体のシース液および細胞は相互に接触する。例えば、(下記で論議される)液滴仕分けフローサイトメーターにおいて、液滴が問い合わせ位置の下流で形成されるように、該シース液および試料流体は相互に接触し始める。
【0047】
該染色された細胞および該シース液の導入の時点にて、該染色された細胞および該シース液は、約4℃ないし約50℃の温度であってよい。該シース液および該仕分けられた細胞は、同一または異なる温度であってよく、ここにどちらか一方は他方より高い温度である。従って、1つの具体例において、該染色された細胞および該シース液の導入の時点で、該細胞および該シース液の両方は、同じ温度;例えば、約5℃ないし約8℃のような「比較的低い」温度;例えば約25℃ないし約30℃のような「中程度」の温度;または例えば、約40℃ないし約43℃のような「比較的高い」温度である。もう1つの具体例において、該染色された細胞は、該シース液より高い温度であり、例えば、該細胞は約40℃ないし約43℃であり、該シース液は大体室温または約5℃である。さらにもう1つの具体例において、該染色された細胞は、該シース液より低い温度である。
【0048】
該仕分けられた細胞の収集
一旦仕分けられると、該仕分けられた細胞は、収集流体を含有する容器に収集される。一般的には、該収集流体の目的は、該収集容器によって該精子細胞の衝撃を和らげることまたは該細胞に流体支持体を提供することを含む。従って、該収集流体は、細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物、緩衝液または緩衝溶液、および蛋白源を含み得る。
【0049】
もし含まれるなら、該収集流体で使用され得る緩衝液または緩衝溶液の例は、該試料細胞の収集に関して、上記で開示される。典型的には、これらの緩衝液または緩衝溶液は、約0.001Mないし約1.0Mの濃度であり、約4.5ないし約8.5、好ましくは約5.0ないし約8.0、より好ましくは約5.5ないし約7.5、さらにより好ましくは約6.0ないし約7.0、さらにより好ましくは約6.5ないし約7.0、および最も好ましくは約6.5のpHを有するであろう。1つの具体例において、該収集流体は、約7.0のpHにて、0.96%のダルベッコPBS (w/v)を含む緩衝液を含有する。もう1つの具体例において、該収集流体は、約6.5のpHにて、0.96%のダルベッコPBS (w/v)を含む緩衝液を含有する。もう1つの具体例において、該収集流体は、0.204gのNaHCO3、0.433gのKHCO3、および0.473gのC6H8O7・H2O/25mLの精製水(水中に0.097 モル/LのNaHCO3、0.173 モル/LのKHCO3、0.090 モル/LのC6H8O7・H2O)を含む緩衝溶液を含有する。
【0050】
もし含まれるなら、該蛋白源は、精子細胞の生存率を妨げず、使用される特定の緩衝液または緩衝溶液と適合性のあるいずれかの蛋白源であってよい。一般的な蛋白源の例は、(熱で均質化されたおよび脱脂を含む)乳、乳抽出物、卵黄、卵黄抽出物、大豆蛋白質および大豆蛋白質抽出物を含む。そのような蛋白質は、約1%(v/v)ないし約30%(v/v)、好ましくは約10%(v/v)ないし約20%(v/v)、およびより好ましくは約10%(v/v)の濃度で使用され得る。乳は、緩衝液または緩衝溶液と組み合わせて使用されてもよいが、乳は緩衝液または緩衝溶液と同じ目的を果たし得る溶液そのものであるため、一般的には、乳はそれなしで使用される。そのような例において、該収集流体は、約80%(v/v)ないし約90%(v/v)の乳を含有し得る。
【0051】
該蛋白源に加えてまたはそれに代えて、該収集流体は、精漿も含み得る。精漿は、精子生存率および運動率を改善しおよび該精子膜を安定する(それにより、該精子の収集および保存の間、受精能獲得を防ぐ)二重の利益を果たす。Maxwell et al., Reprod. Fert. Dev. (1998) 10: 433-440.該精漿は、該精液試料が入手された同一の哺乳類、該同一種の異なる哺乳類、または異なる種の哺乳類からであってよい。もし該収集流体に含まれるなら、典型的には、精漿のパーセントは、約0.5%(v/v)ないし約10%(v/v)の範囲であろう。もし例えば卵黄または乳のような蛋白源と組み合わせて使用されるなら、精漿および蛋白源の総パーセンテージは、約1%(v/v)ないし約30%(v/v)の範囲であろう。そのような例において、精漿のパーセンテージは、該蛋白源のパーセンテージに対して反比例するであろう。従って、1つの具体例において、該収集流体は精漿を含む。もう1つの具体例において、該収集流体は、約0.5%(v/v)ないし約10%(v/v)の量で、好ましくは約4%(v/v)ないし約6%(v/v)の量で、より好ましくは約5%(v/v)の量で、精漿を含有する。もう1つの具体例において、該収集流体は、蛋白源および精漿を含有する。さらにもう1つの具体例において、該収集流体は、精漿および卵黄を含み、両方のパーセンテージは、総合で、約1%(v/v)および約30%(v/v)の間である。
【0052】
