説明

柔軟剤組成物

【課題】 多種多様な繊維種に対して良好な柔軟性付与効果を示し、組成物の経時安定性改良、処理布の吸水性改良、黄変抑制などの課題を解決する柔軟剤組成物を提供する。
【解決手段】 炭素数5〜10のアルコールの含有量が80%以上である飽和1級アルコールから誘導された下記化学式(1)で表される非イオン界面活性剤である成分(A)と、下記化学式(2a)又は(2b)で表されるモノ長鎖炭化水素基型4級アンモニウム塩、ジ長鎖炭化水素基型4級アンモニウム塩、モノ長鎖炭化水素基型3級アミン及びジ長鎖炭化水素基型3級アミンからなる群から選択された1種又は2種以上のカチオン界面活性剤である成分(B)とを含有し、成分(A)と成分(B)の固形分重量比が(A)/(B)=1/10〜20/1であり、かつ、成分(B)を3重量%以上40重量%以下の割合で含有するものとする。
【化1】


【化2】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柔軟剤には長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩や3級アミンの酸塩などが用いられており、これらは水不溶性であるため組成物中に高濃度に配合できない、組成物調製時にゲル化や粘度上昇を生じるといった問題があった。また、従来の柔軟剤組成物は上記問題から分散状態での製品形態を余儀なくされており、相溶性改良、経時安定性改良の目的で、本来柔軟性付与に関与しない成分、例えば、分散安定化助剤や溶剤類の配合が必要とされる場合があり、コスト高の原因にもなっていた。また、近年、製品外観も商業製品において重要な要素となっており、製品外観の改良による製品の高付加価値化が望まれている。
【0003】
これらの問題を解消する方策として以下のような技術が開示されている。例えば、近年、審美的観点から製品価値を向上させるべく、透明又は半透明な柔軟剤の開発が行われており、特開平7−229061号公報には 不飽和アルキル基を有する柔軟剤および非水性溶剤を用いた組成物が開示されている。特開平9−250085号公報には特定ヨウ素価を有する柔軟化基材を用いた柔軟剤組成物が開示されている。しかしながら、不飽和アルキル基を有する柔軟剤は、貯蔵中に着色したり、臭いの劣化が起こるため製品価値が著しく損なわれる。また、柔軟処理後の衣料が黄変するという問題が生じる。
【0004】
これを解決するために、特開平9−310276号公報には特定の酸化防止剤やキレート化剤と溶剤を含有する臭い安定性を改善した柔軟剤組成物が開示されている。また、特開平7−3650号公報には特定の芳香族化合物を用いた透明で安定な液体柔軟剤組成物が開示されている。さらに、特開平11−43863号公報には特定のアリール化合物を用いた色および臭いの安定性に優れる柔軟剤組成物が開示されている。しかしながらこれらの技術においても貯蔵中の着色や臭いの劣化を満足できるレベルまで抑制することはできていない。また、これらの技術では柔軟剤組成物を透明化をすることが困難であるか、透明化できたとしても低温において白濁するなどの安定性に問題を生じる。さらには、柔軟処理後の衣料の黄変の問題も解決されていない。
【0005】
また、特開2001−164466号公報には、飽和炭化水素基からなる柔軟剤基材と特定の溶剤を用いた臭いや色の安定性に優れる透明柔軟剤組成物を開示されているが、飽和炭化水素基を有する柔軟剤基材を用いた柔軟剤組成物は、タオルなどに水が染み込みにくく、吸水性に乏しいという傾向があり、その改善が望まれている。
【0006】
その他、特開2003−328268号公報、特開2003−105667号公報や国際公開第99/06509号パンフレットには、柔軟剤組成物の透明化、相溶性向上等を目的として非対称ジアルキル型の柔軟剤基材が例示されているが、製造上、工程の多段化、煩雑化は避けられず、更に製造技術の水準が高く、商業生産上好ましくないという問題がある。
【特許文献1】特開2003−105667号公報
【特許文献2】特開2003−328268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の如く、従来の柔軟剤組成物においては、柔軟剤成分の高濃度化、相溶性改良、着色や臭いに関する経時安定性改良、柔軟処理後の衣類やタオル類の吸水性改良、黄変抑制などの課題の充分な解決はなされておらず、これらの課題を解決しつつ多種多様な繊維種に対して良好な柔軟性付与効果を示す、好ましくは透明の液体柔軟剤組成物が所望されている。また、従来柔軟剤基材として広範に使用されてきたジアルキルジメチル4級アンモニウム塩は良好な柔軟性を付与することができる反面、生分解性が劣るため、生分解性にも優れた柔軟剤が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の種々問題点に鑑み、良好な柔軟性付与効果に加えて、実用上所望される柔軟剤成分の高濃度化、相溶性改良、着色や臭いに関する経時安定性改良、柔軟処理後の衣類、タオル類の吸水性改良、黄変抑制などの問題を解消し、更に多種多様な繊維種に対して良好な柔軟性を示す柔軟剤組成物に必要な諸要件について探索した結果、特定の化学構造を有し、好ましくは特定範囲の臨界ミセル濃度(cmc)を有する非イオン界面活性剤を使用することで、所望される諸要件を満たしながら良好な柔軟性付与効果が得られることを見出し、実用上極めて有用な本発明の柔軟剤組成物を提供するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の柔軟剤組成物は、炭素数5〜10のアルコールの含有量が80%(重量%、以下同様)以上である飽和1級アルコールから誘導された下記化学式(1)で表される非イオン界面活性剤である成分(A)と、下記化学式(2a)又は(2b)で表されるモノ長鎖炭化水素基型4級アンモニウム塩、ジ長鎖炭化水素基型4級アンモニウム塩、モノ長鎖炭化水素基型3級アミン及びジ長鎖炭化水素基型3級アミンからなる群から選択された1種又は2種以上のカチオン界面活性剤である成分(B)とを含有し、前記成分(A)と成分(B)の固形分重量比が(A)/(B)=1/10〜20/1であり、かつ、成分(B)を3重量%以上40重量%以下の割合で含有するものとする(請求項1)。
【化1】

