核酸検出カセット及びカセット注入システム
【課題】 核酸を含む試料の投入から核酸増幅及び目標核酸の検出までを一貫して自動的に処理する使い捨て可能な閉鎖型検出カセットを提供する。
【解決手段】 試料に含まれる核酸を検出する核酸検出カセットは、核酸検出カセットの外部と連通可能な出入路及びその容積が可変で、試薬を保持可能で、且つ、出入路に連通可能な保持流路を備えている。固定部材及び可撓性部材の密着面が互いに密着され、保持流路を囲む密着領域で保持流路が定められ、保持流路を定める密着領域の一部が剥離可能として出入路に定められている。出入路を定める密着領域の一部が剥離可能に維持されて開状態とされ、出入路を定める密着領域の一部が互いに密着されたままに維持されて閉状態とされて出入路が開閉される。
【解決手段】 試料に含まれる核酸を検出する核酸検出カセットは、核酸検出カセットの外部と連通可能な出入路及びその容積が可変で、試薬を保持可能で、且つ、出入路に連通可能な保持流路を備えている。固定部材及び可撓性部材の密着面が互いに密着され、保持流路を囲む密着領域で保持流路が定められ、保持流路を定める密着領域の一部が剥離可能として出入路に定められている。出入路を定める密着領域の一部が剥離可能に維持されて開状態とされ、出入路を定める密着領域の一部が互いに密着されたままに維持されて閉状態とされて出入路が開閉される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、核酸検出カセット及びカセット注入システムに係り、特に、核酸を含む試料の投入から、核酸増幅及びその他の必要な処理と目標核酸の検出までを一貫して自動的に処理する、使い捨て可能な閉鎖型検出カセット及びそのカセットとともに使用される注入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
核酸増幅技術の登場と核酸検出技術の向上により、特定DNAストランドの検出のための各種薬品が提案され、また、個別の核酸増幅装置及び核酸検出装置が提案されている。しかしながら、核酸増幅においては、増幅した核酸による汚染の可能性があるため、また、ヒートサイクル印加、注液、混合等の複雑な操作が必要なため、これらの薬品や増幅装置及び検出装置の使用は試験研究用に限られている。
【0003】
従来、こうした問題点を解決し、病院、臨床試験所、検疫所等で核酸検出を実施できるようにするため、核酸を含む試料の処理から目標核酸の検出までを一貫して自動的に処理する、使い捨て可能な閉鎖型検出容器およびそれを用いた検出装置が開示されている。
【0004】
例えば、特許2536945号公報(特許文献1)には必要なすべての試薬を収納する核酸の増幅および検出用のキュベット(cuvette)が、特開平8-62225号公報(特許文献2)には遠心力を利用して送液する試験ユニットが、特表平9-511407号公報(特許文献3)には微細加工技術を使用して固体基板に形成された微細流路および反応室が開示されている。
【0005】
また、本願発明者の提案に係る先願に係る関連出願として特願2003-400878(未公開特許文献4)がある。この関連出願には、固定部材と可撓性部材との組合せにより流路が構成された核酸検出カセットが開示されている。この核酸検出カセットによれば、容積が可変で試薬を保持可能で且つ核酸検出カセット外部と連通可能な開状態と閉鎖可能な閉状態を選択可能な出入路を有する保持流路と、この保持流路に接続され保持流路と連通可能な開状態と閉鎖可能な閉状態を選択可能な連結流路と、出入路を閉状態で維持可能な出入路開閉手段と、連結流路を閉状態で維持可能な連結流路開閉手段とからなる核酸検出カセットが開示されている。
【0006】
この核酸検出カセットは、核酸を含む試料の処理から目標核酸の検出までに必要な、カセット内での充填物の移送、混合、加熱、冷却、電圧印加、電流測定等を組み合わせた一連の工程を、すべての閉鎖されたカセット内で一貫して自動的に処理でき、かつ各工程に必要な操作はカセット外部から行ない、カセット内に動力発生手段、熱源、電圧発生手段等の操作用のエネルギー発生手段を持つ必要がなく、使い捨てに好適である。
【特許文献1】特許2536945号公報
【特許文献2】特開平8-62225号公報
【特許文献3】特表平9-511407号公報
【特許文献4】特願2003-400878
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(多様な検体への対応に伴う問題点)
液体である血液、固体或いは粘弾性体である毛根、皮膚、口腔粘膜、植物種子や葉等の各種の生体資料を核酸検出の対象検体として使用することが、核酸検出の適用範囲の広がりと共に、簡易でかつ持ち運び可能な自動核酸検出装置に求められている。また、これらの生体資料が付着している、若しくは付着している可能性のある試験片を、直接使い捨て可能な閉鎖型検核酸検出カセットにて使用するような用途上の要求もきわめて高くなっている。例えば、医療診断や食品検査だけでなく、犯罪捜査等の様々な現場で、血液や口腔粘膜、毛根等をセットするだけで後は自動的に遺伝子型判定までを行なえるような自動核酸検出装置が期待されている。
【0008】
ところが、先願に係る特願2003-400878(未公開特許文献4)で提案された核酸検出カセットでは、検核増幅・検出のための各種反応・操作を処理する保持流路に対して、カセットの出入路部分から検体を注入・挿入する必要があるが、この際に、出入路部分から保持流路に至る経路が、細くかつ直角に曲がっているため、毛根のような固体の検体を保持流路の内部に挿入することが困難である。
【0009】
出入路部分から保持流路に至る経路が直角に曲がっているのは、出入路を構成する外部との連通孔を平板状の固定部材に形成しようとすると、保持流路の深さが0.5mm程度と浅いため保持流路の側壁部に連通孔を形成することが困難で、平板状の固定部材の厚み方向に連通孔を形成するしかなく、このため、平板状の固定部材の平面部分に形成されている保持流路に対して、出入路部分からの経路は直角に曲がらざるを得ない。
【0010】
保持流路の底面に出入路となる連通孔を形成すると、出入路部分から保持流路に至る経路を直線にすることが可能になるが、保持流路の外壁の厚みが増し検核増幅・検出のための各種反応・操作に必要な加熱・冷却の際に熱伝達が悪化する。また、保持流路内の充填物を移送、撹拌する際に、保持流路内を加圧・減圧するので、保持流路の底面に連通孔があると、充填物の漏洩が発生しやすくなる。
【0011】
このように、従来の核酸検出カセットの構造では、固体の検体若しくは検体が付着した試験片等を挿入すること困難であり、多様な検体に対応することができない問題がある。
【0012】
(カセットの小型化に伴う問題点)
核酸増幅から検査までの一連の工程を一貫して実施可能な流路構造において、液体内に気泡が取り込まれると以下のような悪影響が発生する。
【0013】
核酸増幅及びその他の加熱処理において、気泡内に水分が蒸発することにより試薬濃度の変動をもたらし、反応の阻害要因となる。
【0014】
気泡、気体部分があると気体の熱膨張率が大きいので、加熱時に容器内圧力の上昇につながり、液漏れ、しいては核酸検出カセット外部の汚染の原因となる。
【0015】
気泡、気体部分があるとその部分は熱伝導率が小さいので熱伝達を阻害する。
【0016】
加圧・吸引による送液時に、気泡があると気泡の体積が変化するので送液制御困難となる。
【0017】
このような問題点に対応するため、特願2003-400878(未公開特許文献4)で開示されているような核酸検出カセットでは、周知のゴム等の可撓性部材からなる自己封止型ポートを出入路に装着する例が示されている。
【0018】
液体の注入に際しては、注入用ピペットを自己封止型ポートの閉鎖している孔部に差込むと、注入用ピペットと自己封止型ポートの可撓性部材とが常に密着しているため、注入時の気泡の巻き込みが防止できる。また注入終了時における注入用ピペットの引抜きの際には、注入用ピペットが完全に自己封止型ポートの外に出る前に、自己封止型ポートの可撓性部材内部に形成された孔部が自己閉鎖し、液漏れが防止できる。このため核酸検出カセットでは、実用的には他の出入路開閉手段と併用されて用いられている。
【0019】
ところが、注入用ピペットにおいて、自己封止型ポートの閉鎖している孔部に直接差込む部分として、可撓性であるプラスチック製の使い捨てのピペット先端チップを使用する場合には、EPDM、シリコンゴム等の可撓性部材から成る自己封止型ポートはある程度の大きさが必要になってくる。例えば外径0.5〜1mm程度のピペット先端チップを使用する場合には、縦2〜4×横3〜6×高さ3〜6mm程度の小判型の自己封止型ポートが使用される。
【0020】
これは、ピペット先端チップに対してあまりに小さい自己封止型ポートでは、注入時のピペット先端チップを自己封止型ポートに差込み、自己封止型ポートの可撓性部材を拡張しようとしても、ピペット先端チップも可撓性であるため、ピペット先端チップが曲がってしまい、自己封止型ポートを貫通するとこができなくなってしまうからである。
【0021】
逆に、自己封止型ポートに対してあまりに大きいピペット先端チップを用いて、ピペット先端チップを自己封止型ポートに差込み、自己封止型ポートの可撓性部材の閉鎖している孔部を無理やり拡張しようとすると、ピペット先端チップは自己封止型ポートを貫通するとこができても、ピペット先端チップの引抜きの際に、自己封止型ポートの可撓性部材の孔部を自己閉鎖することができず、液漏れが発生してしまう。
【0022】
したがって、保持流路903の大きさが縦10×横10×深さ0.5mm程度になると、前述のような自己封止型ポートでは保持流路の大きさと同程度かそれを上回り、核酸検出カセットの小型化を阻害する要因となっている。
【0023】
また、核酸増幅においては数百万ものDNAコピーを合成できるが、逆にその高い増幅能力故に、前に増幅した生成物、或いは外から入ってくる物質によるコンタミネーションの問題がある。即ち、極微量のコンタミネーションであっても多量に増幅してしまう恐れがある。従って、核酸検出カセットは、使い捨て可能な閉鎖型であることが求められている。同様のコンタミネーション対策として、試薬、検体を核酸検出カセット内に注入するために使用する器具も使い捨てであるこが求められ、現状では、安価なプラスチック製の使い捨てのピペット先端チップを使用することが一般的である。
【0024】
したがって、金属製ニードルは、プラスチック製の使い捨てのピペット先端チップより剛性があるので、外径を細くでき、比較的小さな自己封止型ポートでも貫通することができるが、高価なためその使用が敬遠されている。
【0025】
加えるに、検体として血液を使用する場合には、血液のついた金属製ニードルを作業者の人体に刺してしまう事故が発生する恐れがあり、これにより感染症を引き起こす危険性がある。このため、金属製ニードルの使用はさらに忌避されている。
【0026】
以上のような理由で、核酸検出カセットの小型化には自己封止型ポートが隘路になっているが、従来の技術では、自己封止型ポートに代わるような、核酸検出カセットに対して安定して液体注入ができる手段は開示されていない。
【0027】
さらに、自己封止型ポートは、ピペットのような細管で可撓性部材の予め閉鎖している孔部を強制的に広げながら、その細管自身を自己封止型ポートに貫通させる必要があるため、固体の検体や検体が付着した試験片を保持流路の内部にそのまま挿入することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、上記問題点を解決するためになされてものであり、その目的は、核酸を含む試料の投入から、核酸増幅及びその他の必要な処理と目標核酸の検出までを一貫して自動的に処理する、使い捨て可能な閉鎖型検出カセット及びそのカセットとともに使用される注入システムを提供することにある。
【0029】
この発明によれば、
試料に含まれる核酸を検出するために固定部材と可撓性部材との組合せにより流路が構成された核酸検出カセットであって、
前記流路は、前記核酸検出カセットの外部と連通可能な開状態及び前記核酸検出カセットの外部に対して閉鎖可能な閉状態を選択可能な出入路を有し、その容積が可変で、試薬を保持可能で、且つ、前記出入路に連通可能な保持流路を備え、
前記固定部材及び前記可撓性部材の密着面が互いに密着され、前記保持流路を囲む密着領域で前記保持流路を定め、前記保持流路を定める密着領域の一部を剥離可能として前記出入路に定め、
前記出入路を定める密着領域の一部を剥離可能に維持して開状態とし、前記出入路を定める密着領域の一部を互いに密着させたままに維持して閉状態として前記出入路を開閉する出入路開閉手段を備えることを特徴とする核酸検出カセットが提供される。
【0030】
また、この発明によれば、
試料に含まれる核酸を検出するために固定部材と可撓性部材との組合せにより流路が構成された核酸検出カセットであって、前記流路は、前記核酸検出カセットの外部と連通可能な開状態及び前記核酸検出カセットの外部に対して閉鎖可能な閉状態を選択可能な出入路を有し、その容積が可変で、且つ、試薬を保持可能な前記出入路に連通可能な保持流路を備え、前記固定部材及び前記可撓性部材の密着面が互いに密着され、前記保持流路を囲む密着領域で前記保持流路を定め、前記保持流路を定める密着領域の一部に互いに連接する第1及び第2の領域部を定め、この第1及び第2の領域部において、前記固定部材及び前記可撓性部材の密着を剥離可能として前記出入路に定める核酸検出カセットを具備し、
前記カセットの前記出入路の開口から前記第1の領域部の前記出入路に細管を差込み、前記第2領域部下の前記出入路を介して試料を前記保持流路内に注入する核酸検出カセット試料注入システムにおいて、
前記第1領域部を剥離可能に維持して開状態とし、前記第1領域部を互いに密着させたままに維持して閉状態として前記出入路を開閉するとともに、前記開状態での細管による試料の注入時に、前記第1領域部に相当する前記可撓性部材を前記固定部材に押付けて前記細管周囲に前記可撓性部材を密着させる細管密着用押圧手段と、
前記第2領域部を剥離可能に維持して開状態とし、前記第2領域部に相当する前記可撓性部材を前記固定部材に押付けて前記第2領域部を互いに密着させたままに維持して閉状態とする前記出入路を開閉するとともに、細管による試料の注入時に前記開状態となる出入路閉鎖用押圧手段と、
を備えることを特徴とする核酸検出カセット試料注入システムが提供される。
【0031】
更に、この発明によれば、上述した核酸検出カセット試料注入システムに使用される細管であって、この細管は、その外形が扁平な部分を有し、前記細管により試料を前記保持流路内に注入する際には、その扁平な部分がカセットの出入路に差込まれることにより、前記細管密着用押圧手段により前記細管の扁平な部分の周囲に前記可撓性部材を密着させることを特徴とする核酸検出カセット試料注入システムに使用される細管が提供される。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、核酸増幅及びその他の必要な処理と目標核酸の検出までを一貫して自動的に処理することができる核酸検出カセット及びその核酸検出カセット注入システムにおいて、液体のみならず固体や粘弾性体を核酸検出カセット内に注入でき、かつ核酸検出カセットを小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、この発明の一実施の形態に係る核酸検出カセット及びカセット注入システムを説明する。
【0034】
(第1実施形態)
(カセット全体)
〈基本構造〉
この発明の実施形態に係る核酸検出カセット及びカセット注入システムは、試薬や検体等を核酸検出カセットヘ注入若しくは排出する出入路部分、及び注入・排出工程以外は、基本的には、先願に係る特願2003-400878に開示される核酸検出カセットと同様の構成と操作方法が用いられる。
【0035】
図1は、本発明の第1実施形態に係る核酸検出カセット100を示す概観斜視図である。図2は、図1に示す核酸検出カセット100の各構成を分離して示した斜視図である。この核酸検出カセット100は、大別して固定基板1と、可撓性シート2と、カバープレート3からなる流路閉鎖型のカセットである。固定基板1は、固定部材により構成され、連続している流路を形成する。可撓性シート2は、固定基板1により形成された流路の上面を覆うもので、可撓性部材により構成されている。カバープレート3は、固定基板1との間に可撓性シート2を挟んで支持するとともに、可撓性シート2を局部的に押圧し変形させる押圧モジュール4を備えている。
【0036】
固定基板1は、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、POM、PMMA等の高分子材料、シリコン、ガラスやセラミックス等、或いはステンレス、アルミ等の金属により構成される。可撓性シート2は、シリコンゴム、ポリプロピレンゴム、ウレタンゴム等の高分子エラストマー等により構成される。カバープレート3は、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、POM、PMMA等の高分子材料或いは、シリコン、ステンレス、アルミ等の金属等により構成される。固定基板1、可撓性シート2及びカバープレート3が複数の部品から構成される場合には、それぞれ別の材料を選択しても良い。押圧モジュール4は、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、POM、PMMA等の高分子材料、シリコン、ガラスやセラミックス等、或いはステンレス、アルミ等の金属により構成される。
【0037】
〈ブロック構成〉
また、核酸検出カセット100は、その機能によりブロック化されている。図2に示す構造例は、上流側、即ち、図3の左側から順に、端部ブロック102と、2つの中間部ブロック101と、検出部ブロック106と、中間部ブロック101と、端部ブロック103から構成されている。検出部ブロック106は、特に核酸検出用のブロックであり、それ以外の端部ブロック102、103及び中間部ブロック101は、核酸検出以外の各種反応用のブロックである。これら各ブロックは、その表面に設けられた流路が連結されるように互いに一体的に接合されている。各ブロックは、連接されて結合されるように図示しない締結部材や締結部により連結されても良く、或いは、各ブロックを統合して一体的に形成されても良い。
【0038】
実用的には、固定基板1及び可撓性シート2並びにカバープレート3は、高分子材料を用いて夫々一体的に成形される。また、カバープレート3が金属材料よりなる場合には、1枚の板状部材から加工することも可能である。
【0039】
〈接合〉
固定基板1の上面には、溝が設けられている。この溝を覆うように可撓性シート2が配置され、溝以外の固定基板1の上面に可撓性シート2の下面が密着され、接着若しくは溶着されることにより、溝が閉鎖され、流路として機能する。即ち、溝の底面及び側面は、固定基板1により構成され、溝の上部は、可撓性シート2で覆われて流路に形成されている。端部ブロック102、103、中間部ブロック101上に設けられた溝は、保持流路111として機能し、検出部ブロック106上に設けられた溝は、退避流路131として機能する。
【0040】
保持流路111には、核酸増幅及び検出に使用される試薬或いは検体が保持される。退避流路131は、検出流路521内の気体や液体の一時的な退避場所として使用される。
【0041】
各保持流路111及び退避流路131の間は、互いに連結流路117により連結される。可撓性シート2の上面には、カバープレート3の下面が密着、接着若しくは溶着される。これにより、カバープレート3の上面に設けられた押圧モジュール4の押圧により、対応する押圧部分の可撓性シート2を撓ませ流路を閉じることができる。
【0042】
押圧モジュール4は、カバープレート3にねじ、ピン等の締結部品で締結されるか、はめ込み式に組立てられるか、若しくは接着、溶着が施される。押圧モジュール4とカバープレート3とが共に高分子材料で形成される場合には、押圧モジュール4とカバープレート3は一体的に成形することができる。
【0043】
〈流路主要寸法〉
上記図2及び図3に示される各構成の寸法例は、以下の通りである。
【0044】
保持流路111及び退避流路131の寸法は、深さ約0.5mm、隣接流路に向かう方向の長さ、即ち、流路開始端部と流路終了端部との間の長さ約10mm、隣接流路に向かう方向とは垂直な方向の長さ、即ち、流路幅約10mmで、標準保持容積が約48μlである。押圧ブロック4が外側に開く場合には、可撓性シート2は、外側に膨張することができ、例えば、標準保持容積の約2〜3倍の保持容積を維持することができる。尚、退避流路131の容積は、核酸検出動作開始前は、縮小された状態で維持され、検出動作開始時には、拡大可能であり、その拡大時と縮小時の流路容積の差は、検出流路内の充填物の体積以上に設定される。
【0045】
連結流路117の寸法は、深さ約0.25mm、隣接流路に向かう方向の長さ約2〜6mm、保持流路に向かう方向とは垂直な方向の長さ、即ち、流路幅約2mmで、流路容積がほぼゼロの全閉状態が設定可能である。
【0046】
また、可撓性シート2が撓む際に無理な内部応力等が発生せずに、かつ流路底面に対して確実に密着して流路容積がほぼゼロになるように設定され、流路断面の底面から側面にかけていずれも滑らかな曲線で構成されている。
【0047】
可撓性シート2の厚さは、0.2〜0.5mmで、ゴム硬度JIS−A20°〜30°の比較的硬度の高いものと、アスカーC20°〜40°硬度の低い柔らかいもののいずれも使用可能である。
【0048】
(検出部)
〈ブロック構成〉
検出部ブロック106の下面には、検出用の流路が設けられた検出流路シール520を挟んで核酸検出チップ500が固定化される。検出部ブロック106、検出流路シール520、核酸検出チップ500で挟まれた空間に検出流路521が形成される。また、検出部ブロック106には、その表面から裏面まで貫通して形成された2つの接点部開口151が設けられている。この接点部開口151に電気コネクタを挿入して露出した核酸検出チップ500の接点部表面に接触させることにより、チップ表面から電気信号を取り出すことができる。
【0049】
〈核酸検出方法〉
目標核酸の検出方法は、検出流路内部に固定化された、検出すべき目標核酸に対して相補的な塩基配列を有する一本鎖の核酸プローブを使用するものなら、周知の光学的方式、電気化学的方式等が使用できる。
【0050】
本実施形態では、基本的には登録第2573443号公報に開示される電気化学的な検出方法を適用している。光学的方式を使用する場合は、光透過性の材料を用いて核酸検出カセット100を作製することで対応できる。
【0051】
〈核酸検出チップ〉
検出センサーである核酸検出チップ500は、固定部材からなる基板が用いられる。より具体的には、特開2002−195997号公報に開示されるような核酸検出センサーを使用している。検出方法、使用材料、電極構造等は同じであるが、検出基板の構造だけが同公報の従来例として示される構造を採用している。
【0052】