所望により、該収集流体は、精子生存率または運動率に有益な範囲の添加剤も含有し得る。そのような添加剤の例は、エネルギー源および抗生物質を含み、それらの各々は、該試料細胞の収集に関して上記で論議される。そのような添加剤は、それに従って、該収集流体に添加されてよい。
【0053】
従って、特定の具体例において、該収集流体は、約7.0のpHにて水中に、細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物、0.96% ダルベッコPBS(w/v)、1%(w/v)フルクトース、10%(v/v)卵黄を含む。さらにもう1つの具体例において、細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物は、10mM ピルビン酸、100μM ビタミンK、1mMのリポ酸、またはそのいずれかの組合せを含む。
【0054】
別法として、収集流体の使用の代わりに、該仕分けられた細胞は、収集流体の使用の代わりに、引き続いての低温保存工程で使用され、さらに下記に記載される低温エキステンダーを含有するまたはそれで覆われる容器に収集され得る。従って、1つの特定の具体例において、該仕分けられた細胞は、低温エキステンダーに収集される。例えば、該低温エキステンダーは、水、(Minitube, Verona, WI, グリセロール、トリス、クエン酸、フルクトース、5mg/100mlのチロシン, 25mg/100mlのゲンタマイシン、30mg/100mlのスペクチノマイシン、および15mg/100mlのリンコマイシンを含む)Triladyl(登録商標)、卵黄、および細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物を含んでもよい。さらにもう1つの具体例において、該低温エキステンダーは、25g Triladyl(登録商標)、および25gの卵黄/75mlの水、および細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物を含む。
【0055】
本明細書中に開示された収集流体中の蛋白質のパーセント濃度は、該流動仕分けされた細胞の添加前のものであると理解されるべきである。該流動仕分けされた細胞の添加は、該収集流体の最終濃度を、該流動仕分けされた細胞の添加前のものであった約1/20まで希釈し得る。従って、例えば、該収集流体は、最初に、約10%(v/v)卵黄を含有し得る。該流動仕分けされた細胞が、該収集流体を含有する収集容器に収集された後、卵黄の該最終濃度は、約0.5%(v/v)まで減少するであろう。別法として、該流動仕分けされた細胞の添加は、収集流体の最終濃度を、該流動仕分けされた細胞の添加前のものであった約1/15まで希釈し得る。従って、例えば、該収集流体は、最初は、約20% (v/v)の卵黄を含有し得る。該流動仕分けされた細胞が、該収集流体を含有する収集容器に収集された後、卵黄の該最終濃度は、約1.3% (v/v)まで減少されるであろう。
【0056】
該仕分けられた細胞の低温拡大培養
一旦、該精子が仕分けられ、該収集容器に収集されると、それらを雌の哺乳類を受精させるのに使用してもよい。これは、ほぼすぐに起こり得、該精子のさらなる処置をほとんど必要としない。同様に、該精子は、後日使用するために、冷却または冷凍してもよい。そのような例において、該精子は、冷却および冷凍の結果としての生存率または解凍後運動率に対する衝撃を最小化するためにさらなる処置から利益を享受し得る。
【0057】
一般的には、低温エキステンダーは、緩衝液または緩衝溶液、細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物、蛋白源、および抗凍結剤を含む。該低温エキステンダー中で使用し得る緩衝液または緩衝溶液の例は、試料収集および延長に関して上記で開示される。典型的には、これらの緩衝液は、約0.001Mないし約1.0Mの濃度であり、約4.5ないし約8.5、好ましくは約7.0のpHを有するであろう。
【0058】
もし含まれるなら、蛋白源は、例えば、細胞に支持体を提供するように添加してもよい。該蛋白源は、精子細胞の生存率を妨げず、使用される緩衝液または緩衝溶液と適合性のあるいずれの蛋白源であってもよい。一般的な蛋白源の例は、(熱で均質化されたおよび脱脂を含む)乳、乳抽出物、卵黄、卵黄抽出物、大豆蛋白質および大豆蛋白質抽出物を含む。そのような蛋白質は、約10%(v/v)ないし約30%(v/v)、好ましくは約10%(v/v)ないし約20%(v/v)、およびより好ましくは約20%(v/v)の濃度で発見され得る。乳は緩衝液または緩衝溶液と組み合わせて使用され得るが、乳は緩衝液または緩衝溶液と同じ目的を果たし得る溶液そのものであるため、一般的には、乳は、それらなしで使用される。そのような例において、該低温エキステンダーは、約80%(v/v)ないし約90%(v/v)の乳を含有するであろう。
【0059】
