説明

核酸増幅の方法

本発明は一般に核酸の関心領域を増幅する方法に関し、特にネステッド単一管PCRによって核酸の関心領域を増幅する方法に関する。本発明の方法は、アウタープライマーの少なくとも1つを標的とするアンチセンス核酸分子によってアウタープライマー(1つ又は複数)の機能を選択的に不活性化し、それにより反応を通して増幅効率を維持する手段を提供するように設計されている。単一管ネステッドPCRとの関連において、アウタープライマーによる効率的な増幅と、それに続くインナープライマーによる効率的な増幅を達成する手段の開発は、これだけに限らないが、特定の遺伝子配列によって特徴付けられる疾患状態の診断及び/又はモニタリング並びに特定の遺伝子の関心領域の特徴付け又は分析等の応用範囲において有用である。さらには、本発明の方法によって、単純な検出のみでなく定量の実施が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に核酸の関心領域を増幅する方法に関し、特にネステッド単一管PCRによって核酸の関心領域を増幅する方法に関する。本発明の方法は、アウタープライマー(1つ又は複数)の機能を選択的に不活性化し、反応を通して増幅効率を維持する手段を提供するように設計されている。単一管ネステッドPCRとの関連において、アウタープライマーによる効率的な増幅と、それに続くインナープライマーによる効率的な増幅を達成する手段の開発は、これだけに限らないが、特定の遺伝子配列によって特徴付けられる疾患状態の診断及び/又はモニタリング並びに特定の遺伝子の関心領域の特徴付け又は分析等の応用範囲において有用である。さらには、本発明の方法によって、単純な検出のみでなく定量の実施が可能になる。
【背景技術】
【0002】
本明細書中におけるいずれの先行文献(又はそれから導かれる情報)又はいずれの既知の事項に関する言及も、先行文献(又はそれから導かれる情報)又は既知の事項が、本明細書が関連する試みの分野における共通の一般的知識の一部を形成することを承認若しくは容認又はいかなる形態においても示唆するものではなく、そのように解するべきではない。
【0003】
本明細書の著者によって言及される文献の書誌的詳細は、本記述の最後にアルファベット順にまとめてある。
【0004】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)はDNA鎖の特定の領域を増幅するために用いられる手法である。これは単一の遺伝子であってもよく、遺伝子の一部のみであってもよく、又は非コーディング配列であってもよい。大部分のPCR法ではDNA断片は典型的には10キロ塩基対(kb)まで増幅されるが、いくつかの手法では40kbサイズまでの断片の増幅が可能である(Chengら、1994年、Proc Natl Acad Sci.91巻、5695〜5699頁)。
【0005】
現在実用されているPCRにおいては、いくつかの塩基性成分を必要とする(Sambrook、Russel、2001年、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版)。これらの成分は、
増幅すべきDNA断片の領域を含むDNA鋳型、
増幅すべきDNA領域の5’末端及び3’末端のDNA領域に相補的なプライマー、
増幅すべき領域のDNAコピーを合成するために用いられるDNAポリメラーゼ(たとえばTaqポリメラーゼ又は70℃付近に至適温度を有する別の熱安定性DNAポリメラーゼ)、及び
DNAポリメラーゼが新たなDNAを構築するための材料であるデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)
である。
【0006】
PCRは、反応容積が典型的には15〜100μlで熱サイクラーに挿入された小さな反応管(容積0.2〜0.5ml)の中で行なわれる。この装置によって、その中の反応管が反応の各ステップに必要な正確な温度に加熱及び冷却される。大部分の熱サイクラーは反応管のキャップの内側への凝縮を防止するため、加熱された蓋を有している。或いは、蒸発を防ぐため反応混合物の上にオイルの層を置いてもよい。
【0007】
したがって、PCRはより長いDNA分子の内部でのDNA配列の対数的増幅を可能にする方法である。反応にはいくつかの増幅サイクルが含まれ、各サイクルにおいて各分子反応のための鋳型は試料中の最初のDNAの鎖又は先行するサイクルにおいて合成されたDNAの鎖のいずれかである。各PCRサイクルには以下のステップが含まれる。
DNA二本鎖の2つの鎖を分離するための熱による変性、
上流及び下流プライマーと、それらの相補的配列とのハイブリダイゼーション、
鋳型配列に相補的なコピーを作製するためのDNAポリメラーゼによるプライマーの伸長。
【0008】
典型的にはPCR試薬及び条件は、変性、ハイブリダイゼーション及び伸長が最大効率付近で起こり、その結果として所望の配列の量が各サイクルで2倍近く増加するように選択される。実質的な増幅はPCRの最後までに起こり、たとえば30サイクルのPCRで、殆ど230(1,000,000,000)倍の元の鋳型の増幅が得られることになる。この増幅度によって、増幅された生成物の検出及び分析が可能となる。
【0009】
いくつかの増幅サイクルの後でPCRを終了して、生成物を種々の方法、最も一般にはゲル電気泳動によって分析することができる。PCRを有限エンドポイントに向けて行なう場合には、増幅された生成物の量は通常、インプットされた標的DNAの量に密接には関連しておらず、このタイプのPCRはむしろ、特定のDNAの存在又は非存在を検出するため及び/又はさらなる分析のために充分な標的DNAを提供するための定性的なツールである。
【0010】
メッセンジャーRNA(mRNA)を測定するためには、本方法では逆転写酵素を用いて最初にmRNAを相補的DNA(cDNA)に変換し、次いでこれをPCRによって増幅して、アガロースゲル電気泳動によって分析する。逆転写及びこれに続くエンドポイントPCRは同様に本質的には定性的手法である。
【0011】
定量の可能性を提供するために、リアルタイムPCRが開発された。この手順は一般的なPCRのパターンに従うが、増幅されたDNAは各サイクルの間に定量される。定量の2つの共通の方法では、二本鎖DNA及び修飾DNAオリゴヌクレオチドプライマー又はプローブに挿入される蛍光色素が用いられ、その蛍光がPCRの1つのステップの間に変化する。リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応はしばしば、存在量の少ないメッセンジャーRNA(mRNA)を定量するために逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応と組み合わされ、それにより研究者が特定の時に又は特定の細胞若しくは組織型において相対的な遺伝子発現を定量することが可能になる。
【0012】
(i)二本鎖DNAに結合する色素を用いるリアルタイムPCR
Sybr Green等のDNA結合性色素は、PCR反応において全二本鎖(ds)DNAに結合し、色素の蛍光が増加する。したがってPCRの間のDNA生成物の増加は蛍光強度の増加をもたらし、これは各サイクルで測定され、それによりDNA濃度を定量することが可能になる。
【0013】
(ii)蛍光レポーター配列法
蛍光レポータープライマー又はプローブを用いるいくつかの異なった方法が開発され、それらはDNA結合性色素を用いるよりも正確で信頼性が高い傾向がある。この方法では1つ又は複数のDNAプライマー又はプローブを用いてプライマー又はプローブがハイブリダイズするDNAのみを定量する。Taqmanプローブ等のレポータープローブを用いることによって特異性が顕著に増大し、いくらかの非特異的DNA増幅が存在する場合でさえも定量が可能になり得る。全ての標的が同様の効率で増幅されるとすれば、配列特異的プライマー又はプローブを用いることによってマルチプレックス化、即ち異なった着色ラベルを有する特異的配列又はプローブを用いて同じ反応でいくつかの異なった増幅生成物を分析することが可能になる。
【0014】
定量の観点では、反応の対数期の間に存在するDNAの相対濃度は、蛍光を対数スケールでサイクル数に対してプロットすることによって決定される。バックグラウンドを超える蛍光の増大又はバックグラウンド未満の減少の閾値(正確な方法に依存する)が決定される。試料からの蛍光が閾値と交差するサイクルをサイクル閾値、Cと称する。
【0015】
次いで試験結果を1つ又は複数の標準によって得られた結果と比較することによって標的DNAの量が決定される。標的DNAがゲノムDNAである場合には、一連の標準、通常は標的DNAの既知量の10倍希釈系列が一般に用いられる。標的DNAがcDNAである場合には、別の遺伝子のcDNAの1つ又は複数の内部標準が一般に用いられる。
【0016】
PCR増幅の特異性を増大させるために設計された従来のPCRの変形がネステッドPCR反応である。この増幅反応においては、2つの連続する反応において2組のプライマーが用いられる。第1の反応においては、1対のプライマーがDNA生成物を生成するために用いられるが、これはまた非標的領域から増幅された生成物を含んでもよい。第1のPCRからの生成物は次いで、その結合部位が第1の組の内部に位置する(ネストする)1つ(「ヘミネスティング」)又は2つの異なったプライマーを用いて第2の反応を開始するために用いられる。全てのプライマーの特異性が組み合わされ、通常は単一の生成物がもたらされる。
【0017】
ネステッドPCRは従来、1つの反応管の中で最初のPCRを行ない、増幅生成物の分割量を第2の反応管に移し、次いで第2のPCRを行なうことによって実施されている。この手順には2つの不利益がある。これは単一のPCRより煩雑であり、またより重要なことには第1のPCRの増幅生成物によって周囲を汚染する危険が伴い、それにより引き続く実験手順の汚染をもたらす可能性がある。この理由により、1つの反応管の中で継続的にPCRを行なうためのいくつかの方法が開発されてきた。
【0018】
1つの反応管の中で2回のPCRを行なうことには、最初の反応混合物に2回分のプライマーを加えることが含まれる。そこで、1回目はプライマーのアウターペアを用い、2回目はインナーペアを用いて2回の逐次的PCRを実施するために用いられてきた方法には下記のものがある。
2回のPCRに異なったアニーリング温度を用いる(Kempら、Gene、1990年、94巻、223〜228頁;Erlichら、米国特許第5314809号)、
1回目のPCRでプライマーの濃度を減少させる(Erlichら、米国特許第5314809号)、
2回のPCRでアニーリング時間を変化させる(Groszら、米国特許第5340728号)、
2回目のPCR用のプライマーの構造を修飾し、この回で2つの異なったアニーリング温度を用いる(Xu Dingbang Publication CN1858219)、
2回目のPCRに低い変性温度を用いる(Erlichら、米国特許第5314809号)、
1回目のPCRに化学修飾されたプライマー及びそれらを徐々に破壊する可能性のある酵素を用いる(Du Breuil Lastrucci、米国特許第7273730号)、
1回目及び2回目のPCR用の試薬を最初に物理的に分離して用いる(Yourno、米国特許第5556773号;Chingら、米国特許出願公開第2006/0177844号)。
【0019】
これらの方法全ての根底にある原理は、ある点で1回目のPCR用のプライマーの活性を急速に又は徐々に阻害し、それにより進行中の増幅が漸次2回目のPCR用のプライマーの活性に依存するようにすることである。しかしこれらの方法全てには不利益があり、その不利益の性質はその方法に依存している。それらの頑健性は一定でなく、増幅すべき関心配列に応じて反応条件を調節する必要があることがある。ある場合には1回目のPCRの間、また他の場合には1回目から2回目のPCRへの遷移の間、増幅効率が悪いことがあり得る。その結果、いくつかの手法は実際上、広く用いられておらず、他の手法は検出のためのみに用いられ、定量には用いられていない。
【0020】
本発明をもたらす研究の中で、アウタープライマーの機能を一旦それがもはや不要になった時に選択的に不活性化する機構を提供することによって特異性及び効率の両方を向上させ、それによりアウタープライマーを用いる効率的な増幅とそれに続くインナープライマーを用いる効率的な増幅を可能にする単一管ネステッドPCR法が開発された。したがってこれにより定量並びに検出を達成するために充分効率的で、かつ単一管ネステッドPCR反応の特有の利点を提供するPCR法の開発が可能になった。
【発明の概要】
【0021】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲を通して、文脈によってそれ以外が要求されない限り、「含む(comprise)」という単語並びにそのs形及びing形等の語尾変化は、提示された整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を含むことを意味するが、他のいかなる整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群をも含まないことを意味するものではないことが理解されるであろう。
【0022】
本明細書において、「〜由来の」という用語は、特定の整数又は整数の群が指定された種に起源するが、必ずしも指定された源から直接に得られたものではないことを示すと解すべきである。さらに本明細書において、「a」、「an」及び「the」の単数形は、文脈によってそれ以外が明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0023】
他に定義されない限り、本明細書において用いる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術の当業者が共通に理解している同じ意味を有する。
【0024】
本発明の1つの態様は、核酸の関心領域を増幅する方法を対象とし、該方法は、
(i)核酸試料を
(a)前記関心領域を指向する第1のフォワードプライマー及び前記関心領域を指向する第1のリバースプライマー、及び
