説明

根頭がんしゅ病菌の増殖を阻害する細菌含有組成物およびその利用

【課題】本発明は、単一種の拮抗細菌および外来菌種の大量投与を行うことなく、根頭がんしゅ病菌の生育を阻害することが可能な、細菌含有組成物およびその利用を提供する。
【解決手段】シュードモナス属細菌(Pseudomonas sp.)、フラボバクテリア属細菌(Flavobacterium sp.)、エンテロバクター属細菌(Enterobacter sp.)、およびステノトロフォモナス属細菌(Stenotrophomonas sp.)から選択される1菌株または、複数の菌株を組み合わせることによって、根頭がんしゅ病菌の増殖を阻害し、根頭がんしゅ病を防除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、根頭がんしゅ病菌の増殖を阻害することが可能な細菌含有組成物およびその利用に関するものであって、特に、根頭がんしゅ病菌の増殖を阻害することが可能で、病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に対する土壌拮抗菌を含有する細菌含有組成物およびその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
根頭がんしゅ病は、土壌中の病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)が木本・草本の双子葉植物に感染して、根頭がんしゅといわれる癌腫を形成することにより、植物体を衰弱・枯死させる植物病の一種である。上記根頭がんしゅ病は、日本では、主にバラや桜などの花卉に発生している。そのため、特に、バラ園芸や公園等の桜管理にとって、深刻な被害をもたらす植物病である。
【0003】
根頭がんしゅ病では、病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスが保有するTi(tumor inducing)プラスミドの一部(T−DNA領域)が、植物細胞核DNAに形質転換されることにより腫瘍化が誘導される。一度腫瘍が形成されると、アグロバクテリウム・ツメファシエンスを除去しても腫瘍は増殖を続け、植物の衰弱・枯死を引き起こす。また、現状の技術レベルでは、植物が根頭がんしゅ病を一度発病してしまうと、治療することは困難である。そのため、根頭がんしゅ病に関しては、植物が病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスに感染しないように予防措置をとることが求められる。
【0004】
このような病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスの感染に対する予防措置としては、従来、病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスに汚染された土壌に対して、土壌全体を加熱滅菌したり、大量のグラム陰性細菌用抗生物質で当該土壌を処理したりすることがなされてきた。しかし、このような方法では、当該土壌に含まれる、病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンス以外の有用土壌細菌までもが殺菌・除去されてしまう。そのため、当該土壌の土質が改悪される。このように改悪された土壌を、本来の植物栽培に適した土壌に回復させるには、有機肥料の投与等が必要である。そのため、多大な経費・労力と、多年にわたる時間とを要するという問題が生じる。
【0005】
そこで、上記の方法に代わる方法として、特定の病原菌に対して防除効果を有する化合物を投与する方法が提案されている。そのような方法としては、例えば、特許文献1に開示される方法を挙げることができる。特許文献1には、特定の病原菌に対して防除効果を有する化合物を、土壌10アール当り10〜1000gの割合になるように適用し、特定の病原菌を防除する方法が記載されている。また、上記化合物が防除効果を示す病原菌として、病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスが記載されている。
【0006】
また、別の方法として、単一の土壌拮抗細菌を用いて、病原菌を防除する方法が提案されている。そのような方法としては、例えば、特許文献2および特許文献3に開示される方法を挙げることができる。特許文献2には、拮抗細菌として、バチルス ズブチルスs.p.KB-1111(Bacillus subtilis KB-1111) 株(微工研条寄第1738号)および/またはバチルス ズブチルスs.p.KB-1122(Bacillus subtilis KB-1122)株(微工研条寄第1739号)を用い、当該細菌を植物種子または土壌に処理することによって、植物病害の防除する方法が開示されている。また、上記拮抗細菌を種子処理または土壌処理して有効な病害として、果樹の根頭がんしゅ病(Agrobacterium tumefaciens)、立枯病、青枯病などが例示されている。
【0007】
また、特許文献3には、Pseudomonas cepacia AGF-158株(微工研条寄第3834号)は、苗床で発生するイネの病原菌や各種作物の病原菌の多くに対し拮抗活性を示すことが記載されている。また、Pseudomonas cepacia AGF-158株(微工研条寄第3834号)が強い拮抗活性を示す病原菌として、病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスが記載されている。
【0008】
さらに、近年、非病原性菌を生物農薬として用いる拮抗的防除方法が提案され、実用化されている。具体的には、非特許文献1に開示される方法が挙げられる。非特許文献1には、非病原性アグロバクテリウム・ラヂオバクター・ストレイン84(Agrobacterium radiobacter strain84)を生物農薬として用いる拮抗的防除方法が開示されている。
【特許文献1】特開昭62−277305号公報(昭和62(1987)年12月2日公開)
【特許文献2】特開2003−89612号公報(平成15(2003)年3月28日公開)
【特許文献3】特開平7−25716号公報(平成7(1995)年1月27日公開)
【非特許文献1】Nicholas C. McClure et al., Construction of a Range of Derivative of the Biological Control Strain Agrobacterium rhizogenes K84: a Study of Factors Involved in Biological Control of Crown Gall Disease. Appl. Environ. Microbiol. 64:3977-3982 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1の方法のように、特定の病原菌に対して防除効果のある化合物を用いる方法では、当該化合物に対して耐性を有する非感受性病原菌が出現する可能性があるという問題がある。
【0010】
また、上記特許文献2および3の方法のように、単一の土壌拮抗細菌を用いる方法では、当該拮抗細菌に対して非感受性の病原菌が出現し、当該拮抗細菌が無効化する可能性がある。さらに、特許文献2および3のような方法では、単一の土壌拮抗細菌を大量に用いる。そのため、本来の土壌細菌相を変化させ、植物生長阻害や土壌有用細菌の死滅による他種植物病の発生を誘発する可能性があるという問題がある。
【0011】
さらに、上記非特許文献1の方法では、本来日本固有の土壌菌でない非病原性アグロバクテリウム・ラヂオバクター・ストレイン84を用いる。また、土壌中の病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスを防除するには、病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスと同程度の大量の菌体を散布する必要がある。そのため、本来の土壌細菌相を変化させ、植物生長阻害や土壌有用細菌の死滅による他種植物病の発生を誘発する可能性があるという問題がある。
【0012】