抗凍結剤は、好ましくは、低温エキステンダーに含まれて、低温衝撃を緩和または防ぐまたは精子の受精率を維持する。数多くの抗凍結剤が、当該分野で知られる。所与のエクステンダーとの使用に適当な抗凍結剤の選択は変動し得、冷凍される該精子が得られる種によって決まる。適当な抗凍結剤の例は、例えば、グリセロール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、トレハロース、Triladyl(登録商標)およびその組合せを含む。もし含まれるなら、これらの抗凍結剤は、約1%(v/v)ないし約15%(v/v)の量で、好ましくは約5%(v/v)ないし約10%(v/v)の量で、より好ましくは約7%(v/v)の量で、および最も好ましくは約6%(v/v)の量で、低温エキステンダー中に存在する。
【0060】
1つの特定の具体例において、該低温エキステンダーは、水、Triladyl(登録商標)、卵黄、および細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物を含む。さらにもう1つの具体例において、該低温エキステンダーは、25gのTriladyl(登録商標)および25gの卵黄/75 mlの水、および細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物を含む。
【0061】
所望により、該低温エキステンダーは、精子生存率または運動率に有利であり、凍結保存の有害な副作用を予防または緩和する添加剤の範囲を含有してもよい。そのような添加剤は、例えば、エネルギー源または抗生物質を含んでもよく、それらの各々は、試料収集および希釈に関して、上記で論議される。そのような添加剤を、それに従って、該低温エキステンダーに添加してもよい。
【0062】
本発明を詳細に記載してきて、添付の請求の範囲において定義される本発明の範囲から逸脱することなしに、修飾および変更が可能であることが明白であろう。
【実施例】
【0063】
実施例
以下の非限定的実施例は、本発明をさらに説明するために提供される。
【0064】
実施例1
雄牛の精液を、人工膣を用いて性的に成熟した雄牛から収集し、該試料を、温度制御された容器において、25℃にて、染色施設への輸送のために、二部炭酸緩衝液中で希釈する。受け取る際、該精液を、標準かつよく知られた手順に従って、Hamilton-Thorn Motility Analyzer (IVOS)によって、濃度、運動率および前進運動率につき分析した(Farrell et al. Theriogenology, 49(4): 871-9 (Mar 1998))。該精液濃度に基づき、1mLの150 X 106精子/ml懸濁液を、該炭酸精子懸濁液のアリコートを除去し、5分間、500 X gにて、該精子懸濁液を遠心分離し、該上澄みを除去し、pH 7.3の41℃ TCA緩衝液中に該ペレットを再懸濁することによって調製した。さらなる1mLの150 X 106精子/mlを、pH 7.3にて、10mM ピルビン酸を含有する41℃ TCA緩衝液中に精液のアリコートを懸濁することによって調製した。該精子懸濁液に、水中の10mM Hoechst溶液のアリコートを添加して、400μM Hoechstの色素濃度を得た。該精子懸濁液を、染色期間の持続期間、41℃の水槽中に維持した。精子懸濁液を、染色する精子懸濁液から50μL アリコートを除去し、同一温度にて、200μLの同一緩衝液を添加し、IVOSによって分析して、% 前進運動率 (% Prog Mot)を測定することによって分析した。IVOS分析の結果を、図1に要約する。
【0065】
実施例2
精子試料を、以下の例外を除いて、実施例1と同じ様式で、入手し調製した。染色およびIVOS分析のために精子を懸濁するのに使用した緩衝液は、TCAおよび10uMのビタミンKを含有するTCAであった。IVOS分析の結果を、図2に要約する。
【0066】
実施例3
精子試料を、以下の例外を除いて、実施例1と同じ様式で、入手し調製した。染色およびIVOS分析のために精子を懸濁するのに使用した緩衝液は、TCAおよび100uMのビタミンKを含有するTCAであった。IVOS分析の結果を、図3に要約する。
【0067】
実施例4
精子試料を、以下の例外を除いて、実施例1と同じ様式で、入手し調製した。染色およびIVOS分析のために精子を懸濁するのに使用した緩衝液は、TCAおよび1mMのリポ酸を含有するTCAであった。IVOS分析の結果を、図4に要約する。
【0068】
実施例5