(b)前記関心領域を指向する第2のフォワードプライマーであって、前記第1のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のフォワードプライマーのTより低いTを有する第2のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第2のリバースプライマーであって、前記第1のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のリバースプライマーのTより低いTを有する第2のリバースプライマー、及び
(c)前記第1のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記第1のプライマーより低いTを有するアンチセンスオリゴヌクレオチド
と接触させるステップであって、
ステップ(ii)の増幅の前、その間、又はその後であるがステップ(iii)の増幅の前の反応にパート(b)及び(c)の分子を加えることができるステップ、
(ii)前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(i)の核酸試料を増幅するステップ、及び
(iii)前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能なアニーリング温度でステップ(ii)の核酸試料を増幅するステップ
を含む。
【0025】
本発明の別の態様は、DNAの関心領域を増幅する方法を対象とし、該方法は、
(i)DNA試料を
(a)前記関心領域を指向する第1のフォワードプライマー及び前記関心領域を指向する第1のリバースプライマー、及び
(b)前記関心領域を指向する第2のフォワードプライマーであって、前記第1のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のフォワードプライマーのTより低いTを有する第2のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第2のリバースプライマーであって、前記第1のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のリバースプライマーのTより低いTを有する第2のリバースプライマー、及び
(c)前記第1のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記第1のプライマーより低いTを有するアンチセンスオリゴヌクレオチド
と接触させるステップであって、
ステップ(ii)の増幅の前、その間、又はその後であるがステップ(iii)の増幅の前の反応にパート(b)及び(c)の分子を加えることができるステップ、
(ii)前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(i)のDNA試料を増幅するステップ、及び
(iii)前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能なアニーリング温度でステップ(ii)のDNA試料を増幅するステップ
を含む。
【0026】
本発明のさらに別の態様は、DNAの関心領域を増幅する方法を対象とし、該方法は、
(i)DNA試料を
(a)前記関心領域を指向する第1のフォワードプライマー及び前記関心領域を指向する第1のリバースプライマー、及び
(b)前記関心領域を指向する第2のフォワードプライマーであって、前記第1のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のフォワードプライマーのTより低いTを有する第2のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第2のリバースプライマーであって、前記第1のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のリバースプライマーのTより低いTを有する第2のリバースプライマー、及び
(c)前記第1のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記第1のプライマーより低いTを有し、該アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つがプライマーの3’末端とハイブリダイズし、かつ5’核酸タグ配列を含み、該タグの相補的ヌクレオチド配列が前記プライマーのハイブリダイゼーション部位の5’末端に隣接するDNA領域のヌクレオチド配列に関してミスマッチであるアンチセンスオリゴヌクレオチド
と接触させるステップであって、
ステップ(ii)の増幅の前、その間、又はその後であるがステップ(iii)の増幅の前の反応にパート(b)及び(c)の分子を加えることができるステップ、
(ii)前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(i)のDNA試料を増幅するステップ、及び
(iii)前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能なアニーリング温度でステップ(ii)のDNA試料を増幅するステップ
を含む。
【0027】
さらに別の態様において、本発明は、DNAの関心領域を増幅する方法を対象とし、該方法は、
(i)DNA試料を
(a)前記関心領域を指向する第1のフォワードプライマー及び前記関心領域を指向する第1のリバースプライマー、及び
(b)前記関心領域を指向する第2のフォワードプライマーであって、前記第1のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のフォワードプライマーのTより低いTを有する第2のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第2のリバースプライマーであって、前記第1のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のリバースプライマーのTより低いTを有する第2のリバースプライマー、及び
(c)前記第1のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記第1のプライマーより低いTを有し、該アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つ又は複数が正常な伸長ができない3’末端を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
と接触させるステップであって、
ステップ(ii)の増幅の前、その間、又はその後であるがステップ(iii)の増幅の前の反応にパート(b)及び(c)の分子を加えることができるステップ、
(ii)前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(i)のDNA試料を増幅するステップ、及び
(iii)前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能なアニーリング温度でステップ(ii)のDNA試料を増幅するステップ
を含む。
【0028】
さらに別の態様において、本発明は、DNAの関心領域を増幅する方法を対象とし、該方法は、
(i)DNA試料を
(a)前記関心領域を指向する第1のフォワードプライマー及び前記関心領域を指向する第1のリバースプライマー、及び
(b)前記関心領域を指向する第2のフォワードプライマーであって、前記第1のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のフォワードプライマーのTより低いTを有する第2のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第2のリバースプライマーであって、前記第1のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のリバースプライマーのTより低いTを有する第2のリバースプライマー、及び
(c)前記第1のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記第1のプライマーより低いTを有し、
プライマーの3’末端とハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチド上の5’核酸タグ配列であって、該タグの相補的ヌクレオチド配列が前記プライマーのハイブリダイゼーション部位の5’末端に隣接するDNA領域のヌクレオチド配列に関してミスマッチである5’核酸タグ配列と、
正常な伸長ができない3’末端
とを含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
と接触させるステップであって、
ステップ(ii)の増幅の前、その間、又はその後であるがステップ(iii)の増幅の前の反応にパート(b)及び(c)の分子を加えることができるステップ、
(ii)前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(i)のDNA試料を増幅するステップ、及び
(iii)前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能なアニーリング温度でステップ(ii)のDNA試料を増幅するステップ
を含む。
【0029】
本実施形態によれば、DNAの関心領域を増幅する方法が提供され、該方法は、
(i)DNA試料を
(a)前記関心領域を指向する第1のフォワードプライマー及び前記関心領域を指向する第1のリバースプライマー、及び
(b)前記関心領域を指向する第2のフォワードプライマーであって、前記第1のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のフォワードプライマーのTより5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20℃低いTを有する第2のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第2のリバースプライマーであって、前記第1のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のリバースプライマーのTより5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20℃低いTを有する第2のリバースプライマー、及び
(c)前記第1のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記第1のプライマーより10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30℃低いTを有し、
プライマーの3’末端とハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチド上の5’核酸タグ配列であって、該タグの相補的ヌクレオチド配列が前記プライマーのハイブリダイゼーション部位の5’末端に隣接するDNA領域のヌクレオチド配列に関してミスマッチである5’核酸タグ配列と、
正常な伸長ができない3’末端
とを含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
と接触させるステップであって、
ステップ(ii)の増幅の前、その間、又はその後であるがステップ(iii)の増幅の前の反応にパート(b)及び(c)の分子を加えることができるステップ、
(ii)前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(i)のDNA試料を増幅するステップ、及び
(iii)前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能なアニーリング温度でステップ(ii)のDNA試料を増幅するステップ
を含む。
【0030】
本発明のさらなる実施形態は、DNAの関心領域を増幅する方法を対象とし、該方法は、
(i)DNA試料を
(a)前記関心領域を指向する第1のフォワードプライマー及び前記関心領域を指向する第1のリバースプライマー、及び
(b)前記関心領域を指向する第2のフォワードプライマーであって、前記第1のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のフォワードプライマーのTより低いTを有する第2のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第2のリバースプライマーであって、前記第1のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のリバースプライマーのTより低いTを有する第2のリバースプライマー、及び
(c)前記関心領域を指向する第3のフォワードプライマーであって、前記第2のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置するDNA配列を指向し、かつ前記第2のフォワードプライマーのTより低いTを有する第3のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第3のリバースプライマーであって、前記第2のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置するDNA配列を指向し、かつ前記第2のリバースプライマーのT値より低いT値を有する第3のリバースプライマー、及び
(d)前記第1のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記第1のプライマーより低いTを有するアンチセンスオリゴヌクレオチド及び前記第2のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、その各々が前記第2のプライマーより低いTを有するアンチセンスオリゴヌクレオチド
