梯子及び脚立の延長アタッチメント
【課題】 梯子、或いは展開して梯子状にした脚立を簡単な操作で延長できると共に、梯子を安定させることができる延長アタッチメントを提供する。
【解決手段】 基体1の下端に引掛け体5を、最上部に基体の縦杆に垂直な平面に対する投影形状が裏面側に開いたV字形の係合杆8を夫々装着し、上記引掛け体を介して梯子又は脚立の裏面側に係合させた基体を梯子又は脚立の裏面に当接させた後、表面側に突き抜けた固定機構の操作レバー19を介して押し付け体を回動させ、これを梯子又は脚立のステップバーの下面に圧接させることにより引掛け体と押し付け体とを連結する。
【解決手段】 基体1の下端に引掛け体5を、最上部に基体の縦杆に垂直な平面に対する投影形状が裏面側に開いたV字形の係合杆8を夫々装着し、上記引掛け体を介して梯子又は脚立の裏面側に係合させた基体を梯子又は脚立の裏面に当接させた後、表面側に突き抜けた固定機構の操作レバー19を介して押し付け体を回動させ、これを梯子又は脚立のステップバーの下面に圧接させることにより引掛け体と押し付け体とを連結する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は梯子及び脚立の延長アタッチメント(以下単にアタッチメントという)に係り、梯子、或いは展開して梯子状にした脚立(以下単に梯子という)を簡単な操作で延長できると共に、梯子を安定させることができるアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
梯子及び脚立の構造や使用目的はずっと以前から周知であるから、ここでは更に詳細な説明は省略する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2010−273711
【特許文献2】特開平08−042272
【特許文献3】特開平09−235972
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
梯子や脚部を拡開して梯子とした脚立を、電柱や樹木に立て掛けて梯子として使用するとき、当該梯子の最上段のステップバーと電柱等は点接触をするので、足場の悪いところではグラグラしたり、重心が変化すると滑ったりして大変危険である。
【0005】
そこで、本出願人は先に、上記特許文献1に記載された発明を以て、三段構成の脚立であって、展開すると梯子になるものの最上端に水平な係合杆を設け、この係合杆の電柱側の裏面に浅いV字形の切欠を形成した梯子を兼ねる脚立を提案した。
【0006】
この梯子を兼ねる脚立は、しかしながら、係合杆の位置が一定になってしまい、樹木や電柱の取付位置に応じて係合杆の位置を変化させることができない、という不便さが残る。
【0007】
また、上記係合杆を装着位置調節可能に梯子や脚立に装着しようとすると、前記特許文献2、3に記載されたような取付機構を必要とするが、これらは構造が複雑で重くなるばかりでなく、取り扱いが面倒である、等未だ改良の余地がある。
【0008】
そこで、この発明は、梯子、或いは展開して梯子状にした脚立の梯子を簡単な操作で延長できると共に、梯子を安定させることができるアタッチメントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、一対の縦杆を複数の水平なステップバーで連結した梯子状の基体と、この基体の最下段のステップバーに一体的に結合された断面L字形の部材で、基体に平行な前垂れ部を表面側に突出させた少なくとも1個の引掛け体と、基体の最上部にステップバーと平行な関係位置で装着され、基体の縦杆に垂直な平面に対する投影形状が裏面側に開いたV字形の係合杆と、引掛け体を梯子又は脚立の任意のステップバーに裏面側から係合させた基体を梯子又は脚立に取り外し可能に連結する固定機構とを有し、この固定機構は、引掛け体の上方における縦杆、又は引掛け体の上方における縦杆の水平方向における近傍において回動自在に支承された基体に垂直な支軸と、この支軸の表面側の端部に装着された基体に平行なアームと、このアームの自由端部に固設された