説明

梱包体情報出力装置、梱包材設計装置、支持位置出力装置および梱包体情報出力方法

【課題】被梱包物の重心位置に基づく補強を含めた腰下盤の設計を自動的に行い、梱包体の重量および重心位置を出力することにより梱包体を安全に搬送する。
【解決手段】梱包体情報出力装置1の自動設計部13では、被梱包物である対象装置の大きさおよび重量に基づいて梱包材の腰下盤および固定治具の仮設計が行われた後、対象装置の重心位置に基づき、腰下盤および固定治具の仮設計結果に対して必要な補強設計が自動的に行われ、重量重心算出部14において梱包体の重量および重心位置が精度良く求められる。そして、梱包体の重量および重心位置をディスプレイ22または印刷用紙に出力することにより、作業者が当該出力を見て梱包体の重量および重心位置を容易に把握することができる。その結果、作業者が梱包体を搬送する際に、梱包体が傾いたり転倒することを防止して梱包体を安全に搬送することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被梱包物を梱包材にて梱包した梱包体の重量および重心位置を出力する梱包体情報出力装置および梱包体情報出力方法、被梱包物を梱包する梱包材の設計を行う梱包材設計装置、並びに、装置を支持する際の支持位置を出力する支持位置出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体の製造等に利用される大型の装置を輸送する際には、装置を木箱等の梱包材にて梱包したもの(以下、「梱包体」という。)をフォークリフト等で持ち上げてトラックやコンテナに収容することが行われている。
【0003】
一方、特許文献1では、被梱包物の三次元形状データに基づき、段ボール製の梱包箱の内部に配置される支持用の梱包材の形状を設計し、段ボールを裁断して梱包材を製作する梱包システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−164257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半導体の製造等に利用される大型の装置は内部の部品配置が複雑であるため、外観から想像される重心位置と実際の重心位置とが異なることが多く、梱包材により梱包された状態では重心位置を把握することはより難しくなる。したがって、梱包体をフォークリフト等で持ち上げた際に梱包体が傾いて転倒するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、梱包体を安全に搬送することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、被梱包物を梱包材にて梱包した梱包体の重量および重心位置を出力する梱包体情報出力装置であって、前記被梱包物の大きさ、重量および重心位置を記憶する記憶部と、前記被梱包物の前記大きさおよび前記重量に基づいて前記梱包材の腰下盤、および、前記被梱包物を前記腰下盤に固定する固定治具の仮設計を行い、前記被梱包物の前記重心位置に基づき、前記腰下盤または前記固定治具の仮設計結果に対して必要な補強設計を行う自動設計部と、前記自動設計部による設計結果に基づいて前記梱包材および前記固定治具のそれぞれの重量および重心位置を求め、前記被梱包物、前記梱包材および前記固定治具のそれぞれの重量および重心位置に基づいて前記梱包体の重量および重心位置を求める重量重心算出部と、前記梱包体の前記重量および前記重心位置をディスプレイまたは印刷用紙に出力する出力部とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の梱包体情報出力装置であって、前記自動設計部が、前記被梱包物の前記大きさに基づき、前記梱包材の前記腰下盤よりも上方の部位の設計をさらに行う。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の梱包体情報出力装置であって、前記出力部により、前記梱包体の前記重心位置が前記梱包体の三次元画像上に示される。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の梱包体情報出力装置であって、前記補強設計において、前記腰下盤の滑材、ヘッダまたは負荷床材の補強の設計が行われる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の梱包体情報出力装置であって、前記被梱包物の三次元CADデータに基づき、前記被梱包物の前記大きさ、前記重量および前記重心位置を求めるCADデータ処理部をさらに備える。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の梱包体情報出力装置であって、前記梱包体の前記重量および前記重心位置に基づき、前記梱包体をフォークリフトにて持ち上げて搬送する際に、前記フォークリフトにより前記梱包体を支持する支持位置を求める支持位置算出部をさらに備え、前記出力部により、前記支持位置がディスプレイまたは印刷用紙に出力される。