また、病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスには、バイオバール(biovar)が異なる複数種の細菌の存在が知られている。つまり、植物種ごとに感染するアグロバクテリウム・ツメファシエンス株が異なる。上記非特許文献1の非病原性アグロバクテリウム・ラヂオバクター・ストレイン84は、バラ・菊などの数種の花卉に感染する病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンス株には効果を示すものである。そのため、他の花卉・農作物へ感染する病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンス株には拮抗的防除効果は期待できないという問題がある。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、単一種の拮抗細菌および外来菌種の大量投与を行うことなく、根頭がんしゅ病菌の生育を阻害することが可能な、細菌含有組成物およびその利用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、(a)シュードモナス属細菌群(Pseudomonas sp.)、エンテロバクター属細菌(Enterobacter sp.)、およびステノトロフォモナス属細菌(Stenotrophomonas sp.)は、病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスの増殖を阻害すること、(b)フラボバクテリア属細菌(Flavobacterium sp.)は、病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスを溶菌することにより増殖を阻害することを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、産業上有用な以下の発明を包含する。
【0015】
(1)シュードモナス・プチダA株(Pseudomonas putida strain A;FERM P−20879)、シュードモナス属細菌B株(Pseudomonas sp. strain B;FERM P−20880)、シュードモナス属細菌C株(Pseudomonas sp. strain C;FERM P−20881)、シュードモナス属細菌D株(Pseudomonas sp. strain D;FERM P−20882)、シュードモナス・アルカリジーナスE株(Pseudomonas alcaligenes strain E;FERM P−20883)、フラボバクテリア属細菌(Flavobacterium sp.)、エンテロバクター属細菌H株(Enterobacter sp. strain H;FERM P−20886)、およびステノトロフォモナス属細菌(Stenotrophomonas sp.)からなる群より選択される細菌の少なくとも1種の菌株を含有することを特徴とする細菌含有組成物。
【0016】
(2)シュードモナス属細菌(Pseudomonas sp.)、フラボバクテリア属細菌(Flavobacterium sp.)、エンテロバクター属細菌(Enterobacter sp.)、およびステノトロフォモナス属細菌(Stenotrophomonas sp.)からなる群より選択される細菌の菌株を少なくとも2種含有することを特徴とする細菌含有組成物。
【0017】
(3)上記シュードモナス属細菌が、シュードモナス・プチダA株(Pseudomonas putida strain A;FERM P−20879)、シュードモナス属細菌B株(Pseudomonas sp. strain B;FERM P−20880)、シュードモナス属細菌C株(Pseudomonas sp. strain C;FERM P−20881)、シュードモナス属細菌D株(Pseudomonas sp. strain D;FERM P−20882)、およびシュードモナス・アルカリジーナスE株(Pseudomonas alcaligenes strain E;FERM P−20883)であることを特徴とする(2)に記載の細菌含有組成物。
【0018】
(4)上記エンテロバクター属細菌が、エンテロバクター属細菌H株(Enterobacter sp. strain H;FERM P−20886)であることを特徴とする(2)または(3)に記載の細菌含有組成物。
【0019】
(5)上記フラボバクテリア属細菌が、フラボバクテリア属細菌F株(Flavobacterium sp. strain F;FERM P−20884)であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の細菌含有組成物。
【0020】
(6)上記ステノトロフォモナス属細菌が、ステノトロフォモナス属細菌G株(Stenotrophomonas sp. strain G;FERM P−20885)であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の細菌含有組成物。
【0021】
(7)根頭がんしゅ病菌の増殖を阻害することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の細菌含有組成物。
【0022】
(8)上記根頭がんしゅ病菌が、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)であることを特徴とする(7)に記載の細菌含有組成物。
【0023】
(9)根頭がんしゅ病を防除することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の細菌含有組成物。
【0024】
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載の細菌含有組成物を用いて、植物根頭がんしゅの形成を阻害することを特徴とする根頭がんしゅ病防除方法。
【0025】
(11)(1)〜(9)のいずれかに記載の細菌含有組成物を用いて、植物根頭がんしゅ病の発生を抑制することを特徴とする根頭がんしゅ病防除方法。
【0026】
(12)(1)〜(9)のいずれかに記載の細菌含有組成物を用いて、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の2種以上の菌株の増殖を阻害することを特徴とする根頭がんしゅ病の防除方法。
【0027】
(13)(2)に記載の細菌含有組成物を用いて、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の増殖を特異的に阻害することを特徴とする根頭がんしゅ病の防除方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかる細菌含有組成物は、以上のように、特定のシュードモナス属細菌、フラボバクテリア属細菌、エンテロバクター属細菌、またはステノトロフォモナス属細菌の少なくとも1つの細菌の菌株を含有している。上記細菌は、根頭がんしゅ病菌の増殖を阻害し、根頭がんしゅの形成を阻害する効果を有する。それゆえ、本発明にかかる細菌含有組成物によれば、植物における根頭がんしゅ病を防除できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
<1.細菌含有組成物>
本発明にかかる細菌含有組成物は、シュードモナス属細菌(Pseudomonas sp.)、フラボバクテリア属細菌(Flavobacterium sp.)、エンテロバクター属細菌(Enterobacter sp.)、およびステノトロフォモナス属細菌(Stenotrophomonas sp.)からなる群より選択される少なくとも1種の細菌を含んでいればよい。つまり、上記細菌含有組成物は、上記細菌を1種のみ含むものであってもよいし、2種以上含むものであってもよい。
【0031】