【0010】
(化学式(1)において、Rは炭素数5〜10の炭化水素基の含有量が80%以上である炭化水素基を示し、−(AO)−は炭素数が2〜4の1種又は2種以上のアルキレンオキシドの付加重合反応によって得られるオキシアルキレン基を示す。nはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、0〜100である。)
【化2】

【0011】
(化学式(2a)及び(2b)において、R11は、炭素数8〜24のアルキル基またはアルケニル基またはβ−ヒドロキシアルキル基、あるいは分断基としてエステル基またはアミド基またはエーテル基を有し、これら分断基も含めて炭素数が8〜27の炭化水素基である。R12は、炭素数8〜24のアルキル基またはアルケニル基またはβ−ヒドロキシアルキル基、あるいは分断基としてエステル基またはアミド基またはエーテル基を有し、これら分断基も含めて炭素数が8〜27の炭化水素基、または炭素数1〜3のアルキル基またはβ−ヒドロキシアルキル基である。R13は、炭素数1〜3のアルキル基またはβ−ヒドロキシアルキル基であり、化学式(2a)における2個のR13は同じでも異なっていてもよい。Xはハロゲンイオン又は炭素数1〜3のアルキル基を有するモノアルキル硫酸塩基、または系中の平衡作用により置換された、系中に存在する他のアニオン性化合物である。3級アミンである化学式(2b)の化合物は、酸と中和塩を形成していてもよい。)
【0012】
上記において、成分(A)は炭素数5〜10のアルコールの含有量が80%以上で且つ分岐型アルコールの含有量が50%以上である飽和1級アルコールから誘導された下記化学式(3)で表される非イオン界面活性剤であることが好ましい(請求項2)。
【化3】

【0013】
(化学式(3)において、Rは炭素数5〜10の炭化水素基の含有量が80%以上である炭化水素基、−(A’O)−は炭素数が3および/または4のオキシアルキレン基を示し、−(EO)−は炭素数が2のオキシエチレン基を示す。また、n’はアルキレンオキシドの平均付加モル数、mはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、n’は0〜10、mは1〜100、n’とmの合計数が0〜100である。)
【0014】
成分(A)は2−アルキル−1−アルカノール型の分岐型飽和1級アルコールから誘導された下記化学式(4)で表される非イオン界面活性剤であることがより好ましい(請求項3)。
【化4】