【0013】
請求項7に記載の発明は、被梱包物を梱包する梱包材の設計を行う梱包材設計装置であって、前記被梱包物の三次元CADデータに基づき、前記被梱包物の大きさ、重量および重心位置を求めるCADデータ処理部と、前記被梱包物の前記大きさおよび前記重量に基づいて前記梱包材の腰下盤、および、前記被梱包物を前記腰下盤に固定する固定治具の仮設計を行い、前記被梱包物の前記重心位置に基づき、前記腰下盤または前記固定治具の仮設計結果に対して必要な補強設計を行う自動設計部とを備える。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の梱包材設計装置であって、前記自動設計部が、前記被梱包物の前記大きさに基づき、前記梱包材の前記腰下盤よりも上方の部位の設計をさらに行う。
【0015】
請求項9に記載の発明は、装置を支持する際の支持位置を出力する支持位置出力装置であって、前記装置の三次元CADデータに基づき、前記装置の重量および重心位置を求めるCADデータ処理部と、前記装置の前記重量および前記重心位置に基づき、前記装置をフォークリフトにて持ち上げて搬送する際に、前記フォークリフトにより前記装置を支持する支持位置を求める支持位置算出部と、前記支持位置をディスプレイまたは印刷用紙に出力する出力部とを備える。
【0016】
請求項10に記載の発明は、被梱包物を梱包材にて梱包した梱包体の重量および重心位置を出力する梱包体情報出力方法であって、a)前記被梱包物の大きさ、重量および重心位置を記憶する工程と、b)前記被梱包物の前記大きさおよび前記重量に基づいて前記梱包材の腰下盤、および、前記被梱包物を前記腰下盤に固定する固定治具の仮設計を行い、前記被梱包物の前記重心位置に基づき、前記腰下盤または前記固定治具の仮設計結果に対して必要な補強設計を行う工程と、c)前記b)工程における設計結果に基づいて前記梱包材および前記固定治具のそれぞれの重量および重心位置を求め、前記被梱包物、前記梱包材および前記固定治具のそれぞれの重量および重心位置に基づいて前記梱包体の重量および重心位置を求める工程と、d)前記梱包体の前記重量および前記重心位置をディスプレイまたは印刷用紙に出力する工程とを備える。
【発明の効果】
【0017】
請求項1ないし8、並びに、請求項10の発明では、被梱包物の重心位置に基づく補強を含めた腰下盤または固定治具の設計を自動的に行うことができる。また、請求項1ないし6、並びに、請求項10の発明では、梱包体の重量および重心位置を出力することにより梱包体を安全に搬送することができる。請求項9の発明では、装置の適切な支持位置を自動的かつ正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態に係る梱包体情報出力装置のブロック図である。
【図2】梱包体の斜視図である。
【図3】腰下盤の斜視図である。
【図4】対象装置の斜視図である。
【図5】支持脚近傍を示す図である。
【図6】梱包体の重量および重心位置の出力の流れを示す図である。
【図7】梱包体の斜視図である。
【図8】第2の実施の形態に係る支持位置出力装置のブロック図である。
【図9】支持位置の出力の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る梱包体情報出力装置1の機能を示すブロック図である。梱包体情報出力装置1は、被梱包物を梱包材にて梱包した梱包体の重量および重心位置を出力する装置であり、記憶部11、CADデータ処理部12、自動設計部13、重量重心算出部14、出力部15および支持位置算出部16を備える。本実施の形態では、半導体の製造等に利用される大型の製造装置を被梱包物として、当該製造装置を腰下盤付きの木箱である梱包材にて梱包する場合について説明する。以下、被梱包物である製造装置を「対象装置」という。
【0020】
