桁間連結装置
【課題】道路高架橋等の支承位置で橋桁間に取り付けられ、桁間の連続性を高め、振動や騒音の低減、地震時の桁に生じる被害の軽減を図る。
【解決手段】橋脚の支承上に隣接して支持された橋桁1Aの桁端部に、他方の橋桁1Bの桁端部まで延設された他方の橋桁に取り付けられる取付フランジ30aと、取付フランジ30aと略L字形をなして形成されたベースフランジ30bとからなる変位制限ピース部材30と、橋桁1Bの桁端部に固着され、変位制限ピース部材30の上下方向の変動を抑制する連結板20と、連結板20と変位制限ピース30との間に介装され、連結板20と変位制限ピース30との橋軸方向の相対変位を許容するスライド装置40とを備え、変位制限ピース30の拘束により、橋桁間での上下方向の相対変位を抑制する。
【解決手段】橋脚の支承上に隣接して支持された橋桁1Aの桁端部に、他方の橋桁1Bの桁端部まで延設された他方の橋桁に取り付けられる取付フランジ30aと、取付フランジ30aと略L字形をなして形成されたベースフランジ30bとからなる変位制限ピース部材30と、橋桁1Bの桁端部に固着され、変位制限ピース部材30の上下方向の変動を抑制する連結板20と、連結板20と変位制限ピース30との間に介装され、連結板20と変位制限ピース30との橋軸方向の相対変位を許容するスライド装置40とを備え、変位制限ピース30の拘束により、橋桁間での上下方向の相対変位を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は桁間連結装置に係り、橋梁の橋桁の端部に取り付けられ、隣接した橋桁あるいは橋台と連結する際に用いられ、桁間を通過する車両とによって生じる交通振動等の低減を図るようにした桁間連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路などの高架橋においては、車両の通行によって生じる交通振動が問題となることがある。従来の高架橋の多くは、経済性が考慮されて、単純合成桁が計画・架設されてきた。最近では、橋梁伸縮装置を減らすことによる車両の走行性向上や維持管理の簡略化、さらには、耐震性向上等を目的として、多径間連続橋が採用されることが多くなった。しかし、温度変化に起因する橋桁の伸縮により、連続させることができる橋長にも限界があり、所定長さごとに隣接する橋桁との間に、遊間(隙間)を設定する必要がある。
【0003】
交通振動は、橋桁間に設置された遊間の存在により発生していることが一般に知られている。埋設ジョイントは、舗装面のつなぎ目を平滑にすることが可能な舗装部の連結構造である。この埋設ジョイントを施工すると、車両が舗装面のつなぎ目を通過する際に発生させる衝撃による騒音、および振動を低減することができる。しかし、橋桁間の遊間を跨いで車両荷重が飛び移ることによって発生する交通振動は、埋設ジョイントの施工で防ぐことはできない。
【0004】
特許文献1では、大地震時の落橋防止を目的に橋桁を連結し、かつ免震性能を備えた装置が提案されている。特許文献1に記載の連結プレートからなる免震落橋防止装置は、地震時の大変形を対象として、積層ゴムのせん断剛性等が設定されている。
また、特許文献2では、大型車両の通過時に過大な沈み込みを防止して、騒音や振動の発生を抑えることができるとする橋梁用支承が提案されている。
【0005】
交通振動のような微小振幅に対応させるためには、上下方向にがたつきのない連結装置の設置が有効である。出願人はすでに、連結部材にアスファルト等の粘弾性材料を介装して桁間の連結を行うようにした制振高架橋(特許文献3)を提案している。
【特許文献1】特開平9−184111号公報参照。
【特許文献2】特開2006−77395号公報参照。
【特許文献3】特開2000−73311号公報参照。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の特許文献1,3に開示された装置は、基本的に鋼桁側のベース部材と連結鋼板の側面に積層ゴムやアスファルトを介装させた構造となっている。交通振動を低減するためには、桁間をなるべく剛性の高い部材で連結することが有効であるが、特許文献1,3のように積層ゴムやアスファルトを介装させた構造では、十分な剛性が確保できない。そのため、車両通行時に生じる交通振動のような微小変形の振動対策には効果があまり見込めない。また、温度変化に伴い橋桁は橋軸方向に伸縮するが、橋長が長くなるにつれて桁端部の伸縮量は大きくなり、この伸縮量を吸収可能な構造とする必要がある。また、上述の特許文献2に開示された支承を用いると、支承の沈み込みに起因する交通振動を低減することができるが、橋桁に発生した撓み等に起因する交通振動を防ぐことはできない。また、既設の橋梁に交通振動対策として、支承を取り替えることはコストがかかり過ぎるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する問題点を解消し、車両の乗り移りによって橋桁の端部に生じる上下方向の変位を拘束して、隣接する橋桁にスムーズに応力を伝達することができ、また、温度変化に伴う橋桁の伸縮量を吸収できる、交通振動対策として新設の橋梁のみならず、既設の橋梁にも取り付け可能で、安価な桁間連結装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、支承上に隣接して支持された橋桁の一方の桁端部に取り付けられ、他方の橋桁の桁端部まで延設された連結部材と、前記他方の橋桁の桁端部に固着され、前記連結部材の上下方向の変動を抑制する変位制限部材と、前記連結部材と前記変位制限部材との間に介装され、前記連結部材と前記変位制限部材との橋軸方向の相対変位を許容するスライド部とを備え、前記変位制限部材の拘束により、橋桁間での上下方向の相対変位を抑制することを特徴とする。
【0009】
前記変位制限部材は、前記他方の橋桁に取り付けられる取付フランジ部と、該フランジ部と略L字形をなして形成されたベースフランジ部からなり、前記ベースフランジ部で前記連結部材の連係をもつようにすることが好ましい。
【0010】
前記変位制限部材は、上下端面にテーパ面が形成され、前記連結部材に形成された開口部の内周面が、前記テーパ面と嵌合可能なテーパ面として形成され、該テーパ面を介して前記変位制限部材と前記連結部材との間の上下方向変位を抑制することが好ましい。
前記スライド部は、橋軸方向に沿うレールに案内され直動するリニアスライダとすることが好ましい。
【0011】