上記群より選択される少なくとも1種の細菌を含むことにより、上記細菌含有組成物を用いて根頭がんしゅ病菌の増殖を阻害することができる。上記根頭がんしゅ病菌とは、植物に感染して、当該植物に根頭がんしゅ病を発症させる細菌である。具体的には、病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)が挙げられる。アグロバクテリウム ツメファシエンスは、亜熱帯から寒帯の様々な土壌中に広く存在する土壌細菌である。また、アグロバクテリウム ツメファシエンスは、ジャガイモやトマトなどの農作物、バラや桜などの花卉に感染して、根や茎に癌腫を引き起こす。このように、アグロバクテリウム ツメファシエンスは、幅広い地域に存在し、植物種ごとに感染性が異なる多くの菌株の存在が知られている。根頭がんしゅ病の原因となるアグロバクテリウム・ツメファシエンスとしては、例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンスMAFF301001株、アグロバクテリウム・ツメファシエンスMAFF301222株、アグロバクテリウム・ツメファシエンスMAFF301224株、アグロバクテリウム・ツメファシエンスMAFF301276株、およびアグロバクテリウム・ツメファシエンスIFO15193株を挙げることができる。これらは、感染対象である宿主が異なるなどの違いはあるが、いずれも根頭がんしゅ病の原因となるものである。本発明にかかる細菌含有組成物は、上記例示したアグロバクテリウム・ツメファシエンスのうち、少なくとも1種のアグロバクテリウム・ツメファシエンスの増殖を阻害することが好ましい。
【0032】
また、本発明にかかる細菌含有組成物は、根頭がんしゅ病の原因となるアグロバクテリウム・ツメファシエンスの増殖を阻害することに加えて、他のアグロバクテリウム属細菌の増殖を阻害してもよい。例えば、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)IFO14793株、アグロバクテリウム・リゾゲネスLBA1334株、実験用非病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスNTL4株、実験用非病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404株、および実験用非病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスEHA101株等を挙げることができる。
【0033】
なお、本明細書において、「アグロバクテリウム・ツメファシエンスの増殖の阻害」とは、アグロバクテリウム・ツメファシエンスの細胞を10〜10細胞/mlになるように希釈してAB寒天培地に包埋した寒天培地上に、本発明にかかる細菌含有組成物を含む溶液を浸み込ませたろ紙片(3mmφ)を載せ、28℃で3日間静置培養したときに、上記細菌含有組成物に含まれる細菌のコロニー周辺に阻止円が形成されること、好ましくは上記阻止円の直径が1mm以上、より好ましくは2mm以上であることを意味する。また、アグロバクテリウム・ツメファシエンスを溶菌することにより、その増殖を阻害する意味も含まれる。より具体的に説明すると、上記のシュードモナス属細菌、フラボバクテリア属細菌、エンテロバクター属細菌、およびステノトロフォモナス属細菌のうち、シュードモナス属細菌、エンテロバクター属細菌、およびステノトロフォモナス属細菌は、上記阻止円を形成することにより、アグロバクテリウム・ツメファシエンスの増殖を阻害する。一方、フラボバクテリア属細菌は、アグロバクテリウム・ツメファシエンスを溶菌することにより増殖を阻害する。このように、本発明では、上記いずれの形態でアグロバクテリウム・ツメファシエンスの増殖を阻害してもよい。
【0034】
また、本発明にかかる細菌含有組成物は、上述したように根頭がんしゅ病菌の増殖を阻害することが可能であるため、根頭がんしゅ病を防除することができる。
【0035】
さらに、上記細菌含有組成物は、上記細菌に加えて、必要に応じて、例えば、希釈剤、pH調整剤、補助剤、界面活性剤等を含有していてもよい。以下、本発明にかかる細菌含有組成物に含有される細菌、およびその他の添加物についてより詳細に説明する。
【0036】
(1−1.土壌拮抗菌)
上記シュードモナス属細菌(Pseudomonas sp.)は、シュードモナス属に属する細菌であればよいが、特に、シュードモナス・プチダA株(Pseudomonas putida strain A;FERM P−20879)、シュードモナス属細菌B株(Pseudomonas sp. strain B;FERM P−20880)、シュードモナス属細菌C株(Pseudomonas sp. strain C;FERM P−20881)、シュードモナス属細菌D株(Pseudomonas sp. strain D;FERM P−20882)、およびシュードモナス・アルカリジェネスE株(Pseudomonas alcaligenes strain E;FERM P−20883)であることが好ましい。上記例示したシュードモナス属細菌は、本発明者らが東広島市近郊の園芸土壌より分離したものであり、16SリボソームDNA塩基配列の解析から、新菌株であることを確認している。また、これらのシュードモナス属細菌は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている。
【0037】
上記フラボバクテリア属細菌(Flavobacterium sp.)は、フラボバクテリア属に属する細菌であればよく、特に限定されるものではない。例えば、フラボバクテリア属細菌F株(Flavobacterium sp. strain F)を挙げることができる。当該フラボバクテリア属細菌F株は、本発明者らが、東広島市近郊の園芸土壌より分離したものであり、16SリボソームDNA塩基配列の解析から、新菌株であることを確認している。フラボバクテリア属細菌F株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、フラボバクテリア属細菌F株(Flavobacterium sp. strain F;FERM P−20884)として寄託されている。
【0038】
上記エンテロバクター属細菌(Enterobacter sp.)は、エンテロバクター属に属する細菌であればよいが、特に、エンテロバクター属細菌H株(Enterobacter sp. strain H;FERM P−20886)であることが好ましい。エンテロバクター属細菌H株もまた、本発明者らが東広島市近郊の園芸土壌より分離したものであり、16SリボソームDNA塩基配列の解析により、新菌株であることを確認している。なお、当該エンテロバクター属細菌H株もまた、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている。
【0039】
上記ステノトロフォモナス属細菌(Stenotrophomonas sp.)は、ステノトロフォモナス属に属する細菌であればよく、特に限定されるものではない。例えば、ステノトロフォモナス属細菌G株(Stenotrophomonas sp. strain G;FERM P−20885)を挙げることができる。当該ステノトロフォモナス属細菌G株もまた、本発明者らが東広島市近郊の園芸土壌より分離したものであり、16SリボソームDNA塩基配列の解析により、新菌株であることを確認している。なお、ステノトロフォモナス属細菌G株もまた、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている。
【0040】
なお、新菌株であることの確認は、例えば、以下の方法で行うことができる。すなわち、まず、対象となる未知菌株から、従来公知の方法を用いて、ゲノムDNAを抽出する。次に、16SリボゾームDNAの全長をPCRにより増幅する。そのPCR産物を用いて、16SリボゾームDNAの全長の塩基配列を決定する。このとき、PCRエラーを考慮し、塩基配列決定は、複数回行うことが好ましい。上記塩基配列決定後、PCRエラーと思われる配列を修正し、正しい16SリボゾームDNA塩基配列を決定する。上記PCRエラーは、複数回行った上記塩基配列決定の結果を比較することにより行うことができる。次に、このようにして決定した16SリボゾームDNA塩基配列を、既知菌株の16SリボゾームDNA塩基配列と、塩基配列比較・検索ソフトBLASTおよびFASTAにより比較する。検索結果のうち、E−valueがきわめて低い値(最低は0)を示す上位20〜100位に現れる既知菌種名から未知菌株の菌種を推定し、これにより新菌株であることの確認することができる。ただし、もっとも上位の菌種名が正しい菌種とは限らないので、注意が必要である。
【0041】
