説明

梅干を主原料とする調味料

【課題】梅干の製造工程で生じうる二級品などを有効活用すると共に、梅干の梅肉、種、仁までの全てが含む栄養素や効能を十分に活用でき、更には日々の食生活に容易に使うことのできる調味料を提供する。
【解決手段】本発明の調味料は、梅干1の梅肉2、種3および仁4の全てを粉砕して得られる。この粉末状の調味料は、梅干1に含まれる、梅肉2、種3および仁4の全ての持つ栄養素を含有するので、梅干の持つ高い栄養素や効能を、消費者に提供できる。また粉末状の調味料であることで、消費者は、梅干の癖のある食感に苦労することなく、日々の食生活の中で、梅干の持つ栄養素や効能を感じることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梅干を主原料とする調味料であって、特に梅干の種および仁をも用いた調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
梅干は、クエン酸や多種のビタミンなど、人体にとって必要不可欠な栄養素を多く含む保存食である。特に、梅干に多く含まれるクエン酸は、食欲増進、健康増進や疲労回復などの多くの効果を有する。これらの栄養素や特性は、他の食品では得られにくい問題がある。例えば、梅干に含まれるクエン酸は、胃腸の働きを活発にし、血行をよくして疲労回復に役立つほか、殺菌、抗菌作用によって、食あたり、胃弱、不眠症などを改善することでも知られている。
【0003】
この一方、梅干を毎日たくさん食べることは、現代の食生活では難しいことが多い。特に、梅干は、その特有の酸味、香り、食感を有しており、嗜好として合わない場合には、食することが困難となることも多い。このように、嗜好品としての梅干を食することが苦手な場合には、梅干に含まれる様々な栄養素を得ることが難しい。
【0004】
このため、梅干の持つ食欲増進、健康増進および疲労回復といった効果を簡単に得るために、梅干を原料とする食品や梅干を利用した食品についての技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−16175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、塩漬け梅を熟成した酒粕につけた梅漬物や漬けるのに用いられた酒粕を含む調味料を開示する。このような梅漬物や調味料により、梅の有する栄養素を、簡単かつおいしく得ることができるようになる。
【0007】
また、特許文献1以外であっても、梅干や塩漬け梅を利用した食品について、これらを食べやすくする技術が提案されている。
【0008】
しかしながら、従来技術のように食べやすくする工夫を施された梅干であっても、梅干独特の果肉の食感や酸味が苦手という消費者も多数存在する。また、従来技術のように、食べやすくされたといっても、梅干そのものの品質が十分であることが必要である。すなわち、大量に漬けられた梅干は、用いられた梅そのものの品質や製造工程でのばらつきによって、二級品などを含むこともある。このような二級品は、そのままで市場に流通させることが難しく、一方従来技術のような梅干の漬け方を変えたとしても食するのは難しい。
【0009】
このような二級品は、従来は梅肉を用いた調味料(ジャム、ドレッシング、その他)に転換されているなどしていた。しかしながら、このような梅肉を用いた商品展開には限界がある。また、梅肉を用いたジャムなどは、調味料としての用途にも限界があり、日々の食卓において多種多様に用いられることは難しい。この結果、梅干の持つ効能や栄養素を、日々の食生活の中に取り込むことは難しい問題がある。
【0010】
また、これらの二級品の活用においても、梅肉がジャムやジュースに使われるだけであり、種およびその内部の仁は、廃棄されている現状がある。現在の梅干に関する商品開発は、梅肉だけに着目されており、種などは、廃棄されるか肥料等に活用されるかでしかない。
【0011】
また、梅干の梅肉には、多くの栄養素が含まれるが、梅肉だけでは、その効能を十分に発揮することは困難である。
【0012】
