説明

核技術設備の水を浄化する方法

本発明は、水がイオン交換器(2)によって浄化される、核技術設備の水を浄化する方法に関し、水は前記イオン交換器へ通される前に、水中にある過酸化水素を分解するために触媒と接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核技術設備の水を浄化する方法に関する。核技術設備の特定の領域、例えば使用済み燃料要素の貯蔵プール、原子炉や一次循環の放射領域にある貯水槽であって、そこに余剰水素を印加する手段が設けられていない場合などには、放射線を原因とする水分子等の放射線分解によって過酸化水素が生じる。水が前述した領域から浄化のためにイオン交換器に通されると、通常はイオン交換樹脂である、そこに含まれているイオン交換材料が酸化され、それによってその有効性と耐用寿命が低下する。有効でなくなった交換材料は廃棄処理しなくてはならず、このことは、それが放射性材料であるという事実に基づき、高いコストがかかり高価となる。それに加えて、酸化の結果として生じるイオン交換樹脂の分解生成物が、貫流する水へと移行し、それによって水が汚染されるという別の問題もある。この点に対処するべく、すでに過去において種々の試みがなされている。とりわけ問題になる点は、浄化されるべき水量が多いことに基づく、大量の処理量である。イオン交換器には5から20kg/sの処理水量が供給されるのが普通である。紫外線の照射による過酸化水素の破壊は、すでにこの理由により、通常生じている流速では著しい技術的コストをかけなければ所要の放射線密度を実現できないという意味からして難しい。さらに別の可能性の要諦は水素の添加であるが、これも同じく高いコストと結びつき、触媒によるサポートがないと、前述した適用例では速度が遅すぎて不完全にしか行われない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の課題は、技術的に簡単なやり方で、浄化のために用いられるイオン交換器の信頼度の高い防護が可能である、核技術設備の水を浄化する方法および装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
この課題は、方法に関しては請求項1によって解決され、装置に関しては請求項6によって解決される。請求項に記載されているとおり、浄化されるべき水から、それがイオン交換器に通される前に、そこに含まれている過酸化水素が触媒によって取り除かれる方法が提案される。触媒による過酸化水素の転換は、最小の技術的コストで実施することができ、少ない人員投入と少ない保守整備コストしか必要とせず、最終生成物として水と酸素をもたらす。特に触媒でコーティングされた構造体を含む、または触媒作用のある材料からなる構造体を含む、触媒作用のある装置は、定期的な再生その他の保守対策を必要とすることなく、長期的な視点から有効である。しかもこのような装置は、高い単位面積あたりの有効性を有し、それによって少ない寸法を有する。それにより、とりわけ既存のイオン交換設備への後付けに好適である。処理されるべき水へ補助物質を添加する必要がなく、また、触媒装置は処理されるべき水に物質を放出することもない。さらに、該当するシステムそのものの材料表面にはいかなる改変も不要であるという利点がある。触媒による装置はエネルギー供給なしに作動し、ほぼ補修に依存することがない。構造体としては、実質的に流動方向を向いた薄い鋼板が使用されるのが好ましい。このような構成により、浄化されるべき水に、圧力損失の増大につながる乱流が発生するのが防止される。
【0004】
提案される方法を実施するための好ましい装置では、請求項7に記載されているように、イオン交換器に接続された供給配管に、相前後してつながれた複数の触媒モジュールが配置されている。供給配管は、通常、適用ケースに応じて十分な数の触媒モジュールを格納するのに十分な長さを有する。触媒モジュールの挿入と固定は、簡単なやり方で可能である。この場合、例えば触媒構造体や触媒作用のある濾床が充填された容器といったような、別個の処理ステーションが必要ないという利点もある。既存のイオン交換設備へ、簡単なやり方で後付けが可能であるという特別な利点がある。触媒モジュールは、スリーブとその内部に配置された触媒構造体とが組み合わされて構成されているのが好ましい。このとき触媒構造体は、流動方向に延びる複数の触媒担持薄板で構成されている。それにより、触媒による過酸化水素の転換のために広い表面積を利用することができる。触媒構造体については、有効表面積の拡大または最大化という観点から、および、これに代えて追加的に機械的な安定性を高めるために、例えば波形の形状または湾曲した形状を選択することができ、または、この両者の組み合わせを選択することができる。このことは、例えば2枚の薄板で囲まれた中間スペースに、波形薄板が配置されていることによって実現することができる。
【0005】
次に、添付の図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
例えば原子力発電所の貯水槽にある水の浄化を実施するために、供給配管1を介して水がイオン交換フィルタ2へ供給される。その内部には、球形のイオン交換樹脂からなる濾床が設けられていてよく、別々のカチオン交換フィルタとアニオン交換フィルタが相前後してつながれていてよい。カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を備えた混床式フィルタが層を形成して、または内部で混合されて設けられていてもよく、あるいは、単床式フィルタと混床式フィルタを組み合わせたものが設けられていてもよい。同様に、粉末状のイオン交換樹脂(カチオン交換材料とアニオン交換材料との混合物)からなる流動層を備えたイオン交換フィルタであってもよい。
