説明

核酸の変異解析方法および遺伝子の発現解析方法

本発明は、ターゲット核酸の標的部位の塩基を決定する方法であって、ターゲット核酸の標的部位に隣接する3’側の塩基配列に相補的な選択用配列を含み且つその5’末端を介して基体に固相化されているプローブ核酸と核酸試料とを反応させる工程;検出可能な信号を生ずる標識物質を付された特定の1種類の塩基を含む標識化デオキシヌクレオシド三リン酸とポリメラーゼとの存在下で前記反応で得られた反応産物を伸長する工程;前記伸長工程で使用されなかった標識化デオキシヌクレオシド三リン酸を当該反応系から除去する工程;当該反応系に存在する前記標識物質由来の信号を検出する工程;検出された信号の有無と前記標識化デオキシヌクレオシド三リン酸の塩基の種類から標的部位の塩基を決定する工程を具備する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、固相されたプローブ核酸を用いて核酸の変異を解析する方法に関する。また本発明は、固相された標識プローブ核酸を用いて遺伝子発現を解析する方法に関する。更に本発明は、核酸を用いた種々の解析、例えば遺伝子の発現解析等に有用である、標識プローブ核酸の調製方法に関する。
【背景技術】
所謂DNAマイクロアレイは、多数の異なったプローブDNAをガラスなどの固相基板上に高密度に固定した装置である。このような基板にプローブ核酸を固定した装置は、その製造方法から2種類に大別される。1つは、光リソグラフ方式によりDNAをガラス表面上で合成していくタイプの装置、即ち、一般的にはDNAチップと称される装置である(Proc Natl Acad Sci USA(1994)91:5022−5026)。もう1つは、予め調製したDNAをスライドガラス上に機械的に並べ、それによってDNAを張り付けていくタイプの装置、即ち、一般的にはDNAマイクロアレイと称される装置である(Science(1994)270:467−470)。
上記2種類のDNAマイクロアレイの基本的な測定原理は、固定されたプローブ核酸に対して標識された核酸試料をハイブリダイズさせ、核酸試料の標識を基に、核酸試料の中に、プローブ核酸にハイブリダイズする核酸が存在するか否かを検出するものである。このような原理によって、遺伝子の大量解析が可能になる。また、検出感度の向上、装置のマイクロ化によるサンプルの節約、データの取得の自動化およびデータ処理の簡便化なども達成されると期待されている。
DNAをガラス表面上で合成していくタイプのDNAマイクロアレイは、半導体に使われる光リソグラフィー技術と固相法DNA合成技術を融合させることで作製する。まず光反応で取り除くことができる保護基を持った合成リンカーをガラス基板上に結合させ、マスクと呼ばれる遮蔽物質を通して光を照射することにより、特定の領域の保護基を脱離させる。次にこのガラス基板を水酸基が保護されたヌクレオチドと反応させる。これにより保護基が脱離している部分のみで、重合反応が起こる。更に、別のマスクを用いて基板上の異なる領域に光を照射し、ヌクレオチドの重合を繰り返し、アレイを作製する。
スライドガラスにDNAを張り付けていくタイプのDNAマイクロアレイは大がかりな半導体製造機を必要としない。DNAアレイ機と検出器があれば目的のDNAマイクロアレイを製造することが可能である。また、この方法は、張り付けるDNAを任意に選択できることが利点であるが、その一方で、DNAのコレクションを調製する必要があり、繁雑な作業が必要である。また、この方法では、ピン先で物理的にスポットしていく。従って、DNAの高密度化は光リソグラフ方式よりは劣る。しかしながら、例えば、直径100μmのスポットを100μm間隔でスポットすると計算上1cmに2500スポットすることが可能である。通常のスライドガラス1枚(有効面積は約4cmである)について、約1万のDNAを載せることが可能である。
DNAアレイ機は、基本的に高性能サーボモータを組み合わせて、コンピュータ制御下でピン先、或いは、スライドホルダーをXYZ軸方向に作動して、マイクロタイタープレートからスライドガラス表面上にDNAサンプルを運ぶものである。ピン先の形状には、多くの工夫がなされており、この技術の命とも言える。最も一般的なピン先形状は、カラス口のように割れたペン先形状である。そこにDNAプローブ溶液を溜め、複数のスライドにスポットする方式である。洗浄および乾燥のサイクルを挟んで次のDNAサンプルを載せるという工程を繰り返す。理想的なアレイ機に求められる機能は、スポットのサイズや形状が均一で、しかも高速で再現性がよいということである。ペン先のロットの違いなどにより均一性やスピードに限界があるので、より高性能なものを求めてインクジェット方式やキャピラリー方式など、新しい技術の開発も進められている。
DNA固定法に関しては、ガラスはメンブレンと比較して、有効固定面積が小さく電荷のチャージも少ないので、種々のコーティングが試みられている。実用的にはポリLリジンや、シラン化などが用いられている。DNA末端をアミノ化してシラン化ガラスにクロスリンクする方法もある。
DNAマイクロアレイ上でハイブリダイズした蛍光標識DNAの蛍光シグナルの検出は蛍光検出器で行う。通常、スキャナーは蛍光顕微鏡と可動ステージを組み合わせたものである。従来型のゲル用の蛍光イメージアナライザーでも、それ程高密度ではないDNAマイクロアレイの読み取りなら可能である。最近、DNAマイクロアレイ専用の高解像度スキャナーが売り出された。読み取り方式の違いにより共焦点型と落射型がある。
DNAマイクロアレイから出てくるデータは膨大なものになるので、データ解析ソフトが重要となってくる。データの表示方法やデータの後処理、他のデータベースとのリンクなど実験者にとって使い勝ってのよいソフトウェアの開発が望まれている。マイクロアレイによる遺伝子発現モニタリングのデータベース化の試みや、アレイデータベースのインターネットでの公開も始まっている。
このような技術のDNAマイクロアレイを用いて、突然変異を検出することが試みられている。まず、サンプルの特定領域中の1塩基に対して、その塩基のみが異なる4種類のオリゴヌクレオチドプローブをデザインし、DNAプローブチップに載せる。一方、塩基配列を調べるサンプルはPCRで増幅し、蛍光色素を用いて末端標識しておく。このサンプルを前記のDNAチップとハイブリダイゼーションさせると、サンプル配列と相補的な塩基を持つプローブが最も強いハイブリダイゼーションシグナルを示す。同様に、1塩基置換の突然変異を持ったサンプルの場合は、変異塩基に相補的な塩基を持つプローブが最も強いハイブリダイゼーションシグナルを示す。この方法では、電気泳動に基づいたDNAシーケンシングと異なる、未知の塩基配列を決定することはできないが、特定の遺伝子の決まった領域について、突然変異の存在を高密度で検出できる。
サンプル調製では、例えば、Hu SNP Mapping Assay(Affymetrix社)は、SNPマーカーの増幅に1本の反応チューブで約100種類のPCR産物を増幅させるマルチプルPCRを採用している。2段階目にはラベリングPCRを行い、各SNPマーカーを含むPCR産物を更に増幅させると共に、ビオチン標識を行うが、このときには、全てのPCR産物に共通なプライマーペアを用いることができる。このサンプル調整の効率化により、約120ngのゲノムDNAから出発し、1日半でSNP遺伝子型を決定することができるようになった。実験操作は、GeneChipシステムにより極限まで自動化されており、1台のスキャナを用いた場合には24時間で180サンプルの解析が可能である。
このようなDNA変異解析は、4種類のオリゴヌクレオチドプローブをガラスなどの固相基板上に固定し、その上に、PCRで増幅した蛍光標識DNAをハイブリダイズさせ、各々のプローブからのシグナルを自動検出器で検出し、そのデータをコンピュータで解析する。このような解析は、以下のような問題点がある。即ち、1)測定したい試料を各試料毎に蛍光標識ヌクレオチドや蛍光標識プライマーを用いて標識しなければならず、標識の効率が低く、且つ製造コストが高い、2)ハイブリダイゼーションまでの前処理が煩雑で自動化しずらい、3)1つの試料を測定するのに4種類のプローブを用意しなければならず費用がかかる、4)測定が乾燥状態で行われるために蛍光シグナルの検出効率が低い。
一方、上述のDNAマイクロアレイを用いて、遺伝子発現を解析することも現在行われている。その主流は、二蛍光標識法を用いたディファレンシャルな遺伝子発現をみる系である。その原理は、2つの異なったmRNAサンプル中での遺伝子発現の差を検出するものである。そのために、各mRNAサンプルから各標識cDNAを調製する際に、それぞれを異なる蛍光物質で標識し、各標識cDNAをアレイ上のプローブに競合的にハイブリダイズさせ、両方の蛍光を測定し比較するものである。
このような従来の方法は、以下のような問題点がある。即ち、1)従来の方法では、測定したい試料を標識するため、例えばRNAなどの試料のデグラデーションが生じる。2)従来の方法では、ハイブリダイゼーションまでの前処理が煩雑で自動化しずらい。3)従来の方法は、ディファレンシャルな遺伝子発現を検出するものである。従って、相対的変化でしか発現量を見られない。4)従来の方法では、プローブの固相量や、点着スポットの状態を反応前に知ることができない。従って、プローブ固相の精度管理を行うことが不可能である。5)従来の方法では、測定は乾燥状態で行われているので、蛍光シグナルの検出効率が低い。
【発明の開示】
上記の状況に鑑み、本発明の目的は、効率がよく、且つ経済的な遺伝子変異解析方法を提供することである。
鋭意研究の結果、本発明者らは、上記の課題を解決するための手段を見出した。即ち、
ターゲット核酸の標的部位の塩基を決定する方法であって、以下の工程を具備する方法;
(1)前記ターゲット核酸の標的部位に隣接する3’側の塩基配列に相補的な選択用配列を含み、且つその5’末端を介して基体に固相化されているプローブ核酸と、核酸試料とを、適切なハイブリダイゼーションを得るための条件にある反応系において反応させる工程と、
(2)適切な伸長反応を得るための条件において、検出可能な信号を生ずる標識物質を付された特定の1種類の塩基を含む標識化デオキシヌクレオシド三リン酸と、ポリメラーゼとの存在下で、前記(1)の工程で得られた反応産物を伸長する工程と、
(3)前記(2)の伸長する工程において、当該伸長反応に使用されなかった標識化デオキシヌクレオシド三リン酸を当該反応系から除去する工程と、
(4)前記(3)の工程の後で、当該反応系に存在する前記標識物質由来の信号を検出する工程と、
(5)前記(4)の工程における当該信号の検出の有無と、前記標識化デオキシヌクレオシド三リン酸に含まれる塩基の種類から、標的部位の塩基を決定する工程
を具備する方法である。
また、上記背景技術に記載された状況に鑑み、本発明の目的は、効率のよい遺伝子発現解析方法を提供することである。本発明の更なる目的は、複数のプレート間での比較が可能な遺伝子発現解析方法を提供することである。また本発明の更なる目的は、検出精度のよい遺伝子発現解析方法を提供することである。
鋭意研究の結果、本発明者らは、上記の課題を解決するための手段を見出した。即ち、
被検核酸中の標的配列の存在を検出する方法であって、
(1)そこにおいて反応を行うことが可能な流路に固相化され、標識物質を付加された標識化プローブ核酸に、適切なハイブリダイゼーション可能な条件下で被検核酸を反応させる工程と、
(2)前記(1)の工程の後に、1本鎖特異的ヌクレアーゼを前記流路に添加して、適切な酵素反応を得られる条件下で反応を行う工程と、
(3)前記(2)の工程の後に、前記流路から酵素反応の分解産物を除去する工程と、
(4)前記流路内の2本鎖核酸に含まれる標識物質からの信号を検出する工程と、
(5)前記(4)の工程において検出された信号を基に、被検核酸中の標的配列の存在を検出する工程と
を具備する方法;および、
対象における標的配列の発現頻度を判定する方法であって、
(1)そこにおいて反応を行うことが可能な流路に固相化され、且つ標識物質を付加された標識化プローブ核酸に、適切なハイブリダイゼーション可能な条件下で、対象から得た被検核酸を含む試料を反応させる工程と、
(2)前記(1)の工程の後に、1本鎖特異的ヌクレアーゼを前記流路に添加して、適切な酵素反応を得られる条件下で反応を行う工程と、
(3)前記(2)の工程の後に、前記流路から酵素反応の分解産物を除去する工程と、
(4)前記(3)の工程の後に、前記流路内の2本鎖核酸に含まれる標識物質に由来する信号を検出する工程と、
(5)前記(4)の工程において検出された信号を基に、対象における標的配列の発現頻度を判定する工程
を具備する方法である。
また、このような遺伝子発現解析方法を実施するにあたり、この方法が、流路等の支持体上のプローブをすべて標識しなければならないという点において、多大な費用と時間と労力を要するという問題を有していることを見出した。
従って本発明は、アレイ上のプローブをすべて一括して標識することが可能な、簡便なプローブ標識方法を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、標識プローブ核酸を固相化した支持体を簡便に作成する方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を提供する。即ち、
標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法であって、
(1)作成したい標識プローブ核酸の塩基配列に相補的な鋳型核酸と、前記鋳型核酸の塩基の総数より少なく、作成したい標識プローブ核酸の塩基配列の一部が欠損している未標識プローブ核酸前駆体であって、その5’端で支持体に固相化されている未標識プローブ核酸前駆体とを、これらがハイブリダイズ可能な条件下で、反応させる工程と、
(2)検出可能な信号を生ずる標識物質を付された、特定塩基の標識ヌクレオチドと、前記特定塩基以外の他の塩基の非標識ヌクレオチドとを基質として用いて、前記未標識プローブ核酸前駆体の欠損部分を、前記鋳型核酸を鋳型として、5’から3’方向に向かって伸長させ、標識プローブ核酸を合成する工程と、
(3)前記工程により得られた標識プローブ核酸と、前記鋳型核酸との間の相補的結合をすべて解離させる工程と、
(4)解離された前記鋳型核酸を支持体上から除去する工程とを含む方法である。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の1態様に従って使用される反応容器の例を示す図であり、(a)は、本発明の1態様に従って使用される反応容器の例を示す平面図であり、図1(b)および(c)は、図1(a)の1B−1B線の断面図である。
図2は、本発明の1態様に従う変異解析方法の例を模式的に示す図である。
図3は、本発明の1態様に従う変異解析方法の例を模式的に示す図である。
図4は、S1ヌクレアーゼによる核酸分解の例を模式的に示す図である。
図5は、ヌクレアーゼプロテクションアッセイの原理を模式的に示す図である。
図6は、本発明の1態様に従う変異解析方法の1例を模式的に示す図である。
図7は、本発明の1態様に従う変異解析方法の1例を模式的に示す図である。
図8は、本発明の1態様に従う遺伝子発現解析方法を模式的に示す図である。
図9は、本発明の1態様に従うプローブ核酸の標識方法の例を示す図である。
図10は、本発明の1態様に従う標的配列の検出方法を模式的に示す図である。
図11は、本発明の1態様に従うプローブ核酸の標識方法の例を示す図である。
図12は、本発明の1態様に従うプローブ核酸の標識方法の例を示す図である。
図13は、本発明の1態様に従うプローブ核酸の標識方法の例を示す図である。
図14は、本発明の標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法の第一の実施の形態を説明する図である。
図15は、本発明の標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法の第二の実施の形態を説明する図である。
図16は、本発明の標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法の第三の実施の形態を説明する図である。
図17は、第16の実施例の結果を示す顕微鏡写真である。
図で用いられた符号は、以下のとおりである:
1…反応容器、 2…反応部、 3…プローブ核酸、 4a、4b…開口部、 5…ポリイミド薄膜、 6…ヒーター、 7…温度センサー;
21a、21b…ターゲット核酸、 22a、22b…プローブ核酸、 23a、23b…標識化基質核酸;
31a、31b、31c…ターゲット核酸、 32a、32b、32c…プローブ核酸、 33…標識化基質核酸、 34…反応部の底面、 35…反応部、 36a、36b、36c…伸長され標識されたプローブ核酸;
81a、81b、81c…ターゲット核酸、 82a、82b、83c…プローブ核酸、 83…標識化基質核酸、 84…反応部の底部、 85…反応部、 86a、86b、86c…伸長され標識されたプローブ核酸、 87a、87b…ターゲット核酸;
91a…ターゲット核酸、 92…プローブ核酸、 93a…標識化基質核酸、 94…反応部の底部、 95…反応部、 96a…伸長され標識されたプローブ核酸、 91b…ターゲット核酸、 93b…標識化基質核酸、 96b…伸長され標識されたプローブ核酸;
101…プローブ核酸、 102…ターゲット核酸、 104…反応部の底面、 105…反応部;
121…鋳型核酸、 122…種プローブ核酸、 123…標識化基質核酸、 124…反応部の底面、 125…反応部、 126…伸長され標識されたプローブ核酸、 127、128…非標識化基質核酸;
131a、131b、131c…鋳型核酸、 132a、132b、132c…種プローブ核酸、 133…標識化基質核酸、 134…反応部の底面、 135…反応部、 136a、136b、136c…伸長され標識されたプローブ核酸;
141a…鋳型核酸、 142…種プローブ核酸、 143a、143b…標識化基質核酸、 144…反応部の底面、 145…反応部、 146a、146b…伸長され標識されたプローブ核酸;