雄牛の精液を、人工膣を用いて性的に成熟した雄牛から収集し、該試料を、温度制御された容器において、25℃にて、染色施設への輸送のために、二部炭酸緩衝液中で希釈する。受け取る際、該精液を、標準かつよく知られた手順に従って、Hamilton-Thorn Motility Analyzer (IVOS)によって、濃度、運動率および前進運動率につき分析した(Farrell et al. Theriogenology, 49(4): 871-9 (Mar 1998))。該精液濃度に基づき、1mLの150 X 106精子/ml懸濁液を、5分間、500 X gにて、該精子懸濁液を遠心分離し、該上澄みを除去し、pH 7.3の28℃ TCA緩衝液中に該ペレットを再懸濁することによって調製した。さらなる1mLの150 X 106精子/mlを、pH 7.3にて、10mM ピルビン酸を含有する28℃ TCA緩衝液中に精液のアリコートを懸濁することによって調製した。該精子懸濁液に、水中の10mM Hoechst溶液のアリコートを添加して、600μM Hoechstの色素濃度を得た。該精子懸濁液を、染色期間の持続期間、28℃の水槽中に維持した。精子懸濁液を、染色する精子懸濁液から50μL アリコートを除去し、同一温度にて、200μLの同一緩衝液を添加し、IVOSによって分析して、パーセント前進運動率(% Prog Mot)を測定することによって分析した。IVOS分析の結果を、図5に要約する。
【0069】
実施例6
精子試料を、以下の例外を除いて、実施例5と同じ様式で、入手し調製した。染色およびIVOS分析のために精子を懸濁するのに使用した緩衝液は、TCAおよび100uMのビタミンKを含有するTCAであった。IVOS分析の結果を、図6に要約する。
【0070】
実施例7
精子試料を、以下の例外を除いて、実施例5と同じ様式で、入手し調製した。染色およびIVOS分析のために精子を懸濁するのに使用した緩衝液は、TCAおよび1mMのリポ酸を含有するTCAであった。IVOS分析の結果を、図7に要約する。
【0071】
実施例8
雄牛の精液を、人工膣を用いて性的に成熟した雄牛から収集し、該試料を、温度制御された容器において、25℃にて、染色施設への輸送のために、二部炭酸緩衝液中で希釈する。受け取る際、該精液を、標準かつよく知られた手順に従って、Hamilton-Thorn Motility Analyzer (IVOS)によって、濃度、運動率および前進運動率につき分析した(Farrell et al. Theriogenology, 49(4): 871-9 (Mar 1998))。該精液濃度に基づき、1mLの150 X 106精子/ml懸濁液を、該炭酸精子懸濁液のアリコートを除去し、5分間、500 X gにて、該精子懸濁液を遠心分離し、該上澄みを除去し、1 ml TCA緩衝液または2.5 mM、10 mM、25 mM、または50 mM ピルビン酸を有する1 ml TCA緩衝液中に該ペレットを再懸濁することによって調製した。該試料に、MON33342溶液を添加して、600μMの最終色素濃度を得た。該懸濁液を、28℃の水槽においてインキュベートした。染色された精子懸濁液を、染色する精子懸濁液から50μL アリコートを除去し、同一温度にて、200μLの同一緩衝液を添加し、IVOSによって分析して、パーセント前進運動率 (% Prog Mot)を測定することによって分析した。% Prog Motに対するIVOS結果を、図8に示す。
【0072】
実施例9
雄牛の精液を、人工膣を用いて性的に成熟した雄牛から収集し、該試料を、温度制御された容器において、25℃にて、染色施設への輸送のために、二部炭酸緩衝液中で希釈する。受け取る際、該精液を、標準かつよく知られた手順に従って、Hamilton-Thorn Motility Analyzer (IVOS)によって、濃度、運動率および前進運動率につき分析した(Farrell et al. Theriogenology, 49(4): 871-9 (Mar 1998))。該精液濃度に基づき、1mLの150 X 106精子/ml懸濁液を、該炭酸精子懸濁液のアリコートを除去し、5分間、500 X gにて、該精子懸濁液を遠心分離し、該上澄みを除去し、1mL TCA緩衝液中に該ペレットを再懸濁することによって調製した。TCAにおいて10mM ピルビン酸中の1mlの150 X 106精子/mlを、該炭酸精子懸濁液のアリコートを除去し、5分間、500 X gにて、該精子懸濁液を遠心分離し、該上澄みを除去し、1mLの10 mM ピルビン酸 TCA緩衝液中に該ペレットを再懸濁することによって調製した。試料に、SYBR 14色素溶液を添加して、20μMの最終色素濃度を得た。該懸濁液を、28℃の水槽においてインキュベートした。精子懸濁液を、染色する精子懸濁液から50μL アリコートを除去し、同一温度にて、200μLの同一緩衝液を添加し、IVOSによって分析して、パーセント前進運動率(% Prog Mot)を測定することによって分析した。% Prog Motに対するIVOS結果を、図9に示す。
【0073】
実施例10