本発明にかかる細菌含有組成物は、上記細菌のうち、特に、シュードモナス・プチダA株、シュードモナス属細菌B株、およびフラボバクテリア属細菌F株のうちの少なくとも1菌株を含有することが好ましく、フラボバクテリア属細菌F株を含有することがさらに好ましい。上記構成によれば、病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスの増殖を効果的に阻害することができる。
【0042】
上記細菌は、病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスの増殖を阻害する土壌拮抗菌である。そこで、本明細書では、上記細菌を、単に土壌拮抗菌と称することもある。また、上記土壌拮抗菌は、いずれも通常の園芸土壌由来であり、本来、日本土壌中に普遍的に存在する土壌菌である。そのため、上記土壌拮抗菌を、日本国土の土壌に投与しても、土壌菌相に大きな変化をもたらすことがない。
【0043】
また、本発明にかかる細菌含有組成物において、上記土壌拮抗菌は、生菌として(生きた状態で)、含有されていればよく、その含有量は特に限定されるものではない。すなわち、上記細菌含有組成物の形状や、使用目的、使用形態に応じて適宜設定すればよい。
【0044】
例えば、上記細菌含有組成物を、根頭がんしゅ病の防除の目的で、上記細菌含有組成物を水で1000倍〜2000倍に希釈して土壌に散布する場合、当該希釈した細菌含有組成物に含まれる上記土壌拮抗菌の生菌数は、1×10〜1×1010cfu/mlであることが好ましく、1×10〜1×10cfu/mlであることがより好ましく、1×10〜1×10cfu/mlであることがさらに好ましい。
【0045】
本発明にかかる細菌含有組成物において、上記土壌拮抗菌が含有されるときの形態は特に限定されるものではない。例えば、後述の<2.細菌含有組成物の製造方法>に記載の培養方法で培養された上記土壌拮抗菌を、懸濁液、培養液、または該濃縮物、ペースト状物、乾燥物、および希釈物等の形態で含有させることができる。
【0046】
さらに、本発明にかかる細菌含有組成物においては、上記土壌拮抗菌の複数の菌種・菌株を含んでいてもよい。後述の実施例に示すとおり、上記土壌拮抗菌は、菌種や菌株によって、増殖を阻害できる病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスの菌株が異なる。したがって、上記土壌拮抗菌の複数の菌種・菌株を含むことにより、宿主に対する感染性が異なる複数のアグロバクテリウム・ツメファシエンスの菌株の増殖を総合的に阻害することが可能となる。つまり、上記土壌拮抗菌を複合的に用いていることで、病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスの増殖を相乗的に抑え、根頭がんしゅ病の防除効果を高めることができる。
【0047】
また、混合する上記土壌拮抗菌を調整することによって、アグロバクテリウム・ツメファシエンス以外の土壌細菌の増殖を阻害することなく、上記例示した根頭がんしゅ病の原因となるアグロバクテリウム・ツメファシエンスの増殖を特異的に阻害するようにすることができる。
【0048】
また、上記土壌拮抗菌を複数種含有する細菌含有組成物によれば、当該細菌含有組成物を、土壌に投与しても、単一の土壌拮抗菌を大量に投与することにはならない。そのため、本来の土壌細菌相を変化させ、植物生長阻害や土壌有用細菌の死滅による他種植物病の発生を誘発することがない。
【0049】
本発明にかかる細菌含有組成物において、上記土壌拮抗菌を複数種含有させる場合の各土壌拮抗菌の混合比率は、上述したように、上記細菌含有組成物に付与する特性に応じて適宜設定するものであって、特に限定されるものではない。例えば、混合する各菌株を等量ずつ混合することにより、病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスの増殖を相乗的に抑え、根頭がんしゅ病を防除することができる。また、フラボバクテリア属細菌F株を混合する場合には、上記細菌含有組成物に含有させる他の細菌より混合量を減らしてもよい。
【0050】
さらに、本発明にかかる細菌含有組成物において、上記土壌拮抗菌を複数種含有させる場合に、混合する菌株は、本発明の効果が得られる範囲であれば、特に限定されるものではないが、シュードモナス・プチダA株、シュードモナス属細菌B株、およびフラボバクテリア属細菌F株の3菌株を混合することが好ましく、シュードモナス・プチダA株、シュードモナス属細菌B株、シュードモナス属細菌C株、シュードモナス属細菌D株、シュードモナス・アルカリジェネスE株、フラボバクテリア属細菌F株の6菌株を混合することがさらに好ましい。上記構成によれば、病原性アグロバクテリウム・ツメファシエンスの増殖を相乗的に抑え、根頭がんしゅ病を防除することができる。
【0051】
(1−2.その他の添加物)
上述したように、本発明にかかる細菌含有組成物には、上記土壌拮抗菌に加えて、上記土壌拮抗菌の生育を阻害しない範囲であれば、どのような添加物を添加してもよい。例えば、希釈剤、pH調整剤、補助剤、界面活性剤等を添加することができる。ここで、本発明にかかる細菌含有組成物に含有させることが可能なその他の添加物について、具体的に説明する。
【0052】
〔希釈剤〕
上記希釈剤としては、例えば、ベントナイト、カオリン、モンモリロナイト、クレー、珪藻土、珪砂、粘土、酸性白土、タルク類、ホワイトカーボン、パーライト、バーミキュライト等の鉱物質微粉末;木粉、タブ粉、粕粉、米糠、小麦粉等の有機物微粉末;トレハロース、スクロース、グルコース、フラクトース、ラクトース、ラフィノース、ソルビトール、キシリトール、イノシトール等の糖類;炭酸塩(例えば、消石灰)、硫酸塩(例えば、硫酸アンモニウム)、尿素、塩化塩、硝酸塩等の無機塩;ザンサンゴムやアルギン酸などの天然高分子化合物等を挙げることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上の複数を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
また、上記希釈剤としては、上記固体の希釈剤だけではなく、液体の希釈剤を用いることもできる。液体の希釈剤としては、例えば、大豆油、ナタネ油、ひまし油、綿実油、パーム油、サフラワー油等の植物油;スピンドル油、ヘビーホワイトオイル、ライトホワイトオイル、ミネラルスピリット、ミネラルターペン、ナフテン油、パラフィン油、農薬用マシン油等の鉱物油;シリコーンオイル等を挙げることができる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を複数組み合わせて用いてもよい。
【0054】
上記希釈剤の含有量は、本発明の効果が得られる範囲内であれば、特に限定されるものではない。一般的には、上記細菌含有組成物に対して、10〜50重量%とすることが好ましく、20〜45重量%とすることがより好ましい。上記範囲内とすれば、本発明の効果が得られることに加えて、上記細菌含有組成物の水和性を向上させることができる。
【0055】
〔pH調整剤〕
上記pH調整剤およびその添加量は、上記細菌含有組成物を土壌に投与したときに、植物に対して害を及ぼさないものであれば特に限定されるものではない。具体的には、上記pH調整剤としては、リン酸、ホウ酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、クエン酸等の弱酸のナトリウム塩やカリウム塩等を挙げることができる。より具体的には、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、ホウ酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム等を用いることができる。
【0056】
上記pH調整剤を添加することにより、上記細菌含有組成物に含まれる上記土壌拮抗菌の生育を制御することができる。
【0057】
〔補助剤〕
上記補助剤としては、キチン、キトサン、寒天、アラビアゴム、乳糖、デンプン、可溶性デンプン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、トラガントガム、ローカストビーンガム等の多糖類;アルギン酸、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸類、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等の合成高分子等を挙げることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上の複数を組み合わせて用いてもよい。上記補助剤を用いることにより、上記細菌含有組成物の水和性を向上させることができる。