151…種プローブ核酸、 152…反応部の底面、 153…鋳型核酸、 154…第1の標識化基質核酸、 155…第2の標識化基質核酸;
161a、161b、161c…鋳型核酸、 162a、162b、162c…種プローブ核酸、 163…標識化基質核酸、 164…反応部の底面、 165…反応部、 166a、166b、166c…プローブ核酸、 167a、167b…ターゲット核酸;
201…支持体、 202…鋳型核酸、 203…未標識プローブ核酸前駆体、 204…標識ヌクレオチド、 205…非標識ヌクレオチド、 206…標識プローブ核酸;
207…ジデオキシヌクレオチド;
203a…未標識プローブ核酸前駆体A、 203b…未標識プローブ核酸前駆体B。
【発明を実施するための最良の形態】
1. 核酸の変異解析方法
1.1 核酸の変異解析方法の概要
本発明の態様に従うと、ターゲット核酸の特定部位の塩基を決定するための方法が提供される。本方法において、ターゲット核酸を選択的に捕獲するための配列を含み、かつその5’末端で基体に固相化されているプローブ核酸を用いる。
ここで使用される「核酸」の語は、天然に存在する種々のDNAおよびRNA、並びにペプチド核酸、モルホリノ核酸、メチルフォスフォネート核酸およびS−オリゴ核酸などの人工的に合成された核酸類似体などを示す。
ここで使用される「ターゲット核酸」とは、前記核酸の何れかの核酸であって、ハイブリダイゼーションに適切な塩基長を有する核酸をいう。ハイブリダイゼーションに適切な塩基長とは、10塩基長から1000塩基長であればよく、好ましくは15塩基長から200塩基長であり、より好ましくは15塩基長から50塩基長である。
例えば、本発明に従って好ましく対象とされるターゲット核酸は、DNA断片、RNA断片、ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド等、何れの核酸断片であってもよい。また、当該ターゲット核酸は、人工的に合成された核酸断片であっても、対象から抽出された何れの核酸断片であっても、それを元に合成されたcDNAおよびRNA断片であっても、PCRなどにより増幅されて得られた核酸断片であってもよい。また、それ自身公知の何れかの細胞工学的技術によって操作して得られた核酸の断片であってもよい。
ここで使用される「対象」の語は、ヒト、サル、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラットおよびマウスを含む任意の哺乳動物、爬虫類、魚類および昆虫などの個体、並びに遺伝子を発現し得るその他の生物個体、並びに個体から採取した細胞および組織等であってもよい。
上記のような対象からターゲット核酸を含む核酸試料を対象から得る工程はそれ自身公知の手段により行うことが可能である。例えば、核酸試料がゲノムDNAである場合には、市販のキットを使用しても、他の公知の方法を使用してもよい。また例えば、核酸試料がRNAである場合には、例えば、市販のキットを使用しても、オリゴdTカラムを使用してもよいが、これに限定されるのもではない。
本発明の方法で使用される「プローブ核酸」は、特定の配列を有する「ターゲット核酸」をハイブリダイゼーションを利用して選択的に捕獲するための核酸である。従って、解析の対象となるターゲット核酸の既に分かっている配列の連続する一部分に相補的な配列を選択用配列として有する。プローブ核酸の長さは、10塩基から100塩基、好ましくは15塩基から25塩基であればよい。また、選択用配列の長さは、10塩基から50塩基、好ましくは15塩基から30塩基であればよい。プローブ核酸は、5’末端を介して基体に固相化されている。
本発明の方法で使用される「ターゲット核酸」は、本発明の方法において解析の対象となる配列であり、その塩基を決定しようとする標的部位以外の配列は既に分かっている配列であることが好ましい。ターゲット核酸に含まれる標的部位の3’側に上記「選択用配列」に相補的な配列が存在する。また、標的部位の長さは1塩基であっても、2塩基以上であってもよいが、1塩基であることが好ましい。また、ターゲット核酸における標的部位の位置は、プローブ核酸が5’端を介して基体に固相化されている場合であれば、3’端側に選択用配列に相補的な配列が位置するので、選択用配列の相補配列に隣接し、且つその相補配列よりも5’端側でに位置すればよく、5’末端であっても、末端でなく末端までに幾つかの塩基を有していてもよい。
本発明の態様に従う方法は、例えば、次のように行うことが可能である。先ず最初に、選択用配列を有するプローブ核酸を反応容器に固相化する。次に、核酸試料をその反応容器に添加し、適切なハイブリダイゼーションが得られる条件、例えば、厳格な(ストリンジェンシーな)条件、で反応を行う。選択用配列に相補的な配列を有するターゲット核酸が前記核酸試料に存在すれば、プローブ核酸にはターゲット核酸がハイブリダイズする。これにより、特定の配列を有するターゲット核酸を核酸試料から捕獲される。続いて、そこに検出可能な信号を生ずる標識物質を付された特定の1種類の塩基を含む標識化デオキシヌクレオシド三リン酸と、ポリメラーゼとを反応容器に添加し、適切な伸長反応が得られる条件下で伸長反応を行う。その後、伸長反応に使用されなかった標識化基質を除去し、標識物質に由来する信号を検出する。その結果、当該信号が観察されれば伸長が生じていれることが分かる。従って、標的部位の塩基が、使用した標識化デオキシヌクレオシド三リン酸に含まれるに塩基に相補的な塩基であることが分かる。1つの核酸試料について、このような工程を4種類の塩基全てについて行ってもよい。また、標的部位が遺伝子多型の存在する部位であれば、その多型の遺伝子型となり得る塩基の種類についてのみ上記の工程を行ってもよい。
本発明の態様においてプローブ核酸は、その5’末端を介して基体に固相化されている。プローブ核酸の固相化は、従来公知の何れかの基体に対して所望のプローブ核酸を固定することによって行うことが可能である。
本発明の態様に従って使用され得る「基体」は、そこにおいてハイブリダイゼーション反応を行うことが可能な形態であればよい。例えば、一般的に使用される反応容器、例えば、キャピラリー形状またはウェル形状のそこにおいて反応を行うための反応部を有した反応容器であっても、その面において反応を行うような板状および球状の基体であってもよい。あるいは、「基体」が、針、糸(ストランド)、繊維(ファイバ)、円錐(ディスク)、多孔質フィルタであってもよい。処理の容易さから、キャピラリー形状の反応部を有した反応容器が好ましい。
基体が球状である場合、当該球状の基体を用いて以下に記載のとおり、本発明を実施することができる。すなわち、基体として、検出すべきターゲットに対応する複数のプローブを固相化した微粒子を調製し、当該微粒子をキャピラリーまたはウェル等の反応容器に供給して、本発明に記載の反応を実行することができる。当該微粒子は、反応後に反応容器から回収して、フローサイトメーター(FCM)やレーザースキャニングメーター(LSM)による既知の測定に適用してもよい。基体として微粒子を用いた場合、好ましくは、反応容器であるキャピラリーと連続する流路の別の場所において、流動させながら、あるいは静止させた状態で測定を行うことができる。また、1本の流路内の異なる場所に微粒子を順次移動させて、それぞれの位置で固相化工程、反応工程および測定工程という一連の工程を同時または連続的に行うことも可能である。微粒子をキャピラリー内の液体と独立して移動または停止させるために、個々の微粒子が、既知の磁気的分離技術を使用可能なように磁性体を含んでいるのが好ましい。このように、キャピラリー内を流通させることによって、ターゲットの種類毎に順番に移動と停止を行うことができる。すなわち、ある種類のプローブを固相した微粒子をキャピラリ内に流通させ、その後別の種類のプローブを固相した微粒子を流通させることによって、流路内の上流と下流とで異なる反応を行うこともできるし、各種ターゲットを含む各試料を流路内に順次流通させることによって、流路内の上流と下流とで異なる反応を行うこともできる。
また、本発明において、伸長反応時に使用される基質を標識するための「標識物質」の語は、検出可能な信号を生じることが可能な物質をいい、例えば、蛍光物質、放射性物質および化学発光物質などであってよい。また、酵素反応などで発色する基質を用いてもよい。複数のプローブ核酸を1つの基体において同時に用いる場合など、所望に応じて識別可能な複数の標識物質を同時に使用してもよい。
1.2 実施例
以下、本発明に従う態様例を用いて本発明について更に説明する。
第1の実施例:反応容器
本発明の態様において使用され得る反応容器の例を図1に示す。図1(a)は、当該反応容器の平面図であり、図1(b)は、図1(a)の線1B−1Bに沿った断面図である。本例における反応容器1は、そこにおいて反応を行うための反応部2を具備する(図1(b))。ここで、反応部2は、図1(b)に示す通りの容器内部の形状がキャピラリー形状である。
また、図1(a)および(b)に示すように反応容器1は、反応部2に試薬などを挿入および/または反応部2から試薬などを排出するための開口部4aおよび4bを有している。また、反応部2の底部には、特定の配列を含むターゲット配列を捕獲するための選択用配列を含むプローブ核酸3が所望の領域に固相化されている(図1(b))。このような反応容器1の製造は次のように行った。
即ち、キャピラリーを形成可能な溝およびその溝の両端に孔を有する第1の基板(キャピラリーカバー)と、その表面にプローブ核酸が固相化された第2の基板とを接合して製造した。このとき、前記プローブ核酸は、第1の基板の溝と第2の基板の表面により形成される空間内に含まれる。より具体的には次の通りである。図1には、1キャピラリーを具備する反応容器を示したが、本発明の態様に置いて使用される反応容器は、2以上のキャピラリーを具備する反応容器であってもよい。
また、上記の例ではその内部形状がキャピラリー形状の例を示したが、キャピラリー形状に限定するものではなく、そこにおいて所望の反応を行うことが可能であればどのような形状であってもよい。
また、本発明に従って使用されるキャピラリーアレイは、例えば、以下の様に変更することも可能である。図1(c)は、図1(a)の線1B−1Bに沿った断面である。図1(c)にその断面を示すように、反応部2の下方にヒーター6および温度センサー7を配置してもよい。その場合、例えば、プローブ核酸3が固相化されるポリイミド薄膜5の下方にヒーター6を配置し、ヒーター6の下方に温度センサー7を配置すればよい。このような装置は、それ自身公知の何れかの手法により製造することが可能である。また、このような装置に含まれるヒーターおよびセンサーの配置の位置および配置パターンは所望に応じて変更してもよい。また、必ずしも、ヒーターおよびセンサーが当該基板と一体化されて提供される必要はない。
本実施例に記載のキャピラリーアレイについては、米国特許公開20020013457(Akira Suyama)を参照することができる。また、他のキャピラリーアレイについては、米国特許6,143,152(Simpson et al.)を参照することができる。
キャピラリーアレイは、米国特許公開20020013457(Akira Suyama)に記載されるように全長に亘って一定の断面積を有するように構成される。これにより、液体の流路内における液量は何処も均等であるから反応条件が等しい。同じ理由により、キャピラリーアレイにおける液体の出入りは、特別な制御手段を用いることなく定量的に調節されており、且つ脈流のない円滑な液体ハンドリングを可能にする。
第2の実施例
(1)反応容器
以下に示すように、4つのキャピラリー、即ち、キャピラリー1、キャピラリー2、キャピラリー3およびキャピラリー4を具備すること以外は第1の実施例に記載の反応容器と同様な反応容器を用いてターゲット核酸の標的部位の塩基を決定する方法の例を示す。
第1の基板であるガラス板に長さ3〜4cm、幅1mm、高さ0.1〜0.2mmの溝を4本形成し、これらの夫々の溝の両端に貫通孔を形成した。第2の基板には、ストレプトアビジンコートスライド(株式会社グライナー・ジャパン)を用いた。このストレプトアビジンコートスライドに対して、5’末端をビオチン標識したRVプローブ(ggaaacagctatgaccatg;配列番号1)を点着装置を用いて固相化した。固相化は、第1および第2の基板を接合した時に、前記4本の溝に相当する夫々の位置に、RVプローブが配置されるようにした。この固相化は、ビオチン−アビジン反応を利用した。このような第1の基板と第2の基板を接合し、前記4つの溝によって4本のキャピラリー、即ち、キャピラリー1、キャピラリー2、キャピラリー3およびキャピラリー4を形成した。これにより、得られた4本のキャピラリー内に前記RVプローブ核酸が具備された。このようにして形成した反応容器を用いて次の実験を行った。
(2)遺伝子の変異解析
以下、遺伝子の変異を解析する方法の1例である。ここでは、第4番目の塩基「N」が不明である試料tgcNcatggtcatagctgtttccターゲット核酸について、その「N」がアデニンであるのか、グアニンであるのかを決定する。
前記のキャピラリー1とキャピラリー2には、第1のターゲット核酸としてのRVcomp target(tgcacatggtcatagctgtttcc;配列番号2)を100nM(1×SSC溶液中)の濃度で添加した。また、同様に、前記のキャピラリー3とキャピラリー4には、第2のターゲット核酸としてのRVcomp target(tgcgcatggtcatagctgtttcc;配列番号3)を100nM(1×SSC溶液中)の濃度で添加した。これらについて、37℃で1時間のハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後、1×SSC溶液(以下の組成である;0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)で十分に洗浄して、未反応のターゲット核酸をキャピラリー内から取り除いた。次に0.02mLの伸長反応溶液A[10mMのTris−HCl(pH7.5)、7mMのMgCl、0.1mMのDTT、Klenow Fragment(DNA ポリメラーゼI,Large Fragment;TOYOBO)]を0.4ユニット/μL、10μMのCy3−dUTPをキャピラリー1と3に加え(図2反応A)、伸長反応溶液C[10mMのTris−HCl(pH7.5)、7mMのMgCl、0.1mMのDTT、Klenow Fragment(DNA ポリメラーゼI,Large Fragment;TOYOBO)]を0.4ユニット/μL、10μMのCy3−dCTPをキャピラリー2と4に加え(図2反応B)、これらを37℃で1、2時間反応した。
反応後、0.1×SSCで十分に洗浄し、未反応物質を取り除き蛍光強度を測定した。その結果を表1に示す。表1は、一番強い蛍光強度を1とした場合の相対値で示している。

表1の結果に示されるように、キャピラリー1とキャピラリー4の蛍光強度が大きい。この結果から、キャピラリー1とキャピラリー4に伸長が生じ、これに対してキャピラリー2とキャピラリー3では伸長は生じていないことが分かる。従って、キャピラリー1に添加したターゲット核酸の標的部位の塩基は、アデニンであり、キャピラリー4に添加したターゲット核酸の標的部位の塩基は、グアニンであることが判定される。
このように、加えた伸長反応溶液中に含まれる基質の種類と、伸長の有無から試料ターゲットの「N」の塩基が決定された。
上記の例では、本発明の態様に従う方法を説明するために、便宜上、その配列を予め分かっているターゲット核酸、即ち、RVcomp target(tgcgcatggtcatagctgtttcc;配列番号3)とRVcomp target(tgcacatggtcatagctgtttcc;配列番号2)を用いた。同様に、標的部位の塩基の不明な配列についても、その塩基を決定することが可能である。このような態様により、遺伝子の変異を検出したら、多型の遺伝子型を決定することが可能である。
このような反応により生じる現象を、図2に模式的に示した。本反応では、(A1)および(B1)に示すように、選択用配列に相補的な配列を含む核酸試料としてターゲット核酸21aおよびbを、選択用配列を含むプローブ核酸としてプローブ核酸22aおよびbを使用した。また、ターゲット核酸の標的部位「N」に該当する塩基はAである。反応Aは、キャピラリー1で生じる反応を示し、反応Bは、キャピラリー2で生じる反応を示す。反応Aでは、標識化基質核酸として蛍光標識した塩基U23a(即ち、Cy3−dUTP)を用いた(A3)。反応Bでは、標識化基質核酸として蛍光標識した塩基C23b(即ち、Cy3−dCTP)を用いた(B3)。本明細書において、各略語はそれぞれ、「A」はアデニン、「U」はウラシル、「T」はチミン、「G」はグアニン、「C」はシトシンである。また、本明細書において例として挙げる塩基は、記載の便宜上、例として挙げているに過ぎないので、それらの塩基に限定するものではない。
まず、反応Aにおいて生じる事象について説明する。
(A1)プローブ核酸鎖22aを固相化したキャピラリーにターゲット核酸21aを含む試料を添加する。
(A2)当該キャピラリー内の条件をハイブリダイゼーションが生じるのに適切な条件とする。これにより、ターゲット核酸21aとプローブ核酸22aがハイブリダイズする。
(A3)次に、Cy3で標識したdUTP23aを基質として添加し、キャピラリー内を伸長反応が生じるのに適切な条件とする。その結果、dUTP23aは、プローブ核酸22aに取り込まれ、プローブ核酸22aの伸長が起こる。
次に、反応Bにおける事象を説明する。
(B1)プローブ22bを固相化したキャピラリーにターゲット核酸21bを含む試料を添加する。
(B2)当該キャピラリー内の条件をハイブリダイゼーションが生じるのに適切な条件とする。これによりターゲット核酸21bとプローブ核酸22bがハイブリダイズする。