以上のように、従来技術は、(1)梅干が苦手な消費者に食しにくい問題、(2)梅干の製造で生じうる二級品などの有効活用ができない問題、(3)調味料としての用途に限界があり、日々の食生活に梅干の栄養素や効能を十分に活用できない問題、(4)梅肉のみからの栄養素や効能を得ていない問題、などを有していた。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑み、梅干の製造工程で生じうる二級品などを有効活用すると共に、梅干の梅肉、種、仁までの全てが含む栄養素や効能を十分に活用でき、更には日々の食生活に容易に使うことのできる調味料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題に鑑み、本発明の調味料は、梅干の梅肉、種および仁を粉砕して得られる梅粉末を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の調味料は、粉末をベースとしているので、梅干の食感や風味が苦手な消費者であっても、容易に食することができ、消費者は、梅干の持つ高い栄養素や効能を容易に得ることができる。特に、梅肉のみならず、種および仁も用いることで、梅干の持つ様々な栄養素および効能の全てを十分に活用できる。
【0016】
また、梅干の製造工程で生じる、二級品などそのままでは市場への流通が困難な梅干を有効活用することができる。
【0017】
また、本発明の調味料は、粉末をベースとしているので、様々な食品や料理に添加することができ、日々の食卓の中で梅干の持つ栄養素や効能を十分に摂取できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における調味料の主原料となる梅干の模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1における調味料の製造工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の発明に係る調味料は、梅干の梅肉、種および仁を粉砕して得られる梅粉末を含む。
【0020】
この構成により、調味料は、梅干の持つ栄養素や効能を高い精度で有することができる。特に、種や仁までをも含むことで、調味料は、高い栄養素や効能を発揮することができる。
【0021】
本発明の第2の発明に係る調味料では、第1の発明に加えて、梅粉末は、60メッシュ以上100メッシュ以下である。
【0022】
この構成により、粉末状の調味料は、歯ざわりや食感を損なうことなく、様々な食品や食材に振り掛けることができる。この結果、消費者は、日々の食生活の中で、梅干の持つ栄養素や効能を、梅干特有の食しにくさに困ることなく、簡単に得ることができる。さらには、梅干のもつ栄養素や効能を得ることができることで、健康増進、疲労回復などの効果を得ることができる。
【0023】
本発明の第3の発明に係る調味料では、第1又は第2の発明に加えて、梅粉末は、梅肉、種および仁の全てを、粉砕機によって粉砕することで得られる。
【0024】
この構成により、低コストで、調味料が製造される。
【0025】
本発明の第4の発明に係る調味料では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、粉末に水分を添加し、ペースト状である。
【0026】
この構成により、消費者は、食材や食品に練りかけることで、調味料を容易に活用できる。
【0027】
本発明の第5の発明に係る辛味調味料は、第1から第4のいずれか記載の調味料に、刻まれた唐辛子を混合させる。あるいは生姜が混合される場合もある。これらの辛味を生じさせる他の食品は、種々に選択されれば良い。
【0028】
この構成により、辛味調味料は、辛味を嗜好する消費者に適合すると共に、梅干の持つ栄養素や効能、あるいは酸味や爽やかさを提供できる。この結果、調味料を使用するバリエーションを拡げることができる。
【0029】
本発明の第6の発明に係る麺製品は、第1から4のいずれか記載の調味料が練りこまれる。
【0030】
この構成により、梅干の栄養素や効能を有する麺製品を消費者に提供できる。
【0031】
本発明の第7の発明に係る菓子類は、1から4のいずれか記載の調味料が練りこまれる。
【0032】
この構成により、梅干の栄養素や効能を有する菓子類を消費者に提供できる。
【0033】