と接触させるステップであって、
ステップ(ii)の増幅の前、その間、又はその後であるがステップ(iii)の増幅の前の反応にパート(b)、(c)及び(d)の分子を加えることができるステップ、
(ii)前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第2のプライマー及び第3のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(i)のDNA試料を増幅するステップ、及び
(iii)前記第2のプライマーと前記第1のプライマーを指向する前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第3のプライマーと前記第2のプライマーを指向する前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(ii)のDNA試料を増幅するステップ、
(iv)前記第3のプライマーと前記第2のプライマーを指向する前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能なアニーリング温度でステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップ
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】2相ネステッド単一管定量PCRの方式を示す略図である。反応には高いTmを有するアウタープライマー、第1相の高温におけるアウタープライマーへの結合を防止するのに充分に低いが、第2相の低温における結合を可能にするのに充分に高いTmを有するアンチセンスオリゴヌクレオチド、及びこれも第1相の高温における鋳型鎖への結合を防止するのに充分に低いが、第2相の低温における結合を可能にするのに充分に高いTmを有するインナープライマーが含まれる。アンチセンスオリゴヌクレオチドのいくつかの設計が可能で、2つが図に示されている。最も好ましい設計には、(a)アウタープライマーがアンチセンスオリゴヌクレオチドに結合して伸長する場合には鋳型鎖へのミスマッチが起こるように設計された5’末端における短い伸長、及び(b)アウタープライマーの全長に沿うアンチセンスオリゴヌクレオチドの伸長を防止するミスマッチをもたらす3’末端における短い伸長が含まれる。PCRの第1相の間、アニーリング温度は充分に高く、ハイブリダイゼーションはアウタープライマーと鋳型との間のみに起こり、したがって効率的な増幅が起こる。PCRの第2相の間、アニーリング温度は充分に低く、以下の2つの機構が起こることが可能である。アンチセンスオリゴヌクレオチドがアウタープライマーとハイブリダイズしてそれに沿って伸長し、そのためその後にPCR鋳型とハイブリダイズするとしてもPCR鋳型に沿って伸長することができなくなる。インナープライマーがハイブリダイズして伸長し、それにより効率的なPCR増幅が継続する。
【図2】アンチセンスオリゴヌクレオチド上の5’タグの配列に起因する機能効果を示す略図である。異なったヌクレオチド塩基は概念的にA、B、C、Dで表わし、相補的塩基はa、b、c、dで表わしている。タグ配列が3’から5’方向にabcdであれば、プライマー伸長の配列は5’から3’方向にABCDとなり、伸長したプライマーはその鋳型と完全にマッチし、さらに伸長して効率的に増幅されることになる。オリゴヌクレオチドタグの他の配列はいずれも伸長したプライマーと鋳型鎖との間の部分的な又は完全なミスマッチ及びプライマーの部分的な又は完全な不活性化をもたらすことになる。完全なミスマッチを起こすための最も単純な方式は、鋳型配列abcd(3’から5’へ)に相補的で、またその鋳型上のネイティブプライマーの伸長によって生成した配列(5’から3’へ)である配列ABCDをタグ配列として用いることである。
【図3】PCRのアニーリング温度を最初の15サイクルについて72℃、残りのサイクルについて58℃として、100ng〜50pgの範囲のDNA量についてN−RAS遺伝子を定量した際のCT値のグラフ表示である。赤で示した点は「アウター」プライマーを用いた標準PCRの結果である。青で示した点はPCRがアウタープライマー、アウタープライマーに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、及びインナープライマーを含む2相1管プロトコルの結果である。2相1管プロトコルから標準PCRと同じ結果が得られることが分かり、これが最適の効率を有していることが示される。最初の15サイクルの間、アンチセンスオリゴヌクレオチドもインナープライマーもアニーリングできないので、増幅はアウタープライマーによって最適な効率で推進される。引き続くサイクルの間、アンチセンスオリゴヌクレオチドはアウタープライマーを徐々に不活性化するが、インナープライマーはアニーリングして最適の効率で増幅を起こすことができる。緑のデータはPCRがアウタープライマー及びアンチセンスオリゴヌクレオチドのみを含む場合の結果である。50以上のCt値は増幅が起こっていないことを示し、アニーリング温度が一旦58℃になればアウタープライマーは徐々にスイッチオフされることが分かる。紫で示した点はインナープライマー単独のCt値である。Ct値はほぼ15サイクル遅れ、インナープライマーが最初の15サイクルの間はアニーリングしないことを示している。白三角及び黒三角はDNAを含まない対照管からの結果である。
【図4A】2相単一管ネステッドPCR系の性能の解析のグラフ表示である。4つの遺伝子(N−RAS、APC、BCR、及び再配置IGH遺伝子)を試験し、ある範囲のCt値を生成するための増幅にある量の範囲のDNAを用いた。15サイクルを72℃で、残りのサイクルを58℃で実施し、Taqmanプローブを用いてCtを決定した。青の記号はアウタープライマーのみを用いる従来のPCRを示し、赤の記号はアウタープライマー、アンチセンスオリゴヌクレオチド(これはアウタープライマーを指向している)、及びインナープライマーを含む2相PCRを示し、緑の記号はアウタープライマー及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むPCRを示す。2相系からは従来のPCRと同じCtの結果が得られるが、インナープライマーが存在しない時のアンチセンスオリゴヌクレオチドの阻害効果によって証明されるように、58℃の第2相の間の増幅はインナープライマーによって媒介される。Ct値55は陰性の結果を示す。本法により4つの遺伝子全てについて同じ実験条件を用いる効率的なネステッド単一管PCRの開発が可能になったという観察によって、本法の頑健性が証明される。
【図4B】2相単一管ネステッドPCR系の性能の解析のグラフ表示である。4つの遺伝子(N−RAS、APC、BCR、及び再配置IGH遺伝子)を試験し、ある範囲のCt値を生成するための増幅にある量の範囲のDNAを用いた。15サイクルを72℃で、残りのサイクルを58℃で実施し、Taqmanプローブを用いてCtを決定した。青の記号はアウタープライマーのみを用いる従来のPCRを示し、赤の記号はアウタープライマー、アンチセンスオリゴヌクレオチド(これはアウタープライマーを指向している)、及びインナープライマーを含む2相PCRを示し、緑の記号はアウタープライマー及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むPCRを示す。2相系からは従来のPCRと同じCtの結果が得られるが、インナープライマーが存在しない時のアンチセンスオリゴヌクレオチドの阻害効果によって証明されるように、58℃の第2相の間の増幅はインナープライマーによって媒介される。Ct値55は陰性の結果を示す。本法により4つの遺伝子全てについて同じ実験条件を用いる効率的なネステッド単一管PCRの開発が可能になったという観察によって、本法の頑健性が証明される。
【図5】2相ネステッドPCR系の動力学のグラフ表示であり、アウタープライマーの活性に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの漸進的阻害効果を示す。PCR増幅は2相系、アウタープライマーのみ、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドの存在下のアウタープライマーのいずれかを用いて実施した。15、18、21、24又は32サイクルのいずれかの後にPCRを停止し、2回目のPCRにおいて分割量を分析して、2相PCRにおける長鎖及び短鎖アンプリコンの両方、又はインナープライマーが存在せず増幅がアウタープライマーのみによる他の2つのPCRにおける長鎖アンプリコンの増幅を測定した。PCRのサイクルの増加とともに生成する生成物の量の増加を示すためにCt値が逆に示されていることに注意されたい。2相PCRにおけるアンプリコンの総数及び長鎖プライマーのみが存在するPCRにおける長鎖アンプリコンの数の両方において指数的増加がある(両方のデータの組についての回帰直線を示す)。しかし、アンチセンスオリゴヌクレオチドが存在する場合には、2相PCR及び存在する唯一のプライマーが長鎖プライマーであるPCRの両方において長鎖アンプリコンの増幅は徐々に遅くなる。
【図6】アニーリング温度が72℃である場合のアウタープライマーによる増幅に対してアンチセンスオリゴヌクレオチドの阻害効果がないことを示すグラフ表示であり、これは2相ネステッドPCRの第1相の場合である。N−RAS、APC及びBCRの3つの遺伝子を試験した。2対のアンチセンスオリゴヌクレオチドの効果はN−RASに対してやや異なるT値であり、APCに対する1対のアンチセンスオリゴヌクレオチド及びBCRに対する1対のアンチセンスオリゴヌクレオチドを検討した。PCRにおいて種々のDNA量を用いた。唯一の阻害効果は、高いTmを有するN−RASに対するオリゴヌクレオチドで、33サイクルのPCRの後でのみ見られた。
【図7A】Sybr Green又はTaqmanプローブを用いる蛍光検出のグラフ表示である。3回の実験を実施してN−RAS、APC及びBCR遺伝子を試験し、2相ネステッドPCRとアウタープライマーのみを用いる従来のPCRとを比較した。種々の量のDNAを用いてPCRを開始し、Taqmanプローブ又はSybr Greenのいずれかによってエンドポイントを測定した。従来のPCRではSybr Greenを用いたCt値はTaqmanを用いた値よりも低く、従来のPCRではいくらかの非特異的物質が増幅されSybr Greenによって測定されていることを示した。2つのエンドポイントの間のこの相違は2相ネステッド系では見られず、この系においては非特異的増幅がないことが示された。
【図7B】Sybr Green又はTaqmanプローブを用いる蛍光検出のグラフ表示である。3回の実験を実施してN−RAS、APC及びBCR遺伝子を試験し、2相ネステッドPCRとアウタープライマーのみを用いる従来のPCRとを比較した。種々の量のDNAを用いてPCRを開始し、Taqmanプローブ又はSybr Greenのいずれかによってエンドポイントを測定した。従来のPCRではSybr Greenを用いたCt値はTaqmanを用いた値よりも低く、従来のPCRではいくらかの非特異的物質が増幅されSybr Greenによって測定されていることを示した。2つのエンドポイントの間のこの相違は2相ネステッド系では見られず、この系においては非特異的増幅がないことが示された。
【図7C】Sybr Green又はTaqmanプローブを用いる蛍光検出のグラフ表示である。3回の実験を実施してN−RAS、APC及びBCR遺伝子を試験し、2相ネステッドPCRとアウタープライマーのみを用いる従来のPCRとを比較した。種々の量のDNAを用いてPCRを開始し、Taqmanプローブ又はSybr Greenのいずれかによってエンドポイントを測定した。従来のPCRではSybr Greenを用いたCt値はTaqmanを用いた値よりも低く、従来のPCRではいくらかの非特異的物質が増幅されSybr Greenによって測定されていることを示した。2つのエンドポイントの間のこの相違は2相ネステッド系では見られず、この系においては非特異的増幅がないことが示された。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は部分的に、特有の融解温度を有するプライマー及びアウタープライマーを不活性化できるアンチセンス分子を用いることにより、一定かつ最適レベルの効率を保ち、それにより単なる定性的な読み出しよりむしろ定量的なPCR読み出しを可能にする単一管ネステッドPCR法を設計することができるという判断に基礎を置いている。より具体的には、この開発により、単一管ネステッドPCRの状況においてはこれまで得られなかった程度の制御及び頑健性が可能になった。本発明の方法は、特定の遺伝子等の特定のDNAの関心領域の解析を必要とするいかなる応用の状況においても有用である。
【0033】
したがって、本発明の1つの態様は核酸の関心領域を増幅する方法を対象とし、該方法は、
(i)核酸試料を
(a)前記関心領域を指向する第1のフォワードプライマー及び前記関心領域を指向する第1のリバースプライマー、及び
(b)前記関心領域を指向する第2のフォワードプライマーであって、前記第1のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のフォワードプライマーのTより低いTを有する第2のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第2のリバースプライマーであって、前記第1のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のリバースプライマーのTより低いTを有する第2のリバースプライマー、及び
(c)前記第1のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記第1のプライマーより低いTを有するアンチセンスオリゴヌクレオチド
と接触させるステップであって、
ステップ(ii)の増幅の前、その間、又はその後であるがステップ(iii)の増幅の前の反応にパート(b)及び(c)の分子を加えることができるステップ、
