説明

栄養補給用固形食品

【課題】
鶏卵、牛乳に対する食物アレルギーを有する幼児・小児に於ける、食物アレルギーの発症を抑え、これらの幼児、小児に健やかな成長を促す手段を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明者は、このような課題に対して鋭意研究した結果、卵類・乳類に対する食物アレルギーを有する幼児・小児に対して、卵類・乳類の摂取を制限することにより、不足しがちな微量栄養素であるビタミンB、パントテン酸、カルシウム、ビタミンB、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン、鉄、亜鉛、銅などを含有する、幼児・小児に嗜好性の高いビスケットをショートニング、単糖類又は二糖類をつなぎとして作成することにより、発育・成長期に必要な栄養素を摂取し易い食品形態での補給可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスケット等に好適な固形食品に関するものであり、さらに言えば、卵類・乳類に対する食物アレルギーを有する幼児・小児用の固形食品に関するものであり、さらに詳しくは、卵類・乳類を摂取できないことによって不足する微量栄養素の補給が可能な固形食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食物アレルギーとは、ある種の食品成分を経口摂取したときに引き起こされるアレルギー症状であり、一般に0〜6歳を中心として幼児・小児での発症例が多いのが特徴である。この食物アレルギーは、特定の食物に含有される蛋白に対して、経口摂取した場合にアレルギー症状を呈するもので、これらの食品の摂取を制限することにより、緩解に向かうことが多いことも知られている。そのため、食物アレルギー症状を示す子供に対しては、食事内容の制限などが行われている。これらの食物アレルギーの原因の約半数は、鶏卵と牛乳であることが知られているが、鶏卵と牛乳は、栄養価が高く、特に発達・成長期の幼児・小児においては、食生活の根幹をなす重要な食材である。これらの食材の摂取制限を行う場合には、特に発育・成長期である幼児・小児において、摂取制限により不足する微量栄養素を補完する食材への対応が不可欠である。一般市場では、不足する栄養素を補うビタミン剤やサプリメント剤などが開発されている。しかし、幼児・小児においては、その嗜好性、安全性(嚥下・過剰摂取)からこれらの微量栄養素をビタミン剤・サプリメントから補うことも難しいのが現状である。例えば、これらの微量栄養素に関して、カルシウムを強化した食品(例えば、特許文献1,特許文献2を参照)などに関しては知られていた。
【0003】
一方、ビスケット、クッキー等の焼き菓子に代表される固形食品は、幼児・小児において嗜好性が高く、食しやすい食品形態であり、これらのビスケット、クッキー等の固形食品には、通常、いわゆるつなぎ、凝固剤、膨張剤として、さらに食味、風味向上のため鶏卵などの卵類を使用し、また凝固剤として食味、風味向上のため牛乳などの動物乳などを使用している。また食味、風味向上のためバターやマーガリンなどの動物乳脂やそれを含むものを使用している。すなわち卵類、動物乳およびバターはケーキ、クッキー等を造る上で、必須の材料である。この為、卵アレルギー、牛乳アレルギーの子供であっても、思わず摂取してしまうことが少なくなく、この様な摂取が原因となって、アレルギーの惹起が為されることが少なくなかった。この様な背景から、子供の嗜好性を考慮したビスケット剤型においてアレルゲンを除去して、低アレルゲン性とした食品などが開発されている(例えば、特許文献3,特許文献4,特許文献5,特許文献6を参照)。しかし、この様なアレルゲンの除去は、時として微量栄養素の除去にも繋がってしまうことがある。そのため子供の発育に好ましい栄養素を備えながら、アレルギーを起こしにくい固形食品の開発が望まれていた。一方、マルチトールは低カロリーや低う蝕性の性質を有し、甘味料などとして使用されているが(例えば、特許文献7を参照)、ショートニングとともに、卵、動物乳、動物乳脂に代わるつなぎとして用いることは知られていない。また、食物アレルギーに着目して、特に卵、牛乳由来のアレルゲンを含有しないで、しかも子供の発育に必要な微量栄養素を含有した、幼児・小児用に対する嗜好性の良い固形食品も知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開平08−126479号公報
【特許文献2】特開平05−284939号公報
