説明

梯子用滑り止め具と梯子

【課題】作業環境のいかんにかかわらず、梯子を昇降する際に確実に足元の滑りを防止し、かつ梯子の形状に依存することなく既存の梯子にも簡便容易に着脱可能な梯子の滑り止め具、及びこのような滑り止め具を簡便容易に取り付けることが可能な梯子を提供する。
【解決手段】梯子用滑り止め具1は、梯子の横桟11表面に上から覆設される水平部4と、この水平部4を梯子の縦桟10に固着するための縦桟取付部5と、縦縦桟取付部5上端に開けられた止着用の係止孔9と、横桟11に固着するための横桟取付部6と、横桟取付部6下端にそれぞれ開けられた止着用の係止孔7及び係止孔8と、水平部4に穿設された複数の表面孔12と、水平部4の表面において表面孔12の外周部に形成された表面突起13と、から構成される。また、梯子34は、梯子用滑り止め具1の簡便容易な止着を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梯子の横桟に着脱自由に覆設される覆い体に、複数の孔を穿設し、孔の周囲に突起部を形成することで、梯子を昇降する際に確実な滑り止め効果を奏し、かつ梯子の形状に依存することなく簡便容易に着脱が可能な梯子用滑り止め具とそれを装着するための梯子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、梯子の横桟における足掛け部の表面は、通常滑らかな円筒面をしていたため、足が滑りやすく、踏み外しや落下といった危険性があった。特に、屋外で作業をする場合には、雨水、積雪又は凍結等が原因となって、さらに滑りやすくなり危険性が増大するといった課題があった。
このような課題を解決する目的で、横桟の足掛け部自体に滑り止めの凹凸部が一体形成された技術や、凹凸部を有する滑り止め具が横桟外周に被覆固定された技術が開発されており、それに関して既にいくつかの考案や発明が開示されている。
【0003】
特許文献1には「避難用梯子」という名称で、避難用梯子の横桟の足掛け部に複数の滑り止めの凹凸部を一体形成した梯子に関する発明が開示されている。
以下、特許文献1に開示された発明を説明する。特許文献1に開示された発明は、複数の縦桟をパンタグラフ状に連結してなる上下方向に伸縮可能な一対の伸縮体と、この伸縮体間の適宜位置に配置され上記縦桟に連結される複数の足掛け用横桟とを備え、この足掛け部にエンボス加工によって複数の滑り止め用の凹凸部を千鳥状に一体形成したことを特徴とする避難用梯子に関する発明である。
このような特徴の避難用梯子においては、緊急避難者が急いで梯子を昇降する場合であっても、足掛け部に凹凸部が設けられていることで、足を滑らせにくくなり、安全に避難することができる。また、足掛け部に凹凸部が一体形成されていることで、別体の滑り止めシート等を足掛け部に貼着する必要もなく、足元の滑りを抑えることができるため、凹凸部のない場合よりも安全性を更に向上させることができる。
【0004】
次に、特許文献2には「小径縞鋼板製鋼管」という名称で、主として滑り防止が必要となる用途の小径鋼管に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、外径が85mm以下であって、表面に格子模様などの溝を刻んだロールを通す圧延により表面に多数の突起部を形成した縞鋼板を素材として電縫管製造設備により製造された小径鋼管を、様々な滑り止め用に用いており、そのうち梯子の横桟としても用いられたことを特徴とする発明である。
このような特徴の小径鋼管を横桟とした場合においては、手で横桟を掴んだ時、突起部が摩擦を大きくするので滑りにくく安全性が向上する。また、上記の圧延により突起部を形成する方法によればシャープな角を持つ突起ではなく、角に比較的丸みのある突起部を形成することができるので、手で掴むパイプの表面に設ける突起として適切である。
また、出来上がった単なる丸鋼管の表面に多数の突起部を形成すれば、極めて繁雑で工数がかかり高コストとなる。しかし、特許文献2に開示された発明では、縞鋼板を素材として電縫管製造設備により製造するので、容易に多数の突起部を形成でき、工数の増加やコスト高といった不利益もない。
【0005】
さらに、特許文献3には、「昇降用はしごの円筒状ステップ用滑り止め具」という名称で、円筒状ステップを有する昇降用はしごの昇降に際してステップ周面に対する靴底の滑りを長期間効果的に防止するための昇降用はしごの滑り止め具に関する考案が開示されている。
特許文献3に開示された考案は、昇降用はしごの円筒状ステップの外周面に接着剤によって筒状に被覆固定される滑り止め具において、滑り止め具の外周面にステップの軸線方向に延びる複数条の角型突起が設けられていること、及び滑り止め具の内周面にステップの軸線方向に延びる複数条の切り込みが設けられていることを特徴とする昇降用はしごの円筒状ステップ用滑り止め具に関する考案である。
このような特徴の滑り止め具においては、外周面にステップの軸線方向に延びる複数条(8〜12条)の角型突起が設けられているので、靴底との滑り止め効果が高いとともに長期使用による突起の損傷も少ない。また、内周面にステップの軸線方向に延びる複数条の切り込み(Vノッチ)が設けられているので、接着剤のアンカー効果が高く、長時間使用しても滑り止め具のステップ周面からの脱離がないという有利な効果を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−71281号公報
【特許文献2】特開2007−154523号公報
【特許文献3】実用新案登録第3130200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された発明においては、滑り止め用の凹凸部はエンボス加工によって横桟足掛け部に一体形成されている。凸部である突起部のエッジ形状や高さについて特許文献1には明示されていないが、通常のエンボス加工では、エッジ形状は比較的シャープではなく、高さも低いものが多い。そうであった場合でも、これを手で掴む時は横桟上部の面のみならず全周面を握るので、突起部により摩擦がより大きくなって滑り止めに有効である。
しかしながら、足を横桟に乗せた場合では、横桟全周面を掴めないため、突起部により生じた摩擦の増加分では不足し、滑る可能性が考えられる。特に、雨水等で横桟表面が濡れていた場合にその危険性が増してくる。
また、そのような場合、さらに滑り止め効果を増すように、高さの高い突起部が必要であっても、突起部はあらかじめ横桟に一体形成されていることから既存の梯子に適用することが困難である。また、横桟は縦桟にボルトで両端が連結されているので、何らかの原因で交換する場合には横桟全体を交換しなければならず、滑り止め部分のみを手早く適宜交換することは構造上不可能である。
よって、特許文献1に開示された発明においては、上記のように滑り止め効果不足の可能性と、既存の梯子に適用することができないことに加えて、滑り止め部分のみを簡便自在に着脱できないという課題があった。
【0008】