支軸と平行なねじ杆と、このねじ杆と同軸に螺合する弾性体からなる押し付け体と、上記ねじ杆の表面側の端部に装着されたアームに平行な操作レバーとを備え、上記引掛け体を介して梯子又は脚立の裏面側に係合させた基体を梯子又は脚立の裏面に当接させた後、表面側に突き抜けた操作レバーを介して押し付け体を回動させ、これを梯子又は脚立のステップバーの下面に圧接させることにより引掛け体と押し付け体とを上下方向に拡開するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成されたこの発明によるアタッチメントは、引掛け体を梯子の裏面側から任意の高さのステップバーに引掛け、次いで基体を梯子の裏面に近接させた後梯子の表面側に突き抜けた固定機構を操作すれば梯子に装着できるので、アタッチメントの装着が非常に簡単である。
【0011】
また、基体の最上部に、縦杆に垂直な平面に対する投影形状が裏面側に開いたV字形の係合杆を装着したので、電柱や樹木などにこの係合杆のV字形を係合させることにより梯子が格段に安定して使用勝手が向上する。
【0012】
更にまた、通常の使用条件においては、固定機構に掛かる静荷重はゼロであり、アタッチメントに印加される梯子の長さ方向の荷重は引掛け体によって担持される。
【0013】
そして、荷重を担持する引掛け体は構造が簡単であるから丈夫であり、従ってアタッチメントは長期間その機能を維持することができる、等種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例によるアタッチメントの正面図。
【図2】図1のII−II線による拡大一部断面図。
【図3】図2のIII−III線による拡大一部断面図。
【図4】図1のIV−IV線による一部断面平面図。
【図5】図4のV−V線による拡大側面図。
【図6】アタッチメントの側面図。
【図7】固定機構の拡大正面図。
【図8】固定機構の一部断面拡大側面図。
【図9】固定機構の支軸部の一部断面拡大平面図。
【図10】アームの正面図。
【図11】梯子の使用状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
基体の下端に引掛け体を、最上部に基体の縦杆に垂直な平面に対する投影形状が裏面側に開いたV字形の係合杆を夫々装着し、上記引掛け体を介して梯子又は脚立の裏面側に係合させた基体を梯子又は脚立の裏面に当接させた後、表面側に突き抜けた固定機構の操作レバーを介して押し付け体を回動させ、これを梯子又は脚立のステップバーの下面に圧接させることにより引掛け体と押し付け体とを上下方向に拡開するようにしたので、アタッチメントを梯子に簡単かつ容易に装着することができるばかりでなく、係合杆を電柱等に係合させることにより、梯子を安定に電柱等に立て掛けることができ、そのため梯子の使用勝手が格段に向上する。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
図1において符号1はアタッチメントの基体の全体を示し、この基体1は、一対の縦杆2、2を水平な複数(図示の実施例では3本)のステップバー3、3で連結した梯子状に成形されている。
【0017】
図示の実施例における縦杆2は、図2に示すように、例えば横断面形状がコ字形のアルミの形材であり、図2及び図3に示すように、横断面が細長い台形のステップバー3の両端を縦杆2のコ字形の内側に差し入れるようにして、例えばリベット4止めによりステップバー3を固定している。
【0018】
なお、図1及び図3に示すように、ステップバー3はその細い側面を表面側、に向ける関係位置で縦杆2に固定されている。
【0019】
一方、図1及び図4に示すように、基体の最下段のステップバー3には少なくとも1個(図1には2個)の引掛け体5、5が一体的に結合されている。
【0020】
この引掛け体5は、図5に示すように、基体に平行な前垂れ部6を表面側に突出させており、例えばねじ7によりステップバー3に固定されている。
【0021】
他方、図1及び図6に示すように、基体1の最上部にはステップバー3と平行な関係位置で係合杆8が一体的に装着されている。