【0058】
〔界面活性剤〕
上記界面活性剤としては、イオン型界面活性剤や、非イオン型界面活性剤など、あらゆるタイプの界面活性剤を用いることができる。イオン型界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド縮合物、イソブチレン−無水マレイン酸の共重合体等を挙げることができる。また、非イオン型界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンが付加したアルキルエーテル、ポリオキシエチレンが付加した高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したトリスチリルフェニルエーテル等を挙げることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上の複数を組み合わせて用いてもよい。また、上記界面活性剤の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されるものではない。一般的には、上記細菌含有組成物の全量に対して、0.001〜0.5重量%とすることが好ましく、0.05〜0.1重量%とすることがより好ましい。
【0059】
〔その他〕
本発明にかかる細菌含有組成物には、さらに、プロピレングリコール、エチレングリコール等の凍結防止剤;キサンタンガム等の天然物、ポリアクリル酸類等の増粘剤;その他有効成分の効力増加のための強力剤;展着剤;乳化剤;着色剤等を含有させることができる。
【0060】
<2.細菌含有組成物の製造方法>
本発明にかかる細菌含有組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、上記細菌含有組成物の形状、形態に応じて、適宜好適な製造方法を選択して用いればよい。また、本発明にかかる細菌含有組成物の形状も特に限定されるものではなく、粉状、粒状、顆粒状、ペースト状、液状、および乳液状などいかなる形状であってもよい。また、水和剤やフロアブル剤の形態であってもよい。つまり、本発明にかかる細菌含有組成物は、上記例示したような形状、形態に応じて、それに適した製造方法により製造すればよい。
【0061】
上記細菌含有組成物の製造方法において用いる細菌は、上述した土壌拮抗菌を少なくとも1種を含んでいればよい。また、上記土壌拮抗菌を複数種混合して用いる場合には、<1.細菌含有組成物>で述べた土壌拮抗菌の混合比となるように、混合すればよい。
【0062】
また、上記土壌拮抗菌を培養して増殖させる場合、上記土壌拮抗菌の培養方法は特に限定されるものではない。具体的には、上記土壌拮抗菌を増殖させることが可能な培地、培養条件、培養装置等を適宜選択して培養すればよい。
【0063】
例えば、上記土壌拮抗菌の培養に用いる培地としては、炭素源としてグルコース、デンプン、デキストリン、スクロース、糖蜜等の糖類、窒素源として酵母エキス、コーン・スティープ・リーカー、肉エキス、小麦胚芽、ペプトン類、バレイショエキス、大豆粉等の有機窒素源、および/または塩安、硝安、硫安等の無機窒素源を含有する培地を用いることができる。また、上記培地には、無機塩としてリン酸、カリウム、カルシウム、マンガン、マグネシウム、鉄等の塩類、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マンガン、硫酸第一鉄、硫酸マグネシウムなどを配合することができる。さらに、必要に応じて消泡剤、バッファー等の種々の添加剤を用いることも可能である。また、上記培地は、上記土壌拮抗菌の増殖に適したpH範囲となるように、上記培地のpHを調整することが好ましい。具体的には、上記培地のpHは、5〜8に調整することが好ましく、6〜7に調整することがより好ましい。また、上記培地の形状は特に限定されるものではなく、液体培地や固体培地など従来公知のいずれの形態であってもよい。
【0064】
上記培地について、より具体的な例としては、AB培地(3.0g/lリン酸1水素カリウム、1.0g/lリン酸2水素カリウム、1.0g/l塩化アンモニウム、0.3g/l硫酸マグネシウム・7水和物、0.15g/l塩化カリウム、0.01g/l塩化カルシウム・2水和物、2.5mg/l硫酸鉄・7水和物、0.2%グルコース)、LB培地などを挙げることができる。
【0065】
上記例示した培地を用いれば、本発明にかかる細菌含有組成物に含有される土壌拮抗菌を培養し、増殖させることができる。
【0066】
また、上記土壌拮抗菌の培養形態は、固体培養であっても、液体培養であっても、また、その他の従来公知の培養形態であってもよい。例えば、液体培養で培養する場合、通気撹拌や振盪培養等の好気的条件下で行えばよい。また、培養温度は、上記土壌拮抗菌に応じて適宜選択すればよい。具体的には、15〜37℃であることが好ましく、25〜28℃であることがより好ましい。上記培養条件とすれば、本発明にかかる細菌含有組成物に含有される土壌拮抗菌を培養し、増殖させることができる。
【0067】
本発明にかかる細菌含有組成物の製造方法では、上記のような培養で得られた上記土壌拮抗菌を用いて、上記例示したような形状となるように、上記細菌含有組成物を製造する。なお、菌体の使用形態としては、菌体自体のほか、その懸濁液ないし培養液又はこれらの濃縮物、ペースト状物、乾燥物、希釈物等のいずれの形態で用いてもよい。これらは、製造する細菌含有組成物の形状に応じて適宜選択して用いればよい。上記土壌拮抗菌の生存・長期保存の観点から、L乾燥法、凍結乾燥法または窒素封入等の方法で、製造されることが好ましい。ここで、本発明にかかる細菌含有組成物の製造方法として、上記細菌含有組成物の形状が、粉状、顆粒状、乳液状、および液状である場合について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0068】
上記細菌含有組成物が粉状である場合、例えば、以下の方法で製造することができる。まず、上記の方法で培養した上記土壌拮抗菌を集菌する。上記土壌拮抗菌の集菌方法には、従来公知の方法を用いることができ、例えば、遠心分離や膜濃縮等を挙げることができる。集菌後の上記土壌拮抗菌に、必要に応じて<1.細菌含有組成物>で例示した固体の希釈剤および/またはその他添加物を添加し、混合する。その後、上記土壌拮抗菌と上記添加物とを含む組成物を凍結乾燥し、粉砕することによって、粉状の本発明にかかる細菌含有組成物を製造することができる。また、上記の凍結乾燥後の組成物を用いて、粒状または顆粒状の細菌含有組成物を製造することもできる。
【0069】
上記細菌含有組成物が乳液状である場合、例えば、以下の方法で製造することができる。上述したような方法を用いて上記土壌拮抗菌を集菌し、界面活性剤を含有する有機溶剤中に混入させた懸濁液を調製することによって、製造することができる。上記界面活性剤としては、<1.細菌含有組成物>で例示した界面活性剤を用いることができる。また、上記有機溶剤としては、<1.細菌含有組成物>で例示した液体の希釈剤を用いることができる。また、これらの添加物は、1種類の化合物を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0070】
上記細菌含有組成物が液状である場合、適当な溶媒に、上記土壌拮抗菌を懸濁することによって製造することができる。上記溶媒としては、水溶性の溶媒や、<1.細菌含有組成物>で例示した液体の希釈剤を用いることができる。
【0071】
上記細菌含有組成物の製造方法において、上記土壌拮抗菌を添加する量は、特に限定されるものではない。例えば、最終的に得られる細菌含有組成物における上記土壌拮抗菌の含有量が、<1.細菌含有組成物>に記載した範囲となるように、適宜設定すればよい。
【0072】
<3.細菌含有組成物の利用>
本発明にかかる細菌含有組成物は、根頭がんしゅ病菌の増殖を阻害することが可能な土壌拮抗菌を含んでいる。そのため、上記細菌含有組成物を土壌に投与することにより、当該土壌に生育する植物の根頭がんしゅ病を防除することが可能となる。
【0073】
