説明

核酸リガンド複合体

【課題】本発明は、核酸リガンドおよび親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物からなる治療用または診断用複合体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法は、セレックス法によって核酸リガンドを同定し、核酸リガンドを親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物に結合させる方法である。本発明はさらに、親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物に結合した1または2種以上の核酸リガンドからなる複合体を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、セレックス(SELEX)法により核酸リガンドを同定し、この核酸リガンドを親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物と結合させることによって核酸と親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物からなる治療用または診断用複合体を製造する方法に関する。本発明はさらに、核酸リガンドを親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物に結合させて複合体を形成させることによって、核酸リガンドの薬物動態学的性質を改良することに関する。本発明はさらに、核酸リガンドと親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物からなる複合体に治療用または診断用物質を結合させることにより上記治療用または診断用物質を特定の予め定められた生物学的標的に対してターゲッティングする方法において、核酸リガンドは上記特定の予め定められた標的と結合したセレックス標的を有し、核酸リガンドは複合体の外部に結合されている方法に関する。本発明はまた、1または2以上の核酸リガンドが親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物と結合してなる複合体も包含する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
A.セレックス
核酸は一義的に情報的役割を有するというのが長年にわたり定説であった。セレックスと呼ばれ、指数関数的濃縮によるリガンドの系統的発生法(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment として知られる方法によって、核酸はタンパク質と違わない三次元構造的多様性を有することが明らかにされてきた。セレックスは、標的分子に対して高度に特異的な結合性を有する核酸分子のインビトロ発生法であり、1990年06月11日に出願されて現在は放棄された米国特許出願一連番号第07/536,428号(発明の名称:Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)、1991年06月10日に出願された米国特許出願一連番号第07/714,131号(発明の名称:Nucleic Acid Ligands)、現在は米国特許第5,475,096 号、1992年08月17日に出願された米国特許出願一連番号第07/931,473号(発明の名称:Nucleic Acid Ligands)、現在は米国特許第5,270,136 号(PCT/ US91/04078も参照)に記載されている。これらはいずれも引用により本明細書にとくに導入される。本明細書においては包括的にセレックス特許出願と呼ばれるこれらの各出願には、任意所望の標的分子に対する核酸リガンドを作成する基本的に新規な方法が記載されている。セレックス法では、それぞれがユニークな配列を有し、所望の標的化合物または分子に特異的に結合する性質を有し、核酸リガンドと呼ばれる1群の生成物が提供される。セレックスで同定された核酸リガンドはそれぞれ与えられた標的化合物または分子の特異的なリガンドである。セレックスは、核酸が実際にモノマーであれポリマーであれ任意の化学的化合物のリガンドとして作用(特異的結合ペアの形成)するのに十分多様な二次元および三次元構造の形成能ならびにそのモノマー内に利用可能な十分の化学的多様性を有するというユニークな洞察に基づくものである。任意のサイズまたは組成の分子が標的になりうる。
【0003】
セレックス法は、実際に任意所望の規準の結合親和性および選択性を達成するために同一の一般的選択スキームを用い、候補オリゴヌクレオチドの混合物からの選択、ならびに結合、分配および増幅の段階的反復を包含する。核酸混合物、好ましくは無作為化された配列のセグメントからなる混合物に出発し、セレックス法は、混合物を標的と結合に有利な条件下に接触させ、標的分子に特異的に結合した核酸から非結合核酸を分配し、核酸− 標的複合体を解離させ、核酸− 標的複合体から解離した核酸を増幅させ、リガンドが濃縮された核酸混合物を得て、ついで結合、分配、解離および増幅の工程を所望の回数再反復して、標的分子に対して高度に特異的な高度に親和性の核酸リガンドを得る工程を包含する。
【0004】
化学的化合物としての核酸は広い範囲の形状、サイズおよびコンフィギュレーションを形成することが可能であり、生物学的系において核酸が示すよりもはるかに広いレパートリーの結合や他の機能を発揮できることがセレックス法により証明されたと本発明者らは認識している。
【0005】
セレックスまたはセレックス様方法は、任意の与えられた標的に対する核酸リガンドの同定を可能にするのと同様の様式で、任意の選ばれた反応を促進できる核酸の同定に使用できることを本発明者らは認識するに至った。本発明者らは、理論的には、ほぼ1013〜1018個の核酸からなる候補混合物中に、広範囲の多様な物理的および化学的相互作用のそれぞれを促進するのに適当な形状をもつ少なくとも1個の核酸が存在すると考えている。
【0006】
基本セレックス法は多くの特定の目的を達成するために改良されてきた。たとえば、1992年10月14日に出願された米国特許出願一連番号第07/960,093号(発明の名称:Method for Selecting Nucleic Acids on the Basis of Structure)には特異的な構造特性を有する核酸分子たとえばベントDNAを選択するためのゲル電気泳動と組合わせたセレックスの使用が記載されている。1993年09月17日に出願された米国特許出願一連番号第08/123,935号(発明の名称:Photoselection of Nucleic Acid Ligands)には、標的分子に対する結合および/または光架橋および/または光不活性化を可能にする光反応基を含有する核酸リガンドを選択するセレックスに基づく方法が記載されている。1993年10月07日に出願された米国特許出願一連番号第08/134,028号(発明の名称:High−Affinity Nucleic Acid Ligands That Discriminate Between Theophylline and Caffein)には、非ペプチドであってもよいきわめて類似した分子間の識別が可能な高度に特異的な核酸リガンドを同定する、カウンターセレックス(Counter−SELEX)と呼ばれる方法が記載されている。1993年10月25日出願の米国特許出願一連番号第08/143,564号(発明の名称:Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment:Solution SELEX)には、標的分子に対して高親和性および低親和性を有するオリゴヌクレオチドの間の高度に効率的な分配を達成するセレックスに基づく方法が記載されている。
【0007】
セレックス法は、リガンドに対して改良された特性、たとえばインビボ安定性の改良または送達特性の改良を付与する修飾ヌクレオチドを含む高親和性核酸リガンドの同定を包含する。このような修飾の例には、リボースおよび/またはホスフェートおよび/または塩基位置の化学的置換が包含される。修飾ヌクレオチドを含むセレックスで同定される核酸リガンドについては、1993年09月08日出願の米国特許出願一連番号第08/117,991号(発明の名称:High Affinity Nucleic Acid Ligands Containig Modified Nucleotides)にピリミジンの5− および2’− 位が化学的に修飾されたヌクレオチド誘導体を含有するオリゴヌクレオチドが記載されている。上記米国特許出願一連番号第08/134,028号には2’−アミノ(2’−NH),2’−フルオロ(2’−F)および/または2’−O−メチル(2’−OMe)により修飾された1もしくは2個以上のヌクレオチドを含有する高度に特異的な核酸リガンドが記載されている。1994年06月22日に出願された米国特許出願一連番号第08/264,029号(発明の名称:Novel Method of Preparation of 2’Modified Pyrimidine Intramolecular Nucleophilic Displacement)には様々な2’− 修飾ピリミジンを含有するオリゴヌクレオチドが記載されている。
【0008】
セレックス法は、1994年08月02日出願の米国特許出願一連番号第08/284,063号(発明の名称:Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment:Chimeric SELEX)ならびに1994年04月28日に出願された米国特許出願一連番号第08/234,997号(発明の名称:Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment: Blended SELEX)にそれぞれ記載されているように、選ばれたオリゴヌクレオチドの他の選ばれたオリゴヌクレオチドおよび非オリゴヌクレオチドの機能性単位との結合を包含する。これらの出願は、オリゴヌクレオチドの広範囲の形状および他の性質、ならびに効率的な増幅および複製特性を、他の分子の望ましい性質と組合わせることを可能にする。基本的セレックス操作の修飾を記述する上記特許出願のそれぞれは引用によりそれらの全体がとくに本明細書に導入される。
【0009】
B.脂質構築体
脂質二重層小胞は、極性(親水性)および非極性(親油性)部分を有する個々の分子から主として形成される、閉鎖され、液体が充填された顕微鏡的な球体である。親水性部分は、ホスファト、グリセリルホスファト、カルボキシ、スルファト、アミノ、ヒドロキシ、コリンまたは他の極性基から構成できる。親油性基の例には飽和または不飽和炭化水素たとえばアルキル、アルケニルまたは他の脂質基がある。ステロール(たとえばコレステロール)および他の医薬的に許容されるアジュバント(α− トコフェロールのような酸化防止剤を包含する)も小胞の安定性の改良または他の所望の性質の付与のため包含させることができる。
【0010】
リポソームはこれらの二重層小胞のサブセットであり、脂肪酸鎖からなる2つの疎水性尾部を含むリン脂質分子から主として構成される。水に暴露されると、これらの分子は自然に整列して球状の二層の膜を形成し、各層における分子の親油性末端は膜の中心に会合し、反対側の極性末端は二重層膜のそれぞれ内側および外側の表面を形成する。すなわち、膜はいずれの側も親水性の表面を提供し、一方、膜の内部は親油性の媒体を構成する。これらの膜は内部の水性空間の周囲に、水の薄い層で分離された同心球状の一連の膜として玉葱とあまり変わらない様式で配列される。これらの多重ラメラ小胞(MLV)は剪断力の適用によって小さなもしくは単ラメラ小胞(UV)に変換できる。
【0011】
リポソームの治療的使用には、遊離の形態では通常毒性の薬物の送達が包含される。リポソーム型では、毒性の薬物は遮蔽され、その薬物に感受性の組織から隔離され、選択された領域に標的化される。リポソームはまた治療的に、長時間にわたって薬物を放出させて投与回数を減らすために使用される。さらに、リポソームは、通常静脈内送達に不適当な疎水性または両親媒性の薬物の水性分散剤の形成方法を提供することができる。
多くの薬物および造影剤が治療的または診断的可能性をもつためにはそれらが生体内の適当な場所に送達されることが必要であり、したがって、リポソームは注射により持続放出および特定の細胞タイプまたは生体部分への薬物送達の基盤を容易に形成することができる。封入された薬物を選択された宿主組織に標的化し感受性の組織から隔離するためにはリポソームを用いる幾つかの技術を採用することができる。これらの技術には、リポソームのサイズ、それらの正味表面電荷およびそれらの投与経路の操作が包含される。MLVは主としてそれらが比較的大きいために、細網内皮系(主として、肝臓および脾臓)によって通常、迅速に取り込まれる。一方、UVは、MLVに比較して循環時間の増大、クリアランス速度の低下および生物分布の上昇を示すことが見出されている。
【0012】
リポソームの受動送達には静脈内、皮下、筋肉内および局所投与のような様々な投与経路が使用される。各経路によって、リポソームの局在には差が生じる。
選ばれた標的領域に対してリポソームを能動的に方向づけるために用いられる2つの通常の方法には、リポソームの表面への抗体または特異的な受容体リガンドの付着がある。抗体はそれらの相当する抗原に高度な特異性を有することが知られていてリポソームの表面に結合されてきたが、結果は多くの場合あまり成功していない。しかしながら、抗体を用いないでリポソームを腫瘍に標的化する一部の努力は成功している(たとえば米国特許第5,019,369号参照)。
【0013】
研究者らによって精力的に追究された開発領域は、特定の細胞タイプにのみでなく、細胞の細胞質さらには核への薬剤の送達である。これはDNA,RNA,リボザイムおよびタンパク質のような生物学的物質の送達にとくに重要である。
【0014】
この領域における有望な治療的研究には疾患の処置のためのアンチセンスDNAおよびRNAオリゴヌクレオチドの使用が包含される。しかしながら、アンチセンス技術の効果的な適用に際して遭遇する大きな問題は、ホスホジエステル型のオリゴヌクレオチドが体液内でまた細胞内および細胞外酵素たとえばエンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼによって、標的細胞に到達する前に速やかに分解されることである。静脈内投与も腎臓による血流からの速やかなクリアランスを生じ、細胞内に有効な薬物濃度を生成させるには取り込みが不十分である。
リポソームによる封入はオリゴヌクレオチドを分解酵素から保護し、リポソームの貪食の結果として、循環半減期は増大し、取り込み効率は上昇する。
【0015】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物に結合させた研究が、これまでに数例報告されている。しかしながら、アンチセンスオリゴヌクレオチドは細胞内物質としてのみ有効である。上皮増殖因子(EGF)受容体に標的化されたアンチセンスオリゴヌクレオチドがポリエチレングリコールスペーサーを介して葉酸に連結されたリポソーム(葉酸−PEG−リポソーム)に封入され、葉酸受容体誘導エンドサイトーシスによって培養KB細胞中に送達されている[Wangら(1995)92: 3318−3322]。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドに共有結合で結合した親油性化合物が文献に記載されている(EP462 145 B1)。
【発明の概要】
【0016】
発明の概要
本発明は、核酸リガンドと親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物からなる治療用または診断用複合体を製造する方法において、核酸候補混合物から与えられた標的のリガンドである核酸リガンドを(a)核酸候補混合物を標的と接触させ、(b)上記候補混合物のメンバーを標的に対する親和性に基づいて分配し、ついで(c)選ばれた分子を増幅させて標的に対する結合親和性が比較的に高い核酸配列が濃縮された核酸混合物を得る方法によって同定し、この同定された核酸リガンドを親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物と結合させることからなる方法を提供する。
【0017】
他の実施態様においては、本発明は細胞内セレックス標的を有する核酸リガンドの細胞内取り込みを改良する方法において、核酸リガンドを親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物に結合させて核酸リガンドと親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物からなる複合体を形成させ、この複合体を患者に投与することによる方法を提供する。
【0018】
他の実施態様においては、本発明は核酸リガンドの薬物動態学的性質を改良する方法において、核酸リガンドを親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物に結合させ核酸リガンドと親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物からなる複合体を形成させこの複合体を患者に投与することによる方法を提供する。
他の実施態様においては、本発明は患者における特定の予め定められた生物学的標的に対して治療用または診断用物質をターゲッティングする方法において、治療用または診断用物質を核酸リガンドと親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物からなる複合体に結合させ、この核酸リガンドは特定の予め定められた生物学的標的に結合したセレックス標的を有し、核酸リガンドは複合体の外部に結合されていて、この複合体を患者に投与することからなる方法を提供する。
【0019】
本発明の目的は、1または2個以上の核酸リガンドが親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物と結合してなる複合体およびその製造方法を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物と結合して薬物動態学的性質が改良された1または2個以上の核酸リガンドを提供する。本発明の他の態様においては、親油性化合物は脂質構築体である。
【0020】
この実施態様においては、脂質構築体は好ましくは脂質二重層小胞であり、とくに好ましくはリポソームである。本発明のある実施態様においては、親油性化合物はコレステロール、ジアルキルグリセロール、またはジアシルグリセロールである。本発明の他の実施態様においては、非免疫原性高分子量化合物はPEGである。本発明の他の実施態様においては、非免疫原性高分子量化合物はマグネタイトである。好ましい実施態様においては、核酸リガンドはセレックス法によって同定される。
【0021】
本発明の実施態様においては、核酸リガンド(単数または複数)と結合したコレステロール、ジアルキルグリセロール、ジアシルグリセロール、PEG,またはマグネタイトからなる複合体が意図され、この場合核酸リガンド(単数または複数)は標的化能によって働くことができる。
【0022】
本発明の実施態様においては、内部コンパートメントを限定する膜をもつタイプのたとえば脂質二重層小胞のような脂質構築体からなり、脂質構築体と結合した核酸リガンドは脂質構築体の膜と結合しているかまたはコンパートメント内に封入されている複合体が意図される。核酸リガンドが膜と結合している実施態様においては、核酸リガンドは膜の内部表面部分または外部表面部分に結合して、核酸リガンドは小胞の内部または外部に突出する。核酸リガンドが複合体の外部に突出した実施態様においては、核酸リガンドは標的化能によって働くことができる。非免疫原性高分子量化合物も膜に結合することができる。一実施態様においては、核酸リガンドは非免疫原性高分子量化合物に結合し、これが膜に結合する。膜はさらに、核酸リガンドに結合していない非免疫原性高分子量化合物と結合していてもよい。
【0023】
複合体の核酸リガンドが標的化能によって働く実施態様においては、複合体には治療用または診断用物質を導入または結合させることができる。一実施態様においては治療用物質は薬物である。別の実施態様においては、治療用または診断用物質は1または2以上の付加的な核酸リガンドである。異なる標的に特異的な核酸リガンドを複合体の外表面から突出させることができる。複合体は、同一の標的上の異なるセレックス標的に特異的な1または2以上の核酸リガンドをその外部表面から突出させることができる。
【0024】
これらの目的および他の目的ならびに本発明の本質、範囲および利用については以下の説明および請求の範囲から本技術分野の熟練者には自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1B】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1C】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1D】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1E】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1F】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1G】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1H】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1I】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1J】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1K】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1L】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1M】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1N】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1O】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1P】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1Q】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1R】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1S】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1T】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1U】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1V】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1W】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1X】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図1Y】図1A〜1Yは、NX229,NX232,NX253,NX256,225T3,225T3N,T−P4,NX−256−PEG−20,000,225T3N−PEG3400,T−P4−PEG−(20,000もしくは10,000),NX268,NX191,JW966,NX278,JW986,NX213,NX244,JW1130,NX287,JW1130−20 KPEG,JW1379,JW1380,scNX278,JW986−PEG−(10,000,20,000または40,000),およびJW1336(配列番号:6〜30)の分子構造を示す。ヌクレオチドの前に付した小文字は以下の意味である:m=2’−O−メチル、a=2’−アミノ、r=リボ、f=2’−フルオロ。ヌクレオチドの前に文字がない場合はデオキシリボヌクレオチド(2’−H)を指示する。ヌクレオチドの後のsはホスホロチオエートによるヌクレオシド間連結からなる骨格修飾を意味する。
【図2】図2は、中空のリポソーム(Empty),4.7mg NX232含有リポソーム(L−NeX2 a),11.8mg NX232含有リポソーム(L−NeX2 b),72mgの遊離NX232(Free 72mg),7.2mgの遊離NX232(Free 7.2mg)および超音波処理した10mgの遊離NX232(Free/soni 10mg)についてのゲル浸透クロマトグラムを示す。
【図3】図3にはNX229,NX232,NX253,NX253+リポソーム,およびNX256−PEG20Kの1回注射後の時間の関数としての血漿濃度のデータをまとめる。
【図4】図4にはNX213(配列番号:21),NX268(配列番号:16),NX278(配列番号:19),NX278+リポソーム,JW986(配列番号:20),リポソームに封入されたNX213,およびNX244(配列番号:22)の1回注射後の時間の関数としての血漿濃度のデータをまとめる。
【図5】図5にはJW966(配列番号:18)およびJW966+リポソームの1回注射後の時間の関数としての血漿濃度のデータをまとめる。
【図6】図6にはNX268(配列番号:16)およびNX268+リポソームの1回注射後の時間の関数としての血漿濃度のデータをまとめる。
【図7】図7にはNX191(配列番号:17),JW986+PEG20K,PEG40K,およびPEG10K(配列番号:29)の1回注射後の時間の関数として血漿濃度のデータをまとめる。
【図8】図8にはJW986+PEG20K(配列番号:29)およびJW1130(配列番号:23)の1回注射後の時間の関数としての血漿濃度のデータをまとめる。
【図9】図9には、NX278+PEG40K(配列番号:24)およびNX256(配列番号:9)の1回注射後の時間の関数としての血漿濃度のデータをまとめる。
【図10】図10はJW1130(配列番号:23),1136−PEG20K(配列番号:25),1336(配列番号:30)および1379/80(配列番号:26−27)の1回注射後の時間の関数としての血漿濃度のデータをまとめたものである。
【図11】図11は、NX232(配列番号:7),NX232+1%PGSUV,NX232+2.5%PGSUVおよびNX232+PGSUVについてのクロマトグラムを示す。
【図12】図12は結合した核酸リガンド(NX253)(配列番号:8)の分画をリポソーム:核酸リガンド比の関数として示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
定義:
「共有結合」は電子の共有によって形成される化学結合である。
【0027】
「非共有結合相互作用」はイオン性相互作用および水素結合を含む、共有結合以外の相互作用により分子実体を互いに保持する手段である。
本発明の目的において「脂質構築体」とは脂質、リン脂質またはそれらの誘導体を含有し、脂質が水性懸濁液中で採用することが知られている多様な異なる構造配列からなる構造である。これらの構造は、それらに限定されるものではないが脂質二重層小胞、ミセル、リポソーム、エマルジョン、脂質リボンまたはシートを包含し、様々な薬物および医薬的に許容されることが知られているアジュバントと複合体を形成させることができる。通常のアジュバントとしては、とくにコレステロールおよびα−トコフェロールがある。脂質構築体は単独でまたは本技術分野の熟練者には周知の任意の組合せで特定の適用に望ましい特性を提供する。さらに、脂質構築体およびリポソーム形成の技術的側面は本技術分野においては周知であり、本分野において一般に実用化されている任意の方法が本発明に使用できる。
【0028】
「親油性化合物」とは、脂質および/または誘電率の低い他の材料もしくは相に対して結合または分配する傾向を有し、実質的に親油性成分からなる構造を包含する化合物である。親油性化合物には、脂質構築体ならびに脂質(および/または誘電率の低い他の材料もしくは相)に結合する傾向を有する非脂質含有化合物を包含する。コレステロール、リン脂質およびジアルキルグリセロールは親油性化合物のその他の例である。
【0029】
本明細書で用いられる「複合体」の語は、核酸リガンドと親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物の結合によって形成される分子実体を記述する。結合は共有結合でも非共有結合相互作用であってもよい。
【0030】
本明細書で用いられる「核酸リガンド」とは、セレックス標的に対して所望の活性を有する天然に存在しない核酸である。所望の活性には、それらに限定されるものではないが、セレックス標的の結合、セレックス標的の触媒的変化、セレックス標的またはセレックス標的の機能的活性を修飾/変化させる様式でのセレックス標的との反応、自殺阻害剤の場合のようなセレックス標的への共有結合、標的と他の分子の間の反応の促進が包含される。好ましい実施態様においては、活性は標的分子に対する特異的結合親和性であり、この場合の標的分子は主としてワトソン・クリック型塩基対合または三重らせん結合に依存する機構を介して核酸リガンドに結合するポリヌクレオチド以外の三次元化学構造であり、核酸リガンドは標的分子により結合される既知の生理学的機能を有する核酸ではない。
【0031】
本発明の好ましい実施態様においては、本発明の複合体の核酸リガンドはセレックス法によって同定される。核酸リガンドには、与えられた標的のリガンドである核酸の候補混合物から、(a)核酸候補混合物に比較して標的に対する親和性が高い核酸が候補混合物の残部から分配できるように核酸候補混合物を標的と接触させ、(b)親和性が高い核酸を候補混合物の残部から分配し、ついで(c)親和性が高い核酸を増幅させてリガンドが濃縮された核酸混合物を得ることからなる方法によって同定される核酸が包含される。
【0032】
「候補混合物」は、それから所望のリガンドを選択する様々な配列の核酸の混合物である。候補混合物の起源は、天然に存在する核酸もしくはそれらのフラグメント、化学的に合成された核酸、酵素的に合成された核酸または上記技術の組合せにより作成された核酸とすることができる。好ましい実施態様においては、それぞれの核酸は、増幅過程を容易にするために、無作為化された領域を囲む固定された配列を有する。
【0033】
「核酸」は、DNA,RNA,一本鎖または二本鎖およびそれらの任意の化学修飾体とすることができる。修飾にはそれらに限定されるものではないが、付加的な電荷、分極率、水素結合、静電相互作用および核酸リガンド塩基または核酸リガンド全体に対する変動を導入する他の化学基を付与する修飾が包含される。
このような修飾にはそれらに限定されるものではないが、2’−位置の糖修飾、5−位置のピリミジン修飾、8−位置のプリン修飾、環外アミンの修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモまたは5−ヨードウラシルの置換、骨格の修飾たとえばヌクレオシド間ホスホロチオエート連鎖、メチル化、イソ塩基のイソシチジンとイソグアニジンのような異常な塩基対合の組合せ等が包含される。修飾にはまた、3’と5’の修飾たとえばキャッピングも包含される。
【0034】
「非免疫原性高分子量化合物」は、通常免疫原性応答を起こさない約1000Daまたはそれ以上の化合物である。本発明の目的では、免疫原性応答とは生体に抗体タンパク質の作成を起こさせる応答である。非免疫原性高分子量化合物の例には、ポリエチレングリコール(PEG)、多糖たとえばデキストリン、ポリペプチドたとえばアルブミン、および磁性構造体たとえばマグネタイトがある。非免疫原性高分子量化合物は、ある種の実施態様においては、核酸リガンドであってもよい。
【0035】
「脂質二重層小胞」は、極性(親水性)および非極性(親油性)部分を有する個々の分子から主として形成される、閉鎖され、液体が充填された顕微鏡的な球体である。親水性部分は、ホスファト、グリセリルホスファト、カルボキシ、スルファト、アミノ、ヒドロキシ、コリンまたは他の極性基から構成できる。非極性基の例には飽和または不飽和炭化水素たとえばアルキル、アルケニルまたは他の脂質基がある。ステロール(たとえばコレステロール)および他の医薬的に許容されるアジュバント(α−トコフェロールのような酸化防止剤を包含する)も小胞の安定性の改良または他の所望の性質の付与のため包含させてもよい。
【0036】
「リポソーム」は二重層小胞のサブセットであり、長い脂肪酸鎖からなる2つの疎水性尾部を含むリン脂質分子から主として構成される。水に暴露されると、これらの分子は自然に整列して二層性の膜を形成し、各層における分子の親油性末端は膜の中心に会合し、反対側の極性末端は二重層膜のそれぞれ内側および外側表面を形成する。すなわち、膜はいずれの側も親水性の表面を提供し、一方、膜の内部は親油性の媒体を構成する。形成されたこれらの膜は内部の水性空間の周囲に玉葱の層とあまり違わない様式で、層間の水相により分離された同心の閉鎖された膜システムに全体的に配列される。これらの多重ラメラ小胞(MLV)は剪断力の適用によって小さなもしくは単ラメラ小胞(UV)に変換できる。
【0037】
「陽イオン性リポソーム」は生理学的pHにおいて、全体的に陽性の電荷を有する脂質成分を含有するリポソームである。
「セレックス」法は、標的と所望の様式で相互作用するたとえばタンパク質に結合する核酸リガンドの選択と、これらの選ばれた核酸の増幅の組合せを包含する。選択/増幅工程の反復サイクリングにより、多数の核酸を含有するプールから標的に最も強力に相互作用する1個もしくは少数の核酸の選択が可能になる。選択/増幅操作のサイクリングは選択された最終目標が達成されるまで続ける。本発明においては、セレックス法は所望の標的に対する核酸リガンドを得るために採用される。
【0038】
セレックス法については、セレックス特許出願に記載されている。
「セレックス標的」とは、そのリガンドが望まれる任意の関心化合物または分子を意味する。標的は、タンパク質(たとえば、VEGF,トロンビン、およびセレクチン)、ペプチド、炭水化物、多糖、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、ウイルス、基質、代謝物、遷移状態アナログ、補因子、阻害剤、薬物、染料、栄養物、増殖因子等とすることができ、制限はない。「セレックス標的」および「標的」の語は本明細書においては相互に交換して使用できる。文章の内容から「標的」が「セレックス標的」を意味するか否かは明白である。
【0039】
「標的」とは、生物系において予め選択された位置、たとえば組織、臓器、細胞、細胞内コンパートメント、細胞外成分を意味する。後者としては、ホルモン(内分泌、傍分泌、自己分泌)、酵素、神経伝達物質および生理学的カスケード現象(たとえば血液凝固、補体等)の構成成分が包含される。
【0040】
「改良された薬物動態学的性質」とは、非免疫原性高分子量化合物または親油性化合物に結合した核酸リガンドが、親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物に結合していない同一の核酸リガンドに比較して、インビボにおいて循環半減期の延長または他の薬物動態学的利点たとえば改良された標的対非標的濃度比を示すことを意味する。
【0041】
「リンカー」は、2個またはそれ以上の分子実体を共有結合または非共有結合相互作用によって連結する分子実体である。
「スペーサー」は、1または2以上の分子実体の機能的性質が保存されるように2個以上の分子実体の空間的分離を可能にするサイズのリンカーである。
【0042】
本発明の目的は、親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物と結合した1または2以上の核酸リガンドからなる複合体を提供することにある。このような複合体は、親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物と結合していない核酸リガンドに比し1または2以上の以下の利点を有する。すなわち1)薬物動態学的性質の改善、2)細胞内送達能の改善、または3)標的化能の改善である。
【0043】