【0022】
この係合杆8は、図6に示すように、基体の縦杆1に垂直な平面に対する投影形状が基体の裏側(図6で上方)に開いたV字形をしている。
【0023】
したがって、この係合杆8のV字形を電柱や立ち木などに立て掛けると、係合杆8が電柱等を抱持することになるので、アタッチメントの上端が動かず梯子が安定する。
【0024】
なお、上記した理由から、係合杆8のV字形の裏面(図6で上面)をゴム引きすることが望ましい。
【0025】
また、図1に示すように、引掛け体5の上方には、引掛け体を梯子又は脚立の任意のステップバーに裏面側から係合させた基体を梯子又は脚立に取り外し可能に連結する固定機構9が配設されている。
【0026】
この固定機構9は、図8に示すように、引掛け体5の上方における縦杆2(図1参照)、又は引掛け体の上方における縦杆2の水平方向における近傍において回動自在に支承された基体1に垂直な支軸11(図8及び図9参照)を備えている。
【0027】
図示の実施例における支軸11は、図8及び図9に示すように、通常はアルミ製の縦杆2の内側に入れ子状に収納された鉄やステンレスなどの硬い材質で、横断面形状がコ字形の支軸支承体12の両側板を貫通するようにして回動可能に支持、案内されている。
【0028】
支軸11が図8及び図9において左右に遊動することを防ぐため、支軸支承体12の側板が居にある支軸11の部分には、例えばE−リングなどの止めを13、13が嵌装されている。
【0029】
なお、上記支軸支承体12の背面には、図8に示すように、上下一対の縦長の長穴14、14が開口しており、これらの長穴及び図示しない縦杆背面のボルト穴を貫通するボルト及びナットを緩めることにより支軸支承体12の上下方向の位置を調節し、ナットを締めることによりその位置を固定することができる。
【0030】
このように支軸11の位置を調節することの意義は、市販の脚立や梯子はメーカーによってステップバーの間隔が微妙に異なるため、その間隔の変化に対応して固定機構の機能を担保するためである。
【0031】
この支軸11の基体表面側の端部には、基体と平行なアーム15が装着されている。
【0032】
このアーム15は、図10に示すように、全体の形状が小判形の板状体で、その右側にはやはり小判形の異形孔が開口しており、支軸11の基体表面側の端部に形成された同形の異形断面部をこのアームの異形孔に嵌合させ、この嵌合部をかしめることによりアーム15が支軸に装着される。
【0033】
一方、図10に示すように、アーム15の自由端部には雌ねじ孔16が開口しており、この雌ねじ孔16に一端(図8で右端)を螺合させた支軸11と平行なねじ杆17の根本(すなわちアームとの螺合部)を溶接することにより、ねじ杆17がアームの自由端部が確りと固定されている。
【0034】
このねじ杆17には、図8に示すように、ゴムや軟質プラスチックなどの弾性体よりなる厚肉円板形の押し付け体18がねじ杆17と同軸に螺合している。
【0035】
押し付け体18をねじ杆に螺合、装着するには、ねじ杆の雄ねじ部と螺合するナット様の筒体の周りに弾性材質の円板を接着しても良いし、或いは、ねじ杆の雄ねじ部より小径の穴を中心に形成した弾性材質の円板をねじ杆に無理に嵌め込んで回すと、上記小径の穴の内面に雌ねじ孔を創成しつつねじ杆に沿って移動する。
【0036】
なお、押し付け体18をねじ杆の長さ方向に沿って移動可能にしたことの意義は、通常梯子のステップバーの下面が斜面になっていることから、押し付け体18の位置を変えることにより、押し付け強さを調節することができることにある。
【0037】
他方、上記ねじ杆17の表面側の端部(図8で左端部)には、アーム15と平行な操作レバー19がねじ杆17とL字形になる態様で装着されている。
【0038】
この操作レバー19をねじ杆17に固着するには、例えば、ねじ杆17の図8における左端部に操作れば19の下端部に形成された図示しない雌ねじ孔を螺合させ、操作レバー17のアーム15に対する関係角度位置(図7における関係角度は0度)を適切に設定した後、操作レバー19とねじ杆17の螺合部を溶接する。