梱包体情報出力装置1は、通常のコンピュータと同様に、各種演算処理を行うCPU、実行されるプログラムを記憶したり演算処理の作業領域となるRAM、基本プログラムを記憶するROM、および、各種情報を記憶する固定ディスク等を有し、記憶部11、CADデータ処理部12、自動設計部13、重量重心算出部14、出力部15および支持位置算出部16は、CPU等により実現される機能に相当する。なお、これらの機能は複数台のコンピュータにより実現されてもよい。梱包体情報出力装置1には、キーボードやマウス等の入力部21、作業者に各種情報を表示するディスプレイ22、および、各種情報の印刷が行われるプリンタ23が接続される。図1では、梱包体情報出力装置1に接続されるディスプレイ22等の構成も併せて描いている。
【0021】
図2は、被梱包物である対象装置を梱包材8にて梱包した梱包体7を示す斜視図である。梱包体7は略直方体であり、梱包材8は、梱包体7の底面となる腰下盤81、および、梱包体7の上面(以下、「天井板821」と呼ぶ。)および4つの側面(以下、「外板822」と呼ぶ。)となる上部構造82(すなわち、梱包材8の腰下盤81よりも上方の部位)を備える。図3は、梱包材8の腰下盤81を示す斜視図である。腰下盤81は、それぞれ3本の滑材811およびすり材812、2本のヘッダ813、複数の負荷床材814、並びに、複数の無負荷床材815を備え、これらの部材は釘やボルト等により互いに固定される。
【0022】
それぞれがX方向に伸びる3本の滑材811はY方向に配列されており、3本の滑材811のX方向の両端部は、それぞれがY方向に伸びる2本のヘッダ813により接続される。各滑材811の(−Z)側にはすり材812が固定され、すり材812にはフォークリフトのフォークが差し込まれる2つのフォーク差込口816が形成される。2つのフォーク差込口816は、後述するように、すり材812の(−X)側に偏った位置に配置される。2本のヘッダ813の間には、それぞれがY方向に伸びる複数の負荷床材814が互いに離間しつつX方向に配列されて滑材811に固定される。隣接する各2本の負荷床材814の間には、それぞれがY方向に伸びる2本の無負荷床材815がX方向に配列されて滑材811に固定される。無負荷床材815は、負荷床材814よりも薄い板状である。
【0023】
図4は、対象装置9を示す斜視図であり、対象装置9の略長方形の底面には、4本の支持脚91が4つの角部に設けられる。対象装置9が梱包される際には、4本の支持脚91が腰下盤81(図3参照)の負荷床材814上に載置され、図5に示すように、門型の固定治具85により各支持脚91が負荷床材814等に固定されることにより対象装置9が腰下盤81に固定される。固定治具85は、門型の固定治具本体851、および、固定治具本体851を負荷床材814に固定する複数のボルト852を備える。なお、対象装置9の固定には、支持脚91の形状や大きさ、および、支持脚91の周囲の部位の形状等に合わせて様々な形状の固定治具が用いられる。例えば、固定治具本体を利用せず、支持脚91に形成された穴に挿入されて負荷床材814に固定されることにより支持脚91を固定するボルトが固定治具として用いられてもよい。また、支持脚91の本数は4には限定されない。
【0024】
次に、梱包体情報出力装置1による梱包体7の重量および重心位置の出力について図6に沿って説明する。図1に示す梱包体情報出力装置1では、まず、対象装置9(図4参照)の三次元CADデータが入力部21から入力されて記憶部11に記憶される(ステップS11)。当該三次元CADデータは、対象装置9を構成する複数の部品のそれぞれについて、部品の大きさ、重量および重心位置、並びに、対象装置9内における当該部品の位置を示す部品データを含む。なお、部品データは、部品の重量に代えて、部品の体積および比重を示す情報を含んでいてもよい。
【0025】
続いて、CADデータ処理部12により、対象装置9の三次元CADデータに基づき、対象装置9の大きさ、重量および重心位置が求められて記憶部11により記憶される(ステップS12)。具体的には、対象装置9を構成する全部品のそれぞれの大きさおよび位置から対象装置9の大きさが求められ、全部品の重量が合計されて対象装置9の重量が求められ、さらに、全部品の重量および重心位置(すなわち、X座標、Y座標およびZ座標)の積和を対象装置9の重量で除することにより対象装置9の重心位置が求められる。対象装置9の大きさは、対象装置9の全部品のうち、外側に露出している部品の大きさおよび位置のみから求められてよい。
【0026】