本発明にかかる細菌含有組成物を、土壌に投与する方法は、特に限定されるものではなく、細菌含有組成物の形状、使用形態、適用対象となる作物や病害によって適宜選択すればよい。例えば、地上液剤散布、空中液剤散布、施設内施用等の茎葉花部や地際部への散布処理方法を挙げることができる。
【0074】
また、上記細菌含有組成物を水などで希釈し、所望の上記土壌拮抗菌濃度に調整した散布液を散布する方法が挙げられる。散布方法は、特に限定されないが、例えば、上記散布液を動力噴霧器等を使用して植物全体に霧状に噴霧処理することにより散布することができる。
【0075】
上記散布液における上記土壌拮抗菌濃度は、特に限定されないが、1×10〜1×1010cfu/mlであることが好ましく、1×10〜1×10cfu/mlであることがより好ましく、1×10〜1×10cfu/mlであることがさらに好ましい。また、上記散布液の散布量は、特に限定されるものではないが、50〜500L/10aであることが好ましい。また、地上散布する場合、菌体の施用量が、5×10cfu〜5×1013cfu/10a程度となるように散布することが好ましい。
【0076】
また、用土や培養土を上記細菌含有組成物で処理することもできる。これにより、当該用土や培養土における根頭がんしゅ病菌の増殖を阻害することができる。この場合、用土や培養土1Lに対して、上記土壌拮抗菌が1×10〜1×10cfuとなるように本発明にかかる細菌含有組成物を混合し、均一になるように撹拌して処理することが好ましい。
【0077】
また、植物の種や根を、上記細菌含有組成物を水等で希釈した溶液に浸漬することもできる。これにより、当該植物における根頭がんしゅ病を防除することができる。
【0078】
さらに、本発明にかかる細菌含有組成物は、それ単独で使用してもよいが、例えば、殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、除草剤、殺菌剤、植物生長促進剤、液肥、葉面散布剤、共力剤などと併用することもできる。また、併用する薬剤は、1種でもよいし、多種を組み合わせて用いてもよい。また、これらの薬剤と併用する場合、上記細菌含有組成物に混合して用いてもよいし、混合せずに用いてもよい。さらに、本発明にかかる細菌含有組成物は、併用する他の薬剤と同時に用いてもよいし、交互に用いてもよい。
【0079】
なお本発明は、以上例示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術範囲に含まれる。
【実施例】
【0080】
本発明について、実施例、および図1〜図12に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、検定菌の増殖阻害効果は以下のようにして評価した。
【0081】
〔実施例1:土壌拮抗菌の分離・同定〕
バイオ特殊肥料「はっこう米ぬか」(特許第2731763号)を施肥した園芸土壌を、16時間明所、8時間暗所、25℃に設定された植物培養室で数週間栽培を行った。また、AB液体培地にて28℃で振とう培養した検定菌アグロバクテリウム・ツメファシエンスNTL4株を10〜10細胞/mlになるように希釈してAB寒天培地(寒天濃度1.5%)に包埋した寒天培地を作製した。当該寒天培地上に、上記処理を施した上記園芸土壌をのせ、28℃で3〜7日間静置培養した。検定菌の増殖が抑制された土壌および土壌周辺に増殖してきた細菌群を、AB寒天培地上で線引き法、または希釈培養法によりシングルコロニーにまで分離した細菌について、上記と同様の方法により検定菌の増殖を阻害する細菌を20種分離した。なお、検定菌に対する増殖阻害効果は、土壌拮抗菌コロニーの周辺に形成された阻止円の大きさで評価した。具体的には、阻止円の大きさが1mm以上のものを検定菌に対する増殖阻害効果ありと判定した。
【0082】
次に、分離した細菌(土壌拮抗菌)を28℃でAB寒天培地を用いて培養した。培養後の菌体を滅菌水に懸濁してゲノムDNAを抽出した。ゲノム抽出液をテンプレートとし、16SリボソームDNA全長クローニング用PCRプライマーを用いて、PCR法により、16SリボソームDNAを増幅した。その後、PCR産物をクローニングし、塩基配列を複数回決定した。次に、各塩基配列の比較からPCRエラーと思われる配列を修正し、正しい16SリボゾームDNA塩基配列を決定した。こうして決定された16SリボソームDNA塩基配列を、既知菌株の16SリボゾームDNA塩基配列と、塩基配列比較・検索ソフトBLASTおよびFASTAにより比較した。検索結果のうち、E−valueがきわめて低い値(最低は0)を示す上位20〜100位に現れる既知菌種名から、上記土壌拮抗菌の菌種を推定した。ただし、もっとも上位の菌種名が正しい菌種とは限らないので、この点に注意しながら、菌種を推定した。その結果を表1に示す。表1に示す結果に基づき、8つの新菌株を同定し、以下のA〜Hに示すとおり命名した。また、これらA〜Hの新菌株は、いずれも独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託した。なお、各菌株の寄託番号は、菌株名の右に記載している。
【0083】
A:Pseudomonas putida strain A(寄託番号FERM P−20879)
B:Pseudomonas sp. strain B(寄託番号FERM P−20880)
C:Pseudomonas sp. strain C(寄託番号FERM P−20881)
D:Pseudomonas sp. strain D(寄託番号FERM P−20882)
E:Pseudomonas alcaligenes strain E(寄託番号FERM P−20883)
F:Flavobacterium sp. strain F(寄託番号FERM P−20884)
G:Stenotrophomonas sp. strain G(寄託番号FERM P−20885)
H:Enterobacter sp. strain H(寄託番号FERM P−20886)
【0084】
【表1】

【0085】
〔実施例2:未同定土壌拮抗菌および同定土壌拮抗菌による各種検定菌に対する増殖阻害効果の検証〕
実施例1の方法で分離した未同定土壌拮抗菌を用いて、表2に示す検定菌に対する増殖阻害効果を調べた。実験は、表2に示す各検定菌をAB液体培地(またはLB培地)にて28℃で振とう培養した後、10〜10細胞/mlになるように希釈してAB寒天培地またはLB寒天培地)に包埋した寒天培地を作製した。また、未同定土壌拮抗菌を28℃でAB液体培地を用いて振とう培養した。こうして調製した土壌拮抗菌の培養液5μl(1×10〜1×10細菌/ml)を浸み込ませた滅菌ろ紙片(3mmφ)を、上記検定菌を包埋したAB寒天培地上に載せ、28℃で3日間静置培養し、検定菌に対する増殖抑制効果を検証した。なお、検定菌に対する増殖阻害効果は、土壌拮抗菌コロニーの周辺に形成された阻止円の大きさで評価した。具体的には、阻止円の大きさが1mm以上のものを検定菌に対する増殖阻害効果ありと判定した。
【0086】
【表2】

【0087】
その結果、図1(a)、(b)、(d)、および(e)に示すように、検定培地としてAB培地を用いた場合には、阻止円の形成が見られ、実施例1の方法で分離した未同定土壌拮抗菌は、様々な検定菌に対して増殖阻害活性を有することが分かった。また、検定培地として、LB培地を用いた場合には、図1(c)および(f)に示すように、阻止円形成が見られず、増殖阻害効果が見られなかった。なお、図1(a)〜(f)は、それぞれ検定菌として、アグロバクテリウム・ツメファシエンスNTL4、アグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404、アグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404、アグロバクテリウム・ツメファシエンスIFO14793、大腸菌JM109、および大腸菌JM109を用いた結果を示す図である。
【0088】
また、実施例1において分離および種同定を行った土壌拮抗菌A、C、およびFについて、同様に、表2に示す検定菌に対する増殖阻害効果を調べた。その結果を、図2(a)〜(h)に示す。図2(a)〜(h)は、土壌拮抗菌A、C、およびFについて、検定菌に対する阻止円形成の様子を示す図である。なお、図2(a)〜(h)の各パネルの下には、検定菌の種類を示している。図2(a)〜(h)に示すように、土壌拮抗菌A、C、およびFは、検定菌に対する阻止円を形成した。
【0089】