次に、特許文献2に開示された発明においては、溝を刻んだロールを通す圧延により突起部を形成する方法、すなわち圧延エンボス加工によって形成された小径鋼管の突起部は、角に比較的丸みのある形状のため、手で掴むパイプの表面に設ける突起として適切であるが、特許文献1に開示された発明と同様に、足を横桟に乗せた場合では、摩擦不足によって滑るおそれがある。また、多数の突起部配列の模様としては種々の縞模様が特に限定せずに用いられるが、上記突起部形状のままにあっては、縞模様を工夫しても雨水等の場合には、滑り止め効果の向上は少ないように思われる。
そこで、突起部の高さを高くする必要が生じるが、特許文献1に記載される発明と同様に、突起部はあらかじめに横桟をなす小径鋼管に一体形成されていることから既存の梯子に適用することが困難である。また、さらに小径鋼管は縦桟をなす柱材に連結部材で連結されているので、小径鋼管のみを手早く適宜交換することは困難である。
したがって、特許文献2に開示された発明においては、特許文献1に開示された発明と同様、滑り止め効果不足の可能性がある、既存の梯子に適用することができない、滑り止め具本体である小径鋼管のみを簡便自在に着脱できないという課題があった。
【0009】
さらに、特許文献3に開示された考案においては、滑り止め具の外周面にステップの軸線方向に延びる複数条の角型突起が設けられているため、靴底との滑り止め効果が高いとされている。
しかし、屋外作業においては、寒冷地の場合、突起と突起の間に水や雪が詰まって凍りつき、突起高さと詰まった氷等の高さが等しくなり、表面が実質的に均一の滑らかなものになって、滑り止め効果が激減する可能性がある。他に、突起と突起の間に泥が詰まった場合にも同様の可能性が考えられる。
また、特許文献3に開示された考案に係る滑り止め具は、接着剤によってはしごの円筒状ステップの外周面に被覆固定されているので、一度取り付けた後は滑り止め具を交換するのに手間が掛かる。さらに、内周面にステップの軸線方向に延びる複数条の切り込み(Vノッチ)が設けられているとはいえ、使用した接着剤の接着力いかんでは、急激に強い力が加わった場合に、滑り止め具が脱離する可能性が考えられる。この他、接着力が温度変化に影響されやすいものであったなら、高温の下で使用された場合等では、同様に脱離のおそれが考えられる。
そして、この滑り止め具は、ゴム又はエラストマーなどの樹脂材料から作られることが望ましいとされているので、梯子の保管状態によっては、屋外にそのまま放置した場合などは、樹脂が脆くなってしまい突起が損傷し、交換なしでの長期間の使用が困難となることも考えられる。
このように、特許文献3に開示された考案においては、滑り止め効果不足の可能性と、滑り止め具が簡便自在に着脱困難、滑り止め具の固定が接着剤の性能や作業環境に左右されやすく離脱につながるおそれ、または使用寿命の短命化のおそれといった課題があった。
【0010】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、作業環境のいかんにかかわらず、梯子を昇降する際に確実に足元の滑りを防止し、かつ梯子の形状に依存することなく既存の梯子にも簡便容易に着脱可能な梯子の滑り止め具、及びこのような滑り止め具を簡便容易に取り付けることが可能な梯子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明に係る梯子用滑り止め具は、梯子の横桟に覆設される覆い体と、この覆い体を梯子の少なくとも縦桟又は横桟のいずれかに固着するための取付部と、覆い体に穿設される複数の孔と、覆い体の表面において、孔の外周部に形成される突起部を備えることを特徴とする。
本請求項に記載の梯子用滑り止め具は、表面に複数の孔が穿設され、その孔の外周部に突起部が形成された覆い体が、梯子の横桟を覆うように設置され、縦桟又は横桟のいずれかに取付部をもって固着されることで、梯子昇降の際に、靴底と突起部との接合部分に摩擦が生じて靴底が多数の突起部それぞれに係止されるという作用を有する。
また、上記取付部では、梯子縦桟又は横桟もしくはその両方において、ネジ等を用いて取り付けや取り外しをすることで、滑り止め具の縦桟、横桟との着脱が行われるという作用を有する。
【0012】
次に、請求項2記載の発明に係る梯子用滑り止め具は、請求項1に記載の梯子用滑り止め具において、取付部は梯子の少なくとも縦桟又は横桟のいずれかに止着され、横桟の軸を中心とした覆い体の回動を防止することを特徴とする。
上記構成の梯子用滑り止め具においては、梯子縦桟又は横桟もしくはその両方において、ネジ等を用いて梯子に固着する。
具体例を用いて説明すれば、縦桟においては、ネジ等が取付部に設けられた係止孔及び縦桟自体に開けられた係止孔をともに貫通し、ネジ等が縦桟を押す方向に締付けられることで、取付部が縦桟に密着固定される。一方、横桟においては、覆い体が横桟上部表面に沿って覆設された結果、向かい合わせとなった取付部同士にネジ等が通され、これらが互いに近づくように締付けられることで、覆い体が横桟を挟持し、ひいては覆い体が横桟に固着される。したがって、縦桟への止着と覆い体の取付部を介した横桟への止着とから、横桟の軸を中心とした覆い体の回動を防止するという作用を有する。この他、請求項1に記載の梯子用滑り止め具と同様の作用を有する。
【0013】
さらに、請求項3記載の発明に係る梯子用滑り止め具は、請求項1又は請求項2に記載の梯子用滑り止め具において、孔の周方向に少なくとも一カ所の突起部の切欠きを設けたことを特徴とする。
上記構成の梯子用滑り止め具においては、突起部の切欠きを設けたことにより、新たに略直角形状のエッジが形成される。よって梯子昇降の際には、靴底と突起部の上縁平坦部のみならず、靴底とエッジとの接合部分にも摩擦が生じて、靴底がエッジそれぞれにも係止されるという作用を有する。この他、請求項1又は請求項2に記載の梯子用滑り止め具と同様の作用を有する。
【0014】
また、請求項4記載の発明に係る梯子用滑り止め具は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の梯子用滑り止め具において、孔の直径の長さと突起部の高さは正の相関関係を有していることを特徴とする。
上記構成の梯子用滑り止め具においては、孔の直径の長さの長いものは、突起部の高さも高い(本段落において突起部大という)という構造となる。また逆に、直径の長さの短いものは、突起部の高さも低い(本段落において突起部小という)という構造となる。突起部大では、靴底と突起部との接合部分の摩擦が突起部小のものより大きくなって、より靴底が係止されるという作用を有する。
さらに、覆い体に突起部小のみが備えられている場合は、屋外での作業の場合、突起部小同士間の覆い体表面が雪や泥に覆われて、これに突起部小が埋まりこむおそれがある。埋まった突起部小については靴底の係止ができなくなるが、この場合であっても突起部大が突起部小とともに配列されていると、突起部大が埋まる可能性は少ないと考えられるため、靴底が係止される。この他、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の梯子用滑り止め具と同様の作用を有する。
