説明

栄養素を含む水分補給剤

本発明は、植物の全垂直根系のような植物組織に水、ガス、微量栄養素、植物成長添加剤、防腐剤、界面活性剤を制御可能に供給するための米国特許第4865640号に記載したようなゲル状水分補給基体に関する。本発明の好ましい実施態様は重量パーセントで97.6%水、2.0%カルボキシメチルセルロースナトリウム、0.15%硫酸アルミニウム、0.04%安息香酸ナトリウム、0.04%ソルビン酸カリウム、0.237%酢酸亜鉛、0.00009%カイネチン、0.00004%インドール-3-酪酸、0.00003%ジベレリン酸及び0.005%セスキ炭酸ナトリウムの混合物を含む。本発明に開示された該栄養素の濃度は基体粘度を維持する。その結果、水分補給剤はゲル中に水、亜鉛、酢酸、オーキシン、ジベレリン、サイトカイニンを保持し制御された速度で土壌表層中に水と栄養素を放出し、細胞増殖、新葉の形成、激しいシュート成長、更には成熟度、及び改善されたストレス耐性を可能にする。本発明の乾燥成分へのクエン酸と重炭酸ナトリウムの添加は乾燥形態から架橋ゲルをつくり出す他の方法を付加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、生きた植物の根鉢のような植物組織に水と栄養素を制御可能に供給するための、米国特許第4865640号に記載されたようなゲル状(ジェル状)水分補給基体(基材)に関する。
【0002】
関連出願データ
このPCT特許出願は、ここに出典明示により援用する2006年6月12日に出願の米国特許第11/452034号に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
市販製品であるドライウォータージェル(「ドライウォーター(DriWATER)」)は、明細書全体をここに援用する米国特許第4865640号(「'640特許」)を具体化したものである。該製品は過去数年間にわたって世界中で使用されており、植物のための持続放出水供給製品を使用者に成功裡に提供した。ドライウォーターは、97.85%の水と2.0%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(「CMC」)と0.15%の硫酸アルミニウムからなるカルボキシメチルセルロース架橋ポリマーである。高剪断ミキサーで混合したとき、カルボキシメチルセルロース化合物のカルボン酸基と硫酸アルミニウム中のアルミニウムとの架橋が、45000+センチポアズの最終粘度で安定化する重いゲル中に水を捕捉する。
【0004】
市販製品の持続放出特性は食物源としてゲルを利用する微生物の作用から生じる。ゲルは微生物によって最終的に分解されて自由水を生じる。セルロースを分解する微生物はあらゆる土壌タイプで見出すことができ、セルロース分解のための酵素を生産する。この技術は植物への水の供給の持続放出法として考えることができる。ドライウォーターはまた植物種に水をやりすぎないように水の放出速度を制御するために使用されている。ドライウォーター製品は、もしそれが根の増加のような、単なる水補給以外の何らかの価値を与えることができれば、植物にはより有益であろう。根塊の増加はより大なる成長とより良好な外観を生じせしめ、植物による養分の取り込みを改善する。ドライウォーターゲルは、箱(カートン)、カップ、合成ケース、又は植物の根圏に極く近接した使用に対して部分的に又は完全に開放され得る任意の他の適切な容器に収容される。
【0005】
植物は正常な成長のために18種の元素を必要とする。炭素、水素及び酸素は空気中と水中に見出される。窒素、リン、カリウム、マグネシウム、カルシウム及び硫黄及び炭素は土壌中に見出される。上述の元素は、これらの元素を植物が多量に使用するので、当業者によって「主要栄養素」と呼ばれる。更に少量で使用される9種の他の元素は「微量栄養素」又は「微量元素」と呼ばれ、土壌に見出される。これら9種の微量栄養素は鉄、亜鉛、モリブデン、ニッケル、マンガン、ホウ素、銅、コバルト及び塩素である。主要栄養素も微量栄養素も18種全ての元素が植物の成長に必須である。殆どの場所には、亜鉛欠乏のために植物に直ぐには利用できない土壌中に十分な主要栄養素が存在している場合が多い。
【0006】