(実施の形態1)
【0034】
実施の形態1について説明する。
【0035】
図1は、本発明の実施の形態1における調味料の主原料となる梅干の模式図である。梅干1は、ざっくりと球形をしており、梅肉2、種3および種3内部の仁といわれる部分とを有している。
【0036】
一般的に、消費者に梅干として食されるのは、この梅肉2の部分である。梅肉2は、梅干として熟成される過程で生じる酸味を有しており、消費者は、この酸味や食感を楽しむことができる。しかしながら、この酸味や食感を苦手に感じる消費者も存在する。
【0037】
ここで、梅干は、たんぱく質、脂質、カルシウム、リン、鉄分、ビタミン、有機酸(クエン酸など)の栄養素を含んでいる。加えて、次のような効能を有する。
(1)クエン酸の酸味が唾液の分泌を促して、消化吸収を良くする効能を発揮する。
(2)クエン酸は、疲労回復などの薬効を有する。
(3)梅干は、解熱作用を有しており、これ以外にも抗菌や防腐作用といった効能を有している。
【0038】
このような梅干の効能を容易に得るために、発明者は、梅干1を粉末にすることを発明した。ここで、梅干1は、その梅肉2に様々な栄養素を含んでいるが、種3や仁4は、これらの様々な栄養素を更に多く含む。特に仁4は、天神様といわれて、古来より縁起も含めて食されることが多かった。
【0039】
種3や仁4は、その栄養素や効能を得ることができるものであるが、通常の梅干として食する場合には、噛み砕く必要があり、口中を傷つけたり、喉を痛めたりする危険性がある。
【0040】
この結果、発明者は、粉末にする際に、梅肉2だけでなく、種3や仁4もその素材として用いることに至ったものである。すなわち、調味料は、梅肉2、種3および仁4の栄養素を全て含むことができる。また、梅肉2、種3および仁4の全てを粉砕して粉末にすることで、様々な食品に添加したり、利用したりできる。
【0041】
実施の形態1の調味料は、図2に示される製造工程で製造される。図2は、本発明の実施の形態1における調味料の製造工程の説明図である。
【0042】
まず、二級品などの梅干1が、乾燥工程10にて乾燥される。ここで、梅干の製造工程で発生する二級品が用いられることが好ましい。梅干の製造工程では、使用される梅の品質、製造工程のばらつき、製造工程における天候不順などによって、どうしても二級品が生じてしまう。このような二級品は、梅干として市場に流通させることは難しい。乾燥工程10では、このような二級品の梅干1を用いることで、市場に流通させにくい二級品を効率的に活用できる。
【0043】
乾燥工程10は、天日のような自然乾燥を用いたり、温風、熱風、乾燥風などの人工乾燥を用いたり、自然乾燥と人工乾燥との混合を用いたりすることで、多量の梅干を効率的に乾燥させる。例えば、天日乾燥が用いられる場合には、天候や気温にも依存するが、1週間〜2週間程度の時間をかけて、容器に並べられた多量の梅干1を天日にさらすことで梅干1が乾燥される。なお、高温による有効成分やビタミンの変質を防止するためには、25℃〜60℃程度の温風で乾燥させることが好ましい。
【0044】
あるいは、人工乾燥が用いられる場合には、所定の温度(例として40℃〜70℃)を有する温風や熱風が、容器に並べられた多量の梅干1に吹き付けられる。この温風や熱風の吹き付けによって、多量の梅干1が短期間で乾燥する。また、人工乾燥の際には、乾燥工程10が行われる空間の湿度を低下させた上で、温風や熱風が吹きつけられることも好適である。
【0045】
また、自然乾燥と人工乾燥とが混合されて用いられても良い。例えば、乾燥工程10は、まず容器に並べた多量の梅干1を天日にさらす自然乾燥を行う。ある程度まで梅干1が乾燥したら、人工乾燥用の乾燥室に梅干1は移動される。乾燥室は、所定温度や所定湿度の温風や熱風を梅干1に吹きつけることで、人工乾燥を行う。この人工乾燥によって、梅干1は、必要なレベルにまで乾燥させられる。
【0046】
あるいは、乾燥工程10は、最初に所定のレベルにまで、乾燥室における温風や熱風の吹き付けによって梅干1を人工乾燥させる。次いで、乾燥工程10は、乾燥室から梅干1を取り出して、天日にさらす。天日にさらすことで、最終的に必要なレベルにまで、梅干1を乾燥させる。
【0047】