核酸検出チップ500の構造は、ガラス基板上に特開2002−195997号公報に開示されるように、核酸固定化電極、対抗電極及び参照電極が形成されている。更に、ガラス基板上には、これらの電極と検査装置とで電気信号を入出力するための接点として、それぞれ核酸固定化電極用接点、対抗電極用接点、参照電極用接点が形成されている。
【0053】
また、核酸固定化電極上には、特開2002−195997号公報に開示される方法で、検出すべき目標核酸に対して相補的な塩基配列を有する一本鎖の核酸プローブが固定化されている。
【0054】
(出入路:機能分離型押圧プレート)
〈構成〉
図3は、本発明の閉鎖型カセット100の中間部ブロック101の各構成を分離して示した斜視図である。図1を参照して、試薬及び検体注入用の出入路部の構造について説明する。但し、中間部ブロック101に対応する部分の押圧モジュール4は、図3では省略していることに注意されたい。また、以下に説明するように、出入路部は、端部ブロック102及び端部ブロック103を利用して構成され、以下の全ての変形例並びに実施例についても同様に端部ブロック102及び端部ブロック103の一部として形成される。また、図3においては、可撓性シート2は、全体を示さず、中間ブロック101に対応する説明に必要とされる部分のみを図示し、同様にカバープレート3は、全体を示さず、中間ブロック101対応する説明に必要とされる部分のみを図示していることに注意されたい。
【0055】
図3に示されるように、固定部材である流路基板1には、保持流路111及び連結流路117に加えて、試薬及び検体注入用細管601用の差込ガイド121が形成されている。
【0056】
カバープレート3には、保持流路開口311、出入口開口312、連結流路開口317が形成されている。保持流路開口311、出入口開口312は、導入路開口313によってつながっていて1つの開口部分を形成している。
【0057】
カバープレート3は、上記の各開口部と連結流路に対向する部分以外は、図示していない締結手段によって、流路基板1に密着されていて、保持流路、連結流路からは液体、気体、固体、粘弾性体等の流路充填物が閉鎖型カセット100外部に漏れ出すことはない。
【0058】
中間部プレート301の上面には、図2及び図3に示されるように、中間ブロック101に対応する押圧モジュール4が取り付けられる。
【0059】
〈押圧プレート〉
出入路押圧手段は、出入路開閉手段を兼ね、出入路閉鎖用押圧手段である閉鎖プレート321と、細管密着用押圧手段である2つの部分に2分割されている密着プレート322からなり、機能別に別体のプレートで構成されている。閉鎖プレート321と密着プレート322は、カバープレート3と別体ではあるが、可撓性シート2に接する面は同じ平面上に配置される。
【0060】
閉鎖プレート321と密着プレート322は、ポリアセタール、ナイロン、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、POM、PMMA等の高分子材料、シリコン、ガラスやセラミックス等、或いはステンレス、アルミ等の金属により構成される。
【0061】
閉鎖プレート321と密着プレート322は、カバープレート3或いは流路基板1にねじ、ピン等の締結部品で移動可能に締結されるか、はめ込み式に組立てられる。
【0062】
閉鎖プレート321と密着プレート322と、カバープレート3とがプラスチック材料で形成される場合には、閉鎖プレート321と密着プレート322と、カバープレート3は、一体的に成形することができる。
【0063】
図3に示される構造においては、押圧ねじ(締結ねじ)331、332によって、閉鎖プレート321及び密着プレート322が流路基板1に対して移動可能に取り付けられている。この押圧ねじ331、332を締めることによって、閉鎖プレート321及び密着プレート322は、個別にそれぞれの下部にある可撓性シート2の領域部分を流路基板1に所定量押付けることができる。この押圧ねじ331、332を緩めることによって、それぞれの下部にある可撓性シート2の領域部分を流路基板1に押付けていた閉鎖プレート321及び密着プレート322の押付けを一定量だけ解放させることができる。押圧ねじ331、332を締結するためには、例えば、押圧ねじ331、332に対応する部分の可撓性シート2には、孔が形成され、流路基板1には、押圧ねじ331、332に螺合される雌ねじ部が形成されている。これらの孔及び雌ねじ部は、図3には図示していないことに注意されたい。
【0064】
〈注入用細管〉
注入用細管601としては、周知の可撓性であるプラスチック製の使い捨てのピペット先端チップが使用される。例えば、厚さ0.5〜1mm程度のシリコンゴム製の可撓性シート2に対しては、外径が0.5〜1mm程度の注入用細管601が使用できる。図1には、注入用細管601としてピペット先端チップのみが図示されていて、ピペット本体は、省略されている。
【0065】
また、この注入用細管601は、固定基板1と可撓性シート2との間に差し込むことができる直線針状の差し込み部601A及びこの差し込み部601Aよりも径が大きい基部601Bから構成される。この注入用細管601においては、差し込み部601Aと基部601Bとの間に段部(ステップ)が形成されていることから、固定基板1と可撓性シート2との間に差し込まれる際に基部601Bが差込ガイド12の壁面に当接されて差し込み部601Aだけが固定基板1と可撓性シート2との間に挿入される。従って、常に注入用細管601の所定長だけが差し込まれ、不必要に注入用細管601が差し込まれて可撓性シート2を破損するような事態を防止することができる。
【0066】
(液体注入)
〈液体注入工程〉
図3、図4(a-1)〜(c-2)及び図5(d-1)〜(f-2)を参照して、注入用細管601が用いられて検体若しくは試薬等の液体602が保持流路111へ注入される工程を説明する。図4(a-1),(b-1),(c-1)及び図5(d−1),(e-1),(f-1)は、注入用細管601が差し込まれる方向に沿った中間部ブロック101の断面を示している。ここで、注入用細管601は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿って差し込まれることから、これらの図は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿った中間部ブロック101の断面図でもある。また、図4(a-2),(b-2)及び図5(f-2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管601が差し込まれる方向に直交する密着プレート322の略中心付近における中間部ブロック101の断面図を示し、図4(c-2)及び図5(d−2),(e-2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管601が差し込まれる方向に直交する閉鎖プレート321の略中心付近、即ち、導入路開口313における中間部ブロック101の断面図を示している。
【0067】
注入用細管601は、次のような過程を経て差込ガイド121から挿入され、固定基板1と可撓性シート2との間の出入路に差し込まれ、その後、取り出される。
【0068】
始めに、図4(a―1)及び(a―2)に示すように、2つの密着プレート322の押圧ねじ332が所定量だけ緩められ、差込ガイド121に沿って注入用細管601が流路基板1と可撓性シート2の間に差込まれて出入路が形成される。このとき閉鎖プレート321は、可撓性シート2に押付けられているので、注入用細管601は、閉鎖プレート321の手前の位置までしか進入することができない。
【0069】
尚、保持流路111は、可撓性シート2を流路基板1に押付けられた状態が注入待機状態となっている。
【0070】
注入用細管周囲の密閉:
図4(b−1)及び(b−2)に示すように、押圧ねじ(締結ねじ)332が所定量だけ締められて2つの密着プレート322が可撓性シート2と注入用細管601との間隙を塞ぐように押付けられる。この密着プレート322の押し付けにより、注入時及び注入用細管引抜き時の、気体の巻き込み、液体の漏洩を防止することができる。
【0071】
導入路開放:
図4(c―1)及び(c−2)に示すように、閉鎖プレート321の押圧ねじ331が所定量だけ緩められると、注入用細管601の外径部分によって、閉鎖プレート321に押付けられていた可撓性シート2の一部領域が持ち上がり、可撓性シート2が流路基板1から乖離して出入路でもある注入用の導入路314が開放される。ここで、導入路314は、導入路開口313を定めるカバープレート3の両側によって抑えられていることから、導入路314は所定の大きさに規制される。可撓性シート2が例えば厚さ0.5〜1mm、ゴム硬度JIS−A30°の、シリコンゴム製で、注入用細管601が外径0.3〜0.5mmのポリプロピレン製である場合には、導入路314の間隙に相当する可撓性シート2と流路基板1間の間隙の高さは、保持流路111に接触する導入路314終点で略0〜0.1mmとすることができる。
【0072】
注入:
図4(d―1)及び(d−2)に示すように、注入用細管601から導入路314を介して保持流路111に液体602が注入される。このとき可撓性シート2と流路基板1との間の間隙高さは、液体602を注入する直前では、保持流路111に接触する導入路314の終点で間隙を略0に維持される。液体602の注入時には、この液体602の圧力によって導入路314の終点で可撓性シート2が流路基板1から乖離されて導入路314が確保される。ここで、注入開始前に押圧モジュール4が開放され、保持流路111内に進入した液体によって保持流路111に配置される可撓性シート2が流路基板1から乖離できるように可撓性シート2への押圧が部分的に解除される。
【0073】
可撓性シート2と注入用細管601の寸法、材質、硬度等に対して、閉鎖プレート321、密着プレート322、導入路開口313寸法、形状及び、押圧ねじ331、332による押圧力等の諸条件が最適化される。
【0074】
また、注入用細管601の先端部近傍での可撓性シート2と流路基板1間の間隙をできるだけ小さくすることにより、液体注入時に発生する僅かな気泡は、注入用細管601の近傍に捕獲され、保持流路111内に気泡が進入してしまうことを防ぐことができる。
【0075】
導入路閉鎖:
図4(e−1)及び(e−2)に示すように、液体602が所定量入ったところで閉鎖プレート321の押圧ねじ331が所定量締められ、閉鎖プレート321が可撓性シート2の一部領域に押付けられることにより可撓性シート2と流路基板1の間を密着させ導入路314が閉鎖され、保持流路111が密閉される。このとき、導入路314に微量の残留液体604が残留することがあるが、これは注入用細管601にて吸引することが可能である。
【0076】
注入用細管引抜き:
図4(f−1)及び(f−2)に示すように、2つの密着プレート322の押圧ねじ332が所定量だけ緩められ、注入用細管601が流路基板1と可撓性シート2の間から引き抜かれる。このとき、すでに導入路314は、閉鎖され、保持流路111が密閉されていることから、注入用細管601の引抜き動作で、保持流路111に気泡が進入することはない。この後、好ましくは、2つの密着プレート322の押圧ねじ332が所定量だけ締められ、流路基板1と可撓性シート2の密着が確実に確保される。
【0077】
以上のような液体注入工程を使用することにより、液体注入時及び、注入用細管601の引抜き動作時での、保持流路111への気泡が進入を防ぐことができる。
【0078】
〈排出工程〉
保持流路111内にすでに充填されている検体若しくは試薬等の液体、或いは気体を、注入用細管601を用いて閉鎖型カセット100から排出する工程の各ステップについて図4及び図5を参照して説明する。
【0079】
注入用細管挿入:
注入用細管601の挿入は、図4(a―1)及び(a―2)に示される注入工程と同様である。
【0080】
注入用細管周囲密閉:
注入用細管601の周囲の密閉は、図4(b―1)及び(b―2)に示される注入工程と同様である。
【0081】
導入路開放:
導入路314の開放は、図4(c―1)及び(c―2)に示される注入工程と同様である。
【0082】
排出:
図6(a)に示すように注入用細管601を用いて、保持流路111内の液体が吸引される。このとき、保持流路111内に充填されている液体または気体は、押圧モジュール4が可撓性シート2を流路基板1に押付けて保持流路111の容積を減少させることにより、液体または気体が強制的に排出される。
【0083】
導入路閉鎖:
導入路314の閉鎖は、図5(e―1)及び(e―2)に示される注入工程と同様である。
【0084】
注入用細管引抜き:
注入用細管601の引抜きは、図5(e―1)及び(e―2)に示される注入工程と同様である。
【0085】
したがって、排出工程においても、注入用細管601の近傍での可撓性シート2と流路基板1間の間隙は、極めて少なく、流路111内に新たに気体が進入してしまうことを防ぐことができる。
【0086】
排出工程は、以下のような場合にも適用される。
【0087】
注入待機状態のセッティング:
閉鎖型カセット100の組立て時には、保持流路111内の気体に初期的に気体が入ったままにある。従って、排出工程を用い、押圧モジュール4が可撓性シート2を流路基板1に押付けて、保持流路111内の初期気体を全て排出する。全気体排出後、導入路314が閉鎖され、保持流路111が密閉した状態では、押圧モジュール4の押圧を解放しても、可撓性シート2は、大気圧によって流路基板1に押付けられたままになっている。このことを利用して注入待機状態がセッティングされる。
【0088】
生成物採取:
検体からの核酸抽出、増幅、検出等の複数の処理を、一貫して1つの閉鎖型カセット100にて自動的に処理する場合に、各処理での生成物を検査し、各処理が適正に行なわれたかどうかを判別する場合がある。例えば、核酸増幅処理において目標とする濃度まで対象核酸が合成されているかどうかは、閉鎖型カセット100からサンプルを採取して検査する。この場合、保持流路111から、次の処理に影響を与えない程度に微量の生成物のサンプルを採取すると、一貫した自動検出処理工程を妨げることがない。このとき、保持流路111内に新たに気体が進入しないように排出工程が利用される。このようなサンプル採取は、例えば、各種試薬の配合や反応の温度条件を最適化する場合、或いは、全試薬重点済みの閉鎖型カセット100の抜き取り出荷検査等に使用される。
【0089】
また、閉鎖型カセット100を利用して、必要な核酸抽出、増幅の複数の処理を行なわせ、その生成物を別用途で閉鎖型カセット100外にて使用する場合は、生成物は、全量採取されることになる。この場合、閉鎖型カセット100は、自動核酸検出装置用の閉鎖型カセットとしてではなく汎用の反応容器として使用される。このような全量採取は、例えば、閉鎖型カセット100の形状や材料に対して、各種試薬の配合や反応の温度条件を最適化する場合に、最適化を効率よく行なうために使用される。
【0090】
気泡の強制排出:
注入工程によって検体若しくは試薬等の液体を保持流路111内注入する際に、上述した閉鎖プレート321及び密着プレート322を用いることによって、通常保持流路111に気泡が進入することはない。しかしながら、すでに注入してある液体に溶け込んでいる気体が、減圧、過加熱等で気泡となって出現する場合、或いは、注入しようとする液体自体に気泡がすでに存在している場合は、保持流路111に気泡が出現する。このような場合には、図6(b)に示すように、閉鎖型カセット100を差込ガイド121が上方になるように立てて配置されることから、保持流路111内の気泡603が導入路314に集められ、注入用細管601によって気泡及び気泡を含んだ液体部分602が吸引され、気泡を強制排出することができる。
【0091】
〈検体注入〉
閉鎖型カセット100の主な使用方法としては、検体を流路111内へ注入するだけで、その後は自動的に核酸検出までを行なうことにある。この場合血液等である液体の検体615は、図7(a)に示すように、予め核酸抽出、増幅等の全ての試薬614が出荷時に充填されている保持流路111に注入されている。このような検体注入時においても、新たに注入する検体の量は、例えば試薬47μlに対して検体血液1μl程度なので、液体注入工程が使用でき、注入用細管601の近傍での可撓性シート2と流路基板1間の間隙は、極めて少ないので、流路111内への新たな気体の進入、或いは、流路111内のすでに保持されている試薬である液体の漏出を防ぐことができる。
【0092】
また、可撓性シート2としてゴム硬度JIS−A20°〜30°程度のシリコンゴムを使用した場合には、図7(b)に示すように、流路111の標準保持容積約48μlを越えて可撓性シート2が閉鎖型カセット100の外側に膨らむことができるので、注入される検体615の量と充填済み試薬614との総量が標準保持容積約48μlを越えて60μl程度まで達しても、液体注入工程を使用することができる。この場合、本発明で開示する閉鎖プレート321と、密着プレート322を用いた、閉鎖型カセット100の出入路封鎖機構においては、閉鎖プレート321と、密着プレート322の押付け圧力を強めることによって、流路111内に保持されている液体の検体及び試薬の検体注入時での漏出を防ぐことができる。
【0093】
〈小型化が容易〉
以上のように、閉鎖プレート321と、2分割された密着プレート322は、注入用細管601の先端近傍及びその周囲での可撓性シート2と流路基板1間の間隙をふさぐように押付けることができ、液体注入・排出時及び、注入用細管601の引抜き動作時での、保持流路111への気泡の進入と液体の漏洩を防ぐことができる。これにより、従来閉鎖型カセット100へ液体を注入する際に使用されていた自己封止ポートは不要になる。
【0094】
また、閉鎖プレート321と、密着プレート322の平面の大きさは、保持流路111とほぼ同等なスケールかより小さくでき、かつその厚みもカバープレート3とほぼ同等なスケールかより小さくでき、0.1〜0.5mm程度である。よって、閉鎖プレート321と、2分割された密着プレート322を用いることにより、閉鎖型カセット100の小型化が容易になる。
【0095】
(固体注入)
〈固体注入用細管〉
固体や粘弾性体の保持流路111への注入には、図8及び図9に示されるような固体注入用細管610を用いる。固体注入用細管610は、外径0.5mm、内径0.3mm程度のシリンダ611と、外径0.3mm程度のピストン612からなり、シリンダ611内に固体や粘弾性体の検体を保持する。固体注入用細管610は、ステンレス等の金属材料若しくはポリプロピレン、ナイロン、ポリアセタール等のプラスチック材料からなる。液体のようにピストンから離れた位置ある先端部への圧力伝播がないので、固体或いは粘弾性体の検体は、始めにシリンダ611内に保持され、注入時にピストン612にて押し出され、直接保持流路111内に投入される。
【0096】
〈固体注入工程〉
予め試薬が所定量注入されている保持流路111へ、固体或いは粘弾性体である毛根、皮膚、口腔粘膜、植物種子や葉等の検体、若しくはこれらの生体資料が付着している可能性がある試験片を注入する工程の各ステップを、図8及び図9を参照して説明する。図8(a-1),(b-1),(c-1)及び図9(d−1),(e-1),(f-1)は、注入用細管610が差し込まれる方向に沿った中間部ブロック101の断面を示している。ここで、注入用細管610は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿って差し込まれることから、これらの図は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿った中間部ブロック101の断面図でもある。また、図8(a-2),(b-2)及び図9(f-2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管610が差し込まれる方向に直交する密着プレート322の略中心付近における中間部ブロック101の断面図を示し、図8(c-2)及び図9(d−2),(e-2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管610が差し込まれる方向に直交する閉鎖プレート321の略中心付近、即ち、導入路開口313における中間部ブロック101の断面図を示している。
【0097】
固体注入用細管挿入:
図8(a−1)及び(b−1)に示すように、2つの密着プレート322の押圧ねじ332が所定量だけ緩められ、注入用細管610が差込ガイド121に沿って固体注入用細管610が流路基板1と可撓性シート2の間に差込まれる。このとき閉鎖プレート321が押付けられているので、固体注入用細管610は、閉鎖プレート321の手前の位置までしか進入できない。このとき保持流路111には、予め液体の試薬614が所定量注入されている。
【0098】
固体注入用細管周囲密閉:
図8(b−1)及び(b−2)に示すように、2つの密着プレート322は、押圧ねじ332が所定量だけ締められて可撓性シート2と注入用細管601の間隙をふさぐように可撓性シート2に押付けられる。これにより、注入時及び固体注入用細管610の引抜き時における気体の巻き込み、液体の漏洩を防止することができる。ただし、密着プレート322の押付け圧力は、固体注入用細管610が移動可能な範囲に留められる。
【0099】
導入路開放:
図8(c−1)及び(c−2)に示すように、閉鎖プレート321の押圧ねじ331が所定量だけ緩められ、注入用細管601の外径部分によって、閉鎖プレート321が押付けられていた可撓性シート2の一部が持ち上げられ、可撓性シート2が流路基板1から乖離され、注入用の導入路314が開放される。但し、導入路開口313の両側のカバープレート3が可撓性シート2を抑えていることから、導入路314は、所定の大きさに規制される。この導入路314に沿って、固体注入用細管610が保持流路111の端部にまで押込まれる。
【0100】
固体注入:
図9(d−1)及び(d−2)に示すように、固体注入用細管610のピストン612が押され、シリンダ611から固体の検体613が直接保持流路111の液体の試薬614内に投入される。このとき閉鎖型カセット100は、差込ガイド121が上方になるように立てて配置されていることから、気泡が保持流路111の液体中に発生することはない。
【0101】
また、2つの密着プレート322は、押圧ねじ332が所定量だけ締められることによって、可撓性シート2と注入用細管601の間隙をふさぐように押付けられることから、過剰な気体の進入や、固体の検体613の投入時の液体の試薬614の飛散等による漏洩を防止することができる。
【0102】
導入路閉鎖:
図9(e−1)及び(e−2)に示すように、固体の検体613が投入された後、固体注入用細管610は、閉鎖プレート321の手前の位置まで引き戻される。その後、閉鎖プレート321の押圧ねじ331が所定量だけ締められ、閉鎖プレート321を押付けることにより可撓性シート2と流路基板1の間が密着され、導入路314が閉鎖されて保持流路111が密閉される。
【0103】
注入用細管引抜き:
注入用細管引抜きは、図7(f−1)及び(f−2)に示すように図5(f−1)及び(f−2)に示す液体注入工程と同様に引き出される。このとき、予め充填してあった液体の試薬614より、固体の検体613の比重の方が大きい場合は、図7(f)に示すように、固体の検体613は、保持流路111の下部に沈降する。