【0015】
また、請求項5記載の発明に係る梯子用滑り止め具は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の発明において、複数の覆い体が長さの一部を所望範囲で重複可能に直列継合され、覆い体の全長を調整可能であることを特徴とする。
上記構成の梯子用滑り止め具においては、複数の覆い体が横桟上に直列方向に横並びになっているため、横桟両端側以外における覆い体の端部がそれぞれ互いに重なり合うという作用を有する。また、その重なり部分の長さを自由に調節することで、並べた複数の覆い体の全長を、梯子横桟長さ内に適切に収めるという作用を有する。この他、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の梯子用滑り止め具と同様の作用を有する。
【0016】
次に、請求項6記載の発明に係る梯子用滑り止め具は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の梯子用滑り止め具において、覆い体の裏面に、第2の突起部を備えることを特徴とする。
上記構成の梯子用滑り止め具においては、覆い体の裏面にも、梯子横桟方向に突出した第2の突起部を備えていることから、この突起部と横桟表面とに摩擦を生じ、覆設された覆い体の位置がずれないという作用を有する。さらに、覆い体を足で踏んだ場合に、踏んだ面積内では第2の突起部が横桟表面に与える圧力が高まり、摩擦も大きくなって、覆い体の移動が起こらないという作用を有する。
また、第2の突起部は多数設けられるが、裏面全体において、覆い体が横桟表面に対し均等に取り付けられるためには、突起部の高さはすべて等しいものであることが望ましい。その結果、全部の第2の突起部が一様に横桟表面に密着し、覆い体全体の位置がずれないことになる。この他、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の梯子用滑り止め具と同様の作用を有する。
【0017】
さらに、請求項7記載の発明に係る梯子用滑り止め具は、梯子の横桟に覆設される覆い体と、覆い体を梯子の縦桟に固着するための縦桟取付部と、覆い体に穿設される複数の孔と、覆い体の表面において、孔の外周部に形成される突起部とを備え、覆い体の軸方向と縦桟取付部の長手方向とを含んで形成される平面が、縦桟の長手方向に対して平行であることを特徴とする。
上記構成の梯子用滑り止め具においては、縦桟が接地面に対して垂直でない梯子、すなわち垂直梯子でないものの横桟に覆い体を覆設した場合でも、縦桟取付部が縦桟に取り付け可能な位置に配置されるという作用を有する。よって、覆い体は、垂直梯子やこれ以外の梯子の縦桟に止着される。
そして、突起部が形成された覆い体が、梯子の横桟を覆うように設置され、縦桟に縦桟取付部をもって固着されることで、梯子昇降の際に、靴底と突起部との接合部分に摩擦が生じて靴底が多数の突起部それぞれに係止されるという作用を有する。
また、上記縦桟取付部では、梯子縦桟において、ネジ等を用いて取り付けや取り外しをすることで、滑り止め具の縦桟との着脱が行われるという作用を有する。
【0018】
次に、請求項8記載の発明である梯子は、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の梯子用滑り止め具を装着する留め具を有することを特徴とする。
上記構成の梯子においては、取付部あるいは縦桟取付部を縦桟あるいは横桟の表面の適正な取付位置にあわせ、その上から留め具を被せて圧着挟持することで、
梯子用滑り止め具を梯子に固定するという作用を有する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の請求項1記載の梯子滑り止め具においては、梯子を昇降する際に、靴底が突起部に係止されるため、足元が滑りにくく安全に昇降できるという効果を有する。特に、屋外での作業の場合、降雨、積雪や凍結又は泥の混入といった悪条件において、従来の特許文献1乃至3に係る発明等が有すると思われる滑り止め効果不足の問題は、本発明では前述の作用によって解消に近づくので、より安全性が高まる。
また、滑り止め具の縦桟又は横桟への取り付けや取り外しはネジ等を用いて行うことができるので、滑り止め具の着脱が簡便容易であり、修理や交換が容易となる。また、梯子を分解することなくいつでも着脱が可能であり、利便性が高い。さらに、既設の梯子に着脱できるので、滑り止め効果を発揮させるために新たな梯子を購入する必要がなく経済的である。
さらに、平板状の鋼板に多数の孔を穿設した後に、これを梯子の横桟を覆う形状に加工しているため、滑り止め具の製造工程が煩雑でなく、コストを抑制することができる。また、孔が穿設される際にバリとして出たものをそのまま活用し突起部として利用することも可能なので、合理的であり、上記と同様の有利な効果を有する。
また、突起部の個数、位置又は大きさを変化させることにより、靴底と突起部との接合部分に発生する摩擦力を調整でき、使用状況に見合った適正性能を有する滑り止め具を製造することが可能である。
【0020】
本発明の請求項2記載の梯子滑り止め具においては、覆い体の縦桟又は横桟あるいはその両方への止着により、横桟の軸を中心とした覆い体の回動が防止されることから、足を滑り止め具に乗せたときに、覆い体が回動する方向への踏み外し等がなく、安全に昇降できるという効果を有する。また、止着されていない滑り止め具に足の踏み外しによって上記回動方向に力が加わると、滑り止め具自体が横桟から脱離し落下して梯子周囲の者等に当たる場合も考えられ、危険である。本請求項に記載の梯子滑り止め具を用いることにより、このような事故が起こらず危険を回避できる。
【0021】
本発明の請求項3記載の梯子滑り止め具においては、靴底と突起部の上縁平坦部のみならず、靴底とエッジとの接合部分にも摩擦が生じて、靴底がエッジそれぞれにも係止されることから、請求項1又は請求項2に記載の梯子滑り止め具よりもさらに足元が滑りにくくなり、昇降時の安全性が大きく向上するという効果を有する。
【0022】
本発明の請求項4記載の梯子滑り止め具においては、孔の直径の長さが長く、突起部の高さも高い突起部の設置をもすることで、より靴底が係止されるという作用を有するため、足元が滑りにくく安全に昇降できるという効果が向上する。したがって、屋外での悪条件下での使用に際しても、滑り止め効果を十分に確保することができる。さらに、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の梯子用滑り止め具と同様、着脱自在であるから、急激な天候悪化の場合にも、本請求項に係る滑り止め具へ容易に交換することができて便利である。よって、安全に作業を行うことができる。