隣接した48の州の少なくとも42の州における土壌では亜鉛が欠乏しているのは事実である。亜鉛が添加されると植物の成長は向上する。穀物生産に対する亜鉛の重要性は長年にわたって認識されている。亜鉛欠乏は、成長不全、新葉の葉脈間の薄緑領域、小葉、短縮節間、及びトウモロコシ及び穀実用モロコシ中の中央脈の各側の広い白束を含む多くの兆候を有している。亜鉛は植物中の多くの酵素系に必須であり、触媒、共触媒、及び構造完全性を含む3種の主要な機能を有している。亜鉛は、光合成、新芽、及び根発達に影響を及ぼす重要な成長調節因子の生産に寄与する。亜鉛は根発達及び伸展された根系を増加させる−栄養素の取り込み、新葉の形成及び激しいシュート成長、更には成熟度、及び改善されたストレス耐性を改善するために必要とされる細胞増殖を促進する。亜鉛の供給が欠乏すると、植物の例えば窒素のような他の植物栄養素の利用が減少する。土壌中に亜鉛が欠乏している場合、植え付け時に根圏の近くに配されればほんの少量だけが必要となる。従って、ドライウォーターに亜鉛を供給することは有益であろう。もし重炭酸ナトリウム又は任意の他の高度にアルカリ性の生成物をクエン酸又は任意の他の粉末状酸と混合した後に水を加えれば、激しい化学反応が起こることは知られていることである。該化学反応はpHを中和し、よって植物材料に影響はない。
【0007】
本発明の乾燥成分(粉材料)を末端使用者まで輸送し、使用地点で混合できるならば、更に有益であろう。しかしながら、乾燥成分が水を含んでいるため、高剪断ミキサーを使用しないで良好な架橋を得ることはできなかった。本発明は96〜99%が水であるので、輸送コストが非常に高くなることになる。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、含浸された水、ガス、及び栄養素を生物有機体と相互作用するときに放出する基体において、90000〜700000の範囲の平均分子量を有し、使用される水の0.6〜3重量%の範囲の式:R-O-COOM(ここで、「M」はセルロース化合物の上記カルボキシル基の水素に置換された金属であり、「R」はセルロース鎖である)によって表されるセルロース化合物と、使用される水の重量の0.1〜0.3重量%の範囲の水和金属塩と、96.0〜99.5重量%の範囲の水と、亜鉛及び亜鉛塩からなる群から選択され、亜鉛濃度が使用される水の重量の0.006〜0.72重量%の範囲の微量栄養素と、植物成長ホルモン及び植物成長調節因子からなる群から選択され、使用される水の重量の0.00001〜0.0003重量%の範囲の少なくとも一種の植物成長添加剤と、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、及び酢酸からなる群から選択され、使用される水の重量の0.01〜0.3重量%の範囲の少なくとも一種の防腐剤と、使用される水の重量の0.0025〜0.006重量%の範囲の界面活性剤と、酢酸又は酢酸塩からなる群から選択され、酢酸塩濃度が使用される水の重量の0.1〜0.48重量%の範囲の酢酸成分との混合物を含んでなる基体に関する。
【0009】
本発明はまた予め定められた持続放出速度で土壌中の植物に水、ガス、及び栄養素を供給する方法において、基体を土壌中に配し、植物の根を基体の近くに配することを含み、該基体が、グルコース単位を含み90000〜700000の範囲の平均分子量を有し、式:R-O--CH2-COOM(ここで、「M」はセルロース化合物の上記カルボキシル基の水素に置換された金属であり、「R」はセルロース鎖である)によって表される1〜3重量%の範囲のセルロース化合物と、0.1〜0.3重量%の範囲の水和金属塩と、96.0〜99.5重量%の範囲の水と、亜鉛及び亜鉛塩からなる群から選択され、亜鉛濃度が使用される水の重量の0.006〜0.72重量%の範囲の微量栄養素と、植物成長ホルモン及び植物成長調節因子からなる群から選択され、使用される水の重量の0.00001〜0.0003重量%の範囲の少なくとも一種の植物成長添加剤と、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、及び酢酸からなる群から選択され、使用される水の重量の0.01〜0.3重量%の範囲の少なくとも一種の防腐剤と、使用される水の重量の0.0025〜0.006重量%の範囲の界面活性剤と、酢酸又は酢酸塩からなる群から選択され、酢酸塩濃度が使用される水の重量の0.1〜0.48重量%の範囲の酢酸成分との混合物を含んでなる方法に関する。