(B3)次に、Cy3で標識したdCTP23bを基質として添加し、キャピラリー内を伸長反応が生じるのに適切な条件とする。その結果、dCTP23bは、ターゲット核酸21bの「N」の位置の塩基に相補性がないために、ハイブリダイズは生じず、プローブ核酸22bの伸長は起こらない。
ここでは、ターゲット核酸21aおよびbは選択用配列に相補的な配列を含み、且つその相補的配列の5’側に選択用配列および相補鎖とは異なる配列を含む。一方、プローブ配列22aおよびbは選択用配列を有する。続く、プローブ核酸22aおよびbの3’端の伸長は、そこにハイブリダイズしているターゲット核酸の選択用配列に相補的な配列よりも5’側の配列を鋳型として達成される。
上記のようなキャピラリー形状の反応容器を使用すると、使用する試料および試薬も微量で済むという利点がある。しかしながら、本発明において使用される反応容器は、キャピラリー形状に限られるものではない。また、上記の例では1つの反応容器に1本のキャピラリーが具備される装置の例を示したが、これに限定されるものではなく、1つの反応容器に複数のキャピラリー形状などの内部形状を有する反応部を有する反応容器を用いてもよい。
上記の模式図では、便宜上、1つのプローブ核酸について示したがこれに限定するものではない。また、プローブ核酸の配列は上記の配列に限定するものではなく、所望に応じて任意に選択し得る。また、複数の異なる配列をそれぞれに有するプローブ核酸を1つの基体において用いてもよく、同じ種類のプローブ核酸を複数使用してもよい。
以上のような本発明の態様に従うと、ターゲット核酸に含まれる標的部位の塩基の決定に加えて、同時に、プローブ核酸へのラベル付与を容易に行うことも可能である。
第3の実施例
第2の実施例に記載した反応容器を用いて、同様に第3の実施例を実施した。
また、第2の実施例において使用した伸長反応液Aとして[10mMのTris−HCl(pH7.5)、7mMのMgCl、0.1mMのDTT、Klenow Fragment(DNA ポリメラーゼI,Large Fragment;TOYOBO)を0.4ユニット/μL、10μMのCy3−ddUTP]を用い、伸長反応液Cとして[10mMのTris−HCl(pH7.5)、7mMのMgCl、0.1mMのDTT、Klenow Fragment(DNA ポリメラーゼI,Large Fragment;TOYOBO)を0.4ユニット/μL、10μMのCy3−ddCTP]を用いたこと以外の条件は第2の実施例の記載と同様にして反応を行った。
この反応の結果を表2に示す。表2は、一番強い蛍光強度を1とした場合の相対値で示している。

表2の結果に示されるように、キャピラリー1とキャピラリー4の蛍光強度が大きい。この結果から、キャピラリー1とキャピラリー4に伸長が生じ、これに対してキャピラリー2とキャピラリー3では伸長は生じていないことが分かる。従って、キャピラリー1に添加したターゲット核酸の標的部位の塩基は、アデニンであり、キャピラリー4に添加したターゲット核酸の標的部位の塩基は、グアニンであることが判定される。
このように、加えた伸長反応溶液中に含まれる基質の種類と、伸長の有無から試料ターゲットの「N」の塩基が決定された。
上記の例では、本発明の態様に従う方法を説明するために、便宜上、その配列を予め分かっているターゲット核酸、即ち、RVcomp target(tgcgcatggtcatagctgtttcc;配列番号3)とRVcomp target(tgcacatggtcatagctgtttcc;配列番号2)を用いた。同様に、標的部位の塩基の不明な配列についても、その塩基を決定することが可能である。このような態様により、遺伝子の変異を検出したら、多型の遺伝子型を決定することが可能である。
第4の実施例
遺伝子の変異を解析する方法のもう1つの例を示す。ここでは、第4番目の塩基「N」が不明である試料tgcNcatggtcatagctgtttccターゲット核酸について、その「N」がアデニン、グアニン、シトシンまたはチミンであるのかを決定する。
第1の実施例に記載した形態の反応容器を用いて、第4の実施例を実施した。使用した反応容器は以下のように製造した。
即ち、第1の基板には、ガラス板に長さ3〜4cm、幅1mm、高さ0.1〜0.2mmの溝を1本形成し、この溝の両端に貫通孔を形成した。第2の基板には、ストレプトアビジンコートスライド(株式会社グライナー・ジャパン)を用いた。このストレプトアビジンコートスライドに対して、5’末端をビオチン標識したRVプローブ(ggaaacagctatgaccatg;配列番号1)を点着装置を用いて固相化した。固相化は、第1および第2の基板を接合した時に、前記4本の溝に相当する夫々の位置に、RVプローブが配置されるようにした。
このような第1の基板と第2の基板を接合し、前記溝によって1本のキャピラリーを形成した。
前記のキャピラリーに、ターゲット核酸としてのRVcomp target(tgcacatggtcatagctgtttcc;配列番号2)を100nM(1×SSC溶液中)の濃度で添加した。これらについて、37℃で1時間のハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後、1×SSC溶液(以下の組成である;0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)で十分に洗浄して、未反応のターゲット核酸をキャピラリー内から取り除いた。
次に0.02mLの伸長反応溶液A[10mMのTris−HCl(pH7.5)、7mMのMgCl、0.1mMのDTT、Klenow Fragment(DNA ポリメラーゼI,Large Fragment;TOYOBO)]を0.4ユニット/μL、並びに10μMの6−FAM−dUTP、10μMのHEX−dATP、10μMのTAMRA−dCTPおよび10μMのROX−dGTPを前記キャピラリーに加え、これらを37℃で1、2時間反応した。
反応後、0.1×SSCで十分に洗浄し、未反応物質を取り除き蛍光強度を測定した。蛍光強度の測定は、励起光として488nmと514nmに強いレーザー光を発するアルゴンレーザを使用し、標識物質として用いた夫々の蛍光物質に応じた波長で蛍光強度を測定した。使用した蛍光物質の波長は、6−FAMは513nm、HEXは560nm、TAMRAは580nmおよびROXは610nmである。
このように4種類の蛍光物質を標識物質として使用することによって、1キャピラリー内で効率的に標的部位の塩基を決定することが可能である。
第5の実施例
第4の実施例に記載した反応容器を用いて、同様に第5の実施例を実施した。第4の実施例に記載した方法と同様に、ターゲット核酸をハイブリダイズした。次に、第4の実施例において使用した伸長反応液に変えて、次の伸長反応液[10mMのTris−HCl(pH7.5)、7mMのMgCl、0.1mMのDDT、Klenow Fragment(DNA ポリメラーゼI,Large Fragment;TOYOBO)を0.4ユニット/μL、10μMのdATP、10μMのdCTP、0μMのdGTPまたは10μMのddGTP、および10μMのCy3−dUTPを含む]を用い、他の条件は第4の実施例の記載と同様にして伸長反応を行った。
この反応の結果、0μMのdGTPを用いた場合には、RVターゲットはその3’端からCy3−Uまで伸長された。即ち、その後のG、CおよびAは伸長されない。また、10μMのddGTPを用いた場合には、RVターゲットはその3’端からGまで伸長された。即ち、その後のC、Aは伸長されない。
このようにして、変異の有無を検出することができる。
第6の実施例
第6の実施例を模式図である図3を用いて説明する。本例では、それぞれに異なる選択用配列を有する第1、第2および第3のプローブ核酸3a、3bおよび3cを固相化した以外は第5の実施例と同様に作成した反応容器30を使用する。3Aに示す通り、それぞれのターゲット核酸31a〜31cに含まれる標的部位の塩基を便宜上「A」として示した。
第5の実施例において記載した方法に従って、先ず、3Bに示すようにターゲット核酸31a〜31cをプローブ核酸32a〜32cに対してハイブリダイズし、次に、3Cに示すように伸長反応を行う。続いて、3Cにおいて、反応部35を例えば、約95℃に温度を上昇させ、伸長したプローブ核酸36からターゲット核酸31を解離させ、反応部35を具備するキャピラリー内に0.1×SSC溶液などの緩衝液を注入し、排出することにより内容液をフローする。それにより、解離したターゲット核酸を除去して、3Dに示すように、伸長され標識されたプローブ核酸36a、36bおよび36cをそれぞれ1本鎖として得ることが可能である。
上記の態様では、2本鎖核酸の解離手段として熱処理を行っているが、本発明の態様に従って使用可能な2本鎖核酸の解離手段は、これに限定するものではない。即ち、それ自体公知の一般的に2本鎖核酸を1本鎖に解離する場合に使用される手段であれば何れの手段であってよい。例えば、アルカリ溶液、尿素またはホルムアミド等を用いてもよい。
また、ターゲット核酸がRNAであり、プローブ核酸がDNAである場合、1本鎖への解離は、前記RNAを分解するような酵素、例えば、RNAaseHなどを用いて行ってもよい。
上記では3種類のプローブ核酸とターゲット核酸の例を示したが、これ以上または以下の種類のプローブ核酸および/またはターゲット核酸を用いてもよく、また、各種類の核酸を1以上で用いてもよい。
また、本例では2本鎖核酸を1本鎖核酸としてから蛍光強度を測定したが、二本鎖のままで蛍光強度を測定してもよい。同様に本明細書に開示した他の例についても1本鎖核酸としてから蛍光強度を測定してもよい。
本発明の態様に従うと、上述した第1の実施例から第6の実施例に記載した方法の一部分を所望に応じて組み合わせて実行しても、また、所望に応じて一部を変更して実施してもよい。
本発明の更なる側面に従うと、上述のような第6の実施例に示すような本発明の態様により得られた1本鎖標識化プローブ核酸も本発明の更なる態様として提供される。
例えば、本発明の態様に従って得た伸長され標識されたプローブ核酸を、1本鎖にした後に、更なる標識化プローブ核酸として、後述する第7の実施例として記載するようなヌクレアーゼプロテクションアッセイに利用することも可能である。
従来の方法では、プローブ核酸の中間部位を標識化する場合には、高度な技術が必要とされている。また、中間部位が標識されたプローブ核酸の作製を専門業者に依頼した場合には、莫大な時間と費用が必要とされている。しかしながら、本発明の態様に従うと、ヌクレオチドの伸長反応を制御できるので、最終的に得られる更なるプローブ核酸の所望の中間位置を容易に標識化することが可能である。従って、ヌクレアーゼプロテクションアッセイに利用するためのプローブ核酸も短時間に効率よく作製することが可能である。
第7の実施例
ヌクレアーゼプロテクションアッセイへの利用
核酸分解酵素(nuclease)であるS1ヌクレアーゼは、1本鎖特異的エンドヌクレアーゼであり、DNAおよびRNAともに酸可溶性の5’−Pのヌクレオチドに分解し最終的には、全体の90%以上を5’−Pのヌクレオチドに分解する。また2本鎖中の1本鎖部分にも作用し、これを分解する酵素である。また、この酵素はDNA−DNAおよびDNA−RNAハイブリッド中の1本鎖部分の除去などによく用いられる。また、エキソヌクレアーゼIも、1本鎖特異的エクソヌクレアーゼであり、1本鎖DNAの3’端から順番に加水分解して5’−Pのヌクレオチドにする。これらの酵素は、PCR後のプライマーの除去などに用いられている(図4)。
ヌクレアーゼプロテクションアッセイ(Nuclease Protection Assay)は、固相化したプローブ核酸をあらかじめラベルをしておき、ハイブリダイゼーション後に1本鎖特異的ヌクレアーゼを反応させる解析方法である。例えば、ターゲット核酸とハイブリダイゼーションした2本鎖DNAは、このヌクレアーゼからプロテクションされるので標識が保護されるのに対し、未反応のプローブ核酸(例えば、1本鎖DNAなど)は分解されるので標識が遊離してしまう。従って、そのプロテクションされたプローブ核酸の標識量を、プローブ核酸に含まれる標識物質からの信号を検出することによって測定し、それによって遺伝子の発現頻度を測定する方法である(図5)。
このようなヌクレアーゼプロテクションアッセイを本発明の一部として変異解析のために利用することも可能である。例えば、第6の実施例に記載する方法により得た1本鎖標識化プロープ核酸を用いてヌクレアーゼプロテクションアッセイにより核酸を解析してもよい。また、第2から第5の実施例に記載する方法により得た2本鎖標識化プローブを第6の実施例に記載するような手段により1本鎖して得られた1本鎖標識化プローブ核酸を用いてもよい。また、そのようにして得られた1本鎖標識化プローブ核酸は、本発明の態様に従って得られたままで、即ち、基体に固相化されたままでヌクレアーゼプロテクションアッセイに利用してもよく、或いは基体から遊離させ回収して利用してもよい。更に、回収した後に生成した後に使用してもよい。
本発明の更なる態様を、図6の模式図を用いて説明する。まず、第6の実施の態様に記載した方法と同様に、蛍光強度の検出以前の段階まで、即ち、図6の6Aから6Dまでを行う。これにより、ヌクレアーゼプロテクションアッセイのための1本鎖標識化プローブ核酸が得られる(6D)。
次に、核酸配列の解析を行うべき試料を添加し、ハイブリダイゼーション可能な条件下で反応する。6Eに示すように、試料中に検出すべき標的核酸が存在する場合それらはハイブリダイズする。即ち、前記標的核酸を含むターゲット核酸87aおよび87bと標識化プローブ核酸86aおよび86bがそれぞれハイブリダイズする。その後、6Fに示すように、1本鎖特異的エンドヌクレアーゼを添加し、適切な条件下で反応する。その結果、ハイブリダイゼーションの生じなかった標識化ターゲット核酸86Cは分解される(6G)。続いて、反応部85内の容器をフローさせ、分解された核酸を除去し(6G)、蛍光強度を検出する(6H)。
本態様により使用されるヌクレオチドプロテクションアッセイの詳細な条件は、実施者によって、適宜決定されればよい。
ここに示した態様では、プローブ核酸の伸長および標識化から、ヌクレアーゼプロテクションアッセイまでを連続して行う例を示したが、これに限るものではなく、上述したプローブ核酸の伸長および標識化により得られた更なる伸長され標識されたプローブ核酸を、ヌクレアーゼプロテクションアッセイのための1本鎖標識化プローブ核酸として予め作成し、所望に応じてヌクレアーゼプロテクションアッセイに使用してもよい。
キャピラリー形状の反応容器を用いる場合の利点の1は、各種溶液を置換するだけで分注および洗浄方法から測定までの処理を自動化できる可能性が大きいことである。また、キャピラリー形状の反応容器の場合、そこに含まれる溶液を容易に置換することが可能であることも更なる利点である。
上述したような本発明の態様によって得られた標識化プローブ核酸を用いれば、ヌクレアーゼプロテクションアッセイは次のような利点を得ることが可能である。即ち、プローブ核酸を予め蛍光ラベルしておけるのでハイブリダイゼーション前のプローブ核酸の固相量を予め知ることが可能である。即ち、プローブ核酸の固相の量や点着スポットの状態を反応前に知ることが可能である。従って、プローブ核酸の固相の精度管理が可能である。また、試料としてmRNAを用いる場合には、従来の方法とは異なり、これを直接にハイブリダイゼーション反応させることが可能であるので、逆転写酵素でcDNAを作製したり標識化するなどの作業により生じる効率のロスを避ることが出来る。
第8の実施例
本発明の更なる側面に従うと、1プローブ核酸に対して、複数回、ターゲット核酸を含む被検試料を繰り返し処理することも可能である。
第1の実施例に記載した反応容器と同じ構成を有する反応容器1を使用し、本発明の態様に従い2回繰り返して処理する場合の例について、各工程における各分子の状態を模式的に示した図7を用いて説明する。
まず、プローブ核酸92を反応部95の底面94に固相化する。次に、反応部95に対して、第1のターゲット核酸91aと第1の蛍光標識化基質核酸93a(ここでは例として標識化dUTPを記載している)および非標識化基質核酸(図には示してないが、例えば、dCTP、dGTPおよびdATP)をハイブリダイズ可能な条件の下で加えハイブリダイゼーションを行う(7B)。続いて、ポリメラーゼを添加し、第1の標的部位(図7では「A」で示す)の次の塩基まで伸長反応を行う(7C)。
或いは、上記のハイブリダイゼーションの際に、蛍光標識化基質核酸93aおよび非標識化基質核酸は添加せずに、最初に、プローブ核酸92と第1のターゲット核酸91aとをハイブリダイズし、その後、両基質核酸とポリメラーゼを添加して伸長反応を行ってもよい。
ここで、所望の箇所、即ち、第1の標的部位の次の塩基で伸長反応を停止するためには、例えば、第1の標的部位の次の次の塩基に相補的な塩基からなるdNTPを添加しないという手段を用いればよい。
続いて、7Cに示すように、反応部95に、例えば、0.1×SSC溶液を満たした状態で95℃に温度を上昇させ、伸長されたプローブ核酸96aからターゲット核酸91aを解離させる。反応部95を具備するキャピラリー内に、例えば、0.1×SSC溶液などを注入し排出することによって内容液をフローして解離核酸を除去する。その結果、7Dに示すように、伸長され標識されたターゲット核酸96aが1本鎖として得られる。
続いて、7Eに示すような第2のターゲット核酸91bと第2の蛍光標識化基質核酸93b(ここでは例として標識化dATPを記載している)および非標識化基質核酸(図には示してないが、例えば、dCTP、dGTPおよびdUTP)をハイブリダイズ可能な条件の下で、伸長され標識されたターゲット核酸96aに対して加えハイブリダイゼーションを行う(7G)。続いて、ポリメラーゼを添加し、第2の標的部位(図7では「T」で示す)の次の塩基まで伸長反応を行う(7H)。続いて、更に伸長され標識された第2のプローブ核酸96bについて、第1の蛍光物質および第2の蛍光物質の蛍光強度を測定する(7H)。
或いは、上記のハイブリダイゼーションの際に、蛍光標識化基質核酸93bおよび非標識化基質核酸は添加せずに、最初に、プローブ核酸96aとターゲット核酸91bとをハイブリダイズし、その後、両基質核酸とポリメラーゼを添加して伸長反応を行ってもよい。
