説明

梅加工食品

【課題】従来にない新規な梅加工食品を提供する。具体的には、酸味や塩味が緩和され、まろやかな食味が付与された梅加工食品の提供であり、更には、梅原料として、塩漬、調味液に浸漬された梅を用いた場合であっても、酸味、塩味等に影響されることなく調味液の呈味がしっかりと付与され、味の多様性に対応可能な梅加工食品を提供する。
【解決手段】油脂含量が15%以上である調味油に、固形梅を添加して梅加工食品を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梅加工食品に関する。具体的には、15%以上の油脂を含有する調味油に梅を添加して調製された梅加工食品であって、酸味や塩味が緩和された梅加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
梅漬、梅干等の梅を原料とした食品は、古くから日本の食卓で親しまれている。梅原料を用いた加工食品としては、すり潰した梅肉や梅酢(梅干を漬けたときにできる漬汁)を含有したドレッシング(特許文献1)や、梅肉を混合したバター(特許文献2)等が知られているが、いずれも最終食品に梅風味を付与する技術であり、梅本来の味質を改善する技術について何ら検討されていない。
【0003】
油脂を用いた梅漬け、梅干に関する技術として、特許文献3には、辛味成分として5%のカラシ油を含有する調味液に梅干を浸漬後、取り出した梅の実にカラシ粉を付着させた梅漬けが開示されている。
特許文献3に開示された技術は、調味梅干に関する技術である。具体的には、塩蔵した梅干に対して調味を付与する技術であり、梅干由来の塩味や酸味が強い呈味となり、味が単一となりやすいといった問題を抱えていた。
加えて、特許文献3にかかる発明は、低塩化に伴う食味の低下を防止するために辛味を付与する技術であり、まろやかな食味を付与することはできなかった。
【0004】
特許文献4には、加熱油中に減塩梅干を浸漬して加熱処理を行った後に、脱油する梅干の長期保存処理方法が開示されている。本技術は、梅干の減塩化に伴う保存性の低下を改良する技術である。具体的には、60〜120℃の温度に調整した加熱油に梅干を添加することで加熱殺菌を行い、脱油して梅干表面に油脂のコーティングを施し、かびの発生及び腐敗を防止する技術であり、調味油中に固形梅を含有した状態で商品が提供される本発明とは異なる技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01−20069号公報
【特許文献2】特開平06−189677号公報
【特許文献3】特開平07−163292号公報
【特許文献4】特開昭62−195263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来食されてきた梅加工食品は、最終食品に梅本来の風味を付与する技術であり、梅本来の味質改善が図れない、梅漬、梅干の酸味や塩味が緩和された、まろやかな食味を付与することができない、味の多様性に欠けるといった課題を抱えていた。
本発明はかかる課題に鑑み、従来にない新規な梅加工食品を提供することを目的とする。具体的には、酸味や塩味が緩和され、まろやかな食味が付与された梅加工食品を提供することを目的とする。更に、原料として調味梅干を用いた場合は、調味梅干の呈味成分と調味油の呈味が共にしっかりと付与され、味の多様性に対応できる梅加工食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み本発明者らが鋭意研究を行った結果、油脂含量が15%以上である調味油に固形梅を添加することにより、酸味や塩味が緩和され、まろやかな食味が付与された梅加工食品を提供できることを見出した。更に、得られた梅加工食品は調味油の呈味がしっかりと付与され、味に多様性を持たせた梅加工食品を提供できることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は下記項1〜2に掲げる梅加工食品に関する。
項1.油脂含量が15%以上である調味油に、固形梅を添加して調製された梅加工食品。
項2.固形梅100質量部に対する調味油の添加量が15質量部以上である、項1に記載の梅加工食品。
【発明の効果】
【0009】
