説明

梱包体

【課題】薄板状の固体電解質に対し、その主要面をコンタミの生じ難い柔軟な部材により接触固定すると共に、この柔軟な部材の衝撃吸収力で、搬送時の衝撃や振動を有効に緩衝できる梱包体を提供する。
【解決手段】薄板状の固体電解質体を搬送する梱包体において、前記固体電解質体の一方の主要面に接触可能な第1の部材と、前記固体電解質体の他方の主要面に接触可能な第2の部材と、前記固体電解質体の動きを制限可能な周辺壁と、を備え、前記第1の部材及び前記第2の部材は、外力を吸収可能な厚みを有し、前記周辺壁は、前記外周辺に対して押圧する衝撃力を含む外力を吸収可能な厚みを有し、少なくとも前記第1の部材又は前記第2の部材のどちらか一方はその厚み部分と周辺壁との少なくとも摩擦力によって、前記周辺壁との相対位置が固定されることにより、前記固体電解質体の移動が制限される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質体の搬送において、固体電解質体の梱包体に関する。更に、固体電解質体の梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等を始めとする携帯用電子機器の小型化は著しく、このような携帯電子機器に使用されるリチウム電池等の燃料電池の小型化、薄型化が望まれている。そのため、燃料電池に使用される各部品についても小型化、薄型化が望まれる。燃料電池の重要部である固体電解質体については、一般に脆性のセラミックスからなる薄板状に形成されているため、衝撃に弱く、搬送中の衝撃等で簡単に破損するおそれがある。また、固体電解質として機能を主に担保する薄板形状の中央平面部は、粉塵等の異物の付着により異物による機能障害が実際の電池において生じる可能性もある。
【0003】
従って、一般には、搬送中の薄板状の板体を保護するために、プラスチック製の袋に入れたり、クッション材を直接板体に接触するように梱包することがある。また、脆性なガラス板の場合や、表面接触によるキズ等の発生を避けなければならないシリコンウェーハ等の薄板状の部材の場合、クッション材を薄板形状の中央平面に接触するように紙材やポリプロピレン等の樹脂等が使用されている(例えば、特許文献1)。更に、シクロオレフィン系樹脂又はポリプロピレン系の粘着フィルム等でカバーする場合もある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−226354号公報
【特許文献2】特開2006−143241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、板体の固定が十分で無い場合は、搬送中の振動により、板体が移動し、表面を傷つける場合もある。また、クッション材の種類によっては、固体電解質が衝撃を受けてクラックが発生するおそれもある。更に、粘着性のフィルムを貼付けて搬送する場合等では、表面への不必要なコンタミが生じるおそれがあり、粘着性のフィルムの剥離時に固体電解質体が破損するおそれもある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、以上のような課題に鑑み、薄板状の固体電解質に対し、その主要面をコンタミの生じ難い柔軟な部材により接触固定すると共に、この柔軟な部材の衝撃吸収力で、搬送時の衝撃や振動を有効に緩衝できる梱包体を提供する。また、このような梱包体は、静電気が帯電し難い材料から構成することができ、固体電解質の優れた電気的特性を維持できる。
【0006】
より具体的には、以下のようなものを提供することができる。
(1)薄板状の固体電解質体を搬送する梱包体において、前記固体電解質体の一方の主要面に接触可能な第1の部材と、前記固体電解質体の他方の主要面に接触可能な第2の部材と、前記固体電解質体の動きを制限可能な周辺壁と、を備え、前記第1の部材及び前記第2の部材は、外力を吸収可能な厚みを有し、前記周辺壁は、前記外周辺に対して押圧する衝撃力を含む外力を吸収可能な厚みを有し、少なくとも前記第1の部材又は前記第2の部材のどちらか一方はその厚み部分と周辺壁との少なくとも摩擦力によって、前記周辺壁との相対位置が固定されることにより、前記固体電解質体の移動が制限されることを特徴とする梱包体を提供することができる。
【0007】
ここで、薄板状とは、厚さ方向の長さに比べ、他の長さが特に大きい形態を意味することができる。
【0008】
(2)前記周辺壁で囲まれる面積が、前記固体電解質体の一方の主要面の面積の100%以上200%以下であることを特徴とする上記(1)に記載の梱包体を提供することができる。
【0009】
ここで、周辺壁で囲まれる面積は、薄板状の固体電解質体の主要面に沿って移動可能なエリアに相当する。従って、大きすぎると移動可能エリアが広すぎることとなり、スペースユーティリティ上無駄が多くなる。また、狭すぎると、固体電解質体を取り出すことが難しくなりやすい。従って、主要面の面積の100%以上が好ましく、110%以上がより好ましく、120%以上が更に好ましい。一方、仮に移動可能であったとしても、周辺壁を超えることは通常できないため、この周辺壁がバリアとしてはたらく。従って、主要面の面積の200%以下が好ましく、180%以下がより好ましく、150%以下が更に好まししい。
【0010】
(3)前記第1の部材、前記第2の部材は、表面固有抵抗値が1013Ω以下の樹脂からなることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の梱包体を提供することができる。
【0011】
このような構成によれば、固体電解質体に発生する静電気を外部にリーク可能であり、帯電を防止することができる。ここで、上述の表面固有抵抗値は、1013Ω以下が好ましく、1010Ω以下がより好ましく、10Ω以下が更に好ましい。
【0012】
(4)前記第1の部材、前記第2の部材は、帯電防止材料からなることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の梱包体を提供することができる。
【0013】
(5)前記固体電解質体が梱包されたときに、前記第1及び第2の部材は、それぞれ前記一方及び他方の主要面を押圧し、前記固体電解質体の何れの主要面に付加される圧力も、50g/cm以下であることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の梱包体を提供することができる。
【0014】
固体電解質体は、応力集中がし易いセラミックスであるので、付加される圧力は、あまり高くないことが好ましい。一方、圧力が小さすぎると、摩擦力(又は、押圧により変形した第1若しくは2部材の盛上部若しくは丘状部を固体電解質体の辺であるエッジ部が乗越えるのに必要な力)による固体電解質体の固定力が不足する。従って、圧力は、50g/cm以下が好ましく、40g/cm以下がより好ましく、30g/cm以下が更に好ましい。そして、圧力は、0.1g/cm以上が好ましく、0.3g/cm以上がより好ましく、0.5g/cm以上が更に好ましい。
【0015】
(6)前記第1及び第2の部材の厚みは、前記固体電解質体の厚みに対してそれぞれ4倍以上100倍以下であり、前記周辺壁の厚みは、その厚みが最も薄い部分において前記固体電解質体の厚みに対して4倍以上100倍以下であることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の梱包体を提供することができる。
【0016】
ここで、周辺壁の厚みは、連続する壁部材が途切れるまでの距離を意味することができる。最も薄い部分を求めるには、周辺壁の周に沿って任意の点から、連続する壁部材が途切れる端部の任意の点を結び、両点間の距離が最短になったときの距離を上記周辺壁の厚みとすることができる。例えば、図1(b)において、左最上段の固体電解質体を収容する凹部では、開口14の周に沿って任意の点を移動させ、例えば右上の凹部により連続する壁部材が途切れると、その端部(即ち右上凹部の開口14の周)上の任意の点と連結して、それらの点間の距離を求める。この距離が最小になるところが図中L11と示される連結線間の距離である。同様に、L10及びL13がそれぞれの連続する壁部材が途切れる端部から求められた最短の距離となる。そして、L10、L11、L13を比べれば、L11が最小であるので、左最上段の固体電解質体を収容する凹部の周辺壁の厚みはL11となる。同様に、その直ぐ左下の凹部では、厚みL12、L13、L14のうち、最も短いL12が厚みとして規定される。
【0017】
第1及び第2の部材は、比較的柔軟な材料が用いられてよいが、薄すぎると衝撃を吸収しきれず固体電解質体に衝撃が伝達し、好ましくない。一方、厚すぎると、スペースユーティリティ上好ましくない。ただし、固体電解質の厚みが同じでも面積が大きい場合は、衝撃によるクラックが生じやすくなるため、第1及び第2の部材の厚みを規定範囲の最大限まで厚くする必要がある。従って、第1及び第2の部材の厚みは、固体電解質体の厚みに対して4倍以上が好ましく、6倍以上がより好ましく、8倍以上が更に好ましい。また、第1及び第2の部材の厚みは、固体電解質体の厚みに対して100倍以下が好ましく、90倍以下がより好ましく、80倍以下が更に好ましい。
【0018】
(7)前記第1の部材、前記第2の部材、及び前記周辺壁は、発泡樹脂からなることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかに記載の梱包体を提供することができる。
【0019】
第1の部材、第2の部材、及び周辺壁は、発泡材料から構成されてよい。この発泡樹材料として、例えば、発泡ポリエチレンを例示することができる。
【0020】
(8)前記第1の部材、前記第2の部材は、IES−RP−CC003−87−T規準のタンブラー法により測定した1.0μm以上の塵の個数が200個以下となる材料からなることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかに記載の梱包体を提供することができる。
【0021】
IES−RP−CC003−87−T規準のタンブラー法による発生粒子測定方法として、気流垂直型クリーンベンチ内に設置のタンブラーに試料1枚を入れて、一定速度(約10回/分)で回転させ、約10秒経過後投入口より1分間ICFの吸引量でサンプルエアーを吸引して、パーティクルカウンターによる測定を10回(1枚/回)行い、最大・最小を除いた8枚の平均値を求めるのが好ましい。
【0022】
(9)前記第1の部材、前記第2の部材、及び前記周辺壁は、密度が、0.1〜2g/cmの樹脂からなることを特徴とする上記(1)から(8)のいずれかに記載の梱包体を提供することができる。
【0023】
(10)前記第1の部材、前記第2の部材、及び前記周辺壁は、圧縮弾性率が1Paから1GPaの発泡材料であることを特徴とする上記(1)から(9)のいずれかに記載の梱包体を提供することができる。
【0024】
前記第1の部材、前記第2の部材、及び前記周辺壁は、外部衝撃を緩衝可能な圧縮弾性率を備えることが好ましい。圧縮弾性率が低すぎると、固体電解質体の固定支持が困難となる。一方、圧縮弾性率が高すぎると、衝撃を緩衝することができず、衝撃が固体電解質体にあまり減衰せず伝わる可能性があり、好ましくない。従って、圧縮弾性率が、好ましくは1Pa以上、より好ましくは10Pa以上、更に好ましくは100Pa以上である。また、圧縮弾性率が、1GPa以下が好ましく、より好ましくは500MPa以下であり、更に好ましくは200MPa以下である。尚、圧縮弾性率とは、圧縮応力に対する弾性率をいう。この弾性率は、材料の応力に対する歪を変化率で表わしたもので、ヤング率とも呼ばれる。
【0025】
(11)1立方メートル当たりの0.5μm以上の粒子数が140000個以下の環境下で前記固体電解質体を上記(1)から(10)のいずれかに記載の梱包体で梱包する梱包方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、薄板状の固体電解質に対し、その主要面をコンタミの生じ難い柔軟な部材により接触固定すると共に、この柔軟な部材の衝撃吸収力で、搬送時の衝撃や振動を有効に緩衝するようにしたため、脆性材料である固体電解質体を有効に保護できる。また、静電気が帯電し難い材料から梱包材が構成されれば、固体電解質の優れた電気的特性を維持することがより容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について詳しく説明するが、以下の記載は、本発明の実施例を説明するためになされるもので、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。また、同一若しくは同種類の要素については、同一若しくは関連性のある符号を用い、重複する説明は省略する。
【0028】
図1は、本発明の1の実施例である梱包体10を示す斜視図である。図1(a)は、一部の蓋体が開けられたもので、図1(b)は、全ての蓋体を閉じたものである。この主要梱包材12(第1の部材に相当)は、5つの開口14を72度の回転対称に備え、各開口14に設けられる凹部の中には、薄板状の固体電解質体18が配置される。その上には、蓋体16(第2の部材に相当)が開口14に圧入され、内部の固体電解質体18を押圧して固定する。図2は、この開口14に設けられた凹部の1つを断面で示すものである。開口14は、L2の径を備える。主要梱包材12は、厚みD1を備え、前記凹部の底の厚みはD2である。従って、凹部の深さは、D1−D2である。この凹部の中には径L2で厚みD4を備える固体電解質体18が収納される。更にその上には蓋体16が厚みD3を備えて、該凹部の蓋をする。このとき開口14の内壁が蓋体16の外周面と摺動して圧入された蓋体18をその位置にとどめる。図中固体電解質体18の厚みD4が大きく表わされているが、図を分かり易くするためであり、実際には、この実施例において、D2及びD3は、D4の12倍である。一方、凹部の底面は凹部を規定する垂直壁(周辺壁に相当)は、D4の100倍以上あると考えられる。また、垂直壁により囲われる面積は、固体電解質体18の主要面の面積の120%である(簡便には、L1/L2=120%)。
【0029】
これら主要梱包材12、及び蓋体16は、例えばタニムラ株式会社製の導電性クリーン発泡ポリエチレンフォーム(MK−CPF)から構成されてよい。この材料は、表面抵抗値は、1×10Ωである。この材料は、揮発性物質を殆ど含まない。また、IES−RP−CC003−87−T規準のタンブラー法により測定した1.0μm以上の塵の個数が200個以下である。
【0030】
また、これ以外の材料が用いられることもいうまでもない。例えば、厚さ(D4)0.25mmで、径(L2)が50.8mmの薄板円板状の固体電解質体を収容する梱包体を考えれば、凹部の径(L1)を65mmとし、凹部の底の厚み(D2)を3mmとし、凹部の深さ(D1−D2)を、3mmとしたものを別の材料で作ることもできる。この条件では、垂直壁により囲われる面積は、固体電解質体18の主要面の面積の164%となる。蓋体の径は、凹部の径(L1)と同じかやや大きく、そのまま圧入すると、外周面及び凹部の内周面との摩擦により圧入された位置を維持可能である。ここで、蓋体の厚み(D3)は3mmであってよい。蓋体を凹部の縁と同じ高さまでツライチで押し込むと、0.25mmの固体電解質体の厚み分だけ、圧縮力を与える歪み代(0.25/3=8.3%)ができる。仮に蓋体等の圧縮弾性率を20kPaとすると、面圧は、20kPa×8.3%=1.66×10N/m=17gf/cmであり、圧縮力は、20kPa×8.3%×π(5.08/2×10−2=3.36N=343gfである。尚、この見積もりは、底の厚みが変化しないことを前提としているため。これが同等に変化する場合は、歪みは半減する。
【0031】
図3は、別の実施例を示す。図3(a)は分解斜視図であり、図3(b)は凹部の断面図である。一穴主要梱包部材32は、ほぼ中央部に開口34を持つ凹部を備え、この中に固体電解質体18を収納し、上側から蓋部36をこの開口34から凹部内に挿入させるように上面部材38が重ねられる。一穴主要梱包部材32は、厚みD8を備え、凹部の底の厚みはD5であり、凹部の深さはD8−D5である。上面部材38は突起状の蓋部36を含め厚みがD6であり、上面部材38の板状体のみでは、厚みはD7である。従って、蓋部36はD6-D7の高さを持つ。D5はD4の25倍であり、D6はD4の48倍である。凹部を規定する垂直壁については、図1(b)の例にあるようにその厚みを測定する。厚さD4の固体電解質体18を収納し、これらの部材が重ね合うときに、蓋部36が固体電解質体18を50g/cm以下の圧力で、固定可能に押圧することが重要である。即ち、蓋部36の高さD6-D7に、固体電解質体18の厚みD4を加えたものが、凹部の深さD8−D5よりも大きく、かつ、上記面圧を超えない程度の大きさであることが好ましい。この実施例では、L3/L2=140%である。
【0032】
一例として、具体的な寸法を当てはめてみれば、厚さ(D4)0.25mmで、径(L2)が152.4mmの薄板円板状の固体電解質体18を収容する梱包体を考えれば、凹部の径(L3)を180mmとし、凹部の底の厚み(D5)を6mmとし、凹部の深さ(D8−D5)を、7mmとしたものを準備することができる。この条件では、垂直壁により囲われる面積は、固体電解質体18の主要面の面積の140%となる。蓋部36の径は、凹部の径(L3)と同じかやや大きく、そのまま圧入すると、外周面及び凹部の内周面との摩擦により圧入された位置を維持可能である。ここで、蓋部36の高さ(D6−D7)を7mmとしてよい。蓋部36を凹部に完全に押し込むように上面部材38及び一穴主要梱包部材32を重ね合わせると、0.25mmの固体電解質体の厚み分だけ、圧縮力を与える歪み代(0.25/7=3.57%)ができる。仮に蓋体等の圧縮弾性率を120kPaとすると、面圧は、120kPa×3.57%=4.28×10N/m=43.7gf/cmであり、圧縮力は、120kPa×3.57%×π(15.24/2×10−2=78.1N=7970gfである。尚、この見積もりは、底の厚みが変化しないことを前提としているため。これが同等に変化する場合は、歪みは半減する。
【0033】
図4は、更に別の実施例を示す。図4(a)は分解斜視図であり、図4(b)は孔部の断面図である。貫通孔主要梱包部材52は、ほぼ中央部に径L4の開口54を持つ孔部を備え、この中に固体電解質体18を収納し、上側及び下側から径がL5の厚蓋体56、57をこの開口54から孔部内に圧入させる(L5≧L4)。貫通孔主要梱包部材52は、厚みD9を備え、厚蓋体56、57はそれぞれD10、D11の厚みを備える。D10及びD11はD4の50倍及び70倍である。孔部を規定する垂直壁の厚みは、図1(b)の方法で測定する。厚さD4の固体電解質体18を収納し、厚蓋体56、57が挿入されるときに、厚蓋体56、57が固体電解質体18を50g/cm以下の圧力で、固定可能に押圧することが重要である。即ち、厚蓋体56及び57の高さD10及びD11に、固体電解質体18の厚みD4を加えたものが、貫通孔主要梱包部材52の厚みD9よりも大きく、かつ、上記面圧を超えない程度の大きさであることが好ましい。この実施例では、L4/L2=140%である。
【0034】
一例として、具体的な寸法を当てはめてみれば、厚さ(D4)0.25mmで、径(L2)が152.4mmの薄板円板状の固体電解質体18を収容する梱包体において、孔部の径(L4)を180mmとし、孔部の底側の厚蓋体56の厚み(D11)を17.5mmとし、貫通孔主要梱包部材52の厚み(D9)である孔部の高さを30mmとしたものを準備することができる。この条件では、垂直壁により囲われる面積は、固体電解質体18の主要面の面積の140%となる。厚蓋体56、57の径は、孔部の径(L4)よりやや大きく、そのまま圧入すると、外周面及び孔部の内周面との摩擦により圧入された位置を維持可能である。厚蓋体56、57を孔部に完全に押し込むと、0.25mmの固体電解質体の厚み分だけ、圧縮力を与える歪み代(0.25/30=0.83%)ができる。仮に蓋体等の圧縮弾性率を500kPaとすると、面圧は、500kPa×0.83%=4.17×10N/m=42.5gf/cmであり、圧縮力は、500kPa×0.83%×π(15.24/2×10−2=76.0N=7756gfである。尚、この見積もりは、底の厚みが変化しないことを前提としているため。これが同等に変化する場合は、歪みは半減する。
【0035】
図5は、別の実施例を示す斜視図である。円筒主要梱包部材72は、両端面に開口74を備える貫通孔を中心軸を共通させて備える。この円筒主要梱包部材72は、横置きでもよく、また本図から90度回転させた縦置きでもよい。この貫通孔に、右側に展開された、円柱蓋体76、固体電解質体18、円柱蓋体76、固体電解質体18、及び円柱蓋体76をこの順で挿入する。円柱蓋体76の厚みはそれぞれ、D4の5倍であった。また、凹部を規定する壁の厚みは、円筒主要梱包部材72の半径から開口74の半径を引いたものであるが、それはD4の15倍である。また、開口74の開口面の面積は固体電解質体18の主要面の面積の106%である。この実施例のように、固体電解質体18を梱包材を介して重ねて梱包することができる。また、上述と同様、円柱蓋体76の厚みの3倍及び固体電解質体18の厚みの2倍を足したものは、円筒主要梱包部材72の軸方向長さ(又は円筒高さ)よりも大きく、円柱蓋体76が固体電解質体18を50g/cm以下の圧力で、固定可能に押圧することが重要である。
【0036】
一例として、具体的な寸法を当てはめてみれば、厚さ(D4)0.5mmで、径(L2)が25.4mmの薄板円板状の固体電解質体18を収容する梱包体において、孔部の径(L6)を180mmとし、孔部の底側の円柱蓋体76の厚みを3mmとし、貫通孔主要梱包部材52の厚み(L8)を9mmとしたものを準備することができる。この条件では、垂直壁により囲われる面積は、固体電解質体18の主要面の面積の113%となる。円柱蓋体76の径(L9)は27mmで、孔部の径(L6)27mmと実質同じで、そのまま圧入すると、外周面及び孔部の内周面との摩擦により圧入された位置を維持可能である。3つの円柱蓋体76と2つの固体電解質体18を交互に孔部に完全に押し込むと、1mmの固体電解質体の厚み分だけ、圧縮力を与える歪み代(1/9=11.1%)ができる。仮に蓋体等の圧縮弾性率を30kPaとすると、面圧は、30kPa×11.1%=3.33×10N/m=34.0gf/cmであり、圧縮力は、30kPa×11.1%×π(25.4/2×10−2=170N=17200gfである。尚、この見積もりは、1つの円柱蓋体76のみの厚みが変化することを前提としている。これが3つの円柱蓋体76に同等に分散され場合は、歪みは1/3になる。
【0037】
図6は、図1の梱包体に更に挟持部材を追加し、改良したものを示す略式断面図である。この図において、1つの開口14の周りの主要梱包材12は、凹部を規定し、その凹部の底面には、薄板状の固体電解質体18が配置される。その上には、蓋体16が開口14に挿入され、内部の固体電解質体18を押圧する。更に、蓋体16の上には、これよりも圧縮弾性率の高いスペーサ20が配置され、蓋体16を上から押す。この梱包体は、更に、上面及び下面において、平板22(例えば、アルミ板、硬質プラスチック板等)を配置し、梱包体を挟持する。この平板22は、両端部にボルト孔22a、22bが開けられ、調整加圧部材であるボルト24が挿通される。ボルト24の下側のヘッド27は、ボルト孔22bよりも大きいため、平板を支持する。また上部ボルト孔22aは、ばか孔で、それより大きいリング26が上面に配置される。このリング26は、スプリング28により付勢される。スプリング28の上端は、ナット25により係止されている。このナット25を締めると、スプリング28が下方に押付けられ、より強い弾性力で、リング26を付勢する。この挟持部材の全スプリング28による弾性力は、挟持される主要梱包材12全体の弾性力に比べ、高く設定してあるので、主要梱包材12を一定の力で挟持することができ、固体電解質体18の保持力が安定化される。
【0038】
例えば、図2の寸法に従って、厚さ(D4)0.25mmで、径(L2)が50.8mmの薄板円板状の固体電解質体を収容する梱包体を考えれば、凹部の径(L1)を65mmとし、凹部の底の厚み(D2)を3mmとし、凹部の深さ(D1−D2)を、3mmとしたものを準備することもできる。この条件では、垂直壁により囲われる面積は、固体電解質体18の主要面の面積の164%となる。蓋体の径は、凹部の径(L1)と同じかやや小さく、スペーサ20と共にそのまま圧入されてよい。ここでは、スペーサ20を抑える平板22があるため、圧入の位置を維持可能である。ここで、蓋体の厚み(D3)を3mmとし、スペーサ20の厚みを1mmとする。蓋体16を抑えるスペーサ20の縁と同じ高さまでツライチで平板22を押し込むと、1+0.25mmのスペーサと固体電解質体の分だけ、圧縮力を与える歪み代(1.25/3=41.7%)ができる。仮に蓋体等の圧縮弾性率を10kPaとすると、面圧は、10kPa×41.7%=4.17×10N/m=42.5gf/cmであり、圧縮力は、20kPa×41.7%×π(5.08/2×10−2=8.45N=862gfである。尚、この見積もりは、底の厚みが変化しないことを前提としているため。これが同等に変化する場合は、歪みは半減する。
【0039】
以上説明したように、本発明の梱包体によれば、固体電解質体を破損させることなく、安全に運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の1つの実施例の梱包体の斜視図である。(a)は、一部蓋体を開けた状態を示し、(b)は、全ての蓋体を閉じた状態を示す。
【図2】図1の実施例の梱包体の凹部の断面図である。
【図3】本発明の別の実施例の梱包体を示す図である。(a)は、展開斜視図であり、(b)は一部断面図である。
【図4】本発明の更に別の実施例の梱包体を示す図である。(a)は、展開斜視図であり、(b)は一部断面図である。
【図5】本発明のまた更に別の実施例の梱包体の斜視図である。
【図6】本発明の別の実施例の梱包体の一部断面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 梱包体
12 主要梱包材
14、34、54、74 開口
16 蓋体
20 スペーサ
32 一穴主要梱包部材
36 蓋部
52 貫通孔主要梱包部材
56 厚蓋体
72 円筒主要梱包部材
76 積層部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状の固体電解質体を搬送する梱包体において、
前記固体電解質体の一方の主要面に接触可能な第1の部材と、
前記固体電解質体の他方の主要面に接触可能な第2の部材と、
前記固体電解質体の動きを制限可能な周辺壁と、を備え、
前記第1の部材及び前記第2の部材は、外力を吸収可能な厚みを有し、
前記周辺壁は、前記外周辺に対して押圧する衝撃力を含む外力を吸収可能な厚みを有し、
少なくとも前記第1の部材又は前記第2の部材のどちらか一方はその厚み部分と周辺壁との少なくとも摩擦力によって、前記周辺壁との相対位置が固定されることにより、前記固体電解質体の移動が制限されることを特徴とする梱包体。
【請求項2】
前記周辺壁で囲まれる面積が、前記固体電解質体の一方の主要面の面積の100%以上200%以下であることを特徴とする請求項1に記載の梱包体。
【請求項3】
前記第1の部材、前記第2の部材は、表面固有抵抗値が1013Ω以下の樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の梱包体。
【請求項4】
前記第1の部材、前記第2の部材は、帯電防止材料からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の梱包体。
【請求項5】
前記固体電解質体が梱包されたときに、
前記第1及び第2の部材は、それぞれ前記一方及び他方の主要面を押圧し、
前記固体電解質体の何れの主要面に付加される圧力も、50g/cm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の梱包体。
【請求項6】
前記第1及び第2の部材の厚みは、前記固体電解質体の厚みに対してそれぞれ4倍以上100倍以下であり、前記周辺壁の厚みは、その厚みが最も薄い部分において前記固体電解質体の厚みに対して4倍以上100倍以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の梱包体。
【請求項7】
前記第1の部材、前記第2の部材、及び前記周辺壁は、発泡材料からなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の梱包体。
【請求項8】
前記第1の部材、前記第2の部材は、IES−RP−CC003−87−T規準のタンブラー法により測定した1.0μm以上の塵の個数が200個以下となる材料からなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の梱包体。
【請求項9】
前記第1の部材、前記第2の部材、及び前記周辺壁は、密度が、0.1〜2g/cmの樹脂からなることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の梱包体。
【請求項10】
前記第1の部材、前記第2の部材、及び前記周辺壁は、圧縮弾性率が1Paから1GPaの発泡材料であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の梱包体。
【請求項11】
1立方メートル当たりの0.5μm以上の粒子数が140000個以下の環境下で前記固体電解質体を請求項1から10のいずれかに記載の梱包体で梱包する梱包方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−105730(P2010−105730A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282549(P2008−282549)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【Fターム(参考)】