【0010】
本発明は、水、亜鉛のような微量栄養素、主要栄養素、植物成長添加剤(植物成長ホルモン及び植物成長調節因子を含む)、防腐剤、及び界面活性剤を、植物の全垂直根系と同じ形で植物に制御可能に供給するためのドライウォーター水分補給基体に関する。ドライウォーターゲルに主要栄養素と微量栄養素を加えることが植物に有益なことは当業者には明らかであろう。しかしながら、亜鉛は(pHに応じて水溶液中において)二価陽イオンであり、よってセルロース化合物と硫酸アルミニウム中のアルミニウムの間の架橋を妨害し、不安定な粘度にする影響が生じる。例えば、イオン対バランス化学物質を添加しないで肥料を添加すると、ゲルの架橋を破壊し、ゲル粘度の安定性を損なわせ又はゲルを完全に液化させることがある。従って、組成並びに亜鉛がイオン対バランス化学物質と共にゲル系に導入される速度は速度に敏感である。硫酸亜鉛と酢酸の組合せは0.167%(重量/重量)硫酸亜鉛及び0.07%(重量/重量)酢酸の速度でドライウォーターゲルに導入された。科学的実験から、ドライウォーターゲルにおける硫酸亜鉛と酢酸のこの組合せがコショウ植物の発根を最も増大させ、従来のドライウォーターゲルでの処理より208〜283%多い根塊の増加を示すことが分かった。
【0011】
更に、上で検討したように、予備実験から、植物成長添加剤、防腐剤、及び界面活性剤の添加はドライウォーターゲルの粘度に負の影響を及ぼすことが分かった。これらの化合物はまた粘度の安定性を損なわないように正確な速度で導入されなければならない。該化合物はまたドライウォーターゲルの不安定化を防止するために特定の数学的に計算された互いのモル当量でなければならない。更に、この原理はホルモン/栄養素選択的であり、これは、ある種のホルモン/栄養素は、ゲルの架橋を破壊するために全く導入できないことを意味する。各化合物は特定のバランス/対化学成分を必要とすることに留意されなければならない。つまり、各ホルモン/栄養素に対する特定のホルモン/栄養素の組合せは選択的であり、あらゆる他のホルモン/栄養素とは化学的に異なる形で作用する。従って、各ホルモン/栄養素は異なったバランス/対化学成分を必要とする。
【0012】
本発明の一実施態様は更に微生物への曝露の度合い以外の因子に基づくドライウォーター及び栄養素の液化速度を制御することに関する。土壌中の微生物に曝露される表面積はドライウォーターゲルの液化速度を制御する。曝露される表面積が大きくなればなるほど、ドライウォーターゲルはより速く液化する。
【0013】
本発明の一実施態様は、上述の他の乾燥成分への重炭酸ナトリウム又は他の任意の高度にアルカリ性の材料とクエン酸又は他の粉末状酸の添加に関する。0.15〜0.33%の範囲の重炭酸ナトリウムと0.22〜0.44%の範囲のクエン酸を、酢酸を除いた上述の製剤に添加した。上記のパーセントは使用時点で添加される水の重量に対する重量である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施態様に係る、硫酸亜鉛及び酢酸のゲルへの添加から生じる粘度変化を示すグラフである。
【図2】本発明の一実施態様に係る、従来のドライウォーターで処理した植物の図である。
【図3】本発明の一実施態様に係る、ドライウォーター及び0.167%(w/w)硫酸亜鉛及び0.07%(w/w)酢酸で処理した植物の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、水、微量栄養素、主要栄養素、植物成長添加剤、防腐剤、及び界面活性剤を、植物の全垂直根系のような植物組織に制御可能に供給するためのドライウォーターゲル状水分補給基体の分配に関する。本発明は植物に水と上述の栄養素を供給し、よって予め定められた時間の間、予め定められた速度で植物発育と成長を増進し、植物に対する所望の維持を供与する。
【0016】
植物への栄養素及びホルモンの添加は植物成長を改善することが一般的に知られている。例えば、多くの微量栄養素は殆どの標準的な肥料中に見出すことができるが、植物によって取り込まれるイオン形態でなければならない(殆どの元素は水中でイオン化する)。伝統的な水補給では、栄養素は、肥料と栄養素を水と混合し、混合物を植物の回りに注ぐか又は滴らすことにより植物に与えられていた。しかしながら、土壌が保持できない過剰の水と肥料は最終的には地下帯水層に出てしまう。