また、突起部の他の形状として、直径の長さが長く、突起部の高さが低いものや、直径の長さが短く、突起部の高さが高いものが考えられるが、前者では靴底との摩擦が小さいため、靴底が突起部に係止されにくい。後者では反対に、突起部が筒状又は針状をなしている場合があることから、靴底はかえって不安定になる。本請求項に係る滑り止め具は、上記形状の突起部が含まれないので、滑り止め効果が向上すると同時に、足元が安定的であるという有利な効果を有する。
【0023】
本発明の請求項5記載の梯子滑り止め具においては、覆い体の重なり部分の長さを自由に調節することで、並べた複数の覆い体の全長を、梯子横桟長さ内に適切に収めることができるため、あらゆる長さを持つ横桟に滑り止め具を取り付けることができ、汎用性が高い。また新たな滑り止め梯子を購入する必要がないので経済的である。
【0024】
本発明の請求項6記載の梯子滑り止め具においては、第2の突起部が横桟表面に与える圧力が高まり、摩擦が大きくなって、覆い体の移動が起こらないことから、これを原因とする足の踏み外し等がなく、安全に昇降できるという効果を有する。また、第2の突起部の個数、位置又は大きさを変化させることにより、上記摩擦力を調整でき、使用状況に見合った適正性能を有する滑り止め具を製造することが可能である。
【0025】
本発明の請求項7記載の梯子滑り止め具においては、覆い体は、垂直梯子やこれ以外の斜めに設置された梯子に止着されることから、あらゆる傾斜の梯子に滑り止め具を取り付けることができ、汎用性が高い。また、既設の梯子の傾斜に依存しないので、新たな滑り止め梯子を購入することなく利用可能で、昇降時の安全性を高めることができる。
【0026】
本発明の請求項8記載の梯子においては、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の梯子用滑り止め具の取付部あるいは縦桟取付部を、縦桟あるいは横桟の表面と留め具との間に圧着挟持して梯子用滑り止め具を梯子に固定する。これは、ネジ等を使用しないで固定をすることができるので、滑り止め具の着脱をより簡単に行え、使い勝手がよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)及び(b)は実施例1に係る梯子用滑り止め具の使用状態図である。
【図2】図1の梯子用滑り止め具の平面図である。
【図3】図1の梯子用滑り止め具の側面図である。
【図4】図2のA−A線矢視断面の部分図である。
【図5】(a)は実施例2に係る梯子用滑り止め具の部分平面図で、(b)は(a)のB−B線矢視断面の部分拡大図である。
【図6】(a)は実施例3に係る梯子用滑り止め具の部分平面図で、(b)は(a)のC−C線矢視断面の部分拡大図である。
【図7】実施例4に係る梯子用滑り止め具の使用状態図である。
【図8】(a)は実施例5に係る梯子用滑り止め具の部分側面図で、(b)は(a)のD−D線矢視断面の部分拡大図である。
【図9】(a)は実施例6に係る縦桟取付部の部分平面図で、(b)はその外観斜視図である。
【図10】(a)は実施例7に係る縦桟取付部の部分平面図で、(b)はその外観斜視図である。
【図11】(a)は実施例8に係る梯子の使用状態図である。(b)は(a)のE−E線矢視断面の部分拡大図であって、梯子用滑り止め具の取り外し時である。また、(c)はその取り付け時である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0028】
本発明に係る実施例1の梯子用滑り止め具1について、図1乃至図4を用いて詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は実施例1に係る梯子用滑り止め具1の使用状態図であり、図2はその平面図、図3は側面図である。また図4は図2のA−A線矢視断面の部分図である。
【0029】
図1(a)に示すように、梯子用滑り止め具1は梯子昇降時の足元の滑りを防止するために、梯子3の足掛け部である横桟11の表面を覆う形状に加工された器具である。多数の表面突起13を有する一律厚さの金属製部材からなる水平部4が、横桟11表面に覆設され、縦桟10及び横桟11に固定されている。以下にその構成について詳細に説明する。
【0030】
図1(b)に示すように、梯子用滑り止め具1は、梯子の横桟11表面に上から覆設される水平部4と、この水平部4を梯子の縦桟10に固着するための縦桟取付部5と、縦桟取付部5上端に開けられた止着用の係止孔9を備えている。また、水平部4の両端部には、横桟11に固着するための横桟取付部6が水平部4を挟んで設けられ、その横桟取付部6下端にそれぞれ止着用の係止孔7、8が穿設されている。さらに、水平部4には複数の表面孔12が穿設され、その外周部には表面突起13が形成されている。
【0031】
水平部4は、細長い筒形状で、その横断面は、梯子3の足掛け部である横桟11の表面形状に合うように、端が開放された円弧状の曲線形状になっている(図4参照)。
次に、図2に示すように、梯子用滑り止め具1の水平部4の表面には複数の表面孔12と、表面孔12の外周部に形成される表面突起13が、水平部4の長手方向に沿って3列に配列されている。これら3列は、水平部4の短辺方向の範囲全部に亘り各列が均等に配置されるように列同士の間隔が設定される。
また、これら3列の表面孔12は、それぞれ同一列上では間隔を一定としながら、全体として千鳥状に配置されている。また、靴底幅の範囲内で表面孔12は少なくとも数個以上は含まれるように表面孔12の間隔は設定されるとよい。
なお、本図において3列の表面孔12のうち、中央の列を挟む両側の表面孔12が図面中縦長となっているのは、平板時に表面孔12を穿設してその後に湾曲させるためである。
次に、図3に示すように、梯子用滑り止め具1の水平部4の左右両端部に縦桟取付部5が設けられ、これらの端部が上方を向くように基部44が屈曲される。水平部4が横桟11表面に密着された後、縦桟取付部5は、その端部に開けられた係止孔9に係止ネジ(図示せず)を通して縦桟10に止着される。また、表面突起13の高さは各配列内ですべて等しく形成されている。
そして、図1(b)に示すように、水平部4の両端において、横桟取付部6の先端に開けられた係止孔7と係止孔8とが近づくように、係止ネジによって横桟取付部6が互いに向かい合う方向へ締め付けられる。その結果横桟取付部6が横桟11を挟持し、水平部4が横桟11に固着される。
【0032】
図4に示すように、梯子用滑り止め具1の水平部4は円弧形状に湾曲され、その両端部に設けられた横桟取付部6がボルトやねじ等で締着されるために設けられている。この横桟取付部6の間隔は、横桟11の直径よりも少し狭くなる程度に開けられている。直径以上とすると、水平部4が横桟11を挟み込むように覆設され得ないためである。
図中の3個の表面突起13は、前述の中央の配列とその両隣の配列のものであり、これら三個の突起の高さはいずれも等しい。
なお、図1乃至図3で示した構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略している。
【0033】