【0007】
既存の設備へ容易に後付けすることができる簡単なやり方で、水に含まれている過酸化水素を除去するために、イオン交換器2の手前にある供給配管1の区域に、選択された個数の触媒モジュール3が配置されている。触媒モジュールは、実質的に、特にVA鋼材からなるスリーブ4と、その内部に配置された触媒構造体5とで形成されている。スリーブ4の外径は、供給配管1の内径よりもわずかに小さいので、スリーブを溶接をすることなく簡単な保持部によって供給配管1に配置することができる。したがって、既存の浄化設備の供給配管へ、触媒モジュール3を事後的に組み付けることもできる。そのために触媒モジュール3は、場合により追加の複数組のフランジを用いたうえで既存の供給配管へ挿入されるか、または、供給配管の1つの区画が触媒モジュール3を含む区画によって置き換えられる。
【0008】
触媒構造体5は、例えば供給配管1の長手方向または流動方向6に延びる複数の薄板7を有する。薄板7は、例えば波形薄板9が中に配置された中間スペース8を形成している。このようにして、スリーブ4の内部断面は複数の流動通路10に分割されている。波形薄板9は流動方向6に延びているので、触媒構造体5は供給配管1を貫流していく水に低い抵抗しか与えない。その理由は、特に、上述したやり方で構成された触媒構造体5が供給配管1の水の層流を乱すことがなく、それによって、抵抗を高める乱流が回避されることにある。流動通路10の数が非常に多いことに基づき、相応に広い面積が、触媒による過酸化水素の変換のために提供される。薄板7および波形薄板9は、触媒材料としての白金でコーティングされている。薄板7および波形薄板9へマイクロポア白金材料を塗布することによって、触媒作用のある表面積をいっそう広くすることができる。一例として、触媒モジュール3を含む供給配管1の処理量がおよそ7kg/sであり、供給配管1の管径がおよそ300mmである場合、その中におよそ15mg/lの濃度で含まれる過酸化水素の分解を確保するためには、およそ2.5mの区間にわたって触媒モジュール3が供給配管1に装備される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】イオン交換器とこれに接続された供給配管、およびその内部にある触媒モジュールを示す模式図である。
【図2】図1の部分図IIである。
【図3】触媒モジュールの端面を示す平面図である。
【図4】図3の部分図IVである。
【符号の説明】
【0010】
1 供給配管
2 イオン交換器
3 触媒モジュール
4 スリーブ
5 触媒構造体
6 流動方向
7 薄板
8 中間スペース
9 波形薄板
10 流動通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水がイオン交換器(2)によって浄化される、核技術設備の水を浄化する方法において、水がその中に含まれる過酸化水素を分解するために前記イオン交換器(2)の前に配置された構造体を通して導かれ、該構造体は、実質的に流動方向に向き、触媒作用のある材料でコーティングされるか、またはそのような材料からなる薄板(7および9)で構成されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
触媒作用のある材料として白金族に含まれる元素または白金族元素混合物が使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒作用のある材料として白金が使用されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
イオン交換器(2)と、これに接続された供給配管(1)とを有する請求項1から3のいずれか一項に記載の方法を実施する装置において、前記供給配管(1)の中に相前後してつながれた複数の触媒モジュール(3)が配置されていることを特徴とする装置。
【請求項5】
前記触媒モジュール(3)は、スリーブ(4)と、その内部に固定され、流動方向(6)に延びる、互いの間でそれぞれ中間スペース(8)を形成する複数の薄板(7)で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
2つの前記薄板(7)で囲まれる前記中間スペース(8)にそれぞれ1つの波形薄板(9)が配置されていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記薄板(7および9)は白金族の金属または白金族金属混合物でコーティングされていることを特徴とする請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
前記薄板および波形薄板(7および9)は白金でコーティングされていることを特徴とする請求項7に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−505044(P2009−505044A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525436(P2008−525436)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007674
【国際公開番号】WO2007/019960
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(501315289)アレヴァ エンペー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (61)
【Fターム(参考)】