【0017】
水、微量栄養素、主要栄養素、植物成長添加剤、防腐剤、及び界面活性剤をドライウォーターゲルを介して植物組織に制御可能に供給するのが本発明の目的である。しかしながら、予備実験では、殆どの栄養素及びホルモンの添加はドライウォーターゲルの粘度に負の影響を与え、ドライウォーターゲルを不適切に機能させることが証明された。本発明はゲルの粘度を不安定にさせることなく発根化合物をドライウォーター中に導入することに関する。
【0018】
如何なる理論にも制約されることを望むものではないが、本願の組成物は、根発達及び伸展された根系に必要な細胞増殖、新葉の形成、激しいシュート成長、更には成熟度、及び改善されたストレス耐性を促進するのを助けるものと思われている。
【0019】
ここでの全てのパーセント、比及び割合は、別段の定義をしない限り、組成物の重量基準である。全ての温度は、別段の定義をしない限り、摂氏温度(℃)である。引用された全ての文献は出典明示によりその全体がここに援用される。如何なる文献の引用も本発明に対してそれが先行技術になり得るかについての判定に関して自認するものではない。
【0020】
既に述べたように、穀物生産に対する亜鉛の重要性は長年にわたって認識されている。亜鉛は植物中の多くの酵素系に必須であり、触媒、共触媒、及び構造完全性を含む3種の主要な機能を有している。例えば、植物中では、植物成長ホルモンのインドール-3-酢酸(IAA)(pHに依存して水溶液中で陰イオン)は天然に生じるオーキシンである。これはまた多くの細菌類、真菌類、藻類で発生しうる。IAAは細胞伸長、屈光性、屈地性、頂芽優勢、発根開始、エチレン生成、果実形成、単為結実、器官脱離、及び性表現を調節し、その全てが正常な植物成長に必要である。植物の正常な成長を維持するために、IAAが生産され、植物によって調節されなければならない。亜鉛はアミノ酸トリプトファンのオーキシンAAへの変換における補因子である。亜鉛の添加は植物中のIAAレベルを維持し、成長、発根、及び健康を促進するのに役立つ。
亜鉛源としての硫酸亜鉛の選択は科学文献に基づいている。どの化合物が植物種により効果的に利用されるかを調べるために多くの亜鉛源が試験されている。硫酸亜鉛は植物に対して最も容易に利用できる形態である。硫酸亜鉛はまた硫酸イオンを含んでいる。硫酸イオン(SO2−)は有益な栄養素であり土壌中に自然に生じる。硫黄はアミノ酸をスルフィド架橋によって互いに結合させて生命の基礎的要素である酵素とタンパク質をつくり出すために使用される。
【0021】
研究により、酢酸の存在が無機物の取り込みを改善することが示されている。酢酸はまた防腐剤としても知られており、ゲルの粘度を保持し微生物分解からゲルを保護するのに役立つ。硫酸亜鉛及び酢酸成分を正しいモル濃度で組合せないと、ゲル粘度が、あらゆる植物種に対して有益性を殆ど又は全くもたらさない点まで劇的に減少又は増加することに留意することが必要である。
【0022】
次の実験は、硫酸亜鉛と酢酸が形成されて根の成長を最も強く刺激することを例証するために実施したもので、本発明を決して限定することを意図するものではなく、発明の精神と範囲を逸脱しないでその多くの変形例が可能である。
【実施例】
【0023】
実験方法及び材料
材料:カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、アルミニウム、防腐剤、界面活性剤、硫酸亜鉛七水和物、酢酸及び純水。基体を調製する場合、水の濃度は96.0〜99.5重量%の範囲とできることに留意のこと。
【0024】
アルミニウム、防腐剤、界面活性剤、硫酸亜鉛七水和物、及び酢酸を400mLビーカーに注ぎ、約20分又は全ての固形物が溶解するまで混合した。ついで、その溶液を10スピードのOsterizerミキサー(6)に注ぎ、最大出力450ワットで「氷粉砕(アイスクラッシュ)」に設定した。ブレード速度は1100RPMであった。
【0025】