雄牛の精液を、人工膣を用いて性的に成熟した雄牛から収集し、該試料を、温度制御された容器において、25℃にて、染色施設への輸送のために、二部炭酸緩衝液中で希釈する。受け取る際、該精液を、標準かつよく知られた手順に従って、Hamilton-Thorn Motility Analyzer (IVOS)によって、濃度、運動率および前進運動率につき分析した(Farrell et al. Theriogenology, 49(4): 871-9 (Mar 1998))。該精液濃度に基づき、TCA緩衝液中の1mLの150 X 106精子/ml懸濁液を、該炭酸精子懸濁液のアリコートを除去し、5分間、500 X gにて、該精子懸濁液を遠心分離し、該上澄みを除去し、1mL TCA緩衝液中に該ペレットを再懸濁することによって調製した。TCAにおいて10mM ピルビン酸中の1mlの150 X 106精子/mlを、該炭酸精子懸濁液のアリコートを除去し、5分間、500 X gにて、該精子懸濁液を遠心分離し、該上澄みを除去し、1mLの10 mM ピルビン酸 TCA緩衝液中に該ペレットを再懸濁することによって調製した。該試料に、BBC溶液を添加して、100μMの最終色素濃度を得た。該懸濁液を28℃の水槽においてインキュベートした。染色された精子懸濁液を、染色する精子懸濁液から50μL アリコートを除去し、同一温度にて、200μLの同一緩衝液を添加し、IVOSによって分析して、パーセント前進運動率(% Prog Mot)を測定することによって分析した。% Prog Motに対するIVOS結果を図10に示す。
【0074】
実施例11
精子試料を、以下の例外を除いて、実施例10と同じ様式で、入手し調製した。染色濃度は、200uM BBCであった。IVOS分析の結果を、図11に要約する。
【0075】
実施例12
雄牛の精液を、人工膣を用いて性的に成熟した雄牛から収集し、温度制御された容器中で、25℃にて、染色施設へ輸送した。受け取る際、該精液を、標準かつよく知られた手順に従って、Hamilton-Thorn Motility Analyzer (IVOS)によって、濃度、運動率および前進運動率につき分析した(Farrell et al. Theriogenology, 49(4): 871-9 (Mar 1998))。精液濃度に基づき、いくつかの管の150 X 106精子/ml懸濁液を、TCA緩衝液または炭酸系阻害剤において精液を懸濁することによって調製した。下記の表I.は、使用された組成物および染色条件を示す。
【0076】
【表2】

【0077】
該精子懸濁液に、水中の10mM Hoechst溶液のアリコートを添加して、600μM Hoechstの濃度を得た。該精子懸濁液を、染色期間の持続期間(約1時間)、28℃の水槽中に維持した。精子懸濁液を、該染色された精子懸濁液から50μL アリコートを除去し、pH 7.3にて200μLのTCA中の25℃ 10mM ピルビン酸を添加して、該静止状態の逆転を開始し、少なくとも5分の平衡期間を許容し、IVOSによって分析して、パーセント前進運動率 (% Prog. Mot.)を測定することによって、分析した。IVOSパーセント前進運動率の比較を、図12ないし14に示す。
【0078】
実施例13
雄牛の精液を、人工膣を用いて性的に成熟した雄牛から収集し、温度制御された容器中で、25℃にて、染色施設へ輸送した。受け取る際、該精液を、標準かつよく知られた手順に従って、Hamilton-Thorn Motility Analyzer (IVOS)によって、濃度、運動率および前進運動率につき分析した(Farrell et al. Theriogenology, 49(4): 871-9 (Mar 1998))。精液濃度に基づき、数管の450 X 106精子/ml 懸濁液を、TCA緩衝液または炭酸系阻害剤中で精液を懸濁することによって調製した。下記の表II.は、使用された組成物および染色条件を示す。
【0079】
【表3】

【0080】
該精子懸濁液に、水中の10mM Hoechst溶液のアリコートを添加して、1000μM Hoechstの濃度を得た。該精子懸濁液を、1時間、28℃の水槽中に維持し、次いで、特異的に各図において仕分けに典型的な濃度まで希釈すると示されるように、pH6.2にてTCAまたは炭酸系阻害剤中の10mM ピルビン酸によって、150X106精子/mlまで希釈した。精子懸濁液を、各図内で指定された期間にて、該染色され希釈された精子懸濁液から50μL アリコートを除去し、pH 7.3にてTCA中の200μLの25℃ 10mM ピルビン酸を添加して、静止状態の逆転を開始し、少なくとも5分間の平衡期間を許容し、次いで該アリコートをIVOSによって分析して、パーセント前進運動率を測定することによって分析した。該IVOSパーセント前進運動率の比較を図15ないし17に示す。
【0081】
実施例14
雄牛の精液を、人工膣を用いて性的に成熟した雄牛から収集し、温度制御された容器中で、25℃にて、染色施設へ輸送した。受け取る際、該精液を、標準かつよく知られた手順に従って、Hamilton-Thorn Motility Analyzer (IVOS)によって、濃度、運動率および前進運動率につき分析した(Farrell et al. Theriogenology, 49(4): 871-9 (Mar 1998))。精液濃度に基づき、数管の450 X 106精子/ml懸濁液を、TCA緩衝液または炭酸系阻害剤のいずれかにおいて、精液を懸濁することによって調製した。下記の表II.は使用された組成物および染色条件を示す。
【0082】
【表4】

【0083】
