説明

核酸分析装置,核酸分析反応デバイス、および核酸分析用反応デバイス用基板

【課題】2次元センサの画素サイズに合わせて、検出対象の核酸が固定化された微粒子を基板上に格子状に配列した核酸分析用反応デバイスを提供する。
【解決手段】本発明の核酸分析用反応デバイスは、基板101上に流路を形成する反応チャンバーを備え、基板101上で微粒子103に固定された核酸を検出する核酸分析用反応デバイスであって、基板101上に配列した微細構造体102によって検出対象の核酸が固定化された微粒子103が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸分析装置,核酸分析反応デバイス、および核酸分析用反応デバイス用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAやRNAの塩基配列を決定する新しい技術が開発されてきている。
【0003】
現在、通常用いられている電気泳動を利用した方法においては、予め配列決定用のDNA断片又はRNA試料から逆転写反応を行い合成したcDNA断片試料を調製し、周知のサンガー法によるジデオキシ反応を実行した後、電気泳動を行い、分子量分離展開パターンを計測して解析する。
【0004】
これに対し、近年、基板に試料となるDNA断片を数多く固定して、パラレルに数多くの断片の配列情報を決定する方法が提案されている。
【0005】
非特許文献1では、DNA断片を担時する担体として微粒子を用い、微粒子上でPCRを行う。その後、微粒子のサイズに穴径を合わせた数多くの穴を設けたプレートに、PCR増幅されたDNA断片を担持した微粒子を入れてパイロシーケンス方式で読み出している。
【0006】
また、非特許文献2では、DNA断片を担持する担体として微粒子を用い、微粒子上でPCRを行う。その後、微粒子をガラス基板上にばら撒いて固定し、ガラス基板上で酵素反応(ライゲーション)を行い、蛍光色素付き基質を取り込ませて蛍光検出を行うことにより各断片の配列情報を得ている。
【0007】
さらに、非特許文献3では、基板上に、同一配列を有する多数のDNAプローブを固定しておく。また、DNA試料を切断後、DNAプローブ配列と相補鎖のアダプター配列を各DNA試料断片の端に付加させる。これらを基板上でハイブリダイゼーションさせることにより、基板上にランダムに一分子ずつ試料DNA断片を固定化させている。この場合、基板上でDNA伸長反応を起こない、蛍光色素付き基質を取り込ませた後、未反応基質の洗浄,蛍光検出を行い、試料DNAの配列情報を得ている。
【0008】
以上のように、基板上に、核酸断片試料を数多く固定することにより、パラレルに数多くの断片の配列情報を決定する方法が開発され、実用化されつつある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Nature 2005, Vol. 437, pp. 376-380.
【非特許文献2】Science 2005, VOL. 309, pp.1728-1732
【非特許文献3】Science 2008, Vol. 320, pp. 106-109.
【非特許文献4】P.N.A.S. 2006, vol. 103, pp 19635-19640
【非特許文献5】P.N.A.S. 2008, vol. 105, pp 1176-1181
【非特許文献6】Anal.Biochem. 2003, vol. 320, pp 55-65
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のようなパラレル解析法を用いても、ヒトの全ての遺伝子を解析するには数日間必要であり、さらにスループットが高い解析方法が望まれている。非特許文献1に示されているプレート上の穴の直径は44μm、微粒子の直径は22μmである。プレート上の粒子の密度が低く、一度に解析できるDNA断片数が少ない問題がある。非特許文献2の微粒子の直径は1μmと小さく、基板上の微粒子の密度は高い。しかしながら、微粒子が基板上にランダムに固定化されているため、近接するビーズからの蛍光を切り分けて検出するために、画素数が多い2次元センサを用いる必要がある。解析当たりのデータ数が増えるため、データ転送時間が長くなり、解析のスループットが低くなる問題がある。また、開口数NAの大きな集光レンズを使う必要があり、検出装置が高価になる問題もある。ライゲーション反応を行うために複数の反応溶液を送液するが、送液時の抵抗によりビーズが基板上よりはがれてしまう問題もある。非特許文献3においても、測定対象のDNA試料断片の配置はランダムである。非特許文献2と同様にスループットが低く、検出装置が高価な問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者らは、鋭意研究の結果、少ない画素数の2次元センサで検出可能なスループットが高い核酸分析用反応デバイスを完成させた。