次にCMCをミキサーに注いだ。CMCはミキサーを混合しながら15秒かけて一貫した速度で添加した。混合は、更に70秒、全体で85秒の混合時間の間、継続させた。およそ300mLのゲルを形成し、ゲルを室温まで冷却するために形成後およそ15分粘度の読み取りを行った。測定したゲルの体積は250mLのビーカー中、およそ200mLであり、Brookfield HADV−II+粘度計で分析した。粘度はゲルの安定性を確保するためにセンチポアズ(cP)の単位で測定した。ついで、9オンスのゲルを計量し、空気への曝露と汚染を制限するためにプラスチックケーシングに挿入した。ついで、ゲルをプラスチックケーシング中で最小3日間安定化させ、消費者製品のものを表す粘度を達成した。ゲル1からゲル5と標識した5種の異なった製剤ゲルを作製した。それぞれ3組の複製品を使用して各ゲル製剤を試験した。従来のドライウォーターゲルをコントロール(3組の複製品)として使用した。
【0026】
アナハイムペッパーを明確な天然のアリゾナの土壌に植え付けておよそ3週間成長させた。使用したアナハイムペッパー植物は試験に対して同様の高さ及び茎サイズであるものが選択された。
およそ12−15センチメーターのスリットを各ゲルケーシングに形成した。各ゲルケーシングを僅かに開いてゲルを土壌に曝露させた。ケーシングに入った曝露したゲルを、アナハイムペッパー植物が植えられている土壌状に置いた。各植物に最初の処理日に十分に水をやった。
【0027】
30日間は水をやらなかった。植物はおよそ65Fの毎日の温度で温室で成長させた。観察は毎日行った。実験の30日目に、植物を土壌から取り除いた。根を洗い、写真を撮った。ついで、植物を子葉節で切断し、根塊と胚軸の新たな重量を測定した。次に、植物を根の樹冠で切断し、根塊の新たな重量を測定した。新たな重量を測定し、全ての製剤に対して比較した。
【0028】
結果と観察


【0029】

【0030】

【0031】

【0032】

【0033】
この実験結果は、栄養素、肥料、及びホルモンのドライウォーターへの添加は植物に有益であるが、殆どの栄養素とホルモンの添加はドライウォーターゲルの粘度に負の影響を及ぼすことが確認される(図1参照)。実験の目的はゲルの粘度を不安定にしないで発根化合物をドライウォーター中に導入することである。実験は、ドライウォーター中の硫酸亜鉛と酢酸の組合せはペッパー植物の発根に最も大きな増加をもたらした−正しい速度で供給される場合には、208〜283%の増加(表4、表5及び図3を参照)。従来のドライウォーターでの処理よりも大きな根塊が存在し、上述の栄養素を欠いていた(表4、表5及び図2を参照)。これは、酢酸及び硫酸亜鉛での発根の最適速度は0.167%硫酸亜鉛と0.07%酢酸の濃度で樹立されたことを証明している。
【0034】
既に検討したように、本発明は植物組織へ水と栄養素を制御可能に供給するためのドライウォーターゲル状水分補給基体の分配に関する。例えば、肥料中に見出される微量/主要栄養素及び幾つかの元素はドライウォーターゲルに導入することができるが、粘度減少元素に対抗するために使用される特殊な化学物質の添加と共になされる。ゲルの粘度を破壊しないでのドライウォーターへの栄養素の添加は植物に有益であろう。次の栄養素はゲル粘度を維持し植物に最適な結果を提供するために開示された割合の組合せでドライウォーターと組み合わせることができる。
【0035】
例えば、既に検討したように、よく知られた植物ホルモンはオーキシンIAAである。他のオーキシンには、限定されないが、IBA、NAA、2,4-D、2,4-DB等々が含まれる。IAAは、発根を改善し高塩活性から保護することが知られている天然に生じるオーキシンである。酵素と光がこのオーキシンを分解するので、これを用いるのは実用的ではない。しかしながら、インドール-3-酪酸(「IBA」)(pHに依存して水溶液中で陰イオン又は陽イオン)は、多くの態様でIAAを模倣する化合物として植物界に確立されている。差は、IBAが使用するのに実用的であり簡単には分解しないことである。以下の実験において更に検討されるように、使用される水の重量の0.00001〜0.0003%の範囲のIBA濃度は、ドライウォーターゲルの粘度を破壊することなく、発根を改善し植物の高塩活性から保護する。
【0036】
サイトカイニン(カイネチン、ゼアチン等)は、成長調節因子である植物ホルモンの他のよく知られた群である。より詳細には、カイネチンは様々な植物及び酵母において細胞分裂に役立つ。カイネチン(pHに依存して水溶液中で陰イオン又は陽イオン)は、オーキシンの存在下でのみ細胞分裂を増大させ植物における老化を遅延させることが知られている。従って、製剤中にカイネチンと共にオーキシンを含ませることは有益であろう。以下の実験において更に検討されるように、使用される水の重量の0.00001〜0.0001%の範囲のカイネチン濃度は、ドライウォーターゲルの粘度を破壊することなく、細胞分裂を増大させ植物における老化を遅延させる。
