説明

染色液およびプラスチック基材の染色方法

【課題】レンズ基材等として用いられるプラスチック基材に対して十分な染色性と染色安定性を発揮でき、かつ人体や環境への負荷も少ないプラスチック基材用の染色液、およびこの染色液を用いた染色方法を提供すること
【解決手段】プラスチック基材用の染色液は、分散染料とキャリア剤とを含んだ水溶液からなり、前記キャリア剤は、ケイ皮アルコール、p−アニシルアルコールおよびベンズヒドロールの中から選ばれる少なくとも一種である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染色液およびそれを用いたプラスチック基材の染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックレンズは眼鏡レンズやカメラレンズを初め多方面に利用されるようになっている。特に着色が容易であることは、眼鏡レンズの最大の利点の一つである。現在、プラスチックレンズ基材(以下、単に「レンズ基材」ともいう)の着色は、分散染料を温水または有機溶剤に分散させ、そこにレンズ基材を浸漬する染色方法が一般的に行われている。例えば、CR−39等のアリル系プラスチックレンズは、染色性が良好であり、分散染料と界面活性剤を温水中に添加した染色液を用いることによって、容易に染色加工を行うことが可能である。
一方、最近ではレンズの薄型化への市場要望が強く、屈折率が1.50のCR−39から、屈折率が1.60〜1.70程度に達するチオウレタン樹脂系のレンズ基材が開発され、市場でのシェアを拡大している。このようなチオウレタン樹脂系レンズ基材は、高屈折率化とともに、高耐熱性を示すものも多く、レンズの品質面では各種のメリットが得られるが、一方、染色加工を行う際には、CR−39等に比べて基材の染色速度が遅く、長時間浸漬してもごく薄い色にしか染まらないなどの問題があった。
そこで、このような難染色性基材への染色方法として、最近では、キャリア染色法がよく用いられている。キャリア染色法とは、温水染色浴中に増染作用を有するいわゆるキャリア剤を添加して染色を行う方法である。キャリア剤としては、一般に水溶性の有機溶剤が用いられる(例えば、特許文献1)。このようなキャリア染色法によれば、染色速度が向上するため、短時間で染色が完了するという利点がある。
【0003】
【特許文献1】特開平11−12959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、レンズ基材の染色は、一般に85〜95℃程度の液温範囲で行われている。これは、液温が高いほど染色性(染色濃度、染色速度)が向上するため、効率的な染色加工ができるからである。
しかしながら、特許文献1に記載されているようなベンジルアルコール等のキャリア剤は蒸発しやすいため、染色中にその濃度が変化してしまう。そうすると、染色性が変化するため安定した染色が困難となる。また、多種多様な染色剤や界面活性剤が含まれる染色液中で特定のキャリア剤の濃度を簡便に測定する方法はまだない。それ故、蒸発により失われたキャリア剤を補給して、染色液中のキャリア剤の濃度を一定に保つことも困難である。また、近年の主流である高屈折率のレンズ基材用樹脂(チオウレタン系樹脂等)には染色性の極めて悪いものが多く、キャリア剤の濃度を高くする必要がある。しかし、キャリア剤の濃度を高くすると、キャリア剤の濃度変化がいっそう激しくなる。
このように染色液中のキャリア剤濃度が変化した場合は、色補正のための追加染色をするか、あるいは染色液を廃棄し、新たに染色液を調合しなおす必要があった。
また、蒸発しにくく染色安定性に優れるキャリア剤としてp−フェニルフェノールやo−フェニルフェノール等のフェノール類も使用されているが、皮膚に接触すると無痛の漂白作用があることも報告されている。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、レンズ基材等として用いられるプラスチック基材に対して十分な染色性と染色安定性を発揮でき、かつ人体や環境への負荷も少ないプラスチック基材用の染色液、およびこの染色液を用いた染色方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決すべく、本発明の染色液は、プラスチック基材用の染色液であって、該染色液は、分散染料とキャリア剤とを含み、前記キャリア剤が沸点230〜400℃の芳香族アルコール類(フェノール類を除く)であることを特徴とする染色液であることを特徴とする。
本発明の染色液によれば、芳香族アルコール類をキャリア剤として用いるため、水への溶解性が高いとともにプラスチック基材への浸透力も強い。それ故、キャリア剤としての効果に優れる。しかも、沸点が230℃以上と蒸発(揮発)しにくいため、染色を高温で行っても、染色液中のキャリア剤濃度が変化しにくい。従って、プラスチック基材への染色を安定して行うことができる。