【0015】
(化学式(4)において、R、Rは炭化水素基を示し、Rを構成する炭化水素基の炭素数が2〜6、Rを構成する炭化水素基の炭素数が1〜4であり、RとRの炭化水素基の合計が3〜10である。また、−(A’O)−は炭素数が3および/または4のオキシアルキレン基を示し、−(EO)−は炭素数が2のオキシエチレン基を示す。また、n’はアルキレンオキシドの平均付加モル数、mはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、n’は0〜10、mは1〜100、n’とmの合計数が0〜100である。)
【0016】
上記柔軟剤組成物は、成分(A)の臨界ミセル濃度(cmc)が0.01重量%以上10重量%未満の範囲にあり、かつ成分(B)の臨界ミセル濃度(cmc)が0.0001重量%以上0.1重量%未満の範囲にあることが好ましい(請求項4)。
【発明の効果】
【0017】
本発明の柔軟剤組成物によれば、広範な繊維種、衣類に対して実用上満足し得る水準の柔軟性を付与することができる。
【0018】
また、本発明で使用する非イオン界面活性剤は柔軟性に悪影響を及ぼさず、且つ柔軟剤基材の配合において、減粘剤、相溶性改良剤、可溶化剤、乳化剤、分散剤等として作用する。また、柔軟処理後、柔軟性への悪影響を最低限に留めながら、浸透性、吸水性改良剤として作用する。従って、従来疎水性の柔軟剤基材を柔軟剤組成物へ配合する際に、減粘や相溶性改良、可溶化、乳化、分散等を目的として添加されていた、柔軟性に悪影響を及ぼす可能性があり、且つコスト高要因となる種々添加剤が不要となるため、製品の均一透明化、広範な処方の調製が可能となり、商品価値の向上に寄与する。また、取り扱い条件や配合条件によっては皮膚刺激性や引火性問題を発現する粘度低下剤、即ち、溶剤類の配合量を大幅に削減することができ、粘度低下剤配合によるコスト高問題を解消できる。
【0019】
また、水中の鉄分の衣類への吸着を抑制し、仕上がり時または経時的に引き起こされる黄ばみ問題を解消する。
【0020】
さらに、使用する柔軟剤基材を適宜選択することで生分解性を改善した環境にやさしい柔軟剤組成物を提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の柔軟剤組成物は、上記の通り、特定組成の非イオン界面活性剤(成分(A))と柔軟剤基材であるカチオン界面活性剤(成分(B))とを必須成分として含有する。
【0022】
成分(A)である非イオン界面活性剤は、炭素数5〜10のアルコールの含有量が80%以上である飽和1級アルコールから誘導される下記化学式(1)で表される構造を有する。
【化5】

【0023】
化学式(1)において、Rは炭素数5〜10炭化水素基の含有量が80%以上である炭化水素基、−(AO)−は炭素数が2〜4のオキシアルキレン基を示し、1種以上のアルキレンオキシドの付加重合反応によって得られ、nはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、0〜100である。
【0024】
本発明の目的を達成するため、非イオン界面活性剤は、炭素数5〜10のアルコールの含有量80%以上で且つ分岐型アルコールの含有量が50%以上である飽和1級アルコールから誘導される下記化学式(3)で表される構造を有することが望ましい。
【化6】

【0025】
化学式(3)において、Rは炭素数5〜10の炭化水素基の含有量が80%以上である炭化水素基、−(A’O)−は炭素数が3および/または4のオキシアルキレン基を示し、−(EO)−は炭素数が2のオキシエチレン基を示す。また、n’はアルキレンオキシドの平均付加モル数、mはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、n’は0〜10、mは1〜100であり、n’とmの合計数が0〜100である。
【0026】
非イオン界面活性剤は、さらに好ましくは、2−アルキル−1−アルカノール型の分岐型飽和1級アルコールから誘導される下記化学式(4)で表される構造を有するものとする。
【化7】