(ii)前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(i)の核酸試料を増幅するステップ、及び
(iii)前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能なアニーリング温度でステップ(ii)の核酸試料を増幅するステップ
を含む。
【0034】
核酸の「関心領域」への言及は、増幅しようとするDNA又はRNAの任意の領域への言及と理解されたい。これは遺伝子、遺伝子の一部又は遺伝子間領域であり得る。この目的のため、「遺伝子」への言及は、それが全長のタンパク質であろうとタンパク質の断片であろうと、タンパク質生成物をコードするDNA分子への言及と理解されたい。染色体DNAに関しては、遺伝子はイントロン及びエクソン領域の両方を含むことになる。しかし、関心のDNAがベクターDNA又は逆転写されたmRNAである場合に起こり得るように関心のDNAがcDNAである限りにおいては、イントロン領域は存在しないかも知れない。それでもそのようなDNAは5’又は3’非翻訳領域を含み得る。したがって本明細書における「遺伝子」への言及は、たとえばゲノムDNA及びcDNAを含む、タンパク質又はタンパク質断片をコードする任意の形態のDNAを包含すると理解されたい。対象となる核酸の関心領域はまた、いかなる特定の遺伝子とも関連性が知られていないゲノムDNAの非コーディング部分(一般に「ジャンク」DNA領域と称されているもの等)であってもよい。これは、ゲノムDNAの2つの領域の間、又はゲノムDNAの1つの領域とウイルス若しくは導入された配列等の外来DNAの領域との間の組み換えによって生成されるゲノムDNAの任意の領域であってもよい。これは部分的に又は全体的に合成により又は組み換えにより生成された核酸分子の領域であってもよい。対象となる核酸の関心配列はまた、以前にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の任意の核酸増幅法によって増幅されたDNAの領域(即ち増幅法によって生成したもの)であってもよい。
【0035】
対象となる「核酸」領域は、DNA若しくはRNA又はそれらの誘導体若しくは類似体であってもよい。関心領域がタンパク性分子をコードするDNA配列である場合には、それはゲノムDNA、mRNA転写物から生成されたcDNA、又は核酸増幅によって生成されたDNAの形態を取ってもよい。しかし対象のDNAがタンパク質をコードしない場合には、ゲノムDNA又は合成により若しくは組み換えにより生成されたDNAが分析の対象となり得る。当業者には理解されるであろうが、合成により及び組み換えにより生成されたDNAも、タンパク質の全部又は一部をコードし得る。しかし、対象の方法がRNAの領域を検出することを対象とする場合には、最初にRT−PCR等を用いてRNAをDNAに逆転写することが必要となるであろうことが認識されよう。対象のRNAは、mRNA、プライマリーRNA転写物、リボゾーマルRNA、トランスファーRNA、マイクロRNA、その他等の任意の形態のRNAであってもよい。好ましくは、前記核酸の関心領域はDNAの関心領域である。この目的のため、前記DNAには、最終的には分析の対象であるRNAから逆転写により生成されたDNA及びPCR等の核酸増幅法によって生成されたDNAが含まれる。
【0036】
したがって、本発明の1つの態様はDNAの関心領域を増幅する方法を対象とし、該方法は、
(i)DNA試料を
(a)前記関心領域を指向する第1のフォワードプライマー及び前記関心領域を指向する第1のリバースプライマー、及び
(b)前記関心領域を指向する第2のフォワードプライマーであって、前記第1のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のフォワードプライマーのTより低いTを有する第2のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第2のリバースプライマーであって、前記第1のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のリバースプライマーのTより低いTを有する第2のリバースプライマー、及び
(c)前記第1のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記第1のプライマーより低いTを有するアンチセンスオリゴヌクレオチド
と接触させるステップであって、
ステップ(ii)の増幅の前、その間、又はその後であるがステップ(iii)の増幅の前の反応にパート(b)及び(c)の分子を加えることができるステップ、
(ii)前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(i)のDNA試料を増幅するステップ、及び
(iii)前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能なアニーリング温度でステップ(ii)のDNA試料を増幅するステップ
を含む。
【0037】
「DNA」への言及は、デオキシリボ核酸又はその誘導体若しくは類似体への言及と理解されたい。この点に関し、これはcDNA及びゲノムDNAを含む全ての形態のDNAを包含すると理解されたい。本発明の核酸分子は自然発生の(生物学的試料に由来するような)、組み換えにより生成された又は合成により生成されたものを含む任意の起源のものであってよい。
【0038】
「誘導体」への言及は、自然、合成又は組み換え源からの前記DNAの断片、ホモログ又はオルソログへの言及を含むと理解されたい。「機能的誘導体」はDNAの機能活性の任意の1つ又は複数を示す誘導体と理解されたい。前記DNA配列の誘導体には、他のタンパク性又は非タンパク性分子と融合したDNA分子の特定の領域を有する断片が含まれる。本明細書において意図される「類似体」には、これだけに限らないが、その化学的構造又は全体のコンフォメーションの修飾等のヌクレオチド又は核酸分子の修飾が含まれる。これにはたとえば新規の若しくは修飾されたプリン若しくはピリミジン塩基の組み込み又はヌクレオチド若しくは核酸分子が主鎖形成若しくは相補的塩基対ハイブリダイゼーションのレベル等で他のヌクレオチド若しくは核酸分子と相互作用する様式への修飾が含まれる。ヌクレオチド若しくは核酸分子のビオチン化又は他の形態のラベリングは、本明細書において定義される「機能性誘導体」の例である。
【0039】
好ましくは、前記DNAは遺伝子若しくは遺伝子断片、染色体遺伝子転座ブレークポイント又はPCR等の先行する核酸増幅によって生成されたDNAである。関心のDNAは化学的に合成されてもよく、これだけに限らないが任意の動物、植物、細菌又はウイルスを含む任意の生命体のDNA又はRNAに由来するものでもよい。
【0040】
古典的PCRにおいては、プライマー及び反応条件は、フォワード及びリバースプライマーのハイブリダイゼーション及び伸長が最大効率又はその付近で起こり、それによりアプリコンの数が各サイクルでほぼ2倍になり、その結果、効率的な指数的増幅が得られるように設計される。最適効率を達成するために適切なプライマー濃度が重要である。2組以上のプライマーを逐次的な反応に用いれば、DNA増幅のより大きな特異性を得ることができる。この方法により、非標的領域から増幅されるいかなる非特異的生成物の影響をも、その結合部位が第1の組の結合部位の内側に位置するプライマーを用いてさらなる増幅を行なうことによって最小化することができる。全てのプライマーの特異性は組み合わされ、通常は単一の生成物が得られる。ネステッドPCRは個別の反応の一連のシリーズとして実施することができ、又は単一の反応容器中で実施することができる。単一管ネステッドPCR反応の利点は明らかであるが、この手法には異なった増幅の回の間の効率の不一致等の問題があり、これが定量的な結果を得ることが望まれる場合の顕著な制約となっていた。異なったプライマーの組からの一連の順序での増幅を効果的にするため、多くの先行技術の方法は主としてアウタープライマーの濃度を低くし、第1相のアニーリング温度を高く、第2相の温度を低くする方法に焦点が当てられていた。しかし異なったプライマーの組の間で増幅効率は顕著に異なり、そのためこの方法の有用性は限られていた。
【0041】
本発明をいかなる1つの理論又は作用モードに限定することはないが、アウタープライマーの組による増幅に続くアウタープライマーを指向するアンチセンスオリゴヌクレオチドの作用によって、アウターフォワードプライマーを経由する増幅を効率的に障害することが可能であることが見出された。アウタープライマーに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって遊離のアウタープライマーの濃度が低下し、それが今度はこのプライマーのDNA標的鋳型へのハイブリダイゼーションの効率を低下させることになる。ハイブリダイゼーションはいくつかの変数に支配される。アンチセンスオリゴヌクレオチドのプライマーへのハイブリダイゼーションの強度及び程度はオリゴヌクレオチドのTmに依存することになり、それが今度はその配列及び長さ、ハイブリダイゼーションを低減又は増大させる何らかのミスマッチ又は修飾の存在、オリゴヌクレオチドの濃度並びにアニーリング温度及び時間に依存することになる。アンチセンスオリゴヌクレオチドの大部分の3’塩基がプライマーの大部分の5’塩基とハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドを除いて、アンチセンスオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションは3’方向に伸長することになる。これにより、より高いTmを有するより長いアンチセンスオリゴヌクレオチドが生成され、これは引き続くサイクルの間により強くハイブリダイズすることになる。
【0042】
ハイブリダイゼーションに影響するこれらの種々の要素を理解することは、アンチセンスオリゴヌクレオチドのプライマーとのハイブリダイゼーションがPCRの最初の高温相の間では最小又は存在せず、引き続く低温相の間では起こるように1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドプライマーを含む単一管ネステッドPCRを当業者が設計することの助けになる。当業者はまた、高温相の間ではアウタープライマーが高い機能性濃度で存在し、したがってこの相の間のPCR増幅は最適効率である一方、低温相の間ではアウタープライマーはずっと低い遊離濃度で存在するがインナープライマーは一定の高濃度で存在し、それにより増幅は最適効率で継続できることを理解するであろう。低温相増幅の間、一旦インナープライマーによってアプリコンが開始されれば、それに「由来」し、引き続くサイクルの間に生成する全ての引き続くアプリコンはインナープライマーによってのみ生成することになる。したがってこの相の間、各サイクルにおける増幅は、アウタープライマーによる開始からインナープライマーによる開始へと徐々に移動することになる。
【0043】
「プライマー」及び「アンチセンスオリゴヌクレオチド」への言及は、ヌクレオチドの配列又はその機能的誘導体若しくは類似体を含む任意の分子への言及であって、その機能は核酸分子(対象のDNAはまた「標的DNA」とも称する)の関心領域とのハイブリダイゼーション及びその領域の5’のDNA配列の増幅を含むと理解されたい。プライマー又はアンチセンスオリゴヌクレオチドは非核酸成分を含んでもよいことを理解されたい。たとえば、プライマー又はアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、その分子のプローブとしての使用を可能にするか、又はそうでなければその検出又は固定化を可能にする蛍光若しくは酵素タグ又は他のいくつかの非核酸成分等の非核酸タグを含んでもよい。プライマー又はアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、追加的な核酸成分を含んでもよい。別の例においては、プライマー又はアンチセンスオリゴヌクレオチドは、核酸側鎖を示すペプチド主鎖を含むタンパク核酸であってもよい。好ましくは、前記オリゴヌクレオチドプライマーはDNAプライマーである。
【0044】
「フォワードプライマー」への言及は、標的DNAのアンチセンス鎖とハイブリダイズすることによってPCRにおいて対象のDNA試料中の標的DNAを増幅するプライマーへの言及と理解されたい。
【0045】
「リバースプライマー」への言及は、標的DNAのセンス鎖とハイブリダイズすることによってPCRにおいて対象のDNA試料中の標的DNAを増幅するプライマーへの言及と理解されたい。
【0046】
これまでに詳述したように、ネステッドPCRは、DNAの関心領域中の次第により内側の配列とハイブリダイズするように方向付けられた2組以上のフォワード及びリバースプライマーの使用に基礎を置いている。本発明との関連においては、「第1の」フォワード及びリバースプライマーへの言及は、DNAの関心領域の最も外側の位置においてハイブリダイズするプライマーへの言及と理解されたい。「第2の」フォワード及びリバースプライマーは、内側プライマーへの言及と理解されたい。即ち、これらの第2のプライマーは、それぞれ第1のフォワードプライマーの下流及び第1のリバースプライマーの上流である配列とハイブリダイズするように設計されている。DNAの関心領域に沿ってどの間隔でこれらのプライマーがハイブリダイズするように設計するかは当業者の技能の範囲内である。本明細書において「第3の」フォワード及びリバースプライマーの組への言及は、それぞれ第2のフォワードプライマーの下流及び第2のリバースプライマーの上流である配列とハイブリダイズするように設計されたさらにより内側のプライマーの組への言及と理解されたい。