また、本発明の染色液を構成する芳香族アルコール類はフェノール類ではないため、人体への漂白作用もなく、環境負荷も少ない。
このような本発明の染色方法に使用されるキャリア剤としては、DL‐β‐エチルフェネチルアルコール、2‐エトキシベンジルアルコール、3‐クロロベンジルアルコール、2,5‐ジメチルベンジルアルコール、2‐ニトロベンジルアルコール、p‐イソプロピルベンジルアルコール、2‐メチルフェネチルアルコール、3‐メチルフェネチルアルコール、4‐メチルフェネチルアルコール、2‐メトキシベンジルアルコール、3‐ヨードベンジルアルコール、ケイ皮アルコール、p−アニシルアルコールおよびベンズヒドロールの中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
これらのキャリア剤の中でも、染色速度をより向上させる点で、ケイ皮アルコール、p−アニシルアルコールおよびベンズヒドロールの中から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0007】
本発明においては、染色液中におけるキャリア剤の濃度が0.01〜10質量%であることが好ましい。
0.01質量%未満ではキャリア剤の効果が充分ではなく、染色スピードが遅い問題がある。また、10質量%超えるとキャリア自身がレンズ基材へ付着し、染色ムラ等の問題が発生する場合がある。
【0008】
本発明の染色液は、プラスチック基材の中でも、特にレンズ基材に好適に用いることができる。
ここで、レンズ基材の材質は、特に限定されないが、(メタ)アクリル樹脂をはじめとして、スチレン樹脂、カーボネート樹脂、アリル樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)などのアリルカーボネート樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、イソシアネート化合物とジエチレングリコールなどのヒドロキシ化合物との反応で得られたウレタン樹脂、イソシアネート化合物とポリチオール化合物とを反応させたチオウレタン樹脂、分子内に1つ以上のスルフィド結合またはジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物を含有する重合性組成物を硬化して得られる透明樹脂等を例示することができる。
【0009】
これらのレンズ基材のうち、イソシアネート化合物とポリチオール化合物とを反応させたチオウレタン樹脂が、高屈折率、高耐熱性、高強度等の特性を有し、基材品質のバランスに優れるため、眼鏡用のレンズ基材として特に好ましい。
【0010】
従来のキャリア染色では、ごく小数のレンズ基材を短時間で染色する場合には有効であったが、工業的に大量のレンズ基材の染色を行う場合には、染色液の安定性が悪いことから、追加染色や染色液の廃棄・交換等多くの時間と資源を無駄にしていた。
本発明の染色液によれば、前記したようにキャリア剤の性能が高いだけではなく、その濃度変化が少ないため工業的なレンズ基材の染色に好適である。特に、ガラス転位点が95℃以上あるようなレンズ基材用樹脂や、高屈折率のレンズ基材用樹脂(チオウレタン系樹脂等)には染色性の悪いものが多いため、このような樹脂からなるレンズ基材の染色に適用することが望ましい。
【0011】
本発明のプラスチック基材の染色方法は、分散染料とキャリア剤とを含んだ染色液に浸漬し染色する方法であって、前記キャリア剤が沸点230〜400℃の芳香族アルコール類(フェノール類を除く)であることを特徴とする。
本発明の染色方法によれば、プラスチック基材を分散染料により染色する際に、芳香族アルコール類をキャリア剤として用いるため、水への溶解性が高いとともにプラスチック基材への浸透力も強い。それ故、キャリア剤としての効果に優れる。しかも、沸点が230℃以上と蒸発(揮発)しにくいため、染色を高温で行っても、染色液中のキャリア剤濃度が変化しにくい。従って、プラスチック基材への染色を安定して行うことができる。
また、本発明の染色液を構成する芳香族アルコール類はフェノール類ではないため、人体への漂白作用もなく、環境負荷も少ない。
本発明のプラスチック基材の染色方法は、前記キャリア剤がDL‐β‐エチルフェネチルアルコール、2‐エトキシベンジルアルコール、3‐クロロベンジルアルコール、2,5‐ジメチルベンジルアルコール、2‐ニトロベンジルアルコール、p‐イソプロピルベンジルアルコール、2‐メチルフェネチルアルコール、3‐メチルフェネチルアルコール、4‐メチルフェネチルアルコール、2‐メトキシベンジルアルコール、3‐ヨードベンジルアルコール、ケイ皮アルコール、p−アニシルアルコールおよびベンズヒドロールの中から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