【0039】
なお、実際には支軸11から操作レバー19に至る一連の部材を相互に連結した後、支軸11を先にしてアタッチメントの基体の表面側から縦杆2の側面に開口した上下方向に長い付番しない長穴、支軸支承体12を貫通するように挿し通し、止め輪13、13で固定する。
【0040】
上記のように構成されたこの発明の一実施例によるアタッチメントは、図11に示すように、引掛け体5を梯子の任意のステップバーに裏面側から係合させた基体を、梯子21の裏面に当接させた後、操作レバー19を回動してアタッチメントを梯子21に固定する。
【0041】
すなわち、図7及び図8においては操作レバー19は時計盤面に換算して12時の角度位置にあるが、これを例えば左の操作レバーは10時、右の操作レバーは2時の角度位置にしてからこれらのレバー19、19を左方のものは時計方向に、右方のものは反時計方向に回動させる。
【0042】
すると、左右の各押し付け体18は、支軸11を中心にして回動しつつ梯子のステップバー3の下面に下方から近接し、下面に当接するに至り弾性変形しつつ図7、8に示す最上位置に至る。
【0043】
実際には、図7に示す状態から左側の押し付け体18を更に時計方向に少し回動させる(右側のものは反時計方向)。その理由は下記段落[0045]に記載した通りである。
【0044】
そのため、図7に示すように、アタッチメントの縦杆に埴設されたピン様のストッパ22と、アーム15の下端縁部に形成された扇形の案内切欠23の右方の端面とを当接させる。
【0045】
すると、アーム15は時計方向に回動しようとするとストッパ22に阻まれ、反時計方向に回動しようとすると押し付け体18が更に梯子のステップバーを押し上げなければならないので、結局押し付け体18は最上位置より少し下がった状態が安定なのである。
【0046】
元に戻って、操作レバーを回動させて押し付け体18により梯子のステップバー3を押し上げるということは、アタッチメントが引掛け体5と押し付け体18とを梯子のステップバー間で突っ張るということであるから、アタッチメントは押し付け体18の摩擦係合を介して梯子に固定されることになる。
【0047】
なお、アタッチメントを連結した梯子を現場に持って行って図11に示すように立木等に立て掛けた後、操作レバーを回して押し付け体18を梯子のステップバーから外しても、アタッチメントと梯子とが分離してしまうことはない。
【0048】
その理由は、アタッチメントが梯子の裏面に押し付けられるようにモーメントが作用し、両者が圧接されるからである。
【符号の説明】
【0049】
1 基体
2 縦杆
3 ステップバー
4 リベット
5 引掛け体
6 前垂れ部
7 ねじ
8 係合杆
9 固定機構
11 支軸
12 支軸支承体
13 止め輪
14 長穴
15 アーム
16 雌ねじ孔
17 ねじ杆
18 押し付け体
19 操作レバー
21 梯子
22 ストッパ
23 切欠き
【技術分野】
【0001】
この発明は梯子及び脚立の延長アタッチメント(以下単にアタッチメントという)に係り、梯子、或いは展開して梯子状にした脚立(以下単に梯子という)を簡単な操作で延長できると共に、梯子を安定させることができるアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
梯子及び脚立の構造や使用目的はずっと以前から周知であるから、ここでは更に詳細な説明は省略する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2010−273711
【特許文献2】特開平08−042272
【特許文献3】特開平09−235972
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
梯子や脚部を拡開して梯子とした脚立を、電柱や樹木に立て掛けて梯子として使用するとき、当該梯子の最上段のステップバーと電柱等は点接触をするので、足場の悪いところではグラグラしたり、重心が変化すると滑ったりして大変危険である。
【0005】