【0012】
この核酸分析用反応デバイスは、基板と、基板上に流路を形成する反応チャンバーを備え、基板上で担体に固定された核酸を検出する核酸分析用反応デバイスであって、基板上には規則的に微細構造体が配置されており、微細構造体によって各担体が固定される。
【0013】
規則的に配置された微細構造体によって、担体が固定されることにより、固定される担体を規則的に配置させることが可能となる。
【0014】
それゆえ、画素数が少ない2次元センサを用いても隣接する担体からの蛍光を切り分けて検出することができる。従って、解析当たりのデータ数が減るため、データ転送時間が短くなり、解析のスループットを高くすることができる。さらに、開口数NAの大きな集光レンズを使う必要がなく、検出装置を安価にすることができる。
【0015】
本発明は、検出対象の核酸が固定化された担体が基板上に規則的に配列した核酸分析用反応デバイス,照射光源,2次元センサを含む検出ユニットからなる核酸分析装置であって、前記基板上に微細構造体を含むことを特徴とする。この微細構造体の配置、あるいは形状に一定の規則性を持たせることにより、担体の位置を制御することが可能となる。
【0016】
また、担体が微粒子であれば、粒子直径が小さいため高密度で配列できるとともに、粒子形状は表面面積が大きいため微粒子上の核酸固定量を高めることができる。
【0017】
また、担体よりも微細構造体の方が上方から見た長手方向の長さが短くすることで、微粒子を高密度に配列することができる。
【0018】
また、前記一つ一つの微粒子が、微細構造体に囲まれた状態で存在してもよい。微粒子が固定化された基板上に試薬を含む溶液を送液する際に、送液中の担体(例えばビーズ)のはがれを、微細構造体との接触により直接、あるいは水流の制御を介して間接的に防止することができる。
【0019】
また、微細構造体を格子状に配列することにより、2次元センサの画素サイズに合わせて、微粒子を高密度に2次元に正方配列することができる。
【0020】
また、微粒子が磁性材料からなるで、磁力を用いて、基板上に微粒子を固定化することができる。
【発明の効果】
【0021】
2次元センサの画素に合わせて配列させた微細構造体を用いて、検出対象のDNAが固定化された微粒子を基板上に固定化する。画素数が少ない2次元センサでの検出を可能とする。検出時のデータ数を低減することで、核酸配列を高スループットに分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の核酸分析用反応デバイスの構成の一例を説明するための図である。
【図2】本発明の核酸分析用反応デバイスの構成の一例を説明するための図である。
【図3】本発明の核酸分析反応デバイスの製造方法の一例を説明するための図である。
【図4】本発明の拡散分析用デバイス上における微細構造体の他のバリエーションについて説明するための図である。
【図5】本発明の拡散分析用デバイス上における微細構造体の他のバリエーションについて説明するための図である。
【図6】本発明の拡散分析用デバイス上における微細構造体の他のバリエーションについて説明するための図である。
【図7】本発明の核酸分析用反応装置の構成の一例を説明するための図である。
【図8】本発明の核酸分析用反応装置の構成の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。
【0024】
〔核酸分析用反応デバイスに用いる基板及び微粒子について〕
本発明の核酸分析用反応デバイス用基板について図1を用いて説明する。基板101の上に微細構造体102を格子状に配置する(図1左上図)。基板101上に検出対象である核酸が固定化された微粒子(担体,ビーズとも称す)103を含む溶液104(図1右上図)を送液する。微細構造体102と微粒子103を相互作用させることで微粒子103を基板上に格子状に配列する(図1下図)。
【0025】
基板101としては、ガラス基板,サファイア基板,シリコン基板などの無機物質からなる基板,ステンレスなどの金属からなる基板,ポリメタクリル酸メチル樹脂,ポリカーボネート樹脂,シクロオレフィン樹脂などの有機物質からなる基板を用いることができる。