これらのキャリア剤の中でも、染色速度をより向上させる点で、ケイ皮アルコール、p-アニシルアルコールおよびベンズヒドロールの中から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
本発明の染色方法によれば、染色中のキャリア剤の濃度変化による染色性の変動も抑えることが可能となる。
【0012】
本発明においては、染色時における前記染色液の温度が70〜100℃であることが好ましく、85〜100℃であることがより好ましい。なお、染色液の温度を上げる場合は、沸騰しないように制御することが望ましい。
この発明によれば、染色液の温度が十分高いため、高速染色が可能となる。しかも、キャリア剤として蒸発性が低いため、染色中のキャリア剤の濃度変化による染色性の変動も抑えられる。
【実施例】
【0013】
次に、本発明の実施例および比較例を説明する。具体的には、以下に示す各製造例によりチオウレタン樹脂系の眼鏡用レンズ基材を作製した後、所定の染色液により染色性の評価を行った。
(製造例1)
(1)原料モノマーの調合
撹拌子を備えたガラス容器に、ノルボルネンジイソシアネートを50.6質量部、ペンタエリストールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)を主成分とするポリチオール組成物を23.9質量部、4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオールを主成分とするポリチオール組成物を25.5質量部、紫外線吸収剤(ジプロ化成工業製 SEESORB701)を3.0質量部、および内部離型剤(Stepan社製 ゼレックUN)を0.1質量部入れた後、十分に撹拌・混合して均一に分散または溶解させた。その後、この混合液にさらにジブチル錫ジクロライド0.025質量部を添加し、30℃に保持しながら十分に撹拌して溶解させた後、5mmHgに減圧して撹拌を続けながら30分間脱気を行った。
【0014】
(2)注型重合
対向する2枚のガラス型を封止用テープで保持してなるレンズモールドの中に、前記(1)で得られた混合液(モノマー)を注入した。レンズモールドを温風加熱炉により30
℃から130℃まで12時間かけて昇温し、130℃で2時間保持した後、1時間で70℃まで放冷させて、重合体をレンズモールドから離型し、チオウレタン樹脂系レンズ基材1を得た。
【0015】
(製造例2)
(1)原料モノマーの調合
撹拌子を備えたガラス容器に、m−キシリレンジイソシアネートを50.6質量部、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、あるいは、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、あるいは、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンのいずれか1種、または、これら2種あるいは3種を混合した化合物を49.4質量部、紫外線吸収剤(ジプロ化成工業製 SEESORB701)を1.2質量部、および内部離型剤(Stepan社製 ゼレックUN)を0.1質量部入れた後、十分に撹拌・混合して均一に分散または溶解させた。その後、この混合液にさらにジブチル錫ジクロライド0.005質量部とN,N−ジメチルシクロヘキシルアミン0.005質量部を添加し、30℃に保持しながら十分に撹拌して溶解させた後、5mmHgに減圧して撹拌を続けながら30分間脱気を行った。
【0016】
(2)注型重合
対向する2枚のガラス型を封止用テープで保持してなるレンズモールドの中に、前記(1)で得られた混合液(モノマー)を注入した。レンズモールドを温風加熱炉により30℃
から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で0.5時間保持した後、2時間で70℃まで放冷させて、重合体をレンズモールドから離型し、チオウレタン樹脂系レンズ基材2を得た。
【0017】
(製造例3)
(1)原料モノマーの調合
撹拌子を備えたガラス容器に、m−キシリレンジイソシアネートを44.4質量部、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパンを主成分とするポリチオール組成物を55.6質量部、紫外線吸収剤(ジプロ化成工業製 SEESORB701)を1.2質量部、および内部離型剤(Stepan社製 ゼレックUN)を0.1質量部入れた後、十分に撹拌・混合して均一に分散または溶解させた。その後、この混合液にさらにジブチル錫ジクロライド0.02質量部を添加し、30℃に保持しながら十分に撹拌して溶解させた後、5mmHgに減圧して撹拌を続けながら30分間脱気を行った。