次に、自動設計部13において、対象装置9の大きさおよび重量に基づいて腰下盤81および固定治具85の仮設計が行われる(ステップS13)。図3に示す腰下盤81の仮設計では、平面視における対象装置9の外形よりも大きくなるように腰下盤81のX方向およびY方向の長さが決定される。また、JIS(日本工業規格)のZ1402やZ1403等に基づき、対象装置9の重量に基づいて滑材811、すり材812、ヘッダ813、負荷床材814および無負荷床材815の幅や厚さ等が決定され、対象装置9の支持脚91(図4参照)間の距離等に基づいて負荷床材814および無負荷床材815の配置が決定される。
【0027】
図5に示す固定治具85の仮設計では、支持脚91の形状や大きさ等に基づき、記憶部11に予め記憶されている固定治具のデータベースから適切な形状および大きさの固定治具85(本実施の形態では、固定治具本体851およびボルト852)の集合が抽出される。そして、対象装置9の重量が全ての支持脚91に均等に加わると仮定し、各支持脚91に加わる荷重(本実施の形態では、対象装置9の重量の1/4であり、以下、「平均荷重」という。)に基づいて抽出された固定治具85の集合から最適な固定治具85が選択される。
【0028】
自動設計部13(図1参照)では、腰下盤81および固定治具85の仮設計が終了すると、対象装置9の重心位置に基づき、腰下盤81および固定治具85の仮設計結果に対して必要な補強設計が行われる(ステップS14)。腰下盤81の補強設計では、滑材811、ヘッダ813または負荷床材814の補強の設計が行われる。補強設計では、まず、対象装置9の重量および重心位置から複数の支持脚91のそれぞれに実際に加わる荷重(以下、「実荷重」という。)が求められる。負荷床材814の補強設計が行われる場合には、実荷重が平均荷重よりも大きい支持脚91(すなわち、重心位置に近い支持脚91)が載置される負荷床材814が選択される。そして、当該負荷床材814が実荷重を支持できるように、必要に応じて、負荷床材814の幅や厚さが大きくされたり、負荷床材814の材料や構造が高強度なものに変更される。当該変更は、実荷重と平均荷重との差と補強との関連を示す補強データベースに基づいて行われ、当該補強データベースは予め記憶部11に記憶されている。なお、負荷床材814を厚くする場合には、全ての支持脚91が載置される高さを揃えるために、他の負荷床材814も同じ厚さにするか、他の負荷床材814上に厚さの不足分を補う補助板が配置される。
【0029】
滑材811やヘッダ813の補強設計が行われる場合には、例えば、実荷重が平均荷重よりも大きい支持脚91に近い滑材811やヘッダ813が選択され、必要に応じて上述の補強データベースに基づいて、当該滑材811やヘッダ813の幅や厚さが大きくされたり、材料や構造が高強度なものに変更される。なお、各部材の調達を簡素化するという観点からは、全ての負荷床材814、滑材811およびヘッダ813の仕様が、上述の補強設計が行われた負荷床材814、滑材811およびヘッダ813に合わせられてもよい(下記の固定治具85においても同様)。
【0030】
固定治具85の補強設計が行われる場合には、実荷重が平均荷重よりも大きい支持脚91を固定する固定治具85について、実荷重に基づいて最適な固定治具85(すなわち、平均荷重に基づいて選択された固定治具85よりも耐荷重が大きい固定治具85)が選択される。また、重心位置が高い対象装置9の場合、対象装置9に横向きの荷重が加えられる際に固定治具85に加わる力が大きくなる。このため、対象装置9のZ方向の重心位置が所定の閾値よりも大きい場合には、当該Z方向の重心位置に基づいて、適切な固定治具85が再度選択される。なお、ステップS14では、腰下盤81および固定治具85のどちらか一方のみの補強設計が行われてもよい。
【0031】
腰下盤81および固定治具85の補強設計が終了すると、自動設計部13では、対象装置9の大きさや重さ等に基づいて梱包材8の上部構造82の設計が行われる(ステップS15)。本実施の形態では、対象装置9の大きさに基づいて上部構造82の天井板821や外板822の大きさが決定され、対象装置9の重量およびJISのZ1403等に基づいて天井板821や外板822の厚さが求められる。
【0032】