この態様においては、第2の標的部位の次の塩基まで伸長反応を行った例を示したが、それ以上伸長しても、第2の標的部位まで伸長することも可能である。
また、上記の例では、プローブ核酸の伸長において、第1の標的部位と第2の標的部位の間に1の塩基が配置される例を示したが、これに限定するものではなく、当該間に塩基が配置されなくとも、また2以上の塩基が配置されてもよい。
7Hに示すように、得られた伸長され標識されたプローブ核酸96bに含まれる第1の蛍光物質(図7では星印でしめす)と第2の蛍光物質(図7ではX印で示す)は、識別可能であることが望ましく、互いに異なる波長の蛍光を生じる物質であることが望ましい。また、検出される蛍光強度の違いによって、判定する場合や、使用する検出手段の選択によっては、必ずしも互いに異なる波長である必要はない。
また更に、得られた伸長され標識されたプローブ核酸96bを1本鎖に変性し、上述した方法の更なる繰り返しを行ってもよい。
本発明の態様に従うと、効率のよい遺伝子変異解析方法が提供される。
本発明の態様に従うと、反応容器内で、検出するべき標的部位を含むターゲット核酸とハイブリダイゼーションしたプローブ核酸についてのみ選択的に標識化することが可能である。従って、効率のよい遺伝子変異解析が可能であると共に、プローブ核酸の標識化を効率的に行うことも可能であり、且つ反応容器の製造コストも安価なものとなる。
本発明の態様に従うと、遺伝子の変異の解析を、煩雑な操作を必要とせずに行うことが可能である。
本発明の態様に従うと、標識化から発現頻度解析までの全ての処理を1つの容器内で一括して行うことが可能である。
2. 遺伝子の発現解析方法
2.1 遺伝子の発現解析方法の概要
本発明に従うと、被検核酸中の標的配列の存在を検出する方法が提供される。そのような被検核酸中の標的配列の存在を検出する方法の1態様を図8を用いて説明する。
まず、検出したい標的配列を有するターゲット核酸102を設定する。一方、前記標的配列に相補的な配列を有し、且つその配列の一部の塩基に標識物質を付与されたプローブ核酸101を準備する(8A)。次に、プローブ核酸101を反応部105の底面104に固相化する。プローブ核酸101を固相化された反応部105に被検核酸を添加し(8B)、適切なハイブリダイゼーションが可能な条件下で、それらを反応させる(8C)。ここで、被検核酸中に標的配列を有するターゲット核酸が存在すれば、ハイブリダイゼーションが生じ、2本鎖核酸が生じる。
続いて、1本鎖特異的ヌクレアーゼを添加し、適切な酵素反応が得られる条件下で反応を行う(8D)。その結果、1本鎖のままのプローブ核酸およびターゲット核酸などの当該反応系に存在する1本鎖核酸は当該酵素によって分解される。この酵素反応の後、反応系を洗浄し、そこに残った2本鎖核酸に含まれる標識物質からの信号を検出し、それによって被検核酸中に標的配列を有するターゲット核酸が存在することを検出する。
また、このとき、被検核酸を対象から採取した核酸を含む試料とし、上述の通りに検出を行うことによって、対象における遺伝子の発現頻度を解析する方法としても提供される。
本発明で利用されるヌクレオチドプロテクションアッセイにおいては、ヌクレアーゼによる分解反応中にヌクレアーゼを含む液体を流動させる工程を加えてもよい。この流動によって、ヌクレアーゼは固相化された多種類のターゲットに対応する標識化プローブ核酸に対して均質な分解作用をする。さらに、キャピラリーアレイのような流路の一方向にヌクレアーゼを含む溶液を連続的ないし断続的に流動させるようにすれば、分解反応と除去とを継続して実行することができるし、静止状態に起こるような酵素活性の低下も起こることなく活性状態を維持することができる。一方、本発明で利用されるヌクレオチドプロテクションアッセイにおいては、試料との反応前および反応後の両方の標識量を測定し、両方の標識量を比較することによって真の固相量に基づく反応量を正確に産出する工程を付加することもできる。
このような反応において使用される1本鎖特異的ヌクレアーゼは、核酸分解酵素(nuclease)であり、1本鎖の核酸を選択的に分解する酵素である。その1つであるS1ヌクレアーゼは、DNAおよびRNAともに酸可溶性の5’−Pのヌクレオチドに分解し最終的には、全体の90%以上を5’−Pのヌクレオチドに分解する酵素である(図4)。また、2本鎖中の1本鎖部分にも作用しこれを分解する。この酵素はDNA−DNAおよびDNA−RNAハイブリッド中の1本鎖部分の除去などによく用いられる。また、エキソヌクレアーゼIも、1本鎖特異的エクソヌクレアーゼであり、1本鎖DNAの3’端から順番に加水分解して5’−Pのヌクレオチドにする。従来、これらの酵素は、PCR後のプライマーの除去などに用いられている。
従来のヌクレアーゼプロテクションアッセイ(Nuclease Protection Assay)は、固相したプローブ核酸をあらかじめラベルをしておき、ハイブリダイゼーション後に1本鎖特異的ヌクレアーゼを反応させる解析方法である。例えば、ターゲット核酸とハイブリダイゼーションした2本鎖DNAは、このヌクレアーゼからプロテクションされるので標識が保護されるのに対し、未反応のプローブ核酸(例えば、1本鎖DNAなど)は分解されるので標識が遊離してしまう(図5)。従って、そのプロテクションされたプローブ核酸の標識量を、プローブ核酸に含まれる標識物質からの信号を検出することによって測定し、それによって遺伝子の発現頻度を測定する方法である。このような従来のプロテクションアッセイの例は、例えば、特表2000−512499(米国特許5,770,370の日本での公表公報)に記載されている。
前記文献に記載されるような従来の方法に比較して、本発明は以下のような効果を有する。本発明の態様に従うと、上述したような本方法は、好ましくは後述するような温度制御の可能なキャピラリー形状の反応部を具備する反応容器中で行われる。キャピラリー形状の反応部を具備する反応容器を使用することにより、反応前の操作(例えば、固相化や標識化)を同一のキャピラリーで実行することによって、効率的に全ての操作および反応を行うことが可能である。また、従来では必要であった煩雑な操作も不要になり、必要な試料の容量も微量ですむ。また、全ての反応について、小型の容器で一括して行うことが可能であるので自動化が可能である。また、本発明の態様に従うと、反応前のプローブの固相化の状態をモニターすることが可能である。更に、従来のDNAアレイで行われるような競合反応により解析を行うのと異なり、本発明の態様では、他検体同士での比較や、キャピラリー間での比較、また、プレート間での比較が可能である。また、逆転写酵素でcDNAを作成したり、ラベルする作用で生じる効率の低下などを回避することが可能である。
上述したように、本発明に従う発現解析方法は、図1に示すようなキャピラリー形状の反応部2を具備する反応容器1内において実施されることが好ましい。
本発明において使用される「対象」の語は、ヒト、サル、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラットおよびマウスを含む任意の哺乳動物、爬虫類、魚類および昆虫などの個体、並びに遺伝子を発現し得るその他の生物個体、並びに個体から採取した細胞および組織等であってもよい。
本発明において使用される「被検核酸」の語は、標的配列の存在の検出対象となる核酸である。被検核酸は、自然界に存在する如何なる核酸であっても、人工的に作られた核酸であってもよい。例えば、遺伝子の発現頻度を解析する場合には、一般的には対象において発現されるmRNAが被検核酸であってよい。
対象から被検核酸を得る工程はそれ自身公知の手段により行うことが可能であり、例えば、被検核酸がmRNAである場合には、例えば、市販のキットを使用しても、オリゴdTカラムを使用してもよい。しかしながら、これらの手段に限定されるのもではない。また、被検核酸は、対象から抽出された後に、それ自身公知の方法によって増幅されて本発明の態様に従う方法に供されてもよい。
また、標識されたプローブ核酸を得る場合に使用する「鋳型核酸」および「種プローブ核酸」もどのような核酸であってもよい。ここにおける「核酸」は、天然に存在する種々のDNAおよびRNA、並びにペプチド核酸、モルホリノ核酸、メチルフォスフォネート核酸およびS−オリゴ核酸などの人工的に合成された核酸類似体などであってもよく、その塩基配列および修飾の有無などは任意に選択すればよい。
本発明において使用される「標的配列」の語は、検出されるべき塩基配列を示す。ここで使用される「ターゲット核酸」の語は、検出されるべき塩基配列、標的配列を含む核酸を示す。
本発明において使用される「プローブ核酸」の語は、標的配列を検出するための核酸を示し、標的配列に相補的な塩基配列をその一部に含む核酸である。また、ここで使用される「標識化プローブ核酸」の語は、その配列の一部分の塩基に標識物質が付与されている核酸を示す。本発明の態様に従うプローブ核酸は、その5’末端を介して基体に固相化されている。プローブ核酸の固相化は、従来公知の何れかの基体に対して所望のプローブ核酸を固定することによって行うことが可能である。
本発明の態様に従って使用され得る「基体」は、そこにおいてハイブリダイゼーション反応を行うことが可能な形態であればよい。例えば、一般的に使用される反応容器、例えば、キャピラリー形状またはウェル形状のそこにおいて反応を行うための反応部を有した反応容器であっても、その面において反応を行うような板状および球状の基体であってもよい。あるいは、「基体」が、針、糸(ストランド)、繊維(ファイバ)、円錐(ディスク)、多孔質フィルタであってもよい。処理の容易さから、キャピラリー形状の反応部を有した反応容器が好ましい。
キャピラリー形状の反応部を有した反応容器の場合、例えば、シリコン基板またはガラス基板などの基体に、幅および厚さ約10〜約50μmで形成された溝によりキャピラリー形状の反応部が形成されてもよい。また、1反応容器に具備されるキャピラリー形状の反応部は、例えば、キャピラリー間隔約50μmで1反応容器に約50〜約100本/cmの本数で具備されてもよい。また、各々のキャピラリーは反応温度に素早く到達できるような構成であることが好ましい。
本発明において使用される「標識物質」の語は、検出可能な信号を生じることが可能な物質をいい、例えば、蛍光物質、放射性物質および化学発光物質などであってよい。また、酵素反応などで発色する基質を用いてもよい。また、異なる部位に存在する複数の核酸を標的配列として検出する場合や、複数のプローブ核酸を1つの基体において同時に用いる場合など、所望に応じて識別可能な複数の標識物質を同時に使用してもよい。
本発明の方法において使用される1本鎖特異的ヌクレアーゼは、1本鎖核酸を分解することが可能な酵素であればよい。そのような酵素は、それ自身公知の何れの酵素を使用してよく、例えば、S1ヌクレアーゼおよびエクソヌクレアーゼIなどを使用することが可能である。
2.2 標識化プローブ核酸の調製方法
本発明では、プローブ核酸の所望の部位に対して標識物質を付与する際に使用されるそれ自身公知の何れの手段も、本発明において使用される「標識化プローブ核酸」を調製する際に使用してよい。また、以下において説明する標識化プローブ核酸の調製方法を、上述の遺伝子発現解析方法で使用される「標識化プローブ核酸」を調製する際に使用してもよい。以下、図9を用いて「標識化プローブ核酸」を調製する方法を説明する。
先ず最初に、鋳型捕獲用配列を有する種プローブ核酸122を、その5’末端を介して反応部125の底面124に固相化する。次に、鋳型核酸121を反応部125に添加し、適切なハイブリダイゼーションが得られる条件、例えば、厳格な(ストリンジェンシーな)条件、で反応を行う。ここで、鋳型核酸121は、その3’端側に鋳型捕獲用配列に相補的な配列aを、配列aの5’側の隣りに被標識配列bを、更に被標識配列bの5’側の隣りに伸長配列cを含む(9A)。このような構成によって、鋳型核酸121は、種プローブ核酸122に対してハイブリダイズする。図9には、被標識配列bが「A」即ちアデニンである場合を示す。
ハイブリダイゼーションの後に、ハイブリダイゼーションに使われなかった鋳型核酸121を除去する。
続いて、反応部125に対して、検出可能な信号を生ずる標識物質を付された特定の1種類の塩基を含む標識化デオキシヌクレオシド三リン酸123と、伸長配列cに相補的な塩基を含む非標識化デオキシヌクレオシド三リン酸127および128と、ポリメラーゼとを反応部に添加し、適切な伸長反応が得られる条件下で伸長反応を行う(9D)。伸長反応終了後、伸長反応に使用されなかった基質を除去する。その後、得られた2本鎖を変性し、鋳型核酸121を除去する。それにより標識されたプローブ核酸126が得られる。得られた標識されたプローブ核酸126は、反応部125に固相化されたままの状態で使用しても、回収してから使用していよい。
また、上述の例では、ハイブリダイゼーションおよび伸長反応の後に、反応に供されなかった物質を除去している。しかしながらこれらの除去は必ずしも行う必要はない。
ここで、鋳型核酸の長さは、目的とする標識されたプローブ核酸の長さに応じて変更すればよい。例えば、鋳型核酸の長さは10塩基から1000塩基でよく、好ましくは15塩基から200塩基であればよい。
種プローブ核酸の長さは、10塩基から50塩基でよく、好ましくは15塩基から30塩基であればよい。また、上記の例では被標識配列がアデニンの例を示したが、これに限定するものではなく、シトシン、ウラシル、チミン、グアニン何れであってもよい。
伸長配列は、種プローブ核酸に標識化基質が取り込まれた後に、続いて取り込まれる非標識化基質の種類および長さを決定する配列である。従って、実施者が任意に選択することが可能である。しかしながら必ずしも伸長配列が存在する必要はなく、伸長配列が存在しない場合には、標識化基質が種プローブ核酸の末端に存在する。伸長配列の長さは、1塩基から50塩基であればよく、好ましくは1塩基から10塩基である。
本発明に従うと、以下の[1]〜[6]に記載の態様も本発明として好ましく提供される。
[1] 以下の工程により得られる標識化プローブ核酸:
(1)種プローブ核酸に対して、適切なハイブリダイゼーション可能な条件下で、前記種プローブ核酸に相補的な相補配列と、この相補配列の5’側に存在する被標識配列と、この被標識配列の5’側に存在する伸長配列とを含む鋳型核酸を反応させる工程と、
(2)前記被標識配列の塩基に相補的な塩基を含み、且つ標識物質を付与された標識化基質核酸と、前記伸長配列に含まれる塩基に相補的な塩基を具備する基質核酸と、ポリメラーゼの存在する条件下で、前記種プローブ核酸を伸長する工程と、
(3)前記(2)の工程で得られた2本鎖を解離することにより、1本鎖の標識化プローブ核酸を得る工程。
[2] 以下の工程により得られる標識化プローブ核酸:
(1)第1の種プローブ核酸に対して、適切なハイブリダイゼーション可能な条件下で、前記第1の種プローブ核酸に相補的な第1の相補配列と、この第1の相補的配列の5’側に存在する第1の被標識配列と、第1の被標識配列の5’側に存在する第1の伸長配列とを含む鋳型核酸を反応させる工程と、
(2)前記第1の被標識配列の塩基に相補的な塩基を含み、且つ標識物質を付与された第1の標識化基質核酸と、前記第1の伸長配列に含まれる塩基に相補的な塩基を具備する非標識基質核酸と、ポリメラーゼとの存在する条件下で、前記(1)の工程で得られた2本鎖に含まれる前記第1の種プローブ核酸を伸長する工程と、
(3)前記(2)の工程における伸長の後に、当該2本鎖を解離することにより、第2の種プローブ核酸を得る工程と、
(4)前記(3)で得られた第2の種プローブ核酸に対して、適切なハイブリダイゼーション可能な条件下で、前記第2の種プローブ核酸の3’側の一部の配列に相補的な第2の相補的配列と、この第2の相補的配列の5’側に存在する第2の被標識配列と、第2の被標識配列の5’側に存在する第2の伸長配列とを含む鋳型核酸を反応させる工程と、
(5)前記第2の被標識配列の塩基に相補的な塩基を含んでおり標識物質を付与された第2の標識化基質核酸と、前記第2の伸長配列に含まれる塩基に相補的な塩基を具備する非標識基質核酸と、ポリメラーゼとの存在する条件下で、前記(4)の工程で得られた2本鎖に含まれる前記第2の種プローブ核酸を伸長する工程と、
(6)前記(5)の工程における伸長の後に、当該2本鎖を解離することによって1本鎖として標識化プローブ核酸を得る工程。
[3] 前記(6)の工程で得られた標識化プローブ核酸を種プローブ核酸として用いて、前記(4)の工程から(6)の工程を任意の回数だけ繰り返すことにより得られることを特徴とする上記[2]に記載の標識化プローブ核酸。
[4] 前記種プローブ核酸がその5’末端を介して基体に固相化されていることを特徴とする上記[1]から[3]の何れか1に記載の標識化プローブ核酸。
[5] 上記[1]から[4]の何れか1に記載の標識化プローブ核酸を用いることを特徴とし、以下の工程を含む、被検核酸中の標的配列の存在を検出する方法;
(1)そこにおいて反応を行うことが可能な流路に固相化され、標識物質を付加された標識化プローブ核酸に、適切なハイブリダイゼーション可能な条件下で被検核酸を反応させる工程と、
(2)前記(1)の工程の後に、1本鎖特異的ヌクレアーゼを前記流路に添加して、適切な酵素反応を得られる条件下で反応を行う工程と、
(3)前記(2)の工程の後に、前記流路から酵素反応の分解産物を除去する工程と、
(4)前記流路内の2本鎖核酸に含まれる標識物質からの信号を検出する工程と、
(5)前記(4)の工程において検出された信号を基に、被検核酸中の標的配列の存在を検出する工程。
[6] 上記[5]に記載の(1)の工程において使用される標識物質を付加された標識化プローブ核酸が、以下の工程により製造されることを特徴とする、上記[5]に記載の被検核酸中の標的配列の存在を検出する方法:
(i)種プローブ核酸に相補的な相補配列と、この相補配列の5’側に存在する被標識配列と、この被標識配列の5’側に存在する伸長配列とを含む鋳型核酸を、適切なハイブリダイゼーション可能な条件下で、種プローブ核酸に対して反応させる工程と、