【0027】
化学式(4)において、R、Rは炭化水素基を示し、Rを構成する炭化水素基の炭素数が2〜6、Rを構成する炭化水素基の炭素数が1〜4であり、RとRの炭化水素基の炭素数の合計が3〜10である。−(A’O)−、−(EO)−、n’及びmは、化学式(3)と同じである。
【0028】
上記特定組成の非イオン界面活性剤を使用することにより、本発明では、実用上所望される柔軟剤成分の高濃度化、相溶性改良、着色や臭いに関する経時安定性改良、柔軟処理後の衣類、タオル類の吸水性改良、黄変抑制などの問題を解消し得る。また更に、多種多様な繊維種に対して良好な柔軟性を示す柔軟剤組成物を提供し得る。
【0029】
また、本発明で用いる非イオン界面活性剤は、上記種々の問題を改善するのみならず、柔軟性付与に対して低影響性であり、使用する柔軟剤基材の組成を適宜選択することで生分解性を改善した環境にやさしい柔軟剤組成物を提供し得る点で実用上有用である。
【0030】
上記成分(A)は、炭素数5〜10のアルコールの含有量が80%以上である飽和1級アルコールから誘導される。また上記の通り、好ましくは炭素数8〜10のアルコールの含有量が80%以上であり、かつ分岐型アルコールの含有量が50%以上である飽和1級アルコールから誘導され、その飽和1級アルコールは、炭素数が単一であっても、異なる炭素数の高級アルコールの混合物であってもよく、また、高級アルコールの化学構造は単一組成であっても、複数の異性体からなる混合物であってもよい。好適な例としては、直鎖型及び/又は分岐型のペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノールの他、炭素数8〜10のアルコールの好適な例としてオクタノール、2−エチル−1−ヘキサノールが挙げられる。また、プロピレン或いはブテン、又はその混合物から誘導される高級オレフィンを経て、オキソ法によって製造される分岐型の飽和1級アルコールが挙げられ、この製法にて製造されるイソノナノール、イソデカノールなどが市販されている。また、この製法にて製造される分岐型飽和1級アルコールの混合物、例えばEXXAL9、EXXAL10(エクソン・ケミカル社製)なども好適に使用できる分岐型高級アルコールの一例である。また、n−パラフィンやエチレンオリゴマーから誘導されるオレフィンを経て、オキソ法によって製造される直鎖型と分岐型の混合アルコールなども好適に使用できる。また、2−プロピル−1−ヘキサノール、2−ブチル−1−ヘキサノール、2−エチル−1−ヘプタノール、2−プロピル−1−ヘプタノール、2−エチル−1−オクタノール等の2−アルキル−1−アルカノール型の化学構造をもつゲルベアルコール(Guerbet Alcohol)類の単一組成、或いはその混合物なども好適に使用できる分岐型高級アルコールの一例である。また、上記各種アルコールを2種以上配合して使用することも可能である。
【0031】
本発明で使用する非イオン界面活性剤は、飽和1級アルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加重合して得られ、好ましくは炭素数2のアルキレンオキシドと炭素数3及び/又は4のアルキレンオキシドをブロック付加して得られる。炭素数2のアルキレンオキシドはエチレンオキシド、炭素数3のアルキレンオキシドはプロピレンオキシドである。炭素数4のアルキレンオキシドは、テトラヒドフランも含むが、好ましくは、1,2−ブチレンオキシドまたは2,3−ブチレンオキシドである。
【0032】
上記一般式(3)及び(4)で示される化合物中のn’、即ち、炭素数3及び/又は炭素数4のアルキレンオキシドの平均付加モル数は、表面張力低下能、湿潤・浸透力などの実用上の性能や性状が優れるという点から、0〜10が好ましく、0〜5がより好ましい。
【0033】
一般式(3)及び(4)で示される化合物中のm、即ち、エチレンオキシド平均付加モル数は1〜100であり、表面張力低下能、湿潤・浸透力、また、物性のバランスに優れているという点で、1〜50がより好ましい。
【0034】
本発明で使用する非イオン界面活性剤は、アルカリ触媒、酸触媒の他、金属酸化物、金属塩類、金属錯体類などの種々公知の触媒を用いて上記飽和1級アルコールから誘導することが可能である。中でも、アルカリ触媒は、副生物の生成量が相対的に低く、また反応速度、製造コスト等の点から商業生産上有利である。使用できるアルカリ触媒の一例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物及びトリエチルアミンをはじめとする各種アミン化合物などが挙げられる。好適な触媒量は反応粗製物(全仕込量)当たり0.005〜1.0%(固形分換算)、より好ましくは0.03〜0.4%(固形分換算)の範囲である。
【0035】
更に、本発明者は、界面活性剤の性能を特徴付ける上で極めて重要な物理化学的特性値である臨界ミセル濃度(cmc)が、実用上有用な本発明の効果を規定する上で極めて合理的であることを見出し、本発明に好適に使用できる界面活性剤の範囲を25℃における臨界ミセル濃度(cmc)により特定した。
【0036】
界面活性剤の臨界ミセル濃度(cmc)とは、界面活性剤の性能と実使用濃度を決定する重要な特性値である。本発明において、臨界ミセル濃度(cmc)は、25℃における任意の濃度の界面活性剤水溶液に対するウィルヘルミー法による表面張力データ(表面張力−濃度曲線の屈曲点)から求めた特性値であり、単位は重量%である。
【0037】
成分(A)の非イオン界面活性剤は、臨界ミセル濃度(cmc)が0.01重量%以上10重量%未満の範囲にあることが好ましい。成分(A)の臨界ミセル濃度が0.01重量%未満の場合、柔軟性が大きく低下し、風合いが悪化する。また、皮膚刺激性や環境影響性(水生生物毒性)が悪化する傾向にある。一方、臨界ミセル濃度が10重量%以上の場合、実用上所望される柔軟性が発現しない、風合いが悪化する、柔軟処理後の吸水性が低下するといった問題を引き起こす。
【0038】
成分(A)は柔軟性を付与する成分(B)の作用に悪影響を及ぼさず、もしくは最小限にとどめ、柔軟剤組成物中において、減粘剤として、及び/又は相溶化剤として、及び/又は可溶化剤として、及び/又は乳化・分散安定剤として、及び/又は柔軟処理後の浸透性・吸水性改良剤として作用する。この実用上非常に有用な作用の発現において、本発明で上記した成分(A)の組成上の要件および臨界ミセル濃度(cmc)の限定範囲が重要な要件となる。
【0039】
次に、本発明で使用する成分(B)は、次の化学式(2a)又は(2b)で表されるモノ長鎖炭化水素基型4級アンモニウム塩、ジ長鎖炭化水素基型4級アンモニウム塩、モノ長鎖炭化水素基型3級アミン、又はジ長鎖炭化水素基型3級アミンであるカチオン界面活性剤であり、これら化学式(2a)又は(2b)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物を用いてもよい。
【化8】