対向した前記ベースフランジ部間を連結棒部材で連結し、該連結棒部材に所定の軸力を付与して前記連結部材を保持することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の乗り移りによって橋桁の端部に生じる上下方向の変位を拘束して、隣接する橋桁にスムーズに応力を伝達することができ、また、温度変化に伴う橋桁の伸縮量を吸収できる、交通振動対策として新設の橋梁のみならず、既設の橋梁にも取り付け可能で、安価な桁間連結装置を提供できる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の桁間連結装置の実施するための最良の形態として、添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る桁間連結装置10を、隣接する橋桁1の遊間4を跨いで設置した全体構造図である。図1に示すように、連結対象となる橋桁1A,1B(以下、単に橋桁1と記す。橋桁の区別をつける場合は符号A,Bを付記する。)は、橋脚梁部3上面に設置された支承5に支持されている。橋桁1はプレストレストコンクリート橋(以下、PC橋とする)で、上面には路面舗装6が施されて、車両7の走行性が確保されている。路面舗装6の遊間4には埋設ジョイント8が設置され、車両7通過時の衝撃による騒音と振動との低減が図られている。本発明に係る桁間連結装置10は、橋桁1の遊間4を跨いだ、橋桁1の端部近傍に取り付けられる。
【実施例1】
【0015】
図2は、本発明に係る第1の桁間連結装置10の斜視図である。隣接した橋桁1を跨いで設置される連結板20は、矩形の鋼板からなっている。橋桁1A側に位置する連結板20には複数の連結板取付ボルト孔(不図示)が形成され、また、橋桁1B側には、矩形が切り抜かれた1個の開口部22が形成されている。
【0016】
橋桁1A側には、所定厚をなす矩形のスペーサプレート23が桁間連結装置10との間に介装されている。スペーサプレート23としては、本実施例では、無収縮モルタルを図示しない型枠にて現場施工したモルタル薄板が用いられている。このスペーサプレート23は、連結板20との不陸をなくし、橋桁1Aへ作用する応力を分散させるとともに、連結板20と橋桁1Bとを所定距離だけ離間させる役割を果たす。橋桁1Aには、スペーサプレート23を介して、縦横に所定本数が配列された連結板取付ボルト21が植設されている。この連結板取付ボルト21により、連結板20に形成された連結板取付ボルト孔を通じて連結板20を橋桁1Aに固定できるようになっている。
【0017】
他方、橋桁1Bには、橋桁1A,1Bの上下方向の相対変位を拘束する、変位制限部材としての2個の変位制限ピース30が、開口部22内位置に取り付けられている。開口部22は、温度変化による橋桁1の伸縮を妨げることがないように、橋軸方向に十分な切欠寸法からなり、その内部に2個の変位制限ピース30が配置されている。変位制限ピース30は、本実施例では、断面形がL字形をなした鋼材からなり、取付フランジ30aは、複数の変位制限ピース取付ボルト31により、橋桁1Bにスペーサプレート23を介して所定位置に取り付けられている。このとき、取付フランジ30aと直角をなすベースフランジ30bが、開口部22の上下の内周面に沿うように配置されている。橋桁1B側のスペーサプレート23は、変位制限ピース30ごとに施工してもよいし、2個の変位制限ピース30を同時に支持できる寸法としてもよい。
【0018】
図3は、図2中の断面線III-IIIで示した桁間連結装置10の断面図である。連結板20とベースフランジ30bとの間には、案内レール41と、案内レール41と摺動可能に係合する可動ブロック42とが介装されている。案内レール41は、ベースフランジ30bの側面に案内レール取付ボルト43にて固定されている。また、可動ブロック42は、連結板20の開口部内周面22aに可動ブロック取付ボルト44にて固定されている(以下、案内レール41と可動ブロック42とを合わせてスライド装置40と記す)。スライド装置40は、可動ブロック42が案内レール41の軸方向に直動スライドするリニアガイド部材からなり、これにより、スライド装置40は、温度変化による橋桁の伸縮に対して、案内レール41と可動ブロック42とをスライドさせて対応することができる。一方、案内レール41の断面は、可動ブロック42が案内レール41から離脱しないような断面形状になっており、これにより、交通振動により発生する上下方向の橋桁1A,1Bの相対変位を抑制することができる。
【0019】
スライド装置40は各種のものが考えられるが、例えば、公知の各種のリニアタイプのスライド装置を適用することが可能である。この場合、微小な振動である交通振動の低減を図るため、スライド装置40の上下方向のクリアランスは、少なくとも0.5mm以下、望ましくは0.1mm以下がよい。そのため、変位制限ピース取付ボルト孔32と変位制限ピース取付ボルト31とのクリアランスを利用して、変位制限ピース30の最終的な高さ調整を行うのがよい。
【0020】
次に、桁間連結装置10の各部材の寸法について説明する。橋桁の温度変化の範囲は架橋地点の環境条件により異なり、また、橋桁の温度伸縮量や交通振動量も、橋梁の形式や規模、各部材の材質等により異なる。そのため、桁間連結装置10を構成する各部材寸法は、これらの条件を考慮して決定する必要がある。例えば、連結板20に形成された開口部22の大きさ、及びスライド装置40の設計スライド量は、橋梁用の伸縮装置の設計に倣うことができる。すなわち、架橋地点の環境条件から基準温度を設定し、その基準温度を中心として決定した温度変化の範囲から、橋桁1の伸縮量に応じた開口部22とスライド装置40との寸法を決定することができる。
【0021】
また、発生する交通振動量も、橋桁1の断面が決定した段階で、判断することが可能である。その振動量を低減するために必要な応力を算出することにより、桁間連結装置10を構成する各部材の寸法や板厚、ボルト本数、スライド装置40の種類等を決定することができる。例えば、本実施例において標準的なPC橋では、連結板20の厚さ50mm以上、幅500〜1000mm、長さ500mm〜3000mm程度と想定される。
【0022】