あるいは、乾燥工程10は、自然乾燥、人工乾燥、自然乾燥の順序や、人工乾燥、自然乾燥、人工乾燥の順序などによって、自然乾燥と人工乾燥を繰り返す方式で、梅干1を乾燥させる。このように乾燥工程10が、自然乾燥と人工乾燥とを適宜組み合わせることで、短時間でかつ梅干1の風味を損なうことなく、梅干1を乾燥させることができる。
【0048】
次に、乾燥させられた梅干1は、粉砕工程11で粉砕される。
【0049】
粉砕工程11は、粉砕機やミキサーを用いて、乾燥した梅干1を粉砕する。このとき、種3や仁4を含んだままの梅干1を粉砕しても良いし、乾燥した梅干1の梅肉2、種3および仁4のそれぞれを予め分離してから粉砕しても良い。なお、後者の場合には、種3と仁4とは分離させずに粉砕しても良い。
【0050】
また、乾燥工程10の前に、梅肉2とそれ以外の部分に分離しておいてから乾燥させておくことも好適である。この場合には、果肉である梅肉2と堅い部分である種3(および仁4)との性質の異なるそれぞれの部分が、別々に乾燥される。このため、梅肉2の内部に存在するはずの種3や仁4も、効率的に乾燥される。このように梅肉2とそれ以外とが別々に乾燥させられることで、粉砕肯定11は、梅肉2とそれ以外の部分とを、それぞれ粉砕機等で、粉砕することができるようになる。
【0051】
粉砕工程11は、乾燥した梅干1を、一体として、あるいは梅肉2、種3および仁4のそれぞれを別として粉砕し、粉末とする。
【0052】
更に、熟成工程12は、この粉末を所定時間熟成させる。熟成工程12は、粉末を所定時間保管したり攪拌したりすることで、風味や湿度を調整する。また、必要に応じて他の調味剤を添加してその味わいを調整する。また、熟成工程12は、粉砕されて得られた粉末を、所定時間に渡って保管することで、粉末を熟成させることができる。この熟成によって、粉末の品質を高めることができる。
【0053】
以上のような工程を経て、実施の形態1の梅干を主原料とする調味料は製造される。
【0054】
あるいは、図2においては、梅干1を一体として乾燥させてから粉砕等を行う工程を説明したが、梅肉2、種3とを最初に分離した上で、それぞれ別工程で乾燥と粉砕とを行うことでも良い。
【0055】
例えば、最初に梅肉2と種3とを分離する。このとき、種3は、仁4も含んだままである。分離は、手作業やオートメーションの機械が用いられる。分離された梅肉2は、上述のような工程で乾燥される。同様に、並列して種3も、上述のような工程で乾燥される。すなわち、梅肉2と種3とは、別個に乾燥される。
次いで、乾燥の終わった梅肉2は、粉砕工程によって粉砕される。粉砕工程は、上述の通り、粉砕機が用いられる。
【0056】
これに対して、乾燥された種3は、割られて仁4が露出される。この割られた状態で、粉砕機等が用いられて粉砕される。この粉砕は粗めに粉砕される。更に、粉砕後に乾燥させられる。乾燥した粗い粉砕物は、更に細かく粉砕される。この最終的に粉砕されたものは、梅肉だけで粉砕されたものとミックスされて、最終的な粉末状の調味料が得られる。
【0057】
このように、別工程で乾燥、粉砕されることで、それぞれの硬さに応じた作業が行えるので、梅肉2の部分とそれ以外の部分とが最適に混合した粉末状の調味料が製造できる。
【0058】
調味料の主原料として用いられる梅干1は、二級品であることで、市場に流通させることのできない梅干を有効活用することができる。もちろん、二級品以外の良品の梅干が用いられても構わない。
【0059】
(粉末の特徴)
【0060】
また、梅干を主原料とする粉末の調味料は、60メッシュ以上100メッシュ以下であることが好ましい。
【0061】
粉末の調味料は、そのまま様々な食材に振りかけて用いることができる。例えば、揚げ物、天ぷら、麺類、汁物、ご飯などに振り掛けることで、梅干の風味によって食欲を掻き立てる。更には、梅干のクエン酸が、胃液の分泌を促して食欲増進や健康増進を図ることができる。
【0062】
このように、粉末の調味料は、様々な食材に振りかけて食べることが想定されている。このため、消費者は、粉末が載っている食材を食することになる。すなわち、粉末を口にすることになる。
【0063】
