説明

柱の立設方法

【課題】地盤改良体に柱脚を固定する場合、鉄筋コンクリートによる基礎コンクリートを不要にしても、柱脚にフランジなどを設けることなく柱脚の剛性を確保でき、上部架構の柱の鉄骨量を削減できて、さらに柱脚を容易に固定できて施工性の向上も図れる柱の立設方法を得る。
【解決手段】鉄骨柱1の埋設孔14を構築した地盤改良体13を深層混合処理工法により形成し、この埋設孔14に柱脚1aを建て込み、埋設孔14と柱脚1aとの隙間にモルタルなどの充填材18を注入して柱脚1aを埋設孔14に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、農業・園芸用のガラス温室施設(グリーンハウス)などの、鉄骨軽量構造物の柱の立設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
構造物が軽量な場合は、杭基礎に代えて独立基礎や布基礎などの直接基礎が採用されることが多いが、ガラス温室などの軽量な鉄骨構造物でも鉄筋コンクリートによる独立基礎や布基礎が用いられている。
【0003】
しかしながら、前記のガラス温室のような軽量な鉄骨構造物の場合は、基礎の鉄筋コンクリート部を簡略化することが可能であることから、上部架構の柱脚形式は露出型柱脚とすることが多いが、柱脚の剛性が小さい分を鉄骨部材を大きくすることで補い、所定の強度を確保している。
【0004】
一方、例えば商業用ガラス温室では、温室内部の環境制御をコンピュータによる自動制御で行っているが、この場合、コンピュータによる自動制御ができない日陰部分を少なくするためには、架構部材を小さくすることが要求される。そして、前記のように所定の強度を確保するために鉄骨部分を大きくした柱を使用する場合、その分日陰部分が多くなって、自動制御を実効性のあるものにすることが困難である。
【0005】
また、鉄筋コンクリート基礎を構築するためには、掘削工事、型枠工事、鉄筋工事、コンクリート工事の各工事が必要となり、工事費がかさむだけでなく、工期も長くなる。
【0006】
そこで、従来鉄筋コンクリート基礎を構築せずに、柱脚を立設する方法として、地盤の表層を改良して地盤改良体をマット状に形成し、この地盤改良体に固定孔を設け、柱の下端をこの固定孔内に配置し、上方からコンクリートを注入するなどして柱をこの地盤改良体上に直接立設する方法がある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−90181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特開2001−90181号公報に記載の技術は、柱脚の底部にフランジを設け、このフランジによって柱に水平力が作用した場合の底面の抵抗力を大きくし、地震時の安全性を確保しているため、柱脚にフランジを設ける必要があるだけでなく、固定孔の孔径もこのフランジが挿入できるだけの大径のものを形成する必要がある。
【0008】
さらに、地盤改良される部分が表層である表層混合処理工法であり、これは、土にセメント系などの固化材を直接混合攪拌するもので、混合の方法としては、例えば畑を耕すように直接混合攪拌する方法と、対象の土を一度掘り出し、地上で攪拌した後、埋め戻す置換工法とがあるが、いずれの場合も、土に粒状の固化材を混合することで強度を得ている。
【0009】
このため、地盤改良体を形成する工程と固定孔を形成する工程とが別のものとなり、施工性がよくない。
【0010】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、地盤改良体に柱脚を固定する場合、鉄筋コンクリートによる基礎コンクリートを不要にしても、柱脚にフランジなどを設けることなく柱脚の剛性を確保でき、上部架構の柱の鉄骨量を削減できて、さらに柱脚を容易に固定できて施工性の向上も図れる柱の立設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前記目的を達成するものとして、請求項1記載の発明は、柱の埋設孔を構築した地盤改良体を深層混合処理工法により形成し、この埋設孔に柱脚を建て込み、埋設孔と柱脚との隙間にモルタルなどの充填材を注入して柱脚を埋設孔に固定することを要旨とするものである。
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、埋設孔が形成された地盤改良体に柱脚を挿入して、モルタルなどの充填材で柱脚を埋設孔に固定することで、柱脚を地盤改良体に固定できる。この場合、地盤改良体は深層混合処理工法により形成するから、表層混合処理工法の場合に比較して深度の大きいものが形成でき、柱の水平剛性が向上する。
【0013】
請求項2記載の本発明は、前記埋設孔は、深層混合処理工法により柱状体に形成した地盤改良体が固化するまでの間に形成することを要旨とするものである。
【0014】
請求項2記載の本発明によれば、埋設孔は深層混合処理工法により形成される柱状体が固化するまでの間の軟らかい状態のときに、同時に形成されるから埋設孔を形成するための工程を別工程として確保する必要がなく、工期を短縮できる。
【発明の効果】
【0015】