次に、実施例1の梯子用滑り止め具の作用について説明する。細長い筒形状の水平部4の横断面が、横桟11の表面形状に合うように端が開放された円弧状の曲線形状に形成されているため、その開放された部分から横桟11に嵌め込み、円弧状裏面の天井部を横桟11表面の最上部に当接させることで、水平部4が横桟11の周方向の配置もずれることなく適切に覆設されるという作用を有する。
水平部4を横桟11に覆設すると、水平部4の全長に亘って水平部4と横桟11との間に空間が発生せず、水平部4が横桟11に密着する。また、密着することから、水平部4の裏面と横桟11表面とに摩擦が生じ、水平部4は横桟11の軸を中心とした回動運動が妨げられるという作用を有する。
次に、縦桟取付部5,5の端部が上方を向くように基部44を屈曲させ、縦桟取付部5先端に縦桟10内側表面への密着面を形成する。これにより水平部4が横桟11に密着される。そして、係止ネジを係止孔9に通すことにより、水平部4は縦桟10に止着される。よって、係止ネジは、水平部4が上下方向や横桟11の長手方向に対する水平、垂直な方向への移動又は横桟11の軸を中心とした回動を生じないように作用する。
また、水平部4の端部において、横桟取付部6同士の間隔が、横桟11の直径より狭くなるように開けられていることから、水平部4が横桟11を挟んで覆設され、横桟取付部6が横桟を挟持するように作用する。横桟取付部6先端に開けられた係止孔7及び係止孔8をそれぞれ係止ネジで締着することにより、水平部4が横桟11に固定される。よって、横桟取付部6の係止ネジも縦桟取付部5の係止ネジと同様の作用を有する。
この他、水平部4の表面に配列された複数の表面突起13は、その上縁の摩擦によって靴底の滑りを抑制するように作用する。
さらに、表面突起13は千鳥状に配列されていることから、密に配置が可能であり、靴底の滑りの抑制はより顕著に作用する。
また、表面突起13の高さはいずれも等しいことから、水平部4表面全体が靴底に対して均一に当接して滑りを抑制する。
【0034】
次に、実施例1の梯子用滑り止め具の効果について説明する。水平部4が横桟11に覆設されて回動が妨げられることから、利用者が梯子用滑り止め具1に足を乗せても、梯子の踏み外し等の危険性を低減させることができる。
また、水平部4が横桟11に固着され、水平部4は上下方向や横桟11の長手方向に対する水平、垂直な方向も含めて移動できないため、これを原因とする足元の踏み外しや滑りが抑制されるという効果を発揮することができる。加えて、梯子用滑り止め具1の落下も防止できることから、梯子を昇降する利用者や梯子周囲の作業者等の危険を回避して安全性を確保できる。
また、水平部4の表面に複数の表面突起13が配列されていることから、靴底が表面突起13に強くグリップされるため、足元が滑りにくくなり滑り止め効果が得られる。さらに、水平部4全体面に表面突起13が一定密度で設けられていることから、水平部4全体面の位置に依存せず靴底がグリップされるので、水平部4のどの位置を踏んでも同様の滑り止め効果が得られて、安全性が高い。
また、表面突起13の配列又は大きさ、高さを変化させることにより、靴底と表面突起13との当接部分に発生する摩擦力を調整できるため、使用状況に見合った適正性能を有する梯子用滑り止め具1を製造することも可能である。
また、本実施例1では、降雨、積雪や凍結又は泥の混入といった悪条件下の屋外作業であっても、上述のように靴底が確実に水平部4にグリップされるので、滑り止め効果が保たれ、作業の安全が確保される。
また、梯子用滑り止め具1の縦桟10、横桟11への着脱はネジ等を用いて行うことができるので、着脱が簡便容易である。また、梯子を分解することなくいつでも着脱が可能であり利便性が高い。さらに、既設の梯子に着脱・交換できるので、梯子用滑り止め具1使用のために新たな梯子を購入する必要がなく経済的である。
さらに、平板状の鋼板に多数の表面孔12を穿設した後に、これを梯子3の横桟11を覆う形状に加工しているため、梯子用滑り止め具1の製造工程が煩雑でなく、その結果コスト高になることはない。また、表面孔12が穿設される際にバリとして出たものをそのまま活用し表面突起13として利用できるので、合理的であり、低コストで製造可能である。
【0035】
なお、本実施例1では、縦桟取付部5及び横桟取付部6が備えられているが、縦桟取付部5のみ、又は横桟取付部6のみが備えられている構造とすることもできる。また、表面孔12及び表面突起13は、等間隔に、水平部4の長手方向に沿って3列の千鳥状に配列されているが、これ以外の例えば4列市松状に配列をさせてもよい。配列の形態や列数は特に限定するものではない。但し、例えば間隔が開きすぎた場合等は、滑り止め効果が減少する可能性があるので、この効果を失わない限りにおいて、配列の変更を行うとよい。
【実施例2】
【0036】
本発明に係る実施例2の梯子用滑り止め具2について、図5(a)及び(b)を用いて詳細に説明する。(a)は実施例2に係る梯子用滑り止め具2の部分平面図で、(b)は(a)のB−B線矢視断面の部分拡大図である。なお、図1乃至図4で示した構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0037】
図5(a)に示すように、実施例2に係る梯子用滑り止め具2は、実施例1に係る梯子用滑り止め具1と同様の表面孔12を備えるが、表面突起13には切欠きが加えられている。この突起部切欠き14は、1個の表面突起13につき2箇所設けられる。同一配列上で隣接する表面突起13の突起部切欠き14は、切れ込んだ方向が平面視した場合に互いに90度ずれている。したがって、3つの配列全体を平面視した場合でも、大部分の突起部切欠き14において、互いに90度ずれている構造となっている。また、平面視した場合の、1個の突起部切欠き14の幅が表面突起13全周に占める割合は、約1/6である。
なお、突起部切欠き14は、表面孔12の中心から径方向に拡がって形成されている。
また、図5(b)において明らかなとおり、表面突起13の上縁高さも表面孔12の中心から径方向に離れるにつれて高く形成されており、浅いすり鉢状をなしている。
【0038】
次に、実施例2の作用について説明する。実施例2では、表面突起13に2箇所の突起部切欠き14が設けられているため、表面突起13の端面が略直角に切立つエッジとして合計4箇所形成される。よって、足を乗せると、靴底とエッジの接触部分に摩擦が生じて、靴底が4箇所のエッジそれぞれに噛み込み係止されるという作用を有する。
さらに、実施例2では、靴底とエッジ以外の表面突起13上縁にも接触するように形成されているが、表面突起13の全体形状がほぼ浅いすり鉢状をなすことから、表面突起13上縁の最外縁で最も靴底に対する圧力が高まり、この部分で強く靴底が噛み込み係止される。これに対し、実施例1に係る梯子用滑り止め具1では、表面突起13の上縁は全周に亘って平坦であり、靴底に係る圧力は表面突起13上縁いずれの点でも同等である。すなわち、梯子用滑り止め具2の場合よりも圧力が分散した状態となっており、靴底は表面突起13に均等に噛み込み係止される。