【0037】
ジベレリン酸(GA3)(pHに依存して水溶液中で陰イオン)は、ジベレリン類と呼ばれる植物ホルモン群(GA3、GA4、GA7等々)における最も優れた植物成長促進代謝産物である。ジベレリン酸は新しい苗木成長と種子の発芽促進に特に有益である。上述のホルモンの全ては生理的に低い速度で非常に活性があり、それらは独立して有益であるが、組み合わされる添加剤を有し、又はある場合には相乗効果を有する。以下の実験で更に検討されるように、使用される水の重量の0.00001〜0.0003%の範囲のGA3濃度は、ドライウォーターゲルの粘度を破壊することなく、苗木成長と種子の発芽を改善する。
本発明では、IBA以外のオーキシン、他のジベレリン類からなるジベレリン酸、及びカイネチン以外のサイトカイニンを、その濃度がドライウォーターゲルの粘度を破壊しない限り、使用することができることが理解される。
【0038】
既に述べたように、防腐剤はドライウォーターゲルの粘度を維持するのに役立ち、また微生物分解からゲルを保護するのに役立つ。防腐剤は安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、及び酢酸から選択することができるが、上記のものに特に限定されるものではない。ドライウォーターラボでの研究により、酢酸が土壌中におけるゲルの分解を遅延させることが証明された。これは防腐剤として作用する酢酸によってなされる。これは上記の添加の他の所望の特性である。これら防腐剤に限定するものではないが、例えば安息香酸ナトリウム及びソルビン酸カリウムのような防腐剤を本発明の組成物に添加することによって、液化速度を更に調節することができる。二種の防腐剤の組合せが必要とされる:微生物の集合に対して各々は幾分かの活性を有しうるが、一つはカビを制御するもの、一つは細菌活性を制御するものである。各防腐剤の濃度は、ドライウォーターゲルの粘度を破壊することなく使用される水の重量の0.01〜0.3%の範囲でありうる。
【0039】
この界面活性剤に限定するものではないが、例えばセスキ炭酸ナトリウムのような界面活性剤を本発明の組成物に添加することによって、土壌中への水の浸透が改善する。界面活性剤は、セスキ炭酸ナトリウム又は適合性のある任意の他の環境に優しい界面活性剤でありうる。使用される水の重量の0.0005〜0.005%の範囲の界面活性剤濃度は、ドライウォーターゲルの粘度を破壊することなく、苗木成長と種子の発芽を改善する。
【0040】
本発明の実施例を例示のために以下に記載するが、本発明を決して限定することを意図するものではなく、発明の精神と範囲を逸脱しないでその多くの変形例が可能である。
【0041】
実施例1
実施例として、好ましい実施態様に係る本発明の組成物は、246.58gの水、5.04gのカルボキシメチルセルロースナトリウム、0.378gの硫酸アルミニウム、0.1008gの安息香酸ナトリウム、0.1008gのソルビン酸カリウム、0.423gの硫酸亜鉛、0.0015mgの他の植物成長調節因子及び0.0126gのセスキ炭酸ナトリウムを含みうる。この製剤の組合せは、酢酸亜鉛、植物成長調節因子、防腐剤、及び界面活性剤を加えて一つの9オンスのドライウォーターゲルパックを生じる。本発明の好ましい実施態様は、重量パーセントで次の混合物を含む:97.6%の水、2.0%のCMCナトリウム、0.15%の硫酸アルミニウム、0.04%の安息香酸ナトリウム、0.04%のソルビン酸カリウム、0.237%の酢酸亜鉛、0.00009%のカイネチン、0.00004%のIBA、0.00003%のGA3及び0.005%のセスキ炭酸ナトリウム。亜鉛、酢酸、植物成長調節因子、防腐剤及び界面活性剤を含むドライウォーターゲルは、継続的な持続放出ベースで水を補給し、栄養分を提供し、植物発育及び成長を促進し土壌中への水の浸透を改善するので、有利である。亜鉛、酢酸及び他の植物成長調節因子の量とタイプは特定の植物種の要求に依存して変動しうる。
表1は異なった実施態様に係る本発明の実施例を列挙する。

【0042】
例えば、ジベレリン酸(GA3)は成長を調節する;非常に低い濃度の使用は著しい効果を持ちうる。インドール-3-酪酸は茎と葉双方の発根に特に効果的である。