そこで、本出願人は先に、上記特許文献1に記載された発明を以て、三段構成の脚立であって、展開すると梯子になるものの最上端に水平な係合杆を設け、この係合杆の電柱側の裏面に浅いV字形の切欠を形成した梯子を兼ねる脚立を提案した。
【0006】
この梯子を兼ねる脚立は、しかしながら、係合杆の位置が一定になってしまい、樹木や電柱の取付位置に応じて係合杆の位置を変化させることができない、という不便さが残る。
【0007】
また、上記係合杆を装着位置調節可能に梯子や脚立に装着しようとすると、前記特許文献2、3に記載されたような取付機構を必要とするが、これらは構造が複雑で重くなるばかりでなく、取り扱いが面倒である、等未だ改良の余地がある。
【0008】
そこで、この発明は、梯子、或いは展開して梯子状にした脚立の梯子を簡単な操作で延長できると共に、梯子を安定させることができるアタッチメントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、一対の縦杆を複数の水平なステップバーで連結した梯子状の基体と、この基体の最下段のステップバーに一体的に結合された断面L字形の部材で、基体に平行な前垂れ部を表面側に突出させた少なくとも1個の引掛け体と、基体の最上部にステップバーと平行な関係位置で装着され、基体の縦杆に垂直な平面に対する投影形状が裏面側に開いたV字形の係合杆と、引掛け体を梯子又は脚立の任意のステップバーに裏面側から係合させた基体を梯子又は脚立に取り外し可能に連結する固定機構とを有し、この固定機構は、引掛け体の上方における縦杆、又は引掛け体の上方における縦杆の水平方向における近傍において回動自在に支承された基体に垂直な支軸と、この支軸の表面側の端部に装着された基体に平行なアームと、このアームの自由端部に固設された支軸と平行なねじ杆と、このねじ杆と同軸に螺合する弾性体からなる押し付け体と、上記ねじ杆の表面側の端部に装着されたアームに平行な操作レバーとを備え、上記引掛け体を介して梯子又は脚立の裏面側に係合させた基体を梯子又は脚立の裏面に当接させた後、表面側に突き抜けた操作レバーを介して押し付け体を回動させ、これを梯子又は脚立のステップバーの下面に圧接させることにより引掛け体と押し付け体とを上下方向に拡開するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成されたこの発明によるアタッチメントは、引掛け体を梯子の裏面側から任意の高さのステップバーに引掛け、次いで基体を梯子の裏面に近接させた後梯子の表面側に突き抜けた固定機構を操作すれば梯子に装着できるので、アタッチメントの装着が非常に簡単である。
【0011】
また、基体の最上部に、縦杆に垂直な平面に対する投影形状が裏面側に開いたV字形の係合杆を装着したので、電柱や樹木などにこの係合杆のV字形を係合させることにより梯子が格段に安定して使用勝手が向上する。
【0012】
更にまた、通常の使用条件においては、固定機構に掛かる静荷重はゼロであり、アタッチメントに印加される梯子の長さ方向の荷重は引掛け体によって担持される。
【0013】
そして、荷重を担持する引掛け体は構造が簡単であるから丈夫であり、従ってアタッチメントは長期間その機能を維持することができる、等種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例によるアタッチメントの正面図。
【図2】図1のII−II線による拡大一部断面図。
【図3】図2のIII−III線による拡大一部断面図。
【図4】図1のIV−IV線による一部断面平面図。
【図5】図4のV−V線による拡大側面図。
【図6】アタッチメントの側面図。
【図7】固定機構の拡大正面図。
【図8】固定機構の一部断面拡大側面図。
【図9】固定機構の支軸部の一部断面拡大平面図。
【図10】アームの正面図。
【図11】梯子の使用状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