したがって、梯子用滑り止め具2は、梯子用滑り止め具1に比べ、靴底が局所的により強く噛み込み係止されるという作用を有する。
【0039】
さらに、実施例2の効果について説明する。実施例2に係る梯子用滑り止め具2では、梯子用滑り止め具1に比べ、全ての表面突起13において靴底が局所的により強く係止される作用を有するので、梯子用滑り止め具1以上に足元が滑りにくいという効果を有する。よって、昇降時の安全性が大きく向上し、悪条件下での使用もより可能となる。この他にも、実施例1と同様に既存の梯子にも着脱容易のため、経済性が高いという効果を有する。
【0040】
なお、本実施例2に係る梯子用滑り止め具2では、1個の表面突起13につき2箇所の突起部切欠き14が設けられているが、この数は適宜変更可能である。また、平面視したときの突起部切欠き14の位置も、適宜変更可能である。この他に、表面突起13の上縁形状についても、本実施例2のように傾きが緩やかなものに限られず、傾きを急にしてもよい。傾きが急になる方が靴底に対してより局所的に圧力が加わり、表面突起13への噛み込みが強くなることで足元の滑りに対する抑止力は向上する。また、表面孔12の中心から径方向に離れるにつれて低く形成してもよい。
【実施例3】
【0041】
本発明に係る実施例3の梯子用滑り止め具19について、図6(a)及び(b)を用いて詳細に説明する。(a)は実施例3に係る梯子用滑り止め具19の部分平面図で、(b)は(a)のC−C線矢視断面の部分拡大図である。なお、図1乃至図5で示した構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0042】
図6(a)に示すように、実施例3に係る梯子用滑り止め具19は、実施例1に係る梯子用滑り止め具1の表面突起13を、形状及び配列について変形させたものである。
表面突起の形状については、梯子用滑り止め具1が1種類であったが、梯子用滑り止め具19には、大、小2種類の表面突起が備えられている。この2種類の表面突起同士は、孔の直径の長さと突起部の高さが正の相関関係を有している。すなわち、直径が長い表面大孔15には高い表面大突起16が形成され、直径の短い表面小孔17には低い表面小突起18が形成されている。
具体的な大きさは、表面大孔15の直径が表面小孔17の約4倍であり、それは横桟11の太さの約2/5程度を占めている。そして、図6(b)に示すように、高さについても、表面大孔15は表面小孔17の約4倍である。
また、表面大突起16及び表面小突起18の上縁は、いずれも平坦な形状をしている。
続いて、配列に関しては、図6(a)に示すように、表面大突起16及び表面小突起18は、水平部4の長手方向に沿って2列になっており、隣合う配列では、表面大突起16同士が干渉しないようにずらされている。また、表面大突起16は、3個の表面小突起18毎に設けられている。
なお、表面大突起16は表面小孔17及び表面小突起18を形成させた後、水平部4表面上の表面小突起18間に固着される。その後、水平部4上の表面大孔15の底面は貫通されずに残っており、表面小孔17及び表面小突起18も残したままである。
【0043】
次に、実施例3の作用について説明する。表面大突起16では、靴底と突起部との接触部分の摩擦が表面小突起18のものより大きくなって、より靴底が噛み込み係止されるという作用を有する。
さらに、水平部4に表面小突起18のみが備えられているとき、屋外での作業の場合では、水平部4表面が雪や泥に覆われて、これに表面小突起18が埋まりこむおそれがある。埋まった表面小突起18については靴底の係止ができなくなるが、この場合であっても表面大突起16が表面小突起18とともに配列されていると、表面大突起16が埋まる可能性は少ないと考えられるため、靴底が噛み込み係止される。
また、表面大突起16及び表面小突起18の配列が2列であることは、表面大孔15の直径が横桟11の太さの約2/5程度を占めることと相まって、横桟11に当たる靴底の前後方向の範囲を十分にカバーするという作用を有する。この他、実施例1に係る梯子用滑り止め具と同様の作用を有する。
【0044】
次に、実施例3の梯子用滑り止め具19の効果について説明する。梯子用滑り止め具19は、表面大突起16が設けられることで、靴底がより噛み込み係止される。よって、実施例1の梯子用滑り止め具1よりも足元が滑りにくく安全に昇降できるという効果が向上する。したがって、屋外での悪条件下での使用に際しても、滑り止め効果を十分に確保することができる。さらに、梯子用滑り止め具1と同様、着脱自在であるから、急激な天候悪化の場合にも、梯子用滑り止め具19へ容易に交換することができて便利である。よって、安全に作業を行うことができる。
また、表面大突起16の他の形状として、直径の長さが長く、突起部の高さが低いものや、直径の長さが短く、突起部の高さが高いものが考えられるが、前者では靴底との摩擦が小さいため、靴底が突起部に係止されにくい。後者では反対に、突起部が筒状又は針状をなしている場合があることから、靴底はかえって不安定になる。梯子用滑り止め具19は、上記形状の突起部が含まれないので、滑り止め効果が向上すると同時に、足元が安定的であるという有利な効果を有する。
次に、製造工程については、本実施例3に係る表面大突起16は水平部4に後付けされ、表面大孔15の底面は貫通されずに残っていることから、実施例1に比べてさほど煩雑にならず、コストの上昇もあまりない。すなわち、本実施例2の梯子用滑り止め具19は、実施例1の梯子用滑り止め具1よりも有利な効果が大きいという利益を考慮すれば、コスト上昇等の不利益は相殺され、結果的に利益が残ることとなる。
【0045】
なお、本実施例3に係る梯子用滑り止め具19の表面大突起16及び表面小突起18は、上縁面がいずれも平坦であるが、実施例2のように、切欠きを設けてもよい。
【実施例4】
【0046】
本発明に係る実施例4の梯子用滑り止め具20について、図7を用いて詳細に説明する。
図7は実施例4に係る梯子用滑り止め具20の使用状態図である。なお、図1乃至図6で示した構成要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0047】
実施例4に係る梯子用滑り止め具20は、横桟11の表面上に実施例1に係る梯子用滑り止め具1を2本直列に配置したものから構成され、梯子用滑り止め具1の横桟11中心に近い端部同士が、互いに重ね合わされる。その重ね合わせ長さの調整は、梯子用滑り止め具1自体を横桟11上で独立に左右方向へ移動させることで行われる。
ここで、重ね合わせを可能にするために、各梯子用滑り止め具1は重ね合わせ部45の縦桟取付部5を備えていない。重ね合わせの調整後、各梯子用滑り止め具1は、横桟11の両端付近において、それぞれの縦桟取付部5により縦桟10に止着される。
【0048】
次に、実施例4の作用について説明する。実施例4では、2本の梯子用滑り止め具1を独立に左右方向へ移動させることから、2本の梯子用滑り止め具1、すなわち梯子用滑り止め具20の全長を変化させるという作用を有する。