ここで、粉末が60メッシュ未満であると粉末が粗いために、種3や仁4の堅さがざらつきとして歯や舌を刺激する。このため、消費者は、不快を感じたり、歯や舌を傷つけたりする。このため、粉末は60メッシュ以上であることが好ましい。
【0064】
一方、粉末が100メッシュ以上であると、粉末が非常に細かくなってしまうために、消費者は、食べるときに鼻や気管に粉末を吸い込んでしまうこともある。吸い込んでしまうと、咳き込んだりむせたりして、食事を不快にさせてしまうことになる。このため、粉末は100メッシュ以下であることが好ましい。
【0065】
以上のように、粉末の調味料は、60メッシュ以上100メッシュ以下であることが好ましい。
【0066】
なお、粉末の調味料は、様々な食材に振りかけて用いられるので、ガラスや樹脂などの容器に投入されて商品として流通することが好ましい。あるいはアルミ箔などの包装部材に包まれて流通することでも良い。
【0067】
以上のように、実施の形態1における梅干を主原料とする調味料は、梅干1の梅肉2、種3および仁4の全てを用いて粉末にしたものであるので、梅干1のもつ栄養素や効能を十分に活用できる。粉末である調味料を、揚げ物、天ぷら、麺類、汁物、ご飯類など、様々な食材に振り掛けるだけで、下記の(1)〜(3)の栄養素や効能を容易に得ることができる。
(1)風味による食欲増進
(2)クエン酸による胃液分泌の活発化、胃腸の健康増進
(3)ビタミン等による疲労回復
【0068】
特に、粉末であることで、様々な食材に用いることができるからである。
【0069】
更に、粉末の調味料は、食材に練りこむことができる。例えば、パン、麺類、練り製品など、小麦粉や米粉などの主原料を水等と一緒に練りこむ食品には、この梅干を主原料とする調味料を一緒に練りこむことができる。この結果、梅干の風味や栄養素を備えたパン、麺類、練り製品(例えばカマボコ)などを、容易に消費者に提供できるようになる。もちろん、粉末状の調味料は、菓子製品(菓子パン、和菓子、洋菓子など)に練りこまれても良い。
【0070】
また、梅干の製造工程で生じうる二級品を有効活用することができるので、従来は廃棄するしかなった二級品の梅干を有効活用できる。このため、梅干の製造業者にとっても、メリットが生じる。結果として、環境保全やコスト削減にも役立つビジネスモデルが成立するものである。
【0071】
(実施の形態2)
【0072】
次に、実施の形態2について説明する。
【0073】
実施の形態2では、実施の形態1で説明した粉末状の梅干を主原料とする調味料を、展開した他の調味料について説明する。
【0074】
実施の形態1で説明した粉末状の梅干を主原料とする調味料は、そのままで様々な食材に添加したり振りかけたりできる。一方で、粉末よりも他の態様であることで、梅干を主原料とする調味料の用途が更に広がる。
【0075】
(ペースト状)
例えば、梅干を主原料とする調味料が、ペースト状であることも好適である。例えば、実施の形態1で説明したように、梅干1の梅肉2、種3および仁4の全てを粉砕した粉末状の調味料に、水分が添加されることで、ペースト状の調味料が製造される。
【0076】
添加される水分としては、水、お湯、酒、その他の液体原料である。また、水分以外にも油分(植物油、動物油)が添加されても良い。油分が添加されることで粉末状の調味料を、ペースト状にすることが容易になるからである。また、この際に他の調味成分を加えることも好適である。他の調味成分が加わることで、ペースト状の調味料とすることが容易となるからである。
【0077】
ペースト状の調味料も、梅干1の梅肉2、種3および仁4の全ての粉末成分を含んでいるので、梅干の持つ栄養素や効能を提供できる。クエン酸による食欲増進や胃腸改善などを始めとした効果が、このペースト状の調味料を食した消費者に生じる。また、クエン酸やビタミンによる健康増進や体調維持などの効果が、ペースト状の調味料を食した消費者に生じる。
【0078】
実施の形態1と異なり、梅干を主原料とする(梅肉2、種3および仁4の全てを主原料としている)ペースト状の調味料は、粉末では用いにくい用途に適用できる。
【0079】
例えば、ペースト状であることで、食材に塗ったり、食材をペースト状の調味料につけたりすることもできる。例えば、ジャムのように食パンに塗ったり、豆腐や練り物に田楽味噌の代わりとして塗ったりすることもできる。