【0104】
以上固体注入工程について説明したが、粘弾性体の検体の注入についても固体と同様に注入することができる。また、この固体注入工程と同じ方法で、液体を注入することも可能で、その場合は固体注入用細管610の代わりに液体用の注入用細管601を使用すればよい。
【0105】
〈固体の注入が容易〉
このように、流路基板1と可撓性シート2の間を乖離させることにより、固体注入用細管610を直線的に保持流路111の端部まで侵入させることができ、予め試薬が所定量注入されている閉鎖型カセット100へ、固体或いは粘弾性体の検体を容易に注入することができる。
【0106】
更に、乖離した流路基板1と可撓性シート2の間を再び密着させることにより保持流路を閉鎖ことができる。
【0107】
このような固体の注入工程においては、液体の注入工程とほぼ同様に、閉鎖プレート321と、2分割された密着プレート322の押付け動作を利用して、液体注入・排出時及び注入用細管601の引抜き動作時において、保持流路111へ気泡が進入し、或いは、液体が漏洩することを防止することができる。
【0108】
(変形例1:一体型押圧プレート)
〈一体型押圧プレート〉
図10は、一体型押圧プレート341を使用した実施例において、閉鎖型カセット100の中間部ブロック101の各構成を分離して示す斜視図である。説明のため、中間ブロック101に対応する部分のみが図示されている。
【0109】
図10に示される中間ブロック101においては、出入路押圧手段として、図3に示す閉鎖プレート321及び2分割された密着プレート322に代えて、図10に示されるように一体的に作られている一体型押圧プレート341を用いられている。一体型押圧プレート341は、カバープレート3と別体に設けられるが、可撓性シート2に接する面と同一平面上に配置される。
【0110】
以下、図10を参照して、一体型押圧プレート341について説明する。
【0111】
一体型押圧プレート341は、カバープレート3に形成された出入口開口312及び導入路開口313に配置される。一体型押圧プレート341は、差込ガイド121に対向する部位に密着部開口342が開口している。一体型押圧プレート341の密着部開口342の開口が細管密着用押圧手段に相当し、密着部開口342以外の導入路開口313に配置される一体型押圧プレート341の部分が出入路閉鎖用押圧手段に相当している。
【0112】
一体型押圧プレート341は、例えば厚さ0.1〜0.3mm程度のステンレス板で作ることができる。この場合、押圧ねじ344と一体型押圧プレート341の間に、フッ素樹脂等からなるスライドワッシャ343を挟むことが必要で、これによって、一体型押圧プレート341は、押圧ねじ344による所定の押圧下において弾性変形して撓むことができる。一体型押圧プレート341の材料として、ポリアセタール、ナイロン等の摺動性が良く、且つ、弾性変形し易い材料を使うことも可能である。
【0113】
〈注入工程〉
液体若しくは固体の試薬等や検体を、一体型押圧プレート341と注入用細管601を用いて保持流路111へ注入する工程の各ステップを、図11(a)、(b)及び(c)を参照して説明する。図11(a)、(b)及び(c)は、一体型押圧プレート341を使用した場合の閉鎖型カセット100の中間部ブロック101を示した斜視図で、注入用細管601が透視できるように図示してある。
【0114】
一体型押圧プレート341を用いた場合においても、注入用細管601として固体注入用細管610を使用すれば、固体或いは粘弾性体の検体を同様の工程で保持流路111に注入することができる。
【0115】
注入用細管挿入及び周囲密閉:
図11(a)に示すように、差込ガイド121及び密着部開口342に沿って注入用細管601が流路基板1と可撓性シート2の間に差込まれ、注入用細管601を密着部開口342のエッジ部分の手前まで進入させる。このとき一体型押圧プレート341は、押圧ねじ344によって所定量だけ締め付けられていることから、注入用細管601の周囲は、密着部開口342の外枠を形成する一体型押圧プレート341によって可撓性シート2と注入用細管601の間隙をふさぐように押付けられる。また、注入用細管601の外径部分が一体型押圧プレート341下の可撓性シート2が持ち上げられることが抑制さえ、導入路314が閉鎖されたままに保持流路111が密閉される。これにより、注入用細管差込み時及び注入用細管引抜き時において、気体の巻き込み及び液体の漏洩を防止することができる。
【0116】
導入路開放及び注入:
図11(b)に示すように、注入用細管601が密着部開口342のエッジ部分を越えて、保持流路111方向に進入される。このとき注入用細管601の外径部分によって、一体型押圧プレート341下の可撓性シート2の一部が持ち上げられ、更に、一体型押圧プレート341の中央部分が閉鎖型カセット100の外側方向に撓むこととなる。即ち、一体型押圧プレート341は、図10に示す押圧ねじ344によって移動不能に固定されず、スライドワッシャ343を介して締結されていることから、図11(b)に示すようにその中央部分が外側に撓み変形される。一体型押圧プレート341の中央部分が外側に撓むことにより、可撓性シート2を押さえつけていた圧力は弱まり、注入用細管601をさらに進入させることができる。従って、可撓性シート2が流路基板1から乖離され、注入用の導入路314が開放される。導入路314が開放した後、注入用細管601から導入路314を介して保持流路111に試薬や検体が注入される。必要に応じて、注入用細管601若しくは固体注入用細管610は、導入路314を通過して保持流路111の端部までをさらに進入させ、保持流路111に液体若しくは個体の検体等を注入することができる。
【0117】
導入路閉鎖及び注入用細管引抜き:
図11(c)に示すように、試薬や検体を注入した後、注入用細管601が密着部開口342のエッジ部分の手前の位置まで引き戻される。このとき、一体型押圧プレート341の外側に撓んだ中央部分は、内側からの圧力がなくなることから、元の平坦な形状に復帰される。従って、一体型押圧プレート341下の可撓性シート2及び流路基板1間は密着され、導入路314が閉鎖され、保持流路111は密閉される。
【0118】
次に、注入用細管601が流路基板1と可撓性シート2との間から引抜かれる。このとき、すでに導入路314は、閉鎖され、保持流路111を密閉しているので、注入用細管601の引抜き動作で、保持流路111に気泡が進入することはない。
【0119】
〈単純な操作〉
一体型押圧プレート341の中央部分が撓み変形可能に保持される場合には、閉鎖プレート321及び2分割された密着プレート322を使用する構造のようにねじの締め付け・緩め操作をすることなく、注入用細管601の出し入れだけのような単純な操作で、保持流路111への気泡の進入並びに液体の漏洩を防止することができ、固体或いは粘弾性体の検体の保持流路111への容易な注入を実現することができる。
【0120】
尚、図11(a)、(b)及び(c)に示される斜視図においては、注入用細管601の挿入及び引き抜きを理解容易とするために、可撓性シート2下に配置され或いは押圧プレート341及び可撓性シート2下に配置される注入用細管601の先端部を透視して示していることに注意されたい。
【0121】
(変形例2:押圧用弾性体)
〈押圧用弾性体〉
出入路押圧手段として、図12に示すような押圧用弾性体351を用いることができる。図12は、押圧用弾性体351を使用した閉鎖型カセット100の中間部ブロック101の各構成を分離して示した斜視図である。説明の便宜のために、図12には、中間ブロック101に対応する部分のみを図示している。図12を参照して、押圧用弾性体351について説明する。
【0122】
押圧用弾性体351は、カバープレート3に形成された導入路開口313に配置され、密着部開口352は、導入路開口313と同一の開口幅を有している。押圧用弾性体351は、可撓性シート2と同様に、シリコンゴム、ポリプロピレンゴム、ウレタンゴム等の高分子エラストマー等の弾性材料により作られている。押圧用弾性体351は、例えば、厚さ0.3〜2mm程度のシリコンゴムの場合、ゴム硬度JIS−A40°〜60°で可撓性シート2に比較して硬度の高いものを使用することができる。押圧用弾性体351は、その端部がカバープレート3に接着或いは締結され、可撓性シート2に密着されている。押圧用弾性体351は、可撓性シート2に接着され、或いは、可撓性シート2と一体的に成型しても良い。図12に示される構造では、押圧用弾性体351の端部がカバープレート3に接着されている。
【0123】
細管密着用押圧手段は、注入用細管601の周囲と可撓性シート2との間隙を塞ぐように可撓性シート2を注入用細管601及び流路基板1を押付ける機能が求められている。また、出入路閉鎖用押圧手段は、固着していない可撓性シート2と流路基板1間を導入路314として、乖離と密着とを制御可能する機能を求められている。従って、可撓性シート2は、差込ガイド121付近では柔軟性が求められ、導入路開口313付近ではある程度の硬さが必要とされる。しかし、この2つの要求を1つの可撓性シート2で満たすことができないことから、細管密着用押圧手段と出入路閉鎖用押圧手段によって、柔軟性と硬さの差を実現している。他方、可撓性シート2は、保持流路111がその容積を可変にするために、柔軟性が求められている。従って、導入路開口313付近の可撓性シート2が十分な硬さを持てば、本発明で開示する出入路閉鎖用押圧手段となりうる。そこで、押圧用弾性体351は、導入路開口313において可撓性シート2と接着若しくは密着され、或いは、一体成型されている。さらに、密着部開口352は、導入路開口313同じ開口幅を有し、一体型押圧プレート341における、密着部開口342の開口と同じ機能を有し、この密着部開口352が細管密着用押圧手段となっている。
【0124】
〈注入工程〉
液体若しくは固体の試薬等や検体を、図12に示した押圧用弾性体351と注入用細管601を用いて保持流路111へ注入する工程の各ステップを、図13(a)、(b)、(c)を参照して説明する。図13は、一体型押圧用弾性体351を使用した構造を備える閉鎖型カセット100の中間部ブロック101を示す斜視図で、図11と同様に注入用細管601を透視できるように図示している。
【0125】
基本的な動作は、図11に示される一体型押圧プレート341を使用した構造を備える閉鎖型カセット100の中間部ブロック101と同様であり、注入用細管601として固体注入用細管610を使用すれば、固体或いは粘弾性体の検体を同様の工程で保持流路111に注入することができる。
【0126】
注入用細管挿入及び周囲密閉:
図13(a)に示すように、差込ガイド121に沿って注入用細管601が流路基板1と可撓性シート2との間に差込まれ、押圧用弾性体351によって押付けられている可撓性シート2下の部位の手前まで進入される。このとき押圧用弾性体531は、所定の剛性を持つので、注入用細管601の外径部分によって、押圧用弾性体531の可撓性シート2が持ち上がるのを抑制し、導入路314は、閉鎖されたままで保持流路111は、密閉されている。また、注入用細管601の周囲は、導入路開口313と同じ開口幅を有している密着部開口352によって、で可撓性シート2と注入用細管601の間隙をふさぐように押付けられる。従って、注入用細管差込み時及び注入用細管引抜き時の、気体の巻き込み、液体の漏洩を防止することができる。
【0127】
導入路開放及び注入:
図13(b)に示すように、注入用細管601が押圧用弾性体351が配置されている部位を越えて保持流路111方向に進入される。このとき注入用細管601の外径部分によって、押圧用弾性体351より押付けられている可撓性シート2が持ち上げられ、同時に押圧用弾性体351が閉鎖型カセット100の外側方向に撓む。注入用細管601がさらに進入されることにより、可撓性シート2が流路基板1から乖離し、注入用の導入路314が開放される。
【0128】
導入路314が開放した後、注入用細管601から導入路314を通して保持流路111に試薬や検体を注入される。必要に応じて、注入用細管601若しくは固体注入用細管610が導入路314を通過して保持流路111の端部までさらに進入され、保持流路111に液体若しくは個体の検体等を注入しても良い。
【0129】
導入路閉鎖及び注入用細管引抜き:
図13(c)に示すように、試薬や検体を注入した後、押圧用弾性体351が配置されている部位の手前の位置まで注入用細管601が引き戻される。このとき、押圧用弾性体351の外側に撓んだ中央部分は、内側からに圧力がなくなるので元に戻される。同時に押圧用弾性体351下部の可撓性シート2と流路基板1の間は密着し、導入路314が閉鎖され、保持流路111は、密閉される。
【0130】
次に、注入用細管601が流路基板1と可撓性シート2の間から引き抜かれる。このとき、すでに導入路314は、閉鎖され保持流路111を密閉しているので、注入用細管601の引抜き動作によって保持流路111に気泡が進入することはない。
【0131】
〈簡便構造と単純操作〉
図13に示される押圧用弾性体351を利用すれば、さらに簡便な構造で、かつ注入用細管601の出し入れだけの単純な操作で、保持流路111への気泡の進入及び液体の漏洩を防止することができ、固体或いは粘弾性体の検体の保持流路111への容易な注入を実現することができる。
【0132】
(第2実施形態)
(非貫通型スリット)
〈スリット形状〉
図14は、本発明の第2実施形態に係る閉鎖型カセット100の中間部ブロック101の各構成を分離して示す斜視図である。
【0133】
図14に示す中間部ブロック101は、可撓性シート2の形状を除いて図1に示す中間部ブロック101の構造と実質的に同一の構造を備えている。可撓性シート2は、差込ガイド121に対向する部分に非貫通型スリット201が設けられている。図14においては、この非貫通型スリット201が透視できるように図示している。可撓性シート2が、例えば、シリコンゴムからなる場合には、シリコンゴムの厚さを0.5mm程度とすると、厚さ方向のスリットの深さが0.3mm程度、差込ガイド121から保持流路111へ向かう方向のスリット長さが2〜5mm程度に形成される。また、このスリット201は、その終点部に近づくにつれて、その深さを減じている形状に形成されている。スリット201の切り込みの幅はできるだけ小さいことが望ましいので、シリコンゴムを刃物でカットして非貫通型スリット201を形成し、スリットの切り込みの幅はゼロになっている。
【0134】
シリコンゴムの厚さを3mm以上にすれば、周知の自己封止ポートに用いられているような貫通孔を形成することも可能だが、可撓性シート2には、保持流路111を全閉するまで弾性変形しなければならないという条件、さらに反応のために可撓性シート2を介しての加熱・冷却を行なわなければならないとう2つの条件を満たす必要があり、厚さ1mm以上のシリコンゴムを使用することは適切ではない。
【0135】
〈注入工程〉
図15を参照して非貫通型スリット201及び注入用細管601を用いて検体若しくは試薬等の液体を保持流路111へ注入する工程の各ステップを説明する。図15(a-1),(b-1),(c-1)及び図16(d−1),(e-1)は、注入用細管601が差し込まれる方向に沿った中間部ブロック101の断面を示している。ここで、注入用細管601は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿って差し込まれることから、これらの図は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿った中間部ブロック101の断面図でもある。また、図15(a-2),(b-2)及び図15(e-2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管601が差し込まれる方向に直交する密着プレート322の略中心付近における中間部ブロック101の断面図を示し、図15(c-2)及び図15(d−2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管601が差し込まれる方向に直交する閉鎖プレート321の略中心付近、即ち、導入路開口313における中間部ブロック101の断面図を示している。
【0136】
注入工程では、閉鎖プレート321及び2分割された密着プレート322が利用されてしているので、第1実施形態に係る図4を参照する工程と同じであるが、非貫通型スリット201を使用しているので、注入用細管601の状態が異なっている。以下の注入工程の各ステップの説明においては、図4を参照する工程と同一箇所の説明は省略する。
【0137】
注入用細管601として固体注入用細管610を使用すれば、固体或いは粘弾性体の検体を同様の工程で保持流路111に注入することができる。
【0138】
注入用細管挿入前の全閉状態:
図15(a―1)及び(a−2)は、注入用細管601を非貫通型スリット201に差込む前の状態を示している。非貫通型スリット201は、左右が2分割された密着プレート322で規制されていることから、完全に閉じられている。また、導入路314も閉鎖プレート321で押付けられているので閉鎖状態にあり、保持流路111は、密閉されている。
【0139】
注入用細管挿入及び周囲密閉:
図15(b―1)及び(b−2)に示すように、注入用細管601が非貫通型スリット201に差込まれ、非貫通型スリット201を完全に通過して閉鎖プレート321の手前まで進入される。このとき、図15(b−2)に示されるように、注入用細管601の周囲は、非貫通型スリット201がない状態を示す図4(b―2)と比較して、ほぼ完全に可撓性シート2に密着されている。従って、非貫通型スリット201は、それが設けられない場合比較して保持流路111への気泡の進入及び液体の漏洩をより確実に防止することができる。
【0140】
また、導入路314の可撓性シート2及び流路基板1は、互いに密着したままの閉鎖状態に維持される。
【0141】
導入路開放及び注入:
図15(c−1)、(c−2)に示すように、閉鎖プレート321の押圧を弱めると可撓性シート2が流路基板1から僅かに乖離され、注入用の導入路314が開放される。導入路314が開放された後、液体が注入される。
【0142】
導入路閉鎖:
図16(d―1)、(d−2)に示すように、液体602が保持流路111に所定量入ったところで、閉鎖プレート321で押付けることにより可撓性シート2が流路基板1に密着されて導入路314が閉鎖され、保持流路111が密閉される。
【0143】
注入用細管引抜き:
図13(e−1)、(e−2)に示すように、注入用細管601が流路基板1と可撓性シート2の間から引き抜かれる。非貫通型スリット201の部分は、注入用細管601からの圧力がなくなるの元に戻されることとなる。
【0144】
〈漏洩防止の向上〉
このように非貫通型スリット201を用いると、注入用細管601の周囲は、ほぼ完全に可撓性シート2と密着しているので、液体注入・排出時及び注入用細管601の引抜き動作時において、保持流路111への気泡の進入及び液体の漏洩をより確実に防止することができる。従って、閉鎖型カセット100へ液体を注入する際に使用されていた自己封止ポートは、不要になり、閉鎖型カセット100の小型化が実現可能となる。
【0145】
(変形例:貫通型スリット)
〈スリット形状〉
図17は、この発明の第2実施形態の変形例1に係る閉鎖型カセット100の中間部ブロック101の各構成を分離して示した斜視図である。
【0146】
可撓性シート2には、差込ガイド121に対向する部分から保持流路111の単部までの延長されている貫通型スリット202が形成されている。図17においては、この貫通型スリット202が透視できるように図示してある。それ以外のスリットの構造・製法は、図14を参照して説明した非貫通型スリット201と実質的に同一である。
【0147】
〈押圧ブリッジ〉
カバープレート3には、保持流路開口311、出入口開口312に加えて、押圧逃がし開口363が設けられ、出入路閉鎖用押圧手段である閉鎖ブリッジ361と細管密着用押圧手段である密着ブリッジ362とで上記3つの開口部が分離して形成されている。例えば、可撓性シート2が厚さ0.5〜1mm程度、ゴム硬度JIS−A20°〜30°シリコンゴムで作られている場合には、閉鎖ブリッジ361と密着ブリッジ362の幅は、1〜4mm程度、押圧逃がし開口363幅は、1〜4mm程度である。密着ブリッジ362の外側エッジは、差込ガイド121の窪みが終わる部位の近傍に位置している。
【0148】
〈注入工程〉
図18、図19及び図20を参照して、検体若しくは試薬等の液体が貫通型スリット202及び注入用細管601を用いて保持流路111へ注入する工程の各ステップを説明する。
【0149】
図18(a-1),(b-1),(c-1)及び図19(d−1),(e-1)は、注入用細管601が差し込まれる方向に沿った中間部ブロック101の断面を示している。ここで、注入用細管601は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿って差し込まれることから、これらの図は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿った中間部ブロック101の断面図でもある。また、図18(a-2),(b-2)及び図19(e-2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管601が差し込まれる方向に直交する密着プレート322の略中心付近における中間部ブロック101の断面図を示し、図18(c-2)及び図19(d−2),(e-2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管601が差し込まれる方向に直交する閉鎖プレート321の略中心付近、即ち、導入路開口313における中間部ブロック101の断面図を示している。
【0150】
注入工程は、注入用細管601を差込む操作だけなので、図12及び図13に示す第1実施形態の変形例2に係る押圧用弾性体351を使用する場合と実質的に同一であるが、貫通型スリット202を使用しているので、注入用細管601の状態が異なっている。注入用細管601として固体注入用細管610を使用すれば、固体或いは粘弾性体の検体を同様の工程で保持流路111に注入することができる。
【0151】
注入用細管挿入前の全閉状態:
図18(a―1)、(a−2)は、注入用細管601を貫通型スリット202に差込む前の状態を示している。貫通型スリット202は、閉鎖ブリッジ361及び密着ブリッジ362で押付けられていることから、完全に閉じられている。更に、導入路314も閉鎖ブリッジ361が可撓性シート2に押付けられていることから閉鎖状態にあり、保持流路111は、密閉されている。
【0152】
注入用細管挿入及び周囲密閉:
図18(b―1)、(b−2)に示すように、注入用細管601が貫通型スリット202に差込まれ、押圧逃がし開口363の中間まで進入される。注入用細管601は、密着ブリッジ362で押付けられている貫通型スリット202の部分をこじ開けて流路基板1と可撓性シート2の間に差込まれる。こじ開けられた部分に対応して、可撓性シート2の一部が押圧逃がし開口363及び出入口開口312内に膨らむこととなる。図18(b−2)に示されるように、注入用細管601の周囲は、貫通型スリット202がない状態を示す図4(b−2)と比較して、ほぼ完全に可撓性シート2に密着されている。従って、貫通型スリット202は、貫通型スリット202がない構造に比べて、保持流路111への気泡の進入及び液体の漏洩をより確実に防止することができる。また、閉鎖ブリッジ361によって導入路314の可撓性シート2が流路基板1に押付けられたままに維持され、閉鎖状態が維持される。
【0153】
導入路開放及び注入:
図18(c―1)、(c−2)に示すように、注入用細管601がさらに進入され、閉鎖ブリッジ361に押圧されている可撓性シート2下の部分に形成される導入路314を通過させ、保持流路111の端部まで注入用細管601が進入させられる。その後、液体が保持流路111に注入される。図20は、液体が保持流路111に注入される状態における斜視図を示し、注入用細管601が透視できるように示されている。注入用細管601は、閉鎖ブリッジ361で押付けられている貫通型スリット202の部分をこじ開けて、保持流路111の端部まで達している。こじ開けられた部分に対応する可撓性シート2の一部が押圧逃がし開口363及び保持流路開口311に膨らんでいる。
【0154】
図18(c−2)に示されるように、閉鎖ブリッジ361の部位においても注入用細管601の周囲は、略完全に可撓性シート2に密着している。従って、貫通型スリット202は、スリット202がない場合に比べて保持流路111への気泡の進入及び液体の漏洩をより確実に防止することができる。
【0155】
導入路閉鎖:
図19(d―1)、(d−2)に示すように、試薬や検体を注入した後、注入用細管601が押圧逃がし開口363の中間まで引き戻される。このとき、閉鎖ブリッジ361で押付けられている貫通型スリット202の部分は、注入用細管601からの圧力がなくなるので元に戻される。同時に閉鎖ブリッジ361で押付けられるので、可撓性シート2が流路基板1に密着し、導入路314が閉鎖され、保持流路111は、密閉される。
【0156】
注入用細管引抜き:
図19(e―1)、(e−2)に示すように、注入用細管601が貫通型スリット202から完全に引き抜かれる。このとき、密着ブリッジ362で押付けられている貫通型スリット202の部分は、注入用細管601からの圧力がなくなることから元に戻される。同時に密着ブリッジ362によって可撓性シート2が流路基板1に押付けられるので、可撓性シート2が流路基板1に密着される。
【0157】
〈簡易構成による漏洩防止の向上〉
このように貫通型スリット202を用いると、カバープレート3の一部が細管密着用押圧手段及び出入路閉鎖用押圧手段となり構造が簡素化される。さらに、液体及び固体或いは粘弾性体の注入操作が単純な注入用細管601の出し入れだけで済むこととなる。液体注入・排出時及び、注入用細管601の引抜き動作時においても、注入用細管601の周囲は、貫通型スリット202の全域に渡ってほぼ完全に可撓性シート2に密着されているので、保持流路111への気泡の進入及び液体の漏洩を防止する効果をさらに向上することができる。従って、従来閉鎖型カセット100へ液体を注入する際に使用されていた自己封止ポートは不要になり、閉鎖型カセット100の小型化を実現することができる。
【0158】
(第3実施形態)
(扁平型注入用細管)
〈構造・製法〉
図17は、本発明の第3実施形態に係る扁平型注入用細管620の概観を示す斜視図である。
【0159】
扁平型注入用細管620は、周知の可撓性であるプラスチック製の使い捨てピペット先端チップの外形が円形であるのに対し、円形がつぶれた略楕円形状に形成されている。扁平型注入用細管620は、一例として、縦横比は1:2〜5程度であり、例えば、高さ0.2mm×幅0.7mm程度の円形がつぶれた形状に形成される。
【0160】
図21に示すような外形に適合する金型を作製し、ポロプロピレン、ポリカーボネイト等のプラスチック材料を周知の射出成型法等で加工して、目的とする扁平型注入用細管620を製造することができる。または、周知の外形が円形で可撓性を有するプラスチック製の使い捨てピペット先端チップを、外側から押しつぶして、目的とする扁平型の注入用細管620を製作することができる。
【0161】
扁平型注入用細管620をシリンダとし、内部にピストンを備えれば、固体或いは粘弾性体の検体が注入可能な、扁平型の固体注入用細管を得ることができる。
【0162】
〈押圧カンチレバー〉
図22は、本発明の第3実施形態に係る扁平型注入用細管620用いる閉鎖型カセット100の中間部ブロック101の各構成を分離して示した斜視図である。
【0163】
可撓性シート2には、スリットは設けられず、第1実施形態に用いられているのもと同一のものが用いられる。カバープレート3には、保持流路開口311、出入口開口312のほかに、押圧逃がし開口375が設けられている。上記3つの開口部の間には、出入路閉鎖用押圧手段である閉鎖カンチレバー371及び細管密着用押圧手段である密着カンチレバー372が形成されている。閉鎖カンチレバー371間には、閉鎖部スリット373が、密着カンチレバー372間には、密着部スリット374が設けられている。
【0164】
可撓性シート2が例えば、厚さ0.5〜1mm程度、ゴム硬度JIS−A20°〜30°シリコンゴムである場合に、閉鎖カンチレバー371と密着カンチレバー372の幅は、0.5〜4mm程度、押圧逃がし開口375幅は、1〜4mm程度に設定される。密着カンチレバー372の外側エッジは、差込ガイド121の窪みが終わる部位の近傍に位置している。また、閉鎖部スリット373幅は、0.5〜0.7mm程度であり、密着部スリット374幅は閉鎖スリット373より広く0.7〜1mm程度である。
【0165】
〈注入工程〉
図23を参照して、閉鎖カンチレバー371と密着カンチレバー372と扁平型注入用細管620とを用いて検体若しくは試薬等の液体が保持流路111に注入される工程の各ステップを説明する。
【0166】
図23(a-1),(b-1),(c-1)及び図24(d−1),(e-1)は、注入用細管601が差し込まれる方向に沿った中間部ブロック101の断面を示している。ここで、注入用細管601は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿って差し込まれることから、これらの図は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿った中間部ブロック101の断面図でもある。また、図23(a-2),(b-2)及び図5(f-2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管601が差し込まれる方向に直交する密着カンチレバー372の略中心付近における中間部ブロック101の断面図を示し、図24(c-2)及び図24(d−2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管601が差し込まれる方向に直交する閉鎖カンチレバー371の略中心付近の断面図を示している。
【0167】
注入工程では、扁平型注入用細管620を差込む操作だけなので、第2実施形態の変形例に係る図17に示す構造における工程と実質的に同一であるが、可撓性シート2に貫通型スリット202が設けられず、閉鎖カンチレバー371及び密着カンチレバー372が使用されているので、扁平型注入用細管620の周囲の状態が異なっている。
【0168】
扁平型注入用細管620として、内部にピストンを備えた扁平型の固体注入用細管が使用されれば、固体或いは粘弾性体の検体を同様の工程で保持流路111に注入することができる。
【0169】
注入用細管挿入前の全閉状態:
図23(a―1)、(aー2)は、扁平型注入用細管620を差込ガイド121に差込む前の状態を示している。可撓性シート2が密着カンチレバー372で押付けられ、可撓性シート2が流路基板1に密着された状態にある。更に、閉鎖部スリット373の幅が可撓性シート2の厚みとほぼ等しいので、導入路314も十分に閉鎖カンチレバー371で押付けられ、閉鎖状態にあり、保持流路111は、完全に密閉されている。
【0170】
注入用細管挿入及び周囲密閉:
図23(b―1)、(b−2)に示すように、扁平型注入用細管620が差込ガイド121に差込まれ、押圧逃がし開口375の中間まで進入される。扁平型注入用細管620は、密着カンチレバー372で押付けられている可撓性シート2と流路基板1の間をこじ開けて挿入される。こじ開けられた部分に対応する可撓性シート2の一部が密着部スリット374、押圧逃がし開口375及び出入口開口312内に膨らんでいる。図23(b−2)に示されるように、密着カンチレバー372は、閉鎖型カセット100の外側に撓んで変形されている。また、図23(b−2)に示されるように、扁平型注入用細管620は、可撓性であるため、密着カンチレバー372からの押付け圧力で、流路基板1の平坦部になじむように変形されている。さらに、扁平型注入用細管620の周囲は、細管の外側形状が扁平なためと、密着部スリット374により、第2実施例の変形例に示す貫通型スリット202がある状態を示す図18(b―2)と比較しても、ほぼ同程度に可撓性シート2に密着している。このため、保持流路111への気泡の進入及び液体の漏洩を防止する効果は、貫通型スリット202を用いた場合と同程度に高くなっている。また、細管の外側形状が扁平なため、また、密着部スリット374があるため、扁平型注入用細管620が無理なく進入される。
【0171】
導入路開放及び注入:
図23(c―1)、(c−2)に示すように、扁平型注入用細管620がさらに前進され、閉鎖カンチレバー371に押圧される可撓性シート2下の部分に設けられる導入路314を通過され、保持流路111の端部まで進入される。その後、液体が保持流路111に注入される。図25は、液体が保持流路111に注入され状態を示す斜視図で、扁平型注入用細管620が透視できるように図示している。
【0172】
扁平型注入用細管620は、閉鎖カンチレバー371で押付けられている可撓性シート2と流路基板1の間をこじ開けるように挿入される。こじ開けられた部分に対応する可撓性シート2の一部が閉鎖部スリット373、押圧逃がし開口375及び保持流路開口311内に膨らんでいる。扁平型注入用細管620は、可撓性であるため、閉鎖カンチレバー371からの押付け圧力で、流路基板1の平坦部になじむように変形される。さらに、扁平型注入用細管620の周囲は、細管の外側形状が扁平なため、また、閉鎖部スリット373により、図18(c―2)と比較しても、ほぼ同程度に可撓性シート2に密着される。従って、保持流路111への気泡の進入と液体の漏洩を防止する効果は、貫通型スリット202を用いた場合と同程度に高くなっている。また、細管の外側形状が扁平であり、閉鎖部スリット373があるため、扁平型注入用細管620が無理なく進入することができる。
【0173】
導入路閉鎖:
図23(d―1)、(d−2)に示すように、試薬や検体を注入した後、扁平型注入用細管620が押圧逃がし開口375の中間まで引き戻される。このとき、可撓性シート2が閉鎖カンチレバー371によって押付けられることから、可撓性シート2が流路基板1に密着し、導入路314が閉鎖され、保持流路111は、密閉される。
【0174】
注入用細管引抜き:
図23(e―1)、(eー2)に示すように、扁平型注入用細管620が差込ガイド121から完全に引き抜かれる。このとき、可撓性シート2が密着カンチレバー372で押付けられていることから、可撓性シート2が流路基板1に密着される。
【0175】
〈簡易構成による漏洩防止の向上〉
このように扁平型注入用細管620を用いる構造では、可撓性シート2に貫通型スリット202を設けなくとも、カバープレート3の一部が閉鎖カンチレバー371及び密着カンチレバー372に形成されれば、細管密着用押圧手段及び出入路閉鎖用押圧手段が形成され、構造がさらに簡素化される。さらに、液体及び固体或いは粘弾性体の注入操作が、扁平型注入用細管620の出し入れだけで済み簡便になる。液体注入・排出時及び注入用細管601の引抜き動作時においても、注入用細管601の周囲は、ほぼ完全に可撓性シート2と密着しているので、保持流路111への気泡の進入及び液体の漏洩を防止する効果をさらに向上することができる。これにより、従来閉鎖型カセット100へ液体を注入する際に使用されていた自己封止ポートは不要になり、閉鎖型カセット100の小型化が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0176】
以上説明したようにこの発明は、核酸を含む試料の投入から、核酸増幅及びその他の必要な処理と目標核酸の検出までを一貫して自動的に処理するのに用いられる閉鎖型の核酸検出カセット、及びそれを用いた核酸検出システムの技術分野に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明の第1実施形態に係る中間部ブロックを備えた核酸検出カセットの概観を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す核酸検出カセットの各構成を分離して示す分解斜視図である。
【図3】図1及び図2に示す発明の第1実施形態に係る中間部ブロックの各構成を分離して示す分解斜視図である。
【図4】(a−1)〜(c−2)は、図3に示す中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図5】(d−1)〜(f−2)は、図3に示す中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図6】(a)及び(b)は、図3に示す中間部ブロックにおける液或いは気体の排出工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図7】(a)及び(b)は、図3に示す中間部ブロックにおける検体注入時の状態を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図8】(a−1)〜(c−2)は、図3に示す中間部ブロックにおける固体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図9】(d−1)〜(f−2)は、図3に示す中間部ブロックにおける固体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態の変形例に係る一体型押圧プレートを使用した中間部ブロックの各構成を分離して示す分解斜視図である。
【図11】図10に示す一体型押圧プレートを使用した中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを示す概観斜視図である。
【図12】本発明の第1実施形態の変形例に係る押圧用弾性体を使用した中間部ブロックの各構成を分離して示す分解斜視図である。
【図13】図12に示す押圧用弾性体を使用した中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを示す概観斜視図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る中間部ブロックの各構成を分離して示す分解斜視図である。
【図15】(a−1)〜(c−2)は、図14に示す中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図16】(d−1)〜(e−2)は、図14に示す中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図17】本発明の第1実施形態の変形例に係る貫通型スリットを使用した中間部ブロックにおける中間部ブロックの各構成を分離して示す分解斜視図である。
【図18】(a−1)〜(c−2)は、図14に示す中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図19】(d−1)〜(e−2)は、図14に示す中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図20】図14に示す貫通型スリットを使用した中間部ブロックにおける液体注入時の状態を説明するための中間部ブロックの概観を示す斜視図である。
【図21】この発明の第3実施形態に係る中間部ブロックに利用される扁平型注入用細管の概観を概略的に示す斜視図である。
【図22】図21に示した扁平型注入用細管が利用されるこの発明の第3実施形態に係る中間部ブロックの各構成を分離して示す分解斜視図である。
【図23】(a−1)〜(c−2)は、図22に示す中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図24】(d−1)〜(e−2)は、図22に示す中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図25】図22に示す中間部ブロックにおける液体注入時の状態を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0178】
1…固定基板、2…可撓性シート、3…カバープレート、4…押圧ブロック
100…核酸検出カセット、101…中間部ブロック、102、103…端部ブロック、106…検出部ブロック、
111…保持流路、117…連結流路、121…差込ガイド、151…接点部開口、
201…非貫通型スリット、202…貫通型スリット、
311…保持流路開口、312…出入路開口、313…導入路開口、314…導入路、317…連結流路開口、
321…閉鎖プレート、322…密着プレート、331、332…押圧ねじ、
341…一体型押圧プレート、342…密着部開口、343…スライドワッシャ、344…押圧ねじ、
351…押圧用弾性体、352…密着部開口、
361…閉鎖ブリッジ、362…密着ブリッジ、363…押圧逃がし開口、
371…閉鎖カンチレバー、372…密着カンチレバー、373…閉鎖部スリット、374…密着部スリット、375…押圧逃がし開口、
500…核酸検出チップ、520…検出流路シール、521…検出流路、
601…注入用細管、602…液体、603…気泡、604…残留液体、
610…固体注入用細管、611…シリンダ、612…ピストン、613…固体の検体、614…試薬、615…液体の検体、
620…扁平型注入用細管
【技術分野】
【0001】
この発明は、核酸検出カセット及びカセット注入システムに係り、特に、核酸を含む試料の投入から、核酸増幅及びその他の必要な処理と目標核酸の検出までを一貫して自動的に処理する、使い捨て可能な閉鎖型検出カセット及びそのカセットとともに使用される注入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
核酸増幅技術の登場と核酸検出技術の向上により、特定DNAストランドの検出のための各種薬品が提案され、また、個別の核酸増幅装置及び核酸検出装置が提案されている。しかしながら、核酸増幅においては、増幅した核酸による汚染の可能性があるため、また、ヒートサイクル印加、注液、混合等の複雑な操作が必要なため、これらの薬品や増幅装置及び検出装置の使用は試験研究用に限られている。
【0003】
従来、こうした問題点を解決し、病院、臨床試験所、検疫所等で核酸検出を実施できるようにするため、核酸を含む試料の処理から目標核酸の検出までを一貫して自動的に処理する、使い捨て可能な閉鎖型検出容器およびそれを用いた検出装置が開示されている。
【0004】
例えば、特許2536945号公報(特許文献1)には必要なすべての試薬を収納する核酸の増幅および検出用のキュベット(cuvette)が、特開平8-62225号公報(特許文献2)には遠心力を利用して送液する試験ユニットが、特表平9-511407号公報(特許文献3)には微細加工技術を使用して固体基板に形成された微細流路および反応室が開示されている。
【0005】
また、本願発明者の提案に係る先願に係る関連出願として特願2003-400878(未公開特許文献4)がある。この関連出願には、固定部材と可撓性部材との組合せにより流路が構成された核酸検出カセットが開示されている。この核酸検出カセットによれば、容積が可変で試薬を保持可能で且つ核酸検出カセット外部と連通可能な開状態と閉鎖可能な閉状態を選択可能な出入路を有する保持流路と、この保持流路に接続され保持流路と連通可能な開状態と閉鎖可能な閉状態を選択可能な連結流路と、出入路を閉状態で維持可能な出入路開閉手段と、連結流路を閉状態で維持可能な連結流路開閉手段とからなる核酸検出カセットが開示されている。
【0006】
この核酸検出カセットは、核酸を含む試料の処理から目標核酸の検出までに必要な、カセット内での充填物の移送、混合、加熱、冷却、電圧印加、電流測定等を組み合わせた一連の工程を、すべての閉鎖されたカセット内で一貫して自動的に処理でき、かつ各工程に必要な操作はカセット外部から行ない、カセット内に動力発生手段、熱源、電圧発生手段等の操作用のエネルギー発生手段を持つ必要がなく、使い捨てに好適である。
【特許文献1】特許2536945号公報
【特許文献2】特開平8-62225号公報
【特許文献3】特表平9-511407号公報
【特許文献4】特願2003-400878
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(多様な検体への対応に伴う問題点)
液体である血液、固体或いは粘弾性体である毛根、皮膚、口腔粘膜、植物種子や葉等の各種の生体資料を核酸検出の対象検体として使用することが、核酸検出の適用範囲の広がりと共に、簡易でかつ持ち運び可能な自動核酸検出装置に求められている。また、これらの生体資料が付着している、若しくは付着している可能性のある試験片を、直接使い捨て可能な閉鎖型検核酸検出カセットにて使用するような用途上の要求もきわめて高くなっている。例えば、医療診断や食品検査だけでなく、犯罪捜査等の様々な現場で、血液や口腔粘膜、毛根等をセットするだけで後は自動的に遺伝子型判定までを行なえるような自動核酸検出装置が期待されている。
【0008】
ところが、先願に係る特願2003-400878(未公開特許文献4)で提案された核酸検出カセットでは、検核増幅・検出のための各種反応・操作を処理する保持流路に対して、カセットの出入路部分から検体を注入・挿入する必要があるが、この際に、出入路部分から保持流路に至る経路が、細くかつ直角に曲がっているため、毛根のような固体の検体を保持流路の内部に挿入することが困難である。
【0009】
出入路部分から保持流路に至る経路が直角に曲がっているのは、出入路を構成する外部との連通孔を平板状の固定部材に形成しようとすると、保持流路の深さが0.5mm程度と浅いため保持流路の側壁部に連通孔を形成することが困難で、平板状の固定部材の厚み方向に連通孔を形成するしかなく、このため、平板状の固定部材の平面部分に形成されている保持流路に対して、出入路部分からの経路は直角に曲がらざるを得ない。
【0010】