〔実施例3:各土壌拮抗菌の各種検定菌に対する増殖阻害効果の検証〕
実施例1において分離および種同定を行った土壌拮抗菌A〜Hについて、表2に示す他種のアグロバクテリウム属細菌、およびその他の細菌に対する増殖阻害効果を調べた。実験は、表2に示す各検定菌をAB液体培地にて28℃で振とう培養した後、10〜10細胞/mlになるように希釈してAB寒天培地に包埋した寒天培地を作製した。また、土壌拮抗菌A〜Hを28℃でAB液体培地を用いて振とう培養した。こうして調製した土壌拮抗菌の培養液5μl(1×10〜1×10細菌/ml)を浸み込ませた滅菌ろ紙片(3mmφ)を、上記検定菌を包埋したAB寒天培地上に載せ、28℃で3日間静置培養し、検定菌の増殖抑制効果を検証した。なお、検定菌に対する増殖阻害効果は、土壌拮抗菌コロニーの周辺に形成された阻止円の大きさで評価した。具体的には、阻止円の大きさが1mm以上のものを検定菌に対する増殖阻害効果あり(表3、4中における◎および○)と判定した。
【0090】
その結果、表3に示すように、土壌拮抗菌A〜Hはいずれも、根頭がんしゅ病の原因菌であるMAFF301001、MAFF301222、MAFF301224、MAFF301276、およびIFO15193の少なくとも1種の菌株に対して増殖阻害活性を有していた。また、土壌拮抗菌A〜Hは、根頭がんしゅ病の原因菌以外の細菌に対しても増殖阻害活性を有していた。
【0091】
【表3】

【0092】
〔実施例4:混合土壌拮抗菌群による様々な根頭がんしゅ病菌に対する増殖阻害効果の検証〕
土壌拮抗菌A〜Fを28℃でAB液体培地を用いて振とう培養した。上記土壌拮抗菌A〜Fから選択される2種の菌株の培養液(各2.5μlずつ)を混合し、当該混合した培養液5μlを浸み込ませた滅菌ろ紙片(3mmφ)を用いて、上記の方法により検定菌の増殖抑制効果を検証した。また、上記土壌拮抗菌A〜Fの全ての菌株の培養液(各1μlずつ)を混合し、当該混合した培養液6μlを浸み込ませた滅菌ろ紙片(3mmφ)を用いて、上記の方法により検定菌の増殖抑制効果を検証した。その結果を表4に示す。
【0093】
【表4】

【0094】
表4に示すように、土壌拮抗菌A〜Fを複数組み合わせて用いることによって、土壌拮抗菌A〜Fを単独で用いる場合よりも、多くの検定菌に対して増殖阻害効果を示した。すなわち、土壌拮抗菌A〜Fを複数組み合わせて用いることによって、増殖を阻害する対象である細菌の選択域を広くすることができることが分かった。
【0095】
〔実施例5:土壌拮抗菌Enterobacter sp. strain Hによる根頭がんしゅ病菌に対する増殖阻害効果の検証〕
Enterobacter sp. strain H(FERM P−20886)を用いて、実施例3と同様の方法で、根頭がんしゅ病菌(アグロバクテリウム・ツメファシエンスIFO15193株)に対する増殖阻害効果を調べた。その結果を図3に示す。
【0096】
図3に示すように、Enterobacter sp. strain H(FERM P−20886)は、アグロバクテリウム・ツメファシエンスIFO15193株の増殖を阻害した。
【0097】
〔実施例6:土壌拮抗菌Enterobacter sp. strain Hによる根頭がんしゅ形成阻害効果の検証〕
アグロバクテリウム・ツメファシエンスMAFF301276株とEnterobacter sp. strain HをそれぞれAB液体培地で、28℃、振とう培養した。また、タバコ(Nicotiana tabacum cv. Petit Havana SR1)植物を植物用培養土(ピートモス)にて1ヶ月間、26℃、16時間明所、8時間暗所条件で栽培した。当該植物体に上記アグロバクテリウム・ツメファシエンスMAFF301276株の培養液を単独で、または1:1で混合し、接種した。細菌接種後の植物体を、26℃、16時間明所、8時間暗所条件で1ヶ月間栽培した後、根頭がんしゅの大きさを比較して根頭がんしゅ形成能力の比較を行った。上記細菌接種は、上記植物体の下部から約1cm上部に滅菌注射針で茎に穴を開け、そこに細菌の培養液を単独で、または1:1で混合し、数μl(1×10細菌程度)注入した。
【0098】
その結果、図4〜図6に示すように、アグロバクテリウム・ツメファシエンスMAFF301276株とEnterobacter sp. strain Hとを植物体に接種することによって、当該植物体における根頭がんしゅ形成は阻害された。これにより、Enterobacter sp. strain Hは、アグロバクテリウム・ツメファシエンスMAFF301276株による根頭がんしゅ形成を阻害できることが明らかとなった。なお、図4〜図6において、左側2つの植物体は、アグロバクテリウム・ツメファシエンスMAFF301276株のみを接種したのものであり、右側2つの植物体は、アグロバクテリウム・ツメファシエンスMAFF301276株とEnterobacter sp. strain Hとを等量ずつ混合し、接種したものである。
【0099】
〔実施例7:土壌拮抗菌Enterobacter sp. strain Hによる根頭がんしゅ形成阻害効果の検証〕
実施例6の結果が、感染箇所の相違、および接種植物の個体差による根頭がんしゅ形成能相違によるものではないことを検証するために、以下の実験を行った。まず、実施例6の同様の方法で、実験材料となる細菌および植物体を用意した。1ヶ月間栽培した同一タバコ植物体に対して、アグロバクテリウム・ツメファシエンスMAFF301276株単独を植物個体下部から約1cm上部に、Enterobacter sp. strain H とアグロバクテリウム・ツメファシエンスMAFF301276株との混合培養液をさらに約1cm上部に滅菌注射針を用いて接種した。接種後のタバコ植物体は、26℃、16時間明所、8時間暗所条件で1ヶ月間栽培後、根頭がんしゅの大きさを比較して根頭がんしゅ形成能力の比較を行った。
【0100】
さらに、接種部位の違いによる効果を検証するために、接種部位の上下関係を入れ替えて、同様の細菌接種を行い、根頭がんしゅ形成能力の比較を行った。
【0101】
その結果、図7(a)〜(d)および図8(a)〜(d)に示すように、Enterobacter sp. strain H とアグロバクテリウム・ツメファシエンスMAFF301276株との混合培養液を植物体に接種した時には、いずれにおいても、当該植物体における根頭がんしゅ形成は阻害された。したがって、実施例6の結果が、感染箇所の相違、および接種植物の個体差による根頭がんしゅ形成能相違によるものではないことが明らかとなった。
【0102】
〔実施例8:土壌拮抗菌Enterobacter sp. strain H による根頭がんしゅ形成阻害効果の検証〕
アグロバクテリウム・ツメファシエンスMAFF301276株に代えて、アグロバクテリウム・ツメファシエンスIFO15193株を用いること以外、実施例6と同様の方法で実験を行った。その結果、図9〜図11に示すように、アグロバクテリウム・ツメファシエンスIFO15193株とEnterobacter sp. strain Hとを植物体に接種することによって、当該植物体における根頭がんしゅ形成は阻害された。これにより、Enterobacter sp. strain Hは、アグロバクテリウム・ツメファシエンスIFO15193株による根頭がんしゅ形成を阻害できることが明らかとなった。なお、図9〜図11において、左側2つの植物体は、アグロバクテリウム・ツメファシエンスIFO15193株のみを接種したのものであり、右側2つの植物体は、アグロバクテリウム・ツメファシエンスIFO15193株とEnterobacter sp. strain Hとを等量ずつ混合し、接種したものである。
【0103】
〔実施例9:土壌拮抗菌Enterobacter sp. strain H による根頭がんしゅ形成阻害効果の検証〕
アグロバクテリウム・ツメファシエンスMAFF301276株に代えて、アグロバクテリウム・ツメファシエンスIFO15193株を用いること以外、実施例7と同様の方法で実験を行った。その結果、図12(a)〜(d)に示すように、Enterobacter sp. strain H とアグロバクテリウム・ツメファシエンスIFO15193株との混合培養液を植物体に接種した時には、いずれにおいても、当該植物体における根頭がんしゅ形成は阻害された。したがって、実施例8の結果が、感染箇所の相違、および接種植物の個体差による根頭がんしゅ形成能相違によるものではないことが明らかとなった。