続いて、重量重心算出部14(図1参照)において、自動設計部13による腰下盤81、上部構造82および固定治具85の設計結果に基づき、梱包材8および固定治具85の重量および重心位置が求められる(ステップS16)。具体的には、腰下盤81および上部構造82の各部材の重量が合計されて梱包材8の重量が求められ、各部材の重量および重心位置(すなわち、X座標、Y座標およびZ座標)の積和を梱包材8の合計重量で除することにより梱包材8の重心位置が求められる。また、ステップS14において決定された固定治具85の種類に基づいて固定治具85の重量が求められ、固定治具85の重量および重心位置の積和を全固定治具85の合計重量で除することにより複数の固定治具85の重心位置が求められる。
【0033】
次に、重量重心算出部14により、ステップS12にて求められた対象装置9の重量および重心位置、並びに、ステップS16にて求められた梱包材8および固定治具85のそれぞれの重量および重心位置に基づいて梱包体7の重量および重心位置が求められる(ステップS17)。具体的には、対象装置9、梱包材8および固定治具85の重量が合計されて梱包体7の重量が求められ、対象装置9、梱包材8および固定治具85の重量および重心位置の積和を梱包体7の重量で除することにより梱包体7の重心位置が求められる。
【0034】
梱包体7の重量および重心位置は、出力部15(図1参照)により、ディスプレイ22またはプリンタ23により印刷が行われる印刷用紙に出力される(ステップS18)。梱包体7の重心位置は、X座標、Y座標およびZ座標の数値にて表示されるとともに、梱包体7の三次元画像上に表示されることが好ましい。三次元画像上への重心位置の表示は、例えば、図7に示すように、重心のX方向における位置、Y方向における位置、および、Z方向における位置をそれぞれ示すマーク71(円と十字とを組み合わせたマーク等)が、梱包体7の各面に表示されることにより行われる。また、梱包体7の輪郭のみを直線等にて示し、輪郭の内側の空間に座標位置を示すマーク(球と球の中心からX方向、Y方向およびZ方向にそれぞれ伸びる矢印とを組み合わせたマーク等)が表示されてもよい。
【0035】
梱包体情報出力装置1では、支持位置算出部16(図1参照)により、梱包体7の大きさ、重量および重心位置に基づき、梱包体7をフォークリフトにて持ち上げて搬送する際に、フォークリフトのフォークにより梱包体7を支持する支持位置が求められる(ステップS19)。具体的には、梱包体7の大きさや重量に基づき、記憶部11に予め記憶されているフォークのデータベースから適切な形状および大きさのフォークが抽出され、梱包体7の重心位置が当該フォークの幅の中央に位置するように支持位置が決定される。本実施の形態では、梱包体7のX方向の中央から(−X)側に偏って配置される2つの指示位置が決定される。当該支持位置が、重心位置が梱包体7の中心にあると仮定した場合に比べて大きくずれている場合には、必要に応じてすり材812のX方向の位置が変更される。すり材812のX方向の位置が大きく変更される場合には、ステップS16〜S19が繰り返される。
【0036】
そして、出力部15により、当該支持位置(すなわち、フォークの複数の先端部がY方向に挿入される位置)がディスプレイ22またはプリンタ23により印刷が行われる印刷用紙に出力される(ステップS20)。支持位置は、X座標の数値にて表示されるとともに、梱包体7の三次元画像上に表示されることが好ましい。三次元画像上への支持位置の表示は、例えば、図7に示すように、(−Y)側のすり材812の下部に矩形のマーク72(図中において平行斜線を付す。)を表示することにより行われる。なお、ステップS18における出力は、ステップS20と同時に行われてもよい。
【0037】
以上に説明したように、梱包体情報出力装置1では、自動設計部13により、対象装置9の大きさ、重量および重心位置に基づく補強を含めた腰下盤81および固定治具85の設計を自動的に行うことができる。これにより、重量重心算出部14において梱包体7の重量および重心位置を精度良く求めることができる。また、梱包体7の重量および重心位置をディスプレイ22または印刷用紙に出力することにより、作業者が当該出力を見て梱包体7の重量および重心位置を容易に把握することができる。その結果、作業者が梱包体7を搬送する際に、梱包体7の重量および重心位置を考慮して梱包体7を持ち上げることができるため、梱包体7が傾いたり転倒することを防止して梱包体7を安全に搬送することができる。さらに、梱包体7の重心位置が三次元画像上に表示されることにより、作業者が梱包体7の重心位置をより容易に把握することができる。
【0038】