【0080】
皿に盛られたペースト状の調味料に、野菜や肉などを投入してその表面にペースト状の調味料を塗ることもできる。すなわち、野菜スティックのドレッシングの代わりとして使用することができる。粉末であることに比べて、食材に直接的に塗ったり付加したりできるので、食材への適用範囲が更に広がるものである。
【0081】
また、ペースト状であることで、このペースト状の調味料をお湯や水に溶くことで、汁物に梅干を主原料とする調味料を加えることができる。この結果、汁物に梅干の風味を与えることができるし、梅干1(特に、梅肉2、種3および仁4の全て)の栄養素や効能を与えることもできる。粉末である場合に比べて、より容易に食材への添加が容易となるからである。
【0082】
以上のように、粉末状の調味料をペースト状の調味料にすることで、梅肉2、種3および仁4の全ての栄養素や効能を、更に広い食品や食材に適用することができるようになる。
【0083】
(辛味調味料)
また、実施の形態1で説明された粉末状の調味料(あるいは、実施の形態2で説明されたペースト状の調味料)に、刻まれた唐辛子や生姜を混ぜることで、辛味調味料が製造されることも好適である。あるいは味付けされたり煮込まれた生姜が混ぜられることもある。
【0084】
ゆずなどのかんきつ類に刻んだ唐辛子を混ぜた辛味調味料は、例えば「ゆず胡椒」として、九州地方においてはポピュラーな調味料として愛用されている。このゆず胡椒と同様ではあるが、ゆずやかんきつ類ではなく、梅干が主原料となった「うめ胡椒」や「うめ生姜」である。実施の形態1、2で説明した梅干の粉末やペーストに、刻まれた唐辛子が混ぜ込まれることで、この「うめ胡椒」なる辛味調味料が製造されることになる。
【0085】
このような辛味調味料は、辛味のある食材や料理を好む消費者にとって好適である。例えば、鍋料理や汁物料理にこの辛味調味料が投入されることで、辛味を好む消費者は、これらの料理の味を自分好みに変えることができる。
【0086】
この辛味調味料は、実施の形態1で説明したように、梅干1の梅肉2、種3および仁4の全てを含んでいる。このため、梅干1の有する、クエン酸、ビタミンなどの様々な栄養素およびこれらの栄養素が引き出す様々な効能を、この辛味調味料は提供できる。
【0087】
辛味そのものは、食欲増進や疲労回復(あるいは脂肪燃焼)効果を有しており、この辛味のもつこれらの効果に加えて、梅干1の有する食欲増進や疲労回復の効果も、消費者は得ることができる。すなわち、梅干1の梅肉2、種3および仁4の全てを粉末にした調味料の持つ効能と、唐辛子の持つ効能との双方を、辛味調味料は、消費者に提供できることになる。辛味調味料を好む消費者は、辛味調味料の有する風味や辛い味を楽しむだけでなく、様々な栄養素や効能を得ることができ、健康維持等に役立てることができる。
【0088】
辛味調味料は、実施の形態1,2で説明した梅干を主原料とする粉末やペースト状の調味料に、刻まれた唐辛子を混ぜることで製造されるが、これらに加えて、かんきつ類の果汁やその他の食材・食材成分が添加されてもよい。これらの食材などが添加されることで、辛味調味料の味や香りが更に高いものになるからである。さらには、辛味調味料は、他の調味料と合わせて、ラー油やその他の調味料として提供されても良い。
【0089】
また、辛味調味料は、消費者にとって簡単に使用できるようにビンや缶に詰められて流通させられれば良い。あるいはレトルトパックに封じられて流通されても良い。
【0090】
(完成品)
実施の形態1、2で説明された粉末状あるいはペースト状の調味料は、他の食材の原料に練りこまれることで、梅干を主原料とする完成品の食材が提供されることも好適である。
【0091】
粉末状あるいはペースト状の調味料は、用途に応じて、様々な食材の原料として添加することができる。粉末やペースト状であるので、例えば原料が粉状であったり練り状態であったりする場合に、特に容易に添加することができる。
【0092】
一例として、小麦粉や米粉に粉末状の梅干を主原料とする調味料(実施の形態1で説明された調味料)を添加することで、うどんなどの麺類に、梅干を主原料とする調味料の栄養素や効能を付与することができる。うどんなどの麺類は、小麦粉や米粉などを水で練ることで製造される。