本発明の複合体はこれらの利点の1,2または3すべての利点がある。本発明の複合体には複合体中で全体として異なる目的で働く異なる核酸リガンドを含有させることができる。たとえば本発明の複合体は、a)リポソーム、b)細胞内のセレックス標的に標的化され、リポソームの内部に封人された核酸リガンド、およびc)特定の細胞型に標的化され、リポソームに結合してその外部表面から突出した核酸リガンドから構成することができる。このような場合、複合体には1)リポソームの存在により、薬物動態学的性質の改善、2)リポソームの性質により、封入された核酸リガンドの細胞内送達能の上昇、および3)外部に結合した核酸リガンドにより、インビボにおける選ばれた位置への特異的な標的化が達成される。
【0044】
他の実施態様においては、本発明の複合体は、親油性化合物たとえばコレステロール、ジアルキルグリセロール、ジアシルグリセロール、または非免疫原性高分子量化合物たとえばポリエチレングリコール(PEG)に共有結合で結合した核酸リガンドから構成される。これらの場合、複合体の薬物動態学的性質は核酸リガンド単独に比べて改善される。さらに他の実施態様においては、本発明の複合体はリポソームの内部に封入された核酸リガンドから構成され、核酸リガンドの細胞内取り込みには複合体化されていない核酸リガンドの場合に比べて上昇が認められる。
【0045】
本発明のある実施態様においては、本発明の複合体は1個(二量体)または2個以上(多量体)の他の核酸リガンドに結合した核酸リガンドから構成される。
核酸リガンドは同一のまたは異なるセレックス標的に向けることができる。多重核酸リガンドが同一のセレックス標的に向けられる実施態様においては、セレックス標的との多重結合相互作用により結合活性が上昇する。さらに、複合体が1個または2個以上の他の核酸リガンドに結合した核酸リガンドから構成される本発明の実施態様においては、複合体の薬物動態学的性質は1個の核酸リガンド単独の場合に比べて改善される。
【0046】
親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物は、核酸リガンド(単数または複数)と共有結合で結合していても、また非共有結合相互作用によって会合していてもよい。親油性化合物がコレステロール、ジアルキルグリセロール、ジアシルグリセロール、または非免疫原性高分子量化合物がPEGである実施態様においては、核酸リガンドとの共有結合が好ましい。親油性化合物が陽イオン性リポソームであるかまたは核酸がリポソーム内に封入されている実施態様においては核酸リガンド(単数または複数)との非共有結合が好ましい。共有結合が採用された実施態様においては、親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物は核酸リガンド上の様々な位置、たとえば塩基上の環外アミノ基、ピリミジンヌクレオチドの5−位置、プリンヌクレオチドの8−位置、ホスフェートのヒドロキシル基または核酸リガンドの5’もしくは3’末端におけるヒドロキシル基もしくは他の基に共有結合させることができる。しかしながら、その5’または3’ヒドロキシル基に結合させることが好ましい。核酸リガンドの複合体の他の成分に対する結合は直接またはリンカーもしくはスペーサーを用いて行われる。
【0047】
親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物は、非共有結合相互作用により核酸リガンド(単数または複数)に結合させることができる。たとえば、本発明の一実施態様においては、核酸リガンドは親油性化合物の内部コンパートメント内に封入される。本発明の他の実施態様においては、核酸リガンドは静電的相互作用によって親油性化合物に結合される。たとえば、陽イオン性リポソームは陰イオン性核酸リガンドに結合させることができる。イオン吸引力を介した非共有結合相互作用の他の例には、核酸リガンドの一部が、親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物に結合したオリゴヌクレオチドにワトソン・クリック型塩基対合または三重らせん塩基対合によってハイブリダイズする相互作用がある。
【0048】
核酸の治療的およびインビボ診断的使用に際して遭遇する一つの問題は、ホスホジエステル型のオリゴヌクレオチドが体液中で、細胞内および細胞外酵素たとえばエンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼにより、所望の効果を発現する前に迅速に分解することである。核酸リガンドのある種の化学的修飾は、核酸リガンドのインビボ安定性の増大または核酸リガンドの送達の促進もしくは誘導を可能にする。本発明において意図される核酸リガンドの修飾にはそれらに限定されるものではないが、付加的な電荷、分極率、疎水性、水素結合、静電相互作用および核酸リガンド塩基または核酸リガンド全体に対する変動を導入する他の化学基を提供する修飾が包含される。このような修飾には、それらに限定されるものではないが、2’−位置の糖修飾、5−位置のピリミジン修飾、8−位置のプリン修飾、環外アミンの修飾、4−チオウリジンの置換、5−ブロモまたは5−ヨードウラシルの置換、骨格の修飾、ホスホロチオエートまたはアルキルホスフェート修飾、メチル化、イソ塩基イソシチジンおよびイソグアニジンのような異常な塩基対合の組合せ等が包含される。修飾にはまた、3’と5’の修飾たとえばキャッピングも包含される。
【0049】
核酸リガンドがセレックス法によって誘導される場合には修飾は前または後セレックス修飾とすることができる。前セレックス修飾によれば、セレックス標的に対する特異性および改良されたインビボ安定性の両者を有する核酸リガンドが生成する。2’−OH核酸リガンドに行われる後セレックス修飾では、核酸リガンドの結合能に悪影響を与えることなくインビボ安定性の改善が達成できる。本発明の核酸リガンドの好ましい修飾は5’および3’ホスホロチオエートキャッピングまたは3’末端における3’3’逆転ホスホジエステル連鎖がある。RNAリガンドの場合、一部またはすべてのヌクレオチドの付加的2’アミノ(2’−NH)修飾が好ましい。
【0050】
本発明の他の態様においては、核酸リガンドの親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物との結合は、親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物と結合していない核酸リガンドに比較して、薬物動態学的性質の改善(すなわち、クリアランス速度の遅延)を生じる。本発明の一実施態様においては、複合体は脂質構築体を包含する。核酸リガンドとの複合体は共有結合または非共有結合相互作用によって形成することができる。好ましい実施態様においては、脂質構築体は脂質二重層小胞である。最も好ましい実施態様においては、脂質構築体はリポソームである。
【0051】
本発明のある実施態様においては、複合体は、リポソームから突出した標的化核酸リガンドを有するリポソームからなる。同一の標的に対する多重核酸リガンが存在する実施態様においては、標的との多重結合相互作用によって結合活性が上昇する。
【0052】
本発明で用いられるリポソームは、本技術分野で現在既知のまたは今後開発される様々な任意の方法で調製することができる。それらは通常、リン脂質、たとえばジステアロイルホスファチジルコリンから調製され、他の材料たとえば中性脂質、たとえばコレステロール、またさらに表面修飾剤、たとえば陽性に荷電した(たとえば、コレステロールのステリルアミンまたはアミノマンノースもしくはアミノマンニトール誘導体)または陰性に荷電した(たとえば、ジセチルホスフェート、ホスファチジルグリセロール)化合物を包含してもよい。多重ラメラリポソームは慣用技術、すなわち脂質を適当な溶媒に溶解し、ついで溶媒を蒸発させて容器の内側に薄いフィルムを残留させて適当な容器の内壁に選ばれた脂質を沈積させることによりまたは噴霧乾燥によって形成させることができる。ついで容器に水相を、水平または垂直の渦状に攪拌しながら加えるとMLVの形成が起こる。UVはついで、MLVのホモジェニゼーション、超音波処理または押し出し(フィルターから)によって形成できる。さらに、UVは界面活性剤除去法により形成させることもできる。
【0053】
本発明のある実施態様においては、複合体はリポソームとリポソームの表面に結合した標的化核酸リガンド(単数または複数)および封入された治療用または診断用物質から構成される。予め形成されたリポソームを核酸リガンドと結合させて修飾することができる。たとえば、陽イオン性リポソームは静電相互作用を介して核酸リガンドに結合させる。別法として、親油性化合物たとえばコレステロールに結合した核酸リガンドを予め形成されたリポソームに添加すると、コレステロールがリポソームの膜に結合する。別法として、核酸リガンドはリポソームの形成時にリポソームと結合させることができる。好ましくは核酸リガンドは予め形成されたリポソーム中に負荷することによりリポソームと結合させる。
【0054】
リポソームが広範囲の多様な治療用または診断用物質の封入または導入に有利であることは本技術分野においてよく知られている。多様な任意の化合物がリポソームの内部水性コンパートメント中に封入可能である。治療用物質の例としては抗生物質、抗ウイルス性ヌクレオシド、抗かび性ヌクレオシド、代謝調節剤、免疫調節剤、化学療法薬、トキシン解毒剤、DNA,RNA,アンチセンスオリゴヌクレオチド等がある。同様に、脂質二重層小胞には診断用核種(たとえば、イリジウム111,ヨウ素131,イットリウム90,リン32またはガドリニウム)ならびに蛍光物質またはインビトロおよびインビボ適用で検知可能な材料を負荷することができる。治療用または診断用物質はリポソーム壁部によって水性の内部に封入できることを理解すべきである。別法として、担体物質を小胞壁形成材料の一部として、すなわち小胞壁形成材料中に分散または溶解することができる。
【0055】
リポソームの形成時に、水溶性の担体物質はそれらを水和溶液中に包含させて水性の内部に封入し、親油性分子は脂質処方中に包含させることにより脂質二重層中に導入させることができる。ある種の分子(たとえば、陽イオン性または陰イオン性親油性薬物)の場合には、予め形成されたリポソーム中への薬物の負荷はたとえば米国特許第4.946,683号に記載の方法により行うことができる。この開示は引用により本明細書に導入される。薬物の封入後、リポソームはゲルクロマトグラフィーまたは限外ろ過のような方法により処理して封入されなかった薬物を除去する。リポソームは通常ついで滅菌ろ過して懸濁液中に存在する可能性のある微生物を除去する。微生物は無菌操作によっても除去できる。
大きな親水性分子をリポソーム中に封入することを所望の場合には、大きな単ラメラ小胞をたとえば相転換蒸発(reverse−phase evaporation;REV)または溶媒注入法のような方法によって形成させることができる。リポソームの形成のための他の標準方法には、本技術分野においてたとえば米国特許第4,753,788号に記載されたホモジェニゼーション操作を含むリポソームの工業的製造方法、ならびに米国特許第4,935,171号に記載の薄層フィルム蒸発法が知られている。これらの特許出願は引用により本明細書に導入される。
【0056】
治療用または診断用物質はまた、脂質二重層小胞の表面への結合も可能であることを理解すべきである。たとえば、薬物はリン脂質またはグリセライドに結合させることができる(プロドラッグ)。プロドラッグのリン脂質またはグリセライド部分は、脂質処方中への包含または予め形成されたリポソーム中への負荷によりリポソームの脂質二重層中に導入することができる(米国特許第5,194,654号および第5,223,263号参照。両特許は引用により本明細書に導入される)。
【0057】
特定のリポソームの製造方法は、二重層膜の形成に用いられる脂質の意図される用途および種類に依存することになる。
親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物に結合した核酸リガンド(単数または複数)では、非結合核酸リガンド(単数または複数)に比較して核酸リガンド(単数または複数)の細胞内送達が増大する。複合体の細胞への送達効率はリポソームと細胞の膜の融合を増強することが知られている脂質処方および条件を用いることにより至適化される。たとえば、ある種の陰性に荷電した脂質たとえばホスファチジルグリセロールおよびホスファチジルセリンは、とくに他のフゾゲン(たとえば、Ca2+のような多価陽イオン、遊離脂肪酸、ウイルス融合タンパク質、短鎖PEG,リゾセレクチン、界面活性剤)の存在下に融合を促進する。ホスファチジルエタノールアミンも膜融合を増強するためにリポソーム処方に包含させることが可能であり、同時に細胞送達を増大させる。さらに、遊離脂肪酸および、たとえばカルボキシレート残基を含有するその誘導体は、高いpHまたは中性では陰性に荷電し、低いpHではプロトン化されるpH−感受性リポソームの製造に使用できる。このようなpH−感受性リポソームは高い融合傾向を有することが知られている。
【0058】
好ましい実施態様では、本発明の核酸リガンドはセレックス法により誘導される。セレックスは、現在は放棄された米国特許出願一連番号第07/536,428号(発明の名称:Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment)、1991年06月10日付で出願の米国特許出願一連番号第07/714,131号(発明の名称:Nucleic Acid Ligands)、現在米国特許第5,475,096 号、1992年08月17日出願の米国特許出願一連番号第07/931,473号(発明の名称:Nucleic Acid Ligands)、現在米国特許第5,270,136号(PCT/US91/04078も参照)に記載されている。これらの出願はいずれも引用により本明細書にとくに導入され、包括的にセレックス特許出願と呼ばれる。
【0059】
セレックス法では、それぞれがユニークな配列を有し、所望の標的化合物または分子に特異的に結合する性質を有する核酸分子である1群の生成物が提供される。標的分子は好ましくはタンパク質であるが、他の炭水化物、ペプチドグリカンおよび各種の小分子もとくに包含できる。セレックス法は、細胞表面またはウイルスのような生物学的構造をその生物学的構造の必須部分である分子との特異的相互作用を介して標的化するためにも使用することができる。
【0060】
その最も基本的な形態において、セレックス法は、以下の一連の工程によって定義することができる。
1)異なる配列の核酸の候補混合物を調製する。候補混合物は一般に、固定された配列の領域(すなわち、候補混合物の各メンバーは同一の位置に同一の配列を含有する)および無作為化された配列の領域を含有する。固定された配列領域は、(a)以下に記載する増幅工程を補助するため、(b)標的に結合することが既知の配列を模倣するため、または(c)候補混合物中の与えられた構造アレンジメントの核酸の濃度を増大させるために選択される。無作為化配列は全体的に無作為化されていても、すなわち、任意の位置にある塩基が見出される確率は1/4 である)また部分的に無作為化されていてもよい(たとえば、任意の位置にある塩基が見出される確率は0〜100%の任意のレベルで選択できる)。
【0061】
2)候補混合物を選択された標的と、標的と候補混合物のメンバーの間の結合に好ましい条件下に接触させる。これらの環境下では、標的と候補混合物の核酸の間の相互作用は、標的とその標的に対して最強の親和性を有する核酸の間での核酸−標的ペアを形成すると考えることができる。
【0062】
3)標的に対して最強の親和性を有する核酸を、標的に対する親和性がより弱い核酸から分配する。最高の親和性の核酸に相当する配列は、きわめて少数しか(多分1分子の核酸分子しか)候補混合物中には存在しないので、候補混合物中の有意な量の核酸(約5〜50%)が分配後に残るように分配規準を設定することが一般的に望ましい。
【0063】
4)分配時に標的に対して比較的高い親和性を有するとして選択された核酸をついで増幅して、標的に対して比較的高い親和性を有する核酸が濃縮された新しい候補混合物を創成する。
【0064】
5)上述の分配および増幅工程を反復することにより、新たに形成される候補混合物に含まれるユニークな配列は次第に減少し、標的に対する核酸の平均的な親和性の程度は一般に上昇する。その極限を考えれば、セレックス法では最初の候補混合物からの標的に対して最高の親和性を有する核酸である1種または少数種のユニークな核酸を含有する候補混合物が生成することになる。
【0065】
基本セレックス法は多くの特殊な目的を達成するために改良されてきた。たとえば、1992年10月14日に出願された米国特許出願一連番号第07/960,093号(発明の名称:Method for Selecting Nucleic Acids on the Basis of Structure)には特異的な構造特性を有する核酸分子たとえばベントDNAを選択するためのゲル電気泳動と組合わせたセレックスの使用が記載されている。1993年09月17日に出願された米国特許出願一連番号第08/123,935号(発明の名称:Photoselection of Nucleic Acid Ligands)には、標的分子に対する結合および/または光架橋および/または光不活性化を可能にする光反応基を含有する核酸リガンドを選択するセレックスに基づく方法が記載されている。1993年10月07日に出願された米国特許出願一連番号第08/134,028号(発明の名称:High−Affinity Nucleic Acid Ligands That Discriminate Between Theophylline and Caffein)には、きわめて類似した分子間の識別が可能な高度に特異的な核酸リガンドを同定するカウンターセレックスと呼ばれる方法が記載されている。1993年10月25日に出願された米国特許出願一連番号第08/143,564号(発明の名称:Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment: Solution SELEX)には標的分子に対して高親和性および低親和性を有するオリゴヌクレオチドの間の高度に効率的な分配を達成するセレックスに基づく方法が記載されている。1992年10月21日に出願された米国特許出願一連番号第07/964,624号(発明の名称:Methods of Producing Nucleic Acid Ligands)には、セレックスの実施後に、改良された核酸リガンドを得る方法が記載されている。1995年03月08日付出願の米国特許出願一連番号第08/400,440号(発明の名称:Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichment: Chemi−SELEX)にはリガンドをその標的に共有結合で連結させる方法が記載されている。
【0066】
セレックス法は、リガンドに対して改良された特性、たとえばインビボ安定性の改良または送達特性の改良を付与する修飾ヌクレオチドを含む高親和性核酸リガンドの同定を包含する。このような修飾の例には、リボースおよび/またはホスフェートおよび/または塩基位置の化学的置換が包含される。修飾ヌクレオチドを含むセレックスで同定される核酸リガンドについては、1993年09月08日出願の米国特許出願一連番号第08/117,991号(発明の名称:High Affinity Nucleic Acid Ligands Containig Modified Nucleotides)にピリミジンの5−および2’−位が化学的に修飾されたヌクレオチド誘導体を含有するオリゴヌクレオチドが記載されている。上記米国特許出願一連番号第08/134,028号には2’−アミノ(2’−NH),2’−フルオロ(2’−F)および/または2’−O−メチル(2’−OMe)により修飾された1もしくは2個以上のヌクレオチドを含有する高度に特異的な核酸リガンドが記載されている。1994年06月22日に出願された米国特許出願一連番号第08/264,029号(発明の名称:Novel Method of Preparation of 2’ Modified Pyrimidine Intramolecular Nucleophilic Displacement)には様々な2’−修飾ピリミジンを含有するオリゴヌクレオチドが記載されている。
【0067】
セレックス法は、1994年08月02日出願の米国特許出願一連番号第08/284,063号(発明の名称:Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment:Chimeric SELEX)ならびに1994年04月28日に出願された米国特許出願一連番号第08/234,997号(発明の名称:Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment: Blended SELEX)にそれぞれ記載されているように、選ばれたオリゴヌクレオチドの他の選ばれたオリゴヌクレオチドおよび非オリゴヌクレオチドの機能性単位との結合を包含する。これらの出願は、オリゴヌクレオチドの広範囲の形状および他の性質、ならびに効率的な増幅および複製特性を、他の分子の望ましい性質と組合わせることを可能にする。基本的セレックス操作の修飾を記述する上記特許出願のそれぞれは引用によりそれらの全体がとくに本明細書に導入される。
【0068】
セレックスは標的に高い親和性および顕著な特異性で結合できる核酸リガンドを同定し、これは核酸研究の分野において先例のない卓絶した業績である。これらの特性はもちろん、本技術分野の熟練者が治療用または診断用リガンドに求めている望ましい性質である。
【0069】
医薬としての使用に望ましい核酸リガンドを製造するためには、核酸リガンドは(1)標的に対して所望の効果を達成できる様式で結合し、(2)所望の効果を得るために可能な限り小さく、(3)可能な限り安定であり、(4)選ばれた標的に対して特異的なリガンドであることが好ましい。大部分の場合、核酸リガンドは標的に対して可能な最高の親和性をもつことが好ましい。さらに、核酸リガンドは促進作用をもつことができる。
【0070】
1992年10月21日に出願され係属中の共通に譲渡された米国特許出願一連番号第07/964,624号(’624)にはセレックスの実施後に改良された核酸リガンドを得る方法が記載されている。’624出願(発明の名称:Methods of Producing Nucleic Acid Ligands)は引用によりとくに本明細書に導入される。
【0071】
核酸リガンド(単数または複数)が標的化能によって働く実施態様においては核酸リガンドは、核酸リガンドがその標的に結合できるために維持されなければならない三次元構造を選択する。さらに、核酸リガンドはその標的結合能が弱化されないように複合体の表面に関し適切な方向性で配置されなければならない。これは、核酸リガンドを核酸リガンドの結合部分から離れた位置で結合させることによって達成できる。三次元構造および適切な方向性は上述のリンカーまたはスペーサーの使用によって維持することもできる。
【0072】
複合体による標的化送達には上述のように、任意の様々な治療用または診断用物質を複合体に結合、封入または導入することができる。複合体がリポソームと核酸リガンドからなる実施態様においては、たとえば、複合体の表面上に暴露されたかび特異的な核酸リガンドは、殺かび剤(たとえば、アンホテリシンB)の送達のためにかびの細胞に標的化できる。別法として、化学療法剤は、腫瘍抗原に対する核酸リガンドを介して腫瘍細胞に送達することができる。
【0073】
別の実施態様においては、標的細胞に送達すべき治療用または診断用物質は他の核酸リガンドとすることができる。たとえば、腫瘍抗原に結合する核酸リガンドは複合体の外側に提示し、細胞内標的たとえばras遺伝子のタンパク質産物であるp21の突然変異アイソフォームに結合し、それを阻害する核酸リガンドは送達すべき物質とすることができる。
【0074】
本発明によればさらに、送達すべき物質は複合体に、複合体の外部表面に結合する様式で導入できることも意図されている(たとえば、プロドラッグ、受容体アンタゴニスト、または処置もしくは造影用の放射性物質)。核酸リガンドの場合のように、この物質は共有結合または非共有結合相互作用によって結合させることができる。複合体はその物質の細胞外への標的化送達を提供し、リポソームはリンカーとして働く。
【0075】
他の実施態様においては、非免疫原性高分子量化合物(たとえば、PEG)はリポソームに結合されて複合体に改良された薬物動態学的性質を与える。核酸リガンドは、上述のようにリポソーム膜に結合されるかまたは非免疫原性高分子量化合物に結合され、一方これが膜に結合される。この方法で、複合体は血中のタンパク質から遮蔽されて長時間にわたって循環され、一方、核酸リガンドは依然としてそのセレックス標的に接触しそれに結合するのに十分暴露される。
【0076】
本発明の一実施態様においては、複合体の外面に存在する核酸リガンドは、細網内皮系(すなわち、肝臓および脾臓)による除去のため循環タンパク質(たとえば、抗体、増殖因子、タンパク質ホルモン)に標的化することができる。一例として、このような複合体によれば、自己免疫疾患の処置が可能である。自己免疫疾患は、生体の免疫系に自己抗体および自己反応性T細胞の産生による自己認識の回避が欠如する結果である。宿主細胞に対する免疫系による攻撃は、神経疾患たとえば多発性硬化症および重症筋無力症、関節疾患たとえば慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスに認められるような核酸に対する攻撃、様々な臓器が関連するこのような他の疾患、たとえば乾癬、若年性糖尿病、シェーグレン病およびグレーブス病を含む多くの疾患を引き起こすことができる。タンパク質と結合したリポソームは一般的に、タンパク質と結合していないリポソームよりも迅速に細網内皮系(すなわち、肝臓および脾臓)によって除去されることが見出されていることから、リポソームで複合体化された核酸リガンドは細網内皮系による自己抗体の除去に使用できる。
【0077】
本発明の他の実施態様においては、同一のセレックス標的に対して特異的な核酸リガンドが同一のリポソームの表面に結合される。これは、同一のセレックス標的を互いに接近させる可能性を提供し、同一のセレックス標的の間の特異的な相互作用を発生させるために使用できる。たとえば、リポソームに結合させたチロシンキナーゼ受容体に対する核酸リガンドは、この受容体を互いに接近させることが期待される。これは、シグナル伝達カスケードを開始させる自己リン酸化を促進することが考えられる。
【0078】
本発明の別の実施態様においては、異なるセレックス標的に対して特異的な核酸リガンドを同一のリポソームの表面に結合させる。これは、異なる標的を互いに接近させる可能性を提供し、それらの標的の間の特異的な相互作用を発生させるために使用できる。たとえば、腫瘍マーカーまたは抗原に特異的な核酸リガンドおよびT−細胞受容体に特異的な核酸リガンドは、T−細胞を腫瘍に接近させることが期待される。標的を接近させる方法としてのリポソームの使用に加えて薬剤(たとえば、免疫系調節剤)をリポソームに封入して、相互作用の強度を増大(たとえば、T−細胞免疫応答の増強)させることができる。
【0079】
関心細胞標的にユニークな生物分子の同定が困難な場合には、標的に対する2またはそれ以上のマーカーに特異的な核酸リガンドを複合体と結合させることによって特異性を得ることができる。このシナリオでは、最善の核酸リガンドはそれらのそれぞれの標的に対して低いまたは中等度の親和性を有することが期待される。高い親和性を有する核酸リガンドではいずれかのマーカータンパク質をもつすべての細胞と薬物の結合を導きそれによって特異性が低下することから、上述のタイプの核酸リガンドの使用が推薦される。低親和性リガンドでは、必要な特異性を提供するためには結合活性が要求される。
【0080】
リポソーム/核酸リガンド複合体はまた、標的に対する多重結合相互作用の可能性も生じる。これはもちろん、複合体あたりの核酸リガンドの数ならびに核酸リガンドおよび受容体のそれらそれぞれの膜における可動性に依存する。有効結合定数は各部位における結合定数の積として増大するので、多重結合相互作用があることは実質的に有利である。換言すれば、多くの核酸リガンドをリポソームに結合させることによって、すなわち多価結合を創成することによって、その標的に対する多重複合体の有効親和性(すなわち、結合活性)は各部位に対する結合定数の積と同程度に改良される。
【0081】
本発明のある実施態様においては、本発明の複合体は、親油性化合物たとえばコレステロール、ジアルキルグリセロール、またはジアシルグリセロールに結合した核酸リガンドから構成される。この場合、複合体の薬物動態学的性質は核酸リガンド単独の場合に比較して改善される。上述のように、コレステロールは核酸リガンド上の多くの位置で核酸リガンドに共有結合することができる。本発明の他の実施態様においては、複合体はさらに、脂質構築体たとえばリポソームから構成されてもよい。この実施態様においてはコレステロールは、コレステロールの他の親油性化合物と結合しやすい傾向により、リポソーム中への核酸リガンドの導入を補助することができる。核酸リガンドと結合したコレステロールは、リポソーム処方中への包含または予め形成されたリポソーム中への負荷により、リポソームの脂質二重層に導入することができる。好ましい実施態様では、コレステロール/核酸リガンド複合体は、予め形成されたリポソームと結合させる。
コレステロールは、核酸リガンドがリポソームの内部または外部に突出するような様式でリポソームの膜に結合させることができる。核酸リガンドが複合体の外部に突出している実施態様においては核酸リガンドは標的化能によって働く。
【0082】
他の実施態様においては、本発明の複合体は、非免疫原性高分子量化合物たとえばPEG,ジアルキルグリセロール、ジアシルグリセロール、またはコレステロールに結合した核酸リガンドから構成される。この実施態様においては、複合体の薬物動態学的性質は核酸リガンド単独の場合に比較して改善される。上に述べたように、結合は共有結合または非共有結合相互作用を介することができる。
【0083】
好ましい実施態様においては、核酸リガンドは、PEG,ジアルキルグリセロール、ジアシルグリセロール、またはコレステロール分子と共有結合によって結合される。また上述のように、共有結合が採用された場合、PEG,ジアルキルグリセロール、ジアシルグリセロールまたはコレステロールは核酸リガンドの様々な位置に共有結合させることができる。PEGまたはジアシルグリセロールが用いられる実施態様では、核酸リガンドは、マレイミドもしくはビニルスルホン官能基によりまたはホスホジエステル結合を介して5’チオールに結合させることが好ましい。ジアルキルグリセロールおよびコレステロールが用いられる実施態様では、核酸リガンドはホスホジエステル結合を介して結合させることが好ましい。ある種の実施態様では、複数個の核酸リガンドを単一のPEG,ジアルキルグリセロール、ジアシルグリセロールまたはコレステロール分子に結合させることができる。核酸リガンドは同一または異なる標的に対するものであってよい。
【0084】
多重核酸リガンドが同一の標的に対するものである実施態様では、標的との多重結合相互作用により結合活性の増大が起こる。さらに他の実施態様においては、複数個のPEG,ジアルキルグリセロール、ジアシルグリセロール、またはコレステロール分子が互いに結合することができる。これらの実施態様においては、同一の標的または異なる標的に対する1または2個以上の核酸リガンドを、それぞれのPEG,ジアルキルグリセロール、ジアシルグリセロール、またはコレステロール分子に結合させることができる。これも各核酸リガンドのそのセレックス標的に対する結合活性の増大を生じる。同一のセレックス標的に特異的な複数の核酸リガンドがPEG,ジアルキルグリセロール、ジアシルグリセロールまたはコレステロールに結合している実施態様においては、同一の標的の間での特異的相互作用を発生させるために、同一の標的を互いに接近させる可能性がある。
【0085】
異なる標的に特異的な複数の核酸リガンドがPEG,ジアルキルグリセロール、ジアシルグリセロールまたはコレステロール分子に結合している場合には、それらの標的の間での特異的相互作用を発生させるために、異なる標的を互いに接近させる可能性がある。さらに、同一の標的または異なる標的に対する核酸リガンドがPEG,ジアルキルグリセロール、ジアシルグリセロール、またはコレステロール分子に結合している実施態様では、薬物を同じくPEG,ジアルキルグリセロール、ジアシルグリセロール、またはコレステロールに結合させることができる。すなわち、複合体は薬物の標的化送達を提供し、この場合、PEG,ジアルキルグリセロール、ジアシルグリセロール、またはコレステロールはリンカーとして働く。
【0086】
本発明の他の実施態様においては、複合体は非免疫原性高分子量化合物たとえばマグネタイトに結合した核酸リガンドから構成される。上に述べたように、結合は共有結合または非共有結合相互作用によることができる。好ましい実施態様においては、核酸リガンドはマグネタイトと共有結合によって結合される。マグネタイトは、結合のために異なる化学的機能を発揮する様々な化合物でコーティングすることができる(たとえば、デキストラン、親油性化合物)。マグネタイトと結合した核酸リガンドは核磁気共鳴造影に使用するマグネタイトの標的化送達を提供する。
【0087】
以下の実施例は本発明の説明および例示のために提供されるものであって、本発明の限定として受け取るべきではない。以下の実施例に記載する核酸リガンドの構造は図1に示す。実施例1には核酸リガンドの脂質、ジアルキルグリセロールまたはジアシルグリセロールとの接合、ならびに自動合成による薬物動態調節物質の導入を記載する。実施例2にはPEGおよびコレステロールの核酸リガンドとの接合を記載する。核酸リガンドに対する修飾は、PEG−接合およびコレステリル化核酸リガンドの結合親和性が非接合および非コレステリル化分子の場合と同一であったように、そのセレックス標的に対する結合能を妨害することはない。実施例3には、コレステロール誘導体化核酸リガンドの脂質処方への導入を記載する。トロンビン核酸リガンドを含有する核酸リガンド/リポソーム処方の活性をインビトロ凝血阻害アッセイで試験した。リポソーム処理条件は核酸リガンドの抗凝血活性に影響しない。さらに、リポソームの結合は核酸リガンドのその標的に対する結合能および阻害能に影響しない。実施例4にはコレステロール単独、ジアルキルグリセロール単独、PEG単独、コレステロールとリポソーム、ジアルキルグリセロールとリポソーム、およびPEGとリポソームに結合した核酸リガンドの薬物動態学的性質を記載する。プリンおよびピリミジンの2’糖位置で修飾された核酸リガンドも包含する。実施例5には陽イオン性リポソーム−核酸リガンド複合体の毒性およびヒトリンパ球による細胞内取り込みを記録する。実施例6〜10は予め形成されたリポソームへの核酸リガンドの導入に対する以下の影響、すなわち、脂質の陰性電荷の変動、コレステロール含量の変動、固定量の核酸リガンドでの脂質/核酸リガンド比の変動、固定量のSUVでの脂質/核酸リガンド比の変動、およびリン脂質の鎖長の変動の影響を記載する。実施例11は、リポソーム処方中への核酸リガンド/コレステロール接合体の導入が起こったことを非変性ゲル電気泳動によって証明する。実施例12は、核酸リガンドのリポソーム中への受動的封入を可能にする方法を記述する。実施例13には、核酸リガンドをリポソーム中に遠隔負荷できる方法を記載する。実施例14は核酸リガンドのリポソームへの共有結合による接合を記載する。実施例15には核酸リガンド−リポソーム複合体のインビトロおよびインビボ効率を記載する。
【実施例】
【0088】
実施例1オリゴヌクレオチド修飾のための脂質、PEG,ジアルキルグリセロールおよびジアシルグリセロール試薬
この実施例では、核酸リガンドの脂質および/またはPEGまたはジアシルグリセロールまたはジアルキルグリセロールとの接合、ならびにホスホロアミダイトもしくはH−ホスホネートカップリング化学を用いる自動合成による薬物動態学的修飾物質の導入を説明する。以下に示す反応図中、実線の矢印は完成した工程を示し、点線の矢印は未完成の工程を示す。反応図1は、スルフヒドリル−修飾オリゴヌクレオチド基質にカップリングするためのジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンマレイミド試薬の調製を示す。この操作は、単純な脂肪族ジおよびトリアミン基質からビスおよびトリス−マレイミド試薬の製造のためにCheronis ら[Cheronis,J.C.ら,J.Med.Chem.(1992)35:1563−1572]によって報告された操作と同様である。リン脂質のメトキシカルボニルマレイミドでの処理により、性質未決定の中間体の形成が起こり、これはスルフヒドリル−修飾オリゴヌクレオチドとインキュベーションすると、オリゴヌクレオチドのジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン接合体への完全な変換が起こる(下記参照)。同様の試薬はAvanti Polar Lipidsから市販品も入手できる。
反応図1
【0089】
【化1】