上述のように、自動設計部13では、梱包材8の上部構造82の設計も自動的に行うことができる。また、重量重心算出部14では、自動設計部13による腰下盤81、上部構造82および固定治具85の設計結果と記憶部11に記憶された対象装置9の重量および重心位置から、梱包体7の重量および重心位置を自動的に、かつ、正確に求めることができる。CADデータ処理部12では、対象装置9の大きさ、重量および重心位置を、対象装置9の三次元CADデータに基づいて正確に求めることができる。その結果、梱包材8の仮設計および補強設計をより正確に行うことができ、梱包体7の重量および重心位置をより正確に求めることができる。さらに、支持位置算出部16では、梱包体7の重量および重心位置に基づいて梱包体7の支持位置を自動的かつ正確に求めることができる。このように、梱包体情報出力装置1では、対象装置9の三次元CADデータに基づいて、梱包材8の自動設計、梱包体7の重量および重心位置の算出および表示、並びに、梱包体7の支持位置の算出および表示が自動的に、かつ、正確に行われる。その結果、対象装置9の搬送に係る作業を迅速かつ安全に行うことができる。
【0039】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る支持位置出力装置について説明する。図8は、支持位置出力装置3の機能を示すブロック図である。支持位置出力装置3は、対象装置9(図4参照)を梱包することなく支持する際の支持位置を出力する装置であり、記憶部11、CADデータ処理部12、出力部15および支持位置算出部16aを備える。支持位置出力装置3は、梱包体情報出力装置1と同様にCPU、RAM、ROMおよび固定ディスク等を有し、記憶部11、CADデータ処理部12、出力部15および支持位置算出部16aはCPU等により実現される機能に相当する。なお、これらの機能は複数台のコンピュータにより実現されてもよい。梱包体情報出力装置1には、入力部21、ディスプレイ22およびプリンタ23が接続されており、図8では、ディスプレイ22等の構成も併せて描いている。
【0040】
図9は、支持位置出力装置3による支持位置の出力の流れを示す図である。支持位置出力装置3では、まず、第1の実施の形態と同様に、対象装置9(図4参照)の三次元CADデータが入力部21から入力されて記憶部11に記憶され(ステップS31)、CADデータ処理部12により、対象装置9の三次元CADデータに基づき、対象装置9の形状、大きさ、重量および重心位置が求められて記憶部11により記憶される(ステップS32)。
【0041】
続いて、支持位置算出部16aにより、対象装置9の形状、大きさ、重量および重心位置に基づき、対象装置9をフォークリフトにて持ち上げて搬送する際に、フォークリフトのフォークにより対象装置9を支持する支持位置が求められる(ステップS33)。具体的な支持位置の決定方法は、梱包体情報出力装置1の支持位置算出部16による梱包体7の支持位置の決定(ステップS19)とほぼ同様であり、対象装置9の大きさや重量に基づいて適切なフォークがデータベースから抽出されて対象装置9の重心位置が当該フォークの幅の中央に位置するように支持位置が決定される。そして、出力部15により、当該支持位置がディスプレイ22またはプリンタ23により印刷が行われる印刷用紙に出力される(ステップS34)。支持位置は、X座標の数値にて表示されるとともに、対象装置9の三次元画像上に表示されることが好ましい。
【0042】
支持位置出力装置3では、対象装置9の三次元CADデータに基づき、対象装置9の適切な支持位置を自動的かつ正確に求めることができる。なお、ステップS33では、対象装置9の形状や大きさが標準的なものである場合等、対象装置9の重量および重心位置のみに基づいて支持位置が求められてもよい。また、ステップS34では、対象装置9の重量および重心位置も支持位置と合わせて出力されることが好ましい。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0044】
上述のステップS14では、腰下盤81の滑材811、ヘッダ813および負荷床材814の補強設計が行われるが、対象装置9の重量や重心位置の偏りの程度等に合わせて、これらの部材の一部、あるいは、腰下盤81の他の部材の補強設計が行われてもよい。ただし、腰下盤81の補強設計では、対象装置9の重心位置の偏りにより影響を受けやすい滑材811、ヘッダ813または負荷床材814の補強の設計が行われることがより好ましい。
【0045】
ステップS19では、梱包体7をフォークリフトにて持ち上げる際の支持位置が求められるが、梱包体7にワイヤーロープを掛けて当該ワイヤーロープをクレーン等にて持ち上げる場合(すなわち、玉掛けを行う場合)のワイヤーロープによる梱包体7の支持位置が求められてもよい(ステップS33においても同様)。