図4は、本実施例にかかる桁間連結装置10の効果の解析結果を示している。同図に示したように、本実施例の振動低減対象の振動数は、地盤振動対策としては1Hz〜40Hz程度、固体音対策としては30Hz〜200Hz程度である。本解析では、高さ15mの橋脚上に架設された、隣接する橋長30mの単純桁を所定の剛度の橋桁連結装置で接続し、交通車両の通過時に発生する交通振動を求めた。縦軸は体感補正後の加速度実行値、横軸は振動数を示しており、代表的な振動数における加速度実行値をプロットしている。なお、□印は本実施例に係る橋桁連結装置で隣接する単純桁を接続したもの、●印は振動対策なしの例を示している。図4より、地盤振動対策としての振動数40Hz以下の領域では、得られた加速度実行値はおよそ半減しており、固体音対策の領域である40Hz以上の振動数においても大幅に加速度実行値が低減していることが分かる。
【0023】
以上のように、本発明に係る桁間連結装置10を用いることにより、交通車両の通過により橋桁1に発生する交通振動を低減するとともに、固体音の発生も低減することができる。また、桁間連結装置10は、簡単な構成で、入手しやすい汎用的な材料から製作することができるため、製作・施工費がかからない。このことは、特に既設の橋桁に交通振動対策を施す場合に特に効果を奏する。
【0024】
上述では、平板状の連結板20について説明したが、連結板20に作用する曲げモーメントにより、連結板20の板厚が必要以上に厚くなる場合には、連結板20に補強フランジを溶接付けし、曲げ剛度の向上を図ることができる。
【0025】
図5は、上下辺付近に補強フランジ24を設置した連結板20の斜視図である。このように補強されて曲げ剛度が高められた連結板20は、連結板20自身に発生するたわみ量を減じさせることができるため、交通振動低減効果を高めることができる。
【0026】
本実施例では、連結板取付ボルト21、及び変位制限ピース取付ボルト31を桁高の中央付近に設置することができる。一般にPC橋等の鉄筋コンクリート構造を有する橋梁では、桁高の中央付近には鉄筋が少ないため、上記ボルト類を鉄筋に干渉させることなく容易に施工することが可能となる。
【0027】
上述では、新設のPC橋での適用について説明したが、交通振動が問題となっている既設のPC橋にも採用することができる。既設橋梁の場合、交通振動を直接測定することが可能となる。そのため、測定された交通振動を桁間連結装置10の設計に反映させることができ、合理的な設計が可能となる。また、桁間連結装置10の固定のために橋桁1にアンカー用の穿孔を行う場合は、橋桁1の鉄筋を探査して穿孔可能な位置を確認することが必要である。そのため、連結板20、及び変位制限ピース30のボルト孔あけは、鉄筋探査結果を反映させた孔位置とすることが望ましい。
【0028】
また、本実施例に係る桁間連結装置10は、鋼橋にも採用することができる。この場合、スペーサプレート23を厚板の鋼板からなるガイドベース部材に変更して、ウェブに作用する応力を分散させるとともに、必要に応じて適切な補強材を設置して、ウェブの座屈に備える必要がある。
【0029】
以下、他の複数の実施例について、実施例1と異なる構成部分を中心に説明するが、本発明の構成として必須な部位は、各実施例も具備していることはいうまでもない。
【実施例2】
【0030】
図6は、本発明に係る第2の桁間連結装置10の斜視図である。本実施例では、連結板20の上下端面を、変位制限ピース30とスライド装置40とで保持している。そのため、連結板20に開口部を形成する必要がなく、部材の製造費を削減することができる。本実施例の橋桁連結装置10は、変位制限ピース取付ボルト31の施工位置が、実施例1と比べて橋桁1Bの中央部から離れるため、ボルト施工に当たり制約が少ない場所の設置が有利である。例えば、橋桁に隣接する橋台側に変位制限ピースを取り付ける場合が考えられる。
【実施例3】
【0031】
図7は、本発明に係る第3の桁間連結装置10の斜視図である。本実施例に係る桁間連結装置10の連結板20は、橋桁1B側に2個の開口部22を有している。図8は、図7中の断面線VIII-VIIIで示した桁間連結装置10の断面図である。変位制限ピース30は、開口部22内に変位制限装置取付ボルト31にてスペーサプレート23を介して橋桁1Bに固定されている。変位制限ピース30は溝型状の形状をなし、溝部には複数の変位制限ピース取付ボルト孔32が形成されている。スライド装置40は、変位制限ピース30と開口部22の内周面との隙間に設置され、開口部22を所定寸法に設定することにより、がたつくことなくスライド装置40を設置することができる。
【0032】
本実施例では、実施例1,2と比べて、スライド装置40の設置数を増やすことができる。そのため、交通振動に対する抵抗面を多く配することができ、一方の橋桁の振動を他方の橋桁に、より確実に伝達することが可能となる。
【実施例4】
【0033】
図9は、本発明に係る第4の桁間連結装置10の斜視図である。本実施例に係る桁間連結装置10の連結板20には、4個の開口部22が形成されている。実施例3に示した桁間連結装置10と比べても、2倍(8個)のスライド装置40を設置することができる。そのため、1つ当たりのスライド装置40に作用する応力を低減でき、より確実に一方の橋桁の振動を他方の橋桁に伝達することが可能となる。
【実施例5】
【0034】
図10は、本発明に係る第5の桁間連結装置10の斜視図である。2個のL字形の変位制限ピース30が、ベースフランジ30bを互いに対向させて、スペーサプレート23を介して橋桁1Bに固定されている。対向したベースフランジ30bには、複数本の変位制限ピース締付鋼棒33が挿通されて、互いの変位制限ピース30が連結されている。このようにベースフランジ30bと、変位制限ピース締付鋼棒33とから形成された空間に、連結板20が挿通されている。挿通された連結板20は、ベースフランジ30bにその上下の端面が保持されることにより、交通振動の低減効果が図られている。
【0035】
図11は、図10中の断面線XI-XIで示した桁間連結装置10の部分断面図である。ベースフランジ30bと連結板20の上下の端面との接触面に、すべり材35を施すことにより、橋桁1の温度変化による橋軸方向の伸縮に対応することができる。すべり材35には各種のものが考えられるが、すべり材として一般的なポリテトラフルオロエチレン (PTFE)等を利用することができる。
【0036】
変位制限ピース締付鋼棒33が締め付けられて、所定の軸力が導入されることにより、ベースフランジ30bと連結板20との隙間がなくなり、交通振動の低減効果を高めることができる。より確実に、ベースフランジ30bと連結板20との隙間をなくすために、変位制限ピース締付鋼棒33に所定の軸力を与えた後に、変位制限ピース取付ボルト31の本締めを行うのが好ましい。なお、すべり材35の代わりに、実施例1で説明したスライド装置を設置しても、本発明の効果を享受することができる。
【実施例6】
【0037】