【0047】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、指定されたフォワードプライマーとハイブリダイズするように設計されている。したがって、「指向する」は、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドが対象のプライマーの領域とハイブリダイズすることを意味している。したがって、アンチセンスオリゴヌクレオチドはプライマーの一部のみにわたってハイブリダイズしてもよく、プライマーの全長にわたってハイブリダイズしてもよい。このオリゴヌクレオチドは「アンチセンス」オリゴヌクレオチドと称するが、この用語の使用は、このオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列が、そのオリゴヌクレオチドが対象のプライマーとハイブリダイズすることができるように設計されていることを示すことを意図していると理解されたい。アンチセンスオリゴヌクレオチドを記述するために本明細書において用いられる命名法に関しては、プライマーの3’末端とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの末末端はオリゴヌクレオチドの5’と称され、他の末端はオリゴヌクレオチドの3’末端であることも理解されたい。
【0048】
本発明をいかなる1つの理論又は作用モードにも限定するものではないが、本発明の反応を1つ又は2つ以上の型のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いるように設計してもよい。2つ以上の型のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いる場合には、これらのオリゴヌクレオチドはアウタープライマーの異なった領域とハイブリダイズするように設計してもよい。用いられるアンチセンスオリゴヌクレオチドはフォワードプライマーのみ又はリバースプライマーのみを指向してもよいことも理解されたい。別の選択肢においては、反応はフォワードプライマーを指向するアンチセンスオリゴヌクレオチド及びリバースプライマーを指向するアンチセンスオリゴヌクレオチドの両方を用いるように設計してもよい。
【0049】
また本発明をいかなる1つの理論又は作用モードにも限定するものではないが、本発明の反応をネステッド反応よりむしろセミネステッド反応を用いるように設計してもよい。この場合には、第2のフォワードプライマー又は第2のリバースプライマーは用いられず、残存する単一のフォワードプライマー又は単一のリバースプライマーを指向するアンチセンスオリゴヌクレオチドは存在しない。
【0050】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは単純なアンチセンスオリゴヌクレオチドの形態を取ってもよく、又はフォワードプライマーによる進行中の増幅を阻害する役割を増強するかさもなければよりさらに効果的にする追加的な機能的又は構造的特徴を含んでもよい。これらの特徴には、それだけに限らないが、以下のものが含まれ得る。
【0051】
(i)アンチセンスオリゴヌクレオチド上の5’タグ
これはアウタープライマーによる増幅を阻害するための追加的な機構であり、アンチセンスオリゴヌクレオチドをフォワードプライマー又はリバースプライマーの3’末端とハイブリダイズさせるように設計するステップと、オリゴヌクレオチドタグをオリゴヌクレオチドの5’末端に位置させるステップに基づいている(本明細書において置き換え可能にオリゴヌクレオチド伸長とも称する)。
【0052】
このオリゴヌクレオチドタグの効果を図2に示す。プライマーがタグのついたアンチセンスオリゴヌクレオチドとハイブリダイズする際には、プライマーは3’方向に伸長する。この二本鎖の解離に続いて、また同時の若しくは引き続くPCRサイクルにおいて、伸長したプライマーは相補的鋳型鎖とハイブリダイズし得る。鋳型に沿った効率的な伸長のためには、プライマー伸長の配列は伸長部とハイブリダイズする鋳型鎖の配列と相補的でなければならず、そのためにはオリゴヌクレオチドタグの配列は伸長部とハイブリダイズする鋳型鎖の配列と同じでなければならない。逆に、オリゴヌクレオチドタグの配列が伸長部とハイブリダイズする鋳型鎖の配列と異なる場合には、さらなる伸長及び増幅は起こらないことになり、即ちプライマーは不活性化されたことになる。その結果、許容温度におけるPCRの間に、サイクル数が増加するにつれてアウタープライマー分子が次第に不活性化され、この現象はアンチセンスオリゴヌクレオチドのアウタープライマーとのハイブリダイゼーションによって起こる直接の阻害効果と協働する。タグの基本的性質はフォワード及び/又はリバースプライマーの3’伸長のための鋳型として作用することであって、それにより伸長したプライマーは引き続くPCRサイクルの間に作用できないこと、これは正常なヌクレオチド又はイソデオキシシトシン若しくはイソデオキシグアニン等の修飾ヌクレオチドのいずれかの5’アンチセンスオリゴヌクレオチドタグを含むことによって達成し得ること(相補的ヌクレオチドが反応中に存在しなければならない)、オリゴヌクレオチドタグの配列と伸長部とハイブリダイズし得る鋳型鎖の配列との間の距離が大きくなればプライマーの不活性化の程度が大きくなること、及びオリゴヌクレオチドタグの配列を伸長部とハイブリダイズし得る鋳型鎖の配列と正確に相補的にすることによって特に効率的な不活性化が得られることが、当業者には認識できよう。
【0053】
(ii)アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’伸長の阻害
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、それがプライマーとハイブリダイズする際に3’伸長することが防止できるように設計し得る。アンチセンスオリゴヌクレオチド分子がプライマーの5’末端以外の位置でプライマー分子とハイブリダイズする際には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは5’末端に到達するまで3’伸長することになる。本発明を制限することでは全くないが、引き続くPCRサイクルの間に、高いTmを有する伸長したオリゴヌクレオチド分子は、より大きなハイブリダイゼーションによって遊離プライマーの濃度が低下すること及びより大きなハイブリダイゼーションによってオリゴヌクレオチドタグに沿った3’プライマー伸長の結果としてより大きな不活性化が起こることの両方によって、アウタープライマーによる増幅に対してより大きな阻害効果を発揮することになる。3’伸長したオリゴヌクレオチドのこの強化された阻害効果は、それがPCRの高温相の間の増幅をいくらか阻害するほどに大きい場合、時には逆効果になり得る。この理由により、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’伸長の防止が望ましいであろう。
【0054】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’伸長は3’末端のいくつかの異なった修飾によって防止され得るということが当業者には認識されよう。これらには、これだけに限らないが、以下のものが含まれる。
タグを3’末端に位置させてタグとプライマーのミスマッチをもたらす、又は
伸長を可能にしないジデオキシチミジン、イソデオキシシトシン又はイソデオキシグアニン等の分子を3’末端に位置させる、又は
3’末端をリン酸化する。
【0055】
図1及び図3〜6に示す結果は、3種のヌクレオチドのミスマッチタグを用いたものである。未修飾又は3’末端で修飾したオリゴヌクレオチドの混合物を用いることによって、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’伸長が起こる程度を制御することが可能であることが、当業者にはまた認識されよう。
【0056】
(iii)(i)及び(ii)の両方で述べたアンチセンスオリゴヌクレオチドの修飾の組み込み
【0057】
したがって、本発明の1つの実施形態はDNAの関心領域を増幅する方法を対象とし、該方法は、
(i)DNA試料を
(a)前記関心領域を指向する第1のフォワードプライマー及び前記関心領域を指向する第1のリバースプライマー、及び
(b)前記関心領域を指向する第2のフォワードプライマーであって、前記第1のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のフォワードプライマーのTより低いTを有する第2のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第2のリバースプライマーであって、前記第1のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のリバースプライマーのTより低いTを有する第2のリバースプライマー、及び
(c)前記第1のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記第1のプライマーより低いTを有し、該アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つがプライマーの3’末端とハイブリダイズし、かつ5’核酸タグ配列を含み、該タグの相補的ヌクレオチド配列が前記プライマーのハイブリダイゼーション部位の5’末端に隣接するDNA領域のヌクレオチド配列に関してミスマッチであるアンチセンスオリゴヌクレオチド
と接触させるステップであって、
ステップ(ii)の増幅の前、その間、又はその後であるがステップ(iii)の増幅の前の反応にパート(b)及び(c)の分子を加えることができるステップ、
(ii)前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(i)のDNA試料を増幅するステップ、及び
(iii)前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能なアニーリング温度でステップ(ii)のDNA試料を増幅するステップ
を含む。
【0058】
別の実施形態において本発明はDNAの関心領域を増幅する方法を対象とし、該方法は、
(i)DNA試料を
(a)前記関心領域を指向する第1のフォワードプライマー及び前記関心領域を指向する第1のリバースプライマー、及び
(b)前記関心領域を指向する第2のフォワードプライマーであって、前記第1のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のフォワードプライマーのTより低いTを有する第2のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第2のリバースプライマーであって、前記第1のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のリバースプライマーのTより低いTを有する第2のリバースプライマー、及び
(c)前記第1のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記第1のプライマーより低いTを有し、該アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つ又は複数が正常な伸長ができない3’末端を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
と接触させるステップであって、
ステップ(ii)の増幅の前、その間、又はその後であるがステップ(iii)の増幅の前の反応にパート(b)及び(c)の分子を加えることができるステップ、
(ii)前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(i)のDNA試料を増幅するステップ、及び
(iii)前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能なアニーリング温度でステップ(ii)のDNA試料を増幅するステップ
を含む。
【0059】
さらに別の実施形態において本発明はDNAの関心領域を増幅する方法を対象とし、該方法は、
(i)DNA試料を
(a)前記関心領域を指向する第1のフォワードプライマー及び前記関心領域を指向する第1のリバースプライマー、及び
(b)前記関心領域を指向する第2のフォワードプライマーであって、前記第1のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のフォワードプライマーのTより低いTを有する第2のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第2のリバースプライマーであって、前記第1のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のリバースプライマーのTより低いTを有する第2のリバースプライマー、及び
(c)前記第1のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記第1のプライマーより低いTを有し、
プライマーの3’末端とハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチド上の5’核酸タグ配列であって、該タグの相補的ヌクレオチド配列が前記プライマーのハイブリダイゼーション部位の5’末端に隣接するDNA領域のヌクレオチド配列に関してミスマッチである5’核酸タグ配列と、
正常な伸長ができない3’末端
とを含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
と接触させるステップであって、
ステップ(ii)の増幅の前、その間、又はその後であるがステップ(iii)の増幅の前の反応にパート(b)及び(c)の分子を加えることができるステップ、
(ii)前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(i)のDNA試料を増幅するステップ、及び
(iii)前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能なアニーリング温度でステップ(ii)のDNA試料を増幅するステップ
を含む。