【0018】
(2)注型重合
対向する2枚のガラス型を封止用テープで保持してなるレンズモールドの中に、前記(1)で得られた混合液(モノマー)を注入した。レンズモールドを温風加熱炉により30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で0.5時間保持した後、2時間で70℃まで放冷させて、重合体をレンズモールドから離型し、チオウレタン樹脂系レンズ基材3を得た。
【0019】
(実施例1)
(1)染色液の調合
ビーカーに入れた1リットルの純水をマグネチックスターラーで撹拌しながら、間接槽を用いて94℃に保温した。ビーカー内の水に界面活性剤としてネオノール20(山川薬品工業製)を5cc添加し、次に、キャリア剤としてケイ皮アルコール(沸点250℃ 、関東化学製)を3g添加した。この水溶液にさらに、染色剤1(双葉産業製 FSP Blue AUL−S)を0.55g、染色剤2(双葉産業製 FSP Red E−A)を0.25g、および染色剤3(双葉産業製 FSP Red Brown S−N)を0.20g添加した。ビーカー内の水溶液を撹拌して上記各添加物を均一に分散・溶解させ、染色液とした。
【0020】
(2)レンズ基材の染色
調合後の染色液について、液温を94℃に保った状態で撹拌しながら30分間放置後、製造例1〜3により得られたレンズ基材1〜3を各々染色液に10分間浸漬し、染色レンズA1〜A3を得た(初期染色品)。
次に、染色液の入ったビーカーを開口したまま(蓋をせず)、液温を94℃に保った状態で染色液の撹拌を3時間続けた後、製造例1〜3により得られたレンズ基材1〜3を各々染色液に10分間浸漬し、染色レンズB1〜B3を得た(3時間後染色品)。
さらに、染色液の入ったビーカーを開口したまま、液温を94℃に保った状態で染色液の撹拌を3時間続けた後、製造例1〜3により得られたレンズ基材1〜3を各々染色液に10分間浸漬し、染色レンズC1〜C3を得た(6時間後染色品)。
さらに、染色液の入ったビーカーを開口したまま、液温を94℃に保った状態で染色液の撹拌を18時間続けた後、製造例1〜3により得られたレンズ基材1〜3を各々染色液に10分間浸漬し、染色レンズD1〜D3を得た(24時間後染色品)。
【0021】
(実施例2)
実施例1の「(1)染色液の調合」において、キャリア剤としてp−アニシルアルコール
(沸点259℃ 、関東化学製)を6g添加した以外は、実施例1と同様にして染色液を調合し、レンズ基材の染色も同様に行った。
【0022】
(実施例3)
実施例1の「(1)染色液の調合」において、キャリア剤としてベンズヒドロール(沸点
298℃、関東化学製)を3g添加した以外は、実施例1と同様にして染色液を調合し、レンズ基材の染色も同様に行った。
【0023】
(比較例1)
実施例1の「(1)染色液の調合」において、キャリア剤としてベンジルアルコール(沸
点205℃、関東化学製)を20cc添加した以外は、実施例1と同様にして染色液を調合し、レンズ基材の染色も同様に行った。
【0024】
(参考例1)
実施例1の「(1)染色液の調合」において、キャリア剤としてp−フェニルフェノール
(大和化学工業製 ダイキャリアDK−CN)を3g添加した以外は、実施例1と同様にして染色液を調合し、レンズ基材の染色も同様に行った。
【0025】
(評価方法)
実施例1〜3、比較例1および参考例1により得られた染色後のレンズ基材について、
以下に示す方法で染色性と外観を評価した。結果を表1〜3に示す。
【0026】
(1)染色性
染色後の各レンズ基材(初期、3時間後、6時間後、24時間後)について、BPIフォトメーター(BRAIN POWER INCORPORATED製)により光線透過率(%)を測定し、染色性の目安とした。
【0027】
(2)外観
染色後の各レンズ基材(初期、3時間後、6時間後、24時間後)について、目視により面あれ、色むらを観察し、以下の基準で判断した。
良好:面あれ、および、色むらなし
不良:面あれ、および/または、色むらあり
【0028】
(結 果)
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
外観については、実施例1〜3、比較例1および参考例1により得られたレンズ基材は
いずれも「良好」であった。