【0026】
微細構造体102の形状としては、円柱,円錐,三角柱,三角錐,四角柱など様々な形状を用いることができる。一般に、これら微細構造体102の形状や大きさは同一面内であっても製造時にばらつきが生じるものである。1つの微粒子103に接触する複数の微細構造体102の形状や大きさがばらついていても、いずれかの位置で微粒子103と接触することが可能なよう構造体にはテーパーがついていることが好ましい。なお、ここでのテーパーは微細構造体の基板に近い側から遠い側に向かって細くなるような傾斜という意味である。
【0027】
微細構造体102の材質としては、微粒子103の直径以下の微細な加工ができれば特に制限はない。この様な材質と加工方法の組み合わせとしては、シリコンでのフォトリソグラフィとドライエッチングを組み合わせた加工やポリメタクリル酸メチル樹脂やシクロオレフィン樹脂でのナノインプリント加工などが上げられる。
【0028】
微細構造体102と微粒子103は種々の結合を介して固定化される。この様な結合様式としては、疎水性結合,静電相互作用,共有結合などが用いることができる。静電相互作用であれば、微細構造体表面にアミノ基を導入することで、効率良くDNAが吸着した微粒子103を固定化することができる。また、共有結合であれば、例えば、微粒子103の固定化されたDNAの末端にアミノ基やスルフィド基を導入しておき、リンカー分子を介して基板101及び微細構造体102表面の官能基と反応することで強固に結合することができる。このような化学結合の利用により、洗浄などの送液時における微粒子103の剥離や脱落を防ぐことができる。
【0029】
基板表面への官能基の導入に際しては、その材質を考慮したうえで適切な手法を選択する必要があるが、例えばその材質が有機樹脂であるならば、酸化処理による水酸基やカルボキシル基の導入,所望の官能基を有したモノマー分子のグラフト重合などが挙げられる。
【0030】
リンカー分子としては、基板101とDNA末端の官能基の組み合わせを考えて選択せねばならないが、例えば、スルホヒドリル基,アミノ基,カルボキシル基,リン酸基,アルデヒド基等を持つ分子を用いることができる。またDNA末端の官能基以外にも微粒子表面上の官能基を利用することもできる。例えば、微粒子の表面は分散性向上のため表面にカルボキシル基を有することが多いが、このカルボキシル基と有機基板の酸化処理やグラフト重合により基板表面に生じたカルボキシル基を、ポリアミンに代表される複数のアミノ基を持った分子とカルボジイミドなどの試薬を用いて固定することができる。また、リンカーとして金属イオンを用いることもできる。例えば四価のZrイオンはカルボキシル基と一本鎖DNAとに相互作用を示すことが知られており、例えば有機基板表面の酸化処理、若しくはグラフト重合により表面に形成されたカルボキシル基を用い、四価Zrイオンを固定し、そのZrイオンと一本鎖DNAの相互作用を利用して固定化することが可能である。
【0031】
なお、このようなリンカーの利用は必須ではなく、例えば有機基板の酸化により生じたカルボキシル基と、微粒子表面上のDNA末端に導入されたアミノ基を介して、基板101と微粒子103を結合することも可能である。微粒子103としては、直径5nm〜100nmのものが市販されており、これらを活用することができる。微粒子を構成する材料としては、ポリスチレン、酸化鉄に代表される磁性材料,半導体微粒子などがあるが、配列に磁力が活用可能な、磁性材料が特に好ましい。
【0032】
微細構造体102を基板101上に形成する方法としては、平滑材料が無機材料であれば半導体で既に実用化されている薄膜プロセスを活用することができる。例えば、マスクを通した蒸着・スパッタリング、あるいは蒸着・スパッタリングにより薄膜を形成した後、ドライあるいはウエットエッチングにより製造することができる。一方、基板101の材料がPMMAなどの有機材料であれば、ナノインプリントの様なモールド方式を用いても良い。
【0033】
〔核酸分析用反応デバイスについて〕