【0043】
本発明のプロセス、組成物及び方法を特定の例示的実施態様を参照して説明したが、特許請求の範囲に記載した発明の範囲から逸脱しないで様々な変形と変更をこれらの実施態様に対して行うことができることは当業者には明らかである。従って、明細書は例示的なものとみなされなければならず、限定するものとはみなされてはならない。
【0044】
一実施態様によれば、本発明は使用点に乾燥成分を供給しその時に水を加える方法を提供する。乾燥成分は正確な割合で所望のサイズの容器に配された。クエン酸と重炭酸ナトリウムを、乾燥成分に対して特定の量で乾燥形態で添加した。成分は容器を振盪することによって混合した。水は乾燥成分に比例して添加した。重炭酸ナトリウムとクエン酸間の化学反応により成分が混合され、半硬質ゲルが形成された。この方法は使用のために良いサイズである1クオート/リットルまでの体積まで良好に作用する。本発明のこの実施態様によれば、本発明の方法に重炭酸ナトリウム及びクエン酸を加えることは乾燥成分として本発明を輸送する方法を提供しうる。実際の成分割合は所望のゲルに依存して変動することは理解されるであろう。次は材料と割合の変動のチャートである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
含浸された水、ガス、及び栄養素を生物有機体と相互作用するときに放出する基体において、
90000〜700000の範囲の平均分子量を有し、使用される水の0.6〜3重量%の範囲の式:R-O-COOM(ここで、「M」はセルロース化合物の上記カルボキシル基の水素に置換された金属であり、「R」はセルロース鎖である)によって表されるセルロース化合物と;
使用される水の重量の0.1〜0.3重量%の範囲の水和金属塩と;
96.0〜99.5重量%の範囲の水と;
亜鉛及び亜鉛塩からなる群から選択され、亜鉛濃度が使用される水の重量の0.006〜0.72重量%の範囲の微量栄養素と;
植物成長ホルモン及び植物成長調節因子からなる群から選択され、使用される水の重量の0.00001〜0.0003重量%の範囲の少なくとも一種の植物成長添加剤と;
安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、及び酢酸からなる群から選択され、使用される水の重量の0.01〜0.3重量%の範囲の少なくとも一種の防腐剤と;
使用される水の重量の0.0025〜0.006重量%の範囲の界面活性剤と;
酢酸又は酢酸塩からなる群から選択され、酢酸塩濃度が使用される水の重量の0.1〜0.48重量%の範囲の酢酸成分
の混合物を含んでなる基体。
【請求項2】
セルロース化合物の金属がリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群から選択される請求項1に記載の基体。
【請求項3】
水和金属塩が硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸インジウム、硫酸カドミウム、及び硫酸ガリウムから選択される請求項1に記載の基体。
【請求項4】
水が曝気される請求項1に記載の基体。
【請求項5】
植物成長ホルモンがジベレリンとオーキシンからなる群から選択される請求項1に記載の基体。
【請求項6】
ジベレリンが、使用される水の重量の0.00001〜0.00005重量%の範囲のジベレリン酸(GA3)である請求項5に記載の基体。
【請求項7】
オーキシンが、使用される水の重量の0.00001〜0.00008重量%の範囲のインドール-3-酪酸(IBA)である請求項5に記載の基体。
【請求項8】
植物成長調節因子がサイトカイニンである請求項1に記載の基体。
【請求項9】
サイトカイニンが、使用される水の重量の0.00001〜0.0001重量%の範囲のキネチンである請求項8に記載の基体。
【請求項10】
防腐剤が、少なくとも一つが酸性pHを有し少なくとも一つが塩基性pHを有する少なくとも二種の防腐剤の組合せである請求項1に記載の基体。
【請求項11】
界面活性剤がセスキ炭酸塩である請求項1に記載の基体。
【請求項12】
予め定められた持続放出速度で土壌中の植物に水、ガス、及び栄養素を供給する方法において、
基体を土壌中に配し、
植物の根を基体の近くに配することを含み、