表1に示す結果から、長時間(〜24時間)放置後の染色液を用いても、実施例1〜3のレンズ基材はいずれも光線透過率の上昇が少ないことがわかる。すなわち、本発明の染色液は、市販のキャリア剤を用いた染色液(参考例1)と同等の性能を示すことがわかる。これは、実施例1〜3のレンズ基材は、沸点が230℃以上であるため蒸発しにくく、染色液調合後に長時間(24時間)経過しても染色液中のキャリア剤濃度が変化しにくいためと考えられる。
また、これらの実施例1〜3のキャリア剤は、芳香族アルコール類ではあっても参考例1のようなフェノール類ではないため、人体(皮膚等)の漂白作用等の問題もなく、環境への負荷も少ない。
一方、比較例1では、染色液中におけるキャリア剤(ベンジルアルコール)が蒸発しやすく、キャリア剤の濃度変化が激しいため、得られるレンズ基材の染色性が安定しない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の染色液および染色方法は、プラスチック基材の染色に利用することができる。例えば、眼鏡レンズ、カメラレンズ、望遠鏡用レンズ、顕微鏡用レンズ、ステッパー用集光レンズ等のプラスチックレンズに好適に採用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材用の染色液であって、
該染色液は、分散染料とキャリア剤とを含み、
前記キャリア剤が沸点230〜400℃の芳香族アルコール類(フェノール類を除く)であることを特徴とする染色液。
【請求項2】
請求項1に記載の染色液において、
前記キャリア剤がDL‐β‐エチルフェネチルアルコール、2‐エトキシベンジルアルコール、3‐クロロベンジルアルコール、2,5‐ジメチルベンジルアルコール、2‐ニトロベンジルアルコール、p‐イソプロピルベンジルアルコール、2‐メチルフェネチルアルコール、3‐メチルフェネチルアルコール、4‐メチルフェネチルアルコール、2‐メトキシベンジルアルコール、3‐ヨードベンジルアルコール、ケイ皮アルコール、p−アニシルアルコールおよびベンズヒドロールの中から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする染色液。
【請求項3】
請求項2に記載の染色液において、前記キャリア剤がケイ皮アルコール、p−アニシルアルコールおよびベンズヒドロールの中から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする染色液。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の染色液において、
前記染色液中におけるキャリア剤の濃度が0.01〜10質量%であることを特徴とする染色液。
【請求項5】
分散染料とキャリア剤とを含んだ染色液に浸漬してプラスチック基材を染色する方法であって、
前記キャリア剤が沸点230〜400℃の芳香族アルコール類(フェノール類を除く)であることを特徴とするプラスチック基材の染色方法。
【請求項6】
請求項5に記載のプラスチック基材の染色方法において、
前記キャリア剤がDL‐β‐エチルフェネチルアルコール、2‐エトキシベンジルアルコール、3‐クロロベンジルアルコール、2,5‐ジメチルベンジルアルコール、2‐ニトロベンジルアルコール、p‐イソプロピルベンジルアルコール、2‐メチルフェネチルアルコール、3‐メチルフェネチルアルコール、4‐メチルフェネチルアルコール、2‐メトキシベンジルアルコール、3‐ヨードベンジルアルコール、ケイ皮アルコール、p−アニシルアルコールおよびベンズヒドロールの中から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とするプラスチック基材の染色方法。
【請求項7】
請求項6に記載のプラスチック基材の染色方法において、
前記キャリア剤がケイ皮アルコール、p−アニシルアルコールおよびベンズヒドロールの中から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とするプラスチック基材の染色方法。
【請求項8】
請求項5〜請求項7のいずれかに記載のプラスチック基材の染色方法において、
染色時における前記染色液の温度が70〜100℃であることを特徴とするプラスチック基材の染色方法。
【請求項9】
請求項5〜請求項8のいずれかに記載のプラスチック基材の染色方法において、
前記プラスチック基材の材質が、チオウレタン樹脂であることを特徴とするプラスチック基材の染色方法。

【公開番号】特開2008−111223(P2008−111223A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242348(P2007−242348)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】