【0090】
オリゴヌクレオチドを自動合成条件下に修飾できれば多くの利点があることは明白である。脂質および/またはPEG残基の標準的自動合成条件下での容易な導入を可能にする試薬を調製した。最初に、アミノ基の化学選択的な官能化ついでヒドロキシル基のホスフィチル化により多数の関心オリゴ修飾試薬に放散的に変換できる多目的モジュール10を設計し合成した(反応図2)。修飾基(アミンリガンド)および2’−ヒドロキシル基の誘導体化によって導入される活性化ホスフェート前駆体(ホスホロアミダイト、H−ホスホネート、またはホスフェートトリエステル)に関して、この戦略が提供する柔軟性は注目に値する。さらに、この方法で調製される自動合成試薬のグリセロール核は、生成物を内部鎖の位置または5’末端におけるオリゴ修飾に適当にする。モジュール10の別法による合成を反応図3に示す。テトラエチレングリコール(1;TEG)を塩基性メジウム好ましくはピリジン中で、限定量のp−トルエンスルホニルクロリド好ましくは10モル%で処理すると、モノトシレート2aに誘導体化される。この方法では2aはシリカゲルろ過後75%の収率で得られた。2aのTEGフタルイミド3aへの変換は塩基としてジアザビシクロウンデカン(DBU)の存在下にDMF溶液中で加温してフタルイミドにより処理すると、80%の収率で達成された。フタルイミド3aのアリル化(アリルブロミド,NaH,THF/DMF)は60%の収率でアリルTEG4aを与えた。4aを0.5%OsOおよび1.1当量のN−メチルモルホリンN−オキシド(NMO)により処理するとジオール中間体が得られ、これはさらに精製することなくジメトキシトリチル(DMT)エーテル誘導体に、2工程の総収率89%で変換された。最後に、40%MeNHを用いてアミンの脱保護を行うと10が精製後収率95%で得られた。モジュール10はさらにPEG−ニトロフェニルカルボネート(PEG−NPC;Shearwater Polymers)で処理して精密化した。この方法で、ホスフィチル化前駆体12(反応図4)が好収率で調製された。12のホスホロアミダイト13およびH−ホスホネート14両者への更なる変換も実施された。
反応図2
【0091】
【化2】

【0092】
反応図3
【0093】
【化3】

【0094】
【化4】

【0095】
自動合成によるオリゴヌクレオチド修飾のための脂質試薬の設計には、上述のジパルミトイルホスファチジル誘導体におけるようにネイティブなジアシルグリセロールのエステル結合を合成オリゴの回収に必要な塩基性脱保護プロトコールに安定なグリセロール−アルキル結合によって置換する必要がある。検討が最初に選択された結合は既知のジパルミトイルグリセロール誘導体15(Sigmaから入手できる)におけるようにエーテル結合であったが、長鎖アルキルカルバメート(またはエーテルとカルバメートの組合せ)も適当と思われる。ジパルミトイルグリセロールはアシルカルボニルイミダゾール(CDI,ピリジン)として活性化し、この活性化中間体をモジュール10にカップリングした(ピリジン、80℃;44%)。16のホスフィチル化[CIP(iPrN)OCHCHCN;ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA),CHCl;59%]はホスホロアミダイト17を与えた(反応図5)。アミダイト17のC18アナログのクロロホルメート中間体を経由する合成を反応図6に示す。ジアルキルグリセロール(18;DAG)はトルエン中過剰のホスゲンで処理して相当するクロロホルメート19に変換した。19とアミノアルコール10の接合はピリジン中で実施し、精製後の収率57%で付加物20が得られた。20の二級ヒドロキシルの標準条件下でのホスフィチル化によって、ホスホロアミダイト21が95%の収率で得られた。アミダイト17のトリヌクレオチド(TTT)の5’−末端へのカップリングは、ABI394自動オリゴヌクレオチドシンセサイザーによって、脂質アミダイトのためにカップリング時間を延長した(カップリング2×30分)わずかに改変した合成サイクルを用いて行い、平行トリチル陽イオン分析で測定して94+%のカップリング効率が得られた。
反応図5
【0096】
【化5】