基体の下端に引掛け体を、最上部に基体の縦杆に垂直な平面に対する投影形状が裏面側に開いたV字形の係合杆を夫々装着し、上記引掛け体を介して梯子又は脚立の裏面側に係合させた基体を梯子又は脚立の裏面に当接させた後、表面側に突き抜けた固定機構の操作レバーを介して押し付け体を回動させ、これを梯子又は脚立のステップバーの下面に圧接させることにより引掛け体と押し付け体とを上下方向に拡開するようにしたので、アタッチメントを梯子に簡単かつ容易に装着することができるばかりでなく、係合杆を電柱等に係合させることにより、梯子を安定に電柱等に立て掛けることができ、そのため梯子の使用勝手が格段に向上する。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
図1において符号1はアタッチメントの基体の全体を示し、この基体1は、一対の縦杆2、2を水平な複数(図示の実施例では3本)のステップバー3、3で連結した梯子状に成形されている。
【0017】
図示の実施例における縦杆2は、図2に示すように、例えば横断面形状がコ字形のアルミの形材であり、図2及び図3に示すように、横断面が細長い台形のステップバー3の両端を縦杆2のコ字形の内側に差し入れるようにして、例えばリベット4止めによりステップバー3を固定している。
【0018】
なお、図1及び図3に示すように、ステップバー3はその細い側面を表面側、に向ける関係位置で縦杆2に固定されている。
【0019】
一方、図1及び図4に示すように、基体の最下段のステップバー3には少なくとも1個(図1には2個)の引掛け体5、5が一体的に結合されている。
【0020】
この引掛け体5は、図5に示すように、基体に平行な前垂れ部6を表面側に突出させており、例えばねじ7によりステップバー3に固定されている。
【0021】
他方、図1及び図6に示すように、基体1の最上部にはステップバー3と平行な関係位置で係合杆8が一体的に装着されている。
【0022】
この係合杆8は、図6に示すように、基体の縦杆1に垂直な平面に対する投影形状が基体の裏側(図6で上方)に開いたV字形をしている。
【0023】
したがって、この係合杆8のV字形を電柱や立ち木などに立て掛けると、係合杆8が電柱等を抱持することになるので、アタッチメントの上端が動かず梯子が安定する。
【0024】
なお、上記した理由から、係合杆8のV字形の裏面(図6で上面)をゴム引きすることが望ましい。
【0025】
また、図1に示すように、引掛け体5の上方には、引掛け体を梯子又は脚立の任意のステップバーに裏面側から係合させた基体を梯子又は脚立に取り外し可能に連結する固定機構9が配設されている。
【0026】
この固定機構9は、図8に示すように、引掛け体5の上方における縦杆2(図1参照)、又は引掛け体の上方における縦杆2の水平方向における近傍において回動自在に支承された基体1に垂直な支軸11(図8及び図9参照)を備えている。
【0027】
図示の実施例における支軸11は、図8及び図9に示すように、通常はアルミ製の縦杆2の内側に入れ子状に収納された鉄やステンレスなどの硬い材質で、横断面形状がコ字形の支軸支承体12の両側板を貫通するようにして回動可能に支持、案内されている。
【0028】
支軸11が図8及び図9において左右に遊動することを防ぐため、支軸支承体12の側板が居にある支軸11の部分には、例えばE−リングなどの止めを13、13が嵌装されている。
【0029】
なお、上記支軸支承体12の背面には、図8に示すように、上下一対の縦長の長穴14、14が開口しており、これらの長穴及び図示しない縦杆背面のボルト穴を貫通するボルト及びナットを緩めることにより支軸支承体12の上下方向の位置を調節し、ナットを締めることによりその位置を固定することができる。
【0030】
このように支軸11の位置を調節することの意義は、市販の脚立や梯子はメーカーによってステップバーの間隔が微妙に異なるため、その間隔の変化に対応して固定機構の機能を担保するためである。
【0031】
この支軸11の基体表面側の端部には、基体と平行なアーム15が装着されている。
【0032】