【0040】
化学式(2a)及び(2b)において、R11は、炭素数8〜24のアルキル基またはアルケニル基またはβ−ヒドロキシアルキル基、もしくは分断基としてエステル基またはアミド基またはエーテル基を有し、それら分断基も含めて炭素数が8〜27の炭化水素基である。R12は、炭素数8〜24のアルキル基またはアルケニル基またはβ−ヒドロキシアルキル基、もしくは分断基としてエステル基またはアミド基またはエーテル基を有し、それら分断基も含めて炭素数が8〜27の炭化水素基である。または炭素数1〜3のアルキル基またはβ−ヒドロキシアルキル基であってもよい。R13は、炭素数1〜3のアルキル基またはβ−ヒドロキシアルキル基であり、化学式(2a)における2個のR13は同じでも異なっていてもよい。また、Xはハロゲンイオン又は炭素数1〜3のアルキル基を有するモノアルキル硫酸塩基である。また、Xは系中の平衡作用により、系中に存在する他のアニオン性化合物に置き換わっていてもよい。また、系中に酸が共存するとき、3級アミンである化学式(2b)の化合物は、酸と中和塩を形成していてもよい。
【0041】
本発明で成分(B)として使用できるカチオン界面活性剤の具体例としては以下の化合物等が挙げられるが、これらは好適に使用できる化合物の一例であって、成分(B)はこれらに限定されるものではない。
【0042】
【化9】

【0043】
化学式(2−1)において、Rは、好ましくは、ヤシ脂肪酸由来アルキル基、パーム脂肪酸由来アルキル基、獣脂脂肪酸由来アルキル基、水素化牛脂脂肪酸由来アルキル基の他、ステアリル基、オレイル基、セチル基またはそれらの混合物等である。
【0044】
【化10】

【0045】
化学式(2−2)において、R−CO−は、好ましくは、ヤシ脂肪酸由来アルキル残基、パーム脂肪酸由来アルキル残基、獣脂脂肪酸由来アルキル残基、水素化牛脂脂肪酸由来アルキル残基の他、ステアリン酸残基、オレイン酸残基、パルミチン酸残基またはそれらの混合物等である。Xは2または3の整数である。
【0046】
【化11】

【0047】
化学式(2−3)において、R−CO−は、好ましくは、ヤシ脂肪酸由来アルキル残基、パーム脂肪酸由来アルキル残基、獣脂脂肪酸由来アルキル残基、水素化牛脂脂肪酸由来アルキル残基の他、ステアリン酸残基、オレイン酸残基、パルミチン酸残基またはそれらの混合物等である。Xは2または3の整数である。
【0048】
【化12】

【0049】
化学式(2−4)において、R−CO−は、好ましくは、ヤシ脂肪酸由来アルキル残基、パーム脂肪酸由来アルキル残基、獣脂脂肪酸由来アルキル残基、水素化牛脂脂肪酸由来アルキル残基の他、ステアリン酸残基、オレイン酸残基、パルミチン酸残基またはそれらの混合物等である。Xは2または3の整数である。
【0050】
【化13】