(ii)前記被標識配列の塩基に相補的な塩基を含み、且つ標識物質を付与された標識化基質核酸と、前記伸長配列に含まれる塩基に相補的な塩基を具備する基質核酸と、ポリメラーゼの存在する条件下で、前記種プローブ核酸を伸長する工程と、
(iii)前記(ii)の工程で得られた2本鎖を解離することにより、1本鎖の標識化プローブ核酸を得る工程。
2.3 実施例
本発明の遺伝子の発現解析方法は、上述の第1および第2の実施例で記載される反応容器に、検出したい標的配列に相補的な配列を含む標識化プローブ核酸を固相化して行うことができる。
第9の実施例:ヌクレアーゼプロテクションアッセイ1
本発明の態様に従う被検核酸中の標的配列の存在を検出方法の例を図10を用いて説明する。
それ自身公知の何れかの手段により、所望する部分に対して標識物質を付与されたプローブ核酸を準備する。このような標識化プローブ核酸を第1の実施例に示す反応容器と同様の反応容器の底面に固相化する(10D)。
例えば、これに限定されるものではないが、種プローブ核酸162aから162cを反応容器の反応部165の底面164に固相化し(10A)、鋳型核酸161aから161cと、蛍光標識化基質核酸163(ここでは例として標識化dUTPを記載している)および非標識化基質核酸(図には示してないが、例えば、dCTP、dGTPおよびdATP)をハイブリダイズ可能な条件の下で加えてハイブリダイゼーションを行い(10B)、ポリメラーゼを添加して所望の塩基まで伸長反応を行い、更に加熱しながらまたは加熱後にフローを行って一本鎖とし(10C)、所望する標識化プローブ核酸166aから166cを合成してもよい(10D)。また、ここでは、ハイブリダイゼーション時に蛍光標識化および非標識化基質核酸を存在させたが、ハイブリダイズ終了後のポリメラーゼ添加と共に蛍光標識化および非標識化基質核酸を添加してもよい。
次に、核酸配列の解析を行うべき試料を添加し、ハイブリダイゼーション可能な条件下で反応する。10Eに示すように、試料中に検出すべき標的核酸が存在する場合、ハイブリダイゼーションが生じる。ここで示す例は、前記標的配列を含むターゲット核酸167aおよび167bとプローブ核酸166aおよび166bが、それぞれにハイブリダイズしている(10E)。
その後、1本鎖特異的ヌクレアーゼを添加し、適切な条件下で反応する(10F)。その結果、ハイブリダイゼーションの生じなかった1本鎖のプローブ核酸166cは分解される(10G)。次に、反応部165内の内容物をフローさせ、分解された核酸を除去する(10G)。続いて、反応部165について蛍光強度を検出する(10H)。
本態様により使用されるヌクレオチドプロテクションアッセイの詳細な条件は、実施者によって、適宜決定されてよい。
ここに示した態様では、種プローブ核酸の伸長および標識化から、ヌクレアーゼプロテクションアッセイまでを連続して行う例を示したが、これに限るものではない。予め、上述した種プローブ核酸の伸長および標識化により得られた、更なる伸長され標識されたプローブ核酸を、ヌクレアーゼプロテクションアッセイのための1本鎖標識化プローブ核酸として作成しておき、所望の時期にヌクレアーゼプロテクションアッセイに使用してもよい。また、他のそれ自身公知の方法によって所望の位置に標識を付与した1本鎖標識化プローブ核酸を使用してもよい。
上述したような本発明の態様に従う標識化プローブ核酸を用いれば、ヌクレアーゼプロテクションアッセイを次のような有利点をもって行うことが可能である。即ち、プローブ核酸を予め蛍光ラベルしておけるので、ハイブリダイゼーション前に、予めプローブ核酸の固相量を知ることが可能である。即ち、固相化されたプローブ核酸量や点着スポットの状態を反応前に把握することが可能である。それによって、プローブ核酸の固相について精度管理を行うことが可能になる。また、試料としてmRNAを用いる場合には、従来の方法とは異なり、これを直接にハイブリダイゼーション反応させることが可能であるので、逆転写酵素でcDNAを作製したり標識化するなどの作業により生じる効率のロスを回避することが可能である。
キャピラリー形状の反応容器を用いる場合の利点の1は、各種溶液を置換するだけで分注および洗浄方法から測定までの処理を行えるため、装置を自動化できる可能性が大きいことである。また、キャピラリー形状の反応容器の場合、そこに含まれる溶液の置換も容易である。
第10の実施例:ヌクレアーゼプロテクションアッセイ2
まず、第1の実施例と同様の方法により反応容器を形成した。第1の基板に、ガラス板に長さ3〜4cm、幅1mm、高さ0.1〜0.2mmの溝を形成し、この溝の両端にそれぞれ貫通孔を形成した。第2の基板は、ストレプトアビジンコートスライド(株式会社グライナー・ジャパン)である。
ストレプトアビジンコートスライド((株)グライナー・ジャパン社製)に対して、5’端をビオチン標識し、且つ3’端から10番目のTをCy3標識したPRH−HPRT1M.BD{biotin−GGGGGCTATAAATTCTTTGC(T−Cy3)GACCTGCTG(配列番号4)}を10nMで点着装置を用いてスポッティングした。これによりビオチン−アビジン反応でプローブ核酸が固相化された。続いて、第1の基板と第2の基板を接合した。
上述のようにして作成した反応容器に前記溝によって形成されたキャピラリー内に、ターゲット核酸として10nMのPRH−HRRT1RV.0(CAGCAGGTCAGCAAAGAATTTATAGCCCCC(配列番号5))を添加した。このとき、溶媒としては1×SSC溶液(0.15MのNaCl、0.015Mのクエン酸ナトリウム)を使用した。これを42℃で1時間ハイブリダイズした。ハイブリダイゼーション後、1×SSC溶液で十分に洗浄し、未反応のターゲット核酸を当該キャピラリーから除去した。次に、S1ヌクレアーゼ溶液(30mMの酢酸ナトリウム(pH4.6)、280mMのNaCl、1mMのZnSOの緩衝液中)をキャピラリー内に添加し、37℃で1時間反応した。反応後、0.1×SSCで十分に洗浄し、未反応物質を除去して蛍光強度を測定した。表3にPRH−HPRT1RV.0ターゲット核酸を濃度10nMで存在させた場合と、当該ターゲット核酸を存在させなかった場合に得られる蛍光強度を相対的に示した。

表3中の蛍光強度は、一番強い蛍光強度を1とした場合の相対値である。表から分かるように、本態様に従う方法によると、定量的にターゲット核酸の検出を行うことが可能である。
本発明の態様に従うと、反応容器内で、標的配列を有するターゲット核酸にハイブリダイズしたプローブ核酸についてのみ、その標識物質からの信号が選択的に検出される。従って、効率のよい遺伝子発現頻度解析が可能である。
本発明の態様に従うと、遺伝子の発現頻度の解析を、煩雑な操作を必要とせずに行うことが可能である。また、本発明の態様に従うと、標識化から発現頻度解析までの全ての処理を1つの容器内で一括して行うことが可能である。
本発明に従う遺伝子の発現頻度の解析は、従来の解析方法のような競合反応ではないので、他検体などについて検出を行った反応容器との間で比較をすることができる。即ち、複数の反応容器間(例えば、キャピラリー間や、プレート間など)での比較が可能である。
また、プローブ核酸の固相状況を把握することが可能であるので、プローブ核酸の固相量や、点着スポットの状態を反応前に把握することが可能である。従って、プローブ固相の精度管理が可能である。
第11の実施例:標識化プローブの製造1
上述のような第1の実施例に示すような反応容器を用いて、次の実験を行った。
前記キャピラリー内に、鋳型核酸として前記RV核酸の配列に相補的なRVcomp target(tgcacatggtcatagctgtttcc;配列番号2)を100nM(1×SSC溶液中)の濃度で添加し、37℃で1時間、ハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後、1×SSC溶液(以下の組成である;0.15MのNaCl、0.015Mのクエン酸ナトリウム、pH7.0)で十分に洗浄して、未反応の鋳型核酸をキャピラリー内から取り除いた。次に0.02mLの伸長反応溶液[10mMのTris−HCl(pH7.5)、7mMのMgCl、0.1mMのDDT、Klenow Fragment(DNA ポリメラーゼI,Large Fragment;TOYOBO)を0.4ユニット/μL、10μMのdATP、10μMのdCTP、10μMのdGTP、および10μMのCy3−dUTPを含む]を前記キャピラリー内に添加し37℃で1〜2時間反応させた。反応後、0.1×SSCで十分に洗浄して未反応物を取り除き蛍光を測定した(表4)。
表4は、種プローブ核酸の基体への点着量を10nMまたは1nMとした場合に、Klenow Fragmentを添加ありの場合と添加なしとした場合に得られる蛍光強度を示す表である。表中の蛍光強度は、一番強い蛍光強度を1としたときの相対値である。

表4に示すように、伸長反応中にKlenow Fragmentを存在させなかった場合には、相対値は非常に低かった。従って、種プローブ核酸への標識核酸の結合が非特異的なものではなく、ポリメラーゼによる伸長であることが確認できた。また、種プローブ核酸の点着量の増加に依存して、相対的蛍光強度も増加した。
このような反応により生じる現象を、図9に模式的に示した。本反応では、9Aに示すように、鋳型核酸121として5’末端をビオチン標識したRV核酸(ggaaacagctatgaccatg;配列番号1)121を、プローブ核酸122としてRVcomp target(tgcacatggtcatagctgtttcc;配列番号2)を使用した。また、被標識配列bはそこに存在する塩基をAとし、それに相補的な塩基を含む標識化基質核酸としては蛍光標識した塩基U23を用いた(9A)。本明細書において、各略語はそれぞれ、「A」はアデニン、「U」はウラシル、「T」はチミン、「G」はグアニン、「C」はシトシンである。また、本明細書において例として挙げる塩基は、記載の便宜上、例として挙げているに過ぎないので、それらの塩基に限定するものではない。
また、鋳型核酸121は、捕獲用配列aを含み、且つその捕獲用配列aの5’側に被標識配列bを含む。この捕獲用配列aによって、種プローブ核酸122とのハイブリダイゼーションが達成される。続く、種プローブ核酸122の3’端の伸長は、鋳型核酸121の捕獲用配列aよりも5’側の配列を鋳型として達成される。更に、その鋳型核酸121の捕獲用配列aよりも5’側に含まれる被標識配列bの塩基に対して、標識化基質123がハイブリダイズして取り込まれることによって、標識化が達成される。
ここでは1塩基の被標識配列を用いた例を示したが、被標識配列は1塩基のみを含むものに限らず、連続した複数の塩基を含んでいてもよく、または断続的な複数の塩基であってもよい。
このようなプローブ核酸の標識化は、上述のようにキャピラリー形状の反応容器を使用すると、必要とされる試料および試薬の量が微量でよいという効果が得られる。
以上のような本発明の態様に従うと、プローブ核酸の標識化を容易に行うことが可能である。本態様に従うと、所望する特定の配列を有するプローブ核酸の特定の塩基を選択的に標識することが可能であり、これによって、被検試料中に含まれる被検核酸に標的配列が存在するか否かを判定することが可能である。それにより、遺伝子の発現頻度を解析することが可能である。また、上述のような方法により標識化したプローブ核酸も本発明の範囲内である。
第12の実施例:標識化プローブ核酸の製造方法2
第1の実施例に記載した反応容器を用いて、伸長反応液を変更したこと以外は第11の実施例に記載の方法と同様に標識化プローブ核酸を作成した。
第11の実施例において使用した伸長反応液に変えて、次の伸長反応液{10mMのTris−HCl(pH7.5)、7mMのMgCl、0.1mMのDDT、Klenow Fragment(DNA ポリメラーゼI,Large Fragment;TOYOBO)を0.4ユニット/μL、10μMのdATP、10μMのdCTP、0μMのdGTPまたは10μMのddGTP、および10μMのCy3−dUTPを含む}を用い、他の条件は第11の実施例の記載と同様にして標識化プローブ核酸を作成した。
その反応の結果、0μMのdGTPを用いた場合には、種プローブであるRV核酸はその3’端からCy3−Uまで伸長された。即ち、その後のG、CおよびAは伸長されなかった。また、10μMのddGTPを用いた場合には、RV核酸はその3’端からGまで伸長された。即ち、その後のC、Aは伸長されなかった。
表5は、種プローブ核酸の基体への点着量を10nMと1nMとし、且つKlenow Fragmentを添加ありの場合と添加なしの場合について、一番強い蛍光強度を1としたときの相対値を示す。

表5に示すように、伸長反応中にKlenow Fragmentを存在させなかった場合には、相対値は非常に低かった。従って、種プローブ核酸への標識基質核酸の結合が非特異的なものではなく、ポリメラーゼによる伸長であることが確認できた。また、種プローブ核酸の点着量の増加に依存して、相対的蛍光強度も増加した。
本発明は、鋳型核酸とハイブリダイズした種プローブ核酸のみを標識化することが可能である。また、鋳型捕獲用配列にハイブリダイズするべき標識化基質核酸以外の基質核酸を、それ以降伸長反応できないようなヌクレオチド(例えば、ddNTPなど)にすれば、或いは反応系に存在させないようにすれば、種プローブ核酸の標識量および伸長程度を制御することができる。
また、種プローブ核酸に取り込まれる標識物質の量は、鋳型核酸の量に依存する。従って鋳型核酸として試料中の被検核酸を使用すれば、特定の条件において発現された核酸の情報を反映した標識化プローブ核酸を作成することが可能である。また、そのような場合には、鋳型核酸の量は、その核酸の発現頻度に依存して変化するので、標識化プローブ核酸を作成すると同時に、鋳型核酸として用いられた標的核酸についての遺伝子発現頻度も同時に測定することも可能である。このような遺伝子発現頻度解析方法は、微量な試料で行うことが可能である。即ち、全ての処理を小型の容器内で、一連の処理として行うことが可能であるので、核酸基質(例えば、dNTPなど)の量および必要な試薬の量を低減することが可能であり、また、多検体について短時間に解析することも可能である。
第13の実施例:標識化プローブ核酸の製造方法3
第13の実施例を模式図である図11を用いて説明する。本例では、それぞれに配列の異なる第1の種プローブ核酸132a、第2の種プローブ核酸132b、および第3の種プローブ核酸132cを反応部の底部134に固相化した以外は第1の実施例と同様に作成した反応容器を使用する。また、11Aでは、それぞれの鋳型核酸131a〜131cに含まれる被標識配列は便宜上「A」として示した。
本発明に従う標識化プローブ核酸の作成は、以下のように行うことも可能である。先ず、11Bに示すように鋳型核酸131a〜131cを種プロープ核酸132a〜132cに対してハイブリダイズし、次に、11Cに示すように標識化基質核酸133を基質として用いて伸長反応する(11B〜11C)。続いて、反応部135について、例えば、約95℃に温度を上昇させ(11C)、伸長したプローブ核酸136から鋳型核酸131を解離させ、反応部135を具備するキャピラリー内に0.1×SSC溶液などの緩衝液を注入し、排出することによって内容液をフローさせる。それにより、解離したターゲット核酸を除去し、伸長され標識されたプローブ核酸136aから136cを1本鎖として得る(11D)。
上記の態様では、2本鎖核酸の解離手段として熱処理を行っているが、本発明の態様に従って使用可能な2本鎖核酸の解離手段は、これに限定するものではない。即ち、それ自体公知の一般的に2本鎖核酸を1本鎖に解離する場合に使用される手段であれば何れの手段であってよい。例えば、アルカリ溶液、尿素またはホルムアミド等を用いてもよい。
また、鋳型核酸がRNAであり、プローブ核酸がDNAである場合、1本鎖への解離は、前記RNAを分解するような酵素、例えば、RNAaseHなどを用いて行ってもよい。
上記では3種類の種プローブ核酸と鋳型核酸の例を示したが、これ以上またはこれ以下の種類の種プローブ核酸および/または鋳型核酸を用いてもよく、また、各種類の核酸を1以上で用いてもよい。
本発明の態様に従うと、上述した第9の実施例から第13の実施例に記載した方法の一部分を所望に応じて組み合わせて実行しても、また、所望に応じて一部を変更して実施してもよい。
従来の方法では、プローブ核酸の中間部位を標識化する場合には、高度な技術が必要とされている。また、中間部位が標識されたプローブ核酸の作製を専門業者に依頼した場合には、莫大な時間と費用が必要とされている。それに対して、本発明の態様に従うと、ヌクレオチドの伸長反応を制御できる。従って、最終的に得られる更なる標識されたプローブ核酸の所望の中間位置を容易に標識化することが可能である。それにより、ヌクレアーゼプロテクションアッセイに利用するためのプローブ核酸も短時間に効率よく作製することが可能である。
第14の実施例:標識化プローブ核酸の製造方法4
本発明の更なる側面に従うと、1種プローブ核酸に対して、複数回繰り返して異なる種類の鋳型核酸をハイブリさせて伸長処理することも可能である。
第1の実施例に記載する反応容器と同様な反応容器を使用し、本発明の態様に従い標識を2回繰り返して行う場合の例を図12を用いて説明する。
まず、第1の鋳型核酸141と種プローブ核酸142と蛍光標識基質核酸143aを用意する(12A)。次に、種プローブ核酸142を反応部145の底面144に固相化する(12B)。次に、反応部145に対して、第1の鋳型核酸141aと第1の蛍光標識化基質核酸143a(ここでは例として標識化dUTPを記載している)および非標識化基質核酸(図には示してないが、例えば、dCTP、dGTPおよびdATP)をハイブリダイズ可能な条件の下で加えてハイブリダイゼーションを行う(12B)。続いて、ポリメラーゼを添加し、第1の被標識配列(図12では「A」で示す)の次の塩基まで伸長反応を行う(12C)。