【0046】
梱包体情報出力装置1では、対象装置9の大きさ、重量および重心位置が予め他の手段により求められて記憶部11に格納される場合、CADデータ処理部12は省略されてよい。また、梱包体情報出力装置1の各構成のうち梱包材8の設計に係る構成を独立させ、当該構成を備える装置が、梱包材8の設計を自動的に行う梱包材設計装置として利用されてもよい。例えば、梱包材設計装置は、対象装置9の大きさ、重量および重心位置を求めるCADデータ処理部12、並びに、梱包材8の腰下盤81および固定治具85の仮設計、および、腰下盤81または固定治具85に対して必要な補強設計を行う自動設計部13を備える。これにより、梱包体情報出力装置1と同様に、対象装置9の重心位置に基づく補強を含めた腰下盤81および固定治具85の設計を自動的に行うことができる。当該装置では、自動設計部13にて対象装置9の大きさに基づいて上部構造82の設計が自動的に行われることがより好ましい。
【0047】
対象装置9の梱包には、腰下盤81を備える様々な梱包材8が利用されてよい。例えば、梱包材8の上部構造82は、天井板821と4つの側面である外板822のうちいずれかが省略された形状であってもよい。また、上部構造82は木材以外の様々な材料により形成されてもよい。上部構造82が木材により形成される場合には、上部構造82は対象装置9の大きさおよび重量に基づいて設計されるが、上部構造82が段ボール等の比較的強度が低い材料にて形成される場合には、上部構造82は対象装置9の大きさのみに基づいて設計される。換言すれば、上部構造82は対象装置9の少なくとも大きさに基づいて設計される。
【0048】
梱包体情報出力装置1では、自動設計部13による梱包材8の上部構造82の設計(ステップS15)が省略され、作業者が決定した上部構造82の重量および重心位置が入力部21から入力されて記憶部11に記憶されてもよい。この場合、ステップS16では、自動設計部13による腰下盤81および固定治具85の設計結果、並びに、記憶部11に記憶された上部構造82の重量および重心位置に基づいて、梱包材8および固定治具85の重量および重心位置が求められる。
【0049】
梱包体7は、例えば、腰下盤81上に固定された対象装置9をビニールシートで覆い、ビニールシートを対象装置9および腰下盤81と共にロープにて縛ることにより形成されてもよい。この場合、腰下盤81、ビニールシートおよびロープが、対象装置9を梱包する梱包材8となる。梱包体7は、腰下盤81上に固定された対象装置9をロープ等にて腰下盤81と共に縛ることにより形成されてもよい。また、腰下盤81に対象装置9を固定しただけのものも梱包体7とみなすことができる。また、梱包材8により梱包される被梱包物は、半導体の製造等に利用される大型の装置以外の様々なものであってよい。
【0050】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてよい。
【符号の説明】
【0051】
1 梱包体情報出力装置
3 支持位置出力装置
7 梱包体
8 梱包材
9 対象装置
11 記憶部
12 CADデータ処理部
13 自動設計部
14 重量重心算出部
15 出力部
16,16a 支持位置算出部
22 ディスプレイ
81 腰下盤
82 上部構造
85 固定治具
811 滑材
813 ヘッダ
814 負荷床材
S11〜S20,S31〜S34 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被梱包物を梱包材にて梱包した梱包体の重量および重心位置を出力する梱包体情報出力装置であって、
前記被梱包物の大きさ、重量および重心位置を記憶する記憶部と、
前記被梱包物の前記大きさおよび前記重量に基づいて前記梱包材の腰下盤、および、前記被梱包物を前記腰下盤に固定する固定治具の仮設計を行い、前記被梱包物の前記重心位置に基づき、前記腰下盤または前記固定治具の仮設計結果に対して必要な補強設計を行う自動設計部と、
前記自動設計部による設計結果に基づいて前記梱包材および前記固定治具のそれぞれの重量および重心位置を求め、前記被梱包物、前記梱包材および前記固定治具のそれぞれの重量および重心位置に基づいて前記梱包体の重量および重心位置を求める重量重心算出部と、
前記梱包体の前記重量および前記重心位置をディスプレイまたは印刷用紙に出力する出力部と、
を備えることを特徴とする梱包体情報出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の梱包体情報出力装置であって、
前記自動設計部が、前記被梱包物の前記大きさに基づき、前記梱包材の前記腰下盤よりも上方の部位の設計をさらに行うことを特徴とする梱包体情報出力装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の梱包体情報出力装置であって、
前記出力部により、前記梱包体の前記重心位置が前記梱包体の三次元画像上に示されることを特徴とする梱包体情報出力装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の梱包体情報出力装置であって、
前記補強設計において、前記腰下盤の滑材、ヘッダまたは負荷床材の補強の設計が行われることを特徴とする梱包体情報出力装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の梱包体情報出力装置であって、
前記被梱包物の三次元CADデータに基づき、前記被梱包物の前記大きさ、前記重量および前記重心位置を求めるCADデータ処理部をさらに備えることを特徴とする梱包体情報出力装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の梱包体情報出力装置であって、
前記梱包体の前記重量および前記重心位置に基づき、前記梱包体をフォークリフトにて持ち上げて搬送する際に、前記フォークリフトにより前記梱包体を支持する支持位置を求める支持位置算出部をさらに備え、
前記出力部により、前記支持位置がディスプレイまたは印刷用紙に出力されることを特徴とする梱包体情報出力装置。
【請求項7】
被梱包物を梱包する梱包材の設計を行う梱包材設計装置であって、
前記被梱包物の三次元CADデータに基づき、前記被梱包物の大きさ、重量および重心位置を求めるCADデータ処理部と、
前記被梱包物の前記大きさおよび前記重量に基づいて前記梱包材の腰下盤、および、前記被梱包物を前記腰下盤に固定する固定治具の仮設計を行い、前記被梱包物の前記重心位置に基づき、前記腰下盤または前記固定治具の仮設計結果に対して必要な補強設計を行う自動設計部と、
を備えることを特徴とする梱包材設計装置。
【請求項8】
請求項7に記載の梱包材設計装置であって、
前記自動設計部が、前記被梱包物の前記大きさに基づき、前記梱包材の前記腰下盤よりも上方の部位の設計をさらに行うことを特徴とする梱包材設計装置。
【請求項9】
装置を支持する際の支持位置を出力する支持位置出力装置であって、
前記装置の三次元CADデータに基づき、前記装置の重量および重心位置を求めるCADデータ処理部と、
前記装置の前記重量および前記重心位置に基づき、前記装置をフォークリフトにて持ち上げて搬送する際に、前記フォークリフトにより前記装置を支持する支持位置を求める支持位置算出部と、
前記支持位置をディスプレイまたは印刷用紙に出力する出力部と、
を備えることを特徴とする支持位置出力装置。
【請求項10】
被梱包物を梱包材にて梱包した梱包体の重量および重心位置を出力する梱包体情報出力方法であって、
a)前記被梱包物の大きさ、重量および重心位置を記憶する工程と、
b)前記被梱包物の前記大きさおよび前記重量に基づいて前記梱包材の腰下盤、および、前記被梱包物を前記腰下盤に固定する固定治具の仮設計を行い、前記被梱包物の前記重心位置に基づき、前記腰下盤または前記固定治具の仮設計結果に対して必要な補強設計を行う工程と、
c)前記b)工程における設計結果に基づいて前記梱包材および前記固定治具のそれぞれの重量および重心位置を求め、前記被梱包物、前記梱包材および前記固定治具のそれぞれの重量および重心位置に基づいて前記梱包体の重量および重心位置を求める工程と、
d)前記梱包体の前記重量および前記重心位置をディスプレイまたは印刷用紙に出力する工程と、
を備えることを特徴とする梱包体情報出力方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−32976(P2012−32976A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171433(P2010−171433)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(505183761)株式会社トランザップ ジャパン (5)
【Fターム(参考)】