以上述べたように本発明の柱の立設方法は、地盤改良体に柱脚を固定する場合、鉄筋コンクリートによる基礎コンクリートを不要にしても、柱脚にフランジなどを設けることなく柱脚の剛性を確保でき、上部架構の柱の鉄骨量を削減できる。さらに深層混合処理工法で地盤改良体を形成するから、柱脚を固定するため埋設孔を、地盤改良体を形成するための液体状のセメントミルクなどが固化するまでの軟らかい状態の時を利用してこの間に同時に形成できるから、施工性の向上を図ることができ、工期も短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の柱の立設方法の実施形態を示すガラス温室施設に実施した場合の縦断正面図で、ガラス温室施設の全体構成から説明する。
【0017】
ガラス温室施設は、鉄骨軽量構造物の一例であり、周囲に立設した鉄骨柱1の外側に外壁2として透明ガラスを取り付け、上部に透明ガラスによる屋根材3と天窓4とを取り付ける。図中5は棟木を示す。
【0018】
垂木6、軒樋7、谷樋8は軽量化を計るためにアルミニウム押出型材を使用する。
【0019】
図中9は屋根スプリンクラー、10は遮光シートによる自動カーテン、11aは上弦材、11bは下弦材、12はラチス材、20は温湯管レールを示し、前記上弦材11a、下減材11b、ラチス材12は材質としては鉄骨を使用し、前記鉄骨柱1に接合される。
【0020】
かかる軽量鉄骨構造物であるガラス温室施設において、鉄骨柱1を立設する方法を説明する。図2は鉄骨柱1の立設方法の概略を示す縦断正面図で、温室を構築する場所で、鉄骨柱1が建て込まれる位置の地盤を改良して地盤改良体13を形成する。
【0021】
地盤改良体13の形成方法は、深層混合処理工法によるものとし、オーガなどの掘削機19で地盤を掘削しながらセメントや石灰などの安定材と地盤の土とを原位置で攪拌混合し、柱状に固結させ、この柱状体内に鉄骨柱1の柱脚1aを挿入して固定する。
【0022】
地盤改良体13による柱状体内に鉄骨柱1の柱脚1aを建て込んで固定する工程において、柱脚1aを建て込むための埋設孔14を形成する必要があるが、その方法としては、図3(a)に示すように前記のように深層混合処理工法で地盤改良体13を形成したとき、水とセメントを混合したセメントミルクを原土に混合した直後の状態では、セメントミルクが液体であることから、原土との混合土も完全な固体にはなっていない。
【0023】
本発明は、この混合土が固化するまでの軟らかい状態の間に、図3(b)に示すようにプレキャストコンクリートまたは木材による柱状体15を地盤改良体13内に差し込み、その後、図3(c)に示すように地盤改良体13が固化するまで、例えば1日放置する。
【0024】
地盤改良体13が固化したならば、図3(d)に示すように前記柱状体15を引き抜き、脱型すれば、鉄骨柱1を建て込むための埋設孔14が形成される。このように埋設孔14の形成は、格別の工程を設けることなく、地盤改良体13が固化するまでの間に同時に行える。
【0025】
次に前記のようにして形成した埋設孔14に鉄骨柱1の柱脚1aを建て込む方法を図4について説明する。まず、図4(b)に示すように埋設孔14の底部に高さ調整材16としてモルタルや鉄板を敷設し、図4(c)に示すように鉄骨柱1の柱脚1aを埋設孔14内に建て込み、図4(d)のように柱脚1aと埋設孔14の内壁との隙間に砂利17などを投入して鉄骨柱1を仮固定する。
【0026】
この状態で、柱脚1aと埋設孔14の内壁との隙間にさらに充填材18としてモルタルを注入し、鉄骨柱1の柱脚1aを埋設孔14に固定する。これにより、鉄骨柱1が地盤改良体13に固定された状態で所定位置に立設される。
【0027】
この状態で鉄骨柱1は充填材18を介して地盤改良体13で固定され、固定深さも地盤改良体13が深層混合処理工法で施工されることから、例えば1mに達することができるから、鉄骨柱1や上弦材11a、下減材11b、ラチス材12などの架構の水平剛性を向上でき耐震性を向上させることができて、鉄骨柱1の設計応力を減少でき、鉄骨数量を減少できて、架構部材断面の縮小が可能となるだけでなく、鉄骨数量が減少することでコストダウンも計ることができる。
【0028】
さらに、架構部材を少なくすることで、温室内に生じる日陰面積を少なくできて、コンピュータによる自動制御を実効的なものにでき、収穫量の向上も図れる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の柱の立設方法の実施形態を示すガラス温室施設に実施した場合の縦断正面図である。
【図2】本発明の柱の立設方法の実施形態を示す工程の概略図である。
【図3】本発明の柱の立設方法の埋設孔を形成する工程図である。
【図4】本発明の柱の立設方法の埋設孔に柱を建て込む工程図である。
【符号の説明】
【0030】
1 鉄骨柱 1a 柱脚
2 外壁 3 屋根材
4 天窓 5 棟木
6 垂木 7 軒樋
8 谷樋 9 屋根スプリンクラー
10 自動カーテン 11a 上弦材
11b 下弦材 12 ラチス材
13 地盤改良体 14 埋設孔
15 柱状体 16 高さ調整材
17 砂利 18 充填材
19 掘削機 20 温湯管レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱の埋設孔を構築した地盤改良体を深層混合処理工法により形成し、この埋設孔に柱脚を建て込み、埋設孔と柱脚との隙間にモルタルなどの充填材を注入して柱脚を埋設孔に固定することを特徴とする柱の立設方法。
【請求項2】
前記埋設孔は、深層混合処理工法により柱状体に形成した地盤改良体が固化するまでの間に形成することを特徴とする請求項1記載の柱の立設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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