保持流路の底面に出入路となる連通孔を形成すると、出入路部分から保持流路に至る経路を直線にすることが可能になるが、保持流路の外壁の厚みが増し検核増幅・検出のための各種反応・操作に必要な加熱・冷却の際に熱伝達が悪化する。また、保持流路内の充填物を移送、撹拌する際に、保持流路内を加圧・減圧するので、保持流路の底面に連通孔があると、充填物の漏洩が発生しやすくなる。
【0011】
このように、従来の核酸検出カセットの構造では、固体の検体若しくは検体が付着した試験片等を挿入すること困難であり、多様な検体に対応することができない問題がある。
【0012】
(カセットの小型化に伴う問題点)
核酸増幅から検査までの一連の工程を一貫して実施可能な流路構造において、液体内に気泡が取り込まれると以下のような悪影響が発生する。
【0013】
核酸増幅及びその他の加熱処理において、気泡内に水分が蒸発することにより試薬濃度の変動をもたらし、反応の阻害要因となる。
【0014】
気泡、気体部分があると気体の熱膨張率が大きいので、加熱時に容器内圧力の上昇につながり、液漏れ、しいては核酸検出カセット外部の汚染の原因となる。
【0015】
気泡、気体部分があるとその部分は熱伝導率が小さいので熱伝達を阻害する。
【0016】
加圧・吸引による送液時に、気泡があると気泡の体積が変化するので送液制御困難となる。
【0017】
このような問題点に対応するため、特願2003-400878(未公開特許文献4)で開示されているような核酸検出カセットでは、周知のゴム等の可撓性部材からなる自己封止型ポートを出入路に装着する例が示されている。
【0018】
液体の注入に際しては、注入用ピペットを自己封止型ポートの閉鎖している孔部に差込むと、注入用ピペットと自己封止型ポートの可撓性部材とが常に密着しているため、注入時の気泡の巻き込みが防止できる。また注入終了時における注入用ピペットの引抜きの際には、注入用ピペットが完全に自己封止型ポートの外に出る前に、自己封止型ポートの可撓性部材内部に形成された孔部が自己閉鎖し、液漏れが防止できる。このため核酸検出カセットでは、実用的には他の出入路開閉手段と併用されて用いられている。
【0019】
ところが、注入用ピペットにおいて、自己封止型ポートの閉鎖している孔部に直接差込む部分として、可撓性であるプラスチック製の使い捨てのピペット先端チップを使用する場合には、EPDM、シリコンゴム等の可撓性部材から成る自己封止型ポートはある程度の大きさが必要になってくる。例えば外径0.5〜1mm程度のピペット先端チップを使用する場合には、縦2〜4×横3〜6×高さ3〜6mm程度の小判型の自己封止型ポートが使用される。
【0020】
これは、ピペット先端チップに対してあまりに小さい自己封止型ポートでは、注入時のピペット先端チップを自己封止型ポートに差込み、自己封止型ポートの可撓性部材を拡張しようとしても、ピペット先端チップも可撓性であるため、ピペット先端チップが曲がってしまい、自己封止型ポートを貫通するとこができなくなってしまうからである。
【0021】
逆に、自己封止型ポートに対してあまりに大きいピペット先端チップを用いて、ピペット先端チップを自己封止型ポートに差込み、自己封止型ポートの可撓性部材の閉鎖している孔部を無理やり拡張しようとすると、ピペット先端チップは自己封止型ポートを貫通するとこができても、ピペット先端チップの引抜きの際に、自己封止型ポートの可撓性部材の孔部を自己閉鎖することができず、液漏れが発生してしまう。
【0022】
したがって、保持流路903の大きさが縦10×横10×深さ0.5mm程度になると、前述のような自己封止型ポートでは保持流路の大きさと同程度かそれを上回り、核酸検出カセットの小型化を阻害する要因となっている。
【0023】
また、核酸増幅においては数百万ものDNAコピーを合成できるが、逆にその高い増幅能力故に、前に増幅した生成物、或いは外から入ってくる物質によるコンタミネーションの問題がある。即ち、極微量のコンタミネーションであっても多量に増幅してしまう恐れがある。従って、核酸検出カセットは、使い捨て可能な閉鎖型であることが求められている。同様のコンタミネーション対策として、試薬、検体を核酸検出カセット内に注入するために使用する器具も使い捨てであるこが求められ、現状では、安価なプラスチック製の使い捨てのピペット先端チップを使用することが一般的である。
【0024】
したがって、金属製ニードルは、プラスチック製の使い捨てのピペット先端チップより剛性があるので、外径を細くでき、比較的小さな自己封止型ポートでも貫通することができるが、高価なためその使用が敬遠されている。
【0025】
加えるに、検体として血液を使用する場合には、血液のついた金属製ニードルを作業者の人体に刺してしまう事故が発生する恐れがあり、これにより感染症を引き起こす危険性がある。このため、金属製ニードルの使用はさらに忌避されている。
【0026】
以上のような理由で、核酸検出カセットの小型化には自己封止型ポートが隘路になっているが、従来の技術では、自己封止型ポートに代わるような、核酸検出カセットに対して安定して液体注入ができる手段は開示されていない。
【0027】
さらに、自己封止型ポートは、ピペットのような細管で可撓性部材の予め閉鎖している孔部を強制的に広げながら、その細管自身を自己封止型ポートに貫通させる必要があるため、固体の検体や検体が付着した試験片を保持流路の内部にそのまま挿入することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、上記問題点を解決するためになされてものであり、その目的は、核酸を含む試料の投入から、核酸増幅及びその他の必要な処理と目標核酸の検出までを一貫して自動的に処理する、使い捨て可能な閉鎖型検出カセット及びそのカセットとともに使用される注入システムを提供することにある。
【0029】
この発明によれば、
試料に含まれる核酸を検出するために固定部材と可撓性部材との組合せにより流路が構成された核酸検出カセットであって、
前記流路は、前記核酸検出カセットの外部と連通可能な開状態及び前記核酸検出カセットの外部に対して閉鎖可能な閉状態を選択可能な出入路を有し、その容積が可変で、試薬を保持可能で、且つ、前記出入路に連通可能な保持流路を備え、
前記固定部材及び前記可撓性部材の密着面が互いに密着され、前記保持流路を囲む密着領域で前記保持流路を定め、前記保持流路を定める密着領域の一部を剥離可能として前記出入路に定め、
前記出入路を定める密着領域の一部を剥離可能に維持して開状態とし、前記出入路を定める密着領域の一部を互いに密着させたままに維持して閉状態として前記出入路を開閉する出入路開閉手段を備えることを特徴とする核酸検出カセットが提供される。
【0030】
また、この発明によれば、
試料に含まれる核酸を検出するために固定部材と可撓性部材との組合せにより流路が構成された核酸検出カセットであって、前記流路は、前記核酸検出カセットの外部と連通可能な開状態及び前記核酸検出カセットの外部に対して閉鎖可能な閉状態を選択可能な出入路を有し、その容積が可変で、且つ、試薬を保持可能な前記出入路に連通可能な保持流路を備え、前記固定部材及び前記可撓性部材の密着面が互いに密着され、前記保持流路を囲む密着領域で前記保持流路を定め、前記保持流路を定める密着領域の一部に互いに連接する第1及び第2の領域部を定め、この第1及び第2の領域部において、前記固定部材及び前記可撓性部材の密着を剥離可能として前記出入路に定める核酸検出カセットを具備し、
前記カセットの前記出入路の開口から前記第1の領域部の前記出入路に細管を差込み、前記第2領域部下の前記出入路を介して試料を前記保持流路内に注入する核酸検出カセット試料注入システムにおいて、
前記第1領域部を剥離可能に維持して開状態とし、前記第1領域部を互いに密着させたままに維持して閉状態として前記出入路を開閉するとともに、前記開状態での細管による試料の注入時に、前記第1領域部に相当する前記可撓性部材を前記固定部材に押付けて前記細管周囲に前記可撓性部材を密着させる細管密着用押圧手段と、
前記第2領域部を剥離可能に維持して開状態とし、前記第2領域部に相当する前記可撓性部材を前記固定部材に押付けて前記第2領域部を互いに密着させたままに維持して閉状態とする前記出入路を開閉するとともに、細管による試料の注入時に前記開状態となる出入路閉鎖用押圧手段と、
を備えることを特徴とする核酸検出カセット試料注入システムが提供される。
【0031】
更に、この発明によれば、上述した核酸検出カセット試料注入システムに使用される細管であって、この細管は、その外形が扁平な部分を有し、前記細管により試料を前記保持流路内に注入する際には、その扁平な部分がカセットの出入路に差込まれることにより、前記細管密着用押圧手段により前記細管の扁平な部分の周囲に前記可撓性部材を密着させることを特徴とする核酸検出カセット試料注入システムに使用される細管が提供される。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、核酸増幅及びその他の必要な処理と目標核酸の検出までを一貫して自動的に処理することができる核酸検出カセット及びその核酸検出カセット注入システムにおいて、液体のみならず固体や粘弾性体を核酸検出カセット内に注入でき、かつ核酸検出カセットを小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、この発明の一実施の形態に係る核酸検出カセット及びカセット注入システムを説明する。
【0034】
(第1実施形態)
(カセット全体)
〈基本構造〉
この発明の実施形態に係る核酸検出カセット及びカセット注入システムは、試薬や検体等を核酸検出カセットヘ注入若しくは排出する出入路部分、及び注入・排出工程以外は、基本的には、先願に係る特願2003-400878に開示される核酸検出カセットと同様の構成と操作方法が用いられる。
【0035】
図1は、本発明の第1実施形態に係る核酸検出カセット100を示す概観斜視図である。図2は、図1に示す核酸検出カセット100の各構成を分離して示した斜視図である。この核酸検出カセット100は、大別して固定基板1と、可撓性シート2と、カバープレート3からなる流路閉鎖型のカセットである。固定基板1は、固定部材により構成され、連続している流路を形成する。可撓性シート2は、固定基板1により形成された流路の上面を覆うもので、可撓性部材により構成されている。カバープレート3は、固定基板1との間に可撓性シート2を挟んで支持するとともに、可撓性シート2を局部的に押圧し変形させる押圧モジュール4を備えている。
【0036】
固定基板1は、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、POM、PMMA等の高分子材料、シリコン、ガラスやセラミックス等、或いはステンレス、アルミ等の金属により構成される。可撓性シート2は、シリコンゴム、ポリプロピレンゴム、ウレタンゴム等の高分子エラストマー等により構成される。カバープレート3は、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、POM、PMMA等の高分子材料或いは、シリコン、ステンレス、アルミ等の金属等により構成される。固定基板1、可撓性シート2及びカバープレート3が複数の部品から構成される場合には、それぞれ別の材料を選択しても良い。押圧モジュール4は、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、POM、PMMA等の高分子材料、シリコン、ガラスやセラミックス等、或いはステンレス、アルミ等の金属により構成される。
【0037】
〈ブロック構成〉
また、核酸検出カセット100は、その機能によりブロック化されている。図2に示す構造例は、上流側、即ち、図3の左側から順に、端部ブロック102と、2つの中間部ブロック101と、検出部ブロック106と、中間部ブロック101と、端部ブロック103から構成されている。検出部ブロック106は、特に核酸検出用のブロックであり、それ以外の端部ブロック102、103及び中間部ブロック101は、核酸検出以外の各種反応用のブロックである。これら各ブロックは、その表面に設けられた流路が連結されるように互いに一体的に接合されている。各ブロックは、連接されて結合されるように図示しない締結部材や締結部により連結されても良く、或いは、各ブロックを統合して一体的に形成されても良い。
【0038】
実用的には、固定基板1及び可撓性シート2並びにカバープレート3は、高分子材料を用いて夫々一体的に成形される。また、カバープレート3が金属材料よりなる場合には、1枚の板状部材から加工することも可能である。
【0039】
〈接合〉
固定基板1の上面には、溝が設けられている。この溝を覆うように可撓性シート2が配置され、溝以外の固定基板1の上面に可撓性シート2の下面が密着され、接着若しくは溶着されることにより、溝が閉鎖され、流路として機能する。即ち、溝の底面及び側面は、固定基板1により構成され、溝の上部は、可撓性シート2で覆われて流路に形成されている。端部ブロック102、103、中間部ブロック101上に設けられた溝は、保持流路111として機能し、検出部ブロック106上に設けられた溝は、退避流路131として機能する。
【0040】
保持流路111には、核酸増幅及び検出に使用される試薬或いは検体が保持される。退避流路131は、検出流路521内の気体や液体の一時的な退避場所として使用される。
【0041】
各保持流路111及び退避流路131の間は、互いに連結流路117により連結される。可撓性シート2の上面には、カバープレート3の下面が密着、接着若しくは溶着される。これにより、カバープレート3の上面に設けられた押圧モジュール4の押圧により、対応する押圧部分の可撓性シート2を撓ませ流路を閉じることができる。
【0042】
押圧モジュール4は、カバープレート3にねじ、ピン等の締結部品で締結されるか、はめ込み式に組立てられるか、若しくは接着、溶着が施される。押圧モジュール4とカバープレート3とが共に高分子材料で形成される場合には、押圧モジュール4とカバープレート3は一体的に成形することができる。
【0043】
〈流路主要寸法〉
上記図2及び図3に示される各構成の寸法例は、以下の通りである。
【0044】
保持流路111及び退避流路131の寸法は、深さ約0.5mm、隣接流路に向かう方向の長さ、即ち、流路開始端部と流路終了端部との間の長さ約10mm、隣接流路に向かう方向とは垂直な方向の長さ、即ち、流路幅約10mmで、標準保持容積が約48μlである。押圧ブロック4が外側に開く場合には、可撓性シート2は、外側に膨張することができ、例えば、標準保持容積の約2〜3倍の保持容積を維持することができる。尚、退避流路131の容積は、核酸検出動作開始前は、縮小された状態で維持され、検出動作開始時には、拡大可能であり、その拡大時と縮小時の流路容積の差は、検出流路内の充填物の体積以上に設定される。
【0045】
連結流路117の寸法は、深さ約0.25mm、隣接流路に向かう方向の長さ約2〜6mm、保持流路に向かう方向とは垂直な方向の長さ、即ち、流路幅約2mmで、流路容積がほぼゼロの全閉状態が設定可能である。
【0046】
また、可撓性シート2が撓む際に無理な内部応力等が発生せずに、かつ流路底面に対して確実に密着して流路容積がほぼゼロになるように設定され、流路断面の底面から側面にかけていずれも滑らかな曲線で構成されている。
【0047】
可撓性シート2の厚さは、0.2〜0.5mmで、ゴム硬度JIS−A20°〜30°の比較的硬度の高いものと、アスカーC20°〜40°硬度の低い柔らかいもののいずれも使用可能である。
【0048】
(検出部)
〈ブロック構成〉
検出部ブロック106の下面には、検出用の流路が設けられた検出流路シール520を挟んで核酸検出チップ500が固定化される。検出部ブロック106、検出流路シール520、核酸検出チップ500で挟まれた空間に検出流路521が形成される。また、検出部ブロック106には、その表面から裏面まで貫通して形成された2つの接点部開口151が設けられている。この接点部開口151に電気コネクタを挿入して露出した核酸検出チップ500の接点部表面に接触させることにより、チップ表面から電気信号を取り出すことができる。
【0049】
〈核酸検出方法〉
目標核酸の検出方法は、検出流路内部に固定化された、検出すべき目標核酸に対して相補的な塩基配列を有する一本鎖の核酸プローブを使用するものなら、周知の光学的方式、電気化学的方式等が使用できる。
【0050】
本実施形態では、基本的には登録第2573443号公報に開示される電気化学的な検出方法を適用している。光学的方式を使用する場合は、光透過性の材料を用いて核酸検出カセット100を作製することで対応できる。
【0051】
〈核酸検出チップ〉
検出センサーである核酸検出チップ500は、固定部材からなる基板が用いられる。より具体的には、特開2002−195997号公報に開示されるような核酸検出センサーを使用している。検出方法、使用材料、電極構造等は同じであるが、検出基板の構造だけが同公報の従来例として示される構造を採用している。
【0052】
核酸検出チップ500の構造は、ガラス基板上に特開2002−195997号公報に開示されるように、核酸固定化電極、対抗電極及び参照電極が形成されている。更に、ガラス基板上には、これらの電極と検査装置とで電気信号を入出力するための接点として、それぞれ核酸固定化電極用接点、対抗電極用接点、参照電極用接点が形成されている。
【0053】
また、核酸固定化電極上には、特開2002−195997号公報に開示される方法で、検出すべき目標核酸に対して相補的な塩基配列を有する一本鎖の核酸プローブが固定化されている。
【0054】
(出入路:機能分離型押圧プレート)
〈構成〉
図3は、本発明の閉鎖型カセット100の中間部ブロック101の各構成を分離して示した斜視図である。図1を参照して、試薬及び検体注入用の出入路部の構造について説明する。但し、中間部ブロック101に対応する部分の押圧モジュール4は、図3では省略していることに注意されたい。また、以下に説明するように、出入路部は、端部ブロック102及び端部ブロック103を利用して構成され、以下の全ての変形例並びに実施例についても同様に端部ブロック102及び端部ブロック103の一部として形成される。また、図3においては、可撓性シート2は、全体を示さず、中間ブロック101に対応する説明に必要とされる部分のみを図示し、同様にカバープレート3は、全体を示さず、中間ブロック101対応する説明に必要とされる部分のみを図示していることに注意されたい。
【0055】
図3に示されるように、固定部材である流路基板1には、保持流路111及び連結流路117に加えて、試薬及び検体注入用細管601用の差込ガイド121が形成されている。
【0056】
カバープレート3には、保持流路開口311、出入口開口312、連結流路開口317が形成されている。保持流路開口311、出入口開口312は、導入路開口313によってつながっていて1つの開口部分を形成している。
【0057】
カバープレート3は、上記の各開口部と連結流路に対向する部分以外は、図示していない締結手段によって、流路基板1に密着されていて、保持流路、連結流路からは液体、気体、固体、粘弾性体等の流路充填物が閉鎖型カセット100外部に漏れ出すことはない。
【0058】
中間部プレート301の上面には、図2及び図3に示されるように、中間ブロック101に対応する押圧モジュール4が取り付けられる。
【0059】
〈押圧プレート〉
出入路押圧手段は、出入路開閉手段を兼ね、出入路閉鎖用押圧手段である閉鎖プレート321と、細管密着用押圧手段である2つの部分に2分割されている密着プレート322からなり、機能別に別体のプレートで構成されている。閉鎖プレート321と密着プレート322は、カバープレート3と別体ではあるが、可撓性シート2に接する面は同じ平面上に配置される。
【0060】
閉鎖プレート321と密着プレート322は、ポリアセタール、ナイロン、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、POM、PMMA等の高分子材料、シリコン、ガラスやセラミックス等、或いはステンレス、アルミ等の金属により構成される。
【0061】
閉鎖プレート321と密着プレート322は、カバープレート3或いは流路基板1にねじ、ピン等の締結部品で移動可能に締結されるか、はめ込み式に組立てられる。
【0062】
閉鎖プレート321と密着プレート322と、カバープレート3とがプラスチック材料で形成される場合には、閉鎖プレート321と密着プレート322と、カバープレート3は、一体的に成形することができる。
【0063】
図3に示される構造においては、押圧ねじ(締結ねじ)331、332によって、閉鎖プレート321及び密着プレート322が流路基板1に対して移動可能に取り付けられている。この押圧ねじ331、332を締めることによって、閉鎖プレート321及び密着プレート322は、個別にそれぞれの下部にある可撓性シート2の領域部分を流路基板1に所定量押付けることができる。この押圧ねじ331、332を緩めることによって、それぞれの下部にある可撓性シート2の領域部分を流路基板1に押付けていた閉鎖プレート321及び密着プレート322の押付けを一定量だけ解放させることができる。押圧ねじ331、332を締結するためには、例えば、押圧ねじ331、332に対応する部分の可撓性シート2には、孔が形成され、流路基板1には、押圧ねじ331、332に螺合される雌ねじ部が形成されている。これらの孔及び雌ねじ部は、図3には図示していないことに注意されたい。
【0064】
〈注入用細管〉
注入用細管601としては、周知の可撓性であるプラスチック製の使い捨てのピペット先端チップが使用される。例えば、厚さ0.5〜1mm程度のシリコンゴム製の可撓性シート2に対しては、外径が0.5〜1mm程度の注入用細管601が使用できる。図1には、注入用細管601としてピペット先端チップのみが図示されていて、ピペット本体は、省略されている。
【0065】
また、この注入用細管601は、固定基板1と可撓性シート2との間に差し込むことができる直線針状の差し込み部601A及びこの差し込み部601Aよりも径が大きい基部601Bから構成される。この注入用細管601においては、差し込み部601Aと基部601Bとの間に段部(ステップ)が形成されていることから、固定基板1と可撓性シート2との間に差し込まれる際に基部601Bが差込ガイド12の壁面に当接されて差し込み部601Aだけが固定基板1と可撓性シート2との間に挿入される。従って、常に注入用細管601の所定長だけが差し込まれ、不必要に注入用細管601が差し込まれて可撓性シート2を破損するような事態を防止することができる。
【0066】
(液体注入)
〈液体注入工程〉