このアーム15は、図10に示すように、全体の形状が小判形の板状体で、その右側にはやはり小判形の異形孔が開口しており、支軸11の基体表面側の端部に形成された同形の異形断面部をこのアームの異形孔に嵌合させ、この嵌合部をかしめることによりアーム15が支軸に装着される。
【0033】
一方、図10に示すように、アーム15の自由端部には雌ねじ孔16が開口しており、この雌ねじ孔16に一端(図8で右端)を螺合させた支軸11と平行なねじ杆17の根本(すなわちアームとの螺合部)を溶接することにより、ねじ杆17がアームの自由端部が確りと固定されている。
【0034】
このねじ杆17には、図8に示すように、ゴムや軟質プラスチックなどの弾性体よりなる厚肉円板形の押し付け体18がねじ杆17と同軸に螺合している。
【0035】
押し付け体18をねじ杆に螺合、装着するには、ねじ杆の雄ねじ部と螺合するナット様の筒体の周りに弾性材質の円板を接着しても良いし、或いは、ねじ杆の雄ねじ部より小径の穴を中心に形成した弾性材質の円板をねじ杆に無理に嵌め込んで回すと、上記小径の穴の内面に雌ねじ孔を創成しつつねじ杆に沿って移動する。
【0036】
なお、押し付け体18をねじ杆の長さ方向に沿って移動可能にしたことの意義は、通常梯子のステップバーの下面が斜面になっていることから、押し付け体18の位置を変えることにより、押し付け強さを調節することができることにある。
【0037】
他方、上記ねじ杆17の表面側の端部(図8で左端部)には、アーム15と平行な操作レバー19がねじ杆17とL字形になる態様で装着されている。
【0038】
この操作レバー19をねじ杆17に固着するには、例えば、ねじ杆17の図8における左端部に操作れば19の下端部に形成された図示しない雌ねじ孔を螺合させ、操作レバー17のアーム15に対する関係角度位置(図7における関係角度は0度)を適切に設定した後、操作レバー19とねじ杆17の螺合部を溶接する。
【0039】
なお、実際には支軸11から操作レバー19に至る一連の部材を相互に連結した後、支軸11を先にしてアタッチメントの基体の表面側から縦杆2の側面に開口した上下方向に長い付番しない長穴、支軸支承体12を貫通するように挿し通し、止め輪13、13で固定する。
【0040】
上記のように構成されたこの発明の一実施例によるアタッチメントは、図11に示すように、引掛け体5を梯子の任意のステップバーに裏面側から係合させた基体を、梯子21の裏面に当接させた後、操作レバー19を回動してアタッチメントを梯子21に固定する。
【0041】
すなわち、図7及び図8においては操作レバー19は時計盤面に換算して12時の角度位置にあるが、これを例えば左の操作レバーは10時、右の操作レバーは2時の角度位置にしてからこれらのレバー19、19を左方のものは時計方向に、右方のものは反時計方向に回動させる。
【0042】
すると、左右の各押し付け体18は、支軸11を中心にして回動しつつ梯子のステップバー3の下面に下方から近接し、下面に当接するに至り弾性変形しつつ図7、8に示す最上位置に至る。
【0043】
実際には、図7に示す状態から左側の押し付け体18を更に時計方向に少し回動させる(右側のものは反時計方向)。その理由は下記段落[0045]に記載した通りである。
【0044】
そのため、図7に示すように、アタッチメントの縦杆に埴設されたピン様のストッパ22と、アーム15の下端縁部に形成された扇形の案内切欠23の右方の端面とを当接させる。
【0045】
すると、アーム15は時計方向に回動しようとするとストッパ22に阻まれ、反時計方向に回動しようとすると押し付け体18が更に梯子のステップバーを押し上げなければならないので、結局押し付け体18は最上位置より少し下がった状態が安定なのである。
【0046】
元に戻って、操作レバーを回動させて押し付け体18により梯子のステップバー3を押し上げるということは、アタッチメントが引掛け体5と押し付け体18とを梯子のステップバー間で突っ張るということであるから、アタッチメントは押し付け体18の摩擦係合を介して梯子に固定されることになる。
【0047】
なお、アタッチメントを連結した梯子を現場に持って行って図11に示すように立木等に立て掛けた後、操作レバーを回して押し付け体18を梯子のステップバーから外しても、アタッチメントと梯子とが分離してしまうことはない。
【0048】
その理由は、アタッチメントが梯子の裏面に押し付けられるようにモーメントが作用し、両者が圧接されるからである。
【符号の説明】
【0049】
1 基体
2 縦杆
3 ステップバー
4 リベット
5 引掛け体
6 前垂れ部
7 ねじ
8 係合杆
9 固定機構
11 支軸
12 支軸支承体
13 止め輪
14 長穴
15 アーム
16 雌ねじ孔
17 ねじ杆
18 押し付け体
19 操作レバー
21 梯子
22 ストッパ
23 切欠き
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の縦杆を複数の水平なステップバーで連結した梯子状の基体と、この基体の最下段のステップバーに一体的に結合された断面L字形の部材で、基体に平行な前垂れ部を表面側に突出させた少なくとも1個の引掛け体と、基体の最上部にステップバーと平行な関係位置で装着され、基体の縦杆に垂直な平面に対する投影形状が裏面側に開いたV字形の係合杆と、引掛け体を梯子又は脚立の任意のステップバーに裏面側から引掛けた基体を梯子又は脚立に取り外し可能に連結する固定機構とを有し、この固定機構は、引掛け体の上方における縦杆、又は縦杆の水平方向における近傍において回動自在に支承された基体に垂直な支軸と、この支軸の表面側の端部に装着された基体に平行なアームと、このアームの自由端部に固設された支軸と平行なねじ杆と、このねじ杆と同軸に螺合する弾性体からなる押し付け体と、上記ねじ杆の表面側の端部に装着されたアームに平行な操作レバーとを備え、上記引掛け体を介して梯子又は脚立の裏面側に係合させた基体を梯子又は脚立の裏面に当接させた後、表面側に突き抜けた操作レバーを介して押し付け体を回動させ、これを梯子又は脚立のステップバーの下面に圧接させることにより引掛け体と押し付けたいとを上下方向に拡開するようにしたことを特徴とする梯子及び脚立の延長アタッチメント。
【請求項1】
一対の縦杆を複数の水平なステップバーで連結した梯子状の基体と、この基体の最下段のステップバーに一体的に結合された断面L字形の部材で、基体に平行な前垂れ部を表面側に突出させた少なくとも1個の引掛け体と、基体の最上部にステップバーと平行な関係位置で装着され、基体の縦杆に垂直な平面に対する投影形状が裏面側に開いたV字形の係合杆と、引掛け体を梯子又は脚立の任意のステップバーに裏面側から引掛けた基体を梯子又は脚立に取り外し可能に連結する固定機構とを有し、この固定機構は、引掛け体の上方における縦杆、又は縦杆の水平方向における近傍において回動自在に支承された基体に垂直な支軸と、この支軸の表面側の端部に装着された基体に平行なアームと、このアームの自由端部に固設された支軸と平行なねじ杆と、このねじ杆と同軸に螺合する弾性体からなる押し付け体と、上記ねじ杆の表面側の端部に装着されたアームに平行な操作レバーとを備え、上記引掛け体を介して梯子又は脚立の裏面側に係合させた基体を梯子又は脚立の裏面に当接させた後、表面側に突き抜けた操作レバーを介して押し付け体を回動させ、これを梯子又は脚立のステップバーの下面に圧接させることにより引掛け体と押し付けたいとを上下方向に拡開するようにしたことを特徴とする梯子及び脚立の延長アタッチメント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−149380(P2012−149380A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6439(P2011−6439)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(510323897)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(510323897)
【Fターム(参考)】
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