【特許文献3】特開平01−174322号公報
【特許文献4】特開平10−108613号公報
【特許文献5】特開2003−259808号公報
【特許文献6】特開2004−215594号公報
【特許文献7】特開平06−178667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
卵類、乳類に対する食物アレルギーを有する幼児・小児に於ける、食物アレルギーの発症を抑え、これらの幼児・小児に健やかな成長を促す手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような状況下、本発明者は、厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室栄養調査係「平成14年国民栄養調査」より、一日に食物より摂取している微量栄養素の量と卵類、乳類の摂取量を算出し、さらに五訂日本食品標準成分表(科学技術庁;女子栄養短大出版部)より卵、乳類に含有される微量栄養素を算出し、1日に卵類、乳類より摂取されている微量栄養素を算出したところ、卵類・乳類から多くの微量栄養素が摂取されていることを見出し、特に1〜6才児では、カルシウムにおいては55%、ビタミンBにおいては51%、パントテン酸においては39%を卵類、乳類より摂取しているなど、ビタミン類、ミネラル類などの微量栄養素のかなりの部分が卵類、乳類の摂取に頼っていることを見出した。そして、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンB,ナイアシン、ビタミンB,ビタミンB12,葉酸、パントテン酸、ビタミンC、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛及び銅から選択される微量栄養素1種乃至は2種以上を含有し、且つ、卵類及び乳類を含有しない固形食品を、ショートニングと共に、単糖類若しくは二糖類をつなぎとして加工することにより、栄養素、食感ともに卵類、動物乳、動物乳脂を使用した固形食品に劣らないものが製造しうることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
【0007】
(1) ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンB,ナイアシン、ビタミンB,ビタミンB12,葉酸、パントテン酸、ビタミンC、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛及び銅から選択される微量栄養素1種乃至は2種以上を含有し、且つ、卵類及び乳類を含有しない固形食品。
(2) 卵、牛乳アレルギーの幼児・小児のための栄養補給用であることを特徴とする請求項1に記載の固形食品。
(3) 賦形剤として、単糖類若しくは二糖類、及びショートニングとを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の固形食品。
(4) 焼き菓子であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の固形食品。
(5) ビスケット、クッキー又はボウロであることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の固形食品。
(6) 前記微量栄養素が、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB、ビタミンB,ナイアシン、パントテン酸、カルシウム、鉄、亜鉛及び銅であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の固形食品。
(7) 商品形態において、「卵、乳製品(牛乳を含む)を含有せず、パントテン酸、ナイアシン、ビタミンB,ビタミンB、ビタミンE、ビタミンD、炭酸カルシウム、鉄、亜鉛、銅を含有する」ことを表示することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の固形食品。
(8)商品形態に於いて、卵、牛乳アレルギーの幼児・小児のための栄養補給用であることの表示を有することを特徴とする、請求項1〜7何れか1項に記載の固形食品。
(9) 前記ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンB,ナイアシン、ビタミンB,ビタミンB12,葉酸、パントテン酸、ビタミンC、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛及び銅から選択される微量栄養素が、卵乃至は動物乳を基源としないことを特徴とする、請求項1〜8何れか1項に記載の固形食品。