【0060】
「オリゴヌクレオチドタグ」への言及は、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドに連結されているヌクレオチド配列への言及と理解されたい。1つの実施形態においては、タグは1〜10塩基の長さ、好ましくは2〜5塩基の長さ、より好ましくは2〜3塩基の長さである。
【0061】
対象のタグは、タグの配列に相補的なヌクレオチド配列がプライマーの3’末端のハイブリダイゼーション部位のDNA領域5’のヌクレオチド配列に関して「ミスマッチする」ように設計される。「ミスマッチする」とは、タグの配列が、プライマーとアンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーション及びタグに沿ったプライマーの伸長に引き続いて、元のプライマーに対応する伸長したプライマーの部分のみがDNAの関心領域とハイブリダイズすることができ、伸長した部分はDNAの関心領域とのハイブリダイゼーションを促進しない配列であるようなものであることを意味する。このようにして、このプライマーの3’末端はDNAの関心領域とハイブリダイズすることができないので、増幅中のこのプライマーのいかなるさらなる伸長も阻害される。したがって、プライマーがアンチセンスオリゴヌクレオチドとハイブリダイズする際には、プライマーは3’方向に伸長してターミナル配列を形成し、これにより、このようにして修飾されたプライマーが引き続いてそのアンプリコン鋳型とハイブリダイズする際に3’方向への効率的な伸長が防止される。
【0062】
したがって本発明の方法によって、最外側のプライマーからの最初の増幅が主たる増幅反応として最初に効率的に進行することが可能になる。しかし、この増幅を完了させ、内側の第2のプライマーの組からの増幅を進行させることが求められているので、アンチセンスオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション及びアンチセンスオリゴヌクレオチドのタグ領域に沿った第1のフォワードプライマーの伸長を生じさせることにより、DNAの関心領域との関連においていかなるさらなる伸長を受けることも効果的に防止されるプライマーの生成がもたらされる。アニーリング温度条件の変更と相まって、進行中の望ましくないアウタープライマーの増幅は最小化され、インナープライマーの増幅は効率的な増幅を可能にする条件の下に進行することができる。
【0063】
フォワードプライマー若しくはリバースプライマー又はフォワードプライマーとリバースプライマーの両方を指向したアンチセンス分子を用いる反応を設計できることを理解されたい。
【0064】
本発明における使用に適したプライマー及びアンチセンスオリゴヌクレオチドの設計及び合成は、当業者には公知であろう。プライマー及びオリゴヌクレオチドのTm値は、主としてPCRの種々の相に望ましいアニーリング温度によって決定されよう。たとえば、図1及び図3〜6に示す実験については、Taqmanプローブを用いるため及び非特異性を最小化するため、第2相について58℃のアニーリング温度が望まれた。この温度ではTm値58〜66℃のインナープライマー及びTm値48〜52℃のアンチセンスオリゴヌクレオチドが良好に作用するであろうが、68〜72℃を超える温度では効果を失うであろうことが実験から分かった。したがって第1相のアニーリング温度は72℃に定まった。検討した4種の遺伝子について良好に作用したので、単一管ネステッドPCRのこの設計は頑健と思われた。第2相においてより低いアニーリング温度が望ましい場合又はさらに低い温度を用いて第3相を実施すべき場合には、当業者はプロトコルを改変することが可能であろう。
【0065】
対象となるプライマーは、特定のアニーリング温度を有する機能目的を達成する任意の適当な長さであってよい。たとえば、対象のアウタープライマーは4〜60ヌクレオチドの長さ、別の実施形態においては10〜50の長さ、さらに別の実施形態においては15〜45の長さ、さらに別の実施形態においては20〜40の長さ、さらに別の実施形態においては25〜35の長さである。さらに別の実施形態においては、プライマーは約26、27、28、29、30、31、32、33又は34ヌクレオチドの長さである。対象のインナープライマーはより低いTmを有し、一般にはより短いが、4〜50ヌクレオチドの長さ、別の実施形態においては8〜40の長さ、さらに別の実施形態においては12〜30の長さ、さらに別の実施形態においては13〜30の長さ、さらに別の実施形態においては14〜25の長さ、さらに別の実施形態においては15、16、17、18、19、20、21又は22ヌクレオチドの長さである。
【0066】
本発明のプライマーは互いに異なった溶融温度(T)を示すように、またアンチセンスオリゴヌクレオチドはさらに別のTを示すように設計されている。本発明をなんら限定することはないが、良好な増幅効率、特に1つの増幅相から次の相に保たれる良好な増幅効率を可能にするものは、特有の融解温度の組み合わせ及びアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用である。より具体的には、最外側のプライマーが最も高いTを有するように設計される。これにより第1相の増幅を高いアニーリング温度で実施することが可能になり、非特異的なアニーリング及び増幅が最小化される。特に、アンチセンスオリゴヌクレオチドと内側プライマーとのアニーリング及び増幅は、これらの分子がより低いT値を示すので促進されない。
【0067】
当業者は、その温度を超えると効率的に又は非効率的に前記第1のプライマー、前記第2のプライマー及び前記アンチセンスオリゴヌクレオチドがハイブリダイズしてそれらの作用を発揮するアニーリング温度の範囲を容易に決定することができるであろう。したがって、反応条件の設計、たとえば「前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが、前記第2のプライマーとアンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度」の決定は日常の手順の事柄である。決定は、個別のPCRが異なったアニーリング温度で実施できるように反応ウェルの範囲にわたってアニーリング温度の勾配を作り出す数多くのqPCR装置(BioRad社製のiQリアルタイムPCR装置等)の1つを用いることによって直接行なうことができる。Ct値、したがってハイブリダイゼーションが可能な又は不可能なアニーリング温度を直接決定することができる。或いは、塩基スタッキングアルゴリズムを用いてTmを推定するいくつかのウェブサイトの1つ、たとえばhttp://www.promega.com/biomath/calc11.htm、http://www.idtdna.com/analyzer/Applications/OligoAnalyzerを調べて前記第1のプライマー、前記第2のプライマー及び前記アンチセンスオリゴヌクレオチドのTmの推定値を得ることによって、決定を間接的に行なうことができる。本発明者らの研究室における実験の結果、前記第1及び第2のプライマーは大略それぞれの推定Tm値プラス5℃より低いアニーリング温度で効率的に増幅すること、前記第2のプライマーは大略それぞれの推定Tm値プラス7℃より高い温度では顕著な増幅を示さないこと、及び前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは大略オリゴヌクレオチドの推定Tm値プラス10℃より低いアニーリング温度では前記第1のプライマーの増幅の測定可能な阻害を示すことが分かる。当業者はまた、ステップ(ii)は前記第1のプライマーによる効率的な増幅が可能な最高温度と、前記インナープライマーが測定できる増幅を示さず前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが測定できる阻害を示さない最低温度との間の範囲の任意のアニーリング温度で都合よく実施できること、及びステップ(iii)は前記第2のプライマーによる効率的な増幅及び前記アンチセンスオリゴヌクレオチドによる測定できる阻害がある任意のアニーリング温度で都合よく実施できることを認識するであろう。
【0068】
ステップ(ii)の増幅は、選択されたアニーリング温度がそれぞれのT値よりも高いこと、又は単に第2のプライマーとアンチセンスオリゴヌクレオチドとがステップ(ii)の増幅が起こる時に反応混合物に添加されなかったこと等の理由で、任意の適切な手法によって第2のプライマーとアンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションができないように設計できることも理解されたい。
【0069】
1つの例においては、アウタープライマーの第1の組は65〜75℃のTを示すように設計され、インナープライマーの第2の組は大略10℃低い、即ち55〜65℃のTを示すように設計される。インナープライマーの第3の組を用いる場合には、これらはさらに低い、45〜55℃等のTを有し、第2のフォワードプライマーを指向するアンチセンスオリゴヌクレオチドが最低のTを示すように設計されよう。したがって、異なったプライマーの対象の融解温度は5〜15℃の相違、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃及び12℃の相違等を示すように設計できる。1つの実施形態においては、前記第1のプライマーは70〜75℃のTを示す一方、前記第2のプライマーは58℃〜62℃のTを示し、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは48〜52℃のTを示す。
【0070】
本実施形態によればDNAの関心領域を増幅する方法が提供され、該方法は、
(i)DNA試料を
(a)前記関心領域を指向する第1のフォワードプライマー及び前記関心領域を指向する第1のリバースプライマー、及び
(b)前記関心領域を指向する第2のフォワードプライマーであって、前記第1のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のフォワードプライマーのTより5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20℃低いTを有する第2のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第2のリバースプライマーであって、前記第1のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のリバースプライマーのTより5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20℃低いTを有する第2のリバースプライマー、及び
(c)前記第1のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記第1のプライマーより10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30℃低いTを有し、
プライマーの3’末端とハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチド上の5’核酸タグ配列であって、該タグの相補的ヌクレオチド配列が前記プライマーのハイブリダイゼーション部位の5’末端に隣接するDNA領域のヌクレオチド配列に関してミスマッチである5’核酸タグ配列と、
正常な伸長ができない3’末端
とを含むアンチセンスオリゴヌクレオチド
と接触させるステップであって、
ステップ(ii)の増幅の前、その間、又はその後であるがステップ(iii)の増幅の前の反応にパート(b)及び(c)の分子を加えることができるステップ、
(ii)前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(i)のDNA試料を増幅するステップ、及び
(iii)前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能なアニーリング温度でステップ(ii)のDNA試料を増幅するステップ
を含む。
【0071】
別の実施形態においては、前記第1のプライマーは65〜75℃、好ましくは69〜73℃のTを示し、前記第2のプライマーは55〜65℃、好ましくは59〜63℃のTを示し、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは45〜55℃、好ましくは49〜52℃のTを示す。
【0072】
本発明のプライマー、オリゴヌクレオチド及びタグは本明細書に例示した特定の構造(直線状、一本鎖分子)に限定されるべきではなく、本明細書に詳細に述べる機能目的を達成する任意の適切な構造形態に拡張し得ることを理解されたい。たとえば、プライマーはPCRの低温相の間、5’タグとともに又はそれなしに、3’末端においてプライマーの配列に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドとしてそれ自体作用し、ステムループ構造を形成し得る5’配列を含むように設計してもよい。この場合、個別のアンチセンスオリゴヌクレオチドは必要ない。他の例としては以下のものがある。
1つ又は複数のハイブリダイズしない領域によって分離された2つ以上のハイブリダイズする配列からなるプライマー、
1つ又は複数のハイブリダイズしない領域又は弱いハイブリダイズする領域であって、そのような領域の各々が1つ又は複数のハイブリダイズしない又は弱いハイブリダイズする塩基又はリンカーを含む領域によって分離された2つ以上のハイブリダイズする配列からなるアンチセンスオリゴヌクレオチド、
2つ以上の小さなアンチセンスオリゴヌクレオチドの連結によってPCRのコースの間に形成されるアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【0073】
ある状況の下では3相ネステッド増幅を実施することが望ましいこともある。これまでに述べた実施形態に包含される原理及び種々の改変は、そのような増幅を設計するために当業者によって用い得る。