【0104】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上のように、本発明では、特定のシュードモナス属細菌、フラボバクテリア属細菌、エンテロバクター属細菌、またはステノトロフォモナス属細菌の少なくとも1つの細菌の菌株を用いることによって、根頭がんしゅ病菌の増殖を阻害する。それゆえ、植物における根頭がんしゅ病を防除することができる。したがって、本発明は、生物農薬、土壌改良剤、農業資材、および園芸資材に利用することができるだけではなく、園芸分野や農業分野に広く応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1(a)〜(f)は、本発明の実施例において、土壌から分離された未同定土壌拮抗菌による根頭がんしゅ病菌の増殖抑制効果を示す図である。
【図2】図2(a)〜(h)は、本発明の実施例において、分離・同定された土壌拮抗菌による根頭がんしゅ病菌の増殖抑制効果を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施例において、Enterobacter sp. strain Hによる根頭がんしゅ病菌の増殖抑制効果を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施例において、Enterobacter sp. strain Hによる根頭がんしゅ形成阻害効果を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施例において、Enterobacter sp. strain Hによる根頭がんしゅ形成阻害効果を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施例において、Enterobacter sp. strain Hによる根頭がんしゅ形成阻害効果を示す図である。
【図7】図7(a)〜(d)は、本発明の実施例において、Enterobacter sp. strain Hによる根頭がんしゅ形成阻害効果を示す図である。
【図8】図8(a)〜(d)は、本発明の実施例において、Enterobacter sp. strain Hによる根頭がんしゅ形成阻害効果を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施例において、Enterobacter sp. strain Hによる根頭がんしゅ形成阻害効果を示す図である。
【図10】図10は、本発明の実施例において、Enterobacter sp. strain Hによる根頭がんしゅ形成阻害効果を示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施例において、Enterobacter sp. strain Hによる根頭がんしゅ形成阻害効果を示す図である。
【図12】図12(a)〜(d)は、本発明の実施例において、Enterobacter sp. strain Hによる根頭がんしゅ形成阻害効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュードモナス・プチダA株(Pseudomonas putida strain A;FERM P−20879)、シュードモナス属細菌B株(Pseudomonas sp. strain B;FERM P−20880)、シュードモナス属細菌C株(Pseudomonas sp. strain C;FERM P−20881)、シュードモナス属細菌D株(Pseudomonas sp. strain D;FERM P−20882)、シュードモナス・アルカリジーナスE株(Pseudomonas alcaligenes strain E;FERM P−20883)、フラボバクテリア属細菌(Flavobacterium sp.)、エンテロバクター属細菌H株(Enterobacter sp. strain H;FERM P−20886)、およびステノトロフォモナス属細菌(Stenotrophomonas sp.)からなる群より選択される細菌の少なくとも1種の菌株を含有することを特徴とする細菌含有組成物。
【請求項2】
シュードモナス属細菌(Pseudomonas sp.)、フラボバクテリア属細菌(Flavobacterium sp.)、エンテロバクター属細菌(Enterobacter sp.)、およびステノトロフォモナス属細菌(Stenotrophomonas sp.)からなる群より選択される細菌の菌株を少なくとも2種含有することを特徴とする細菌含有組成物。
【請求項3】
上記シュードモナス属細菌が、シュードモナス・プチダA株(Pseudomonas putida strain A;FERM P−20879)、シュードモナス属細菌B株(Pseudomonas sp. strain B;FERM P−20880)、シュードモナス属細菌C株(Pseudomonas sp. strain C;FERM P−20881)、シュードモナス属細菌D株(Pseudomonas sp. strain D;FERM P−20882)、およびシュードモナス・アルカリジーナスE株(Pseudomonas alcaligenes strain E;FERM P−20883)であることを特徴とする請求項2に記載の細菌含有組成物。
【請求項4】
上記エンテロバクター属細菌が、エンテロバクター属細菌H株(Enterobacter sp. strain H;FERM P−20886)であることを特徴とする請求項2または3に記載の細菌含有組成物。
【請求項5】
上記フラボバクテリア属細菌が、フラボバクテリア属細菌F株(Flavobacterium sp. strain F;FERM P−20884)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の細菌含有組成物。
【請求項6】
上記ステノトロフォモナス属細菌が、ステノトロフォモナス属細菌G株(Stenotrophomonas sp. strain G;FERM P−20885)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の細菌含有組成物。
【請求項7】
根頭がんしゅ病菌の増殖を阻害することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の細菌含有組成物。
【請求項8】
上記根頭がんしゅ病菌が、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)であることを特徴とする請求項7に記載の細菌含有組成物。
【請求項9】
根頭がんしゅ病を防除することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の細菌含有組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の細菌含有組成物を用いて、植物根頭がんしゅの形成を阻害することを特徴とする根頭がんしゅ病防除方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の細菌含有組成物を用いて、植物根頭がんしゅ病の発生を抑制することを特徴とする根頭がんしゅ病防除方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の細菌含有組成物を用いて、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の2種以上の菌株の増殖を阻害することを特徴とする根頭がんしゅ病の防除方法。
【請求項13】
請求項2に記載の細菌含有組成物を用いて、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の増殖を特異的に阻害することを特徴とする根頭がんしゅ病の防除方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−300903(P2007−300903A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135829(P2006−135829)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】