(10) カルシウムが貝由来の炭酸カルシウム、鉄がピロリン酸第二鉄、亜鉛が酵母亜鉛、銅が酵母銅である請求項1〜9の何れか1項に記載の固形食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、卵類、乳類に対する食物アレルギーを有する幼児・小児に於ける、食物アレルギーの発症を抑え、これらの幼児・小児に健やかな成長を促す手段を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、卵類、乳類を使用しないで作成するビスケット製剤において、且つ、卵類、乳類を摂取できないことで不足している微量栄養素を添加して作成された固形食品に関するものであり、さらに言えば、これらの微量栄養素を添加して生地を仕上げ、焼き上げたビスケット、クッキーに関するものである。本発明で言う卵類とは、鶏卵、ウズラ卵、これらの卵の卵黄、卵白、さらにはこれらの卵の加工品をいう。本発明でいう乳類とは、牛乳、脱脂粉乳、バター、チーズ、生クリームなど、牛生乳及び/又はこれを原料として加工された製品をいう。本発明で言う微量栄養素とは、五訂日本食品標準成分表(科学技術庁;女子栄養短大出版部)に記載されているビタミン類、ビタミン様物質、ミネラル類であるビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンB,ナイアシン、ビタミンB,ビタミンB12,葉酸、パントテン酸、ビタミンC、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅などを指す。これらのうち、特に他の食品でカバーしにくいものとしてビタミンD、ビタミンE、ビタミンB、ビタミンB,ナイアシン、パントテン酸、カルシウム、鉄、亜鉛、銅が挙げられる。
【0010】
本発明のビタミンBとは、脂質類のエネルギー代謝に関与する水溶性ビタミンであり、このものは市販品が存在し、「リボフラビン」の名称でBASF−武田ビタミン(株)から販売されており、このものを購入して使用することが可能であり、好ましい。本発明のパントテン酸とは、生体内でホスホパンテテインなどの補酵素の形で、種々のエネルギー代謝に関与している。このものは市販品が存在し、「パントテン酸Ca」の名称でDSMニュートリション(株)から販売されており、このものを購入して使用することが可能であり、好ましい。本発明のビタミンDとは、骨の成長・維持などに必要なビタミンであり、このものは市販品が存在し、「ドライビタミンD」の名称で三共(株)から販売されており、このものを購入して使用することが可能であり、好ましい。本発明のビタミンEとは、トコフェロール、トコトリエノール等があり、それぞれα、β、γ、δの異性体が存在し、抗酸化作用の強い脂溶性のビタミンである。ビタミンEとしては、ビタミンE活性を有していれば、何れを使用して構わない。これらのものは市販品が存在し、「理研Eアセテートアルファ」の名称で理研ビタミン(株)から販売されており、このものを購入して使用することが可能であり、好ましい。本発明のビタミンBとは、エネルギー代謝のTCA回路などで作用するビタミンである。このものは市販品が存在し、「チアミン塩酸塩」の名称でDSMニュートリション(株)から販売されており、このものを購入して使用することが可能であり、好ましい。本発明のナイアシンとは、生体内でNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)、NADPなどの形で補酵素として、種々の酸化還元・エネルギー代謝に関与している。このものは市販品が存在し、「ニコチン酸アミド」の名称でDSMニュートリション(株)から販売されており、このものを購入して使用することが可能であり、好ましい。本発明のカルシウムとは、炭酸カルシウム、塩化カルシウムなどの無機塩類、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム等の有機塩類などが挙げられ、これらの中では、何れを使用しても構わない。また、食品用の炭酸カルシウムとしては、卵殻や貝などが原料として用いられているが、これらの中では、貝カルシウムが好ましい。これは安定性、食味に優れているからである。このものは市販品が存在し、「ホタテ末S」の名称でエヌ・シーコーポレーション(株)から販売されており、このものを購入して使用することが可能であり、好ましい。