本発明の核酸分析用反応デバイスの好ましい構成の一例について図2を参照して説明する。基板201の上に、微粒子(不図示)が格子状に配置されている領域202が複数搭載されている。領域202の間隔は、解析しようとする核酸試料,蛍光検出装置の仕様によって適切に設定できる。複数の反応領域を基板201の上に設けるには、予め流路203を設けた反応チャンバー204を光透過性の基板201の上にかぶせることで達成できる。反応チャンバー204は、流路の形成には流路203の溝を予め掘ったPDMS(Polydimethylsiloxane)等の樹脂基体からなり、基板201上に貼り合わせて使用することになる。貼り合わせによって作製した核酸分析用反応デバイスは、核酸試料,反応酵素,バッファー,ヌクレオチド基質等を保存・温度管理する温調ユニット205,反応液を送り出す分注ユニット206,液の流れを制御するバルブ207,廃液タンク208と共に用いることができる。必要に応じ、温調機を配置し、温度制御を行う。反応終了時には、洗浄液が流路203を通じて供給され、廃液タンク209に収納される。
【0034】
〔核酸分析用反応デバイス用基板の製造方法〕
核酸分析用反応デバイス用基板の製造方法を、図3を用いて説明する。シクロオレフィン樹脂(ゼオノア1060R、日本ゼオン社製)などの熱可塑性樹脂からなる基板501上にスタンパ502を用いて微細構造体503を作製する。ガラス転移温度以上に加熱した基板501に対してスタンパ502を押し付けるナノインプリント工法によって、微細構造体503を有した基板501を得る。この際、スタンパ502は、直接、若しくはその延長線が交差する形状の凹若しくは凸を有しており、微細構造体503を有した基板501にはマーカー504も同時に形成される。このマーカー504を作成することで、直接微細構造体503を観察できない低倍率の画像からでも、微細構造体503の配置位置や角度を推定し、最終的な微粒子の位置を推定することができる。
【0035】
なお、図3では、微細構造体を格子状に配置させた例を説明した。しかしながら、配置方法はこれに限定されず、CCD素子の配置に合わせる形で自由に変更することができる。例えば、CCDを構成する受光素子の配置間隔が縦方向と横方向とで異なる長方画素CCDを用いるのであれば、その受光素子の配置間隔にあわせ縦方向と横方向とで異なる間隔で微細構造を配置してもよい。また、例えば受光素子がハニカム構造のCCDであればCCDの配置角度から45度傾けた正方格子状に配置させてもよい。
【0036】
また、一定間隔で微細構造が並ぶだけでなく、たとえば一本目と二本目の間隔が短くその次の三本目との間隔が長い、そして四本目との間隔がまた短くなるような配置でもよい。
【0037】
〔核酸分析用反応デバイス用基板の他のバリエーションについて〕
核酸分析用反応デバイスに用いる基板601に形成する微細構造体は、上述したものに限定されず、以下に説明するものでもよい。
【0038】
微細構造体は、第一の微細構造体602と、その中心点が形成する四角形の内部に中心点を持つ第二の微細構造体603から成るものでもよい。この第二の微細構造体603は、基板601面からの高さが第一の微細構造体602に比べ低いことを特徴とする。このような第二の微細構造体603は、例えばアナログ型レジストであるOEBRやZEP2000などを用い603の電子線描画時の照射線量を602に比べ少なくすることで作成できる。または、第一の微細構造体602を有する基板をマスタとしてスタンパを作成の上、図3のようにナノインプリント工法を用いて作成しても良い。このような高さの異なる二種類以上の微細構造体602,603を有する基板を用い微粒子604を基板から浮いた状態で固定することで、微粒子観察時に基板601からの自家蛍光の写りこみを低減することが可能となる。また、微粒子604下部に空間を設けることにより、反応の場である微粒子604の表面へ基質を均一に供給することができ、酵素反応効率の向上が可能となる。これにより、例えば後述する核酸分析方法に示すようなシーケンス反応であれば、位相のずれを防ぎ、より長い塩基長の読み取りが可能となる。また、基板面から微粒子604を浮かせることで、微粒子表面の洗浄の効率が向上するため短時間での洗浄時間の短縮が図れ、全体としてのスループットの向上に繋がる。また後述する核酸分析方法に示すような反応系では、前回反応サイクル時の試薬が一部残渣し次サイクルで反応する現象が起こりうるが、洗浄性を向上させることでサイクルごとの試薬残渣量を低減しデータの信頼性向上をもたらすことが可能となる。
【0039】
なお、図4では、一番上の図が微粒子604を固定する前の基板601を示す平面図であり、上から二番目の図が微粒子604を固定する前の基板601の断面図であり、一番下の図は微粒子を配置させた後の基板601の断面図である。この点は、図5および図6についても同様である。
【0040】
このような、微粒子604の下部に空間を設けるための構造としては、他には逆ピラミッド構造605(図5)やテーパーを有した四角柱構造606(図6)などがある。これらの構造はSiの異方性エッチングなどにより得ることができる。なお、逆ピラミッド構造は、基板に溝を形成することにより、作製している。