【0051】
化学式(2−5)において、R**は、好ましくは、ヤシ脂肪酸由来アルキル基、パーム脂肪酸由来アルキル基、獣脂脂肪酸由来アルキル基、水素化牛脂脂肪酸由来アルキル基の他、ベヘニル基、ステアリル基、オレイル基、セチル基またはそれらの混合物等である。
【0052】
【化14】

【0053】
化学式(2−6)において、R−CO−は、好ましくは、ヤシ脂肪酸由来アルキル残基、パーム脂肪酸由来アルキル残基、獣脂脂肪酸由来アルキル残基、水素化牛脂脂肪酸由来アルキル残基の他、ベヘニン酸残基、ステアリン酸残基、オレイン酸残基、パルミチン酸残基またはそれらの混合物等である。Xは2または3の整数である。
【0054】
本発明の効果を発現する要因である成分(A)と成分(B)との相乗効果を得るために、成分(B)カチオン界面活性剤の臨界ミセル濃度(cmc)は、0.0001重量%以上0.1重量%の範囲にあることが望ましい。成分(B)の臨界ミセル濃度が0.0001重量%未満の場合、成分(B)の水溶性が乏しく、柔軟剤組成物中に配合し難い、ゲル化する、相溶性が低下する、といった問題が生じる傾向がある。また、実用上所望される柔軟性を発揮しない、柔軟処理後の吸水性が悪化する、衣類の黄ばみを生じるといった問題を引き起こしたり、皮膚刺激性や環境影響性(水生生物毒性)が悪化する傾向にある。一方、臨界ミセル濃度が0.1重量%以上の場合、実用上所望される柔軟性を発揮しない、風合いが悪化するといった問題を引き起こす傾向がある。
【0055】
上記成分(A)と成分(B)の2成分は、本発明の目的を達成するために、その成分比(固形分重量比)が(A)/(B)=1/20〜30/1であることが望ましく、より好ましくは(A)/(B)=1/10〜20/1である。また、成分(B)の配合量は3重量%以上40重量%以下が望ましく、5重量%以上40重量%以下がより望ましい。なお、成分(A)及び(B)がこの配合比の範囲にない場合には、実用上所望される柔軟性を発揮しない、柔軟処理後の吸水性が悪化する、衣類に黄ばみを生じるといった問題を引き起こす。
【0056】
また、本発明で特に限定した範囲内にある成分(A)及び(B)で構成される柔軟剤組成物は、コスト高や取り扱い条件や配合条件によっては皮膚刺激性や引火性の問題を発現する、粘度低下、相溶性向上の目的で添加される溶剤類の配合量を大幅に削減することができる。また、本発明の範囲内で且つ成分(A)及び(B)の選択、配合条件を特定範囲内に限定した場合には、外観均一透明状の透明柔軟剤組成物が得られ、これは当該製品の商品価値を大幅に向上させる。
【0057】
本発明の柔軟剤組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記必須成分の他に高級脂肪酸、高級アルコール、公知のキレート剤、粘度調整剤、例えば水、塩化カルシウム、食塩、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、エタノール、プロピレングルコール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等、グリコール類、尿素、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩類、キシレンスルホン酸塩、安息香酸塩など、更にはpH調整剤として、例えば 水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカノールアミン類、硫酸、塩酸、アルキルベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、キュメンスルホン酸、等を使用できる。なお、柔軟剤組成物のpHは特に限定されるものではないが製品安定性の点からpH2〜5が好ましい.その他、公知の増粘剤、防腐剤、色素類、香料類などを併用することができる。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0059】
1.非イオン界面活性剤の合成
8Lのオートクレーブに表1に示した出発原料としての所定量のアルコールと水酸化カリウム(対粗製物あたり0.10%)を仕込み、オートクレーブ内をチッ素置換した後、攪拌しながら70℃で減圧して、反応器内の内圧が2.7KPaに到達後、引き続き30分間減圧脱水を継続した。ついで、120℃まで昇温した後、125±5℃、反応圧0.20MPaで、同表に示した付加モル数に応じた量のアルキレンオキシド(PO:プロピレンオキシド、BO:ブチレンオキシド)を導入した。導入後、反応温度を維持して、内圧が低下して一定になるまで熟成させた。次に、135±5℃、反応圧0.25MPaで同表に示した付加モル数に応じた量のエチレンオキシドを導入した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させた。反応液を70℃まで冷却した後、乳酸で中和し、非イオン界面活性剤を得た。
【0060】
上記により得られた非イオン界面活性剤の組成、曇点、臨界ミセル濃度(cmc)、環境特性値を表1に示した。
【0061】
なお、曇点は、非イオン界面活性剤の1%水溶液による値を示した。
【0062】
臨界ミセル濃度(cmc)は、25℃にて任意の濃度の非イオン界面活性剤水溶液の表面張力をウィルヘルミー法にて測定し、得られた[表面張力(mN/m)−水溶液濃度(重量%)]曲線から求めた値(単位:重量%)を示した(表面張力法)。
【0063】
また、環境特性値としての魚毒性は、ヒメダカ(Oryzias Latipes)について、JIS K 0102:1998 「工場排水試験方法」の魚類に対する急性毒性試験の項を参考に、水温24±1℃、止水式、10尾供試にて96時間LC50値(半数致死濃度)で評価した結果を示した。
○ … LC50値 ≧ 10mg/L
× … LC50値 < 10mg/L
【0064】
また、環境特性値としての生分解性は、OECDテストガイドライン(易生分解性試験)301Bに則り、水温22±2℃で28日間供試し、理論二酸化炭素量に対する発生二酸化炭素量から、生分解率(%)を求めて生分解性を評価した結果を示した。
○ … 分解率(28日) ≧ 60%
× … 分解率(28日) < 60%
【0065】
【表1】