本発明の鉄とは、鉄塩、若しくは有機化合物の鉄錯体を指し、例えば、塩化第二鉄、ピロリン酸第二鉄、クエン酸鉄、ヘム鉄、オリゴガラクチュロン酸の鉄錯体などが挙げられる。これらの中では、クエン酸鉄が食味や生体吸収性が良く、好ましい。このものは市販品が存在し、このものを購入して使用することが可能であり、好ましい。本発明の亜鉛とは、亜鉛塩、若しくは有機化合物の亜鉛錯体を指し、例えば、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、または、酵母の培養液中に亜鉛塩を添加して亜鉛を強化した亜鉛酵母などが挙げられる。これらの中では、亜鉛酵母が生体吸収性がよく好ましい。このものは市販品が存在し、100g中に亜鉛5000〜6000mgを含有しており、「HIGH ZINC YEAST」の名称でセティ・カンパニーリミテッド(株)から販売されており、このものを購入して使用することが可能であり、好ましい。本発明の銅とは、銅塩、若しくは有機化合物の銅錯体を指し、例えば、塩化銅、クエン酸銅、または、酵母の培養液中に銅塩を添加して銅を強化した銅酵母などが挙げられる。これらの中では、銅酵母が生体吸収性がよく好ましい。このものは市販品が存在し、100g中に銅900〜1200mgを含有しており、「HIGH COPPER YEAST」の名称でセティ・カンパニーリミテッド(株)から販売されており、このものを購入して使用することが可能であり、好ましい。
【0011】
本発明は、これらの微量栄養素を含有したビスケット製剤であるが、その含有量としては、炭酸カルシウムは0.1〜10質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。亜鉛酵母は、0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜1質量%がより好ましい。銅酵母は、0.001〜5質量%が好ましく、0.05〜1質量%がより好ましい。ビタミンBは0.0001〜0.05が好ましく、0.001〜0.01質量%がより好ましい。ビタミンBは0.0001〜0.01質量%が好ましく,0.0002〜0.01質量%がより好ましい。ビタミンDは0.00001〜0.01質量%が好ましく、0.00002〜0.001質量%がより好ましい。ビタミンEは0.001〜1質量%が好ましく、0.005〜0.05質量%がより好ましい。鉄塩は、吸収効率の低さを考慮して、0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜1質量%がより好ましい。ナイアシンは0.001〜0.5質量%が好ましく、0.005〜0.05質量%がより好ましい。パントテン酸は0.001〜0.1質量%が好ましく、0.005〜0.05質量%がより好ましい。これらは、五訂日本食品標準成分表において、0〜6歳児が鶏卵及び牛乳より摂取しているこれらの微量栄養成分を、補うのに必要な量であるからである。
【0012】
本発明の固形食品においては、その製剤化のためのつなぎとして、卵類や動物乳に代わり、単糖類若しくは二糖類、及びショートニングを使用することが好ましい。本発明に使用される単糖類又は二糖類とは、フルクトール、グルコール、ショ糖の加水分解物などの単糖類、ショ糖、マルトース、トレハロースなどの二糖類、さらにこれらの還元末端を水素添加したソルビトール、マルチトールなどである。これらの中では、食味の点で、ショ糖、マルチトールが好ましい。このような単糖類又は二糖類の好ましい含有量は、食品組成物全量に対して、5〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。これらの単糖類若しくは二糖類は、単独で使用しても、これらを混合して使用しても構わない。またこれらの量は、小麦粉に対して少なくとも1割、より好ましくは2割以上であることが好ましい。又、ショートニングの基源となる油脂は、動物油、植物油どちらでも構わないが、植物を基源とする、パーム油(ヤシ油)、オリーブ油、菜種油、大豆油等を水素添加して得られたものが好ましい。この様なものには市販品が存し、この様な市販品を購入して使用することができる。ショートニングの好ましい含有量は、1〜30質量%であり、より好ましくは2〜10質量%である。又、この量は単糖類若しくは二糖類の1/5〜同量であることが好ましい。この様な組合せで含有することにより、卵類や動物乳原料を使用することなく、好ましいテクスチャーの固形食品にすることが出来る。この様な固形食品としては、ビスケット、クッキー、ボウロなどの焼き菓子が特に好ましく例示できる。