図12は、本発明に係る第6の桁間連結装置10の斜視図である。また、図13は、図12中の断面線XIII-XIIIで示した桁間連結装置10の部分断面図である。橋桁1Bには、スペーサプレート23を介して、スリット36が形成された変位制限ピース30が取り付いている。変位制限ピース30は、スペーサプレート23と接する平板部と、この平板部に固着したコ字部材とからなり、連結板を挿入可能なスリット36が形成されている。スリット36は、交通振動の低減効果を発揮するため、挿入される連結板20との隙間を十分に小さくできる寸法であることが望ましい。なお、連結板20とスリット36との接触面にすべり材35が施されることにより、橋桁1の温度変化による橋軸方向の伸縮に対応することができる。
【実施例7】
【0038】
図14は、本発明に係る第7の桁間連結装置10の斜視図である。図15は、図14中の断面線XV-XVで示した桁間連結装置10の部分断面図である。橋桁1B側に位置する連結板20には、2個の開口部22が形成されている。開口部22の上下の内周面には、橋桁1B側に向かって開口が広がるテーパ面25が形成されている。この開口部22は、スペーサプレート23から突出した複数の変位制限ピース取付ボルト31に挿通された変位制限ピース30のと嵌合されている。変位制限ピース30は、直方体状の鋼材からなり、上下端面には連結板20のテーパ面と嵌合可能なテーパ面25が形成されている。これにより開口部22の内周面と変位制限ピース30とはテーパ状の嵌合部を介して密接することができる。
【0039】
鋼板からなる支圧板37は、変位制限ピース30と連結板20とのテーパ状の嵌合部を覆うように、変位制限ピース取付ボルト31にて連結板20に接するように取り付けられている。変位制限ピース取付ボルト31には所定のナットの締付け力によって所定の軸力が導入され、軸力は支圧板37を介して、連結板20と変位制限ピース30とのテーパ部25を密接させる力として作用する。その結果、連結板20と変位制限ピース30との隙間を無くし、交通振動の低減効果の向上を図ることができる。
【0040】
連結板20と変位制限ピース30との接触面と、連結板20と支圧板37との接触面とには、薄板状のテフロン(登録商標)製すべり材35が介装されている。これにより、橋桁1の温度変化による伸縮に対応して、連結板20と変位制限ピース30とが橋軸方向に滑動可能となる。
【0041】
上述した実施例7に示した、連結板20と変位制限ピース30とのテーパ面を逆方向に設定することもできる。図16は、第7の桁間連結装置10の変形例を示した部分断面図である。同図に示すように、連結板20の開口部22の内周面は、橋桁1側に向かって開口が狭くなるテーパ部25が形成されており、このテーパと嵌合可能なテーパ部25が変位制限ピース30に形成されている。支圧板37は、連結板20とスペーサプレート23との間に配されている。変位制限ピース取付ボルト31に所定の軸力を導入することにより、連結板20と変位制限ピース30との上下方向の隙間をなくすことができる。
【0042】
[他の構造形式への適用例]
図17は、各橋脚2から径間中央に向かって、カンチレバー工法等によって桁1(1A,1B)を張り出して延設し、それぞれの径間中央位置にヒンジ支承5を設け、連続橋とした橋梁構造形式を示した概略側面図である。この場合、本発明の各実施例に示した桁間連結装置10を、同図に示したように、ヒンジ支承5の位置に設けることで、この種の径間中央で連結された構造形式の橋梁にも桁間連結装置10を有効に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る桁間連結装置を、隣接する橋桁の遊間を跨いで設置した全体構造図。
【図2】本発明に係る第1の桁間連結装置を示した斜視図。
【図3】図2中の断面線III-IIIで示した桁間連結装置を示した断面図。
【図4】本実施例にかかる桁間連結装置の効果を解析結果を示したグラフ。
【図5】上下辺付近に補強フランジを設置した連結板の斜視図。
【図6】本発明に係る第2の桁間連結装置を示した斜視図。
【図7】本発明に係る第3の桁間連結装置を示した斜視図。
【図8】図7中の断面線VII-VIIで示した桁間連結装置を示した断面図。
【図9】本発明に係る第4の桁間連結装置を示した斜視図。
【図10】本発明に係る第5の桁間連結装置を示した斜視図。
【図11】図10中の断面線XI-XIで示した桁間連結装置を示した部分断面図。
【図12】本発明に係る第6の桁間連結装置を示した斜視図。
【図13】図12中の断面線XIII-XIIIで示した桁間連結装置を示した部分断面図。
【図14】本発明に係る第7の桁間連結装置を示した斜視図。
【図15】図14中の断面線XV-XVで示した桁間連結装置を示した部分断面図。
【図16】本発明に係る第7の桁間連結装置の変形例を示した部分断面図。
【図17】本発明に係る桁間連結装置を、径間中央に支承を有する構造形式の橋梁に適用した例を示した概略説明図。
【符号の説明】
【0044】
1,1A,1B 橋桁
4 遊間
5 支承
10 桁間連結装置
20 連結板
21 連結板取付ボルト
22 開口部
23 スペーサプレート
24 補強フランジ
25 テーパ部
30 変位制限ピース
33 変位制限ピース締付鋼棒
35 すべり材
37 支圧板
40 スライド装置
41 案内レール
42 可動ブロック
【技術分野】
【0001】
本発明は桁間連結装置に係り、橋梁の橋桁の端部に取り付けられ、隣接した橋桁あるいは橋台と連結する際に用いられ、桁間を通過する車両とによって生じる交通振動等の低減を図るようにした桁間連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路などの高架橋においては、車両の通行によって生じる交通振動が問題となることがある。従来の高架橋の多くは、経済性が考慮されて、単純合成桁が計画・架設されてきた。最近では、橋梁伸縮装置を減らすことによる車両の走行性向上や維持管理の簡略化、さらには、耐震性向上等を目的として、多径間連続橋が採用されることが多くなった。しかし、温度変化に起因する橋桁の伸縮により、連続させることができる橋長にも限界があり、所定長さごとに隣接する橋桁との間に、遊間(隙間)を設定する必要がある。
【0003】
交通振動は、橋桁間に設置された遊間の存在により発生していることが一般に知られている。埋設ジョイントは、舗装面のつなぎ目を平滑にすることが可能な舗装部の連結構造である。この埋設ジョイントを施工すると、車両が舗装面のつなぎ目を通過する際に発生させる衝撃による騒音、および振動を低減することができる。しかし、橋桁間の遊間を跨いで車両荷重が飛び移ることによって発生する交通振動は、埋設ジョイントの施工で防ぐことはできない。