該基体が、グルコース単位を含み90000〜700000の範囲の平均分子量を有し、式:R-O--CH2-COOM(ここで、「M」はセルロース化合物の上記カルボキシル基の水素に置換された金属であり、「R」はセルロース鎖である)によって表される1〜3重量%の範囲のセルロース化合物と;0.1〜0.3重量%の範囲の水和金属塩と;96.0〜99.5重量%の範囲の水と;亜鉛及び亜鉛塩からなる群から選択され、亜鉛濃度が使用される水の重量の0.006〜0.72重量%の範囲の微量栄養素と;植物成長ホルモン及び植物成長調節因子からなる群から選択され、使用される水の重量の0.00001〜0.0003重量%の範囲の少なくとも一種の植物成長添加剤と;安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、及び酢酸からなる群から選択され、使用される水の重量の0.01〜0.3重量%の範囲の少なくとも一種の防腐剤と;使用される水の重量の0.0025〜0.006重量%の範囲の界面活性剤と;酢酸又は酢酸塩からなる群から選択され、酢酸塩濃度が使用される水の重量の0.1〜0.48重量%の範囲の酢酸成分との混合物を含んでなる方法。
【請求項13】
セルロース化合物の金属がリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水和金属塩が硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸インジウム、硫酸カドミウム、及び硫酸ガリウムから選択される請求項12に記載の方法。
【請求項15】
水が曝気される請求項12に記載の方法。
【請求項16】
植物成長ホルモンがジベレリンとオーキシンからなる群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項17】
ジベレリンが、使用される水の重量の0.00001〜0.00005重量%の範囲のジベレリン酸(GA3)である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
オーキシンが、使用される水の重量の0.00001〜0.00008重量%の範囲のインドール-3-酪酸(IBA)である請求項16に記載の方法。
【請求項19】
植物成長調節因子がサイトカイニンである請求項12に記載の方法。
【請求項20】
サイトカイニンが、使用される水の重量の0.00001〜0.0001重量%の範囲のキネチンである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
防腐剤が、少なくとも一つが酸性pHを有し少なくとも一つが塩基性pHを有する少なくとも二種の防腐剤の組合せである請求項12に記載の方法。
【請求項22】
界面活性剤がセスキ炭酸塩である請求項12に記載の方法。
【請求項23】
植物の根を基体の近くに配した後に土壌を加えて植物の根の領域を覆い;植物に水を与えて、基体が水分と栄養素を放出し始める前に移植ショックが最小になるのを助ける
ことを更に含む請求項12に記載の方法。
【請求項24】
含浸された水、ガス、及び栄養素を生物有機体と相互作用するときに放出する基体を作製する方法において、
6〜32オンスの範囲の所望の使用サイズの容器中に基体の乾燥成分を配し;
使用される水の重量の0.22〜0.44重量%の範囲で容器中の成分に粉末状クエン酸を加え;
使用される水の重量の0.15〜0.33重量%の範囲で容器中の成分に重炭酸ナトリウムを加え;
容器中の成分を撹拌し;
容器に水を加える
ことを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−539981(P2009−539981A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515425(P2009−515425)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/013402
【国際公開番号】WO2007/146055
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(509147514)ドライウォーター, インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】