図3、図4(a-1)〜(c-2)及び図5(d-1)〜(f-2)を参照して、注入用細管601が用いられて検体若しくは試薬等の液体602が保持流路111へ注入される工程を説明する。図4(a-1),(b-1),(c-1)及び図5(d−1),(e-1),(f-1)は、注入用細管601が差し込まれる方向に沿った中間部ブロック101の断面を示している。ここで、注入用細管601は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿って差し込まれることから、これらの図は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿った中間部ブロック101の断面図でもある。また、図4(a-2),(b-2)及び図5(f-2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管601が差し込まれる方向に直交する密着プレート322の略中心付近における中間部ブロック101の断面図を示し、図4(c-2)及び図5(d−2),(e-2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管601が差し込まれる方向に直交する閉鎖プレート321の略中心付近、即ち、導入路開口313における中間部ブロック101の断面図を示している。
【0067】
注入用細管601は、次のような過程を経て差込ガイド121から挿入され、固定基板1と可撓性シート2との間の出入路に差し込まれ、その後、取り出される。
【0068】
始めに、図4(a―1)及び(a―2)に示すように、2つの密着プレート322の押圧ねじ332が所定量だけ緩められ、差込ガイド121に沿って注入用細管601が流路基板1と可撓性シート2の間に差込まれて出入路が形成される。このとき閉鎖プレート321は、可撓性シート2に押付けられているので、注入用細管601は、閉鎖プレート321の手前の位置までしか進入することができない。
【0069】
尚、保持流路111は、可撓性シート2を流路基板1に押付けられた状態が注入待機状態となっている。
【0070】
注入用細管周囲の密閉:
図4(b−1)及び(b−2)に示すように、押圧ねじ(締結ねじ)332が所定量だけ締められて2つの密着プレート322が可撓性シート2と注入用細管601との間隙を塞ぐように押付けられる。この密着プレート322の押し付けにより、注入時及び注入用細管引抜き時の、気体の巻き込み、液体の漏洩を防止することができる。
【0071】
導入路開放:
図4(c―1)及び(c−2)に示すように、閉鎖プレート321の押圧ねじ331が所定量だけ緩められると、注入用細管601の外径部分によって、閉鎖プレート321に押付けられていた可撓性シート2の一部領域が持ち上がり、可撓性シート2が流路基板1から乖離して出入路でもある注入用の導入路314が開放される。ここで、導入路314は、導入路開口313を定めるカバープレート3の両側によって抑えられていることから、導入路314は所定の大きさに規制される。可撓性シート2が例えば厚さ0.5〜1mm、ゴム硬度JIS−A30°の、シリコンゴム製で、注入用細管601が外径0.3〜0.5mmのポリプロピレン製である場合には、導入路314の間隙に相当する可撓性シート2と流路基板1間の間隙の高さは、保持流路111に接触する導入路314終点で略0〜0.1mmとすることができる。
【0072】
注入:
図4(d―1)及び(d−2)に示すように、注入用細管601から導入路314を介して保持流路111に液体602が注入される。このとき可撓性シート2と流路基板1との間の間隙高さは、液体602を注入する直前では、保持流路111に接触する導入路314の終点で間隙を略0に維持される。液体602の注入時には、この液体602の圧力によって導入路314の終点で可撓性シート2が流路基板1から乖離されて導入路314が確保される。ここで、注入開始前に押圧モジュール4が開放され、保持流路111内に進入した液体によって保持流路111に配置される可撓性シート2が流路基板1から乖離できるように可撓性シート2への押圧が部分的に解除される。
【0073】
可撓性シート2と注入用細管601の寸法、材質、硬度等に対して、閉鎖プレート321、密着プレート322、導入路開口313寸法、形状及び、押圧ねじ331、332による押圧力等の諸条件が最適化される。
【0074】
また、注入用細管601の先端部近傍での可撓性シート2と流路基板1間の間隙をできるだけ小さくすることにより、液体注入時に発生する僅かな気泡は、注入用細管601の近傍に捕獲され、保持流路111内に気泡が進入してしまうことを防ぐことができる。
【0075】
導入路閉鎖:
図4(e−1)及び(e−2)に示すように、液体602が所定量入ったところで閉鎖プレート321の押圧ねじ331が所定量締められ、閉鎖プレート321が可撓性シート2の一部領域に押付けられることにより可撓性シート2と流路基板1の間を密着させ導入路314が閉鎖され、保持流路111が密閉される。このとき、導入路314に微量の残留液体604が残留することがあるが、これは注入用細管601にて吸引することが可能である。
【0076】
注入用細管引抜き:
図4(f−1)及び(f−2)に示すように、2つの密着プレート322の押圧ねじ332が所定量だけ緩められ、注入用細管601が流路基板1と可撓性シート2の間から引き抜かれる。このとき、すでに導入路314は、閉鎖され、保持流路111が密閉されていることから、注入用細管601の引抜き動作で、保持流路111に気泡が進入することはない。この後、好ましくは、2つの密着プレート322の押圧ねじ332が所定量だけ締められ、流路基板1と可撓性シート2の密着が確実に確保される。
【0077】
以上のような液体注入工程を使用することにより、液体注入時及び、注入用細管601の引抜き動作時での、保持流路111への気泡が進入を防ぐことができる。
【0078】
〈排出工程〉
保持流路111内にすでに充填されている検体若しくは試薬等の液体、或いは気体を、注入用細管601を用いて閉鎖型カセット100から排出する工程の各ステップについて図4及び図5を参照して説明する。
【0079】
注入用細管挿入:
注入用細管601の挿入は、図4(a―1)及び(a―2)に示される注入工程と同様である。
【0080】
注入用細管周囲密閉:
注入用細管601の周囲の密閉は、図4(b―1)及び(b―2)に示される注入工程と同様である。
【0081】
導入路開放:
導入路314の開放は、図4(c―1)及び(c―2)に示される注入工程と同様である。
【0082】
排出:
図6(a)に示すように注入用細管601を用いて、保持流路111内の液体が吸引される。このとき、保持流路111内に充填されている液体または気体は、押圧モジュール4が可撓性シート2を流路基板1に押付けて保持流路111の容積を減少させることにより、液体または気体が強制的に排出される。
【0083】
導入路閉鎖:
導入路314の閉鎖は、図5(e―1)及び(e―2)に示される注入工程と同様である。
【0084】
注入用細管引抜き:
注入用細管601の引抜きは、図5(e―1)及び(e―2)に示される注入工程と同様である。
【0085】
したがって、排出工程においても、注入用細管601の近傍での可撓性シート2と流路基板1間の間隙は、極めて少なく、流路111内に新たに気体が進入してしまうことを防ぐことができる。
【0086】
排出工程は、以下のような場合にも適用される。
【0087】
注入待機状態のセッティング:
閉鎖型カセット100の組立て時には、保持流路111内の気体に初期的に気体が入ったままにある。従って、排出工程を用い、押圧モジュール4が可撓性シート2を流路基板1に押付けて、保持流路111内の初期気体を全て排出する。全気体排出後、導入路314が閉鎖され、保持流路111が密閉した状態では、押圧モジュール4の押圧を解放しても、可撓性シート2は、大気圧によって流路基板1に押付けられたままになっている。このことを利用して注入待機状態がセッティングされる。
【0088】
生成物採取:
検体からの核酸抽出、増幅、検出等の複数の処理を、一貫して1つの閉鎖型カセット100にて自動的に処理する場合に、各処理での生成物を検査し、各処理が適正に行なわれたかどうかを判別する場合がある。例えば、核酸増幅処理において目標とする濃度まで対象核酸が合成されているかどうかは、閉鎖型カセット100からサンプルを採取して検査する。この場合、保持流路111から、次の処理に影響を与えない程度に微量の生成物のサンプルを採取すると、一貫した自動検出処理工程を妨げることがない。このとき、保持流路111内に新たに気体が進入しないように排出工程が利用される。このようなサンプル採取は、例えば、各種試薬の配合や反応の温度条件を最適化する場合、或いは、全試薬重点済みの閉鎖型カセット100の抜き取り出荷検査等に使用される。
【0089】
また、閉鎖型カセット100を利用して、必要な核酸抽出、増幅の複数の処理を行なわせ、その生成物を別用途で閉鎖型カセット100外にて使用する場合は、生成物は、全量採取されることになる。この場合、閉鎖型カセット100は、自動核酸検出装置用の閉鎖型カセットとしてではなく汎用の反応容器として使用される。このような全量採取は、例えば、閉鎖型カセット100の形状や材料に対して、各種試薬の配合や反応の温度条件を最適化する場合に、最適化を効率よく行なうために使用される。
【0090】
気泡の強制排出:
注入工程によって検体若しくは試薬等の液体を保持流路111内注入する際に、上述した閉鎖プレート321及び密着プレート322を用いることによって、通常保持流路111に気泡が進入することはない。しかしながら、すでに注入してある液体に溶け込んでいる気体が、減圧、過加熱等で気泡となって出現する場合、或いは、注入しようとする液体自体に気泡がすでに存在している場合は、保持流路111に気泡が出現する。このような場合には、図6(b)に示すように、閉鎖型カセット100を差込ガイド121が上方になるように立てて配置されることから、保持流路111内の気泡603が導入路314に集められ、注入用細管601によって気泡及び気泡を含んだ液体部分602が吸引され、気泡を強制排出することができる。
【0091】
〈検体注入〉
閉鎖型カセット100の主な使用方法としては、検体を流路111内へ注入するだけで、その後は自動的に核酸検出までを行なうことにある。この場合血液等である液体の検体615は、図7(a)に示すように、予め核酸抽出、増幅等の全ての試薬614が出荷時に充填されている保持流路111に注入されている。このような検体注入時においても、新たに注入する検体の量は、例えば試薬47μlに対して検体血液1μl程度なので、液体注入工程が使用でき、注入用細管601の近傍での可撓性シート2と流路基板1間の間隙は、極めて少ないので、流路111内への新たな気体の進入、或いは、流路111内のすでに保持されている試薬である液体の漏出を防ぐことができる。
【0092】
また、可撓性シート2としてゴム硬度JIS−A20°〜30°程度のシリコンゴムを使用した場合には、図7(b)に示すように、流路111の標準保持容積約48μlを越えて可撓性シート2が閉鎖型カセット100の外側に膨らむことができるので、注入される検体615の量と充填済み試薬614との総量が標準保持容積約48μlを越えて60μl程度まで達しても、液体注入工程を使用することができる。この場合、本発明で開示する閉鎖プレート321と、密着プレート322を用いた、閉鎖型カセット100の出入路封鎖機構においては、閉鎖プレート321と、密着プレート322の押付け圧力を強めることによって、流路111内に保持されている液体の検体及び試薬の検体注入時での漏出を防ぐことができる。
【0093】
〈小型化が容易〉
以上のように、閉鎖プレート321と、2分割された密着プレート322は、注入用細管601の先端近傍及びその周囲での可撓性シート2と流路基板1間の間隙をふさぐように押付けることができ、液体注入・排出時及び、注入用細管601の引抜き動作時での、保持流路111への気泡の進入と液体の漏洩を防ぐことができる。これにより、従来閉鎖型カセット100へ液体を注入する際に使用されていた自己封止ポートは不要になる。
【0094】
また、閉鎖プレート321と、密着プレート322の平面の大きさは、保持流路111とほぼ同等なスケールかより小さくでき、かつその厚みもカバープレート3とほぼ同等なスケールかより小さくでき、0.1〜0.5mm程度である。よって、閉鎖プレート321と、2分割された密着プレート322を用いることにより、閉鎖型カセット100の小型化が容易になる。
【0095】
(固体注入)
〈固体注入用細管〉
固体や粘弾性体の保持流路111への注入には、図8及び図9に示されるような固体注入用細管610を用いる。固体注入用細管610は、外径0.5mm、内径0.3mm程度のシリンダ611と、外径0.3mm程度のピストン612からなり、シリンダ611内に固体や粘弾性体の検体を保持する。固体注入用細管610は、ステンレス等の金属材料若しくはポリプロピレン、ナイロン、ポリアセタール等のプラスチック材料からなる。液体のようにピストンから離れた位置ある先端部への圧力伝播がないので、固体或いは粘弾性体の検体は、始めにシリンダ611内に保持され、注入時にピストン612にて押し出され、直接保持流路111内に投入される。
【0096】
〈固体注入工程〉
予め試薬が所定量注入されている保持流路111へ、固体或いは粘弾性体である毛根、皮膚、口腔粘膜、植物種子や葉等の検体、若しくはこれらの生体資料が付着している可能性がある試験片を注入する工程の各ステップを、図8及び図9を参照して説明する。図8(a-1),(b-1),(c-1)及び図9(d−1),(e-1),(f-1)は、注入用細管610が差し込まれる方向に沿った中間部ブロック101の断面を示している。ここで、注入用細管610は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿って差し込まれることから、これらの図は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿った中間部ブロック101の断面図でもある。また、図8(a-2),(b-2)及び図9(f-2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管610が差し込まれる方向に直交する密着プレート322の略中心付近における中間部ブロック101の断面図を示し、図8(c-2)及び図9(d−2),(e-2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管610が差し込まれる方向に直交する閉鎖プレート321の略中心付近、即ち、導入路開口313における中間部ブロック101の断面図を示している。
【0097】
固体注入用細管挿入:
図8(a−1)及び(b−1)に示すように、2つの密着プレート322の押圧ねじ332が所定量だけ緩められ、注入用細管610が差込ガイド121に沿って固体注入用細管610が流路基板1と可撓性シート2の間に差込まれる。このとき閉鎖プレート321が押付けられているので、固体注入用細管610は、閉鎖プレート321の手前の位置までしか進入できない。このとき保持流路111には、予め液体の試薬614が所定量注入されている。
【0098】
固体注入用細管周囲密閉:
図8(b−1)及び(b−2)に示すように、2つの密着プレート322は、押圧ねじ332が所定量だけ締められて可撓性シート2と注入用細管601の間隙をふさぐように可撓性シート2に押付けられる。これにより、注入時及び固体注入用細管610の引抜き時における気体の巻き込み、液体の漏洩を防止することができる。ただし、密着プレート322の押付け圧力は、固体注入用細管610が移動可能な範囲に留められる。
【0099】
導入路開放:
図8(c−1)及び(c−2)に示すように、閉鎖プレート321の押圧ねじ331が所定量だけ緩められ、注入用細管601の外径部分によって、閉鎖プレート321が押付けられていた可撓性シート2の一部が持ち上げられ、可撓性シート2が流路基板1から乖離され、注入用の導入路314が開放される。但し、導入路開口313の両側のカバープレート3が可撓性シート2を抑えていることから、導入路314は、所定の大きさに規制される。この導入路314に沿って、固体注入用細管610が保持流路111の端部にまで押込まれる。
【0100】
固体注入:
図9(d−1)及び(d−2)に示すように、固体注入用細管610のピストン612が押され、シリンダ611から固体の検体613が直接保持流路111の液体の試薬614内に投入される。このとき閉鎖型カセット100は、差込ガイド121が上方になるように立てて配置されていることから、気泡が保持流路111の液体中に発生することはない。
【0101】
また、2つの密着プレート322は、押圧ねじ332が所定量だけ締められることによって、可撓性シート2と注入用細管601の間隙をふさぐように押付けられることから、過剰な気体の進入や、固体の検体613の投入時の液体の試薬614の飛散等による漏洩を防止することができる。
【0102】
導入路閉鎖:
図9(e−1)及び(e−2)に示すように、固体の検体613が投入された後、固体注入用細管610は、閉鎖プレート321の手前の位置まで引き戻される。その後、閉鎖プレート321の押圧ねじ331が所定量だけ締められ、閉鎖プレート321を押付けることにより可撓性シート2と流路基板1の間が密着され、導入路314が閉鎖されて保持流路111が密閉される。
【0103】
注入用細管引抜き:
注入用細管引抜きは、図7(f−1)及び(f−2)に示すように図5(f−1)及び(f−2)に示す液体注入工程と同様に引き出される。このとき、予め充填してあった液体の試薬614より、固体の検体613の比重の方が大きい場合は、図7(f)に示すように、固体の検体613は、保持流路111の下部に沈降する。
【0104】
以上固体注入工程について説明したが、粘弾性体の検体の注入についても固体と同様に注入することができる。また、この固体注入工程と同じ方法で、液体を注入することも可能で、その場合は固体注入用細管610の代わりに液体用の注入用細管601を使用すればよい。
【0105】
〈固体の注入が容易〉
このように、流路基板1と可撓性シート2の間を乖離させることにより、固体注入用細管610を直線的に保持流路111の端部まで侵入させることができ、予め試薬が所定量注入されている閉鎖型カセット100へ、固体或いは粘弾性体の検体を容易に注入することができる。
【0106】
更に、乖離した流路基板1と可撓性シート2の間を再び密着させることにより保持流路を閉鎖ことができる。
【0107】
このような固体の注入工程においては、液体の注入工程とほぼ同様に、閉鎖プレート321と、2分割された密着プレート322の押付け動作を利用して、液体注入・排出時及び注入用細管601の引抜き動作時において、保持流路111へ気泡が進入し、或いは、液体が漏洩することを防止することができる。
【0108】
(変形例1:一体型押圧プレート)
〈一体型押圧プレート〉
図10は、一体型押圧プレート341を使用した実施例において、閉鎖型カセット100の中間部ブロック101の各構成を分離して示す斜視図である。説明のため、中間ブロック101に対応する部分のみが図示されている。
【0109】
図10に示される中間ブロック101においては、出入路押圧手段として、図3に示す閉鎖プレート321及び2分割された密着プレート322に代えて、図10に示されるように一体的に作られている一体型押圧プレート341を用いられている。一体型押圧プレート341は、カバープレート3と別体に設けられるが、可撓性シート2に接する面と同一平面上に配置される。
【0110】
以下、図10を参照して、一体型押圧プレート341について説明する。
【0111】
一体型押圧プレート341は、カバープレート3に形成された出入口開口312及び導入路開口313に配置される。一体型押圧プレート341は、差込ガイド121に対向する部位に密着部開口342が開口している。一体型押圧プレート341の密着部開口342の開口が細管密着用押圧手段に相当し、密着部開口342以外の導入路開口313に配置される一体型押圧プレート341の部分が出入路閉鎖用押圧手段に相当している。
【0112】
一体型押圧プレート341は、例えば厚さ0.1〜0.3mm程度のステンレス板で作ることができる。この場合、押圧ねじ344と一体型押圧プレート341の間に、フッ素樹脂等からなるスライドワッシャ343を挟むことが必要で、これによって、一体型押圧プレート341は、押圧ねじ344による所定の押圧下において弾性変形して撓むことができる。一体型押圧プレート341の材料として、ポリアセタール、ナイロン等の摺動性が良く、且つ、弾性変形し易い材料を使うことも可能である。
【0113】
〈注入工程〉
液体若しくは固体の試薬等や検体を、一体型押圧プレート341と注入用細管601を用いて保持流路111へ注入する工程の各ステップを、図11(a)、(b)及び(c)を参照して説明する。図11(a)、(b)及び(c)は、一体型押圧プレート341を使用した場合の閉鎖型カセット100の中間部ブロック101を示した斜視図で、注入用細管601が透視できるように図示してある。
【0114】
一体型押圧プレート341を用いた場合においても、注入用細管601として固体注入用細管610を使用すれば、固体或いは粘弾性体の検体を同様の工程で保持流路111に注入することができる。
【0115】
注入用細管挿入及び周囲密閉:
図11(a)に示すように、差込ガイド121及び密着部開口342に沿って注入用細管601が流路基板1と可撓性シート2の間に差込まれ、注入用細管601を密着部開口342のエッジ部分の手前まで進入させる。このとき一体型押圧プレート341は、押圧ねじ344によって所定量だけ締め付けられていることから、注入用細管601の周囲は、密着部開口342の外枠を形成する一体型押圧プレート341によって可撓性シート2と注入用細管601の間隙をふさぐように押付けられる。また、注入用細管601の外径部分が一体型押圧プレート341下の可撓性シート2が持ち上げられることが抑制さえ、導入路314が閉鎖されたままに保持流路111が密閉される。これにより、注入用細管差込み時及び注入用細管引抜き時において、気体の巻き込み及び液体の漏洩を防止することができる。
【0116】
導入路開放及び注入:
図11(b)に示すように、注入用細管601が密着部開口342のエッジ部分を越えて、保持流路111方向に進入される。このとき注入用細管601の外径部分によって、一体型押圧プレート341下の可撓性シート2の一部が持ち上げられ、更に、一体型押圧プレート341の中央部分が閉鎖型カセット100の外側方向に撓むこととなる。即ち、一体型押圧プレート341は、図10に示す押圧ねじ344によって移動不能に固定されず、スライドワッシャ343を介して締結されていることから、図11(b)に示すようにその中央部分が外側に撓み変形される。一体型押圧プレート341の中央部分が外側に撓むことにより、可撓性シート2を押さえつけていた圧力は弱まり、注入用細管601をさらに進入させることができる。従って、可撓性シート2が流路基板1から乖離され、注入用の導入路314が開放される。導入路314が開放した後、注入用細管601から導入路314を介して保持流路111に試薬や検体が注入される。必要に応じて、注入用細管601若しくは固体注入用細管610は、導入路314を通過して保持流路111の端部までをさらに進入させ、保持流路111に液体若しくは個体の検体等を注入することができる。
【0117】
導入路閉鎖及び注入用細管引抜き:
図11(c)に示すように、試薬や検体を注入した後、注入用細管601が密着部開口342のエッジ部分の手前の位置まで引き戻される。このとき、一体型押圧プレート341の外側に撓んだ中央部分は、内側からの圧力がなくなることから、元の平坦な形状に復帰される。従って、一体型押圧プレート341下の可撓性シート2及び流路基板1間は密着され、導入路314が閉鎖され、保持流路111は密閉される。