【0004】
特許文献1では、大地震時の落橋防止を目的に橋桁を連結し、かつ免震性能を備えた装置が提案されている。特許文献1に記載の連結プレートからなる免震落橋防止装置は、地震時の大変形を対象として、積層ゴムのせん断剛性等が設定されている。
また、特許文献2では、大型車両の通過時に過大な沈み込みを防止して、騒音や振動の発生を抑えることができるとする橋梁用支承が提案されている。
【0005】
交通振動のような微小振幅に対応させるためには、上下方向にがたつきのない連結装置の設置が有効である。出願人はすでに、連結部材にアスファルト等の粘弾性材料を介装して桁間の連結を行うようにした制振高架橋(特許文献3)を提案している。
【特許文献1】特開平9−184111号公報参照。
【特許文献2】特開2006−77395号公報参照。
【特許文献3】特開2000−73311号公報参照。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の特許文献1,3に開示された装置は、基本的に鋼桁側のベース部材と連結鋼板の側面に積層ゴムやアスファルトを介装させた構造となっている。交通振動を低減するためには、桁間をなるべく剛性の高い部材で連結することが有効であるが、特許文献1,3のように積層ゴムやアスファルトを介装させた構造では、十分な剛性が確保できない。そのため、車両通行時に生じる交通振動のような微小変形の振動対策には効果があまり見込めない。また、温度変化に伴い橋桁は橋軸方向に伸縮するが、橋長が長くなるにつれて桁端部の伸縮量は大きくなり、この伸縮量を吸収可能な構造とする必要がある。また、上述の特許文献2に開示された支承を用いると、支承の沈み込みに起因する交通振動を低減することができるが、橋桁に発生した撓み等に起因する交通振動を防ぐことはできない。また、既設の橋梁に交通振動対策として、支承を取り替えることはコストがかかり過ぎるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する問題点を解消し、車両の乗り移りによって橋桁の端部に生じる上下方向の変位を拘束して、隣接する橋桁にスムーズに応力を伝達することができ、また、温度変化に伴う橋桁の伸縮量を吸収できる、交通振動対策として新設の橋梁のみならず、既設の橋梁にも取り付け可能で、安価な桁間連結装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、支承上に隣接して支持された橋桁の一方の桁端部に取り付けられ、他方の橋桁の桁端部まで延設された連結部材と、前記他方の橋桁の桁端部に固着され、前記連結部材の上下方向の変動を抑制する変位制限部材と、前記連結部材と前記変位制限部材との間に介装され、前記連結部材と前記変位制限部材との橋軸方向の相対変位を許容するスライド部とを備え、前記変位制限部材の拘束により、橋桁間での上下方向の相対変位を抑制することを特徴とする。
【0009】
前記変位制限部材は、前記他方の橋桁に取り付けられる取付フランジ部と、該フランジ部と略L字形をなして形成されたベースフランジ部からなり、前記ベースフランジ部で前記連結部材の連係をもつようにすることが好ましい。
【0010】
前記変位制限部材は、上下端面にテーパ面が形成され、前記連結部材に形成された開口部の内周面が、前記テーパ面と嵌合可能なテーパ面として形成され、該テーパ面を介して前記変位制限部材と前記連結部材との間の上下方向変位を抑制することが好ましい。
前記スライド部は、橋軸方向に沿うレールに案内され直動するリニアスライダとすることが好ましい。
【0011】
対向した前記ベースフランジ部間を連結棒部材で連結し、該連結棒部材に所定の軸力を付与して前記連結部材を保持することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の乗り移りによって橋桁の端部に生じる上下方向の変位を拘束して、隣接する橋桁にスムーズに応力を伝達することができ、また、温度変化に伴う橋桁の伸縮量を吸収できる、交通振動対策として新設の橋梁のみならず、既設の橋梁にも取り付け可能で、安価な桁間連結装置を提供できる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の桁間連結装置の実施するための最良の形態として、添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る桁間連結装置10を、隣接する橋桁1の遊間4を跨いで設置した全体構造図である。図1に示すように、連結対象となる橋桁1A,1B(以下、単に橋桁1と記す。橋桁の区別をつける場合は符号A,Bを付記する。)は、橋脚梁部3上面に設置された支承5に支持されている。橋桁1はプレストレストコンクリート橋(以下、PC橋とする)で、上面には路面舗装6が施されて、車両7の走行性が確保されている。路面舗装6の遊間4には埋設ジョイント8が設置され、車両7通過時の衝撃による騒音と振動との低減が図られている。本発明に係る桁間連結装置10は、橋桁1の遊間4を跨いだ、橋桁1の端部近傍に取り付けられる。
【実施例1】
【0015】
図2は、本発明に係る第1の桁間連結装置10の斜視図である。隣接した橋桁1を跨いで設置される連結板20は、矩形の鋼板からなっている。橋桁1A側に位置する連結板20には複数の連結板取付ボルト孔(不図示)が形成され、また、橋桁1B側には、矩形が切り抜かれた1個の開口部22が形成されている。
【0016】
橋桁1A側には、所定厚をなす矩形のスペーサプレート23が桁間連結装置10との間に介装されている。スペーサプレート23としては、本実施例では、無収縮モルタルを図示しない型枠にて現場施工したモルタル薄板が用いられている。このスペーサプレート23は、連結板20との不陸をなくし、橋桁1Aへ作用する応力を分散させるとともに、連結板20と橋桁1Bとを所定距離だけ離間させる役割を果たす。橋桁1Aには、スペーサプレート23を介して、縦横に所定本数が配列された連結板取付ボルト21が植設されている。この連結板取付ボルト21により、連結板20に形成された連結板取付ボルト孔を通じて連結板20を橋桁1Aに固定できるようになっている。
【0017】