ここで、所望の箇所、即ち、第1の被標識配列の次の塩基で伸長反応を停止するためには、第1の被標識配列の次の次の塩基に相補的な塩基からなるdNTPを添加しないでおけばよい。或いは第1の被標識配列の次の塩基に相補的な塩基からなる基質をddNTPにしてもよい。
また、上記では、蛍光標識基質核酸143aと非標識化基質核酸の添加をハイブリダイゼーションに先駆けて添加しているが、蛍光標識基質核酸143aと非標識化基質核酸の添加はハイブリダイゼーションの後に、ポリメラーゼの添加と同時またはその前後に行ってよい。
続いて、12Cに示すように、反応部145に、例えば、0.1×SSC溶液を満たした状態で95℃に温度を上昇させ、伸長されたプローブ核酸146aから鋳型核酸141aを解離させる。反応部145を具備するキャピラリー内に、例えば、0.1×SSC溶液などを注入し排出することによって内容液をフローして解離核酸を除去する。その結果、12Dに示すように、伸長され標識されたプローブ核酸146aが1本鎖として得られる(図12)。
続いて、12Eに示すような第2の鋳型核酸142bと第2の蛍光標識化基質核酸143b(ここでは例として標識化dATPを記載している)および非標識化基質核酸(図には示してないが、例えば、dCTP、dGTPおよびdUTP)をハイブリダイズ可能な条件の下で加えハイブリダイゼーションを行う(12G)。続いて、ポリメラーゼを添加し、第2の被標識配列(図12では「T」で示す)の次の塩基まで伸長反応を行う(12H)。更に、鋳型核酸142bを解離させ、1本鎖を得る。
また、上記では、ハイブリダイズに先駆けて第2の蛍光標識基質核酸143bと非標識化基質核酸を添加しているが、ハイブリダイズの後で、ポリメラーゼの添加と同時、またはその前後に添加してもよい。
この態様においては、第2の被標識配列の次の塩基まで伸長反応を行った例を示したが、それ以上伸長しても、第2の標的配列までで伸長を止めてもよい。
また、上記の例では、種プローブ核酸の伸長において、第1の被標識配列と第2の被標識配列の間に1の塩基が配置される例を示したが、これに限定するものではなく、当該間に塩基が配置されなくとも、また2以上の塩基が配置されてもよい。
12Hに示すように、得られた第2の伸長され標識されたプローブ核酸146bに含まれる第1の蛍光物質(図12では星印でしめす)と第2の蛍光物質(図12ではX印で示す)は、識別可能であることが望ましく、互いに異なる波長の蛍光を生じる物質であることが望ましい。しかしながら、検出される蛍光強度の違いによって判定する場合や、使用する検出手段の選択の仕方によっては、必ずしも互いに異なる波長である必要はない。
また更に、得られた第2の伸長され標識されたプローブ核酸146bを更に1本鎖に変性し、上述した方法を更に繰り返してもよい。
以下に、具体的な1例を挙げて更に説明する。
まず、第1の実施例に記載の反応容器と同様な反応容器を用いて、ハイブリダイゼーション可能な条件下で第1の種プローブ核酸と第1の鋳型核酸とのハイブリダイゼーションを行う。続いて伸長反応溶液を{10mMのTris−HCl(pH7.5)、7mMのMgCl、0.1mMのDDT、Klenow Fragment(DNA ポリメラーゼI,Large Fragment;TOYOBO)を0.4ユニット/μL、10μMのdATP、10μMのdCTP、0μMのdGTP、および10μMのCy3−dUTPを含む}を用いることを除き、第11の実施例に記載の方法と同様の方法により伸長反応を行う。
このハイブリダイゼーションと伸長反応によって、第1の鋳型核酸の存在およびその配列情報が第1のプローブ核酸の伸長および標識化に反映される。即ち、第1の種プローブ核酸にハイブリダイズした第1の鋳型核酸を鋳型として、第1の種プローブ核酸が伸長され、Cy3−Uが取り込まれ、Gの手前まで伸長される。その結果、第1の鋳型核酸にハイブリダイズした第1の伸長され標識されたプローブ核酸が得られる。
次に、温度を約95℃に上昇させることにより、第1の伸長され標識されたプローブ核酸から第1の鋳型核酸を解離する。更に、反応部に含まれる溶液をフローすることにより、遊離した第1の鋳型核酸を除去する。
続いて、第2の鋳型核酸をハイブリダイゼーション可能な条件下においてハイブリダイズさせ、伸長反応溶液を{10mMのTris−HCl(pH7.5)、7mMのMgCl、0.1mMのDDT、Klenow Fragment(DNA ポリメラーゼI,Large Fragment;TOYOBO)を0.4ユニット/μL、10μMのCy5−dATP、0μMのdCTP、10μMのdGTP、および10μMのdTTPを含む}を用いることを除いて第11の実施例に記載の方法と同様の方法により伸長反応を行う。
上記の反応により、第2の鋳型核酸の存在が反映され、第2の鋳型核酸と第1の伸長され標識されたプローブ核酸とのハイブリダイゼーションが生じ、続いて、更なる伸長および標識化が生じ、第2の伸長され標識されたプローブ核酸が得られる。第2の伸長され標識されたプローブ核酸は、Cy5−Aで標識化され、Cの手前まで伸長される。
次に、得られた2本鎖を変性して1本鎖にすることにより、標識されたプローブ核酸を得ることが可能である。この標識されたプローブ核酸は、所望によっては基板から回収して使用してもよい。
ここで、Cy3とCy5の蛍光強度をそれぞれにまたは相対的に測定することによって、使用した第1の鋳型核酸と第2の鋳型核酸の量または相対量を測定することも可能である。
以上のような本発明の態様に従うと、複数のハイブリダイゼーションおよび標識化に関する全ての処理が、小型の容器内で、一括して、即ち、一連の操作によって行うことが可能である。従って、少ない試料で、所望する遺伝子発現頻度解析を短時間に、簡便に行うことが可能である。また、プローブ核酸の伸長の程度を制御でき、また、所望のプローブ核酸を伸長していく途中の所望の部位に容易に標識を行うことが可能である。
第15の実施例:標識化プローブ核酸の製造方法5
本発明の態様に従い使用され得る種プローブ核酸と鋳型核酸とがハイブリダイズした場合の状態の例を、図13の13Aから13Dまでに模式的に示す。
上述した通り、種プローブ核酸151は、反応部の底部152にその5’末端を介して固相化されている。
13Aに示すように、鋳型核酸153の全長は、種プローブ核酸151の全長よりも長いことが好ましい。それにより、鋳型核酸153と鋳型核酸151がハイブリダイズした際に、その長さの違いから生じる鋳型核酸153の1本鎖の部分を鋳型として、種プローブ核酸151の3’末端が伸長される。また、このとき被標識配列は鋳型核酸153の1本鎖の部分の最も3’よりに存在することが好ましい。
また、13Aおよび13Cに示すように、種プローブ核酸151の全長に相補的な配列を、鋳型核酸153が含み、その上で、更に余分な配列が鋳型核酸の5’側に含まれるようにしてもよい。
或いは、13Bおよび13Dに示すように、種プローブ核酸51の一部に相補的な配列を鋳型核酸153の3’側が含み、更に余分な配列を鋳型核酸153の5’側に含むように設計してもよい。
また、13Aおよび13Bに示すように、被標識配列として1ヌクレオチドが1箇所に設定されてもよく、13Cおよび13Dに示すように、被標識配列として1ヌクレオチドが2箇所以上で設定されてもよい。
上述のまた、上述の第11の実施例から第15の実施例までの何れかにより得られる標識化プローブ核酸を、上述の第9の実施例および第10の実施例において用いて、同様にアッセイしてもよい。第11の実施例から第15の実施例により得られた1本鎖標識化プローブ核酸は、基体に固相化されたままでヌクレアーゼプロテクションアッセイに利用されてもよく、或いは基体から遊離させ回収した後に利用してもよい。また、回収して、更に精製した後で使用してもよい。
上述したような本発明の態様によって得られた標識化プローブ核酸を用いれば、ヌクレアーゼプロテクションアッセイを次のような有利点をもって行うことが可能である。即ち、プローブ核酸を予め蛍光ラベルしておけるので、ハイブリダイゼーション前に、予めプローブ核酸の固相量を知ることが可能である。即ち、固相化されたプローブ核酸量や点着スポットの状態を反応前に把握することが可能である。それによって、プローブ核酸の固相について精度管理を行うことが可能になる。また、試料としてmRNAを用いる場合には、従来の方法とは異なり、これを直接にハイブリダイゼーション反応させることが可能であるので、逆転写酵素でcDNAを作製したり標識化するなどの作業により生じる効率のロスを回避することが可能である。
上述のような本発明によって、効率のよい遺伝子発現頻度解析方法が提供された。また、上述のような本発明によって、複数のプレート間での比較が可能な遺伝子発現頻度解析方法が提供された。更に、上述のような本発明によって、検出精度のよい遺伝子発現頻度解析方法が提供された。
3. 標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法
3.1 標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法の概要
上記2.2の欄で説明した「標識化プローブ核酸の調製方法」は、別の側面に従えば、標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法ということもできる。以下、標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法について詳説する。当該方法により作成される標識プローブ核酸を固相化した支持体は、核酸を用いた種々の解析、例えば遺伝子の発現解析等に有用である。とりわけ、上記2.1の欄で説明した「ヌクレアーゼプロテクションアッセイを利用した遺伝子の発現解析方法」に有用である。
標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法について、第一から第三の実施の形態を例に説明する。
第一の実施の形態
本発明の第一の実施の形態に係る方法は、
標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法であって、
(1)作成したい標識プローブ核酸の塩基配列に相補的な鋳型核酸と、前記鋳型核酸の塩基の総数より少なく、作成したい標識プローブ核酸の3’端の1以上のヌクレオチドが欠損している未標識プローブ核酸前駆体であって、その5’端で支持体に固相化されている未標識プローブ核酸前駆体とを、これらがハイブリダイズ可能な条件下で、反応させる工程と、
(2)検出可能な信号を生ずる標識物質を付された、特定塩基の標識ヌクレオチドと、前記特定塩基以外の他の塩基の非標識ヌクレオチドとを基質として用いて、前記未標識プローブ核酸前駆体の欠損部分を、前記鋳型核酸を鋳型として、5’から3’方向に向かって伸長させ、標識プローブ核酸を合成する工程と、
(3)前記工程により得られた標識プローブ核酸と、前記鋳型核酸との間の相補的結合をすべて解離させる工程と、
(4)解離された前記鋳型核酸を支持体上から除去する工程と
を含む。
第一の実施の形態では、支持体上に作成される各標識プローブ核酸は、その3’側に標識ヌクレオチドが導入される。
以下、各工程について、図14を参照しながら順に説明する。
[工程(1)]
工程(1)の反応により、図14(a)に模式的に示す状態が作成される。
まず、目的とする解析に応じて、支持体上に作成する標識プローブ核酸の塩基配列をデザインする。一般に標識プローブ核酸の長さは、15〜50塩基とすることができる。
デザインされた標識プローブ核酸の塩基配列に基いて、「鋳型核酸202」および「未標識プローブ核酸前駆体203」を調製する。
ここで、「鋳型核酸202」および「未標識プローブ核酸前駆体203」は、それぞれ、DNAを構成するデオキシリボヌクレオチド(dATP、dTTP、dGTP、dCTP)、RNAを構成するリボヌクレオチド(ATP、UTP、GTP、CTP)、その他dUTP等のヌクレオチドから構成され得る。
「鋳型核酸202」は、作成したい標識プローブ核酸に相補的な配列を有するように調製される。一方、「未標識プローブ核酸前駆体203」は、「鋳型核酸」の塩基の総数より少なく、作成したい標識プローブ核酸の3’端の1以上のヌクレオチドが欠損するように調製される。この欠損部分に、後の工程で標識ヌクレオチドが少なくとも一つ導入される。ここで、欠損させるヌクレオチドの数は、好ましくは2〜10個とすることができる。欠損させるヌクレオチドの数を好ましくは2以上とした理由は、標識プローブ核酸の3’端のヌクレオチドに標識が取込まれることを、標識の安定性の観点から避けるためである。また、欠損させるヌクレオチドの数を好ましくは10以下とした理由は、取込まれる標識ヌクレオチドの数を制限するためである。
欠損させるヌクレオチドの数は、作成したい標識プローブ核酸の3’端側の塩基配列と、欠損部分に後の工程で導入する標識ヌクレオチドの塩基の種類とを考慮して決定する。例えば、作成したい標識プローブ核酸が、その3’端からAACUACAUUA・・・という配列を有し、欠損部分に導入する標識ヌクレオチドがCy5−dUTPである場合、「未標識プローブ核酸前駆体」は、作成したい標識プローブ核酸の3’端から4〜7のヌクレオチドを欠損させることができる。この場合、標識ヌクレオチドCy5−dUTPは、欠損部分に一つだけ導入されることになる。このように、「未標識プローブ核酸前駆体」に一つの標識ヌクレオチドのみが導入されるように、欠損させるヌクレオチドの数を制御すれば、DNAアレイ上のすべての標識プローブを同じ標識物質の量で均一に標識することが可能である。
「未標識プローブ核酸前駆体203」は、その5’端で支持体201に固相化されている(図14(a))。本発明の方法において「支持体201」は、そこにおいてハイブリダイゼーション反応を行うことが可能な形態であればよい。例えば、一般的に使用される反応容器、例えば、キャピラリー形状またはウェル形状のそこにおいて反応を行うための反応部を有した反応容器であっても、その面において反応を行うような板状および球状の支持体であってもよい。あるいは、「支持体」が、針、糸(ストランド)、繊維(ファイバ)、円錐(ディスク)、多孔質フィルタであってもよい。キャピラリー形状の反応部を有した反応容器(以下、キャピラリーアレイともいう)は、反応部内の溶液を置換することが容易であるため好ましく使用される。キャピラリーアレイの具体的な説明については、上述の第1および第2の実施例の記載を参照することができる。ここで用いた「支持体」の用語は、上記「基体」と同じ意味を有する。
「未標識プローブ核酸前駆体203」の支持体への固相化は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、核酸の固相化は、後述の実施例のようにアビジンコートされた支持体と、ビオチン標識された5’端を有する核酸とを用いてビオチンアビジン反応により行ってもよいし、あるいは、反応基を導入した支持体と、該反応基と反応性を有する反応基を5’端に有する核酸とを用いて化学結合により行ってもよい。
工程(1)において、「鋳型核酸202」と、支持体201上に固相された「未標識プローブ核酸前駆体203」とがハイブリダイズされた状態が作成される(図14(a)参照)。ここでのハイブリダイゼーションは、「鋳型核酸」と、支持体上に固相されていない「未標識プローブ核酸前駆体」とをハイブリダイズさせた後に、支持体上に固相してもよいし、「鋳型核酸」と、支持体上に予め固相した「未標識プローブ核酸前駆体」とをハイブリダイズさせてもよい。
「ハイブリダイズ可能な条件下で反応させる」とは、例えば適切なハイブリダイゼーション溶液(1×SSC)中で、25〜70℃で(または95℃で5分間ののち徐冷して25〜70℃で)5〜60分間静置させることをいう。
[工程(2)]
工程(2)において、「未標識プローブ核酸前駆体203」の欠損部分(すなわち3’側)が、「鋳型核酸202」を鋳型とした伸長反応により修復されるとともに、「未標識プローブ核酸前駆体203」に標識ヌクレオチド204が導入される(図14(b)参照)。
ここでの伸長反応には、その基質として、「検出可能な信号を生ずる標識物質を付された、特定塩基の標識ヌクレオチド4」と、「当該特定の塩基以外の他の各塩基の非標識ヌクレオチド5」とが使用される。ここで「標識物質」とは、検出可能な信号を生じることが可能な物質をいい、例えば蛍光物質、放射性物質、化学発光物質等であり得る。「特定塩基の標識ヌクレオチド」として、1種類の塩基の標識ヌクレオチドを使用し、「当該特定塩基以外の他の塩基の非標識ヌクレオチド」として、他の3種類の塩基の各ヌクレオチドを使用することができる。ただし、これに限定されず、複数種類の塩基のヌクレオチドを標識ヌクレオチドとして使用してもよい。あるいは、後述の第二の実施の形態に記載されるとおり、ある種類の塩基のヌクレオチドを基質として使用しなくてもよい。例えば「標識ヌクレオチド」として、Cy5−dUTPを用い、「非標識ヌクレオチド」として、dATP、dCTPおよびdGTPを使用することができる。
伸長反応溶液は、上述の基質となるヌクレオチド、伸長反応酵素(T4 DNA polymerase)、Tris buffer、Mg2+を含む公知の溶液を使用することができる。伸長反応は、例えば25〜70℃で5〜120分間行う。
「標識ヌクレオチド」として、Cy5−dUTPを用いる場合、「未標識プローブ核酸前駆体」の欠損部分に、当該伸長反応により少なくとも1つのCy5−dUTPが導入されるように、「未標識プローブ核酸前駆体」の欠損部分のヌクレオチド数を設計することが必要である。すなわち、伸長反応の際に鋳型となる「鋳型核酸」の部分に、dATPが少なくとも1つ存在していなければ、Cy5−dUTPは導入されないため、Cy5−dUTPが導入されるように「未標識プローブ核酸前駆体」の欠損部分のヌクレオチド数を設計する必要がある。
好ましくは、「標識ヌクレオチド」としてCy5−dUTPを用いる場合、「未標識プローブ核酸前駆体」の欠損部分に、当該伸長反応により「1つの」Cy5−dUTPが導入されるように、「未標識プローブ核酸前駆体」の欠損部分のヌクレオチド数を設計する。支持体上のすべての「未標識プローブ核酸前駆体」の欠損部分のヌクレオチド数を、当該伸長反応により1つのCy5−dUTPが導入されるように設計しておくと、すべてのプローブ核酸1分子に対して、均一に1つのCy5−dUTPを導入することができる。これにより、支持体上のすべてのプローブ核酸を、1回の伸長反応により、均一な標識量で標識することが可能になる。