【0118】
次に、注入用細管601が流路基板1と可撓性シート2との間から引抜かれる。このとき、すでに導入路314は、閉鎖され、保持流路111を密閉しているので、注入用細管601の引抜き動作で、保持流路111に気泡が進入することはない。
【0119】
〈単純な操作〉
一体型押圧プレート341の中央部分が撓み変形可能に保持される場合には、閉鎖プレート321及び2分割された密着プレート322を使用する構造のようにねじの締め付け・緩め操作をすることなく、注入用細管601の出し入れだけのような単純な操作で、保持流路111への気泡の進入並びに液体の漏洩を防止することができ、固体或いは粘弾性体の検体の保持流路111への容易な注入を実現することができる。
【0120】
尚、図11(a)、(b)及び(c)に示される斜視図においては、注入用細管601の挿入及び引き抜きを理解容易とするために、可撓性シート2下に配置され或いは押圧プレート341及び可撓性シート2下に配置される注入用細管601の先端部を透視して示していることに注意されたい。
【0121】
(変形例2:押圧用弾性体)
〈押圧用弾性体〉
出入路押圧手段として、図12に示すような押圧用弾性体351を用いることができる。図12は、押圧用弾性体351を使用した閉鎖型カセット100の中間部ブロック101の各構成を分離して示した斜視図である。説明の便宜のために、図12には、中間ブロック101に対応する部分のみを図示している。図12を参照して、押圧用弾性体351について説明する。
【0122】
押圧用弾性体351は、カバープレート3に形成された導入路開口313に配置され、密着部開口352は、導入路開口313と同一の開口幅を有している。押圧用弾性体351は、可撓性シート2と同様に、シリコンゴム、ポリプロピレンゴム、ウレタンゴム等の高分子エラストマー等の弾性材料により作られている。押圧用弾性体351は、例えば、厚さ0.3〜2mm程度のシリコンゴムの場合、ゴム硬度JIS−A40°〜60°で可撓性シート2に比較して硬度の高いものを使用することができる。押圧用弾性体351は、その端部がカバープレート3に接着或いは締結され、可撓性シート2に密着されている。押圧用弾性体351は、可撓性シート2に接着され、或いは、可撓性シート2と一体的に成型しても良い。図12に示される構造では、押圧用弾性体351の端部がカバープレート3に接着されている。
【0123】
細管密着用押圧手段は、注入用細管601の周囲と可撓性シート2との間隙を塞ぐように可撓性シート2を注入用細管601及び流路基板1を押付ける機能が求められている。また、出入路閉鎖用押圧手段は、固着していない可撓性シート2と流路基板1間を導入路314として、乖離と密着とを制御可能する機能を求められている。従って、可撓性シート2は、差込ガイド121付近では柔軟性が求められ、導入路開口313付近ではある程度の硬さが必要とされる。しかし、この2つの要求を1つの可撓性シート2で満たすことができないことから、細管密着用押圧手段と出入路閉鎖用押圧手段によって、柔軟性と硬さの差を実現している。他方、可撓性シート2は、保持流路111がその容積を可変にするために、柔軟性が求められている。従って、導入路開口313付近の可撓性シート2が十分な硬さを持てば、本発明で開示する出入路閉鎖用押圧手段となりうる。そこで、押圧用弾性体351は、導入路開口313において可撓性シート2と接着若しくは密着され、或いは、一体成型されている。さらに、密着部開口352は、導入路開口313同じ開口幅を有し、一体型押圧プレート341における、密着部開口342の開口と同じ機能を有し、この密着部開口352が細管密着用押圧手段となっている。
【0124】
〈注入工程〉
液体若しくは固体の試薬等や検体を、図12に示した押圧用弾性体351と注入用細管601を用いて保持流路111へ注入する工程の各ステップを、図13(a)、(b)、(c)を参照して説明する。図13は、一体型押圧用弾性体351を使用した構造を備える閉鎖型カセット100の中間部ブロック101を示す斜視図で、図11と同様に注入用細管601を透視できるように図示している。
【0125】
基本的な動作は、図11に示される一体型押圧プレート341を使用した構造を備える閉鎖型カセット100の中間部ブロック101と同様であり、注入用細管601として固体注入用細管610を使用すれば、固体或いは粘弾性体の検体を同様の工程で保持流路111に注入することができる。
【0126】
注入用細管挿入及び周囲密閉:
図13(a)に示すように、差込ガイド121に沿って注入用細管601が流路基板1と可撓性シート2との間に差込まれ、押圧用弾性体351によって押付けられている可撓性シート2下の部位の手前まで進入される。このとき押圧用弾性体531は、所定の剛性を持つので、注入用細管601の外径部分によって、押圧用弾性体531の可撓性シート2が持ち上がるのを抑制し、導入路314は、閉鎖されたままで保持流路111は、密閉されている。また、注入用細管601の周囲は、導入路開口313と同じ開口幅を有している密着部開口352によって、で可撓性シート2と注入用細管601の間隙をふさぐように押付けられる。従って、注入用細管差込み時及び注入用細管引抜き時の、気体の巻き込み、液体の漏洩を防止することができる。
【0127】
導入路開放及び注入:
図13(b)に示すように、注入用細管601が押圧用弾性体351が配置されている部位を越えて保持流路111方向に進入される。このとき注入用細管601の外径部分によって、押圧用弾性体351より押付けられている可撓性シート2が持ち上げられ、同時に押圧用弾性体351が閉鎖型カセット100の外側方向に撓む。注入用細管601がさらに進入されることにより、可撓性シート2が流路基板1から乖離し、注入用の導入路314が開放される。
【0128】
導入路314が開放した後、注入用細管601から導入路314を通して保持流路111に試薬や検体を注入される。必要に応じて、注入用細管601若しくは固体注入用細管610が導入路314を通過して保持流路111の端部までさらに進入され、保持流路111に液体若しくは個体の検体等を注入しても良い。
【0129】
導入路閉鎖及び注入用細管引抜き:
図13(c)に示すように、試薬や検体を注入した後、押圧用弾性体351が配置されている部位の手前の位置まで注入用細管601が引き戻される。このとき、押圧用弾性体351の外側に撓んだ中央部分は、内側からに圧力がなくなるので元に戻される。同時に押圧用弾性体351下部の可撓性シート2と流路基板1の間は密着し、導入路314が閉鎖され、保持流路111は、密閉される。
【0130】
次に、注入用細管601が流路基板1と可撓性シート2の間から引き抜かれる。このとき、すでに導入路314は、閉鎖され保持流路111を密閉しているので、注入用細管601の引抜き動作によって保持流路111に気泡が進入することはない。
【0131】
〈簡便構造と単純操作〉
図13に示される押圧用弾性体351を利用すれば、さらに簡便な構造で、かつ注入用細管601の出し入れだけの単純な操作で、保持流路111への気泡の進入及び液体の漏洩を防止することができ、固体或いは粘弾性体の検体の保持流路111への容易な注入を実現することができる。
【0132】
(第2実施形態)
(非貫通型スリット)
〈スリット形状〉
図14は、本発明の第2実施形態に係る閉鎖型カセット100の中間部ブロック101の各構成を分離して示す斜視図である。
【0133】
図14に示す中間部ブロック101は、可撓性シート2の形状を除いて図1に示す中間部ブロック101の構造と実質的に同一の構造を備えている。可撓性シート2は、差込ガイド121に対向する部分に非貫通型スリット201が設けられている。図14においては、この非貫通型スリット201が透視できるように図示している。可撓性シート2が、例えば、シリコンゴムからなる場合には、シリコンゴムの厚さを0.5mm程度とすると、厚さ方向のスリットの深さが0.3mm程度、差込ガイド121から保持流路111へ向かう方向のスリット長さが2〜5mm程度に形成される。また、このスリット201は、その終点部に近づくにつれて、その深さを減じている形状に形成されている。スリット201の切り込みの幅はできるだけ小さいことが望ましいので、シリコンゴムを刃物でカットして非貫通型スリット201を形成し、スリットの切り込みの幅はゼロになっている。
【0134】
シリコンゴムの厚さを3mm以上にすれば、周知の自己封止ポートに用いられているような貫通孔を形成することも可能だが、可撓性シート2には、保持流路111を全閉するまで弾性変形しなければならないという条件、さらに反応のために可撓性シート2を介しての加熱・冷却を行なわなければならないとう2つの条件を満たす必要があり、厚さ1mm以上のシリコンゴムを使用することは適切ではない。
【0135】
〈注入工程〉
図15を参照して非貫通型スリット201及び注入用細管601を用いて検体若しくは試薬等の液体を保持流路111へ注入する工程の各ステップを説明する。図15(a-1),(b-1),(c-1)及び図16(d−1),(e-1)は、注入用細管601が差し込まれる方向に沿った中間部ブロック101の断面を示している。ここで、注入用細管601は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿って差し込まれることから、これらの図は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿った中間部ブロック101の断面図でもある。また、図15(a-2),(b-2)及び図15(e-2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管601が差し込まれる方向に直交する密着プレート322の略中心付近における中間部ブロック101の断面図を示し、図15(c-2)及び図15(d−2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管601が差し込まれる方向に直交する閉鎖プレート321の略中心付近、即ち、導入路開口313における中間部ブロック101の断面図を示している。
【0136】
注入工程では、閉鎖プレート321及び2分割された密着プレート322が利用されてしているので、第1実施形態に係る図4を参照する工程と同じであるが、非貫通型スリット201を使用しているので、注入用細管601の状態が異なっている。以下の注入工程の各ステップの説明においては、図4を参照する工程と同一箇所の説明は省略する。
【0137】
注入用細管601として固体注入用細管610を使用すれば、固体或いは粘弾性体の検体を同様の工程で保持流路111に注入することができる。
【0138】
注入用細管挿入前の全閉状態:
図15(a―1)及び(a−2)は、注入用細管601を非貫通型スリット201に差込む前の状態を示している。非貫通型スリット201は、左右が2分割された密着プレート322で規制されていることから、完全に閉じられている。また、導入路314も閉鎖プレート321で押付けられているので閉鎖状態にあり、保持流路111は、密閉されている。
【0139】
注入用細管挿入及び周囲密閉:
図15(b―1)及び(b−2)に示すように、注入用細管601が非貫通型スリット201に差込まれ、非貫通型スリット201を完全に通過して閉鎖プレート321の手前まで進入される。このとき、図15(b−2)に示されるように、注入用細管601の周囲は、非貫通型スリット201がない状態を示す図4(b―2)と比較して、ほぼ完全に可撓性シート2に密着されている。従って、非貫通型スリット201は、それが設けられない場合比較して保持流路111への気泡の進入及び液体の漏洩をより確実に防止することができる。
【0140】
また、導入路314の可撓性シート2及び流路基板1は、互いに密着したままの閉鎖状態に維持される。
【0141】
導入路開放及び注入:
図15(c−1)、(c−2)に示すように、閉鎖プレート321の押圧を弱めると可撓性シート2が流路基板1から僅かに乖離され、注入用の導入路314が開放される。導入路314が開放された後、液体が注入される。
【0142】
導入路閉鎖:
図16(d―1)、(d−2)に示すように、液体602が保持流路111に所定量入ったところで、閉鎖プレート321で押付けることにより可撓性シート2が流路基板1に密着されて導入路314が閉鎖され、保持流路111が密閉される。
【0143】
注入用細管引抜き:
図13(e−1)、(e−2)に示すように、注入用細管601が流路基板1と可撓性シート2の間から引き抜かれる。非貫通型スリット201の部分は、注入用細管601からの圧力がなくなるの元に戻されることとなる。
【0144】
〈漏洩防止の向上〉
このように非貫通型スリット201を用いると、注入用細管601の周囲は、ほぼ完全に可撓性シート2と密着しているので、液体注入・排出時及び注入用細管601の引抜き動作時において、保持流路111への気泡の進入及び液体の漏洩をより確実に防止することができる。従って、閉鎖型カセット100へ液体を注入する際に使用されていた自己封止ポートは、不要になり、閉鎖型カセット100の小型化が実現可能となる。
【0145】
(変形例:貫通型スリット)
〈スリット形状〉
図17は、この発明の第2実施形態の変形例1に係る閉鎖型カセット100の中間部ブロック101の各構成を分離して示した斜視図である。
【0146】
可撓性シート2には、差込ガイド121に対向する部分から保持流路111の単部までの延長されている貫通型スリット202が形成されている。図17においては、この貫通型スリット202が透視できるように図示してある。それ以外のスリットの構造・製法は、図14を参照して説明した非貫通型スリット201と実質的に同一である。
【0147】
〈押圧ブリッジ〉
カバープレート3には、保持流路開口311、出入口開口312に加えて、押圧逃がし開口363が設けられ、出入路閉鎖用押圧手段である閉鎖ブリッジ361と細管密着用押圧手段である密着ブリッジ362とで上記3つの開口部が分離して形成されている。例えば、可撓性シート2が厚さ0.5〜1mm程度、ゴム硬度JIS−A20°〜30°シリコンゴムで作られている場合には、閉鎖ブリッジ361と密着ブリッジ362の幅は、1〜4mm程度、押圧逃がし開口363幅は、1〜4mm程度である。密着ブリッジ362の外側エッジは、差込ガイド121の窪みが終わる部位の近傍に位置している。
【0148】
〈注入工程〉
図18、図19及び図20を参照して、検体若しくは試薬等の液体が貫通型スリット202及び注入用細管601を用いて保持流路111へ注入する工程の各ステップを説明する。
【0149】
図18(a-1),(b-1),(c-1)及び図19(d−1),(e-1)は、注入用細管601が差し込まれる方向に沿った中間部ブロック101の断面を示している。ここで、注入用細管601は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿って差し込まれることから、これらの図は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿った中間部ブロック101の断面図でもある。また、図18(a-2),(b-2)及び図19(e-2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管601が差し込まれる方向に直交する密着プレート322の略中心付近における中間部ブロック101の断面図を示し、図18(c-2)及び図19(d−2),(e-2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管601が差し込まれる方向に直交する閉鎖プレート321の略中心付近、即ち、導入路開口313における中間部ブロック101の断面図を示している。
【0150】
注入工程は、注入用細管601を差込む操作だけなので、図12及び図13に示す第1実施形態の変形例2に係る押圧用弾性体351を使用する場合と実質的に同一であるが、貫通型スリット202を使用しているので、注入用細管601の状態が異なっている。注入用細管601として固体注入用細管610を使用すれば、固体或いは粘弾性体の検体を同様の工程で保持流路111に注入することができる。
【0151】
注入用細管挿入前の全閉状態:
図18(a―1)、(a−2)は、注入用細管601を貫通型スリット202に差込む前の状態を示している。貫通型スリット202は、閉鎖ブリッジ361及び密着ブリッジ362で押付けられていることから、完全に閉じられている。更に、導入路314も閉鎖ブリッジ361が可撓性シート2に押付けられていることから閉鎖状態にあり、保持流路111は、密閉されている。
【0152】
注入用細管挿入及び周囲密閉:
図18(b―1)、(b−2)に示すように、注入用細管601が貫通型スリット202に差込まれ、押圧逃がし開口363の中間まで進入される。注入用細管601は、密着ブリッジ362で押付けられている貫通型スリット202の部分をこじ開けて流路基板1と可撓性シート2の間に差込まれる。こじ開けられた部分に対応して、可撓性シート2の一部が押圧逃がし開口363及び出入口開口312内に膨らむこととなる。図18(b−2)に示されるように、注入用細管601の周囲は、貫通型スリット202がない状態を示す図4(b−2)と比較して、ほぼ完全に可撓性シート2に密着されている。従って、貫通型スリット202は、貫通型スリット202がない構造に比べて、保持流路111への気泡の進入及び液体の漏洩をより確実に防止することができる。また、閉鎖ブリッジ361によって導入路314の可撓性シート2が流路基板1に押付けられたままに維持され、閉鎖状態が維持される。
【0153】
導入路開放及び注入:
図18(c―1)、(c−2)に示すように、注入用細管601がさらに進入され、閉鎖ブリッジ361に押圧されている可撓性シート2下の部分に形成される導入路314を通過させ、保持流路111の端部まで注入用細管601が進入させられる。その後、液体が保持流路111に注入される。図20は、液体が保持流路111に注入される状態における斜視図を示し、注入用細管601が透視できるように示されている。注入用細管601は、閉鎖ブリッジ361で押付けられている貫通型スリット202の部分をこじ開けて、保持流路111の端部まで達している。こじ開けられた部分に対応する可撓性シート2の一部が押圧逃がし開口363及び保持流路開口311に膨らんでいる。
【0154】
図18(c−2)に示されるように、閉鎖ブリッジ361の部位においても注入用細管601の周囲は、略完全に可撓性シート2に密着している。従って、貫通型スリット202は、スリット202がない場合に比べて保持流路111への気泡の進入及び液体の漏洩をより確実に防止することができる。
【0155】
導入路閉鎖:
図19(d―1)、(d−2)に示すように、試薬や検体を注入した後、注入用細管601が押圧逃がし開口363の中間まで引き戻される。このとき、閉鎖ブリッジ361で押付けられている貫通型スリット202の部分は、注入用細管601からの圧力がなくなるので元に戻される。同時に閉鎖ブリッジ361で押付けられるので、可撓性シート2が流路基板1に密着し、導入路314が閉鎖され、保持流路111は、密閉される。
【0156】
注入用細管引抜き:
図19(e―1)、(e−2)に示すように、注入用細管601が貫通型スリット202から完全に引き抜かれる。このとき、密着ブリッジ362で押付けられている貫通型スリット202の部分は、注入用細管601からの圧力がなくなることから元に戻される。同時に密着ブリッジ362によって可撓性シート2が流路基板1に押付けられるので、可撓性シート2が流路基板1に密着される。
【0157】
〈簡易構成による漏洩防止の向上〉
このように貫通型スリット202を用いると、カバープレート3の一部が細管密着用押圧手段及び出入路閉鎖用押圧手段となり構造が簡素化される。さらに、液体及び固体或いは粘弾性体の注入操作が単純な注入用細管601の出し入れだけで済むこととなる。液体注入・排出時及び、注入用細管601の引抜き動作時においても、注入用細管601の周囲は、貫通型スリット202の全域に渡ってほぼ完全に可撓性シート2に密着されているので、保持流路111への気泡の進入及び液体の漏洩を防止する効果をさらに向上することができる。従って、従来閉鎖型カセット100へ液体を注入する際に使用されていた自己封止ポートは不要になり、閉鎖型カセット100の小型化を実現することができる。
【0158】
(第3実施形態)
(扁平型注入用細管)
〈構造・製法〉
図17は、本発明の第3実施形態に係る扁平型注入用細管620の概観を示す斜視図である。
【0159】
扁平型注入用細管620は、周知の可撓性であるプラスチック製の使い捨てピペット先端チップの外形が円形であるのに対し、円形がつぶれた略楕円形状に形成されている。扁平型注入用細管620は、一例として、縦横比は1:2〜5程度であり、例えば、高さ0.2mm×幅0.7mm程度の円形がつぶれた形状に形成される。
【0160】
図21に示すような外形に適合する金型を作製し、ポロプロピレン、ポリカーボネイト等のプラスチック材料を周知の射出成型法等で加工して、目的とする扁平型注入用細管620を製造することができる。または、周知の外形が円形で可撓性を有するプラスチック製の使い捨てピペット先端チップを、外側から押しつぶして、目的とする扁平型の注入用細管620を製作することができる。
【0161】
扁平型注入用細管620をシリンダとし、内部にピストンを備えれば、固体或いは粘弾性体の検体が注入可能な、扁平型の固体注入用細管を得ることができる。
【0162】
〈押圧カンチレバー〉
図22は、本発明の第3実施形態に係る扁平型注入用細管620用いる閉鎖型カセット100の中間部ブロック101の各構成を分離して示した斜視図である。
【0163】
可撓性シート2には、スリットは設けられず、第1実施形態に用いられているのもと同一のものが用いられる。カバープレート3には、保持流路開口311、出入口開口312のほかに、押圧逃がし開口375が設けられている。上記3つの開口部の間には、出入路閉鎖用押圧手段である閉鎖カンチレバー371及び細管密着用押圧手段である密着カンチレバー372が形成されている。閉鎖カンチレバー371間には、閉鎖部スリット373が、密着カンチレバー372間には、密着部スリット374が設けられている。
【0164】
可撓性シート2が例えば、厚さ0.5〜1mm程度、ゴム硬度JIS−A20°〜30°シリコンゴムである場合に、閉鎖カンチレバー371と密着カンチレバー372の幅は、0.5〜4mm程度、押圧逃がし開口375幅は、1〜4mm程度に設定される。密着カンチレバー372の外側エッジは、差込ガイド121の窪みが終わる部位の近傍に位置している。また、閉鎖部スリット373幅は、0.5〜0.7mm程度であり、密着部スリット374幅は閉鎖スリット373より広く0.7〜1mm程度である。
【0165】
〈注入工程〉
図23を参照して、閉鎖カンチレバー371と密着カンチレバー372と扁平型注入用細管620とを用いて検体若しくは試薬等の液体が保持流路111に注入される工程の各ステップを説明する。
【0166】