他方、橋桁1Bには、橋桁1A,1Bの上下方向の相対変位を拘束する、変位制限部材としての2個の変位制限ピース30が、開口部22内位置に取り付けられている。開口部22は、温度変化による橋桁1の伸縮を妨げることがないように、橋軸方向に十分な切欠寸法からなり、その内部に2個の変位制限ピース30が配置されている。変位制限ピース30は、本実施例では、断面形がL字形をなした鋼材からなり、取付フランジ30aは、複数の変位制限ピース取付ボルト31により、橋桁1Bにスペーサプレート23を介して所定位置に取り付けられている。このとき、取付フランジ30aと直角をなすベースフランジ30bが、開口部22の上下の内周面に沿うように配置されている。橋桁1B側のスペーサプレート23は、変位制限ピース30ごとに施工してもよいし、2個の変位制限ピース30を同時に支持できる寸法としてもよい。
【0018】
図3は、図2中の断面線III-IIIで示した桁間連結装置10の断面図である。連結板20とベースフランジ30bとの間には、案内レール41と、案内レール41と摺動可能に係合する可動ブロック42とが介装されている。案内レール41は、ベースフランジ30bの側面に案内レール取付ボルト43にて固定されている。また、可動ブロック42は、連結板20の開口部内周面22aに可動ブロック取付ボルト44にて固定されている(以下、案内レール41と可動ブロック42とを合わせてスライド装置40と記す)。スライド装置40は、可動ブロック42が案内レール41の軸方向に直動スライドするリニアガイド部材からなり、これにより、スライド装置40は、温度変化による橋桁の伸縮に対して、案内レール41と可動ブロック42とをスライドさせて対応することができる。一方、案内レール41の断面は、可動ブロック42が案内レール41から離脱しないような断面形状になっており、これにより、交通振動により発生する上下方向の橋桁1A,1Bの相対変位を抑制することができる。
【0019】
スライド装置40は各種のものが考えられるが、例えば、公知の各種のリニアタイプのスライド装置を適用することが可能である。この場合、微小な振動である交通振動の低減を図るため、スライド装置40の上下方向のクリアランスは、少なくとも0.5mm以下、望ましくは0.1mm以下がよい。そのため、変位制限ピース取付ボルト孔32と変位制限ピース取付ボルト31とのクリアランスを利用して、変位制限ピース30の最終的な高さ調整を行うのがよい。
【0020】
次に、桁間連結装置10の各部材の寸法について説明する。橋桁の温度変化の範囲は架橋地点の環境条件により異なり、また、橋桁の温度伸縮量や交通振動量も、橋梁の形式や規模、各部材の材質等により異なる。そのため、桁間連結装置10を構成する各部材寸法は、これらの条件を考慮して決定する必要がある。例えば、連結板20に形成された開口部22の大きさ、及びスライド装置40の設計スライド量は、橋梁用の伸縮装置の設計に倣うことができる。すなわち、架橋地点の環境条件から基準温度を設定し、その基準温度を中心として決定した温度変化の範囲から、橋桁1の伸縮量に応じた開口部22とスライド装置40との寸法を決定することができる。
【0021】
また、発生する交通振動量も、橋桁1の断面が決定した段階で、判断することが可能である。その振動量を低減するために必要な応力を算出することにより、桁間連結装置10を構成する各部材の寸法や板厚、ボルト本数、スライド装置40の種類等を決定することができる。例えば、本実施例において標準的なPC橋では、連結板20の厚さ50mm以上、幅500〜1000mm、長さ500mm〜3000mm程度と想定される。
【0022】
図4は、本実施例にかかる桁間連結装置10の効果の解析結果を示している。同図に示したように、本実施例の振動低減対象の振動数は、地盤振動対策としては1Hz〜40Hz程度、固体音対策としては30Hz〜200Hz程度である。本解析では、高さ15mの橋脚上に架設された、隣接する橋長30mの単純桁を所定の剛度の橋桁連結装置で接続し、交通車両の通過時に発生する交通振動を求めた。縦軸は体感補正後の加速度実行値、横軸は振動数を示しており、代表的な振動数における加速度実行値をプロットしている。なお、□印は本実施例に係る橋桁連結装置で隣接する単純桁を接続したもの、●印は振動対策なしの例を示している。図4より、地盤振動対策としての振動数40Hz以下の領域では、得られた加速度実行値はおよそ半減しており、固体音対策の領域である40Hz以上の振動数においても大幅に加速度実行値が低減していることが分かる。
【0023】
以上のように、本発明に係る桁間連結装置10を用いることにより、交通車両の通過により橋桁1に発生する交通振動を低減するとともに、固体音の発生も低減することができる。また、桁間連結装置10は、簡単な構成で、入手しやすい汎用的な材料から製作することができるため、製作・施工費がかからない。このことは、特に既設の橋桁に交通振動対策を施す場合に特に効果を奏する。
【0024】
上述では、平板状の連結板20について説明したが、連結板20に作用する曲げモーメントにより、連結板20の板厚が必要以上に厚くなる場合には、連結板20に補強フランジを溶接付けし、曲げ剛度の向上を図ることができる。
【0025】
図5は、上下辺付近に補強フランジ24を設置した連結板20の斜視図である。このように補強されて曲げ剛度が高められた連結板20は、連結板20自身に発生するたわみ量を減じさせることができるため、交通振動低減効果を高めることができる。
【0026】
本実施例では、連結板取付ボルト21、及び変位制限ピース取付ボルト31を桁高の中央付近に設置することができる。一般にPC橋等の鉄筋コンクリート構造を有する橋梁では、桁高の中央付近には鉄筋が少ないため、上記ボルト類を鉄筋に干渉させることなく容易に施工することが可能となる。
【0027】
上述では、新設のPC橋での適用について説明したが、交通振動が問題となっている既設のPC橋にも採用することができる。既設橋梁の場合、交通振動を直接測定することが可能となる。そのため、測定された交通振動を桁間連結装置10の設計に反映させることができ、合理的な設計が可能となる。また、桁間連結装置10の固定のために橋桁1にアンカー用の穿孔を行う場合は、橋桁1の鉄筋を探査して穿孔可能な位置を確認することが必要である。そのため、連結板20、及び変位制限ピース30のボルト孔あけは、鉄筋探査結果を反映させた孔位置とすることが望ましい。
【0028】
また、本実施例に係る桁間連結装置10は、鋼橋にも採用することができる。この場合、スペーサプレート23を厚板の鋼板からなるガイドベース部材に変更して、ウェブに作用する応力を分散させるとともに、必要に応じて適切な補強材を設置して、ウェブの座屈に備える必要がある。
【0029】
以下、他の複数の実施例について、実施例1と異なる構成部分を中心に説明するが、本発明の構成として必須な部位は、各実施例も具備していることはいうまでもない。
【実施例2】
【0030】
図6は、本発明に係る第2の桁間連結装置10の斜視図である。本実施例では、連結板20の上下端面を、変位制限ピース30とスライド装置40とで保持している。そのため、連結板20に開口部を形成する必要がなく、部材の製造費を削減することができる。本実施例の橋桁連結装置10は、変位制限ピース取付ボルト31の施工位置が、実施例1と比べて橋桁1Bの中央部から離れるため、ボルト施工に当たり制約が少ない場所の設置が有利である。例えば、橋桁に隣接する橋台側に変位制限ピースを取り付ける場合が考えられる。
【実施例3】
【0031】
図7は、本発明に係る第3の桁間連結装置10の斜視図である。本実施例に係る桁間連結装置10の連結板20は、橋桁1B側に2個の開口部22を有している。図8は、図7中の断面線VIII-VIIIで示した桁間連結装置10の断面図である。変位制限ピース30は、開口部22内に変位制限装置取付ボルト31にてスペーサプレート23を介して橋桁1Bに固定されている。変位制限ピース30は溝型状の形状をなし、溝部には複数の変位制限ピース取付ボルト孔32が形成されている。スライド装置40は、変位制限ピース30と開口部22の内周面との隙間に設置され、開口部22を所定寸法に設定することにより、がたつくことなくスライド装置40を設置することができる。
【0032】
本実施例では、実施例1,2と比べて、スライド装置40の設置数を増やすことができる。そのため、交通振動に対する抵抗面を多く配することができ、一方の橋桁の振動を他方の橋桁に、より確実に伝達することが可能となる。
【実施例4】
【0033】
図9は、本発明に係る第4の桁間連結装置10の斜視図である。本実施例に係る桁間連結装置10の連結板20には、4個の開口部22が形成されている。実施例3に示した桁間連結装置10と比べても、2倍(8個)のスライド装置40を設置することができる。そのため、1つ当たりのスライド装置40に作用する応力を低減でき、より確実に一方の橋桁の振動を他方の橋桁に伝達することが可能となる。
【実施例5】
【0034】
図10は、本発明に係る第5の桁間連結装置10の斜視図である。2個のL字形の変位制限ピース30が、ベースフランジ30bを互いに対向させて、スペーサプレート23を介して橋桁1Bに固定されている。対向したベースフランジ30bには、複数本の変位制限ピース締付鋼棒33が挿通されて、互いの変位制限ピース30が連結されている。このようにベースフランジ30bと、変位制限ピース締付鋼棒33とから形成された空間に、連結板20が挿通されている。挿通された連結板20は、ベースフランジ30bにその上下の端面が保持されることにより、交通振動の低減効果が図られている。
【0035】
図11は、図10中の断面線XI-XIで示した桁間連結装置10の部分断面図である。ベースフランジ30bと連結板20の上下の端面との接触面に、すべり材35を施すことにより、橋桁1の温度変化による橋軸方向の伸縮に対応することができる。すべり材35には各種のものが考えられるが、すべり材として一般的なポリテトラフルオロエチレン (PTFE)等を利用することができる。
【0036】
変位制限ピース締付鋼棒33が締め付けられて、所定の軸力が導入されることにより、ベースフランジ30bと連結板20との隙間がなくなり、交通振動の低減効果を高めることができる。より確実に、ベースフランジ30bと連結板20との隙間をなくすために、変位制限ピース締付鋼棒33に所定の軸力を与えた後に、変位制限ピース取付ボルト31の本締めを行うのが好ましい。なお、すべり材35の代わりに、実施例1で説明したスライド装置を設置しても、本発明の効果を享受することができる。
【実施例6】
【0037】
図12は、本発明に係る第6の桁間連結装置10の斜視図である。また、図13は、図12中の断面線XIII-XIIIで示した桁間連結装置10の部分断面図である。橋桁1Bには、スペーサプレート23を介して、スリット36が形成された変位制限ピース30が取り付いている。変位制限ピース30は、スペーサプレート23と接する平板部と、この平板部に固着したコ字部材とからなり、連結板を挿入可能なスリット36が形成されている。スリット36は、交通振動の低減効果を発揮するため、挿入される連結板20との隙間を十分に小さくできる寸法であることが望ましい。なお、連結板20とスリット36との接触面にすべり材35が施されることにより、橋桁1の温度変化による橋軸方向の伸縮に対応することができる。
【実施例7】
【0038】
図14は、本発明に係る第7の桁間連結装置10の斜視図である。図15は、図14中の断面線XV-XVで示した桁間連結装置10の部分断面図である。橋桁1B側に位置する連結板20には、2個の開口部22が形成されている。開口部22の上下の内周面には、橋桁1B側に向かって開口が広がるテーパ面25が形成されている。この開口部22は、スペーサプレート23から突出した複数の変位制限ピース取付ボルト31に挿通された変位制限ピース30のと嵌合されている。変位制限ピース30は、直方体状の鋼材からなり、上下端面には連結板20のテーパ面と嵌合可能なテーパ面25が形成されている。これにより開口部22の内周面と変位制限ピース30とはテーパ状の嵌合部を介して密接することができる。
【0039】
鋼板からなる支圧板37は、変位制限ピース30と連結板20とのテーパ状の嵌合部を覆うように、変位制限ピース取付ボルト31にて連結板20に接するように取り付けられている。変位制限ピース取付ボルト31には所定のナットの締付け力によって所定の軸力が導入され、軸力は支圧板37を介して、連結板20と変位制限ピース30とのテーパ部25を密接させる力として作用する。その結果、連結板20と変位制限ピース30との隙間を無くし、交通振動の低減効果の向上を図ることができる。
【0040】
連結板20と変位制限ピース30との接触面と、連結板20と支圧板37との接触面とには、薄板状のテフロン(登録商標)製すべり材35が介装されている。これにより、橋桁1の温度変化による伸縮に対応して、連結板20と変位制限ピース30とが橋軸方向に滑動可能となる。
【0041】
上述した実施例7に示した、連結板20と変位制限ピース30とのテーパ面を逆方向に設定することもできる。図16は、第7の桁間連結装置10の変形例を示した部分断面図である。同図に示すように、連結板20の開口部22の内周面は、橋桁1側に向かって開口が狭くなるテーパ部25が形成されており、このテーパと嵌合可能なテーパ部25が変位制限ピース30に形成されている。支圧板37は、連結板20とスペーサプレート23との間に配されている。変位制限ピース取付ボルト31に所定の軸力を導入することにより、連結板20と変位制限ピース30との上下方向の隙間をなくすことができる。
【0042】
[他の構造形式への適用例]
図17は、各橋脚2から径間中央に向かって、カンチレバー工法等によって桁1(1A,1B)を張り出して延設し、それぞれの径間中央位置にヒンジ支承5を設け、連続橋とした橋梁構造形式を示した概略側面図である。この場合、本発明の各実施例に示した桁間連結装置10を、同図に示したように、ヒンジ支承5の位置に設けることで、この種の径間中央で連結された構造形式の橋梁にも桁間連結装置10を有効に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る桁間連結装置を、隣接する橋桁の遊間を跨いで設置した全体構造図。
【図2】本発明に係る第1の桁間連結装置を示した斜視図。
【図3】図2中の断面線III-IIIで示した桁間連結装置を示した断面図。
【図4】本実施例にかかる桁間連結装置の効果を解析結果を示したグラフ。
【図5】上下辺付近に補強フランジを設置した連結板の斜視図。
【図6】本発明に係る第2の桁間連結装置を示した斜視図。
【図7】本発明に係る第3の桁間連結装置を示した斜視図。
【図8】図7中の断面線VII-VIIで示した桁間連結装置を示した断面図。
【図9】本発明に係る第4の桁間連結装置を示した斜視図。
【図10】本発明に係る第5の桁間連結装置を示した斜視図。
【図11】図10中の断面線XI-XIで示した桁間連結装置を示した部分断面図。
【図12】本発明に係る第6の桁間連結装置を示した斜視図。
【図13】図12中の断面線XIII-XIIIで示した桁間連結装置を示した部分断面図。
【図14】本発明に係る第7の桁間連結装置を示した斜視図。
【図15】図14中の断面線XV-XVで示した桁間連結装置を示した部分断面図。
【図16】本発明に係る第7の桁間連結装置の変形例を示した部分断面図。
【図17】本発明に係る桁間連結装置を、径間中央に支承を有する構造形式の橋梁に適用した例を示した概略説明図。
【符号の説明】
【0044】
1,1A,1B 橋桁
4 遊間
5 支承
10 桁間連結装置
20 連結板
21 連結板取付ボルト
22 開口部
23 スペーサプレート
24 補強フランジ
25 テーパ部
30 変位制限ピース
33 変位制限ピース締付鋼棒
35 すべり材
37 支圧板
40 スライド装置
41 案内レール
42 可動ブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支承上に隣接して支持された橋桁の一方の桁端部に取り付けられ、他方の橋桁の桁端部まで延設された連結部材と、
前記他方の橋桁の桁端部に固着され、前記連結部材の上下方向の変動を抑制する変位制限部材と、
前記連結部材と前記変位制限部材との間に介装され、前記連結部材と前記変位制限部材との橋軸方向の相対変位を許容するスライド部と、を備え、
前記変位制限部材の拘束により、橋桁間での上下方向の相対変位を抑制することを特徴とする桁間連結装置。
【請求項2】
前記変位制限部材は、前記他方の橋桁に取り付けられる取付フランジ部と、該フランジ部と略L字形をなして形成されたベースフランジ部からなり、
前記ベースフランジ部で前記連結部材の連係をもつようにしたことを特徴とする請求項1に記載の桁間連結装置。
【請求項3】
前記変位制限部材は、上下端面にテーパ面が形成され、前記連結部材に形成された開口部の内周面が、前記テーパ面と嵌合可能なテーパ面として形成され、該テーパ面を介して前記変位制限部材と前記連結部材との間の上下方向変位を抑制したことを特徴とする請求項1に記載の桁間連結装置。
【請求項4】
前記スライド部は、橋軸方向に沿うレールに案内され直動するリニアスライダからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の桁間連結装置。
【請求項5】
対向した前記ベースフランジ部間を連結棒部材で連結し、該連結棒部材に所定の軸力を付与して前記連結部材を保持するようにしたことを特徴とする請求項1,請求項2または請求項4のいずれか1項に記載の桁間連結装置。
【請求項1】
支承上に隣接して支持された橋桁の一方の桁端部に取り付けられ、他方の橋桁の桁端部まで延設された連結部材と、
前記他方の橋桁の桁端部に固着され、前記連結部材の上下方向の変動を抑制する変位制限部材と、
前記連結部材と前記変位制限部材との間に介装され、前記連結部材と前記変位制限部材との橋軸方向の相対変位を許容するスライド部と、を備え、
前記変位制限部材の拘束により、橋桁間での上下方向の相対変位を抑制することを特徴とする桁間連結装置。
【請求項2】
前記変位制限部材は、前記他方の橋桁に取り付けられる取付フランジ部と、該フランジ部と略L字形をなして形成されたベースフランジ部からなり、
前記ベースフランジ部で前記連結部材の連係をもつようにしたことを特徴とする請求項1に記載の桁間連結装置。
【請求項3】
前記変位制限部材は、上下端面にテーパ面が形成され、前記連結部材に形成された開口部の内周面が、前記テーパ面と嵌合可能なテーパ面として形成され、該テーパ面を介して前記変位制限部材と前記連結部材との間の上下方向変位を抑制したことを特徴とする請求項1に記載の桁間連結装置。
【請求項4】
前記スライド部は、橋軸方向に沿うレールに案内され直動するリニアスライダからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の桁間連結装置。
【請求項5】
対向した前記ベースフランジ部間を連結棒部材で連結し、該連結棒部材に所定の軸力を付与して前記連結部材を保持するようにしたことを特徴とする請求項1,請求項2または請求項4のいずれか1項に記載の桁間連結装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−68248(P2009−68248A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237524(P2007−237524)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】
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