【0066】
2.柔軟剤組成物の調製及び評価
上記により得られた非イオン界面活性剤、その他表2に示した各成分を用い、表2に示した配合に従って柔軟剤組成物を調製し、以下の要領で評価を行った。なお、表2に示した組成は重量部(固形分換算)であり、組成物全体で100重量部となるようにした。
【0067】
(1)柔軟剤処理方法
市販の木綿タオルおよび30cm×30cmの大きさのアクリルジャージ布を市販衣料用洗剤にて、その標準洗浄条件下で電気自動洗濯機を用いて洗濯標準コースを3回繰り返すことにより洗濯した後、水道水で充分すすぎ、これを試験布とした。次に、25℃の水道水30リットルに対し、実施例及び比較例で得られた柔軟剤組成物を7gになるように添加し、均一溶液とした。この溶液で上記洗浄済み試験布を浴比1/30で3分間処理した。3分間脱水した後、25℃、65%RHの条件で24時間放置し、下記評価試験に用いた。
【0068】
(2)処理布の柔軟性と黄ばみ性評価
ビス(水素化牛脂)ジメチルアンモニウムクロライドを柔軟剤基材として配合した表2に比較対照例として示した柔軟剤組成物で処理した布を対照にし、一対比較を行ない、下記基準にて評価した。
【0069】
[柔軟性評価基準]
対照布を対照にして一対比較を行い、下記基準による官能評価を行った。評価は5人の女性(既婚者)パネラーの評価点を加算した合計点数(0点〜15点)で評価した。
+2点: 対照布より非常に柔らかい
+1点: 対照布より少し柔らかい
0点: 対照布と同じである
−1点: 対照の方が少し柔らかい
−2点: 対照の方が非常に柔らかい
【0070】
[黄ばみ性評価]
対照布を対照にして一対比較を行い、下記基準により目視にて評価した。評価は5人の女性(既婚者)パネラーの評価点を加算した合計点数(−10点〜0点)で評価した。
+1点: 対照布よりもわずかに白さが認められる
0点: 対照布と同等の白さである
−1点: 対照布よりも黄ばみが認められる
【0071】
(3)処理布の吸水性評価
上記(1)の方法で柔軟剤処理された木綿タオル及びアクリルジャージ布(30cm×30cm)をそれぞれ4つ折りにし、これを25℃の水道水が入った容器に静かに投入し、木綿タオルが完全に水中に沈むまでの時間を測定した。
【0072】
(4)柔軟剤組成物の保存安定性評価
柔軟剤組成物を50℃の恒温機に1ヶ月保存した後の外観(ゲル化・分離等)を、以下の評価基準で評価した。
○: 外観上変化が認められない
△: 外観上変化がやや認められる
×: 外観上変化が認められる
【0073】
【表2】