重ね合わせの範囲を適切に調整した後、梯子用滑り止め具20は、縦桟10及び横桟11に止着される。
【0049】
さらに、実施例4の効果について説明する。実施例4では、任意長さの横桟11に合うよう、梯子用滑り止め具20の全長を調整でき、汎用性が高く、便利である。つまり、滑り止め具を取り付けたい梯子の横幅が限られないため、寸法の異なる種々の既存の梯子に対して利用できて経済的である。
また、縦桟10や横桟11への止着は、実施例1と同じく、係止ネジを用いて行われるので、着脱を自在に、簡便に行うことができる。
この他にも、実施例1と同様に、滑り止め効果や安全性、経済性が高いという効果を有する。
【0050】
なお、本実施例4では、2本の梯子用滑り止め具1が配置されているが、横桟11の長さが、調整後の梯子用滑り止め具20の全長を超えるようであれば、本数をさらに増加させる、又は1本の長さがより長い梯子用滑り止め具1を配置させる等で対応しうる。
また、梯子用滑り止め具20の重ね合わせ部45には横桟取付部6は設けられていないが、これを設けることも可能である。
さらに、重ね合わせ部45が存在する場合のみならず、全く存在しない場合も可能である。すなわち、2本の梯子用滑り止め具1の隣接する端部同士が接合されている状態である。
【実施例5】
【0051】
本発明に係る実施例5の梯子用滑り止め具21について、図8(a)及び(b)を用いて詳細に説明する。(a)は実施例5に係る梯子用滑り止め具21の部分側面図で、(b)は(a)のD−D線矢視断面の部分拡大図である。なお、図1乃至図7で示した構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
図8(a)に示すように、実施例5に係る梯子用滑り止め具21は、実施例1に係る梯子用滑り止め具1の水平部4表面に備えられた表面突起13を、水平部4裏面にも備えるように変形したものである。裏面に備えられた裏面突起23は、表面突起13と交互に配列されている。
図8(b)に示すように、裏面孔22及び裏面突起23は、水平部4の天井部に備えられ、裏面孔22の直径は、実施例1の表面孔12と等しいが、裏面突起23の高さは実施例1の表面突起13の1/2程度である。
【0053】
次に、実施例5の作用について説明する。実施例5では、裏面突起23が設けられていることにより、この上縁と横桟11表面とに局所的な摩擦が生じ、水平部4が横桟11に対して滑ることを抑制するという作用を有する。したがって、横桟11の軸を中心とした水平部4の回動運動が防止される。
【0054】
また、実施例5の効果について説明する。実施例5では、横桟11の軸を中心とした水平部4の回動運動が防止されるという作用を有するので、回動を原因とする踏み外し等がなく、安全に昇降できるという効果を有する。さらに、裏面突起23の高さは実施例1における表面突起13の約1/2程度のわずかなものであるため、水平部4に足を乗せても、この回動運動は生じない。したがって、水平部4が横桟11上に固着された後も梯子用滑り止め具21は安定的に保持される。
この他にも、実施例1と同様に、梯子用滑り止め具21は滑り止め効果や経済性が高いという効果を有する。
【実施例6】
【0055】
本発明に係る実施例6に係る梯子用滑り止め具1aについて、図9(a)及び(b)を用いて説明する。(a)は実施例6に係る梯子用滑り止め具1aの縦桟取付部24の部分平面図で、(b)はその外観斜視図である。なお、図1乃至図8で示した構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0056】
図9(a)に示すように、実施例6に係る梯子用滑り止め具1aは、実施例1に係る梯子用滑り止め具1の縦桟取付部5を、形状について変形させたものである。この変形は、角材形状の縦桟に、縦桟取付部を密着させるためのものである。したがって、実施例1に係る縦桟取付部5が、円柱状の縦桟10に止着させやすい細長の長方形であったのに対し、本実施例6に係る縦桟取付部24は正方形に近い長方形の平板状に形成されている。そして、縦桟取付部24には、2個ずつの係止孔26がそれぞれ備えられている。
また、この縦桟取付部24と水平部4とは、縦桟取付部柄部25で接続されている。
次に、梯子用滑り止め具1aを横桟28に覆設させるため、図9(b)に示すように、縦桟取付部柄部25を屈曲して縦桟取付部24の端部を上方へ向け、取付部の平面を縦桟27へ接合させる。そして、係止ネジが、縦桟取付部24のある側から、係止孔26と縦桟27を貫通する。
【0057】
次に、実施例6の作用について説明する。実施例6では、縦桟取付部24が正方形に近い長方形状の平板で実施例1に比較して幅広であり、角材形状の縦桟27に接触面積を大きくして接合されるように作用する。そして、水平部4を横桟28に密着させ、上記係止ネジを締めると、梯子用滑り止め具1aが角材形状の縦桟を持つ梯子に固着される。
【0058】
さらに、実施例6の効果について説明する。梯子用滑り止め具1aが角材形状の縦桟を持つ梯子に固着されるということにより、様々な形状の梯子に滑り止め具を固着して利用することができる。しかも、縦桟取付部24の取り付け面積が広いので、実施例1の縦桟取付部5よりも確実に固着ができ、梯子用滑り止め具1aの固定が安定的に維持される。
この他にも、梯子用滑り止め具1aは、実施例1と同様に、滑り止め効果や経済性が高いという効果を有する。
【実施例7】
【0059】
本発明に係る実施例7に係る梯子用滑り止め具1bについて、図10(a)及び(b)を用いて説明する。(a)は実施例7に係る梯子用滑り止め具1bの扇状縦桟取付部29の部分平面図で、(b)はその外観斜視図である。なお、図1乃至図9で示した構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0060】
図10(a)に示すように、実施例7に係る梯子用滑り止め具1bは、実施例1に係る梯子用滑り止め具1の縦桟取付部5を、形状について変形させたものである。この変形は、接地面に対して垂直でない縦桟に、縦桟取付部を密着させるためのものである。
実施例1では、水平部4の軸方向と縦桟取付部5の長手方向とが平行関係にあった(図2参照)。これに対して本実施例7では、水平部4の軸方向と扇状縦桟取付部29の長手方向は、一定の範囲内(図10(a)中のα)で変化する。
この扇状縦桟取付部29は、扇が角度45度程度に開いた平板形状で、要に相当する部分に縦桟取付部柄部30を備え、水平部4と接続される。また、それぞれ4個ずつの係止孔31が備えられている。
次に、梯子用滑り止め具1bを横桟32に覆設させるため、図10(b)に示すように、縦桟取付部柄部30を屈曲させて扇状縦桟取付部29の端部を上方へ向け、縦桟33へ接合させる。そして、係止ネジが、扇状縦桟取付部29のある側から、係止孔31と縦桟33を貫通する。