【0041】
〔核酸分析装置について〕
本発明の核酸分析装置について図7を用いて説明する。核酸分析装置は、核酸分析用反応デバイスに対して、ヌクレオチド,蛍光色素を有するヌクレオチド,核酸合成酵素,プライマー及び核酸試料からなる1種類以上の生体分子を供給する手段と、前記核酸分析用反応デバイスに光を照射する手段と、前記核酸分析用反応デバイス上において前記ヌクレオチド,前記核酸合成酵素、及び前記核酸試料が共存することにより起きる核酸伸長反応により核酸鎖中に取り込まれた蛍光色素の蛍光を測定する蛍光検出手段とを備える。
【0042】
より具体的には、予め流路を設けたカバープレート301と溶液交換用口である注入口303と排出口304から構成される反応チャンバーに基板305を設置する。なお、カバープレート301の材質として、PDMS(Polydimethylsiloxane)を使用する。YAGレーザ光源(波長532nm,出力20mW)306およびYAGレーザ光源(波長355nm,出力20mW)307から発振するレーザ光308および309をダイクロイックミラー311(410nm以下を反射)によって、前記2つのレーザ光を同軸になるよう調整した後、レンズ312によって集光し、その後、プリズム313を介して基板305へ臨界角以上で照射する。カバープレート301より出射される蛍光は、対物レンズ314により平行光束とされ、光学フィルタ315により背景光及び励起光が遮断され、結像レンズ316により2次元CCDカメラ317上に結像される。
【0043】
図7に示した核酸分析装置の変形例を図8を用いて説明する。図7に示した核酸分析装置との違いは、反応デバイスの下に温調素子419が設置されている点と光源406,407から生じたレーザ光を光ファイバ418を介して照射する点である。反応デバイスが温調素子419と直接接しているため、温調素子419と反応デバイス上の溶液温度の間の温度差を小さくすることができ、シーケンス反応の効率を高めることができる。406,407はレーザ光源で418の光ファイバを介してその先端の四角(開口部)から反応デバイスに向かって照射している。
【0044】
〔核酸分析用反応デバイスと核酸分析装置を用いた核酸分析方法について〕
非特許文献2に開示されている方法に従い、測定対象のDNAを断片化,増幅した後、エマルジョンPCR法を用いて測定対象のDNA断片が固定化されたビーズを作製する。続いて、非特許文献6に開示されている方法に従い、アクリルゲルを用いて本発明の核酸分析用反応デバイス上にビーズを固定化する。次に、ビーズが固定化された核酸分析用反応デバイスを図8に示した核酸分析装置に設置する。最後に、非特許文献2に開示されている方法に従い、
(1)アンカープライマーのハイブリダイゼーション
(2)蛍光プライマーのライゲーション
(3)蛍光検出
(4)アンカープライマーと蛍光プライマーの除去
(5)(1)から(4)の繰り返し
を行い、塩基配列を決定する。
【0045】
また、本発明は前述のライゲーションによる方法以外に逐次反応方式を用いることができる。蛍光色素付きヌクレオチドとして、非特許文献4に開示されているような、リボースの3′OHの位置に3′−O−アリル基を保護基として入れ、また、ピリミジンの5位の位置にあるいはプリンの7位の位置にアリル基を介して蛍光色素と結びつけたものが使用できる。アリル基は光照射あるいはパラジウムと接触することで切断されるため、色素の消光と伸長反応の制御を同時に達成することができる。逐次反応でも、未反応のヌクレオチドを洗浄で除去する必要はない。
【0046】
さらに、本実施例では、非特許文献5に開示されているような、洗浄工程が必要ないことからリアルタイムで伸長反応を計測することも可能である。上記のように、本実施例の核酸分析用反応デバイスを用いて核酸分析装置を組上げることで、洗浄工程を入れることなく、解析時間の短縮化,反応デバイス及び分析装置の簡便化が図れ、逐次反応方式のみならず、リアルタイムで塩基の伸長反応を計測することも可能となり、従来技術に対して大幅なスループットの改善が図れる。
【符号の説明】
【0047】
101,201,305,501,601 基板
102,503 微細構造体
103,604 微粒子
104 溶液
202 微粒子が格子状に配置されている領域
203 流路
204 反応チャンバー
205 温調ユニット
206 分注ユニット
207 バルブ
208 廃液タンク
301 カバープレート
303 注入口
304 排出口
306,307 YAGレーザ光源
308,309 レーザ光
310 ダイクロイックミラー
312 レンズ
313 プリズム
314 対物レンズ
315 光学フィルタ
316 結像レンズ
317 2次元CCDカメラ
418 光ファイバ
419 温調素子
502 スタンパ
504 マーカー
602 第一の微細構造体
603 第二の微細構造体
605 逆ピラミッド構造(微細構造体)
606 四角柱構造(微細構造体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、基板上に流路を形成する反応チャンバーを備え、基板上で担体に固定された核酸を検出する核酸分析用反応デバイスであって、
基板上には規則的に微細構造体が配置されており、微細構造体によって各担体が固定されることを特徴とする核酸分析用反応デバイス。
【請求項2】
担体よりも微細構造体の方が上方から見た長手方向の長さが短い請求項1に記載の核酸分析用反応デバイス。
【請求項3】
微細構造体によって担体は下部が基板と接触しないように固定される請求項1に記載の核酸分析用反応デバイス。
【請求項4】
各担体は微細構造体に囲われて存在することを特徴とする請求項1に記載の核酸分析用反応デバイス。
【請求項5】
微細構造体は、第1の微細構造体と、第1の微細構造体よりも基板から突出する高さが低い第2の構造体から構成されており、
担体は、第1の微細構造体により、周りから固定され、第2の微細構造体に下方から支えられて固定される請求項1に記載の核酸分析用反応デバイス。
【請求項6】
微細構造体は、断面が三角形状の溝である請求項1に記載の核酸分析用反応デバイス。
【請求項7】
微細構造体は、断面が三角形状の突起である請求項1に記載の核酸分析用反応デバイス。
【請求項8】
微細構造体は格子状に配置されている請求項1に記載の核酸分析用反応デバイス。
【請求項9】
各担体は、4つの微細構造体に接触する請求項1に記載の核酸分析用反応デバイス。
【請求項10】
基板上に、回転および/または収差によるゆがみを補正するためのマーカーを備えた請求項1に記載の核酸分析用反応デバイス。
【請求項11】
基板には、担体を補足するための官能基が導入されている請求項1に記載の核酸分析用反応デバイス。
【請求項12】
担体が磁性材料から成る請求項1に記載の核酸分析用反応デバイス。
【請求項13】
担体は微粒子である請求項1に記載の核酸分析用反応デバイス。
【請求項14】
担体に固定された核酸を検出する基板と、基板上に流路を形成する反応チャンバーを備えた核酸分析用反応デバイスと、
照射光源と、
2次元センサを含む検出ユニットとを備えた核酸分析装置であって、
基板上には規則的に微細構造体が配置されており、該微細構造体によって担体が固定されることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項15】
担体に固定された核酸を検出する基板と、基板上に流路を形成する反応チャンバーを備え、基板上に規則的に配置され担体を固定する微細構造体を備えた、核酸分析デバイスに対して、ヌクレオチド,蛍光色素を有するヌクレオチド、核酸合成酵素,プライマ及び核酸試料からなる1種類以上の生体分子を供給する手段と、
核酸分析デバイスに光を照射する手段と、
核酸分析デバイス上においてヌクレオチド,蛍光色素を有するヌクレオチド,核酸合成酵素,プライマ及び核酸試料からなる1種類以上の生体分子が共存することにより起きる核酸伸長反応により核酸鎖中に取り込まれた蛍光色素の蛍光を測定する蛍光検出手段と、を備え、核酸試料の塩基配列情報を取得することを特徴とする核酸分析装置。
【請求項16】
担体に固定された核酸を検出するために用いられる核酸分析用反応デバイス用基板であって、基板上には規則的に微細構造体が配置されており、微細構造体によって各担体が固定されることを特徴とする核酸分析用反応デバイス用基板。
【請求項17】
微細構造体は格子状に配置されている請求項16に記載の核酸分析用反応デバイス用基板。
【請求項18】
4つの微細構造体が囲われて担体が固定されることを特徴とする請求項17に記載の核酸分析用反応デバイス用基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−153938(P2011−153938A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16140(P2010−16140)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】