図23(a-1),(b-1),(c-1)及び図24(d−1),(e-1)は、注入用細管601が差し込まれる方向に沿った中間部ブロック101の断面を示している。ここで、注入用細管601は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿って差し込まれることから、これらの図は、差込ガイド121及び保持流路111の中心に沿った中間部ブロック101の断面図でもある。また、図23(a-2),(b-2)及び図5(f-2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管601が差し込まれる方向に直交する密着カンチレバー372の略中心付近における中間部ブロック101の断面図を示し、図24(c-2)及び図24(d−2)は、差込ガイド121側から見た注入用細管601が差し込まれる方向に直交する閉鎖カンチレバー371の略中心付近の断面図を示している。
【0167】
注入工程では、扁平型注入用細管620を差込む操作だけなので、第2実施形態の変形例に係る図17に示す構造における工程と実質的に同一であるが、可撓性シート2に貫通型スリット202が設けられず、閉鎖カンチレバー371及び密着カンチレバー372が使用されているので、扁平型注入用細管620の周囲の状態が異なっている。
【0168】
扁平型注入用細管620として、内部にピストンを備えた扁平型の固体注入用細管が使用されれば、固体或いは粘弾性体の検体を同様の工程で保持流路111に注入することができる。
【0169】
注入用細管挿入前の全閉状態:
図23(a―1)、(aー2)は、扁平型注入用細管620を差込ガイド121に差込む前の状態を示している。可撓性シート2が密着カンチレバー372で押付けられ、可撓性シート2が流路基板1に密着された状態にある。更に、閉鎖部スリット373の幅が可撓性シート2の厚みとほぼ等しいので、導入路314も十分に閉鎖カンチレバー371で押付けられ、閉鎖状態にあり、保持流路111は、完全に密閉されている。
【0170】
注入用細管挿入及び周囲密閉:
図23(b―1)、(b−2)に示すように、扁平型注入用細管620が差込ガイド121に差込まれ、押圧逃がし開口375の中間まで進入される。扁平型注入用細管620は、密着カンチレバー372で押付けられている可撓性シート2と流路基板1の間をこじ開けて挿入される。こじ開けられた部分に対応する可撓性シート2の一部が密着部スリット374、押圧逃がし開口375及び出入口開口312内に膨らんでいる。図23(b−2)に示されるように、密着カンチレバー372は、閉鎖型カセット100の外側に撓んで変形されている。また、図23(b−2)に示されるように、扁平型注入用細管620は、可撓性であるため、密着カンチレバー372からの押付け圧力で、流路基板1の平坦部になじむように変形されている。さらに、扁平型注入用細管620の周囲は、細管の外側形状が扁平なためと、密着部スリット374により、第2実施例の変形例に示す貫通型スリット202がある状態を示す図18(b―2)と比較しても、ほぼ同程度に可撓性シート2に密着している。このため、保持流路111への気泡の進入及び液体の漏洩を防止する効果は、貫通型スリット202を用いた場合と同程度に高くなっている。また、細管の外側形状が扁平なため、また、密着部スリット374があるため、扁平型注入用細管620が無理なく進入される。
【0171】
導入路開放及び注入:
図23(c―1)、(c−2)に示すように、扁平型注入用細管620がさらに前進され、閉鎖カンチレバー371に押圧される可撓性シート2下の部分に設けられる導入路314を通過され、保持流路111の端部まで進入される。その後、液体が保持流路111に注入される。図25は、液体が保持流路111に注入され状態を示す斜視図で、扁平型注入用細管620が透視できるように図示している。
【0172】
扁平型注入用細管620は、閉鎖カンチレバー371で押付けられている可撓性シート2と流路基板1の間をこじ開けるように挿入される。こじ開けられた部分に対応する可撓性シート2の一部が閉鎖部スリット373、押圧逃がし開口375及び保持流路開口311内に膨らんでいる。扁平型注入用細管620は、可撓性であるため、閉鎖カンチレバー371からの押付け圧力で、流路基板1の平坦部になじむように変形される。さらに、扁平型注入用細管620の周囲は、細管の外側形状が扁平なため、また、閉鎖部スリット373により、図18(c―2)と比較しても、ほぼ同程度に可撓性シート2に密着される。従って、保持流路111への気泡の進入と液体の漏洩を防止する効果は、貫通型スリット202を用いた場合と同程度に高くなっている。また、細管の外側形状が扁平であり、閉鎖部スリット373があるため、扁平型注入用細管620が無理なく進入することができる。
【0173】
導入路閉鎖:
図23(d―1)、(d−2)に示すように、試薬や検体を注入した後、扁平型注入用細管620が押圧逃がし開口375の中間まで引き戻される。このとき、可撓性シート2が閉鎖カンチレバー371によって押付けられることから、可撓性シート2が流路基板1に密着し、導入路314が閉鎖され、保持流路111は、密閉される。
【0174】
注入用細管引抜き:
図23(e―1)、(eー2)に示すように、扁平型注入用細管620が差込ガイド121から完全に引き抜かれる。このとき、可撓性シート2が密着カンチレバー372で押付けられていることから、可撓性シート2が流路基板1に密着される。
【0175】
〈簡易構成による漏洩防止の向上〉
このように扁平型注入用細管620を用いる構造では、可撓性シート2に貫通型スリット202を設けなくとも、カバープレート3の一部が閉鎖カンチレバー371及び密着カンチレバー372に形成されれば、細管密着用押圧手段及び出入路閉鎖用押圧手段が形成され、構造がさらに簡素化される。さらに、液体及び固体或いは粘弾性体の注入操作が、扁平型注入用細管620の出し入れだけで済み簡便になる。液体注入・排出時及び注入用細管601の引抜き動作時においても、注入用細管601の周囲は、ほぼ完全に可撓性シート2と密着しているので、保持流路111への気泡の進入及び液体の漏洩を防止する効果をさらに向上することができる。これにより、従来閉鎖型カセット100へ液体を注入する際に使用されていた自己封止ポートは不要になり、閉鎖型カセット100の小型化が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0176】
以上説明したようにこの発明は、核酸を含む試料の投入から、核酸増幅及びその他の必要な処理と目標核酸の検出までを一貫して自動的に処理するのに用いられる閉鎖型の核酸検出カセット、及びそれを用いた核酸検出システムの技術分野に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明の第1実施形態に係る中間部ブロックを備えた核酸検出カセットの概観を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す核酸検出カセットの各構成を分離して示す分解斜視図である。
【図3】図1及び図2に示す発明の第1実施形態に係る中間部ブロックの各構成を分離して示す分解斜視図である。
【図4】(a−1)〜(c−2)は、図3に示す中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図5】(d−1)〜(f−2)は、図3に示す中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図6】(a)及び(b)は、図3に示す中間部ブロックにおける液或いは気体の排出工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図7】(a)及び(b)は、図3に示す中間部ブロックにおける検体注入時の状態を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図8】(a−1)〜(c−2)は、図3に示す中間部ブロックにおける固体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図9】(d−1)〜(f−2)は、図3に示す中間部ブロックにおける固体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図10】本発明の第1実施形態の変形例に係る一体型押圧プレートを使用した中間部ブロックの各構成を分離して示す分解斜視図である。
【図11】図10に示す一体型押圧プレートを使用した中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを示す概観斜視図である。
【図12】本発明の第1実施形態の変形例に係る押圧用弾性体を使用した中間部ブロックの各構成を分離して示す分解斜視図である。
【図13】図12に示す押圧用弾性体を使用した中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを示す概観斜視図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る中間部ブロックの各構成を分離して示す分解斜視図である。
【図15】(a−1)〜(c−2)は、図14に示す中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図16】(d−1)〜(e−2)は、図14に示す中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図17】本発明の第1実施形態の変形例に係る貫通型スリットを使用した中間部ブロックにおける中間部ブロックの各構成を分離して示す分解斜視図である。
【図18】(a−1)〜(c−2)は、図14に示す中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図19】(d−1)〜(e−2)は、図14に示す中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図20】図14に示す貫通型スリットを使用した中間部ブロックにおける液体注入時の状態を説明するための中間部ブロックの概観を示す斜視図である。
【図21】この発明の第3実施形態に係る中間部ブロックに利用される扁平型注入用細管の概観を概略的に示す斜視図である。
【図22】図21に示した扁平型注入用細管が利用されるこの発明の第3実施形態に係る中間部ブロックの各構成を分離して示す分解斜視図である。
【図23】(a−1)〜(c−2)は、図22に示す中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図24】(d−1)〜(e−2)は、図22に示す中間部ブロックにおける液体注入工程を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【図25】図22に示す中間部ブロックにおける液体注入時の状態を説明するための中間部ブロックを概略的に示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0178】
1…固定基板、2…可撓性シート、3…カバープレート、4…押圧ブロック
100…核酸検出カセット、101…中間部ブロック、102、103…端部ブロック、106…検出部ブロック、
111…保持流路、117…連結流路、121…差込ガイド、151…接点部開口、
201…非貫通型スリット、202…貫通型スリット、
311…保持流路開口、312…出入路開口、313…導入路開口、314…導入路、317…連結流路開口、
321…閉鎖プレート、322…密着プレート、331、332…押圧ねじ、
341…一体型押圧プレート、342…密着部開口、343…スライドワッシャ、344…押圧ねじ、
351…押圧用弾性体、352…密着部開口、
361…閉鎖ブリッジ、362…密着ブリッジ、363…押圧逃がし開口、
371…閉鎖カンチレバー、372…密着カンチレバー、373…閉鎖部スリット、374…密着部スリット、375…押圧逃がし開口、
500…核酸検出チップ、520…検出流路シール、521…検出流路、
601…注入用細管、602…液体、603…気泡、604…残留液体、
610…固体注入用細管、611…シリンダ、612…ピストン、613…固体の検体、614…試薬、615…液体の検体、
620…扁平型注入用細管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に含まれる核酸を検出するために固定部材と可撓性部材との組合せにより流路が構成された核酸検出カセットであって、
前記流路は、前記核酸検出カセットの外部と連通可能な開状態及び前記核酸検出カセットの外部に対して閉鎖可能な閉状態を選択可能な出入路を有し、その容積が可変で、試薬を保持可能で、且つ、前記出入路に連通可能な保持流路を備え、
前記固定部材及び前記可撓性部材の密着面が互いに密着され、前記保持流路を囲む密着領域で前記保持流路を定め、前記保持流路を定める密着領域の一部を剥離可能として前記出入路に定め、
前記出入路を定める密着領域の一部を剥離可能に維持して開状態とし、前記出入路を定める密着領域の一部を互いに密着させたままに維持して閉状態として前記出入路を開閉する出入路開閉手段を備えることを特徴とする核酸検出カセット。
【請求項2】
前記開状態において、前記出入路と前記保持流路とが直線的に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の核酸検出カセット。
【請求項3】
前記出入路開閉手段が、前記出入路を定める密着領域において、前記可撓性部材を前記固定部材に押付ける方向に押圧して前記出入路を閉状態にする出入路押圧手段を含むことを特徴とする請求項2に記載の核酸検出カセット。
【請求項4】
前記出入路は、前記可撓性部材の密着面側に前記核酸検出カセットの外側から保持流路内部に向って形成される所定のスリットを含むことを特徴とする請求項3記載の核酸検出カセット。
【請求項5】
試料に含まれる核酸を検出するために固定部材と可撓性部材との組合せにより流路が構成された核酸検出カセットであって、前記流路は、前記核酸検出カセットの外部と連通可能な開状態及び前記核酸検出カセットの外部に対して閉鎖可能な閉状態を選択可能な出入路を有し、その容積が可変で、且つ、試薬を保持可能な前記出入路に連通可能な保持流路を備え、前記固定部材及び前記可撓性部材の密着面が互いに密着され、前記保持流路を囲む密着領域で前記保持流路を定め、前記保持流路を定める密着領域の一部に互いに連接する第1及び第2の領域部を定め、この第1及び第2の領域部において、前記固定部材及び前記可撓性部材の密着を剥離可能として前記出入路に定める核酸検出カセットを具備し、
前記カセットの前記出入路の開口から前記第1の領域部の前記出入路に細管を差込み、前記第2領域部下の前記出入路を介して試料を前記保持流路内に注入する核酸検出カセット試料注入システムにおいて、
前記第1領域部を剥離可能に維持して開状態とし、前記第1領域部を互いに密着させたままに維持して閉状態として前記出入路を開閉するとともに、前記開状態での細管による試料の注入時に、前記第1領域部に相当する前記可撓性部材を前記固定部材に押付けて前記細管周囲に前記可撓性部材を密着させる細管密着用押圧手段と、
前記第2領域部を剥離可能に維持して開状態とし、前記第2領域部に相当する前記可撓性部材を前記固定部材に押付けて前記第2領域部を互いに密着させたままに維持して閉状態とする前記出入路を開閉するとともに、細管による試料の注入時に前記開状態となる出入路閉鎖用押圧手段と、
を備えることを特徴とする核酸検出カセット試料注入システム。
【請求項6】
前記細管密着用押圧手段及び前記出入路閉鎖用押圧手段は、個別に移動可能に前記核酸検出カセットに取り付けられる細管密着用押圧プレート及び出入路閉鎖用押圧プレートを夫々含むことを特徴とする請求項5記載の核酸検出カセット試料注入システム。
【請求項7】
前記細管密着用押圧手段及び前記出入路閉鎖用押圧手段は、移動可能に前記核酸検出カセットに取り付けられる一体的な出入路押圧プレートを含むことを特徴とする請求項5記載の核酸検出カセット試料注入システム。
【請求項8】
前記細管密着用押圧手段及び前記出入路閉鎖用押圧手段は、前記核酸検出カセットに取り付けられ、前記細管密着用押圧手段と前記出入路閉鎖用押圧手段とが間隔を空けて配置され、その間に前記可撓性部材が露出される開口部が設けられることを特徴とする請求項5記載の核酸検出カセット試料注入システム。
【請求項9】
請求項5に記載の核酸検出カセット試料注入システムに使用される細管であって、この細管は、その外形が扁平な部分を有し、前記細管により試料を前記保持流路内に注入する際には、その扁平な部分がカセットの出入路に差込まれることにより、前記細管密着用押圧手段により前記細管の扁平な部分の周囲に前記可撓性部材を密着させることを特徴とする核酸検出カセット試料注入システムに使用される細管。
【請求項10】
請求項5に記載の核酸検出カセット試料注入システムに使用される細管であって、この細管は、径大の基部と、この基部から延出した針状部を有し、前記細管により試料を前記保持流路内に注入する際には、前記細管の針状部が前記第1の領域部の前記出入路に差込まれ、かつ細管の基部が前記核酸検出カセットに当接することにより、細管の針状部のみが前記第1の領域部の前記出入路に差込まれることを特徴とする核酸検出カセット試料注入システムに使用される細管。
【請求項1】
試料に含まれる核酸を検出するために固定部材と可撓性部材との組合せにより流路が構成された核酸検出カセットであって、
前記流路は、前記核酸検出カセットの外部と連通可能な開状態及び前記核酸検出カセットの外部に対して閉鎖可能な閉状態を選択可能な出入路を有し、その容積が可変で、試薬を保持可能で、且つ、前記出入路に連通可能な保持流路を備え、
前記固定部材及び前記可撓性部材の密着面が互いに密着され、前記保持流路を囲む密着領域で前記保持流路を定め、前記保持流路を定める密着領域の一部を剥離可能として前記出入路に定め、
前記出入路を定める密着領域の一部を剥離可能に維持して開状態とし、前記出入路を定める密着領域の一部を互いに密着させたままに維持して閉状態として前記出入路を開閉する出入路開閉手段を備えることを特徴とする核酸検出カセット。
【請求項2】
前記開状態において、前記出入路と前記保持流路とが直線的に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の核酸検出カセット。
【請求項3】
前記出入路開閉手段が、前記出入路を定める密着領域において、前記可撓性部材を前記固定部材に押付ける方向に押圧して前記出入路を閉状態にする出入路押圧手段を含むことを特徴とする請求項2に記載の核酸検出カセット。
【請求項4】
前記出入路は、前記可撓性部材の密着面側に前記核酸検出カセットの外側から保持流路内部に向って形成される所定のスリットを含むことを特徴とする請求項3記載の核酸検出カセット。
【請求項5】
試料に含まれる核酸を検出するために固定部材と可撓性部材との組合せにより流路が構成された核酸検出カセットであって、前記流路は、前記核酸検出カセットの外部と連通可能な開状態及び前記核酸検出カセットの外部に対して閉鎖可能な閉状態を選択可能な出入路を有し、その容積が可変で、且つ、試薬を保持可能な前記出入路に連通可能な保持流路を備え、前記固定部材及び前記可撓性部材の密着面が互いに密着され、前記保持流路を囲む密着領域で前記保持流路を定め、前記保持流路を定める密着領域の一部に互いに連接する第1及び第2の領域部を定め、この第1及び第2の領域部において、前記固定部材及び前記可撓性部材の密着を剥離可能として前記出入路に定める核酸検出カセットを具備し、
前記カセットの前記出入路の開口から前記第1の領域部の前記出入路に細管を差込み、前記第2領域部下の前記出入路を介して試料を前記保持流路内に注入する核酸検出カセット試料注入システムにおいて、
前記第1領域部を剥離可能に維持して開状態とし、前記第1領域部を互いに密着させたままに維持して閉状態として前記出入路を開閉するとともに、前記開状態での細管による試料の注入時に、前記第1領域部に相当する前記可撓性部材を前記固定部材に押付けて前記細管周囲に前記可撓性部材を密着させる細管密着用押圧手段と、
前記第2領域部を剥離可能に維持して開状態とし、前記第2領域部に相当する前記可撓性部材を前記固定部材に押付けて前記第2領域部を互いに密着させたままに維持して閉状態とする前記出入路を開閉するとともに、細管による試料の注入時に前記開状態となる出入路閉鎖用押圧手段と、
を備えることを特徴とする核酸検出カセット試料注入システム。
【請求項6】
前記細管密着用押圧手段及び前記出入路閉鎖用押圧手段は、個別に移動可能に前記核酸検出カセットに取り付けられる細管密着用押圧プレート及び出入路閉鎖用押圧プレートを夫々含むことを特徴とする請求項5記載の核酸検出カセット試料注入システム。
【請求項7】
前記細管密着用押圧手段及び前記出入路閉鎖用押圧手段は、移動可能に前記核酸検出カセットに取り付けられる一体的な出入路押圧プレートを含むことを特徴とする請求項5記載の核酸検出カセット試料注入システム。
【請求項8】
前記細管密着用押圧手段及び前記出入路閉鎖用押圧手段は、前記核酸検出カセットに取り付けられ、前記細管密着用押圧手段と前記出入路閉鎖用押圧手段とが間隔を空けて配置され、その間に前記可撓性部材が露出される開口部が設けられることを特徴とする請求項5記載の核酸検出カセット試料注入システム。
【請求項9】
請求項5に記載の核酸検出カセット試料注入システムに使用される細管であって、この細管は、その外形が扁平な部分を有し、前記細管により試料を前記保持流路内に注入する際には、その扁平な部分がカセットの出入路に差込まれることにより、前記細管密着用押圧手段により前記細管の扁平な部分の周囲に前記可撓性部材を密着させることを特徴とする核酸検出カセット試料注入システムに使用される細管。
【請求項10】
請求項5に記載の核酸検出カセット試料注入システムに使用される細管であって、この細管は、径大の基部と、この基部から延出した針状部を有し、前記細管により試料を前記保持流路内に注入する際には、前記細管の針状部が前記第1の領域部の前記出入路に差込まれ、かつ細管の基部が前記核酸検出カセットに当接することにより、細管の針状部のみが前記第1の領域部の前記出入路に差込まれることを特徴とする核酸検出カセット試料注入システムに使用される細管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
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【図11】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2006−262787(P2006−262787A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85953(P2005−85953)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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