ただし、第一の実施の形態において、作成された標識プローブ核酸の3’端のヌクレオチドに標識が取込まれるようにすることは、標識の安定性の面から望ましくない。
[工程(3)]
工程(3)において、工程(2)の伸長反応により作成された「標識プローブ核酸」と、「鋳型核酸」との間の相補的結合をすべて解離させる(図14(c)参照)。
ここでの解離は、後述の実施例のように支持体上の伸長反応溶液を、0.1N NaOH溶液に置換し、当該溶液中で5〜10分間室温で反応させることにより行ってもよいし、90〜98℃で5〜10分間維持し、熱処理を施すことにより行ってもよい。
[工程(4)]
工程(4)において、工程(3)で解離された「鋳型核酸」等を支持体上から除去し、標識プローブ核酸が固相化された支持体を作成する。ここでの除去は、緩衝液、オートクレーブ水等を用いた洗浄により行うことができる。
以上第一の実施の形態で説明したとおり、支持体上のプローブ核酸前駆体の3’端のヌクレオチドを幾つか欠損させておくことにより、プローブ核酸の3’側に標識を付与することが可能である。これを支持体上に複数の標識プローブ核酸を作成する際に適用して、支持体上のすべてのプローブ核酸前駆体の3’端のヌクレオチドを幾つか欠損させておけば、支持体上のすべてのプローブ核酸を一回の伸長反応で標識することが可能である。
また、本発明の方法は、支持体上のすべてのプローブ核酸前駆体の欠損部分を、導入する標識ヌクレオチドの塩基の種類に応じて、1つの標識ヌクレオチドのみが導入されるように設計しておくことにより、支持体上のすべてのプローブ核酸に対して、それぞれ均一な標識量の標識を導入することができる。
これにより、支持体上のすべてのプローブ核酸を、1回の伸長反応により、均一に標識することが可能になる。このように、1回の伸長反応で、支持体上のすべてのプローブ核酸を標識できるという点において本発明は簡便であり、加えて、欠損部分のヌクレオチド数を制御することにより、核酸プローブに導入する標識物質の量を制御できるという点において優れている。
第二の実施の形態
本発明の第二の実施の形態に係る方法は、第一の実施の形態に係る方法と基本的には同じであるが、以下の点を特徴とする。すなわち、第二の実施の形態に係る方法は、欠損部分の伸長反応に使用するための「特定塩基の標識ヌクレオチド」が、1種類の塩基の標識ヌクレオチドであり、欠損部分の伸長反応に使用するための「前記特定塩基以外の他の塩基の非標識ヌクレオチド」の少なくとも1種類が、ジデオキシヌクレオチドであるか、あるいは存在しないことを特徴とする。
このように第二の実施の形態に係る方法は、上記特徴以外、第一の実施の形態に係る方法と同様であるため、各工程の詳細については、上記第一の実施の形態の工程の各説明を参照されたい。第二の実施の形態の概要を、図15に模式的に示す。
第二の実施の形態では、まず、「鋳型核酸202」と、支持体201上に固相された「未標識プローブ核酸前駆体203」とがハイブリダイズされた状態が作成される(図15(a)参照)。次いで、「未標識プローブ核酸前駆体203」の欠損部分(すなわち3’側)が、「鋳型核酸202」を鋳型とした伸長反応により修復されるとともに、「未標識プローブ核酸前駆体203」に標識ヌクレオチド204が導入される(図15(b)参照)。
ここで、「非標識ヌクレオチド」として、ジデオキシヌクレオチド7を用いることにより、ジデオキシヌクレオチドが欠損部分に導入された後の伸長反応を停止させることができる。「標識ヌクレオチド204」として、Cy5−dUTPを用いた場合、「ジデオキシヌクレオチド207」として、ddATP、ddCTP、ddGTPの少なくとも1つを用いることができる。例えば、「未標識プローブ核酸前駆体」がその3’端からUUAACUAという配列を欠損しており、欠損部分に導入する標識ヌクレオチドがCy5−dUTPである場合、ddCTPを「非標識ヌクレオチド」として使用して、伸長反応を途中で停止させることができる。ここでは、ddCTPを用いることにより、伸長反応の際にCy5−dUTPが3分子取込まれないで1分子取込まれることになる。
あるいは、塩基がシトシンのヌクレオチド(dCTP、ddCTP)を伸長反応の際に存在させないことにより、伸長反応を途中で停止させることもできる。
伸長反応の後、伸長反応により作成された「標識プローブ核酸」と、「鋳型核酸」との間の相補的結合をすべて解離させる(図15(c)参照)。
第二の実施の形態では、ジデオキシヌクレオチドを用いたり、特定塩基のヌクレオチドを使用しないことにより、伸長反応を停止させる。このように特定塩基のジデオキシヌクレオチドの使用もしくは特定塩基のヌクレオチドの除去により、プローブ核酸への標識物質の導入量を制御することができる。
第三の実施の形態
本発明の第三の実施の形態に係る方法は、
標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法であって、
(1)作成したい標識プローブ核酸の塩基配列に相補的な鋳型核酸と、前記鋳型核酸の塩基の総数より少なく、作成したい標識プローブ核酸の中間部分においてヌクレオチドが一部欠損している未標識プローブ核酸前駆体であって、その5’端で支持体に固相化されている未標識プローブ核酸前駆体とを、これらがハイブリダイズ可能な条件下で、反応させる工程と、
(2)検出可能な信号を生ずる標識物質を付された、特定塩基の標識ヌクレオチドと、前記特定塩基以外の他の塩基の非標識ヌクレオチドとを基質として用いて、前記未標識プローブ核酸前駆体の欠損部分を、前記鋳型核酸を鋳型として、5’から3’方向に向かって伸長させ、標識プローブ核酸を合成する工程と、
(3)前記工程により得られた標識プローブ核酸と、前記鋳型核酸との間の相補的結合をすべて解離させる工程と、
(4)解離された前記鋳型核酸を支持体上から除去する工程と
を含む。
第三の実施の形態では、支持体上に作成される各標識プローブ核酸は、その中間部分(例えば中央部分)に標識ヌクレオチドが導入される。この点を除いて、第三の実施の形態は、第一の実施の形態と同様である。
従って、以下、各工程について図16を参照しながら順に説明するが、各工程(1)〜(4)の詳細については、第一の実施の形態の工程(1)〜(4)の各説明も適宜参照されたい。
[工程(1)]
工程(1)の反応により、図16(a)に模式的に示す状態が作成される。
第一の実施の形態と同様、目的とする解析に応じて、支持体上に作成する標識プローブ核酸の塩基配列をデザインする。「鋳型核酸202」は、作成したい標識プローブ核酸に相補的な配列を有するように調製される。一方、「未標識プローブ核酸前駆体203aおよび203b」は、その総塩基数において、「鋳型核酸」の塩基数より少なく、作成したい標識プローブ核酸の中間部分においてヌクレオチドが一部欠損するように調製される。
本実施の形態では、「未標識プローブ核酸前駆体」は、図16(a)に示すとおり、作成したい標識プローブ核酸の中間部分においてヌクレオチドを一部欠損しているため、欠損部分により分断された2つの「未標識プローブ核酸前駆体203aおよび203b」から構成される。2つの「未標識プローブ核酸前駆体203aおよび203b」を、図16では、それぞれ「未標識プローブ核酸前駆体A」、「未標識プローブ核酸前駆体B」と称する。「未標識プローブ核酸前駆体A」、「未標識プローブ核酸前駆体B」は、それぞれ単独で、「鋳型核酸」にハイブリダイズすることができる長さであることが必要である。よって、「未標識プローブ核酸前駆体A」および「未標識プローブ核酸前駆体B」は、それぞれ少なくとも6ヌクレオチド以上の長さを有し、好ましくは10〜15ヌクレオチドの長さを有する。このようにある程度の長さを有する2つの「未標識プローブ核酸前駆体」の間に欠損部分を作成するため、「中間部分」は、必然的に、作成したい標識核酸プローブの中央部分になる。
ここで、欠損させるヌクレオチドの数は、一般に1〜15個、好ましくは5〜10個とすることができる。欠損させるヌクレオチドの位置およびその数は、作成したい標識プローブ核酸の塩基配列と、欠損させた領域に後の工程で導入する標識ヌクレオチドの塩基の種類とを考慮して決定する。例えば、欠損させた領域に導入する標識ヌクレオチドがCy5−dUTPである場合、欠損させるヌクレオチドの位置は、dUTPが導入されるべき位置を含んでいなければならない。また、欠損させるヌクレオチドの数は、作成したい標識プローブ核酸の中央部分においてその塩基配列がUである部分の前後1〜5個とすることができる。ここで、欠損させた領域に標識ヌクレオチドCy5−dUTPが一つだけ導入されるように欠損部分を選定すれば、支持体上のすべてのプローブ核酸に均一な標識量で標識を導入することができる。
工程(1)では、第一の実施の形態と同様にして、「鋳型核酸」と、支持体上に固相された「未標識プローブ核酸前駆体」とがハイブリダイズされた状態が作成される(図16(a)参照)。
[工程(2)]
工程(2)において、「未標識プローブ核酸前駆体」の欠損部分(すなわち中間部分)が、「鋳型核酸」を鋳型とした伸長反応により修復されるとともに、「未標識プローブ核酸前駆体A」と「未標識プローブ核酸B」の間に標識ヌクレオチド204が導入される(図16(b)参照)。ここでは第一の実施の形態と同様にして、伸長反応を5’から3’方向へと行う。ただし、第三の実施の形態では、伸長された最後のヌクレオチドの3’端と「未標識プローブ核酸前駆体B」(図16の符号203b)の5’端との間に切れ目(ニック)が存在し、伸長反応だけで標識核酸プローブは完全な1本鎖ではない。よって、伸長反応の後、好ましくはライゲーション反応を行う必要がある。ライゲーション反応は、ライゲース酵素を含む緩衝液中で14〜37℃で30〜120分行うことができる。
工程(3)および(4)については、第一の実施の形態と同様にして行い、標識プローブ核酸が固相された支持体を作成する。
以上第三の実施の形態で説明したとおり、支持体上のプローブ核酸前駆体の中間部分のヌクレオチドを欠損させておくことにより、プローブ核酸の中間部分に標識を付与することが可能である。第三の実施の形態では、プローブ核酸の中間部分に標識を付与するため、中間部分の種々の任意の位置を欠損部分として選定することができる。この点において第三の実施の形態は、欠損部分がプローブ核酸の3’端に限定される第一の実施の形態に比べて、導入する標識ヌクレオチドの数を制御しやすいという点で優れている。また、プローブ核酸の中間部分に標識ヌクレオチドが入っていることは、標識が安定している点でも優れている。
従来の方法では、プローブ核酸の中間部分を標識化する場合には、高度な技術が必要とされていた。また、中間部位が標識されたプローブ核酸の作製を専門業者に依頼した場合には、莫大な時間と費用が必要とされていた。それに対して、本実施の形態に従うと、プローブ核酸の所望の中間位置を容易に標識化することが可能である。
3.2 実施例
第16の実施例
第16の実施例では、「未標識プローブ核酸前駆体」の3’端を、標識dUTPを用いて伸長し、「標識プローブ核酸」を作成した。
本実施例では、「未標識プローブ核酸前駆体」として、5’−biotin−TATAAATTCTTTGCTGACCTGCTGGATTAC−3’(配列番号6)を用い、「鋳型核酸」として、5’−TTGATGTAATCCAGCAGGTCAGCAAAGAATTTATA−3’(配列番号7)を用いた。
基板であるストレプトアビジンコートスライド((株)グライナー・ジャパン)において、5’端にビオチンを結合した20nM「未標識プローブ核酸前駆体」と、20nM「鋳型核酸」とを、等量10μLずつ1×SSC溶液(30μL)中で混合し、37℃で1時間反応させた。反応によりハイブリダイズした「未標識プローブ核酸前駆体」と「鋳型核酸」を、点着装置を用いて、ビオチンとアビジンとの反応により基板上に固相化した。
基板上の未反応物を洗浄により除去した後、キャピラリーを形成可能な溝を有するキャピラリーカバーを基板上にかぶせ、核酸分子が固相化されたキャピラリーアレイを作成した。ここで、キャピラリーカバーは、両端に溶液を出し入れできる穴を有し、長さ3〜4cm。幅1mm、深さ0.1〜0.2mmのキャピラリーを形成可能なものを使用した。
次いで、以下の成分からなる伸長反応溶液をキャピラリー内に入れ、37℃で1〜2時間反応させた:10mM Tris−HCl(pH7.5)、7mM MgCl、0.1mM DTT、0.4units/μL Klenow Fragment(DNA polymerase I Large Fragment;TOYOBO)、10μM dATP、10μM dCTP、10μM dGTP、10μM Cy5−dUTP。伸長反応により、基板上の「未標識プローブ核酸前駆体」は、その3’端を、dATP→Cy5−dUTP→dCTP→dATP→dATPと伸長し、「標識プローブ核酸」が作成される。
反応後、0.1×SSCでキャピラリー内の未反応物を十分洗浄することにより除去した。次いで、0.1N NaOHのアルカリ溶液をキャピラリー内に導入し、室温で5分間反応させ、「鋳型核酸」を「標識プローブ核酸」から解離した。解離された「鋳型核酸」を洗浄によりキャピラリー内から除去し、「標識プローブ核酸」が固相されたキャピラリーアレイを作成した。
表6は、以上の方法で固相された「標識プローブ核酸」の蛍光強度を100とし、「鋳型核酸」なしで同様の工程を経た場合(ネガティブコントロール)の蛍光強度をその相対値により示す。

また、図17は、以上の方法で固相された「標識プローブ核酸」と「ネガティブコントロール」の蛍光顕微鏡写真を示す。図17において、「(1)ネガティブコントロール」は、蛍光が観察されず、固相された「(2)標識プローブ核酸」は、蛍光が観察されている。
表6および図17の結果は、本発明の方法により、標識されたプローブ核酸が基板上に作成可能であることを示す。
第17の実施例
第17の実施例では、第16の実施例と同様、「未標識プローブ核酸前駆体」の3’端を、標識d−UTPを用いて伸長し、「標識プローブ核酸」を作成した。第17の実施例では、標識d−UTPを導入する伸長反応の際に、10μM dCTPの代わりに0μM dCTPもしくは10μM ddCTPを用いて伸長反応を途中で停止させた点において第16の実施例と異なる。
第16の実施例で使用した伸長反応溶液を、以下の成分に変えた以外、第16の実施例と同様にして、「標識プローブ核酸」が固相されたキャピラリーアレイを作成した。すなわち、第17の実施例では、以下の成分の伸長反応溶液を使用した:10mM Tris−HCl(pH7.5)、7mM MgCl、0.1mM DTT、0.4units/μL Klenow Fragment(DNA polymerase I Large Fragment;TOYOBO)、10μM dATP、0μM dCTPまたは10μM ddCTP、10μM dGTP、10μM Cy5−dUTP。
伸長反応のための基質ヌクレオチドとして、0μM dCTPを用いた場合、伸長反応により、基板上の「未標識プローブ核酸前駆体」は、その3’端を、dATP→Cy5−dUTPと伸長し、反応は停止する。一方、伸長反応のための基質ヌクレオチドとして、10μM ddCTPを用いた場合、dATP→Cy5−dUTP→ddCTPと伸長し、反応は停止する。この結果、「標識プローブ核酸」が作成される。
表7は、以上の方法で固相された「標識プローブ核酸」の蛍光強度を100とし、「鋳型核酸」なしで同様の工程を経た場合(ネガティブコントロール)の蛍光強度をその相対値により示す。

表7の結果は、本発明の方法により、標識されたプローブ核酸が基板上に作成可能であることを示す。
第18の実施例
第18の実施例では、「未標識プローブ核酸前駆体」の中央付近に位置する欠損部分を、標識dUTPを用いて伸長し、「標識プローブ核酸」を作成した。
本実施例では、図16に示すとおり、「未標識プローブ核酸前駆体」として、2つのオリゴヌクレオチド、すなわち「未標識プローブ核酸前駆体A」:5’−biotin−CAGCAGGTCAGCAAAGAATTT−3’(配列番号8)と「未標識プローブ核酸前駆体B」:5’−AGCCCCCCTTGAGCACACAGAGGGCTA−3’(配列番号9)を使用した。また、「鋳型核酸」として、5’−TAGCCCTCTGTGTGCTCAAGGGGGGCTATAAATTCTTTGCTGACCTGCTG(配列番号10)を使用した。
基板であるストレプトアビジンコートスライド((株)グライナー・ジャパン)上において、20nMの「未標識プローブ核酸前駆体A」と、20nMの「未標識プローブ核酸前駆体B」と、20nMの「鋳型核酸」とを、等量10μLずつ1×SSC溶液(30μL)中で混合し、37℃で1時間反応させた。反応によりハイブリダイズした「未標識プローブ核酸前駆体」と「鋳型核酸」を、点着装置を用いて、ビオチンとアビジンとの反応により基板上に固相化した。
基板上の未反応物を洗浄により除去した後、キャピラリーを形成可能な溝を有するキャピラリーカバーを基板上にかぶせ、核酸分子が固相化されたキャピラリーアレイを作成した。ここで、キャピラリーカバーは、両端に溶液を出し入れできる穴を有し、長さ3〜4cm。幅1mm、深さ0.1〜0.2mmのキャピラリーを形成可能なものを使用した。
次いで、以下の成分からなる伸長反応溶液をキャピラリー内に入れ、37℃で1〜2時間反応させた:10mM Tris−HCl(pH7.5)、7mM MgCl、0.1mM DTT、0.4units/μL Klenow Fragment(DNA polymerase I Large Fragment;TOYOBO)、10μM dATP、10μM dCTP、10μM dGTP、10μM Cy5−dUTP。伸長反応により、基板上の「未標識プローブ核酸前駆体A」は、その3’端を、dATP→Cy5−dUTPと伸長する。その後、「未標識プローブ核酸前駆体A」の3’端のCy5−dUTPと、「未標識プローブ核酸前駆体B」の5’端のdATPとの間の切れ目(ニック)をリガーゼにより連結した。具体的には、66mM Tris−HCl(pH7.6)、6.6mM MgCl、10mM DTT、0.1mM ATP、100units T4 DNA ligase溶液で、16℃、1時間反応させることにより連結した。これにより、「標識プローブ核酸」が作成される。
反応後、0.1×SSCでキャピラリー内の未反応物を十分洗浄することにより除去した。次いで、0.1N NaOHのアルカリ溶液をキャピラリー内に導入し、室温で5分間反応させ、「鋳型核酸」を「標識プローブ核酸」から解離した。解離された「鋳型核酸」を洗浄によりキャピラリー内から除去し、「標識プローブ核酸」が固相されたキャピラリーアレイを作成した。
表8は、以上の方法で固相された「標識プローブ核酸」の蛍光強度を100とし、「鋳型核酸」なしで同様の工程を経た場合(ネガティブコントロール)の蛍光強度をその相対値により示す。

表8の結果は、本発明の方法により、標識されたプローブ核酸が基板上に作成可能であることを示す。
以上説明したとおり、本発明の方法に従って作成された、標識プローブ核酸が固相された支持体は、当該標識プローブ核酸を用いた種々の解析、例えば遺伝子の発現解析等に利用することが可能である。
支持体上のプローブ核酸を標識する本発明の方法は、以下に記載の点で優れており、試料を標識する場合にみられた問題点を解決し得るものである。
まず、本発明の方法は、試料を標識しないので試料が分解する心配がない。また、本発明の方法は、支持体上のすべてのプローブ核酸に対して、1回の伸長反応により一括して標識を付与することができる点で簡便である。
また、アレイ上のデザインされた既知の配列を有するプローブを標識するため、標識物質を導入する位置および標識効率を制御可能である。すなわち、本発明の方法は、プローブ核酸の中間部分の任意のヌクレオチドに標識物質を導入することができるため、その後の検出反応の際に標識が離脱することのない安定な標識プローブを作成することが可能である。加えて、本発明の方法は、プローブ核酸の特定のヌクレオチドに標識物質を導入することができるため、支持体上のすべてのプローブに対して均一な量の標識物質を導入することができる。このようにプローブを均一な標識量で標識することにより、試料への不均一な標識しかできなかった従来と比較して、標識量に左右されない信頼性のある測定結果を得ることが可能になる。
更に、本発明に従って標識プローブを固相したアレイを準備することにより、発現解析の自動化が可能である。その上、遺伝子の発現量を、他のサンプルとの競合的ハイブリダイゼーションで測定するのではなく、単一サンプルの遺伝子発現量の絶対値として測定することができる。加えて、アレイ上のプローブを標識することは、反応前のプローブが標識されているため、その固相化状態をモニターすることが可能であり、これは解析精度を管理する上で望ましい。
【配列表】



【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット核酸の標的部位の塩基を決定する方法であって、以下の工程を具備する方法;
(1)前記ターゲット核酸の標的部位に隣接する3’側の塩基配列に相補的な選択用配列を含み、且つその5’末端を介して基体に固相化されているプローブ核酸と、核酸試料とを、適切なハイブリダイゼーションを得るための条件にある反応系において反応させる工程と、
(2)適切な伸長反応を得るための条件において、検出可能な信号を生ずる標識物質を付された特定の1種類の塩基を含む標識化デオキシヌクレオシド三リン酸と、ポリメラーゼとの存在下で、前記(1)の工程で得られた反応産物を伸長する工程と、
(3)前記(2)の伸長する工程において、当該伸長反応に使用されなかった標識化デオキシヌクレオシド三リン酸を当該反応系から除去する工程と、
(4)前記(3)の工程の後で、当該反応系に存在する前記標識物質由来の信号を検出する工程と、
(5)前記(4)の工程における当該信号の検出の有無と、前記標識化デオキシヌクレオシド三リン酸に含まれる塩基の種類から、標的部位の塩基を決定する工程。
【請求項2】
ターゲット核酸の標的部位の塩基を決定する方法であって、以下の工程を具備する方法;
(1)ターゲット核酸の標的部位に隣接する3’側の塩基配列に相補的な選択用配列を含み、且つその5’末端を介して基体に固相化されているプローブ核酸と、核酸試料とを、適切なハイブリダイゼーションを得るための条件にある第1の反応系と第2の反応系において夫々に反応させる工程と、
(2)前記(1)の工程を行った第1の反応系に含まれる反応産物について、適切な伸長反応を得るための条件下で、検出可能な信号を生ずる標識物質を付された第1の塩基を含む標識化デオキシヌクレオシド三リン酸と、ポリメラーゼとを用いて、伸長反応を行う工程と、
(3)前記(1)の工程を行った第2の反応系に含まれる反応産物について、適切な伸長反応を得るための条件下で、検出可能な信号を生ずる標識物質を付された基質としての第2の塩基を含む標識化デオキシヌクレオシド三リン酸と、ポリメラーゼとを用いて、伸長反応を行う工程と、
(4)前記(2)および(3)の伸長反応を行う工程において、当該伸長反応に使用されなかった標識化デオキシヌクレオシド三リン酸を各反応系から除去する工程と、
(5)前記(3)の工程の後で、第1の反応系と第2の反応系に存在する前記標識物質由来の信号を夫々検出する工程と、
(6)前記(5)の工程において検出された信号の有無と、前記標識化デオキシヌクレオシド三リン酸に含まれる塩基の種類から、標的部位の塩基を決定する工程。
【請求項3】
ターゲット核酸の標的部位の塩基を決定する方法であって、以下の工程を具備する方法;
(1)ターゲット核酸の標的部位に隣接する3’側の塩基配列に相補的な選択用配列を含み、且つその5’末端を介して基体に固相化されているプローブ核酸と、核酸試料とを、適切なハイブリダイゼーションを得るための条件にある第1の反応系、第2の反応系、第3の反応系および第4の反応系において夫々に反応させる工程と、
(2)前記(1)の工程を行った第1の反応系に含まれる反応産物について、適切な伸長反応を得るための条件下で、検出可能な信号を生ずる標識物質を付された第1の塩基を含む標識化デオキシヌクレオシド三リン酸と、ポリメラーゼとを用いて、伸長反応を行う工程と、
(3)前記(1)の工程を行った第2の反応系に含まれる反応産物について、適切な伸長反応を得るための条件下で、検出可能な信号を生ずる標識物質を付された基質としての第2の塩基を含む標識化デオキシヌクレオシド三リン酸と、ポリメラーゼとを用いて、伸長反応を行う工程と、
(4)前記(1)の工程を行った第3の反応系に含まれる反応産物について、適切な伸長反応を得るための条件下で、検出可能な信号を生ずる標識物質を付された基質としての第3の塩基を含む標識化デオキシヌクレオシド三リン酸と、ポリメラーゼとを用いて、伸長反応を行う工程と、
(5)前記(1)の工程を行った第4の反応系に含まれる反応産物について、適切な伸長反応を得るための条件下で、検出可能な信号を生ずる標識物質を付された基質としての第4の塩基を含む標識化デオキシヌクレオシド三リン酸と、ポリメラーゼとを用いて、伸長反応を行う工程と、
(6)前記(2)および(3)の伸長反応を行う工程において、当該伸長反応に使用されなかった標識化デオキシヌクレオシド三リン酸を各反応系から除去する工程と、
(5)前記(3)の工程の後で、第1の反応系、第2の反応系、第3の反応系および第4の反応系に存在する前記標識物質由来の信号を夫々に検出する工程と、
(6)前記(5)の工程において検出された信号の有無と、前記標識化デオキシヌクレオシド三リン酸に含まれる塩基の種類から、標的部位の塩基を決定する工程。
【請求項4】
ターゲット核酸の標的部位の塩基を決定する方法であって、以下の工程を具備する方法;
(1)前記ターゲットの標的部位に隣接する3’側の塩基配列に相補的な選択用配列を含み、且つその5’末端を介して基体に固相化されているプローブ核酸と、核酸試料とを、適切なハイブリダイゼーションを得るための条件にある反応系において反応させる工程と、
(2)適切な伸長反応を得るための条件において、検出可能な第1の信号を生ずる標識物質を付された第1の塩基を含む第1の標識化ジデオキシヌクレオシド三リン酸と、検出可能な第2の信号を生ずる標識物質を付された第2の塩基を含む第2の標識化ジデオキシヌクレオシド三リン酸と、検出可能な第3の信号を生ずる標識物質を付された第3の塩基を含む第3の標識化ジデオキシヌクレオシド三リン酸と、検出可能な第4の信号を生ずる標識物質を付された第4の塩基を含む第4の標識化ジデオキシヌクレオシド三リン酸と、ポリメラーゼとの存在下で、前記(1)で得られた二本鎖核酸を伸長する工程と、
(3)前記(2)の伸長する工程において、前記伸長反応に使用されなかった標識化デオキシヌクレオシド三リン酸をその反応系から除去する工程と、
(4)前記(3)の工程の後で、その反応系に存在する前記標識物質由来の信号を検出する工程と、
(5)前記(4)の工程において検出された信号の種類から、標的部位の塩基を決定する工程。
【請求項5】
ターゲット核酸の標的部位の塩基を決定する方法であって、以下の工程を具備する方法;
(1)前記ターゲット核酸の標的部位に隣接する3’側の塩基配列に相補的な選択用配列を含み、且つその5’末端を介して基体に固相化されているプローブ核酸と、核酸試料とを、適切なハイブリダイゼーションを得るための条件にある反応系において反応する工程と、
(2)適切な伸長反応を得るための条件において、検出可能な信号を生ずる標識物質を付されたと第1の種類の塩基を含む標識化デオキシヌクレオシド三リン酸と、前記第1の塩基とは異なる種類の第2の塩基を含む少なくとも1の非標識化デオキシヌクレオシド三リン酸と、ポリメラーゼとの存在下で、前記(1)で得られた二本鎖核酸を伸長する工程と、
(3)前記(2)の伸長する工程において、当該伸長反応に使用されなかった標識化デオキシヌクレオシド三リン酸を当該反応系から除去する工程と、
(4)前記(3)の工程の後で、当該反応系に存在する前記標識物質由来の信号を検出する工程と、
(5)前記(4)の工程における当該信号の検出の有無と、前記標識化デオキシヌクレオシド三リン酸に含まれる塩基の種類から、標的部位の塩基を決定する工程。
【請求項6】
前記検出可能な信号が蛍光であり、前記標識物質が蛍光物質であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のターゲット核酸の標的部位の塩基を決定する方法。
【請求項7】
前記選択用配列が、10塩基長から15塩基長までの長さであることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載のターゲット核酸の標的部位の塩基を決定する方法。
【請求項8】
前記核酸試料が予め対象より採取され調製されることと、前記標的部位が変異の存在する可能性のある部位であることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載のターゲット核酸の標的部位の塩基を決定する方法。
【請求項9】
前記核酸試料は予め対象より採取され調製された試料に含まれていることと、前記標的部位が一塩基多型の存在する部位であることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載のターゲット核酸の標的部位の塩基を決定する方法。
【請求項10】
前記プローブ核酸が、そこにおいて核酸について反応を行うことが可能な反応容器の内壁に固相化されていることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載のターゲット核酸の標的部位の塩基を決定する方法。
【請求項11】
前記反応容器の容器内部の形状がキャピラリー形状であることを特徴とする請求項10記載のターゲット核酸の標的部位の塩基を決定する方法。
【請求項12】
被検核酸中の標的配列の存在を検出する方法であって、以下の工程を具備する方法;
(1)そこにおいて反応を行うことが可能な流路に固相化され、標識物質を付加された標識化プローブ核酸に、適切なハイブリダイゼーション可能な条件下で被検核酸を反応させる工程と、
(2)前記(1)の工程の後に、1本鎖特異的ヌクレアーゼを前記流路に添加して、適切な酵素反応を得られる条件下で反応を行う工程と、
(3)前記(2)の工程の後に、前記流路から酵素反応の分解産物を除去する工程と、
(4)前記流路内の2本鎖核酸に含まれる標識物質からの信号を検出する工程と、
(5)前記(4)の工程において検出された信号を基に、被検核酸中の標的配列の存在を検出する工程。
【請求項13】
対象における標的配列の発現頻度を判定する方法であって、以下の工程を具備する方法;
(1)そこにおいて反応を行うことが可能な流路に固相化され、且つ標識物質を付加された標識化プローブ核酸に、適切なハイブリダイゼーション可能な条件下で、対象から得た被検核酸を含む試料を反応させる工程と、
(2)前記(1)の工程の後に、1本鎖特異的ヌクレアーゼを前記流路に添加して、適切な酵素反応を得られる条件下で反応を行う工程と、
(3)前記(2)の工程の後に、前記流路から酵素反応の分解産物を除去する工程と、
(4)前記(3)の工程の後に、前記流路内の2本鎖核酸に含まれる標識物質に由来する信号を検出する工程と、
(5)前記(4)の工程において検出された信号を基に、対象における標的配列の発現頻度を判定する工程。
【請求項14】
以下の工程により得られる標識化プローブ核酸を用いることを特徴とする請求項12に記載の被検核酸中の標的配列の存在を検出する方法;
(1)種プローブ核酸に対して、適切なハイブリダイゼーション可能な条件下で、前記種プローブ核酸に相補的な相補配列と、この相補配列の5’側に存在する被標識配列と、この被標識配列の5’側に存在する伸長配列とを含む鋳型核酸を反応させる工程と、
(2)前記被標識配列の塩基に相補的な塩基を含み、且つ標識物質を付与された標識化基質核酸と、前記伸長配列に含まれる塩基に相補的な塩基を具備する基質核酸と、ポリメラーゼとの存在する条件下で、前記(1)の工程で得られた2本鎖に含まれる前記種プローブ核酸を伸長する工程と、
(3)前記(2)の工程における伸長の後に、当該2本鎖を解離することによって、1本鎖として標識化プローブ核酸を得る工程。
【請求項15】
標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法であって、
作成したい標識プローブ核酸の塩基配列に相補的な鋳型核酸と、前記鋳型核酸の塩基の総数より少なく、作成したい標識プローブ核酸の塩基配列の一部が欠損している未標識プローブ核酸前駆体であって、その5’端で支持体に固相化されている未標識プローブ核酸前駆体とを、これらがハイブリダイズ可能な条件下で、反応させる工程と、
検出可能な信号を生ずる標識物質を付された、特定塩基の標識ヌクレオチドと、前記特定塩基以外の他の塩基の非標識ヌクレオチドとを基質として用いて、前記未標識プローブ核酸前駆体の欠損部分を、前記鋳型核酸を鋳型として、5’から3’方向に向かって伸長させ、標識プローブ核酸を合成する工程と、
前記工程により得られた標識プローブ核酸と、前記鋳型核酸との間の相補的結合をすべて解離させる工程と、
解離された前記鋳型核酸を支持体上から除去する工程と
を含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載の標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法であって、前記未標識プローブ核酸前駆体が、作成したい標識プローブ核酸の3’端のヌクレオチドが1以上欠損したものであることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15に記載の標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法であって、前記未標識プローブ核酸前駆体が、作成したい標識プローブ核酸の中間部分のヌクレオチドが1以上欠損したものであることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15〜17の何れか1項に記載の標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法であって、前記特定塩基の標識ヌクレオチドが、1種類の塩基の標識ヌクレオチドであり、前記特定塩基以外の他の塩基の非標識ヌクレオチドが、3種類の塩基の各ヌクレオチドであることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項15または16に記載の標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法であって、前記特定塩基の標識ヌクレオチドが、1種類の塩基の標識ヌクレオチドであり、前記特定塩基以外の他の塩基の非標識ヌクレオチドの少なくとも1種類が、ジデオキシヌクレオチドであることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項15または16に記載の標識プローブ核酸を固相化した支持体の作成方法であって、前記特定塩基の標識ヌクレオチドが、1種類の塩基の標識ヌクレオチドであり、前記特定塩基以外の他の塩基の非標識ヌクレオチドの少なくとも1種類が、存在しないことを特徴とする方法。

【国際公開番号】WO2004/061100
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【発行日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506710(P2005−506710)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015819
【国際出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】