【0074】
したがって、本発明の別の態様はDNAの関心領域を増幅する方法を対象とし、該方法は、
(i)DNA試料を
(a)前記関心領域を指向する第1のフォワードプライマー及び前記関心領域を指向する第1のリバースプライマー、及び
(b)前記関心領域を指向する第2のフォワードプライマーであって、前記第1のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のフォワードプライマーのTより低いTを有する第2のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第2のリバースプライマーであって、前記第1のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のリバースプライマーのTより低いTを有する第2のリバースプライマー、及び
(c)前記関心領域を指向する第3のフォワードプライマーであって、前記第2のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置するDNA配列を指向し、かつ前記第2のフォワードプライマーのTより低いTを有する第3のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第3のリバースプライマーであって、前記第2のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置するDNA配列を指向し、かつ前記第2のリバースプライマーのT値より低いT値を有する第3のリバースプライマー、及び
(d)前記第1のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記第1のプライマーより低いTを有するアンチセンスオリゴヌクレオチド及び前記第2のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、その各々が前記第2のプライマーより低いTを有するアンチセンスオリゴヌクレオチド
と接触させるステップであって、
ステップ(ii)の増幅の前、その間、又はその後であるがステップ(iii)の増幅の前の反応にパート(b)、(c)及び(d)の分子を加えることができるステップ、
(ii)前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第2のプライマー及び第3のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(i)のDNA試料を増幅するステップ、及び
(iii)前記第2のプライマーと前記第1のプライマーを指向する前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第3のプライマーと前記第2のプライマーを指向する前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(ii)のDNA試料を増幅するステップ、
(iv)前記第3のプライマーと前記第2のプライマーを指向するアンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能なアニーリング温度でステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップ
を含む。
【0075】
1つの実施形態においては、対象のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、
(a)プライマーの3’末端とハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチド上の5’核酸タグ配列であって、該タグの相補的ヌクレオチド配列が前記プライマーのハイブリダイゼーション部位の5’末端に隣接するDNA領域のヌクレオチド配列に関してミスマッチである5’核酸タグ配列と
(b)正常な伸長ができない3’末端と
を含む。
【0076】
そのような実施形態において用いられる条件の例としては、第1のフォワード及びリバースプライマーのTm値が70〜72℃であること、第2のフォワード及びリバースプライマーのTm値が58〜62℃であること、第3のフォワード及びリバースプライマーのTm値が42〜50℃であること、並びに第1のフォワード及びリバースプライマーのいずれか又は両方を指向するアンチセンスオリゴヌクレオチドのTm値が48〜52℃であること、及び第2のフォワード及びリバースプライマーのいずれか又は両方を指向するアンチセンスオリゴヌクレオチドのTm値が30〜45℃であることである。同様の原理を用いて、当業者は4対のプライマー及び3対のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた4相を含む単一管ネステッドPCRを設計することができよう。
【0077】
プライマー及びアンチセンスオリゴヌクレオチドと標的DNAとの相互作用の促進は、任意の適切な方法によって実施することができる。これらの方法は当業者には既知であろう。この目的のため、アンチセンスオリゴヌクレオチド及び/又はインナープライマーは任意の適切な時点で反応管に組み込むことができることを理解されたい。組み込みは一般的には最初の増幅サイクルの開始前、即ちフォワード及びリバースアウタープライマーとともに行なわれるが、1つ又は複数の組み込みをアウタープライマーとの最初の増幅サイクルに続いて行なってもよい。いずれの場合にも、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、第2のプライマーの組による増幅が可能なように反応温度が低下された後にのみその完全な効果を発揮する。アンチセンスオリゴヌクレオチド及び/又はインナープライマーの組み込みのモードは当業者が増幅反応をどのように実施することを目指しているかによるが、一般には使用の容易さ及び汚染の防止のため、全反応を単一管内で実施できることが通常は望ましい。しかし、本発明のステップを達成する任意の他の方法を用いることができる。
【0078】
本発明の方法は好ましくは2相反応として実施される。第1相のアニーリング温度によって、第1のアウタープライマーの組のみが任意の程度にハイブリダイズし、アンチセンスオリゴヌクレオチド又は第2若しくは第3のプライマーの組はハイブリダイズしないことが保証される。しかし第2相のアニーリング温度は第2のプライマーの組と第1のプライマーの組を指向するアンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能になるように選択される。各相において実施されるべき適切なサイクル数は当業者によって決定することができる。たとえば、典型的には第1相に15〜30サイクルが用いられ、第2相には10〜40サイクルが用いられる。PCRの第2相の開始の際にアニーリング温度を急激に低下させるより、2相の間に徐々に遷移があるようにアニーリング温度を徐々に低下させてもよい。
【0079】
プライマーを指向する増幅を行なう方法も、当業者には非常によく知られている。好ましい方法においては、前記増幅はポリメラーゼ連鎖反応である。
【0080】
「試料」への言及は、生物学的又は非生物学的試料のいずれかへの言及と理解されたい。非生物学的試料の例としては、たとえば合成的に製造された核酸集合の核酸生成物が挙げられる。「生物学的試料」への言及は、これだけに限らないが細胞物質、血液、粘液、糞便、尿、組織生検試料、動物体内に導入されその後取り出された流体(たとえば肺洗浄の後に肺から抽出された生理食塩液又は浣腸洗浄から回収された溶液等)、種若しくは花等の植物材料若しくは植物成長材料又は微生物のコロニー等の動物、植物又は微生物(微生物の培養を含む)に由来する生物学的材料の任意の試料への言及と理解されたい。本発明の方法によって試験される生物学的試料は直接試験されてもよく、試験前にある形態の処理を必要としてもよい。たとえば生検試料は試験前にホモジナイズする必要がある場合がある。さらに、生物学的試料が液体形態でない限り、試料を流動化させるために緩衝液等の試薬の添加が必要な場合もある。
【0081】
生物学的試料の中に標的DNAが存在する限り、生物学的試料は直接に試験されるか、さもなければ生物学的試料中に存在する全ての又はいくらかの核酸材料は試験に先立って分離されてもよい。標的の核酸分子を試験の前にたとえば生きたウイルスの不活性化又はゲル上の泳動によって前処理することは本発明の範囲内である。生物学的試料は新たに収穫してもよく、試験前に保存(たとえば凍結によって)しても、或いは試験前に処理(培養を行なう等)してもよいことも理解されたい。
【0082】
試料をプライマー又はアンチセンスオリゴヌクレオチドと「接触させる」への言及は、相互作用(たとえばハイブリダイゼーション)が起こり得るようにプライマーと試料との混合を促進することへの言及と理解されたい。この目的を達成するための方法は、当業者には公知であろう。
【0083】
どのような型の試料が本明細書に開示された方法による試験に最も適しているかの選択は、モニターされる条件の性質等の状況の性質によることになる。たとえば、好ましい実施形態においては新生物の状態が分析の対象である。新生物の状態が白血病の場合は、血液試料、リンパ液試料又は骨髄吸引物が適切な試験試料を提供する可能性が大きいであろう。新生物の状態がリンパ腫の場合は、リンパ節生検又は血液若しくは骨髄試料が試験のための組織の適切な源を提供する可能性が大きいであろう。新生物細胞の最初の源をモニターするのか、又は発生点からの新生物の転移若しくは他の形態の拡散の存在をモニターすべきかについての考慮も必要であろう。この点に関し、任意の1体の哺乳類からいくつかの異なった試料を収穫して試験することが望ましいであろう。任意の所与の検出シナリオから適当な試料を選択することは当業者の技能の範囲内であろう。
【0084】
本明細書において用いられる限り、用語「哺乳類」には、ヒト、霊長類、家畜(たとえばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ロバ)、実験動物(たとえばマウス、ラット、ウサギ、モルモット)、ペット(たとえばイヌ、ネコ)及び捕獲された野生動物(たとえばカンガルー、シカ、キツネ)が含まれる。好ましくは、哺乳類はヒト又は実験動物である。さらにより好ましくは哺乳類はヒトである。
【0085】
本発明の方法はアニーリング温度を変化させることによって特徴付けられる2相増幅として実施するように設計されているが、核酸の関心領域を増幅する効率的な方法の提供等、当業者が任意の追加的なステップを組み込むかどうかに関して限定するものと考えるべきではない。本方法はこれだけに限らないが、特定の遺伝子配列によって特徴付けられる疾患状態の診断及び/又はモニタリング、遺伝子の関心領域の特徴付け又は分析及び細菌、ウイルス又は他の実際の若しくは潜在的病原性生物の検出及び定量の全て、法医学的又は保存DNA試料の研究又はPCRにおける非特異性が問題となる任意の試料の研究等の範囲の応用に有用である。
【実施例】
【0086】
以下の非制限的例を参照して、本発明をさらに説明する。
【0087】
実施例1
2相ネステッド単一管PCRの設計のための共通基準
【0088】
基礎的サイクリング条件
【表1】


アウタープライマー:100ng
インナープライマー:200ng
アンチセンスオリゴヌクレオチド:アウタープライマーと同じモル数
【0089】
第1相のアニーリング温度72℃は、この相の間にアンチセンスオリゴヌクレオチドもインナープライマーもいかなる程度にもハイブリダイズしないことを保証するように選択される。第2相のアニーリング温度58℃は、Taqmanプローブのアニーリング及び加水分解並びにインナープライマーのアニーリングを可能にするように選択される。第1相には一般に15サイクルが用いられてきたが、実験の結果、50℃のTmを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドは72℃で少なくとも35サイクルでは測定できる阻害を起こさないので、30サイクルまでは用いることができることが示された。
【0090】
標的Tm値
Promega塩基スタッキングモデル、2.5mMマグネシウム、2X dNTP、1:1オリゴ比を用い、アウタープライマー及びインナープライマーの100ng/PCRを仮定する。
アウタープライマー:≧72℃
インナープライマー:60〜61℃
アンチセンスオリゴヌクレオチド:50℃
Tmはコアベース配列を用い、いかなる5’又は3’修飾をも無視して計算する。記述した系はかなり頑健であり、±2℃のTm及びアンチセンスオリゴヌクレオチドとインナープライマーのモル比の2倍の変化に耐えることになる。
【0091】
対照実験
アウタープライマー:72℃でこれらのプライマーが効率的に増幅することを保証するためにアニーリング温度の勾配を実施すべきである。これが確立されれば、アニーリング温度を72℃に保った場合にはアンチセンスオリゴヌクレオチドもインナープライマーもアウタープライマーによる増幅を阻害しないことを保証するために実験をすべきである。
インナープライマー:62℃まではこれらのプライマーが効率的に増幅すること及びこの温度を超えると増幅が効率的に低下することを保証するためにアニーリング温度の勾配を実施すべきである。これが確立されれば、インナープライマーは第1相の間にはいかなる増幅も起こさないことを保証するために実験をすべきである。
アンチセンスオリゴヌクレオチド:第2相の間のこれらのオリゴヌクレオチドの阻害効果を示すために実験を実施すべきである。本発明者らが用いた近似的基準は、完全な2相系でPCRにおけるDNAの量がほぼ23のCt値をもたらす場合には、反応からのインナープライマーの除外が少なくとも5単位のCtの増加をもたらすことになるということである。
【0092】
本明細書に述べた発明が、具体的に記述したもの以外に変形及び改変ができることを当業者は認識するであろう。本発明はそのような全ての変形及び改変を含むことを理解されたい。本発明はまた、個別に又は集合的に本明細書に引用された又は示された全てのステップ、特徴、組成物及び化合物並びに任意の2つ以上の前記ステップ又は特徴の任意の及び全ての組み合わせを含む。
【0093】
参考文献
Cheng et al., 1994, Effectiveamplification of long targets from cloned inserts and human genomic DNA. ProcNatl Acad Sci. 91:5695-5699
Ching J et al, 2006, Closed-system multi-stage nucleic acid amplification reactions UnitedStates Patent Application 20060177844
Du Breuil Lastrucci, et al 2007 Nested PCR employing degradable primers United States Patent 7,273,730
Erlich HA, et al 1994 Methods fornucleic acid amplification United States Patent 5,314,809
Grosz R et al 1994 Method foramplification of targeted segments of nucleic acid using nested polymerasechain reaction United States Patent 5,340,728
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Sambrook and Russel, 2001, MolecularCloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed. Cold Spring Harbor, N.W.: Cold Spring Harbor Laboratory Press. Chapter 8: In vitro Amplification ofDNA by the Polymerase Chain Reaction.
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Yourno J, 1996 Methodand apparatus for nested polymerase chain reaction (PCR) with single closedreaction tubes United States Patent 5,556,773

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸の関心領域を増幅する方法であって、
(i)核酸試料を
(a)前記関心領域を指向する第1のフォワードプライマー及び前記関心領域を指向する第1のリバースプライマー、及び
(b)前記関心領域を指向する第2のフォワードプライマーであって、前記第1のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のフォワードプライマーのTより低いTを有する第2のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第2のリバースプライマーであって、前記第1のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のリバースプライマーのTより低いTを有する第2のリバースプライマー、及び
(c)前記第1のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記第1のプライマーより低いTを有するアンチセンスオリゴヌクレオチド
と接触させるステップであって、
ステップ(ii)の増幅の前、その間、又はその後であるがステップ(iii)の増幅の前の反応にパート(b)及び(c)の分子を加えることができるステップ、
(ii)前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(i)の核酸試料を増幅するステップ、及び
(iii)前記第2のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能なアニーリング温度でステップ(ii)の核酸試料を増幅するステップ
を含む方法。
【請求項2】
(i)DNA試料を
(a)前記関心領域を指向する第1のフォワードプライマー及び前記関心領域を指向する第1のリバースプライマー、及び
(b)前記関心領域を指向する第2のフォワードプライマーであって、前記第1のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のフォワードプライマーのTより低いTを有する第2のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第2のリバースプライマーであって、前記第1のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置する核酸配列を指向し、かつ前記第1のリバースプライマーのTより低いTを有する第2のリバースプライマー、及び
(c)前記関心領域を指向する第3のフォワードプライマーであって、前記第2のフォワードプライマーが指向する配列の3’に位置するDNA配列を指向し、かつ前記第2のフォワードプライマーのTより低いTを有する第3のフォワードプライマー、及び
前記関心領域を指向する第3のリバースプライマーであって、前記第2のリバースプライマーが指向する配列の5’に位置するDNA配列を指向し、かつ前記第2のリバースプライマーのT値より低いT値を有する第3のリバースプライマー、及び
(d)前記第1のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、前記第1のプライマーより低いTを有するアンチセンスオリゴヌクレオチド及び前記第2のプライマーを指向する1つ又は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドであって、その各々が前記第2のプライマーより低いTを有するアンチセンスオリゴヌクレオチド
と接触させるステップであって、
ステップ(ii)の増幅の前、その間、又はその後であるがステップ(iii)の増幅の前の反応にパート(b)、(c)及び(d)の分子を加えることができるステップ、
(ii)前記第1のプライマーのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第2のプライマー及び第3のプライマーと前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(i)のDNA試料を増幅するステップ、及び
(iii)前記第2のプライマーと前記第1のプライマーを指向する前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能であるが前記第3のプライマーと前記第2のプライマーを指向する前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは可能でないアニーリング温度でステップ(ii)のDNA試料を増幅するステップ、
(iv)前記第3のプライマーと前記第2のプライマーを指向する前記アンチセンスオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションが可能なアニーリング温度でステップ(iii)のDNA試料を増幅するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記核酸がDNAである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つがプライマーの3’末端とハイブリダイズし、かつ5’核酸タグ配列を含み、前記タグの相補的ヌクレオチド配列が前記プライマーのハイブリダイゼーション部位の5’末端に隣接するDNA領域のヌクレオチド配列に関してミスマッチである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの1つ又は複数が正常な伸長ができない3’末端を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが、
プライマーの3’末端とハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチド上の5’核酸タグ配列であって、該タグの相補的ヌクレオチド配列が前記プライマーのハイブリダイゼーション部位の5’末端に隣接するDNA領域のヌクレオチド配列に関してミスマッチである、5’核酸タグ配列、及び
正常な伸長ができない3’末端
を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドタグが1〜10塩基の長さである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチドタグが2、3、4又は5塩基の長さである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記オリゴヌクレオチドタグが2又は3塩基の長さである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のプライマーが10〜50ヌクレオチドの長さであり、前記第2のプライマーが8〜40ヌクレオチドの長さである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のプライマーが15〜45ヌクレオチドの長さであり、前記第2のプライマーが12〜30ヌクレオチドの長さである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のプライマーが、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40ヌクレオチドの長さである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のプライマーが、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30ヌクレオチドの長さである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のプライマーが、26、27、28、29、30、31、32、33又は34ヌクレオチドの長さであり、前記第2のプライマーが、15、16、17、18、19、20、21又は22ヌクレオチドの長さである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のプライマーが前記第1のプライマーのTより5℃〜20℃低いTを示し、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが前記第2のプライマーのTより5℃〜20℃低いTを示す、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第3のプライマーが前記第2のプライマーのTより5〜20℃低いTを示す、請求項2〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のプライマーが前記第1のプライマーのTより7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃又は15℃低いTを示し、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが前記第1のプライマーのTより10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、15℃、16℃、17℃、18℃、19℃、20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃又は30℃低いTを示す、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のプライマーが65℃〜75℃のTを示し、前記第2のプライマーが55℃〜65℃のTを示し、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが45℃〜55℃のTを示す、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のプライマーが69〜75℃のTを示し、前記第2のプライマーが59℃〜63℃のTを示し、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドが49℃〜52℃のTを示す、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のプライマーのTが70℃〜72℃であり、前記第2のプライマーのTが58℃〜62℃であり、前記第3のプライマーのTが42℃〜50℃であり、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドのTが30℃〜45℃である、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公表番号】特表2012−528574(P2012−528574A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513410(P2012−513410)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000680
【国際公開番号】WO2010/139010
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(509330264)モノクアント・ピーティーワイ・リミテッド (4)
【出願人】(500461170)フリンダーズ ユニバーシティ (1)
【氏名又は名称原語表記】Flinders University
【Fターム(参考)】