梅本来の酸味や塩味が低減され、まろやかな呈味を有する梅加工食品を提供できる。更には、調味油の呈味がしっかりと付与され、味に多様性を持たせた梅加工食品を提供できる。本発明の梅加工食品は、油脂含量が15%以上である調味油に固形梅を添加するといった極めて簡便な工程で製造可能であり、本発明は汎用性が高い技術である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、油脂含量が15%以上、好ましくは20%以上、更に好ましくは65%以上である調味油に固形梅を添加することを特徴とする。
油脂含量が15%を下回ると、梅由来の酸味や塩味を緩和することができず、目的とする梅加工食品を提供することができない。
油脂は食用が可能な油脂であれば種類は特に制限されない。好適には、菜種油、大豆油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、オリーブ油、グレープシードオイル、ゴマ油、コメ油、トウモロコシ油、落花生油、パーム油、パーム核油、ヤシ油などの食品用植物性油脂、またはこれらを調合した油脂を用いることができる。
【0011】
調味油とは、調味、香味成分を含有した油であれば特に限定されず、例えば、調味料が添加された油やゴマ油をはじめとした香味油を例示できる。本発明の技術を用いれば、梅の酸味や塩味を緩和し、まろやかな呈味を付与できる一方、調味油の呈味を調整することにより、味に多様性を持たせた梅加工食品を提供できる。調味料が添加された油を使用する場合は、カレー、ガーリック、バジル、ペッパー等の香辛料、香料、鰹節、味噌、醤油、食塩、酸味料、砂糖や酒等、特に制限されず各種調味料を使用可能である。調味料の添加量は目的とする味によって適宜調整することができる。好ましくは、調味油中、1〜85質量%、更に好ましくは5〜60質量%の調味料を使用できる。
【0012】
浸漬の原料となる梅は、固形梅(固形状の梅)であれば、塩漬梅、調味梅、梅干等、梅の種類は特に限定されない。なお、本発明は塩漬された梅や調味漬けされた梅、梅干を原料に用いても、塩味や酸味が緩和され、まろやかな呈味の梅加工食品を提供できる利点を有する。また、本発明は原料となる固形梅として、調味梅干を用いた場合に、調味梅干の呈味と、調味油の呈味が共にしっかりと付与され、従来にない味のバリエーションを付与できるという利点も有する。
本発明において固形状とは、ペースト状に加工された梅肉や粉末化されたものと異なり、梅の実そのもの(種を除いた梅の実を含む)、喫食に適した程度にカットされたもの、すり潰された梅肉が再度固形状に加工されたもの等、梅本来の食感を楽しめるものであれば特に限定されない。なお、固形梅と併用して梅肉等を利用することも可能である。
【0013】
固形梅は事前に加熱処理を行っても構わない。加熱処理を行うことにより、梅加工食品に香ばしさが付与される、保存性が向上する等の利点を有する。なお、固形梅を浸漬する前に調味油を事前加熱しても構わない。
【0014】
本発明は、油脂含量が15%以上である調味油に固形梅を添加することにより、梅の酸味や塩味が緩和された梅加工食品を提供することができる。かくして得られた梅加工食品は、調味油ごと容器に充填し、容器詰めの梅加工食品とし、市場に流通させることができる。具体的には、本発明の梅加工食品は、調味油中に固形梅を含有した状態で流通、販売される加工食品である点で、特許文献4に開示された技術と相違する。
固形梅に対する調味油の配合割合としては、固形梅100質量部に対して調味油が15質量部以上、好ましくは25〜100質量部となるように添加することが望ましい。
【0015】
以上のとおり、本発明の梅加工食品は、特別な製造工程を要することなく、簡便な製造工程で多様性に富んだ梅加工食品を提供できるという利点を有する。
【0016】
本発明の内容を以下の実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0017】
実施例1 梅加工食品の調製(カレー味)
表1及び表2に示す処方に従って梅加工食品を調製した。
<調味梅干の調製>
流水にて塩蔵梅を塩分約10%まで脱塩し、表1の原材料を水に撹拌溶解した調味液に梅を調味液:梅が2:1(重量)の割合になるよう添加し、冷暗所にて7〜10日間漬け込んだ。
【0018】
【表1】