【0097】
反応図6
【0098】
【化6】

【0099】
実施例A−ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)マレイミド試薬の合成
200mg(0.289ミリモル)のDPPEおよび54mg(0.347ミリモル)のメトキシカルボニルマレイミドの10mlTHF/飽和NaHCO溶液(1:1)中懸濁液を室温で攪拌した。12時間後、混合物を100mlのEtOAcで処理し、有機相(生成物のゼラチン状懸濁液を含有する)を水相から分離した。有機相を真空中で濃縮し、MeOHと2回共蒸発させ、得られた白色の固体をEtOAcと3回磨砕した。この物質はさらに分析または精製することなく、オリゴヌクレオチド接合実験に用いた(下記参照)。
【0100】
実施例B:自動合成モジュール10の合成および推敲
テトラエチレングリコールジメトキシトリチルエーテル(2):テトラエチレングリコール(76.4mL,0.44モル)を300mLの無水ピリジンに溶解し、0℃に冷却した。4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(15g,0.044モル)を固体として、攪拌しながら添加した。反応フラスコを乾燥管で覆い、反応混合物を一夜放置して温度を室温まで上昇させた。反応混合物を真空中、低い温度(<30℃)で濃縮した。残留物を300mLの酢酸エチルで希釈し、3×300mLの水で抽出した。水層を合わせて酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせて硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮した。粗製の残留物を1000mLのシリカゲル(5%トリエチルアミン含有ヘキサンでカラムに湿式充填)を用い、5%トリエチルアミン含有ヘキサン中10−20−40−60−80%酢酸エチルついで5%トリエチルアミン含有酢酸エチルで溶出するフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。19.51g(89%)のが、金色の油状物として収集された。HNMR(300MHz,CDCl)δ 7.47−7.16(重複シグナル,9H),6.79(d,4H),3.72(s,6H),3.66−3.62(m,2H),3.22(t,J=5.22Hz,1H),2.96(br t,1H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ 158.12,144.86,136.04,129.81,127.93,127.49,126.40,112.78,85.67,72.31,70.48,70.44,70.12,62.89,61.39,54.89;低分解能MS m/eC1525S(M− DMT+ 1)での計算値 349.167,分析値 349.1.
テトラエチレングリコールジメトキシトリチルエーテルp− トルエンスルホネート(3):化合物(5.0g,10.06ミリモル)を50mLの無水ジクロロメタンに溶解し、0℃に冷却した。トリエチルアミン(18.2mL,13.1ミリモル)、ついでp−トルエンスルホニルクロリド(1.92g,10.06ミリモル)を固体として攪拌しながら添加した。反応混合物を一夜冷蔵庫に保存した。TLC分析は反応がほぼ80%完了したことを示した。さらに、0.5当量のトリエチルアミンおよび0.5当量のp−トルエンスルホニルクロリドを加え、反応混合物を室温で一夜攪拌した。反応混合物をセライトを通してろ過し、濃縮した。残留物を300mLのシリカゲル(5%トリエチルアミン含有ヘキサンでカラムに湿式充填)を用い、5%トリエチルアミン含有ヘキサン中25−50−75%酢酸エチルついで5%トリエチルアミン含有酢酸エチルで溶出させるフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。5.7g(87%)のが橙色の油状物として収集された。H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.75(d,2H),7.44−7.12(m,11H),6.78(d,4H),4.12−4.09(m,2H),3.73(s,6H),3.66−4.54(m,13H),3.22(t,J=3.87Hz,2H),2.41(s,3H),
テトラエチレングリコールモノトシレート(2a):テトラエチレングリコール(200mL,1.15モル)を500mLのピリジンに溶解し、0℃に冷却し22.0g(0.115モル)のp−トルエンスルホニルクロリドで処理した。溶液が完成したならば、反応混合物を冷蔵庫中に一夜放置し、ついで真空中で濃縮した。残留物を800mLのEtOAcで希釈し、3×600mLのHOにより抽出した。HO分画をEtOAcで逆抽出し、EtOAc分画を合わせて飽和NaHPO水溶液で抽出した。有機層をMgSO上で乾燥し、濃縮すると、無色の油状物が得られた。この油状物を800mLのシリカゲルを使用してフラッシュクロマトグラフィーに付し、ヘキサン中25%EtOAc−50%EtOAc,ついでEtOAc,ついでEtOAc中10%MeOH−20%MeOHで溶出して精製すると23.7g(60%)の純粋な生成物および微量の不純物含有生成物(11%)が得られた。2aH NMR(300MHz,CDCl)δ 7.77(d,J=8.1Hz,2H),7.32(d,J=8.1Hz,2H),4.13(t,J=4.8Hz,2H),3.68−3.53(m,14H),2.58(t,J=5.6Hz,1H),2.42(s,3H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ 168.2,158.3,144.8,135.9,133.8,132.0,129.9,128.0,127.7,126.6,123.1,113.0,85.9,73.0,70.6,70.4,70.0,69.7,67.8,64.4,55.1,37.1;低分解MS m/eC1524S(M+1)として349.1.
テトラエチレングリコールモノフタルイミド(3a):400mLの無水DMF中31.96g(0.092モル)の2aの溶液を攪拌しながら、これに14.2g(1.05当量)のフタルイミドおよび14.4mL(1.05当量)の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンを加えた。この溶液を70℃に18時間加熱し、真空中において濃縮した。粗製の黄色油状物を1600mLのシリカゲルを用いてフラッシュクロマトグラフィーに付し、ヘキサン中25%EtOAc−50%EtOAc,EtOAc,ついでEtOAc中10%MeOH−20%MeOHで溶出して精製すると、23.8g(80%)の3aが油状物として得られた。放置すると3aは蝋状の白色固体となった。H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.84−7.78(m,2H),7.70−7.66(m,2H),3.86(t,J=5.6Hz,2H),3.70(t,J=5.6Hz,2H),3.64−3.51(m,12H),2.67(bs,1H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ 168.2,133.8,132.0,123.1,72.4,70.5,70.4,70.2,70.0,67.8,61.6,37.2.
化合物4aの合成:150mLのTHFおよび15mLのDMF中15g(0.0464モル)の3aの溶液をAr下に0℃に冷却した。この溶液にアリルブロミド(6.0mL,1.5当量)、ついで1.76g(1.5当量)のNaHを固体として加えた。不透明な黄色の懸濁液を0℃で30分間ついで室温で18時間攪拌した。50〜100mLのMeOHを加えて濃縮しついで混合物を真空中で濃縮した。粗製の物質を1500mLのシリカゲルを用いフラッシュクロマトグラフィーに付し、ヘキサン中25%EtOAc−50%EtOAc−75%EtOAcついでEtOAcついでEtOAc中10%MeOHで溶出すると、11.05g(65%)の4aが黄色油状物として得られた。H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.84−7.80(m,2H),7.72−7.67(m,2H)5.94−5.84(m,1H),5.28−5.14(m,2H),3.99(d,J=5.61Hz,2H),3.88(t,J=5.85Hz,2H),3.72(t,J=5.76Hz,2H),3.64−3.54(m,13H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ 168.2,134.6,133.7,131.9,123.0,116.9,72.0,70.4,69.9,69.2,67.7,37.0.
(S)−(+)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル−4−イルメチル(ジメトキシトリチル)テトラエチレングリコール(5):焔で乾燥したフラスコに水素化ナトリウム(0.56g,23.5ミリモル)を秤量し、70mL の無水テトラヒドロフランおよび15mLの無水N,N−ジメチルホルムアミドを加えた。この懸濁液をアルゴン下0℃に冷却し、シリンジを介して(S)−(+)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール(2.7mL,21.7ミリモル)を滴下して加えた。0℃で30分間攪拌したのち、15mLのテトラヒドロフラン中化合物(11.7g,18.1ミリモル)を滴下ろ斗を通して滴下して加えた。反応混合物を室温で一夜攪拌し、100mLの飽和炭酸水素ナトリウムで反応を停止させ、300mLのジエチルエーテルで希釈した。層を分離し、エーテル層を300mLの水で3回抽出した。エーテル層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮した。残留物を500mLのシリカゲルを用いてフラッシュクロマトグラフィーに付し、最初にヘキサン、ついでヘキサン中10−20−30−40−50−75%酢酸エチル、ついで酢酸エチルで溶出して精製した。8.93g(82%)のが無色の油状物として収集された。H NMR(CDCl)δ 7.46−7.43(m,2H),7.34−7.17(m,7H),6.78(d,4H),4.23(pentet,J=6.1Hz,1H),4.00(t,8.2H),3.75(s,6H),3.71−3.60(m,15H),3.53(dd,J=10.0,5.7Hz,1H),3.52(10.4,J=5.2Hz,1H),1.39(s,3H),1.33(s,3H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ 158.24,144.97,136.20,129.93,128.07,127.61,126.51,112.89,109.21,85.77,74.57,72.20,70.82,70.59,70.40,69.68,66.67,63.01,55.04,26.67,25.29; 低分解MS m/eC3550N(M+NH)として計算値 628.399,分析値 628.5.
(S)−(+)−2,2−ジメチル−1,3− ジオキソラニル−4− イルメチルテトラエチレングリコール(6):100mLの80%酢酸を0℃に冷却し、ついで化合物(6.6g,10.8ミリモル)を加えた。澄明な橙色の溶液を0℃で1時間攪拌した。メタノール(100mL)を加え、反応混合物を真空中低い温度(<30℃)で濃縮した。残留物を200mLのシリカゲルを用いてフラッシュクロマトグラフィーに付し、最初に酢酸エチル、ついで酢酸エチル中5−10−15−20%メタノールで溶出して精製した。2.5g(74%)のが無色油状物として収集された。H NMR(CDCl)δ4.21(pentet,J=6.2 Hz,1H),4.08(dd,J=5.9,4.8Hz,1H),3.82−3.35(m,19H),2.93(br s,1H),1.34(s,3H),1.28(s,3H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ 109.20,74.50,72.42,72.14,70.76,70.39,70.32,70.14,66.63,61.48,26.61,25.23;低分解能MS m/e C3550N(M+NH)として計算値 628.399,分析値 628.5.
(S)−(+)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル−4−イルメチル(フタルイミド)テトラエチレングリコール(8):アルコール(4.06g,13.2ミリモル)を無水ジクロロメタン50mLに溶解し、0℃に冷却した。トリエチルアミン(3.7mL,26.3ミリモル)、ついでp−トルエンスルホニルクロリド(3.26g,17.1ミリモル)を加えた。反応フラスコを乾燥管で保護し、反応混合物を一夜放置して温度を室温まで上昇させた。反応混合物をセライトを通してろ過し、ろ液を真空中で濃縮した。粗製の物質を400mLのシリカゲル上フラッシュクロマトグラフィーに付し、最初にヘキサン中10%酢酸エチル、ついで20−40−60−80−100%酢酸エチル、ついで酢酸エチル中10%メタノールで溶出して精製した。中間体のトシレート5.21g(85%)が、金色の油状物として収集された。H NMR(400MHz,CDCl)δ7.79(d,J=8.1Hz,2H,トシル芳香族),7.32(d,J=8.1Hz,2H,トシル芳香族),4.25(pentet,J=6.0Hz,1H),4.13(t,4.7H),4.02(dd,J=8.12,6.4Hz,1H),3.71−3.40(m,18H),2.42(s,3H),1.46(s,3H),1.34(s,3H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ 144.74,133.1,129.76,127.91,109.8,74.63,72.27,70.89,70.68,70.52,70.44,69.19,68.60,66.74,64.1,26.73,25.34,21.59;低分解MS m/e C2138NS(M+NH)として計算値 480.364,分析値 480.2.このトシレート(5.2g,11.24ミリモル)を60mLの無水ジメチルホルムアミドに溶解した。1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(1.7mL,11.24 ミリモル)、ついでフタルイミド(1.65g,11.24ミリモル)を加えた。反応混合物を70℃に一夜加熱した。反応混合物を真空中で濃縮し、400mLのシリカゲルを用いてフラッシュクロマトグラフィーに付し、ヘキサン中50%酢酸エチルで溶出して精製した。3.96g(81%)のが無色油状物として収集された。H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.83−7.79(m,2H),7.72−7.68(m,2H),4.26(pentet,J=6.0Hz,1H),4.03(dd,J=8.2,6.5Hz,1H),3.88(t,J=5.8Hz,1H),3.74−3.44(m,18H),1.39(s,1H),1.33(s,3H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ 168.21,133.88,132.10,123.19,109.33,74.66,72.30,70.90,70.52,70.04,67.87,66.79,37.19,26.75,25.37;低分解MS m/e C2235(M+NH)として計算値 455.288,分析値 455.2.
1−ジメトキシトリチル−3−(フタルイミドテトラエチレングリコリル)−sn−グリセロール(9):反応図2に従い、化合物を以下のように合成する。アセチル(5.16g,11.8ミリモル)を無水メタノール 100mLに溶解し、無水p−トルエンスルホン酸(100mg)を加えた。反応フラスコを乾燥管で保護し、反応混合物を室温で2.5時間攪拌し、ついで無水ピリジン10mLを加えて中和し、真空中で濃縮し、無水ピリジンと共蒸発させた。得られたジオールをついで150mLの無水ピリジンに溶解し、0℃に冷却した。4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(4.39g,13ミリモル)を固体として加えた。反応フラスコを乾燥管で保護し、反応混合物を一夜放置して温度を室温に上昇させた。メタノール(50mL)を加え、反応混合物を真空中で濃縮した。粗製の物質を700mLのシリカゲル(ヘキサン中5%トリエチルアミンによりカラムに湿式充填)を用い、フラッシュクロマトグラフィーに付し、最初にヘキサン中10%酢酸エチル(5%トリエチルアミン含有)、ついで20−40−60−80−100%酢酸エチル(5%トリエチルアミン含有)で溶出して精製した。6.98g(82%)のが淡黄色の油状物として収集された。H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.80(dd,J=5.4,3.1 Hz,2H),7.68(dd,J=5.4,3.1Hz,2H),7.42−7.14(m,9H,DMT),6.79(d,4H,DMT),3.95(br m,1H),3.86(t,J=5.9Hz,1H),3.75(s,6H),3.70(t,J=5.6Hz,1H),3.63−3.37(m,18H),3.16(m,2H),2.84(br d,1H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ 168.15,158.32,144.79,135.95,133.82,132.02,129.95,128.04,127.69,126.64,123.12,112.97,85.89,72.97,70.64,70.43,69.97,69.74,67.80,64.34,55.10,37.14; 低分解MS m/e C404910(M+NH)として計算値 717.398,分析値 715.5.
反応図3に従い、化合物は以下の通り合成した。100mLのアセトンおよび1mLのHO中4a(10.13g,0.0279ミリモル)の溶液を攪拌しながらこれに3.98g(1.22当量)のN−メチルモルホリンN−オキシドを加えた。この懸濁液に1.75mL(0.005当量)の四酸化オスミウムをiPrOH中2.5%溶液として加えた。OsO溶液の添加後には反応混合物は澄明な黄色を呈した。TLC分析が4aの完全な変換を示したのち(約16時間)、反応混合物を1.5gの亜硫酸水素ナトリウムおよび5.0gのフロリジルで処理し、30分間攪拌した。懸濁液をフロリジルを通してろ過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。この粗生成物を、1.0gの4aから同様の方法で調製された他のバッチと合わせた。合わせたロットから100mL部のピリジンを用い2回共蒸発し、残留物を300mLのピリジンに溶解した。この溶液を0℃に冷却し、4,4’−ジメトキシトリチルクロリド10.89g(1.05当量)を加えた。反応フラスコを乾燥管を挿入し、反応混合物を室温で16時間攪拌した。この溶液を50mLのMeOHで処理し、水浴の温度を40℃以下に保持して真空中で濃縮した。粗製の油状物を1100mLのシリカゲル(ヘキサン中3%トリエチルアミンを用いカラムに湿式充填)を用いフラッシュクロマトグラフィーに付し、ヘキサン(すべて3%トリエチルアミン含有)中10−100%EtOAc(すべて3%トリエチルアミン含有)で溶出して精製すると、21.3g(2工程後89%)のが黄色の油状物として得られた。H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.80−7.77(m.2H),7.66−7.64(m,2H),7.39−7.22(m,9H),7.20−6.76(m,4H),3.97(bs,1H),3.84(t,J=5.97Hz,2H),3.74(s,6H),3.68(t,J=5.7Hz,2H),3.60−3.49(m,14H),3.13−2.76(m,2H),2.00(bs,1H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ 168.2,158.3,144.8,135.9,133.8,132.0,129.9,128.0,127.7,126.6,123.1,113.0,85.9,73.0,70.6,70.4,70.0,69.7,67.8,64.4,55.1,37.1;低分解MS m/e C404510N(M+NH)として717.5.
1−ジメトキシトリチル−3−(アミノテトラエチレングリコリル)−sn− グリセロール(10):反応図2に従い、化合物10を以下のように合成した。化合物(5.2g,7.2ミリモル)をHO中40%メチルアミン50mLに取り、出発原料を可溶化するために10mLのメタノールを加えた。反応混合物を50℃に5時間加熱し、ついで真空中で濃縮し、トルエンと共蒸発させた。粗製の物質を200mLのシリカゲル上フラッシュクロマトグラフィーに付し、ジクロロメタン中15%メタノール性アンモニアで溶出して精製した。3.94g(96%)の10が淡黄色の油状物として収集された。H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.46−7.21(m,9H,DMT),6.81(d,4H,DMT),4.00(m,1H),3.80(s,6H),3.70−3.49(重複m,18H),3.20(dd,J=9.24Hz,1H),3.12(dd,J=9.21Hz,1H),2.84−2.80(m,3H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ 158.30,144.82,136.01,129.95,128.04,127.66,126.61,112.95,85.85,73.46,72.85,70.55,70.45,69.99,69.51,64.43,55.10,41.40; 低分解MS m/e C3244N(M+1)として計算値 570.353,分析値 570.4.
反応図3に従い、化合物10は以下のように合成した。HO中40%メチルアミン50mLに化合物(5.2g,7.2ミリモル)を取り、10mLのメタノールを出発原料を可溶化するために添加した。反応混合物を50℃に5時間加熱し、ついで真空中で濃縮し、トルエンと共蒸発させた。粗製の物質を200mLのシリカゲル上フラッシュクロマトグラフィーに付し、ジクロロメタン中15%メタノール性アンモニアで溶出して精製した。3.94g(96%)の10が淡黄色の油状物として収集された。H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.46−7.21(m.9H,DMT),6.81(d,4H,DMT),4.00(m,1H),3.80(s,6H),3.70−3.49(重複m,18H),3.20(dd,J=9.24,5.49Hz,1H),3.12(dd,J=9.21,6.0Hz,IH),2.84−2.80(m,3H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ 158.30,144.82,136.01,129.95,128.04,127.66,126.61,112.95,85.85,73.46,72.85,70.55,70.45,69.99,69.51,64.43,55.10,41.40;低分解MS m/e C3244N(M+1)として計算値 570.353,分析値 570.4.
PEG試薬12:10mLのDMF中0.24g(0.41ミリモル)の10の溶液を攪拌しながら、これに2.08g(0.4ミリモル)のメトキシ−PEG5000−ニトロフェニルカルボネート(Shearwater Polymers,Inc.)を加えた。混合物を70時間攪拌し、次に真空中で濃縮した。残留物をEtOAcに溶解し、有機相を30mL部の10%NaOHで3回洗浄した。100mLのシリカゲル(5%EtN含有ジクロロメタンを用い湿式充填)を用いてフラッシュクロマトグラフィーに付しジクロロメタン中20%メタノール性アンモニアで溶出して精製すると、1.97g(85%)の12が白色固体として得られた。H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.42−7.39(d,2H,DMT),7.39−7.18(m,7H,DMT),6.79(m,4H,DMT),5.70(br m,1H),4.21(m,1H),3.97(m,1H),3.88(t,J=4.4Hz,1H),3.81(s,6H,DMT),3.78−3.50(br m,〜500,PEG Hs),3.42−3.31(重複ms),3.35(s,PEG Me),3.16(m,2H),2.84(br d,4.2H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ 159.36,157.19,146.15,136.95,130.83,128.86,128.65,127.61,113.86,86.48,73.58,72.88,72.5−70.0(PEG 炭素),68.31,65.77,64.45,41.36,30.75(未帰属不純物).
PEGホスホロアミダイト試薬13:60mLのTHF中2.22g(0.4ミリモル)の12の溶液を3Åモルキュラーシーブ上で攪拌しながら、これに0.24mL(1.39ミリモル)のジイソプロピルエチルアミンおよび0.1mL(0.44ミリモル)の2−シアノエチルN,N−ジイソプロピルクロロホスホロアミダイトを添加した。
【0101】
5時間後、31P NMRは所望の生成物の形成ならびに加水分解したホスフィチル化試薬を示し、さらに0.05mL(0.22ミリモル)の2−シアノエチルN,N−ジイソプロピルクロロホスホロアミダイトを添加した。12時間後、0.07mL(0.4ミリモル)のDIPEAおよび0.1mLのクロロホスホロアミダイトを加えた。混合物を2日間攪拌し、セライトを通してろ過し、真空中で濃縮した。残留物を数回エーテルと磨砕した。31P NMR:δ 156.4,155.8。δ 20.6,19.8にもシグナルが観察され、加水分解されたホスフィチル化試薬に相当するものと思われた。
【0102】
PEG H−ホスホネート試薬14:10mLのMeCN中無水イミダゾール(0.4g;5.9ミリモル)溶液を0℃で攪拌しながら、これに0.17mL(1.9ミリモル)のPCl、ついで0.86mL(6.2ミリモル)のEtNを添加した。この混合物に、12mLのMeCN中3.0g(0.55ミリモル)の12の溶液を滴下して加えた。反応混合物を放置して温度を室温まで上昇させ、16時間攪拌し、10mLの0.1Mトリエチルアンモニウム重炭酸塩で処理し、真空中で濃縮した。トリエチルアミンついでトルエンを粗製の残留物から共蒸発させ、ついで生成物をジクロロメタンに溶解した。有機相を1.0Mトリエチルアンモニウム重炭酸塩(TEAB)溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮した。300mLのシリカゲル(ヘキサン/EtN95:5で湿式充填)上フラッシュクロマトグラフィーに付し、ジクロロメタン中2−4−6−8−10−12−15%メタノール性アンモニアで溶出して精製すると、1.95gの生成物が白色固体として得られた。31P NMR:δ 10.3,10.2.
脂質ホスホロアミダイト17の合成:ピリジン10mL中540mg(1ミリモル)の1,2−ジ−O−パルミチルrac−グリセロールの溶液を195mg(1.2ミリモル)のカルボニルジイミダゾールで処理し、得られた混合物を室温で一夜攪拌した。この混合物に570mg(1ミリモル)のアミノアルコールを3mLのDMF中溶液として添加した。混合物を一夜40℃に加温したのち、反応混合物からのアリコートのH NMR分析を行ったところ生成物の形成は無視できる程度であった。混合物を80℃に6時間加熱し(H NMRによれば生成物:出発原料は約1:1)、ついで真空中で濃縮した。粗製の残留物を125mLのSiOゲル(ヘキサン中で充填)カラムに適用し、ヘキサン(2%TEA含有)中20−50%EtOAcの勾配で生成物を溶出すると、500mg(44%)の中間体16が透明の蝋状物として得られた。16H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.42(d,J=7.2Hz,2H),7.30−7.18(m.7H),6.76(d,J=8.2Hz,4H),5.34(br t,1H),4.20−3.25(重複シグナル),3.16(m,2H),1.53(m),1.24(m),0.86(t,J=6.5Hz,6H).アルコール16(500mg,0.44ミリモル)を4mLのCHClならびに0.15mL(2当量)のDIPEAに溶解した。この溶液に0.15mL(0.66ミリモル)の2−シアノエチル(N,N−ジイソプロピルアミノ)クロロホスホロアミダイトを添加した。3時間後、TLCは2スポットへの変換を示し、混合物をCHClで希釈し、NaHCO溶液で洗浄した。有機相をNaSO上で乾燥し、濃縮した。粗製の残留物を50mLのSiOゲルカラム(ヘキサン中で充填)に適用し、生成物をヘキサン(2%TEA含有)中20%EtOAcで溶出し、350mg(59%)のホスホロアミダイト17を透明の蝋状物として得た。
【0103】
31P NMR(CDCl)δ 151.55,151.08.
脂質− オリゴの自動合成:ホスホロアミダイト17を、T−3マー(ABI394型装置で標準自動DNA合成により調製)の5’−末端にMeCN中40%THF中0.1Mの17溶液のカラムへの各30分2回暴露からなる改良カップリングサイクルを用いて結合させた。平行トリチル分析はアミダイト17について94%のカップリング効率を示した。
【0104】
クロロホルメート19:トルエン60mL中3g(5.03ミリモル)の1,2−ジ−O−オクタデシル−sn−グリセロール21の溶液を攪拌しながら、これに1.93Mホスゲン溶液20mlを加えた。アルコール出発原料の残留が認められなくなるまで(濃縮アリコートのH NMR分析)ホスゲン溶液を追加した(2×10mL;総ホスゲン量15.4当量)。過剰のホスゲンおよびHClをアスピレーターで除去したのち反応混合物を真空中で濃縮すると、3.3g(98%)の所望のクロロホルメート19が白色の粉末として得られた。H NMR(300MHz,CDCl)δ 4.45(dd,J=11.22,3.69Hz,1H),4.34(dd,J=11.22,6.15Hz,1H),3.65(m,1H),3.56−3.40(m,6H),1.53(m,4H),1.24(m,62H),0.87(t,J=6.36Hz,6H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ 75.90,71.91,71.35,70.93,69.36,31.99,29.96−29.44(炭化水素鎖からの重複シグナル),26.13,26.04,22.76,14.18.
接合体20:60mLのピリジン中2.25g(3.95ミリモル)の10の溶液を攪拌しながら、これに2.6gのジステアリルグリセロールクロロホルメート18を添加した。2時間後の濃縮アリコートのH NMR分析により、クロロホルメートの残留は認められなかったので、混合物を真空中で濃縮した。この粗製の残留物を、0.5g(0.88ミリモル)の10および0.58gのクロロホルメートから同様にして調製した生成物と合わせ、合わせたロットを100mLのシリカゲル(2%トリエチルアミン含有ヘキサン中で充填)上フラッシュシリカゲルクロマトグラフィーに付し、200mLのヘキサン、ついでそれぞれ250mLのヘキサン中10−20および30%EtOAc、500mLのヘキサン中40%EtOAc、ついでそれぞれ250mLのヘキサン中50−60−70および80%EtOAcで溶出して精製した。生成物を含有する分画を濃縮すると3.3g(57%)の接合体20が得られた。
【0105】
ホスホロアミダイト21:25mLのCHCl中3.8g(3.26ミリモル)の接合体の溶液を攪拌しながら、これに1.14mL(6.52ミリモル)のジイソプロピルエチルアミン、ついで1.09mL(4.88ミリモル)の2−シアノエチルN,N−ジイソプロピルクロロホスホロアミダイトを添加した。2時間後、混合物をCHClで希釈し、飽和NaHCO溶液で洗浄し、NaSO上で乾燥し、濃縮した。
【0106】
粗製の残留物を125mLのシリカゲルカラム(2%トリエチルアミン含有ヘキサン中で充填)上フラッシュクロマトグラフィーに付し、100mLのヘキサン、ついでそれぞれ250mLのヘキサン中10および20%EtOAc、500mLのヘキサン中30%EtOAc、ついで250mLのヘキサン中50%EtOAcで溶出して精製した。生成物を含有する分画を濃縮すると4.2g(95%)のホスホロアミダイト21が得られた。31P NMR(CDCl)δ 151.52,151.08.
実施例2PEG接合およびコレステロール誘導体化核酸リガンドの調製および機能的性質
核酸リガンドのPEG3400接合体は非接合分子の結合親和性を維持する
bFGFリガンド/PEG−3400接合体のbFGFに対する結合能を調べた。
【0107】
分子225t3(配列番号:10)、すなわちbFGFに対する高親和性DNAリガンドを一級アミン−NHSカップリング反応を介するPEGとの接合に選択した。
リガンド225t3 は1nMの結合親和性を有し、Tm68℃おいてブラント末端ヘアピンにフォールディングする。リガンド225t3は、3’−アミノ修飾剤C7 CPG(Glen Research,Sterling,VA)により標準DNA合成法を使用して修飾し、225t3 N(配列番号:11)と呼ぶ。225t3 NはpH8.5に緩衝化した20%(v/v)ジメトキシホルムアミド、80%(v/v)0.5M炭酸水素ナトリウム中PEG(平均分子量 3400)のN−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)活性化エステルと反応させた。得られた接合体、225t3 N−PEG−3400(配列番号:14)は12%ポリアクリルアミド/7M尿素ゲル上遊離のDNAから精製した。接合体は32Pで5’−末端を標識し、結合アッセイを行った。225t3 N−PEG−3400(配列番号:14)は225t3と同じ親和性(K=1nM)でbFGFに結合した。
【0108】
トロンビンDNAリガンドへのPEG−20,000 の接合
アミノとジスルフィド官能基を有するトロンビンDNAリガンドNX256(配列番号:9)(図1D)は標準DNA合成法、ならびにdT−5’−LCAA−500Å制御多孔性ガラス固体支持体および市販のホスホロアミダイト試薬による Biosearch8909DNA/RNAシンセサイザー上での操作を用いて調製した。脱保護に続いてイオン交換HPLC精製を行った。5’−末端ジスルフィド結合は、DNAを50mMジチオスレイトール(DTT)溶液中37℃で30分間インキュベートすると減少した。還元DNA(5’−末端チオールを含む)をNap−5サイズ排除カラムに通して、DNAを含むがDTTを含まない空隙容量を、アルゴン層下にマレイミド誘導体化PEGを含有する反応容器中に集めた。溶液はすべてアルゴンで洗浄し酸素を除去した。反応混合物を40℃に1時間保持した。反応の進行は、少量のアリコートを採取し、8%/7M尿素ポリアクリルアミド上電気泳動により分析してモニターした。1時間のインキュベーションの終了後、反応はほぼ完了し、この時点で反応混合物に等容のメチレンクロリドを加え乳状の白色懸濁液が形成されるまで容器を振盪した。混合物をエッペンドルフ遠心分離器により14,000rpmで層が分離するまで遠心分離した。遊離の核酸リガンドを含む水層は捨てた。生成物(PEG−20,000 修飾DNAリガンドNX256 、NX256−PEG−20,000と呼ぶ。配列番号:13)(図1G)はイオン交換クロマトグラフィーついで逆相脱塩を用いてさらに精製し、凍結乾燥して白色の粉末を得た。この物質はDNA核酸リガンドの薬物動態学的挙動に対するPEG修飾の効果の測定に用いた(下記参照)。PEG−10,000修飾リガンドNX256(NX256−PEG−10,000と呼ぶ)も同様に調製された。
【0109】
PEG接合体のTm 値
PEGの機能性はチオホスフェート−マレイミド反応によっても導入することができる。本発明者らは、トロンビンDNAリガンドの5’−末端に、チオホスフェート基を、標準ホスホロアミダイト法によって、市販の試薬を用いて導入した(このリガンドはT−P4と呼ぶ)(図1F,配列番号:12)。マレイミドを含有するPEGへの接合は上記スルフヒドリル−マレイミド反応の場合と同様である。PEG接合リガンドはT−P4−PEG−10,000およびT−P4−PEG−20,000(配列番号:15)と呼ぶ。T−P4−PEG−10,000,T−P4−PEG−20,000およびT−P4−DNAの融点(Tm)は最初の誘導体の260nmにおける吸光度対温度プロットから決定された。T−P4−PEG−10,000,T−P4−PEG−20,000およびT−P6のTm値は3つのリガンドすべて40℃であった。これらのデータおよび上述のbFGF−PEG−3400リガンド結合データは、PEGへの接合が核酸リガンドの構造に影響しないことを示唆している。
【0110】
コレステリル化bFGF− リガンドは非コレステリル化分子の結合親和性を維持する
コレステロールは、標準固相ホスホロアミダイト法により、核酸リガンドの配列中の任意の位置に導入することができる。たとえば、本発明者らは、リガンド225t3(図1E;配列番号:10)の3’末端にテトラエチレングリコールコレステロールホスホロアミダイト(Glen Research,Sterling,VA)を導入してリガンド225t3−コレステロールを作成した。12%ポリアクリルアミド/7M尿素ゲル上で精製したのち、225t3−コレステロールは32Pで5’−末端を標識し、結合アッセイを実施した。225t3−Cholの結合親和性は225t3の値(K=1nM)と同じであった。
【0111】
実施例3 核酸リガンド− リポソーム製剤および抗凝固活性
A.NX232 リポソームの調製
フルオレセイン−標識、コレステロール誘導体化NX232(図1B;配列番号:7)を主としてジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)およびコレステロール(Chol)2:1のモル比からなるリポソームに導入した。
DSPC:Chol(2:1モル比)を含有するNX232リポソームの8種の製剤を調製した。NX232のモル百分率は存在する総脂質に対して0.01〜0.1モル%で変動させた。組成(A〜H)は表1に示す。製剤D〜Hでは、陽イオン性の脂質1,2−ジオレイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP)の分画を増大させて、NX232とリポソーム表面の間の結合の強度に対する陽性電荷の影響を評価した。
【0112】
【表1】

【0113】
脂質およびNX232はクロロホルム、メタノール、水(CHCl:MeOH:HO,1:1:1,v:v:v)の混合物中に共可溶化して試験管に移した。脂質フィルムは窒素気流下に溶媒を蒸発させて形成させた。乾燥脂質フィルムは、水和まで真空下に保存した。フィルムは、10mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)および1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)含有9%スクロース(約250mM)水溶液(pH7.4)によって65℃で水和した。水和後、脂質はプローブ型ソニケーターを用いて約6〜9分間超音波処理し、ついで室温に冷却した。
【0114】
導入されなかったNX232(図1B;配列番号:7)は、Sephacryl S−300を用いてFPLCゲル透過クロマトグラフィーにより、上述のスクロース水和溶液で溶出して除去した。空のリポソーム(Empty)、4.7g NX232含有リポソーム(L−NeX2a)、11.8μg NX232含有リポソーム(L−NeX2b)、72μgの遊離NX232(Free 72μg)、7.2μgの遊離NX232(Free 7.2μg)および超音波処理した10μgの遊離NX232(Free/soni 10μg)のゲル透過クロマトグラムを図2に示す。これらのクロマトグラムは遊離NX232とリポソームの良好な分離が可能であることを示している。72μgの遊離NX232のクロマトグラムはリポソームの後に明瞭なピーク(約53分の溶出ピーク)を示すが、254nmにおけるUV吸収によって可視化するためには72μgの遊離核酸リガンドを添加しなければならなかった。7.2μgの遊離NX232では類似のピークは識別できない。したがって、リポソーム製剤に関しては、NX232 量(「a」については4.7μgおよび「b」については11.8μg)はクロマトグラムに明瞭なピークを示すためには十分ではなかった。
【0115】
254nmにおける吸収の測定によれば、NX232はこれらのリポソームにほぼ定量的に導入された。約50%程度のNX232しかフルオレセイン標識されなかったので、定量的な導入はフルオレセイン標識の存在がNX232のリポソームとの結合に有意な影響は与えないことを示唆している。
【0116】
B.凝血阻害のインビトロアッセイ
NX232(図1B;配列番号:7)はトロンビンに対して親和性の高い核酸リガンドのDNA配列を含有する。トロンビンは血液凝固カスケードの重要な成分である。トロンビンのタンパク分解活性の阻害は血液の凝固能力を低下させることが知られている。各種NX232製剤の活性を、抗凝固活性を測定するフィブリン/トロンビン凝血アッセイを用い評価した。アッセイには、50mM TRIS,100mM NaCl,1mM MgCl、および0.1%ポリエチレングリコール(PEG8000)(MW8,000),pH7.4の緩衝溶液を使用した。最終300μlのアッセイ混合物では、ガラス試験管に2.5mg/ml濃度のフィブリノーゲンおよび1国立保健研究所(NIH)単位のトロンビンを加えた。凝血の測定ではすべての溶液および容器を37℃に加温または維持した。凝固時間を表2に示す。
【0117】
【表2】

【0118】
これらの結果は超音波処理、可溶化、加熱および乾燥を含む典型的なリポソーム処理条件はNX232の抗凝血活性に影響しないことを示している。さらにリポソームの結合はNX232のその標的に対する結合および阻害に影響しない。
【0119】
実施例4コレステロール、ジアシルグリセロール、ジアルキルグリセロールおよびPEG修飾DNAの薬物動態学的性質
トロンビンDNAリガンドNX229,NX232,NX253,NX253+リポソームおよびNX256−PEG20Kの薬物動態学的性質を測定した(分子構造については図1A〜1C,1G参照)(配列番号:6〜8,13)。各オリゴヌクレオチドは260nmにおけるUV吸収および吸光係数0.033μg オリゴ/mlに基づいて0.5〜1.0mg/ml の溶液濃度でPBSに希釈した。1つを除く全試験で、6匹のラットに0.5〜1.0mgオリゴヌクレオチド/kg動物体重を投与し、血漿サンプルを1〜4時間の様々な時点で採取した。1匹のラットはNX253を試験する実験に使用した。血漿サンプルおよび品質管理サンプルはハイブリダイゼーションアッセイを用いて分析した。ハイブリダイゼーションアッセイには、酸化鉄(FeO)ビーズに接合したDNAリガンドの5’−末端に相補性の配列を含有する捕捉オリゴヌクレオチド[FeO−スペーサ−5’−d(GTC AGG CAC CAT CCC−3’)(配列番号:1),スペーサ=(dT)]および3’−末端にビオチン基を含有する検出オリゴヌクレオチド[5’−d(CCC CAC TGA AGC ACC−スペーサ−3’−ビオチン−ビオチン),スペーサ=(dT)10](配列番号:2)を使用した。ビーズに結合するビオチンオリゴヌクレオチドの量はルミネセント基質としてCSPD−Sapphireを用いストラプトアビジン連結アルカリホスファターゼで定量した。
【0120】
NX229,NX232,NX253,NX253+リポソームおよびNX256−PEG20K(配列番号:6〜8,13)の血漿濃度の1回注射後の時間の関数としてのデータを図3にまとめる。時間の関数としてのNX232,NX253,NX253+リポソームおよびNX256−PEG20Kの血漿濃度はNX229(配列番号:6)の場合に比較してかなり大きかった。これらのオリゴヌクレオチドはすべて、同一のトロンビン結合モジュール[d(CAG TCC GTG GTA GGG CAG GTT GGG GTG ACT TCG TGG)](配列番号:3)を共有する。時間の関数としてのオリゴヌクレオチドの血漿濃度は、オリゴヌクレオチドへの適当な官能基の導入によって有意に増大させることができる。コレステロール含有オリゴヌクレオチドの対照(非コレステロール含有)オリゴヌクレオチドに比較した血漿半減期の延長は以前に観察されている(de Smidtら,Nucl.Acids Res.,19: 4695,1991)。
【0121】
NX213(分子構造は図1参照)の基本配列に様々な官能基が結合した広範囲の核酸リガンド、ならびにこれらのオリゴヌクレオチドのリポソーム製剤の一部の血漿薬物動態学的性質を評価した。これらのデータは図4にまとめる(配列番号:16,19,21,22および29)。クリアランスの速度が最も遅い製剤はNX213(図1P;配列番号:21)がリポソームに封入された製剤であった。
【0122】
ジアルキルグリセロールDNA接合体+および−リポソーム役割を決定するために、PK試験77および73をトロンビンDNAリガンドジアルキルグリセロール接合体(分子構造については図1参照)について実施した。データは図5にまとめる(配列番号:18)。
【0123】
コレステリル化VEGFオリゴヌクレオチドNX213(NX268)(分子構造は図1K参照;配列番号:16)はPEG−リポソームまたは標準リポソームによって製剤化し、薬物動態を評価した(PK85−86)。これらの製剤はオリゴヌクレオチドをリポソームの内側および外側両者に含有する。図6(配列番号:16)は注射後の時間の関数としての完全長オリゴヌクレオチドのラット血漿レベルを示す。両リポソーム製剤とも類似のオリゴヌクレオチド薬物動態を示す。
【0124】
クリアランスに対するサイズ依存性を評価するために、様々なPEG接合体を有する2’O−メチルVEGFオリゴヌクレオチドを試験した(分子構造については図1参照)(PK50,80,87&88)。図7はすべての2’O−メチルオリゴヌクレオチド+PEG40K,20K,10KならびにPEGの不存在(配列番号:17および29)の比較を示す。これらのデータは、PEG接合体のサイズが増大するとともに、血漿クリアランスは有意に遅延することを証明する。
【0125】
PK96は、2’O−メチルプリンならびにPEG20Kと接合した2’Fピリミジン(JW1130)の薬物動態を評価するために実施された(分子構造については、図1R参照;配列番号:23)。図8にはこのオリゴヌクレオチドの血漿レベルの全2’O−メチルバージョン(PK80,JW986)との比較を示す(分子構造については図1X参照;配列番号:29)。これらのデータは両オリゴヌクレオチドのかなり類似したクリアランス性を示す。
【0126】
2’Fピリミジン含有JW1130(配列番号:23)がJW986(2’O−メチルピリミジン)と類似のクリアランスを示すという観察は2’Fピリミジンを有するオリゴヌクレオチドがヌクレアーゼ消化に抵抗性であることを示唆する。
【0127】
PK97は40KPEGと接合したL−セレクチンDNAリガンド(NX287)(図1S;配列番号:24)のクリアランス性を測定するために実施した。時9は1回注射(用量1mg/kg)後の時間の関数としてのこのオリゴヌクレオチドの血漿レベルを示す。比較のために、20K PEGと接合したトロンビンDNAリガンド(NX256)(図1H;配列番号:13)を包含させた。図9に示すように、これらの2つのオリゴヌクレオチドは類似のクリアランスを示し、これは代謝によるものと考えられる。
【0128】
PK試験99,100および102はオリゴヌクレオチドのインビボ安定性を評価するさらに大きな試験の一部として行われた。これらの試験は図10に示す。比較のためPK96(JW1130VEGF)2’F Py 2’O−Met(14Pu)+PEG20K(図1R:配列番号:23)も包含させる。PK試験96,100および102に用いたオリゴヌクレオチドは、2’デオキシヌクレオチドを含有するプリン位置の数のみが相違し、PK96は2’デオキシプリンを含まず、PKI00は4個の2’デオキシプリンを含み、PK102では14個のプリンがすべて2’デオキシである。図10(配列番号:23,25,26,27および30)は、クリアランス速度の上昇とオリゴヌクレオチド中のデオキシヌクレオチドの数の間の明瞭な関係を証明するものである。デオキシヌクレオチドの数の増加とともにこの観察されたクリアランス速度の上昇はこれらのオリゴヌクレオチドの代謝の増大による可能性が考えられる。4個の2’デオキシプリンを含むPK100で示された高レベルの安定性という有望な観察は、多数のプリンが修飾できるならばセレックス後修飾が適当であることを示唆している。図10にはまたPEG20K接合の異なるPK99およびPK100が示されている。他のオリゴヌクレオチドで以前に認められているように、大きな分子量のPEG分子の接合は観察された血漿からのクリアランス速度を劇的に低下させる。
【0129】
実施例5陽イオン性リポソーム− 核酸リガンド複合体:毒性およびヒトリンパ球によるその細胞内取り込み
毒性:リポソーム−核酸リガンドの細胞に対する毒性作用を測定するためヒト一次末梢血リンパ球(PBL)を核酸リガンド単独、2種類のリポソーム単独、ならびに2種類のリポソーム−核酸リガンドの組合せで処置した(下記参照)。
【0130】
2つのタイプの異なるリポソーム、タイプ1[=ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE):アミノマンノースコレステロール,1:1重量比]およびタイプ2[=DOPE:アミノマンノースコレステロール:DOTAP,1:1.5:1重量比]をこの試験に用いた。リポソームはHIV−1逆転写酵素と約1〜5nMのKで結合する一本鎖標準DNAセレックスリガンドRT1t49PS[5’−d(ATC CGC CTG ATT AGC GAT ACT CAG AAG GAT AAA CTG TCC AGA ACT TGG As Ts Ts Ts T)−3’(配列番号:4);小文字のsはホスホロチオエート結合を示す]と5:1(リポソーム:核酸リガンド、重量比)に混合した。陽イオン性リポソーム−核酸リガンド複合体はリポソームおよびタイプ1またはタイプ2リポソームをRT1t49PSと65℃で10分間インキュベートして形成させた。
【0131】
PBL(フィトヘマグルチニンおよび天然のIL−2刺激)は96−ウエルプレートの各ウエルあたり2×10細胞の密度でプレーティングした。細胞は日0に核酸リガンド単独、2種類のリポソーム単独、または2種類のリポソーム−核酸リガンド複合体で処置し、分裂させ、日4に再処置した。生存細胞は日7に計数した。各処置群についての生存細胞の百分率を以下にまとめる。
【0132】
処置 %生存率
細胞単独 85
30μg/mlRT1t49PS 82
リポソームタイプ1(150μg/ml) 85
リポソームタイプ2(150μg/ml) 63
リポソームタイプ1(150μg/ml)+RT1t49PS(30μg/ml) 88
リポソームタイプ2(150μg/ml)+RT1t49PS(30μg/ml) 77
これらの結果は以下のことを示唆する。リガンドRT1t49PSは30μg/mlまでの濃度では毒性はない。リポソームタイプ1は150μg/mlまでの濃度で毒性は示さないが、リポソームタイプ2はこの濃度で中等度の毒性を示す(生存率の約25%低下)。DOPTAの毒性は既知であることから、リポソームタイプ2には毒性が期待される。リガンドRT1t49PSはリポソームタイプ2の毒性を見掛け上約50%まで低下させる。
【0133】
細胞取り込み. フルオレセイン標識RT1t49PSリガンドの細胞内送達を、フルオレセイン活性化細胞選別(FACS)分析ならびに共焦点顕微鏡を使用してCEMss細胞(ヒトT細胞系)で調べた。この試験では、DOPE:アミノマンノース(1:1モル比)リポソームを用いた。脂質フィルムは2.33mgのDOPEおよび2.33mgのアミノマンノースをクロロホルムに溶解し、デシケーター中一夜真空下に保持して調製した。1mlの9%スクロースをフィルムに加え、試験管を65℃に0.5分間加熱しボルテックス攪拌した。この脂質混合物をついで、50℃に加熱した水を含むビーカー中パワー設定7(microtip)で2分間超音波処理した。リポソームにさらに0.5mlの9%スクロースを加え、MicroTrac 粒子サイザーを用いてサイズを揃え(平均サイズ 45nm)、0.45μm 酢酸セルロースフィルターを用いて滅菌ろ過した。リポソーム−核酸リガンド複合体はリポソームを核酸リガンドと脂質:オリゴヌクレオチド 5:1w/w比において65℃で10分間インキュベートして調製した。
【0134】
細胞取り込み実験には、10 CEM細胞をT25フラスコ中、1640RPMI/10 %ウシ胎児血清10mlに希釈した。核酸リガンドは遊離薬物またはリポソーム複合体として0.6μMを各フラスコに加え、5%CO含有雰囲気中37℃でインキュベートした。細胞を遠心分離し、2回洗浄して過剰の薬物を除去したのち観察した。
【0135】
共焦点顕微鏡試験は空冷アルゴンレーザー(励起488nm)により実施した。共焦点映像は1μmスライスで撮影した(1シリーズあたり約20スライス)。核酸リガンド単独とインキュベートしたCEM細胞には有意な(バックグランド以上の)蛍光は24時間を通じて検出されなかった。リポソーム結合核酸リガンドとインキュベートしたCEM細胞には5時間までに有意な蛍光が検出され、24時間を通じて増強された。蛍光は小胞に局在するように見えて、核には認められなかった。分極した細胞(たとえば7時間リポソーム結合核酸リガンドとインキュベーション)では、蛍光は前縁/先端から離れた細胞の後部に局在する。
FACS分析は、空冷アルゴンレーザー(励起488nm)を装着したCoulter Epics Eliteを用いて行った。CEM細胞は前方および側方スキャッターによりゲートし、緑色の蛍光を検査した。死亡細胞および凝集体はゲートで排除された。共焦点顕微鏡試験で示唆されたように、リポソーム結合核酸リガンドとインキュベートされた細胞の蛍光は遊離の核酸リガンドとインキュベートされた細胞の場合よりほぼ1オーダー大きい。リポソーム結合核酸リガンドの取り込みは完全には均一ではない。一部の細胞では他に比べて蛍光が有意に強い。脂質:核酸リガンド比 5:1w/w(核酸リガンドのM約14,000;脂質のM約700)で、リポソームあたり脂質40,000と仮定すると、リポソームあたり約400の核酸リガンドが存在する。FACSによる検出の下限は細胞あたり約500蛍光粒子または細胞あたり1個のリポソームよりわずかに大きい。
【0136】
結論として、遊離の5’F1−RT1t49PS核酸リガンドは、24時間以内にCEM細胞内に有意には局在しない。DOPE:アミノマンノースリポソームに結合した核酸リガンドはCEM細胞内に5時間までに局在し、24時間を通して細胞内に局在を続ける。リポソーム結合核酸リガンドは小胞に蓄積し、核には蓄積しないように思われる。リポソーム結合核酸リガンドの取り込みは、FACS分析から判断して、遊離の核酸リガンドの少なくとも10倍である。
【0137】
実施例6予め形成されたリポソームへの核酸リガンドの導入:脂質の陰性電荷の変動の影響
表3に示すモル比での処方を使用して、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、コレステロール(Chol)およびジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)からなる小さい単ラメラ小胞(SUV)を調製した。
【0138】
陰性に荷電した脂質であるDSPGの含有モル百分率が変動する4つの組成物を調製し、多重陰イオン性核酸リガンドの導入に対する陰性リポソーム電荷の影響を評価した。脂質をCHClに溶解し、混合し、窒素を絶えず流しながら乾燥させた。乾燥した脂質フィルムは水和の前に一夜真空中でさらに乾燥させ、保存した。脂質フィルムはNaHPO(1.15g/L),NaHPO(0.228g/L)およびスクロース(90g/L)を含有するpH7.4のリン酸緩衝溶液(PBS)により65℃で水和し、50mg/mLの脂質懸濁液を得た。水和された脂質懸濁液をついでプローブ型ソニケーターを使用して不透明な溶液が得られるまで超音波処理した。
【0139】
これらの予め形成されたSUVを等容量の核酸リガンド232(NX232)(配列番号:7)PBS中1.0mg/mL(終濃度:0.5mg/mL NX232,25mg/mL脂質)に加えた。この混合物を65℃で15分間インキュベートするかまたは室温に保持したのち、Sephacryl HR S300サイズ排除カラム(0.5×20cm)上クロマトグラフィーに付し、SUV結合NX232から遊離体を分離した。クロマトグラフィー条件は次の通りである。溶出液:上述のPBS;流速:0.1mL/分;注入サンプル:25μL;検出:254nmにおけるUV吸収;分画:0.2mL/分画。収集した分画は蛍光強度によってもモニターした(励起:494nm,発光:516nm)。
【0140】
SUV結合NX232 はSUVピーク(排除容量)に遊離のNX232は包含容量に溶出した。クロマトグラム(図4)はSUVとのNX232の結合程度がSUV中のDSPG含量に依存することを明らかに示している。SUV中に含まれる陰性に荷電したDSPGの百分率がサンプルA〜Dの間で上昇するに従い、NX232のSUNとの結合は減少した。
【0141】
【表3】

【0142】
実施例7予め形成されたリポソームへの核酸リガンドの導入:コレステロール含量の変動の影響
DSPCおよびCholからなるSUVを調製し、実施例6のようにNX232の導入をアッセイした。リポソームは表4に指示するように、DSPCおよびコレステロールを異なるモル比で含有した。NX232はリポソームと結合し、室温で調製した場合、SUVとともに溶出した。
【0143】
【表4】

【0144】
リポソーム処方JおよびK(DSPC:コレステロールのモル比約2:1)で核酸リガンドNX232の最も効率的な導入が可能であった。
実施例8予め形成されたリポソームへの核酸リガンドの導入:NX232の固定量において脂質/核酸リガンド比の変動の影響
DSPC:Chol(モル比2:1)SUVを調製し、脂質/NX232比を変動させたほかは実施例6と同様にアッセイした。NX232(配列番号:7)の固定量1.0mg/mLを室温において、脂質濃度2.5〜50mg/mLのSUVの等容量と混合した(表5)。結果はNX232のSUVとの最大結合が脂質/NX比(w/w)25/1で得られたことを示唆している。最高の脂質/NX比50/1はSUVに結合するNX232の量を増大させなかった。
【0145】
【表5】

【0146】
実施例9予め形成されたリポソームへの核酸リガンドの導入:SUVの固定量において脂質/核酸リガンド比の変動の影響
実施例6と同様に調製した予め形成されたSUV(DSPC/Chol:2/1)50mg/mLを0.5〜5.0mg/mLの様々な濃度におけるNX232 の等容量と室温で混合した(表6)。結果はNX232のSUVとの最大結合が脂質/NX232比(w/w)25/1で得られたことを指示している。SUVに結合するNX232の分画は脂質/NX232比量が低いと減少した。
【0147】
【表6】

【0148】
実施例10予め形成されたリポソームへの核酸リガンドの導入:リン脂質鎖長の変動の影響
様々な鎖長を有するリン脂質から作成したSUVとNX232の結合を試験するために、表7に示すリン脂質から実施例6と同様にしてSUVを調製した。
【0149】
【表7】

【0150】
試験した3種のリポソーム処方中、DPPC/コレステロールリポソームが核酸リガンドNX232の最高導入能をもつことが明らかにされた。
実施例11核酸リガンド−リポソーム複合体の非変性ゲル電気泳動分析
この実施例ではコレステロールと接合した核酸リガンドのリポソーム製剤への導入を証明する。本実施例で用いたリポソーム製剤はDSPC:コレステロール(2:1モル比)である。125I−ボルトン−ハンター試薬で放射標識したコレステリル化トロンビンリガンドNX253{5’−[コレステロール][dT−NH−125I−ボルトン−ハンター]−d(CAG TCC GTG GTA GGG CAG GTT GGG GTG ACT TCG TGG AA)[3’3’dT]dT−3’(配列番号:8);dT−NH−125I−ボルトン−ハンターは、ボルトン−ハンター試薬(New England Nuclear,Boston,MA)に接合しているアミノモディファイアーC6dT(Glen Research,Sterling,VA)であり、3’3’dT(dT−5’−CEホスホロアミダイト,Glen Research,Sterling,VA)は逆方向性ホスホロアミダイトである}はリポソーム:核酸リガンド比の関数として結合核酸リガンド分画の測定のために検査した。核酸リガンド−リポソーム複合体は核酸リガンドを9%スクロース含有25mM TRIS緩衝液pH7.4中リポソームと65℃で15分間インキュベートして調製した。遊離の核酸リガンドはリポソーム結合核酸リガンドから、非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離できる。
【0151】
この方法はこの2種の迅速かつ完全な分離を可能にする。リポソーム結合核酸リガンドをゲルに入れる(すなわち可視化可能にする)ためには、電気泳動試行の終了約5分間、負荷ウエルにtriton X−100の1%溶液を加えてリポソームを破壊する必要がある。リポソーム結合核酸リガンドの量は、よく定義されたバンドとして移動する遊離核酸リガンドの相対量からリン造影分析によって測定された。リポソームあたり約60,000の脂質が存在し、脂質の平均MWを655.9Da(=790.15×0.67+386.7×0.33)と仮定すると、核酸リガンドによるリポソームの飽和は核酸リガンド対リポソームのモル比約300で起こる(図12)。コレステロール残基をもたないNX253 のアナログは、リポソーム濃度の同程度の範囲ではリポソームに導入されない(データは示していない)。
【0152】
実施例12核酸リガンドのリポソームへの受動封入
核酸リガンドをリポソームの水性内部内に封入する。核酸リガンドの水溶液は核酸リガンドをリン酸緩衝溶液(PBS)中に溶解し、濃度約3.5ml/mlの保存溶液を得る。DSPC:Chol(2:1モル比)を含有する脂質フィルムは、クロロホルム:メタノール:水(1:5:1,v:v:v)溶媒から脂質混合物を乾燥させて調製する。核酸リガンド保存溶液1mlを脂質フィルムに添加し、40℃で10秒間浴超音波処理する。得られた溶液を、液体窒素を用いる4サイクルの凍結−解凍操作に付す。得られた均一な溶液を最初0.8μmフィルター膜から押し出し(3回)、ついで0.45μmフィルター膜から(3回)、最後に0.2μmフィルター膜から(3回)押し出す。非封入核酸リガンドは、床容量約20mlのSephadex G−50カラムに分散液を通過させて除去する。
【0153】
実施例13リポソームへの核酸リガンドの遠隔負荷
核酸リガンドは遠隔負荷により、MLVの水性内部内に封入する。DSPC:Chol(2:1モル比)の脂質混合物を、20μmolの脂質を用いて脂質フィルムに調製する。脂質フィルムは0.1M MgClを用いて65℃でボルテックス攪拌して懸濁し、平均直径1ミクロンのMLVを形成させる。リポソーム懸濁液を液体窒素中で凍結し、65℃で解凍する。凍結/解凍サイクルを3回反復し、塩がラメラ全体に均一に分布することを保証する。内部水相の浸透圧は約300ミリオスモール(mOsm)である。リポソーム懸濁液を10,000gで15分間遠心分離してペレット化して外部のMgCl溶液を除去する。上清を除き、リポソームペレットを65℃で5分間加熱する。核酸リガンド溶液(水100μl中20μg)を予め65℃で5分間加熱し、リポソームペレットに加える。加熱を30分間続け、ついでサンプルを徐々に室温に冷却し、1mlのPBSで希釈する。捕捉されなかった核酸リガンドはMLVの遠心分離ついで上清の除去により除く。ペレットを新たなPBSに再懸濁し、遠心分離して再ペレット化する。
【0154】
実施例14リポソームへの核酸リガンドの共有結合
以下のスキーム1に示すようにN−ヒドロキシスクシンイミドエステルおよびビニルスルホン官能基を含む二機能性PEG−2000(分子量2000DaのPEG)を最初、2モル%のジステアリルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)を含有するリポソームにN−ヒドロキシスクシンイミドエステル残基を介して接合させた。生成物はサイズ排除クロマトグラフィーによって遊離のPEGから精製した。ビニルスルホン生成物をついで還元NX256(図1D;配列番号:9)と反応させた。DSPE−PEG−2000−ビニルスルホンは市販品が入手可能でビニルスルホン官能基を含むリポソームの製造に使用できるので、スキーム1の接合工程は省略できる。
【0155】
【化7】

【0156】
以下のスキーム2に示すように第二の反応は完成した。出発原料は2モル%のDSPEマレイミドを含有するジステアリルホスファチジルコリン(DSPC)リポソームとした。リポソームあたり50,000脂肪価を用いると、リポソームはリポソームあたり約1000のマレイミド分子をもつことになり、その約600が外側に存在する。核酸リガンド−リポソーム複合体は遊離の核酸リガンドからサイズ排除クロマトグラフィーによって分離した(上記参照)。260nmの吸収から、核酸リガンド約200分子が各リポソームに接合したと評価された。
【0157】
【化8】

【0158】
実施例15核酸リガンド−リポソーム複合体のインビトロおよびインビボ効率.リポソーム二重層に封埋されたジアルキルグリセロール(DAG)修飾VEGFリガンド(NX278)
NX278−リポソーム複合体は、1mgのNX278(図1N;配列番号:19)を9%スクロース含有10mMリン酸塩(pH7.4)緩衝液中、DSPC:コレステロールの混合物(50mg)とインキュベートして調製し、プローブ型ソニケーターを用いて、不透明な溶液が得られるまで15〜30分超音波処理した。核酸リガンドNX−278の配列スクランブルアナログ(scNX278)(図1W;配列番号:28)を含有する対照核酸リガンド−リポソーム複合体を同様にして調製した。粒子アナライザー(Leeds & Northrup Model Microtrack UPA 150,Horshman,PA)で測定したリポソーム粒子のサイズ(通常50〜100nM)は核酸リガンドの不存在下に得られた粒子と同じであった。NX278−リポソーム複合体は、ビオチン標識核酸リガンドと、ポリスチレン固定化VEGFへの結合でVEGFに競合し、競合ELISAアッセイにおける見掛けのED50は約10−7Mであった。同じアッセイで、scNX278−リポソーム複合体は2μM核酸リガンドまででは有効に競合しなかった。比較のための、NX278と同じ配列を有するが5’末端にDAG残基をもたない遊離核酸リガンド,NX213(図1P;配列番号:21)はVEGFに対してED50値約10−9Mの競合を示した。NX213に比較してNX278−リポソームの固定化VEGFに対する結合能の低下は、リポソームの外表面に提示された核酸リガンドの分画のみが平坦表面への結合に利用されると期待されることから、単純な幾何的抑制によるものと考えられる。さらに、内部表面に提示された核酸リガンドの分画はこのアッセイにおける結合には当然利用されない。
【0159】
ヒト映帯静脈内皮細胞(HUVEC)およびカポジ肉腫(KS)細胞の組織培養における増殖に対するNX278−リポソーム、scNX278−リポソームおよびNX213の作用を検討した。HUVECは10%ウシ胎児血清(FCS)およびヘパリン(45μg/ml)含有IMDM:Ham’s F12(1:1)培地中VEGF(10ng/ml)の存在下に増殖させた。細胞は日0に24−ウエルゼラチン被覆プレートにウエルあたり20,000細胞の密度でプレーティングし、上述のリガンド0.1nM〜1μM濃度で日1,2および3に処理した(培地をリガンドとともに置換)。細胞の計数は日4に実施した。KS細胞系KSY−1は、2%FCS、L−グルタミン、ペニシリンおよびストレプトマイシンを補充したRPMI1640含有培地中に、日0に24−ウエルゼラチン被覆プレートにウエルあたり7,500〜10,000細胞密度でプレーティングした。核酸リガンドは新鮮培地中0.1nM〜1μM濃度で日1,2および3に添加し、細胞の計数は日4に実施した。NX278−リポソームはHUVECの増殖をIC50約300nMで阻害した(濃度は核酸リガンド成分の濃度を示す)。遊離核酸アナログNX213の効果は有意に低かった(IC50>1μM)。
【0160】
NX278−リポソームはKS細胞の増殖もIC50約100nMで阻害し、NX278−リポソームはこれらの細胞の増殖を1μMで完全に阻害した。scNX278−リポソームおよびNX213はIC50>1μMであった。NX278−リポソームがインビボにおけるVEGFの血管透過活性を阻害する能力を調べた。血管透過性アッセイ[Milesアッセイとも呼ばれる(Miles,A.A.& Miles,E.M.(1952)J.Physiol.(London)118:228]はSengerら(Senger,R.S.ら(1983)Science 219:983)の記載にほぼ従いモルモットで実施した。濃度1μMのNX278−リポソームはVEGF誘発血管透過性を有意に阻害した。対照化合物,scNX278−リポソームはこの濃度では阻害を示さず、実際には血管透過性は上昇を示したようであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸リガンドおよび親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物からなる治療用または診断用複合体。
【請求項2】
核酸リガンドは核酸候補混合物から与えられた標的のリガンドとして、
a)核酸候補混合物に比較して標的に対する親和性が高い核酸が候補混合物の残部から分配できるように核酸候補混合物を標的と接触させ、
b)親和性が高い核酸を候補混合物の残部から分配し、ついで
c)親和性が高い核酸を増幅させてリガンドが濃縮された核酸混合物を得ることによって同定される「請求項1」記載の複合体。
【請求項3】
さらにd)工程b)およびc)の反復からなる「請求項2」の複合体。
【請求項4】
核酸リガンドおよび非免疫原性高分子量化合物からなる「請求項1」記載の複合体。
【請求項5】
非免疫原性高分子量化合物はポリエチレングリコール、デキストラン、アルブミン、およびマグネタイトからなる群より選択される「請求項4」記載の複合体。
【請求項6】
非免疫原性高分子量化合物はポリエチレングリコールである「請求項4」記載の複合体。
【請求項7】
核酸リガンドおよび親油性化合物からなる「請求項1」記載の複合体。
【請求項8】
親油性化合物はコレステロール、ジアルキルグリセロール、およびジアシルグリセロールからなる群より選択される「請求項7」記載の複合体。
【請求項9】
親油性化合物はコレステロールである「請求項8」記載の複合体。
【請求項10】
親油性化合物はジアルキルグリセロールである「請求項8」の複合体。
【請求項11】
さらに脂質構築体からなる「請求項9」記載の複合体。
【請求項12】
脂質構築体は脂質二重層小胞である「請求項11」記載の複合体。
【請求項13】
脂質二重層小胞はリポソームである「請求項12」記載の複合体。
【請求項14】
さらに脂質構築体からなる「請求項7」記載の複合体。
【請求項15】
脂質構築体は脂質二重層小胞である「請求項14」記載の複合体。
【請求項16】
脂質二重層小胞はリポソームである「請求項15」記載の複合体。
【請求項17】
さらに脂質構築体からなる「請求項10」記載の複合体。
【請求項18】
脂質構築体は脂質二重層小胞である「請求項17」記載の複合体。
【請求項19】
脂質構築体はリポソームである「請求項18」記載の複合体。
【請求項20】
さらに脂質構築体からなる「請求項6」記載の複合体。
【請求項21】
脂質構築体は脂質二重層小胞である「請求項20」記載の複合体。
【請求項22】
脂質二重層小胞はリポソームである「請求項21」記載の複合体。
【請求項23】
核酸リガンドは上記リポソームの内部内に封入される「請求項16」記載の複合体。
【請求項24】
核酸リガンドは上記リポソームの外部に非共有結合的に結合される「請求項16」記載の複合体。
【請求項25】
核酸リガンドは第二の親油性化合物に共有結合で結合される「請求項16」記載の複合体。
【請求項26】
核酸リガンドはリンカーを介して第二の親油性化合物に結合される「請求項25」記載の複合体。
【請求項27】
核酸リガンドはリポソームの外部表面から突出している「請求項25」記載の複合体。
【請求項28】
核酸リガンドは、リポソームの内部に突出している「請求項25」記載の複合体。
【請求項29】
さらに治療用または診断用物質からなる「請求項16」記載の複合体。
【請求項30】
治療用物質は、リポソームの内部に封入されている「請求項29」記載の複合体。
【請求項31】
治療用または診断用物質はリポソームの膜に結合している「請求項29」記載の複合体。
【請求項32】
治療用もしくは診断用物質はリポソームの外部表面に結合している「請求項29」記載の複合体。
【請求項33】
核酸リガンドは予め定められた位置に対して複合体を標的化する「請求項1」記載の複合体。
【請求項34】
複合体の薬物動態学的性質が核酸リガンド単独に比較して改良されている「請求項1」記載の複合体。
【請求項35】
核酸リガンドのセレックス標的は細胞間のセレックス標的である「請求項1」記載の複合体。
【請求項36】
核酸リガンドのセレックス標的は細胞内のセレックス標的である「請求項1」記載の複合体。
【請求項37】
核酸リガンドの細胞内取り込みが核酸リガンド単独に比較して改良されている「請求項36」記載の複合体。
【請求項38】
さらに治療用または診断用物質からなる「請求項6」記載の複合体。
【請求項39】
治療用または診断用物質はポリエチレングリコールに結合している「請求項38」記載の複合体。
【請求項40】
治療用または診断用物質はポリエチレングリコールに共有結合で結合している「請求項39」記載の複合体。
【請求項41】
核酸リガンドは親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物に共有結合で結合している「請求項1」記載の複合体。
【請求項42】
核酸リガンドは親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物に非共有結合的に結合している「請求項1」記載の複合体。
【請求項43】
核酸リガンドおよび親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物からなる治療用または診断用複合体の製造方法において、核酸リガンドは核酸候補混合物から与えられた標的のリガンドとして、
a)核酸候補混合物に比較して標的に対する親和性が高い核酸が候補混合物の残部から分配できるように核酸候補混合物を標的と接触させ、
b)親和性が高い核酸を候補混合物の残部から分配し、ついで
c)親和性が高い核酸を増幅させてリガンドが濃縮された核酸混合物を得ることにより同定し、ついで、
d)同定された核酸リガンドを親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物と結合させる方法。
【請求項44】
複合体は核酸リガンドおよび非免疫原性高分子量化合物からなる「請求項43」記載の方法。
【請求項45】
非免疫原性高分子量化合物は、ポリエチレングリコール、デキストラン、アルブミン、およびマグネタイトからなる群より選択される「請求項44」記載の方法。
【請求項46】
非免疫原性高分子量化合物はポリエチレングリコールである「請求項45」記載の方法。
【請求項47】
複合体は核酸リガンドおよび親油性化合物からなる「請求項43」記載の方法。
【請求項48】
親油性化合物はコレステロール、ジアルキルグリセロールおよびジアシルグリセロールからなる群より選択される「請求項47」記載の方法。
【請求項49】
親油性化合物はコレステロールである「請求項48」記載の方法。
【請求項50】
親油性化合物はジアルキルグリセロールである「請求項48」の方法。
【請求項51】
複合体はさらに脂質構築体からなる「請求項49」記載の方法。
【請求項52】
脂質構築体は脂質二重層小胞である「請求項51」記載の方法。
【請求項53】
脂質二重層小胞はリポソームである「請求項52」記載の方法。
【請求項54】
複合体はさらに脂質構築体からなる「請求項50」記載の方法。
【請求項55】
複合体はさらに脂質二重層小胞からなる「請求項54」記載の方法。
【請求項56】
脂質二重層小胞はリポソームである「請求項55」記載の方法。
【請求項57】
核酸リガンドはリポソームの外部表面から突出している「請求項56」記載の方法。
【請求項58】
複合体はさらに脂質構築体からなる「請求項47」記載の方法。
【請求項59】
脂質構築体は脂質二重層小胞である「請求項58」記載の方法。
【請求項60】
脂質二重層小胞はリポソームである「請求項59」記載の方法。
【請求項61】
核酸リガンドはリポソームの外部表面から突出している「請求項60」記載の方法。
【請求項62】
複合体は、さらに治療用もしくは診断用物質からなる「請求項60」記載の方法。
【請求項63】
核酸リガンドは予め定められた位置に対して複合体を標的化する「請求項43」記載の方法。
【請求項64】
複合体の薬物動態学的性質が核酸リガンド単独に比較して改良されている「請求項43」記載の方法。
【請求項65】
複合体は、さらに治療用もしくは診断用物質からなる「請求項46」記載の方法。
【請求項66】
治療用または診断用物質はポリエチレングリコールに結合している「請求項65」記載の方法。
【請求項67】
核酸リガンドの薬物動態学的性質を改良する方法において、
核酸リガンドを親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物に結合させて核酸リガンドおよび親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物からなる複合体を形成させること、および
この複合体を患者に投与することからなる方法。
【請求項68】
細胞内セレックス標的を有する核酸リガンドの細胞内取り込みを改良する方法において、
核酸リガンドを親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物に結合させて核酸リガンドおよび親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物からなる複合体を形成させること、および
この複合体を患者に投与することからなる方法。
【請求項69】
治療用または診断用物質を患者における予め定められた生物学的標的に標的化する方法において、
治療用または診断用物質を核酸リガンドおよび親油性化合物または非免疫原性高分子量化合物からなる複合体に結合させ、この場合、核酸リガンドは特定の予め定められた生物学的標的に結合するセレックス標的を有し、核酸リガンドは複合体の外部に結合していて、この複合体を患者に投与することからなる方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図1J】
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【図1K】
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【図1L】
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【図1M】
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【図1N】
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【図1O】
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【図1P】
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【図1Q】
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【図1R】
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【図1S】
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【図1T】
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【図1U】
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【図1V】
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【図1W】
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【図1X】
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【図1Y】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−265300(P2010−265300A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157335(P2010−157335)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【分割の表示】特願平8−533500の分割
【原出願日】平成8年5月2日(1996.5.2)
【出願人】(501345390)ギリード・サイエンシズ・インコーポレーテッド (17)
【Fターム(参考)】