該精子懸濁液に、水中の10mM Hoechst溶液のアリコートを添加して、300μM Hoechstの濃度を得た。該精子懸濁液を、30分間、41℃の水槽中に維持し、次いで、各図面に具体的に示されたように、TCA中の10 mM ピルビン酸、またはpH 6.2の炭酸系阻害剤で150X106精子/mlまで希釈して、仕分けに典型的な濃度まで希釈した。各図面内に示した時点に染色し希釈された精子懸濁液から50μL アリコートを取り出し、pH 7.3のTCA中の200μLの25℃ 10mM ピルビン酸を加えて、休止の逆行を開始し、少なくとも5分間の平衡期間を可能とし、IVOSによって分析して、パーセント前進運動率を測定した。IVOSパーセント前進運動率の比較を、図18-20に示す。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、実施例1において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子のパーセント前進運動率は、TCA緩衝液または10mM ピルビン酸を含有するTCA緩衝液のいずれかにおいて、41℃にて、400μM Hoechst 33342色素によって染色される精子について測定される。
【図2】図2は、実施例2において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子のパーセント前進運動率は、TCA緩衝液または10μM ビタミンKを含有するTCA緩衝液のいずれかにおいて、41℃にて、400μM Hoechst 33342色素によって染色される精子について測定される。
【図3】図3は、実施例3において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子のパーセント前進運動率は、TCA緩衝液または100μM ビタミンKを含有するTCA緩衝液のいずれかにおいて、41℃にて、400μM Hoechst 33342色素によって染色される精子について測定される。
【図4】図4は、実施例4において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子のパーセント前進運動率は、TCA緩衝液または1mM リポ酸を含有するTCA緩衝液のいずれかにおいて、41℃にて、400μM Hoechst 33342色素によって染色される精子について測定される。
【図5】図5は、実施例5において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子のパーセント前進運動率は、TCA緩衝液または10mM ピルビン酸を含有するTCA緩衝液のいずれかにおいて、28℃にて、600μM Hoechst 33342色素によって染色される精子について測定される。
【図6】図6は、実施例6において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子のパーセント前進運動率は、TCA緩衝液または100μM ビタミンKを含有するTCA緩衝液のいずれかにおいて、28℃にて、600μM Hoechst 33342色素によって染色される精子について測定される。
【図7】図7は、実施例7において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子のパーセント前進運動率は、TCA緩衝液または1mM リポ酸を含有するTCA緩衝液のいずれかにおいて、28℃にて、600μM Hoechst 33342色素によって染色される精子について測定される。
【図8】図8は、実施例8において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子のパーセント前進運動率は、TCA緩衝液、2.5mM ピルビン酸を含有するTCA緩衝液、10mM ピルビン酸を含有するTCA緩衝液、25mM ピルビン酸を含有するTCA緩衝液、50mM ピルビン酸を含有するTCA緩衝液において、28℃にて、600μM Hoechst 33342色素によって染色される精子について測定される。
【図9】図9は、実施例9において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子のパーセント前進運動率は、TCA緩衝液または10mM ピルビン酸を含有するTCA緩衝液のいずれかにおいて、28℃にて、20μM SYBR-14色素によって染色される精子について測定される。
【図10】図10は、実施例10において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子のパーセント前進運動率は、TCA緩衝液または10mM ピルビン酸を含有するTCA緩衝液のいずれかにおいて、28℃にて、100μM BBC色素によって染色される精子について測定される。
【図11】図11は、実施例11において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子のパーセント前進運動率は、TCA緩衝液または10mM ピルビン酸を含有するTCA緩衝液のいずれかにおいて、28℃にて、200μM BBC色素によって染色される精子について測定される。
【図12】図12は、実施例12において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子細胞のパーセント前進運動率は、10mM ピルビン酸を含有するTCAにおいてまたは10mM ピルビン酸を含有する二酸化炭素で覆われたTCAにおいて、28℃にて、600μM Hoechst 33342色素によって染色される精子細胞について測定される。
【図13】図13は、実施例12において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子細胞のパーセント前進運動率は、10mM ピルビン酸を含有するTCAまたはpH 7.3の炭酸系阻害剤緩衝液において、28℃にて、600μM Hoechst 33342色素によって染色される精子細胞について測定される。
【図14】図14は、実施例12において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子細胞のパーセント前進運動率は、10mM ピルビン酸を含有するTCAまたはpH 6.2の炭酸系阻害剤において、28℃にて、600μM Hoechst 33342色素によって染色される精子細胞について測定される。
【図15】図15は、実施例13において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子細胞のパーセント前進運動率は、10mM ピルビン酸を含有するTCAにおいて、28℃にて、1000μM Hoechst 33342色素によって染色され、次いで、10mM ピルビン酸を含有するTCAまたはpH 6.2の炭酸系阻害剤のいずれかによって、1対3に希釈される精子細胞について測定される。
【図16】図16は、実施例13において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子細胞のパーセント前進運動率は、(1)10mM ピルビン酸を含有し、それによって1対3に希釈されたTCAまたは(2)pH 7.3のおよびpH 6.2の炭酸系阻害剤によって1対3に希釈された炭酸系緩衝剤において、28℃にて、1000μM Hoechst 33342色素によって染色される精子細胞につき分析する。
【図17】図17は、実施例13において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子細胞のパーセント前進運動率は、10mM ピルビン酸を含有するTCAまたはpH 6.2の炭酸系阻害剤中の28℃の1000μM Hoechst 33342色素によって染色された精子細胞について測定される。
【図18】図18は、実施例14において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子細胞のパーセント前進運動率は、10mM ピルビン酸を含有するTCAにおいて41℃の300μM Hoechst 33342色素によって染色され、次いで、pH 6.2にて10mM ピルビン酸を含有するTCAまたは炭酸系阻害剤のいずれかによって、1対3に希釈される精子細胞について測定される。
【図19】図19は、実施例14において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子細胞のパーセント前進運動率は、(1)10mM ピルビン酸を含有し、それによって1対3に希釈されたTCAまたは(2) pH 7.3のおよびpH 6.2の炭酸系阻害剤によって1対3に希釈された炭酸系緩衝剤において、41℃にて、300μM Hoechst 33342色素によって染色された精子細胞について測定される。
【図20】図20は、実施例14において実施される研究の結果を図で示し、ここに、精子細胞のパーセント前進運動率は、10mM ピルビン酸を含有するTCAまたはpH 6.2の炭酸系阻害剤において、41℃にて、300μM Hoechst 33342色素によって染色された精子細胞について測定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生存可能な精子、細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物、およびDNA選択色素を含み、ここに、該組成物がピルビン酸である時、染色混合物中の該組成物の濃度は50μMより大きい染色混合物。
【請求項2】
該組成物が、ピルビン酸、ビタミンK、リポ酸、グルタチオン、フラビン、キノン、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼミミック、およびそのいずれかの組合せよりなる群から選択される請求項1記載の該染色混合物。
【請求項3】
該組成物が、ピルビン酸、ビタミンK、リポ酸、およびその組合せよりなる群から選択される請求項2記載の該染色混合物。
【請求項4】
該組成物が、約2.5mM、約10mM、約15mM、約25mM、および約50mMよりなる群から選択される濃度にて、ピルビン酸を含む請求項1記載の該染色混合物。
【請求項5】
該組成物が、約10μM、約50μM、約75μM、および約100μMよりなる群から選択される濃度にて、ビタミンKを含む請求項1記載の該染色混合物。
【請求項6】
該組成物が、約0.1mM、約0.5mM、約0.75mM、約1.0mM、および約1.5mMよりなる群から選択される濃度にて、リポ酸を含む請求項1記載の該染色混合物。
【請求項7】
該DNA選択色素がDNA選択蛍光色素である請求項1記載の該染色混合物。
【請求項8】
該DNA選択色素がDNA選択蛍光色素である請求項2記載の該染色混合物。
【請求項9】
該色素がUV励起または可視光励起色素である請求項1記載の該染色混合物。
【請求項10】
該色素がUV励起または可視光励起色素である請求項2記載の該染色混合物。
【請求項11】
該色素が、Hoechst 33342、Hoechst 33258、SYBR-14、およびビスベンズイミド-BODIPY(登録商標)コンジュゲート6-{[3-((2Z)-2-{[1-(ジフルオロボリル)-3,5-ジメチル-1H-ピロール-2-イル]メチレン}-2H-ピロール-5-イル)プロパノイル]アミノ}-N-[3-(メチル{3-[({4-[6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H,3'H-2,5'-ビベンズイミダゾール-2'-イル]フェノキシ}アセチル)アミノ]プロピル}アミノ)プロピル]ヘキサンアミドよりなる群から選択される請求項1記載の該染色混合物。
【請求項12】
該色素が、Hoechst 33342、Hoechst 33258、SYBR-14、およびビスベンズイミド-BODIPY(登録商標)コンジュゲート6-{[3-((2Z)-2-{[1-(ジフルオロボリル)-3,5-ジメチル-1H-ピロール-2-イル]メチレン}-2H-ピロール-5-イル)プロパノイル]アミノ}-N-[3-(メチル{3-[({4-[6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H,3'H-2,5'-ビベンズイミダゾール-2'-イル]フェノキシ}アセチル)アミノ]プロピル}アミノ)プロピル]ヘキサンアミドよりなる群から選択される請求項2記載の該染色混合物。
【請求項13】
精子細胞を染色するための方法であって、無傷の生存可能な精子細胞、細胞内でおよび/または細胞外で酸化/還元反応を制御する組成物、およびDNA選択色素を含有し、ここに、該組成物がピルビン酸である時、染色混合物中の該組成物の濃度は50μMより大きい染色混合物を形成することを特徴とする方法。
【請求項14】
該DNA選択色素がHoechst 33342、Hoechst 33258、SYBR-14、およびビスベンズイミド-BODIPY(登録商標)コンジュゲート6-{[3-((2Z)-2-{[1-(ジフルオロボリル)-3,5-ジメチル-1H-ピロール-2-yl]メチレン}-2H-ピロール-5-yl)プロパノイル]アミノ}-N-[3-(メチル{3-[({4-[6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H,3'H-2,5'-ビベンズイミダゾール-2'-イル]フェノキシ}アセチル)アミノ]プロピル}アミノ)プロピル]ヘキサンアミドよりなる群から選択される請求項13記載の方法。
【請求項15】
該染色混合物が、約4℃ないし約30℃の温度に付される請求項13記載の方法。
【請求項16】
該染色混合物が、約30℃ないし約39℃の温度に付される請求項14記載の方法。
【請求項17】
該染色混合物が、約40℃ないし約50℃の温度に付される請求項14記載の方法。
【請求項18】
該組成物が、約2.5mM、約10mM、約15mM、約25mM、および約50mMよりなる群から選択される濃度にて、ピルビン酸を含む請求項13記載の方法。
【請求項19】
該組成物が、約10μM、約50μM、約75μM、および約100μMよりなる群から選択される濃度にて、ビタミンKを含む請求項13記載の方法。
【請求項20】
該組成物が、約0.1mM、約0.5mM、約0.75mM、約1.0mM、および約1.5mMよりなる群から選択される濃度にて、リポ酸を含む請求項13記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2007−531880(P2007−531880A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506488(P2007−506488)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/010598
【国際公開番号】WO2005/095960
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(501231613)モンサント テクノロジー エルエルシー (71)
【Fターム(参考)】