【0019】
<梅加工食品の調製>
上記で得られた調味梅干をフライパンにて中火で上下2面各1分ずつ素焼きし、焼き目をつけた。鍋に菜種油、ミックストコフェロール及びローストオニオンをいれ、中火で160〜170℃まで加熱した。火を止め、残りの原材料(表2参照)を添加、撹拌して調味油を調製した。調味梅干4粒(約70g)を詰めたガラス瓶に、調製した調味油を15g添加し、梅加工食品を調製した。
【0020】
【表2】

【0021】
得られた梅加工食品(調味油梅(カレー味))は、調味梅干の酸味や塩味が緩和され、カレーの呈味がしっかりと付与された梅加工食品であった。一方、比較例として上記油脂(菜種油)を水に置き換える以外は表1と同じ処方で調味液を調製し、実施例1と同様の手法を用いて梅加工食品を調製したが、得られた梅加工食品は調味梅干由来の酸味や塩味が強く、まろやかな味を付与することはできなかった。
【0022】
実施例2 梅加工食品の調製(バジル味)
表3及び表4に示す処方に従って梅加工食品を調製した。
<調味梅干の調製>
流水にて塩蔵梅を塩分約10%まで脱塩し、表2の原材料を水に撹拌溶解した調味液に梅を調味液:梅が2:1(重量)の割合になるよう添加し、冷暗所にて7〜10日間漬け込んだ。
【0023】
【表3】

【0024】
<梅加工食品の調製>
オリーブ油に表4記載の原材料を添加、撹拌して調味油を調製した。調味梅干4粒(約70g)を詰めたガラス瓶に、調製した調味油を30g添加し、梅加工食品を調製した。
【0025】
【表4】

【0026】
得られた梅加工食品(調味油梅(バジル味))は、調味梅干の酸味や塩味が緩和され、バジルとガーリックの呈味がしっかりと付与された梅加工食品であった。
【0027】
実施例3 梅加工食品の調製(かつお味)
表5に示す処方に従って梅加工食品を調製した。
<梅干の調製>
梅実重量に対し、20wt%の食塩を加えて14日間以上塩漬し、天日干ししたのち保管した梅(塩蔵梅)を流水で塩分約10%まで脱塩した。
【0028】
<梅加工食品の調製>
上記で得られた梅干をフライパンにて中火で上下2面各1分ずつ素焼きし、焼き目をつけた。鍋にごま油、ミックストコフェロール及びかつお節をいれ、中火で160〜170℃まで加熱した。火と止め、残りの原材料を添加、撹拌して調味油を調製した。調味梅干4粒(約70g)を詰めたガラス瓶に、調製した調味油を22g添加し、梅加工食品を調製した。
【0029】
【表5】

【0030】
得られた梅加工食品(調味油梅(かつお味))は、梅干の酸味や塩味が緩和され、かつおの呈味がしっかりと付与された梅加工食品であった。
【0031】
実施例4、5 梅加工食品の調製(味噌味、辛味味)
表6及び表7に示す処方に従って梅加工食品を調製した。
<調味梅干の調製>
流水にて塩蔵梅を塩分約10%まで脱塩し、表6の原材料を水に撹拌溶解した調味液に梅を調味液:梅が2:1(重量)の割合になるよう添加し、冷暗所にて7〜10日間漬け込んだ。
【0032】
【表6】

【0033】
<梅加工食品の調製>
上記で得られた調味梅干をフライパンにて中火で上下2面各1分ずつ素焼きし、焼き目をつけた。調味梅干4粒(約70g)を詰めた各々のガラス瓶に、下記表7に従って調製した調味油を実施例4は70g、実施例5は15g添加し、梅加工食品を調製した。
(味噌味)鍋に表7に示す材料を添加し、撹拌しながら中火で加熱し、100〜110℃で2分間加熱した。
(辛味味)鍋にごま油、ラー油、ミックストコフェロール及びフライドガーリックを添加し、撹拌しながら中火で160〜170℃まで加熱した。火を止め、残りの原材料(表7参照)を添加、撹拌して調味油を調製した。
【0034】
【表7】

【0035】
得られた梅加工食品(調味油梅)は、調味梅干の酸味や塩味が緩和され、辛味や味噌の呈味がしっかりと付与された梅加工食品であった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂含量が15%以上である調味油に、固形梅を添加して調製された梅加工食品。
【請求項2】
固形梅100質量部に対する調味油の添加量が15質量部以上である、請求項1に記載の梅加工食品。



【公開番号】特開2012−191886(P2012−191886A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57860(P2011−57860)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】