【0093】
あるいは、菓子類に実施の形態1で説明された調味料を添加する場合には、菓子を製造する小麦粉に、粉末状の梅干を主原料とする調味料を添加する。この添加された小麦粉が所定の加工を施されることで、この調味料の栄養素や効能を有した菓子類が製造される。
【0094】
上述の通り、実施の形態1、2で説明された粉末状もしくはペースト状の梅干を主原料とする調味料は、梅肉2、種3および仁4の全てを含んでおり、クエン酸やビタミンなどの様々な栄養素や効能を有している。このため、これらの調味料が練りこまれている(あるいは混合されている)麺類、パン類、菓子類は、クエン酸やビタミンなどの様々な栄養素や効能を発揮できる。すなわち、例えば食欲増進や疲労回復などを提供できる。
【0095】
このような麺類、パン類、菓子類は、粉末状やペースト状の調味料を食材に塗ったり振りかけたりするよりも簡単に食することができるので、日々の食生活の中で、消費者は、梅肉2、種3および仁4の全ての栄養素を含む梅干1の栄養素や効能を得ることができるようになる。
【0096】
もちろん、ここでは、麺類や菓子類などを例として説明したが、他の完成品に応用されても良い。例えば、梅干の栄養素や効能に着目して、サプリメントや栄養補助食品に、実施の形態1で説明された粉末状の調味料や実施の形態2で説明されたペースト状の調味料が、添加されても良い。これらが添加されることで、梅干の持つ栄養素や効能が、簡単にサプリメントや栄養補助食品に展開できる。
また、本発明の調味料や食品を提供する者は、粉末状の調味料、ペースト状の調味料、液体状の調味料など、種々の態様を有する調味料(あるいは調味料のための一時加工品)を提供・流通させても良いし、これらの調味料が練りこまれた麺類、菓子類などの食材を提供・流通させても良い。
【0097】
すなわち、梅干1の梅肉2、種3および仁4の全てを粉末にした調味料を、1次加工品として流通させても良いし、二次加工品として流通させても良い。いずれで流通させるとしても、梅干の持つ栄養素や効能を提供できる。
【0098】
これらの一時加工品や二次加工品を食する消費者は、クエン酸やビタミンなどから得られる、食欲増進、疲労回復、健康維持などの結果を得ることができる。
【0099】
以上、実施の形態1〜2で説明された調味料は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0100】
1 梅干
2 梅肉
3 種
4 仁
10 乾燥工程
11 粉砕工程
12 熟成工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梅干の梅肉、種および仁を粉砕して得られる梅粉末を含む、梅干を主原料とする調味料。
【請求項2】
前記梅粉末は、60メッシュ以上100メッシュ以下である、請求項1記載の調味料。
【請求項3】
前記梅粉末は、前記梅肉、前記種および前記仁の全てを、粉砕機によって粉砕することで得られる、請求項1又は2記載の調味料。
【請求項4】
前記粉末がペースト状とされた、請求項1から3のいずれか記載の調味料。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか記載の調味料に、刻まれた唐辛子、生姜、煮込まれた生姜および味付けされた生姜の少なくとも一つを混合させた辛味調味料。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか記載の調味料が練りこまれた、麺製品。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか記載の調味料が練りこまれた、菓子製品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−105612(P2012−105612A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258410(P2010−258410)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(510305974)有限会社 インプレストライ (1)
【Fターム(参考)】