【0013】
以下に本発明の実施例を述べるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
【実施例1】
【0014】
(A)の各成分を均一に撹拌、混合しておく。これに(B)を徐々に加えながら撹拌する。ドウが形成されたら(C)を撹拌しながら添加、20〜30分間混練して、生地を調整する。30分間生地を寝かせた後、調整した生地をシート状にして型抜きし、オーブン紙を敷いた天板に並べ、200℃のオーブンで、5分間焼成し、実施例1のビスケットを作製した。
(A)
マルチトール 14.000 %
小麦粉(薄力粉) 55.000 %
食塩 0.330 %
タカフード(プロテアーゼ) 0.100 %
炭酸アンモニウム 0.800 %
重曹 0.340 %
亜鉛酵母 0.227 %
銅酵母 0.227 %
パントテン酸 0.017 %
ナイアシン 0.023 %
ビタミンB 0.003 %
ビタミンB 0.009 %
ビタミンE 0.011 %
ドライビタミンD 0.001 %
(三共(株)製:ビタミンDとして、0.00005%含有)
炭酸カルシウム 6.120 %
クエン酸鉄 0.130 %
(B)
水 16.962 %
(C)
ショートニング 5.600 %
香料 0.100 %
【0015】
このようにして、焼成されたビスケット中10g(1食分)中には、ビタミンBが約1.0mg、パントテン酸が約2.0mg、ナイアシンが約2.7mg、ビタミンBが約0.36mg、ビタミンEが約1.3mg、ビタミンDが約6.0μg含有され、これらは、卵類・乳類の摂取を制限された幼児・小児が本来、卵類・乳類から摂取できるであろうと考えられる一日の摂取量が、このビスケットを10g食することでほぼ摂取可能となる。比較例1として、バター、卵液を使用した以下に示す処方のビスケットを実施例1と同様の方法で作製した。
【0016】
(比較例1)
(A)
ショ糖 6.000 %
小麦粉(薄力粉) 55.000 %
食塩 0.330 %
タカフード(プロテアーゼ) 0.100 %
炭酸アンモニウム 0.800 %
重曹 0.340 %
亜鉛酵母 0.227 %
銅酵母 0.227 %
パントテン酸 0.017 %
ナイアシン 0.023 %
ビタミンB 0.003 %
ビタミンB 0.009 %
ビタミンE 0.011 %
ドライビタミンD 0.001 %
(三共(株)製:ビタミンDとして、0.00005%含有)
炭酸カルシウム 6.120 %
クエン酸第一鉄 0.130 %
(B)
卵液 2.000 %
牛乳 22.962 %
(C)
ショートニング 3.400 %
バター 2.300 %
【0017】
(試験例1)
硬度試験器に、実施例1、比較例1のビスケットをセットし、プッシュゲージ(プランジャー5φ円柱、速度30cm/min)で硬度を測定した。結果を表1に示した。
【0018】
【表1】

【0019】
実施例1、比較例1ともに、断続的な細かい硬度ピークを示しながら、最大硬度1.8〜3.8、2.0〜4.0を示し、共に適度な硬さとさくい性を有していると判断できた。
【0020】
(試験例2)
専門の官能パネラー7名による食感・食味の検討をおこなった。実施例1のビスケットと比較例1のビスケットにおいて、硬さとサクサク感に関して、1対比較を実施し、その結果を表2に示した。
【0021】
【表2】

【0022】
専門の官能パネラーによる評価においても、実施例1のビスケットは、卵、バターを使用した比較例1と遜色がなく、食感・食味において優れたものであった。
【実施例2】
【0023】
(A)の各成分を均一に撹拌、混合しておく。これに(B)を徐々に加えながら撹拌する。ドウが形成されたら(C)を撹拌しながら添加、20〜30分間混練して、生地を調整する。30分間生地を寝かせた後、調整した生地をシート状にして型抜きし、オーブン紙を敷いた天板に並べ、200℃のオーブンで、5分間焼成し、実施例1のビスケットを作成した。
(A)
ショ糖 14.000 %
小麦粉(薄力粉) 48.500 %
食塩 0.340 %
タカフード(プロテアーゼ) 0.100 %
炭酸アンモニウム 0.800 %
重曹 0.340 %
亜鉛酵母 1.000 %
銅酵母 1.000 %
パントテン酸 0.003 %
ナイアシン 0.100 %
ビタミンB 0.001 %
ビタミンB 0.005 %
ビタミンE 0.100 %
ドライビタミンD 0.005 %
(三共(株)製:ビタミンDとして、0.00025%含有)
炭酸カルシウム 1.000 %
ピロリン酸第二鉄 2.000 %
(B)
水 18.106 %
(C)
ショートニング 12.500 %
香料 0.100 %
【実施例3】
【0024】
(A)の成分を均一に撹拌、混合しておく。これに(B)を撹拌しながら徐々にして加える。さらに、(D)を撹拌しながら添加、混合し、さらに均一に混合した(C)を加えて、生地を調整する。調整した生地を型抜きして、オーブン紙を敷いた天板に並べ、170℃のオーブンで、20分間焼成し、実施例3のビスケットを作成した。
(A)
ショートニング 23.500 %
香料 0.100 %
(B)
ショ糖 16.000 %
マルチトール 5.000 %
グルコース 2.000 %
(C)
小麦粉(薄力粉) 42.500 %
食塩 0.340 %
炭酸アンモニウム 0.300 %
重曹 0.200 %
亜鉛酵母 1.000 %
銅酵母 1.000 %
パントテン酸 0.003 %
ナイアシン 0.100 %
ビタミンB 0.001 %
ビタミンB 0.005 %
ビタミンE 0.100 %
ドライビタミンD 0.005 %
(三共(株)製:ビタミンDとして、0.00025%含有)
炭酸カルシウム 1.000 %
ヘム鉄 2.000 %
(D)
水 4.846 %
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、卵類、乳類に対する食物アレルギーを有する幼児・小児においても、安心して安心して菓子類を食することができ、しかも、これらの幼児・小児の成長に必要な微量栄養素を摂取可能となり、健やかな成長を促す手段を提供することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンB、ナイアシン、ビタミンB、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、ヨウ素、鉄、マンガン、セレン、クロム、モリブデン、亜鉛及び銅から選択される微量栄養素1種乃至は2種以上を含有し、且つ、卵類及び乳類を含有しない固形食品。
【請求項2】
卵、牛乳アレルギーの幼児・小児のための栄養補給用であることを特徴とする請求項1に記載の固形食品。
【請求項3】
賦形剤として、単糖類若しくは二糖類、及びショートニングを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の固形食品。
【請求項4】
焼き菓子であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の固形食品。
【請求項5】
ビスケット、クッキー又はボウロであることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の固形食品。
【請求項6】
前記微量栄養素が、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB、ビタミンB,ナイアシン、パントテン酸、カルシウム、鉄、亜鉛及び銅であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の固形食品。
【請求項7】
商品形態において、「卵、乳製品(牛乳を含む)を含有せず、パントテン酸、ナイアシン、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンE、ビタミンD、カルシウム、鉄、亜鉛、銅を含有する」ことを表示することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の固形食品。
【請求項8】
商品形態において、「卵・牛乳アレルギーの幼児・小児のための栄養補給用である」ことの表示を有することを特徴とする、請求項1〜7何れか1項に記載の固形食品。
【請求項9】
前記ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンB,ナイアシン、ビタミンB,ビタミンB12,葉酸、パントテン酸、ビタミンC、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛及び銅から選択される微量栄養素が、卵類乃至は動物乳を基源としないことを特徴とする、請求項1〜8何れか1項に記載の固形食品。
【請求項10】
カルシウムが貝由来の炭酸カルシウム、鉄がピロリン酸第二鉄、亜鉛が酵母亜鉛、銅が酵母銅である請求項1〜9の何れか1項に記載の固形食品。