【0074】
【化15】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の柔軟剤組成物は、実用上必要な仕上がり後の柔軟性や風合いを確保しながら、従来技術で問題となっていた柔軟材基材の相溶性を改良し、組成物調製時の増粘やゲル化を解消し、使用する溶剤量を大幅に低減し、経時安定性に優れた柔軟剤組成物を提供できる。また、用いる柔軟剤基材を適宜選定することで環境適合性をも改善し得る。従って、業務用、リネン用、家庭用等柔軟剤として、柔軟性付与を目的とする各種工程、各種用途、各種産業分野で好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数5〜10のアルコールの含有量が80%以上である飽和1級アルコールから誘導された下記化学式(1)で表される非イオン界面活性剤である成分(A)と、下記化学式(2a)又は(2b)で表されるモノ長鎖炭化水素基型4級アンモニウム塩、ジ長鎖炭化水素基型4級アンモニウム塩、モノ長鎖炭化水素基型3級アミン及びジ長鎖炭化水素基型3級アミンからなる群から選択された1種又は2種以上のカチオン界面活性剤である成分(B)とを含有し、
前記成分(A)と成分(B)の固形分重量比が(A)/(B)=1/10〜20/1であり、かつ、成分(B)を3重量%以上40重量%以下の割合で含有する
ことを特徴とする柔軟剤組成物。
【化1】

(化学式(1)において、Rは炭素数5〜10の炭化水素基の含有量が80%以上である炭化水素基を示し、−(AO)−は炭素数が2〜4の1種又は2種以上のアルキレンオキシドの付加重合反応によって得られるオキシアルキレン基を示す。nはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、0〜100である。)
【化2】

(化学式(2a)及び(2b)において、R11は、炭素数8〜24のアルキル基またはアルケニル基またはβ−ヒドロキシアルキル基、あるいは分断基としてエステル基またはアミド基またはエーテル基を有し、これら分断基も含めて炭素数が8〜27の炭化水素基である。R12は、炭素数8〜24のアルキル基またはアルケニル基またはβ−ヒドロキシアルキル基、あるいは分断基としてエステル基またはアミド基またはエーテル基を有し、これら分断基も含めて炭素数が8〜27の炭化水素基、または炭素数1〜3のアルキル基またはβ−ヒドロキシアルキル基である。R13は、炭素数1〜3のアルキル基またはβ−ヒドロキシアルキル基であり、化学式(2a)における2個のR13は同じでも異なっていてもよい。Xはハロゲンイオン又は炭素数1〜3のアルキル基を有するモノアルキル硫酸塩基、または系中の平衡作用により置換された、系中に存在する他のアニオン性化合物である。3級アミンである化学式(2b)の化合物は、酸と中和塩を形成していてもよい。)
【請求項2】
前記成分(A)が炭素数5〜10のアルコールの含有量が80%以上で且つ分岐型アルコールの含有量が50%以上である飽和1級アルコールから誘導された下記化学式(3)で表される非イオン界面活性剤であることを特徴とする、請求項1に記載の柔軟剤組成物。
【化3】

(化学式(3)において、Rは炭素数5〜10の炭化水素基の含有量が80%以上である炭化水素基、−(A’O)−は炭素数が3および/または4のオキシアルキレン基を示し、−(EO)−は炭素数が2のオキシエチレン基を示す。また、n’はアルキレンオキシドの平均付加モル数、mはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、n’は0〜10、mは1〜100、n’とmの合計数が0〜100である。)
【請求項3】
前記成分(A)が2−アルキル−1−アルカノール型の分岐型飽和1級アルコールから誘導された下記化学式(4)で表される非イオン界面活性剤であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の柔軟剤組成物。
【化4】

(化学式(4)において、R、Rは炭化水素基を示し、Rを構成する炭化水素基の炭素数が2〜6、Rを構成する炭化水素基の炭素数が1〜4であり、RとRの炭化水素基の合計が3〜10である。また、−(A’O)−は炭素数が3および/または4のオキシアルキレン基を示し、−(EO)−は炭素数が2のオキシエチレン基を示す。また、n’はアルキレンオキシドの平均付加モル数、mはエチレンオキシドの平均付加モル数を示し、n’は0〜10、mは1〜100、n’とmの合計数が0〜100である。)
【請求項4】
前記成分(A)の臨界ミセル濃度(cmc)が0.01重量%以上10重量%未満の範囲にあり、前記成分(B)の臨界ミセル濃度(cmc)が0.0001重量%以上0.1重量%未満の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の柔軟剤組成物。

【公開番号】特開2006−104628(P2006−104628A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295407(P2004−295407)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】