なお、本実施例では扇状縦桟取付部29としたが、扇状にすることなく、縦桟取付部の長手方向が水平部4の軸方向に対して平面視して上方向に曲った状態に形成されてもよい。このようにすることで、細い縦桟の梯子に対して扇状縦桟取付部29の一部がはみ出す可能性を少なくして設置することができるが、予め曲げ角度を設定すると、傾斜した梯子に対する汎用性が損なわれる可能性がある。
【0061】
次に、実施例7の作用について説明する。実施例7では、扇状縦桟取付部29が扇状で、3個の係止孔31のうちいずれかが使用されることから、縦桟33の接地面に対する角度の違いに合わせて、扇状縦桟取付部29は縦桟33に接合される。ここで、上記角度は、垂直の場合も含まれる。
そして、水平部4を横桟32に密着させ、上記係止ネジを締めると、梯子用滑り止め具1bが垂直梯子以外の梯子、又は垂直梯子にも固着される。
【0062】
次に、実施例7の効果について説明する。
実施例7では、梯子用滑り止め具1bが垂直梯子か否かに関わらず止着されることから、多種の梯子に梯子用滑り止め具1bを取り付けできて、汎用性が高く、利便性が大きい。
また、他にも梯子用滑り止め具1bは、実施例1と同様に、滑り止め効果や経済性が高いという効果を有する。
【実施例8】
【0063】
本発明に係る実施例8の梯子34について、図11(a)乃至(c)を用いて説明する。(a)は実施例8に係る梯子34の使用状態図である。(b)は(a)のE−E線矢視断面の部分拡大図であって、梯子用滑り止め具1の取り外し時である。また、(c)はその取り付け時である。なお、図1乃至図10で示した構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0064】
図11(a)に示すように、実施例8に係る梯子34は、梯子用滑り止め具1を止着する留め具35を備えたものである。留め具35は、梯子用滑り止め具1の縦桟取付部5全体を覆うようにして、これを縦桟36に密着固定する。
しかし、横桟取付部6と留め具35との直接関係はなく、横桟取付部6は横桟37を挟むのみである。
図11(b)は、縦桟取付部5が取り外された状態を示す。これによると、留め具35は、留め具開閉部38と、留め具固定部39と、留め具固定ネジ40と、留め具ヒンジ41と、留め具係止爪42とから構成される。留め具開閉部38は、縦桟取付部5を押さえる部材で、留め具ヒンジ41を基点とした開閉運動を行う。留め具固定部39は、留め具35を縦桟36に固定する部材で、縦桟切欠き43部分を避けながら縦桟36に留め具固定ネジ40を用いてあらかじめ固定されている。
そして、図11(c)のように、留め具35による縦桟取付部5の取り付け時は、縦桟取付部5の上から留め具係止爪42を縦桟切欠き43に嵌め込み、留め具開閉部38を被せて縦桟取付部5を縦桟36表面に圧着する。
縦桟取付部5を取り外す時は、留め具係止爪42を引き出す。
【0065】
以下、実施例8の作用について説明する。縦桟取付部5が留め具35により縦桟36表面に圧着固定され、横桟取付部6は、横桟37を挟むことから、梯子34が梯子用滑り止め具1を保持する。
【0066】
次に、実施例8の効果について説明する。梯子34は、留め具35及び横桟37を取り付け手段に用いて、梯子用滑り止め具1を安定的に保持できる。したがって、梯子34は、梯子用滑り止め具1の固着に係止ネジを必要とする梯子よりも、簡便容易に取り付け可能である。取り付けには細かい作業を必要とせず、手間がかからないため、急ぎの際に便利である。また、取り外しについても同様の有利な効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0067】
請求項1乃至請求項8に記載された発明は、横桟が滑らかな円筒面をした梯子に梯子用滑り止め具を覆設することで、足元の滑りや踏み外しを防止することができるため、建設作業用梯子や避難用梯子等、又はこれらの梯子を降雨などの悪条件下で用いる場合の梯子用滑り止め具に適用可能である。さらに、これらの梯子用滑り止め具を簡便に取り付けることができる梯子としても適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1,1a,1b,2,19,20,21…梯子用滑り止め具 3…梯子 4…水平部 5…縦桟取付部 6…横桟取付部 7〜9,26,31…係止孔 10…縦桟 11…横桟 12…表面孔 13…表面突起 14…突起部切欠き 15…表面大孔 16…表面大突起 17…表面小孔 18…表面小突起 22…裏面孔 23…裏面突起 24…縦桟取付部 25…縦桟取付部柄部 27…縦桟 28…横桟 29…扇状縦桟取付部 30…縦桟取付部柄部 32…横桟 33…縦桟 34…梯子 35…留め具 36…縦桟 37…横桟 38…留め具開閉部 39…留め具固定部 40…留め具固定ネジ 41…留め具ヒンジ 42…留め具係止爪 43…縦桟切欠き 44…基部 45…重ね合わせ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
梯子の横桟に覆設される覆い体と、
前記覆い体を前記梯子の少なくとも縦桟又は横桟のいずれかに固着するための取付部と、
前記覆い体に穿設される複数の孔と、
前記覆い体の表面において、前記孔の外周部に形成される突起部を備えることを特徴とする梯子用滑り止め具。
【請求項2】
前記取付部は前記梯子の少なくとも縦桟又は横桟のいずれかに止着され、横桟の軸を中心とした前記覆い体の回動を防止することを特徴とする請求項1に記載の梯子用滑り止め具。
【請求項3】
前記突起部は、前記孔の周方向に少なくとも一カ所の切欠きを設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の梯子用滑り止め具。
【請求項4】
前記孔の直径の長さと前記突起部の高さは正の相関関係を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の梯子用滑り止め具。
【請求項5】
複数の前記覆い体が長さの一部を所望範囲で重複可能に直列継合され、前記覆い体の全長を調整可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の梯子用滑り止め具。
【請求項6】
前記覆い体の裏面において、第2の突起部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の梯子用滑り止め具。
【請求項7】
前記梯子の横桟に覆設される前記覆い体と、
前記覆い体を前記梯子の縦桟に固着するための縦桟取付部と、
前記覆い体に穿設される複数の前記孔と、
前記覆い体の表面において、前記孔の外周部に形成される前記突起部とを備え、
前記覆い体の軸方向と前記縦桟取付部の長手方向とを含んで形成される平面が、前記縦桟の長手方向に対して平行であることを特徴とする梯子用滑り止め具。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の梯子用滑り止め具を装着する留め具を有することを特徴とする梯子。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate